JP6429377B2 - 耐熱性セロビオハイドロラーゼ - Google Patents
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Description
[1] (A)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(B)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列のうちの1〜5個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも75℃、pH5の条件下でリン酸膨潤アビセルを基質とした加水分解活性を有するポリペプチド、又は
(C)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも75℃、pH5の条件下でリン酸膨潤アビセルを基質とした加水分解活性を有するポリペプチド、
からなるセロビオハイドロラーゼ触媒領域を有することを特徴とする、耐熱性セロビオハイドロラーゼ。
[2] カルシウムイオン存在下において、少なくとも85℃、pH5の条件下でリン酸膨潤アビセルを基質とした加水分解活性を有する、前記[1]の耐熱性セロビオハイドロラーゼ。
[3] アビセルを基質とした加水分解活性を有する、前記[1]又は[2]の耐熱性セロビオハイドロラーゼ。
[4] (a)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列、
(b)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列のうちの1〜5個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも75℃、pH5の条件下でリン酸膨潤アビセルを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
(c)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも75℃、pH5の条件下でリン酸膨潤アビセルを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、又は
(d)配列番号3又は4で表される塩基配列と90%以上の配列同一性を有し、かつ少なくとも75℃、pH5の条件下でリン酸膨潤アビセルを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
からなるセロビオハイドロラーゼ触媒領域をコードする領域を有する、ポリヌクレオチド。
[5] 前記ポリペプチドが、カルシウムイオン存在下において、少なくとも85℃、pH5の条件下でリン酸膨潤アビセルを基質とした加水分解活性を有する、前記[4]のポリヌクレオチド。
[6] 前記ポリペプチドが、アビセルを基質とした加水分解活性も有する、前記[4]又は[5]のポリヌクレオチド。
[7] 前記[4]〜[6]のいずれかのポリヌクレオチドが組込まれており、
宿主細胞において、セロビオハイドロラーゼ活性を有するポリペプチドを発現し得る、発現ベクター。
[8] 前記[7]の発現ベクターが導入されている、形質転換体。
[9] 真核微生物である、前記[8]の形質転換体。
[10] 前記[8]又は[9]の形質転換体内で、前記[1]〜[3]のいずれかの耐熱性セロビオハイドロラーゼを生産することを含む、耐熱性セロビオハイドロラーゼの製造方法。
[11] 前記[1]〜[3]いずれかの耐熱性セロビオハイドロラーゼ、又は前記[4]〜[6]いずれかのポリヌクレオチドがコードする耐熱性セロビオハイドロラーゼと、少なくとも1種のその他のグリコシド加水分解酵素とを含む、グリコシド加水分解酵素混合物。
[12] セルロースを含む材料を、前記[1]〜[3]いずれかの耐熱性セロビオハイドロラーゼ、前記[4]〜[6]いずれかのポリヌクレオチドがコードする耐熱性セロビオハイドロラーゼ、前記[8]若しくは[9]に記載の形質転換体、又は前記[11]のグリコシド加水分解酵素に接触させることにより、セルロース分解物を生産することを含む、セルロース分解物の製造方法。
また、本発明に係るポリヌクレオチド、当該ポリヌクレオチドが組込まれた発現ベクター、当該発現ベクターが導入されている形質転換体は、本発明に係る耐熱性セロビオハイドロラーゼの製造に好適に用いられる。
糸状菌、細菌、アーキアを含む多くの微生物は難培養性であり、土壌など微生物環境に生息する菌の99%が未知の菌であるといわれている。特に、高温環境に生息する微生物の培養は極めて困難であり、現在の微生物培養技術では土壌中に生息する微生物の0.1%以下を単離・培養しているにすぎないと考えられている。この高温土壌微生物の難培養性が、耐熱性セロビオハイドロラーゼの開発が進まない一因である。
(A)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(B)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも75℃、pH5の条件下でPSAを基質とした加水分解活性を有するポリペプチド、
(C)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列と60%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも75℃、pH5の条件下でPSAを基質とした加水分解活性を有するポリペプチド。
本発明に係るポリヌクレオチドは、本発明に係る耐熱性セロビオハイドロラーゼをコードする。当該耐熱性セロビオハイドロラーゼは、当該ポリヌクレオチドが組込まれた発現ベクターを宿主に導入することにより、当該宿主の発現系を利用して生産することができる。
(a)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列、
(b)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも75℃、pH5の条件下でPSAを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
(c)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列と60%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも75℃、pH5の条件下でPSAを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
(d)配列番号3又は4で表される塩基配列と60%以上の配列同一性を有し、かつ少なくとも75℃、pH5の条件下でPSAを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
(e)配列番号3又は4で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドの塩基配列であり、かつ少なくとも75℃、pH5の条件下でPSAを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列。
本発明及び本願明細書において、「ポリヌクレオチドにおいて塩基が置換する」とは、ポリヌクレオチドを構成している塩基が別の塩基に変わることを意味する。
本発明及び本願明細書において、「ポリヌクレオチドにおいて塩基が付加される」とは、ポリヌクレオチド中に新たな塩基が挿入されることを意味する。
本発明に係る発現ベクターは、前記本発明に係るポリヌクレオチドが組込まれており、宿主細胞において、少なくとも75℃、pH5の条件下でセロビオハイドロラーゼ活性を有するポリペプチドを発現し得る。すなわち、前記本発明に係るポリヌクレオチドが、前記本発明に係る耐熱性セロビオハイドロラーゼを発現し得る状態で組込まれた発現ベクターである。具体的には、上流から、プロモーター配列を有するDNA、前記本発明に係るポリヌクレオチド、ターミネーター配列を有するDNAからなる発現カセットとして発現ベクターに組込まれていることが必要である。なお、ポリヌクレオチドの発現ベクターへの組込みは、周知の遺伝子組み換え技術を用いることにより行うことができ、市販の発現ベクター作製キットを用いてもよい。
本発明に係る形質転換体は、本発明に係る発現ベクターが導入されている。当該形質転換体中では、本発明に係る耐熱性セロビオハイドロラーゼを発現させ得る。従来公知のセロビオハイドロラーゼは、現宿主のレンジが狭い、つまり、異種発現が難しいものが多い。これに対して、本発明に係る耐熱性セロビオハイドロラーゼは、大腸菌、酵母、糸状菌、高等植物葉緑体等、広範な発現宿主に発現させることができる。このため、発現ベクターを導入する宿主としては、大腸菌等の原核細胞であってもよく、酵母、糸状菌、昆虫培養細胞、哺乳培養細胞、又は植物細胞等の真核細胞であってもよい。大腸菌の形質転換体を培養することにより、本発明に係る耐熱性セロビオハイドロラーゼを、より簡便かつ大量に生産することができる。一方で、真核細胞内ではタンパク質に糖鎖修飾が施されるため、真核細胞の形質転換体を用いることにより、原核細胞の形質転換体を用いた場合よりも、より耐熱性に優れた耐熱性セロビオハイドロラーゼを生産し得る。
本発明に係る耐熱性セロビオハイドロラーゼの製造方法は、前記本発明に係る形質転換体内で、耐熱性セロビオハイドロラーゼを生産する方法である。前記本発明に係るポリヌクレオチドが、発現の時期等の制御能を有していないプロモーターの下流に組込まれている発現ベクターを用いて製造された形質転換体内では、本発明に係る耐熱性セロビオハイドロラーゼが恒常的に発現している。一方で、特定の化合物や温度条件等によって発現を誘導するいわゆる発現誘導型プロモーターを用いて製造された形質転換体に対しては、それぞれの発現誘導条件に適した誘導処理を行うことにより、当該形質転換体内に耐熱性セロビオハイドロラーゼを発現させる。
前記本発明に係る耐熱性セロビオハイドロラーゼ、又は前記本発明に係る耐熱性セロビオハイドロラーゼの製造方法によって製造された耐熱性セロビオハイドロラーゼと、少なくとも1種のその他のグリコシド加水分解酵素を含むグリコシド加水分解酵素混合物として使用することもできる。前記本発明に係る耐熱性セロビオハイドロラーゼの製造方法によって製造された耐熱性セロビオハイドロラーゼは、形質転換体内に含まれた状態のものであってもよく、形質転換体から抽出又は精製されたものであってもよい。本発明に係る耐熱性セロビオハイドロラーゼを、その他のグリコシド加水分解酵素との混合物としてセルロースの分解反応に用いることにより、難分解性であるリグノセルロースをより効率よく分解させることができる。
本発明に係るセルロース分解物の製造方法は、本発明に係る耐熱性セロビオハイドロラーゼにより、セルロースを分解して分解物を得る方法である。具体的には、セルロースを含む材料を、本発明に係る耐熱性セロビオハイドロラーゼ、本発明に係る形質転換体、又は本発明に係る耐熱性セロビオハイドロラーゼの製造方法によって製造された耐熱性セロビオハイドロラーゼに接触させることにより、セルロース分解物を生産する。
<1> 温泉土壌からのDNA抽出と全ゲノムシーケンス(Whole Genome Sequence、WGS)
耐熱性セロビオハイドロラーゼ(至適温度:55℃以上)、超耐熱性セロビオハイドロラーゼ(至適温度:80℃以上)の遺伝子探索を目的として、中性〜弱アルカリ性温泉から土壌DNAを採取し、これらの土壌を構成する微生物叢メタゲノムDNAの塩基配列解読を行った。
中性〜弱アルカリ性温泉土壌サンプルとして、野外にて高温の温泉が噴き出している日本国内の3ヶ所、5地点(メタゲノムDNAサンプルN2、AR19、AR15、OJ1、及びH1)から、土壌、泥、バイオマットを含む温泉水を採取した。これらの温泉土壌サンプルは、採取時の温度58〜78℃、pH7.2〜8のレンジにあった。
温泉土壌サンプルAR15について、メタゲノムDNAの配列解読を行い、平均リード長370bp、総リード数5,419,406個、総ゲノム解読量2,007,725,04bpの全ゲノムシーケンス(WGS)データセットを得た。
Roche 454の出力(sffファイル)をPyroBayes(Quinlan et al., Nature Methods,2008,vol.5,p.179-81.)にて再ベースコールし、FASTA形式の配列ファイル及びQuality値ファイルを取得した。得られたシーケンスリードは、端を切り落とし品質を上げ、454 Life SciencesのアセンブルソフトウェアNewbler version 2.3を使ってアセンブルした。アセンブルは、「minimum acceptable overlap match (mi)=0.9」、「option:−large(for large or complex genomes,speeds up assembly,but reduces accuracy.)」に設定して行った。
100bp以上にアセンブルされた総コンティグ長は、 合計118,600,846bpであり、このデータセットをセルラーゼ酵素遺伝子解析に用いた。リード総数5,419,406リードのうち4,805,640リードが、平均で1,146bp以上のコンティグにアセンブルされ(計103,508コンティグ)、このうち最大コンティグ長は151,585bpであった。
UniProtデータベース(http://www.uniprot.org/)からEC番号が3.2.1.4(セルラーゼ)、3.2.1.21(β−グルコシダーゼ)、3.2.1.37(β−キシロシダーゼ) 、3.2.1.91(セルロース 1,4−β−セロビオシダーゼ)、3.2.1.8(エンド1,4−β−キシラナーゼ)の配列をダウンロードし(アクセス日:2011/12/9)、これらグリコシド加水分解酵素遺伝子のプロテオームローカルデータベースを構築した。アノテーションソフトウェアOrphelia(Hoff et al.,Nucleic Acids Research,2009,37(Web Server issue:W101-W105)を使用して、前記<2>で得たコンティグ配列から、遺伝子領域(=オープンリーディングフレーム)を推定した(Orphelia option:default(model=Net700,maxoverlap=60)、Metagene option:−m)。推定されたORFからグリコシド加水分解酵素遺伝子を抽出するために、BLASTP(blastall ver. 2.2.18)を使い、ローカルデータベースに参照した。BLASTPのoption条件は、「Filter query sequence=false」、「Expectation value(E)<1e−20」[以下、デフォルト値:Cost to open a gap=−1、Cost to extended gap=−1、X dropoff value for gapped alignment=0、Threshold for extending hits=0、Word size=default]とし、ヒットした配列をグリコシド加水分解酵素遺伝子として収集した。
前記<3>で収集されたセルラーゼ、エンドヘミセルラーゼ、脱分岐酵素等のグリコシド加水分解酵素を含む配列についてについて、タンパク質の機能領域配列データベースpfam HMMs(Pfam version 23.0 and HMMER v2.3;Finn et al.,Nucleic Acids Research Database,2010,Issue 38,p.D211-222)を基準に、機能分類を行った。具体的には、タンパク質モチーフ検索プログラムHMMER(Durbin et al.,‘The theory behind profile HMMs. Biological sequence analysis: probabilistic models of proteins and nucleic acids’, 1998,Cambridge University Press.;hmmpfam(Ver.2.3.2)、E−value cutoff<1e−5; Database=Pfam_fs(models that can be used to find fragments of the represented domains in a sequence.))を用いて、Pfam領域データベースとの相同性からグリコシド加水分解酵素(GH)ファミリーを決定した。
オープンリーディングフレームAR15G−2は、636アミノ酸残基からなるポリペプチド(配列番号1)をコードし、1位のアミノ酸残基がメチオニン(M)から開始し、3’末端が終始コドンで終わる完全長配列(配列番号3)であった。モチーフの配列相同性から、オープンリーディングフレームAR15G−2は、1位のメチオニンから31位のアラニン(A)までの31アミノ酸残基が分泌シグナル(SignalP 4.1)であり、39位のチロシン(Y)から630位のファニルアラニン(F)までの592アミノ酸残基がGlycoside hydrolase family 48の触媒領域をコードしていると推測された。当該ORFは、細菌ファーミキューテス門クロストリジウム・ステルコラリウム・サブスピーシーズ・ステルコラリウム DSM 8532のGH48ファミリーに属するエキソグルカナーゼ2(Genbank 登録ID: AGC68874.1)(配列番号9)と、全長で43%、GH48触媒領域で44%のアミノ酸配列同一性を示す、新規な配列であった。配列相同性は、ClustalWアルゴリズムにより算出した。
配列番号7で表される塩基配列からなるフォワードプライマー(5’−GTATGATAAAATTTCAAAAAAGCGTTTTA−3’:配列番号5で表される塩基配列の5’末端側に2塩基(GT)付加し、5’末端をリン酸化したもの。)と配列番号8で表される塩基配列からなるリバースプライマー(5’−TAGAGCTCTTATTTCACCTCTTCTCATATAAAC−3’:配列番号6で表される塩基配列の5’末端側に制限酵素Sac I認識配列を付加したもの。Sac Iはベクターへの挿入に利用する配列である。)を用い、KOD−Plus−Neo(TOYOBO社製)で増幅したPCR産物をpLEAD4ベクター(ニッポン・ジーン社製)へ挿入し、大腸菌JM109株に形質転換した。なお、配列番号5で表される塩基配列は、配列番号3で表される塩基配列の1〜27位の塩基からなる部分配列と相同的な(同一の)塩基配列である。また、配列番号6で表される塩基配列は、配列番号3で表される塩基配列の1,887〜1,911位の塩基からなる部分配列と相補的な塩基配列である。コロニーPCRによりポジティブクローンを選抜し、50mg/Lアンピシリンを含むLB液体培地を用いて37℃、200rpmで17〜20時間培養した後、ミニプレップキット(Wizard(登録商標) plus SV Minipreps DNA Purification System、Promega社製)を用いてプラスミドの調製を行った。調製したプラスミドは、シーケンサー(ライフテクノロジーズ社の3730 DNA Analyzer)を用いて配列確認を行った。
シーケンス確認されたAR15G−2−16/pLEAD4プラスミドを持つ形質転換大腸菌クローンを、50mg/Lアンピシリンを含むTurbo Broth培地(アテナ エンバイロメンタル サイエンス社製)に植菌し、 約20時間培養することによって目的タンパク質を発現させた。培養後、遠心分離処理を行って大腸菌を回収し、培養液の1/10容量の50mM Tris−HClバッファー(pH8.0)を加えて懸濁した。その後、超音波破砕装置astrason3000(MISONIX社製)を用いて、5分間破砕−5分間休止工程を7〜8サイクル繰返し、目的タンパク質を含む遺伝子組換え大腸菌の粗抽出物を得た。当該遺伝子組換え大腸菌粗抽出物をフィルター(孔径φ=0.45μm、ミリポア社製)で濾過し、得られた濾液を遺伝子組換え大腸菌破砕上清とした。
AR15G−2−16遺伝子がコードする酵素タンパク質(AR15G−2−16)のPSAを基質としたセロビオハイドロラーゼ活性を調べた。計測には、前記<7>で得られた精製酵素を0.05MのTris−HClバッファー(pH8.0)で1mg/mLに希釈して用いた。
酵素タンパク質AR15G−2−16に対して、様々なセルロース基質及びヘミセルロース基質に対する加水分解活性を調べた。計測には、前記<7>で得られた精製酵素を0.05MのTris−HClバッファー(pH8.0)で1mg/mLに希釈して用いた。また、基質として、PSA、アビセル粉末、CMC(Sigma社製)、キシラン(ブナ材由来、Sigma社製)、リケナン(MP Biomedicals社製)、ラミナリン(Laminaria digitata由来、Sigma社製)、PNPC(p−ニトロフェニル−β−D−セロビオシド、Sigma社製)、PNPG(p−ニトロフェニル−β−D−グルコピラノシド、Sigma社製)を用いた。
PNPC又はPNPGを基質とする場合には、基質溶液として10mMの各水溶液を用いて70℃で反応させた以外は前記<8>と同様にして、20分間反応させ、等量の200mM 炭酸ナトリウム水溶液を加えて、5分間遠心分離処理し、上清を得た。上清中のp−ニトロフェノール量を、分光光度計を用いて420nmの吸光度を計測し、p−ニトロフェノールで作成した検量線を用いて算出し、コントロール区との差分から酵素の加水分解によって生成したp−ニトロフェノール量を求めた。1分間に1μmolのp−ニトロフェノールを生成する酵素活性を1Uとし、タンパク質量で除した値を比活性(U/mg)とした。
AR15G−2−16のPSA加水分解活性の温度依存性を調べた。具体的には、反応温度を、 40、50、60、65、70、75、80、85、90、又は95℃とした以外は、前記<8>と同様に行い、酵素の加水分解によって生成した還元糖量を求め、PSA加水分解活性(U/mg)を算出した。
また、40μLの精製水の代わりに10mM CaCl2水溶液を加えた反応液でも同様に測定し、酵素の加水分解によって生成した還元糖量を求め、PSA加水分解活性(U/mg)を算出した。
Differential scanning fluorimetry (DSF)は、蛍光色素とリアルタイムPCR装置を用いて、タンパク質の熱変性を計測する方法の一つであり、様々なタンパク質に応用可能である。SYPRO Orange等、DSFに使われる蛍光色素は、疎水性部位と結合する無極性条件下で蛍光を発し、一方、水に溶けた極性条件下では発光が抑えられる。通常、タンパク質はその熱変性温度において折畳み構造が解け、内部にある疎水性部位がタンパク質表面に露出する。この露出した疎水性部位にSYPRO Orangが結合すると、波長470〜480nmの励起光により、波長595nm付近にピークを持つ強い蛍光を発する。タンパク質溶液の温度を一定間隔で段階的に上昇させ、蛍光強度を計測することにより、熱崩壊温度(=蛍光強度の変化点)が算出される。
具体的には、96穴PCRプレート(Multiplate 96 Well PCR Plate MLL−9651、Bio−Rad社製)のウェルに100倍希釈したSYPRO Orange(ライフテクノロジーズ社製)を2μL、濃度1mg/mLの精製酵素溶液を1μL、200mM 酢酸バッファー(pH4.0)を5μL、精製水を12μL加え、各ウェルの容積を20μLとした。PCRプレートはOptical 8連フラットキャップ(Bio−Rad社製)でシールし、リアルタイムPCR装置(CFX96 Touch Real−Time PCR System、Bio−Rad社製)で0.2℃ずつ、30℃から100℃までウェルの温度を上昇させ、ターゲット温度が達成されてから10秒間経過した後、各ウェルの蛍光強度を同時計測した。波長帯域450〜490nmの光発光ダイオード(LED)によりSYPRO Orangeを励起し、SYPRO Orange放射光は560〜580nmレンジの帯域通過フィルターを通し、CCDカメラで蛍光強度の計測を行い、蛍光強度変化を温度の関数としてプロットした。リアルタイムPCRに付属の解析ソフトウェアCFX Manager(Bio−Rad社製)を使い、データ解析を行った。
Claims (12)
- (A)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(B)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列のうちの1〜5個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも75℃、pH5の条件下でリン酸膨潤アビセルを基質とした加水分解活性を有するポリペプチド、又は
(C)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも75℃、pH5の条件下でリン酸膨潤アビセルを基質とした加水分解活性を有するポリペプチド、
からなるセロビオハイドロラーゼ触媒領域を有することを特徴とする、耐熱性セロビオハイドロラーゼ。 - カルシウムイオン存在下において、少なくとも85℃、pH5の条件下でリン酸膨潤アビセルを基質とした加水分解活性を有する、請求項1に記載の耐熱性セロビオハイドロラーゼ。
- キシラナーゼ活性を有する、請求項1又は2に記載の耐熱性セロビオハイドロラーゼ。
- (a)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列、
(b)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列のうちの1〜5個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも75℃、pH5の条件下でリン酸膨潤アビセルを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
(c)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも75℃、pH5の条件下でリン酸膨潤アビセルを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、又は
(d)配列番号3又は4で表される塩基配列と90%以上の配列同一性を有し、かつ少なくとも75℃、pH5の条件下でリン酸膨潤アビセルを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
からなるセロビオハイドロラーゼ触媒領域をコードする領域を有する、ポリヌクレオチド。 - 前記ポリペプチドが、カルシウムイオン存在下において、少なくとも85℃、pH5の条件下でリン酸膨潤アビセルを基質とした加水分解活性を有する、請求項4に記載のポリヌクレオチド。
- 前記ポリペプチドが、キシラナーゼ活性も有する、請求項4又は5に記載のポリヌクレオチド。
- 請求項4〜6のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドが組込まれており、
宿主細胞において、セロビオハイドロラーゼ活性を有するポリペプチドを発現し得る、発現ベクター。 - 請求項7に記載の発現ベクターが導入されている、形質転換体。
- 真核微生物である、請求項8に記載の形質転換体。
- 請求項8又は9に記載の形質転換体内で、請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐熱性セロビオハイドロラーゼを生産することを含む、耐熱性セロビオハイドロラーゼの製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐熱性セロビオハイドロラーゼ、又は請求項4〜6のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドがコードする耐熱性セロビオハイドロラーゼと、少なくとも1種のその他のグリコシド加水分解酵素とを含む、グリコシド加水分解酵素混合物。
- セルロースを含む材料を、請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐熱性セロビオハイドロラーゼ、請求項4〜6のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドがコードする耐熱性セロビオハイドロラーゼ、請求項8若しくは9に記載の形質転換体、又は請求項11に記載のグリコシド加水分解酵素混合物に接触させることにより、セルロース分解物を生産することを含む、セルロース分解物の製造方法。
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