JP6364662B2 - GHファミリー3に属する耐熱性β―キシロシダーゼ - Google Patents
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Description
[1] (A)配列番号1、3、又は5で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(B)配列番号1、3、又は5で表されるアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも80℃、pH4.0の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチド、又は
(C)配列番号1、3、又は5で表されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも80℃、pH4.0の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチド、
からなるβ−キシロシダーゼ触媒領域を有することを特徴とする、耐熱性β−キシロシダーゼ。
[2] β−グルコシダーゼ活性を有する、前記[1]の耐熱性β−キシロシダーゼ。
[3] (a)配列番号1、3、又は5で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列、
(b)配列番号1、3、又は5で表されるアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも80℃、pH4.0の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
(c)配列番号1、3、又は5で表されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも80℃、pH4.0の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、又は
(d)配列番号2、4、又は6で表される塩基配列と90%以上の配列同一性を有し、かつ少なくとも80℃、pH4.0の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
からなるβ−キシロシダーゼ触媒領域をコードする領域を有する、ポリヌクレオチド。
[4] 前記ポリペプチドが、β−グルコシダーゼ活性も有する、前記[3]のポリヌクレオチド。
[5] 前記[3]又は[4]のポリヌクレオチドが組込まれており、
宿主細胞において、β−キシロシダーゼ活性を有するポリペプチドを発現し得る、発現ベクター。
[6] 前記[5]の発現ベクターが導入されている、形質転換体。
[7] 真核微生物である、前記[6]の形質転換体。
[8] 前記[6]又は[7]の形質転換体内で、耐熱性β−キシロシダーゼを生産することを含む、耐熱性β−キシロシダーゼの製造方法。
[9] 前記[1]若しくは[2]の耐熱性β−キシロシダーゼ、前記[3]若しくは[4]のポリヌクレオチドがコードする耐熱性β−キシロシダーゼと、少なくとも1種のその他のグリコシド加水分解酵素とを含む、グリコシド加水分解酵素混合物。
[10] セルロースを含む材料を、前記[1]若しくは[2]の耐熱性β−キシロシダーゼ、前記[3]若しくは[4]のポリヌクレオチドがコードする耐熱性β−キシロシダーゼ、又は前記[9]のグリコシド加水分解酵素混合物に接触させることにより、リグノセルロース分解物を生産することを含む、リグノセルロース分解物の製造方法。
また、本発明に係るポリヌクレオチド、当該ポリヌクレオチドが組込まれた発現ベクター、当該発現ベクターが導入されている形質転換体は、本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼの製造に好適に用いられる。
糸状菌、細菌、アーキアを含む多くの微生物は難培養性であり、土壌など微生物環境に生息する菌の99%が未知の菌であるといわれている。特に、高温環境に生息する微生物の培養は極めて困難であり、現在の微生物培養技術では土壌中に生息する微生物の0.1%以下を単離・培養しているにすぎないと考えられている。この高温土壌微生物の難培養性が、耐熱性酵素の開発が進まない一因である。
また、本発明及び本願明細書において、β−グルコシダーゼ活性とは、PNPGを基質とする加水分解活性を意味する。
(A)配列番号1、3、又は5で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(B)配列番号1、3、又は5で表されるアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも80℃、pH4.0の条件下でPNPXを基質とした加水分解活性を有するポリペプチド、
(C)配列番号1、3、又は5で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも80℃、pH4.0の条件下でPNPXを基質とした加水分解活性を有するポリペプチド。
本発明及び本願明細書において、「ポリペプチドにおいてアミノ酸が置換する」とは、ポリペプチドを構成しているアミノ酸が別のアミノ酸に変わることを意味する。
本発明及び本願明細書において、「ポリペプチドにおいてアミノ酸が付加される」とは、ポリペプチド中に新たなアミノ酸が挿入されることを意味する。
本発明に係るポリヌクレオチドは、本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼをコードする。当該耐熱性β−キシロシダーゼは、当該ポリヌクレオチドが組込まれた発現ベクターを宿主に導入することにより、当該宿主の発現系を利用して生産することができる。
(b)配列番号1、3、又は5で表されるアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも80℃、pH4.0の条件下でPNPXを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
(c)配列番号1、3、又は5で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも80℃、pH4.0の条件下でPNPXを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
(d)配列番号2、4、又は6で表される塩基配列と80%以上の配列同一性を有し、かつ少なくとも80℃、pH4.0の条件下でPNPXを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
(e)配列番号2、4、又は6で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドの塩基配列であり、かつ少なくとも80℃、pH4.0の条件下でPNPXを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列。
本発明及び本願明細書において、「ポリヌクレオチドにおいて塩基が置換する」とは、ポリヌクレオチドを構成している塩基が別の塩基に変わることを意味する。
本発明及び本願明細書において、「ポリヌクレオチドにおいて塩基が付加される」とは、ポリヌクレオチド中に新たな塩基が挿入されることを意味する。
本発明に係る発現ベクターは、前記本発明に係るポリヌクレオチドが組込まれており、宿主細胞において、少なくとも80℃、pH4.0の条件下でPNPXを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドを発現し得る。すなわち、前記本発明に係るポリヌクレオチドが、前記本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼを発現し得る状態で組込まれた発現ベクターである。具体的には、上流から、プロモーター配列を有するDNA、前記本発明に係るポリヌクレオチド、及びターミネーター配列を有するDNAからなる発現カセットが、発現ベクターに組込まれていることが必要である。なお、周知の遺伝子組み換え技術を用いることにより、ポリヌクレオチドを発現ベクターに組み込むことができる。ポリヌクレオチドの発現ベクターへの組み込みでは、市販の発現ベクター作製キットを用いてもよい。
本発明に係る形質転換体は、本発明に係る発現ベクターが導入されている。当該形質転換体中では、本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼを発現させ得る。発現ベクターを導入する宿主としては、大腸菌等の原核細胞であってもよく、酵母、糸状菌、昆虫培養細胞、哺乳培養細胞、又は植物細胞等の真核細胞であってもよい。大腸菌の形質転換体を培養することにより、本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼを、より簡便かつ大量に生産することができる。一方で、真核細胞内ではタンパク質に糖鎖修飾が施されるため、真核細胞の形質転換体を用いることにより、原核細胞の形質転換体を用いた場合よりも、より耐熱性に優れた耐熱性β−キシロシダーゼを生産し得る。
本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼの製造方法は、前記本発明に係る形質転換体内で、耐熱性β−キシロシダーゼを生産する方法である。前記本発明に係るポリヌクレオチドが、発現の時期等の制御能を有していないプロモーターの下流に組込まれている発現ベクターを用いて製造された形質転換体内では、本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼが恒常的に発現している。一方で、特定の化合物や温度条件等によって発現を誘導するいわゆる発現誘導型プロモーターを用いて製造された形質転換体に対しては、それぞれの発現誘導条件に適した誘導処理を行うことにより、当該形質転換体内に耐熱性β−キシロシダーゼを発現させる。
前記本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼ、又は前記本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼの製造方法によって製造された耐熱性β−キシロシダーゼと、少なくとも1種のその他のグリコシド加水分解酵素を含むグリコシド加水分解酵素混合物として使用することもできる。前記本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼの製造方法によって製造された耐熱性β−キシロシダーゼは、形質転換体内に含まれた状態のものであってもよく、形質転換体から抽出又は精製されたものであってもよい。本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼを、その他のグリコシド加水分解酵素との混合物として多糖類の加水分解反応に用いることにより、難分解性であるリグノセルロースをより効率よく分解させることができる。
本発明に係るリグノセルロース分解物の製造方法は、本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼにより、キシラナーゼによりへミセルロースが加水分解して生じたオリゴ糖、若しくはセロビオハイドロラーゼによりセルロースが加水分解して生じたオリゴ糖を単糖に加水分解する、リグノセルロース分解物を得る方法である。具体的には、ヘミセルロース若しくはセルロースを含む材料を、本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼ、本発明に係る形質転換体、本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼの製造方法によって製造された耐熱性β−キシロシダーゼ、又は本発明に係るグリコシド加水分解酵素混合物に接触させることにより、ヘミセルロース若しくはセルロース分解物を生産する。
<1> 温泉土壌からのDNA抽出と全ゲノムシーケンス(Whole Genome Sequence、WGS)
70〜90℃で活性を示す新規耐熱性β−キシロシダーゼの遺伝子探索を目的として、中性〜弱アルカリ性温泉から土壌DNAを採取し、これらの土壌を構成する微生物叢メタゲノムDNAの塩基配列解読を行った。
中性〜弱アルカリ性温泉土壌サンプルとして、野外にて高温の温泉が噴き出している日本国内の3ヶ所、5地点(メタゲノムDNAサンプルN2、AR19、AR15、OJ1、及びH1)から、土壌、泥、バイオマットを含む温泉水を採取した。これらの温泉土壌サンプルは、採取時の温度58〜78℃、pH7.2〜8のレンジにあった。
454シーケンサー及びHiseq2000シーケンサーで読みとられた塩基配列に対して、CLCbio社製のCLC Genomics Workbench(ver5.5.1)を用いてクオリティーフィルタリング及びDenovoアセンブリングを行った。クオリティーフィルタリング後には、454シーケンサーで得られたリードの総リード長は2,766,328bpとなり、Hiseq2000シーケンサーで得られた塩基配列データの総リード長は81,323,692,563bpとなった。アセンブリング後には、500bp以上の長さを持つコンティグの数は967,925個、総全長は419,787,603bpとなり、このうち最大コンティグ長は287,641bpであった。
UniProtデータベース(http://www.uniprot.org/)からEC番号が3.2.1.4(セルラーゼ)、3.2.1.21(β−グルコシダーゼ)、3.2.1.37(β−キシロシダーゼ) 、3.2.1.91(セルロース 1,4−β−セロビオシダーゼ)、3.2.1.8(エンド1,4−β−キシラナーゼ)の配列をダウンロードし(アクセス日:2011/12/9)、これらグリコシド加水分解酵素遺伝子のプロテオームローカルデータベースを構築した。アノテーションソフトウェアMetagene(Noguchi et al., DNA Research,2008,15(6))を使用して、前記<2>で得たコンティグ配列から、遺伝子領域(=オープンリーディングフレーム)を推定した(Metagene option:−m)。推定されたORFからグリコシド加水分解酵素遺伝子を抽出するために、BLASTP(blastall ver. 2.2.18)を使い、前記ローカルデータベースに参照した。BLASTPのoption条件は、「Filter query sequence=false」、「Expectation value(E)<1e−20」[以下、デフォルト値:Cost to open a gap=−1、Cost to extended gap=−1、X dropoff value for gapped alignment=0、Threshold for extending hits=0、Word size=default]とし、ヒットしたORF配列をグリコシド加水分解酵素遺伝子として収集した。収集された塩基配列は、セルラーゼ、エンドヘミセルラーゼ、脱分岐酵素等のグリコシド加水分解酵素を含んでいた。
前記<3>で収集された塩基配列について、タンパク質の機能領域配列データベースpfam HMMs(Pfam version 23.0 and HMMER v2.3;Finn et al.,Nucleic Acids Research Database,2010,Issue 38,p.D211-222)を基準に、機能分類を行った。具体的には、タンパク質モチーフ検索プログラムHMMER(Durbin et al.,‘The theory behind profile HMMs. Biological sequence analysis: probabilistic models of proteins and nucleic acids’, 1998,Cambridge University Press.;hmmpfam(Ver.2.3.2)、E−value cutoff<1e−5; Database=Pfam_fs(models that can be used to find fragments of the represented domains in a sequence.))を用いて、Pfam領域データベースとの相同性から、前記<3>で収集された各塩基配列についてグリコシド加水分解酵素(GH)ファミリーを決定した。なお、GH触媒ドメインの配列を70%以上カバーしているものを、各ファミリーに属する酵素遺伝子としてカウントした。
オープンリーディングフレームAR19M−311は、751アミノ酸残基からなるポリペプチド(配列番号1)をコードし、1位のアミノ酸残基がメチオニンから開始し、3’末端が終始コドンで終わる完全長配列(配列番号2)であった。モチーフの配列相同性から、オープンリーディングフレームAR19M−311は、18位のトレオニン(T)から342位のアラニン(A)までの325アミノ酸がGlycoside hydrolase family 3の触媒ドメインのN末端側ドメインであり、381位のイソロイシン(I)から616位のトレオニン(T)までの236アミノ酸がGlycoside hydrolase family 3の触媒ドメインのC末端側ドメインであり、651位のグルタミン酸(E)から720位のセリン(S)までの70アミノ酸がFibronectin type III様ドメインであるマルチドメインタンパク質をコードしていると推測された。シグナル配列予測ソフトウェアSignalP 4.1を使った解析によれば、開始コドンである1位のメチオニン(M)から17位までのアミノ酸配列はいかなる分泌シグナルもコードしておらず、機能は不明であった。
配列番号9で表される塩基配列からなるフォワードプライマー(5’−CACCATGGAAGAAAGATGGTTACAAAG−3’:配列番号7で表される塩基配列の5’末端側に4塩基(CACC)付加したもの。5’側に付加したCACCは、ベクターに挿入するための配列である。)と配列番号8で表される塩基配列からなるリバースプライマー(5’−TTAAGGTTCTATAATTACCTCGCTAG−3’)を用い、ゲノムDNA増幅キット(GenomiPhi V2 DNA Amplification Kit、GEヘルスケア社製)で増幅した温泉土壌DNAをテンプレートにして、PCRを行った。配列番号7で表される塩基配列は、配列番号2、4、又は6で表される塩基配列の1〜23位の塩基からなる部分配列と相同的な(同一の)塩基配列である。また、配列番号8で表される塩基配列は、配列番号2、4、又は6で表される塩基配列の2231〜2256位の塩基からなる部分配列と相補的な塩基配列である。増幅したPCR産物は、Champion pET Directional TOPO(登録商標) Expression Kits(ライフテクノロジーズ社製)のpET101/D−TOPOベクターに挿入し、One Shot TOP10株に形質転換した。コロニーPCRによりポジティブクローンを選抜し、100mg/Lアンピシリンを含むLB液体培地を用いて37℃、200rpmで17〜20時間培養した後、ミニプレップキット(Wizard(登録商標) plus SV Minipreps DNA Purification System、Promega社製)を用いてプラスミドの調製を行った。調製したプラスミドは、ライフテクノロジーズ社の3730 DNA Analyzerシーケンサーを用いて配列確認を行った。
シーケンス確認後、目的遺伝子(AR19M−311−2遺伝子及びAR19M−311−11遺伝子)をもつプラスミドを、ヒートショック法によりタンパク質発現用大腸菌へ導入した。形質転換用コンピテントセルは、Champion(登録商標) pET Directional TOPO(登録商標) Expression Kits(ライフテクノロジーズ社製)に付属するBL21 Star(DE3)株を用いた。目的の遺伝子をもつ大腸菌を100mg/Lアンピシリンを含むLB培地に植菌し、OD600=0.2〜0.8程度まで培養した後、IPTG(Isopropyl−β−D(−)−thiogalactopyranoside)を添加し、さらに5〜20時間培養することによって、目的タンパク質の発現誘導を行った。培養後、遠心分離を行って大腸菌を回収し、培養液の1/10容量の50mM Tris−HCl Buffer(pH8.0)を加えて懸濁した。その後、超音波破砕装置astrason3000(MISONIX社製)を用いて、5分間破砕−5分間休止工程を7〜8回繰り返し、目的タンパク質を含む遺伝子組換え大腸菌の粗抽出物を得た。当該遺伝子組換え大腸菌粗抽出物をフィルター(孔径φ=0.45μm、ミリポア社製)で濾過し、得られた濾液を遺伝子組換え大腸菌破砕上清とした。
精製したAR19M−311−2とAR19M−311−11の比活性を比較するため、それぞれのPNPX加水分解活性(β−キシロシダーゼ活性)を調べた。各酵素は、前記<7>で得られた精製酵素を水で10ng/μLに希釈した精製酵素溶液を用いた。
β−キシロシダーゼ活性測定には、PNPXを基質として用いた。PNPX(Sigma社製)を水で溶かし、3.4mMとなるように調整したものを、基質溶液として用いた。なお、以降の実験に用いたPNPX基質溶液は、全て当該方法により調製した3.4mMのPNPX水溶液を用いた。
AR19M−311−2に対して、様々なセルロース基質とヘミセルロース基質に対する加水分解活性を調べた。計測には、前記<7>で得られた精製酵素を水で10ng/μLに希釈した精製酵素溶液を用いた。また、基質として、PSA、アビセル粉末、CMC(Sigma社製)、キシラン(ブナ材由来、Sigma社製)、リケナン(MP Biomedicals社製)、ラミナリン(Laminaria digitata由来、Sigma社製)、PNPX(Sigma社製)、PNPG(Sigma社製)を用いた。
PSAはリン酸溶液でアビセル粉末(微結晶性セルロース粉末、Merck社製)を一旦溶解させた後に滅菌蒸留水を加えて析出させた後、pHが5以上になるまで洗浄することによって調製した。なお、以降の実験に用いたPSAは全て当該方法により調製した。
AR19M−311−2のPNPX加水分解活性の温度依存性及びpH依存性を調べた。計測には、前記<7>で得られた精製酵素を水で10ng/μLに希釈した精製酵素溶液を用いた。
Differential scanning fluorimetry (DSF)は、蛍光色素とリアルタイムPCR装置を用いて、タンパク質の熱変性を計測する方法の一つであり、様々なタンパク質に応用可能である。SYPRO Orange等、DSFに使われる蛍光色素は、疎水性部位と結合する無極性条件下で蛍光を発し、一方、水に溶けた極性条件下では発光が抑えられる。通常、タンパク質はその熱変性温度において折畳み構造が解け、内部にある疎水性部位がタンパク質表面に露出する。この露出した疎水性部位にSYPRO Orangが結合すると、波長470〜480nmの励起光により、波長595nm付近にピークを持つ強い蛍光を発する。タンパク質溶液の温度を一定間隔で段階的に上昇させ、蛍光強度を計測することにより、熱崩壊温度(=蛍光強度の変化点)が算出される。
具体的には、96穴PCRプレート(Multiplate 96 Well PCR Plate MLL−9651、Bio−Rad社製)のウェルに100倍希釈したSYPRO Orange(ライフテクノロジーズ社製)を2μL、濃度1mg/mLの精製酵素溶液を1μL、200mM 酢酸バッファー(pH4.0)を5μL、精製水を12μL加え、各ウェルの容積を20μLとした。PCRプレートはOptical 8連フラットキャップ(Bio−Rad社製)でシールし、リアルタイムPCR装置(CFX96 Touch Real−Time PCR System、Bio−Rad社製)で0.2℃ずつ、30℃から100℃までウェルの温度を上昇させ、ターゲット温度が達成されてから10秒間経過した後、各ウェルの蛍光強度を同時計測した。波長帯域450〜490nmの光発光ダイオード(LED)によりSYPRO Orangeを励起し、SYPRO Orange放射光は560〜580nmレンジの帯域通過フィルターを通し、CCDカメラで蛍光強度の計測を行い、蛍光強度変化を温度の関数としてプロットした。リアルタイムPCRに付属の解析ソフトウェアCFX Manager(Bio−Rad社製)を使い、データ解析を行った。
Claims (10)
- (A)配列番号1、3、又は5で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(B)配列番号1、3、又は5で表されるアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも80℃、pH4.0の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチド、又は
(C)配列番号1、3、又は5で表されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも80℃、pH4.0の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチド、
からなるβ−キシロシダーゼ触媒領域を有することを特徴とする、耐熱性β−キシロシダーゼ。 - β−グルコシダーゼ活性を有する、請求項1に記載の耐熱性β−キシロシダーゼ。
- (a)配列番号1、3、又は5で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列、
(b)配列番号1、3、又は5で表されるアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも80℃、pH4.0の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
(c)配列番号1、3、又は5で表されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも80℃、pH4.0の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、又は
(d)配列番号2、4、又は6で表される塩基配列と90%以上の配列同一性を有し、かつ少なくとも80℃、pH4.0の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
からなるβ−キシロシダーゼ触媒領域をコードする領域を有する、ポリヌクレオチド。 - 前記ポリペプチドが、β−グルコシダーゼ活性も有する、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
- 請求項3又は4に記載のポリヌクレオチドが組込まれており、
宿主細胞において、β−キシロシダーゼ活性を有するポリペプチドを発現し得る、発現ベクター。 - 請求項5に記載の発現ベクターが導入されている、形質転換体。
- 真核微生物である、請求項6に記載の形質転換体。
- 請求項6又は7に記載の形質転換体内で、耐熱性β−キシロシダーゼを生産することを含む、耐熱性β−キシロシダーゼの製造方法。
- 請求項1若しくは2に記載の耐熱性β−キシロシダーゼ、又は請求項3若しくは4に記載のポリヌクレオチドがコードする耐熱性β−キシロシダーゼと、少なくとも1種のその他のグリコシド加水分解酵素とを含む、グリコシド加水分解酵素混合物。
- セルロースを含む材料を、請求項1若しくは2に記載の耐熱性β−キシロシダーゼ、請求項3若しくは4に記載のポリヌクレオチドがコードする耐熱性β−キシロシダーゼ、又は請求項9に記載のグリコシド加水分解酵素混合物に接触させることにより、リグノセルロース分解物を生産することを含む、リグノセルロース分解物の製造方法。
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