JP3752295B2 - エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規なアスパラギン結合型糖蛋白質分解酵素(エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ) 及びその製造方法に関する。本酵素はアスパラギン結合型糖蛋白質、特に植物型糖蛋白質のN, N'-ジアセチルキトビオース結合を切断し、化学試薬等として有用である。
【0002】
【従来の技術】
近年、高等動植物に存在する糖蛋白質や糖脂質などの複合糖質の糖鎖部分の構造及び機能解析が盛んに行なわれており、細胞の分化や細胞間認識、細胞の癌化と糖鎖異常の関係など、糖鎖の重要性が示唆されている。複合糖質の構造や機能を調べるには、糖鎖と蛋白質や脂質などを傷つけることなく分離する必要があり、いろいろな糖質分解酵素が用いられている。なかでもエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼは、アスパラギン結合型糖蛋白質糖鎖のコア部分に存在する N, N'- ジアセチルキトビオース間に作用し糖鎖を遊離する酵素で、糖鎖の構造及び機能解析に有用である。現在、なたまめ由来 (特公平 6-16705号公報) 、ブレビバクテリウム由来 (特公平 2-76580号公報) 、フラボバクテリウム由来(Agric. Biol. Chem. 50 421 (1986))、ストレプトマイセス属由来 (J. Biochem. 76 307 (1974))などのエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの報告がある。しかし、植物糖蛋白質に見出されている、α1, 2キシロシル基の分岐結合、またはα1, 2キシロシル基及びα1, 3フコシル基の分岐結合を有するアスパラギン結合型糖蛋白質に直接作用し、そのコア構造である N, N'- ジアセチルキトビオース間を切断してオリゴ糖を生成するエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼについての報告は全くなされていない。
【0003】
従来、シカモアカエデ由来ポリフェノールオキシダーゼやパイナップル由来ブロメリン、西洋わさび由来パーオキシダーゼなど、α1, 2キシロシル結合や、α1, 3フコシル結合を有する、植物特有のアスパラギン結合型糖蛋白質から糖鎖を遊離させるには、一般的に以下の方法が行なわれてきた。すなわち、化学的には、水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤の存在下アルカリ中で加熱する方法と、ヒドラジン分解法とが行なわれてきた。しかし前者の方法では、α1, 3結合したフコシル基がアルカリによりβ脱離を起こしてしまう。また後者の方法は蛋白質のC末端アミノ酸の同定法として開発されたため、蛋白質を変化させることなく分離することが出来ない。一方、酵素的な糖鎖遊離方法として次の2つの方法が行なわれてきた。1つは、エキソ型糖蛋白質糖鎖分解酵素によりα1, 2キシロシル結合やα1, 3フコシル結合を糖鎖より除去した後に、既存のエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼやコア部分のN−アセチルグルコサミンとアスパラギンとの間を切断するN−グリカナーゼを作用させる方法、他の1つは、蛋白質分解酵素で蛋白部分を消化した後に、グリコペプチダーゼを作用させる方法である。しかし、これらの方法では、少なくとも2段階の酵素処理を行なう必要がある上に、糖鎖部分及び蛋白質部分を損なうことなく分解することは出来ない。さらにN−グリカナーゼ及びグリコペプチダーゼは、アミダーゼであるため、酵素作用により糖鎖の結合していたアスパラギン残基が、アスパラギン酸に変換されてしまう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来におけるこれらのアスパラギン結合型糖蛋白質から糖鎖を遊離させる方法の問題点を解決するためになされたものである。すなわち、本発明の課題は、α1, 2キシロシル結合や、α1,3 フコシル結合を有する、植物特有のアスパラギン結合型糖蛋白質に作用し、糖鎖部分及び蛋白質部分を損なうことなく、糖鎖を遊離しうるエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ及びその製造方法を提供するたとにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を微生物学的に解決するために、多数の微生物の産生する酵素を検索した結果、次の性質を有する酵素を生産するミコスフェレラ (Mycosphaerella) 属に属する糸状菌を見出した。そしてその培養物より上記課題を解決しうる新規なエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼを単離することに成功し、本発明を完成させた。
本発明のエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼは、次の酵素学的及び理化学的性質を有する;
(1) 作用; アスパラギン結合型糖蛋白質にエンド型に作用し、糖鎖を遊離する
(2) 基質特異性;
1)アスパラギン結合型糖蛋白質糖鎖のコア構造に存在する N, N'- ジアセチルキトビオース間を切断してオリゴ糖を生成するが、単糖は生成しない、
2)α1, 2キシロシル基の分岐結合、またはα1, 2キシロシル基及びα1, 3フコシル基の分岐結合を有するアスパラギン結合型糖蛋白質のコア構造に存在するN, N'-ジアセチルキトビオース間を切断してオリゴ糖を生成するが、単糖は生成しない、
(3) ミカエリス定数(Km); 0.36mM (ダンシル化ブロメリン糖ペプチドに対して)
(4) 至適pH; 約6.0
(5) 安定pH; 5.5 〜7.0
(6) 至適温度; 約35℃
(7) 温度安定性; 約30℃以下
(8) 阻害; 銅イオン、水銀イオン、鉄イオン及びEDTAにより酵素活性が阻害される、
(9) 分子量; 約 89,000(ゲル濾過法による) または約90,000(SDS−PAGEによる)
【0006】
さらに本発明は、ミコスフェレラ (Mycosphaerella) 属に属し、上記エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼを生産することが出来る微生物を培養し、培養物中に該エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼを産生させ、この培養物から該エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼを採取することよりなるエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの製造方法に関する。
本発明の微生物の培養において、パイナップル由来のブロメリン、西洋わさび由来のパーオキシダーゼ等の酵素誘導剤、特にブロメリンを培地に添加するとエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼを収率よく産生させることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼは、ミコスフェレラ(Mycosphaerella) 属に属し、この酵素を産生することのできる糸状菌を培養し、培養物中にこの酵素を産生せしめ、培養物からこの酵素を採取することにより得ることができる。
この酵素を産生することのできる糸状菌には、例えば、ミコスフェレラ リグリコーラ (Mycosphaerella ligulicola) OMLを挙げることができる。この糸状菌は、花腐病の菊から通常の糸状菌を分離する方法によって採取することができる。
【0008】
この糸状菌の菌学的特徴は、次のとおりである。
分生胞子(柄胞子)
色; 無色
大きさ; 7〜15μm × 2.5〜 4μm
形状; −隔壁。楕円形。中央隔壁部はややくびれる。
分生子; 分生子殻(柄子殻)の中に形成される。
柄子殻
色; 暗褐色または黒色
大きさ; 直径 100〜200 μm
形状; 球形。孔口を生じる。
培養基中では、1μm ×2 μm 程度の単胞の柄胞子を生ずる。
この糸状菌は、全国農材教育協会発行 小林等著「植物病原菌類図説」, 講談社発行 宇田川等著「菌類図鑑」及び C.T.Alexopocdos等著「Industry Mycology」を参考にして検索した結果、分生胞子及び柄子殻の点からみてミコスフェレラ リグリコーラ (Mycosphaerella ligulicola) と判定され、ミコスフェレラリグリコーラ (Mycosphaerella ligulicola) OMLと命名した。
【0009】
前記糸状菌ミコスフェレラ リグリコーラ (Mycosphaerella ligulicola) OMLの菌株は、岡山大学農学部で分離保存されている。また、本菌は植物病原菌であるため工業技術院生命工学工業技術研究所から受託拒否を受けている。本発明の酵素の製造のための生産菌は上記のものに限らず、糸状菌の分離のための定法に従って単離された糸状菌または保存されている糸状菌、またはその変異株を後記のように培養後、培養物中の目的酵素を取得することにより可能である。
【0010】
本発明の酵素の培養は、前記の生産菌を、通常の微生物の培養に用いられている培地で培養して行なう。炭素源としては、例えば、グルコース、シュクロース、マルトース、澱粉、グリセロールなどが挙げられる。また、窒素源としては、例えば、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、コーンスティープリカー、アミノ酸、各種アンモニウム塩、各種硝酸塩、尿素などが挙げられる。場合によっては各種無機塩やビタミン類を、菌の生育を促進する目的で添加してもよい。これらの成分の培地中の濃度は、特に限定されないが、通常、炭素源は 0.1〜5 %、窒素源は0.01〜5 %、微量要素は0.0001〜1 %の範囲で好ましい。また、本発明の酵素を誘導的に産生させるために、パイナップル由来ブロメリンや西洋わさび由来パーオキシダーゼなどを単独または混合して添加してもよい。これら誘導剤の生産培地中での濃度は 0.1〜5 %、好ましくは 1〜3 %前後である。
【0011】
酵素の産生は、前記生産菌を前培地にて増殖させ接種菌液を調製し、これを生産培地に接種して酵素生産を行なうのが望ましい。培養は15〜30℃において、好気的に行なうことが望ましい。好気的環境は振とう、通気、撹拌などにより形成しうる。培養期間は48〜144 時間が望ましい。
本発明の酵素は主として培養液中に分泌されるので、酵素生産を行なった培養液を、濾過や遠心分離などの通常の方法により菌体を除去することにより粗酵素液を得ることが出来る。次にこれを硫安沈澱や各種クロマトグラフィーなどの酵素精製の常法を行なって本発明の酵素を単離精製することができる。また、本発明では、前記粗酵素液を酵素として用いてもよい。
【0012】
このようにして得られたエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼは、次のような酵素学的及び理化学的性質を示す。
(1) 作用;
アスパラギン結合型糖蛋白質はエンド型に作用し、糖鎖を遊離する、
(2) 基質特異性;
1)アスパラギン結合型糖蛋白質糖鎖のコア構造に存在する N, N'- ジアセチルキトビオース間を切断してオリゴ糖を生成するが、単糖は生成しない。
2)α1, 2キシロシル基の分岐結合、またはα1, 2キシロシル基及びα1, 3フコシル基の分岐結合を有するアスパラギン結合型糖蛋白質のコア構造に存在するN, N'-ジアセチルキトビオース間を切断してオリゴ糖を生成するが、単糖は生成しない、
(3) ミカエリス定数(km); 0.36mM (基質としてダンシル化ブロメリン糖ペプチドを用い Lineweaver-Burkの逆数プロットにより求めた。)
(4) 至適pH; 約 6.0 (ただし、50mM 酢酸緩衝液中で30℃における至適pH (図1 参照))。
(5) 安定pH; 5.5〜7.0 (ただし、50mM 酢酸及びトリス塩酸緩衝液中で30℃、24時間保持したときの安定pH (図2参照))。
(6) 至適温度; 約35℃ (ただし、50mM 酢酸緩衝液中でpH6.0 、10分間反応における至適温度 (図3参照))。
(7) 温度安定性; 約30℃以下 (ただし、pH 6.0の酢酸緩衝液中で30分間保持したときの温度安定性 (図4参照))。
(8) 阻害; 2価の銅イオン、水銀イオン、鉄イオン及びEDTAにより酵素活性が阻害される(表1参照)。
(9) 分子量; 約 89,000(ただし、 “セファデックス G-150 (商標)"のカラム (1.5 ×110 cm) に、0.1M NaCl を含む 10mM リン酸緩衝液(pH7.0) の、流速 5ml/hr でゲル濾過を行なったときの分子量)(図5参照)。または約90,000 (ただし、SDS-PAGEを行なったときの分子量)(図6参照)。
【0013】
【表1】
【0014】
本発明の酵素活性の測定のために用いる基質のダンシル化ブロメライン糖ペプチドは次のとおりにして調製される。
市販ブロメライン5g を10mMリン酸緩衝液 (pH7.0)100 mlに溶解し、あらかじめ10mMリン酸緩衝液(pH7.0) で平衡化した “CM−Sephadex C50 (商標) “ カラム(4.8×20cm) にかけ、NaCl濃度を上げるリニアグラジエントにより、吸着蛋白質の溶出を行い、ブロメライン画分を回収する。得られた画分を濃縮し、10mMリン酸緩衝液に対して4 ℃にて1 晩透析後、80〜82℃、15分加熱後冷却する。pHを7.4 に調整後プロナーゼ20mgを加えて37℃で1 晩消化させる。反応物を濃縮後ゲル濾過カラムにかけ糖ペプチド画分を得る。プロナーゼ消化を5 回繰り返した後、糖ペプチド画分をダンシルクロライドと常法により反応させ、ダンシル化ブロメライン糖ペプチドを得る。
【0015】
また、本発明の酵素活性は、この基質を用いて、次のとおりにして測定される。
基質1.2 mM、酢酸緩衝液50mM及び酵素液からなる反応液50μl を30℃にて15分反応させる。100 ℃に加熱して反応を停止させた後、フコシル基及びN−アセチルグルコサミル基のみを等量含有するダンシル化糖ペプチドをHPLCにて検出する。HPLCの条件は以下の通りである。
カラム; TSKgel ODS 80Ts
カラム温度; 40℃
溶剤; 8%アセトニトリル含有 25mM ほう酸緩衝液(pH 7.3)
流速; 1 ml/ 分
検出; 蛍光検出 (Ex. 313nm, Em. 540nm)
また、1 分間に 1μmol のフコシルα1−3N−アセチルグルコサミンβ1−ダンシルアスパラギンペプチド(Fucα1-3Glc NAcβ1-DNS-Asn-peptide)を生じる酵素量を1ユニットとする。
【0016】
次に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例1】
(酵素の調製)
ブロメライン1%、酵母エキス0.5 %、ポリペプトン0.5 %及びNaCl 0.2%からなる培地(pH6.5) 7mlを入れた試験管にミコスフェレラ リグリコーラ (Mycosphaerella ligulicola) OMLを1白金耳接種し、20℃で2日間培養後、同様の培地 100mlを入れた 500ml容振とうフラスコに接種し、20℃2日間培養後、同様の培地1.5Lを入れた 2L 容ジャーファーメンターに接種し、20℃4日間通気攪拌し培 養した。培養液中の総酵素活性は95ユニットであった (工程I)。
培養液1.5Lを遠心分離し、菌体を除去した上澄を粗酵素液とした。これに硫安を90%飽和となるように加え、4℃にて1晩放置後、遠心分離して沈澱を得た。
これを10mMリン酸緩衝液(pH6.5) で懸濁した後、同じ緩衝液に対して4℃にて1晩透析し、酵素94ユニットを得た (工程II) 。
この酵素液を、あらかじめ10mMリン酸緩衝液(pH6.5) で平衡化した“DEAE-Cellulofine A-500(商標)"カラム(5.5cm×21cm) にかけ、同緩衝液で洗浄後、NaCl濃度を上げるステップワイズグラジエントにより、吸着蛋白質の溶出を行い、0.2MNaClで溶出される活性画分を回収した。
得られた酵素液を10mMリン酸緩衝液(pH6.5) に対して4℃にて1晩透析し、酵素81ユニットを得た(工程III)。
【0017】
この酵素液をもう一度 “DEAE-Cellulofine A-500 (商標)"カラム(2.6cm×17cm) にかけ、同緩衝液で洗浄後、NaCl濃度を上げるリニアグラジエントにより、吸着蛋白質の溶出を行い、活性の高い画分を回収した。
得られた酵素液を10mMリン酸緩衝液(pH7.0) に対して4℃にて1晩透析し、酵素23ユニットを得た (工程IV) 。
この酵素液を、あらかじめ10mMリン酸緩衝液(pH7.0) で平衡化した “Gigapite (商標)"カラム(1.6cm×20cm) にかけ、同緩衝液で洗浄後、緩衝液のモル濃度を上げるリニアグラジエントにより、吸着蛋白質の溶出を行い、活性画分を回収した。
得られた酵素液を10mMリン酸緩衝液(pH7.0) に対して4℃にて1晩透析し、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの精製酵素10ユニットを得た(工程V)。
この方法によるエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの各精製工程における活性を表2に示す。
【0018】
【表2】
【0019】
【実施例2】
(各種基質に対する作用)
実施例1で得られた精製酵素0.5 ミリユニットを、常法により調製した各種ダンシル化糖ペプチド 1.2nmolと50mM酢酸緩衝液(pH6.0) 中で30℃で1時間反応させ、反応生成物をHPLCで検出し、基質特異性を調べた。その結果を表3に示す。
【0020】
【表3】
【0021】
【実施例3】
(各種基質に対する作用)
実施例1で得られた精製酵素0.05ユニットを、常法により調製した各種ピリジルアミノ化糖30pmolと50mM酢酸緩衝液(pH6.0) 中で30℃6時間反応させ、反応生成物をHPLCで検出し、基質特異性を調べた。この結果を表4に示す。反応生成物のHPLCパターンより、この酵素が、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼであることが確認された。
【0022】
【表4】
【0023】
【実施例4】
実施例1により得られた精製酵素1ミリユニットを、西洋わさび由来パーオキシダーゼ10μg と50mM酢酸緩衝液(pH6.0) 中で30℃で18時間反応させ、反応前後の分子量の変化をSDS-ポリアクリルアミド電気泳動にて検出した。ゲルを蛋白染色及び糖染色を行った。酵素作用後の西洋わさび由来パーオキシダーゼの分子量は約5000低下し、糖染色性が弱まっていた。この結果、本発明の酵素が、アスパラギン結合型糖蛋白質に直接作用することが確認された。
【0024】
【発明の効果】
本発明の酵素は、α1,2 キシロシル基の分岐結合、またはα1,2 キシロシル基及びα1,3 フコシル基の分岐結合を有するアルパラギン結合糖蛋白質のコア構造に存在する N,N'-ジアセチルキトビオース間に、プロテアーゼやエキソ型グリコシダーゼによる前処理することなく直接作用し、オリゴ糖を遊離させることができる。さらに本発明の酵素の作用により得られる、α1,2 キシロシル基の分岐結合、またはα1,2 キシロシル基及びα1,3 フコシル基の分岐結合を有する糖鎖及び N,N'-ジアセチルキトビオース間を切断されたアスパラギン結合型糖蛋白質は、本発明の酵素の作用部位以外になんら損傷を受けることがない。
従って、本発明の酵素は、α1,2 キシロシル基の分岐結合、またはα1,2 キシロシル基及びα1,3 フコシル基の分岐結合を有するアスパラギン結合型糖蛋白質の構造及び機能解析の研究にきわめて有用であり、試薬として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の酵素のpHと相対活性との関係を示す。
【図2】本発明の酵素のpHと残存活性との関係を示す。
【図3】本発明の酵素の温度と相対活性との関係を示す。
【図4】本発明の酵素の温度と残存活性との関係を示す。
【図5】本発明の酵素のSDS-PAGEによる分子量測定結果を示す。
【符号の説明】
M:スタンダード
S:本発明の酵素
【図6】本発明の酵素のゲル濾過法による分子量測定結果を示す。
Claims (5)
- 次の酵素学的及び理化学的性質を有するエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ。
(1) 作用;
アスパラギン結合型糖蛋白質にエンド型に作用し、糖鎖を遊離する、
(2) 基質特異性;
1)アスパラギン結合型糖蛋白質糖鎖のコア構造に存在する N, N'−ジアセチルキトビオース間を切断してオリゴ糖を生成するが、単糖は生成しない、
2)α1, 2キシロシル基の分岐結合、またはα1, 2キシロシル基及びα1, 3フコシル基の分岐結合を有するアスパラギン結合型糖蛋白質のコア構造に存在するN, N'-ジアセチルキトビオース間を切断してオリゴ糖を生成するが、単糖は生成しない、
(3) ミカエリス定数(Km); 0.36mM (ダンシル化ブロメリン糖ペプチドに対して)
(4) 至適pH; 約6.0
(5) 安定pH; 5.5〜7.0
(6) 至適温度; 約35℃
(7) 温度安定性; 約30℃以下
(8) 阻害; 銅イオン、水銀イオン、鉄イオン及びEDTAにより酵素活性が阻害される、
(9) 分子量; 約 89,000(ゲル濾過法による) または約 90,000(SDS-PAGEによる) - 糖蛋白質が、糖ペプチドやアミノ酸の結合したオリゴ糖をも含むものである請求項1記載のエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ。
- ミコスフェレラ (Mycosphaerella) 属が産生する請求項1または2記載のエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ。
- ミコスフェレラ (Mycosphaerella) 属に属し、請求項1記載の酵素学的及び理化学的性質を有するエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼを産生することが出来る微生物を培養し、培養物中に該エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼを産生せしめ、この培養物から該エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼを採取することを特徴とする、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの製造方法。
- ブロメリンを炭素源として用いて培養を行なう請求項4記載のエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの製造法。
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