JP6888207B2 - 糖ペプチド又は糖蛋白質の製造方法 - Google Patents

糖ペプチド又は糖蛋白質の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、糖ペプチド又は糖蛋白質の製造方法に関する。
蛋白質を含む製剤中のペプチドや蛋白質の多くは、糖鎖を有する化合物(以下、糖ペプチド又は糖蛋白質という)である。糖蛋白質が有する糖鎖には、N−結合型糖鎖やO−結合型糖鎖が知られているが、中でもN−結合型糖鎖は蛋白質の機能や構造の維持に重要な影響を及ぼすことが知られており、その中でもヒト型糖鎖と呼ばれる複合型糖鎖が重要である場合が多い。
このような背景から、糖蛋白質の大量調製が求められるようになり、遺伝子工学的な方法により作製した細胞を培養する方法での調製が行われるようになった。しかし、このような手法で得られた糖蛋白質のN−結合型糖鎖は、一定した構造のものではなく、数種から数十種類以上の糖鎖が結合した糖蛋白質であり、均一の構造を有していない混合物である場合がほとんどであることから、近年、糖鎖部分を複合型糖鎖等に変換させることが課題の一つとなっている。
糖蛋白質製造において、糖鎖を制御する方法としては、糖転移酵素の遺伝子を導入した細胞を用いる方法が知られている(例えば特開2014−54263号公報参照)。これによって、哺乳類が有する糖鎖型、すなわち複合型糖鎖を高含有率で有する糖蛋白質が得られている。
また、高い機能を有する糖蛋白質としては、抗体が挙げられる。
抗体は、高い結合活性、高い結合特異性及び血中での安定性から、ヒトの各種疾患に対する診断や予防のみならず、治療にも用いられてきた。特に、細胞工学技術の進歩により、抗体は培養細胞によって大量に調製が可能となり、抗体医薬品の主成分として用いられるようになった。
抗体医薬品に用いられる免疫グロブリン(IgG)の中でもIgG1は、高い抗体依存性細胞傷害性活性(以下、ADCC活性と称する)や補体依存性細胞傷害性活性(以下、CDC活性と称する)などのエフェクター機能を有していることが知られている。近年、治療用として用いられているリツキサンやハーセプチンなどの抗体は、このような活性による抗腫瘍効果を主要な効能とするものである。
ADCC活性やCDC活性には、IgGが有する2つのN−結合型糖鎖が強く影響することが知られており、特にIgG1の297番目のアスパラギンに結合する2つのN−結合型糖鎖について、フコースを欠いた構造のN−結合型糖鎖を有するIgG1は、顕著なADCC活性の上昇を引き起こすことが報告されている(例えばShitara他、[J. Biol. Chem. Vol.278, 3466-3473, (2003)]参照)。また、N−結合型糖鎖に関しては、複合型糖鎖、ハイマンノース型糖鎖及びハイブリッド型糖鎖が知られているが、この中でも特定の複合型糖鎖がADCC活性やCDC活性に重要であることが報告されている(例えばPablo他、[Nat. Biotechnol. Vol.17, 176-180, (1999)]参照)。
しかし、上記の培養細胞等で得られるIgGは、フコースが付加されたものがほとんどであり、かつ非常に多種のN−結合型糖鎖を有する混合物である。
これに対し、フコースを欠いた構造のN−結合型糖鎖を有するIgG1に関しては、フコースをN−結合型糖鎖に付加させる酵素(フコシル転移酵素)を欠損させたチャイニーズハムスター由来の培養細胞によって生産できることが示されている(例えば特開2008−530243号公報参照)。
一方、糖蛋白質に新たな糖鎖を、試験管内で導入する方法も考えられる。
糖蛋白質の糖鎖を酵素によって変換する方法としては、糖質加水分解酵素(エンド−β−Nアセチルグルコサミニダーゼ、以下「エンド酵素」という)の糖鎖転移活性を利用する方法が古くから知られている(例えば特開平7−59587号公報参照)。エンド酵素の存在下、糖鎖供与体となる複合型のN−結合型糖鎖と、糖鎖受容体となる、Nアセチルグルコサミンのみをアスパラギン残基に有する糖蛋白質と、を反応させて、複合型糖鎖を有する糖ペプチドや糖蛋白質を得ることができる。
また、エンド酵素の糖鎖転移活性を向上させるために、酵素活性に必須のアミノ酸残基を変異させた変異体(以下、エンドM変異体という)を作成することで、糖鎖受容体に対し、少ない糖鎖供与体の量で効率的に糖鎖転移が可能であることが報告されている(例えばUmekawa他、[J. Biol. Chem. Vol. 285(1), 511-521, (2010)]参照)。
さらに、複合型糖鎖のIgGへの導入に関しては、Nアセチルグルコサミンをアスパラギン残基に有するIgG1ポリペプチド(以下、GlcNAc−IgG1という)に、化学合成した複合型糖鎖のオキサゾリン誘導体を糖供与体とし、上記とは別のエンド酵素の変異体の作用によって、複合型糖鎖を高い含有率で有するIgG1の調製方法が報告されている(例えば国際公開第2013120066号参照)。
上記の方法において、細胞を使用して複合糖鎖を有する糖ペプチドや糖蛋白質を得る方法(特開2014−54263号公報及び特開2008−530243号公報、Shitara他、[J. Biol. Chem. Vol.278, 3466-3473,(2003)]及びPablo他、[Nat. Biotechnol. Vol.17, 176-180, (1999)])では、糖鎖としては不均一であり、さらに他の糖鎖(ハイマンノース型糖鎖)等の混在は避けられない。
また、特開平7−59587号公報に記載の方法で用いられる毛カビ由来のエンド−β−Nアセチルグルコサミニダーゼ(以下、「エンドM」という)は、加水分解酵素であるため、糖鎖転移反応によって一旦糖鎖転移された糖ペプチドや糖蛋白質を生成しても、酵素的に加水分解されることは避けられず、結果的に糖鎖転移収率が低い。
一方、加水分解活性を極力低減させたUmekawa他、[J. Biol. Chem. Vol. 285(1), 511-521, (2010)]のエンドM変異体及び国際公開第2013120066号に記載のエンド酵素の変異体では、糖鎖供与体として、室温では不安定なオキサゾリン誘導体を使用するため、使用できる条件が制限されるばかりか、糖鎖の種類によっては糖鎖供与体の調製自体も困難である。
このように、エンドM変異体による複合型糖蛋白質の容易な製造方法が望まれていた。
本開示は上記に鑑みてなされたものであり、本開示では、安定な糖鎖供与体を用いて、特定の複合型糖鎖を高い含有率で有する糖蛋白質又は糖ペプチドを容易に製造できる製造方法の提供を課題とする。
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 配列番号1で示されるアミノ酸配列の175番目のアミノ酸残基がグルタミン、又はアラニンであるアミノ酸配列を有する変異型エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ、あるいは配列番号1で示されるアミノ酸配列の175番目のアミノ酸残基がグルタミン又はアラニンであるアミノ酸配列を有する変異型エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼであって、かつ配列番号1で示されるアミノ酸配列の175番目のアミノ酸残基以外の1個又は複数個のアミノ酸残基の欠失、付加及び又は置換により、前記アミノ酸配列に対して80%以上の相同性の範囲内で修飾されたアミノ酸配列を有する変異型エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの存在下、下記一般式(1)で表される糖鎖供与体と、糖鎖受容体と、を反応させることにより糖ペプチド又は糖蛋白質を製造する方法である。
Figure 0006888207

(一般式(1)中、XおよびX2は、それぞれ独立の糖質由来の基又は水素原子を表し、XおよびX2の少なくとも一方は、1つ以上のGlcNAc又はGlcNAcAを含み、XおよびX2に含まれるGlcNAc又はGlcNAcAは、α1−3でManに結合したMan又はα1−6でManに結合したManにβ1−2で結合している。X、X、XおよびX6は、それぞれ独立に水素原子又は糖質由来の基を表す。Zは、水素原子又はGlcNAcを表し、Zに含まれるGlcNAcはβ1−4でGlcNAcに結合したManにβ1−4で結合している。Yは一価の置換基を表す。GlcNAcはN−アセチルグルコサミニル基を表し、GlcNAcAはGlcNAcの6位のヒドロキシメチル基がカルボキシル基である糖残基を表す。β1−4はGlcNAcの1位とGlcNAcの4位とのβグリコシド結合又はManの1位とGlcNAcの4位とのβグリコシド結合を表す。Manはマンノシル基を表し、α1−6はManの1位とManの6位とのαグリコシド結合を表し、α1−3はManの1位とManの3位とのαグリコシド結合を表す。)
本開示においてYに結合するGlcNAcは、GlcNAcの1位の還元末端の炭素に結合する水素原子以外の置換基の原子を含まない。
<2> 前記糖鎖受容体が下記一般式(2)で表される<1>に記載の糖ペプチド又は糖蛋白質の製造方法である。
GlcNAc−R 一般式(2)
(一般式(2)中、Rは一価の置換基を表す。GlcNAcはN−アセチルグルコサミニル基を表す。)
<3> 前記糖鎖受容体が、定常領域にN−アセチルグルコサミニル基が結合したIgGポリペプチドである<1>又は<2>に記載の糖ペプチド又は糖蛋白質の製造方法である。
<4> 前記一般式(1)中、X、X、X、X、XおよびXの少なくとも1つは糖質由来の基であり、前記糖質由来の基は、オリゴ糖残基と、アジド基、アルキニル基、エポキシ基、アミノ基、チオール基及びイソシアネート基から選ばれるいずれか一つの基とが、リンカーを介して結合した構造を有する基である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の糖ペプチド又は糖蛋白質の製造方法である。
<5> 前記一般式(1)中、Z、X、X、XおよびXが水素原子であり、Xがα1−6でManに結合したManにβ1−2でGlcNAcAが結合している糖質由来の基であり、Xがα1−3でManに結合したManにβ1−2でGlcNAcAが結合している糖質由来の基である<1>〜<4>のいずれか1つに記載の糖ペプチド又は糖蛋白質の製造方法である。
<6> 前記反応を、糖鎖供与体の糖鎖受容体に対するモル比率(糖鎖供与体のモル数/糖鎖受容体のモル数)5以上で行うことで免疫グロブリンGを製造する<1>〜<4>のいずれか1つに記載の糖ペプチド又は糖蛋白質の製造方法である。
<7> 前記モル比率は1〜4である<6>に記載の糖ペプチド又は糖蛋白質の製造方法である。
本開示によれば、安定な糖鎖供与体を用い、特定の複合型糖鎖を高い含有率で有する糖蛋白質又は糖ペプチドを容易に製造できる製造方法を提供できる。
図1は、モガムリズマブ(IgG)のエンドMによる各処理時間での試料を還元処理した後にCE測定した図である。 図2は、モガムリズマブ(IgG)のエンドMによる各処理時間での試料を還元処理せずにCE測定した図である。 図3は、エンドM処理後のモガムリズマブ(GlcNAc−IgG)への反応(糖鎖転移、糖鎖供与体;SGP)後の試料を、還元処理した後にCE測定した図である。図中には0時間から24時間までの反応時間による結果を示す。 図4は、エンドM処理後のモガムリズマブ(GlcNAc−IgG)への反応(糖鎖転移、糖鎖供与体;SGP)後の試料を、還元処理した後にCE測定した図である。図中には45時間から70時間までの反応時間による結果を示す。最下段の図は、70時間後にプロテインA−セファロースによって、反応溶液からGlcNAc−IgGを精製した後の試料を測定した結果である。 図5は、エンドM処理後のモガムリズマブ(GlcNAc−IgG)への反応(糖鎖転移、糖鎖供与体;SGP)後の試料について、SDS−PAGEを行った結果である。図中の各レーン上部には0時間から70時間までの反応時間による結果を示す。 図6は、エンドM処理前及び処理後のモガムリズマブ(GlcNAc−IgG)、及び該モガムリズマブへの70時間反応(糖鎖転移、糖鎖供与体;SGP)後の試料について、SSAレクチンによるレクチンブロットを行った結果を示す。Mはマーカー、レーン1はエンドM処理前の試料、レーン2はエンドM処理後の試料、レーン3は糖鎖転移後の試料について測定した結果である。 図7は、エンドM処理後のモガムリズマブ(GlcNAc−IgG)への反応(糖鎖転移、糖鎖供与体;化合物A−1)後の試料について、還元処理した後にCE測定した図であり、(a)は0時間反応後の試料であり、(b)は44時間後の試料である。 図8は、エンドM処理後のモガムリズマブ(GlcNAc−IgG)への反応(糖鎖転移、糖鎖供与体;化合物A−1)後の試料について、還元処理した後にMALDI−TOF MS測定した図であり、(a)は0時間反応後の試料であり、(b)は44時間後の試料である。 図9は、エンドM処理前及び処理後のモガムリズマブ、及び処理後のモガムリズマブへの反応(糖鎖転移、44時間、糖鎖供与体;化合物A−1)後の試料について、SDS−PAGEを行った結果である。Mはマーカー、レーン1はエンドM処理前のモガムリズマブ、レーン2はエンドM処理後のモガムリズマブ、レーン3は糖鎖供与体である化合物A−1とモガムリズマブを反応させた後の試料について測定した結果である。 図10は、GlcNAc1−β−O−エチルアジドへの反応(糖鎖転移、糖鎖供与体;化合物110)後の0時間反応後の試料について、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析した結果である。 図11は、GlcNAc1−β−O−エチルアジドへの反応(糖鎖転移、糖鎖供与体;化合物110)後の1時間反応後の試料について、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析した結果である。
本明細書及び特許請求の範囲を通じて示された用語について説明する。
数値範囲を表す「〜」はその上限及び下限の数値を含む範囲を表す。更に、本明細書中において、糖鎖供与体、糖鎖受容体、IgG、変異型酵素等の各成分の量は、特に断らない限り、反応する溶液中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
「相同性」とは、アミノ酸配列変異体において、最大の相同性(パーセント)を達成するために、必要ならば間隙を導入して、配列を整列させた後に同一である残基のパーセンテージとして定義される。アライメントのための方法およびコンピュータープログラムは本技術分野においてよく知られており、例えば、ジェンテック社により著作された「Align2」で、1991年12月10日にアメリカ合衆国著作権庁、washington, DC 20559に利用者資料を付して提出されている。
またアミノ酸残基は、3文字表記及び1文字表記のどちらかで表記される。
「糖鎖転移」とは、糖鎖供与体の一部の糖鎖部分を、糖鎖受容体に結合させることである。本開示においては、下記一般式(1)の矢印の位置で加水分解された後の左側部分(以下、糖鎖供与部分と称することがある)を、糖鎖受容体に、糖鎖転移することを意味する。
Figure 0006888207

一般式(1)中、XおよびX2は、それぞれ独立の糖質由来の基又は水素原子を表し、XおよびX2の少なくとも一方は、1つ以上のGlcNAc又はGlcNAcAを含み、XおよびX2に含まれるGlcNAc又はGlcNAcAは、α1−3でManに結合したMan又はα1−6でManに結合したManにβ1−2で結合している。X、X、XおよびX6は、それぞれ独立に水素原子又は糖質由来の基を表す。Zは、水素原子又はGlcNAcを表し、Zに含まれるGlcNAcはβ1−4でGlcNAcに結合したManにβ1−4で結合している。Yは一価の置換基を表す。GlcNAcはN−アセチルグルコサミニル基を表し、GlcNAcAはGlcNAcの6位のヒドロキシメチル基がカルボキシル基である糖残基を示す。β1−4はGlcNAcの1位とGlcNAcの4位とのβグリコシド結合又はManの1位とGlcNAcの4位とのβグリコシド結合を表す。Manはマンノシル基を表し、α1−6はManの1位とManの6位とのαグリコシド結合を表し、α1−3はManの1位とManの3位とのαグリコシド結合を表す。
本開示においてYに結合するGlcNAcは、GlcNAcの1位の還元末端の炭素に結合する水素原子以外の置換基の原子を含まない。
また、後述する「6SO3」及び「3SO3」は、糖残基の特定の位置に結合した酸性基を表す。例えば、(6SO3)GlcNAcであれば、GlcNAcの6位にスルホン酸基が結合していることを示す。糖残基とは、後述する単糖が脱水縮合等により置換基を構成するものをさし、マンノシル基(Man)、グルコサミニル基(GlcNAc)等の総称である。また、上記のような酸性基を含む糖残基、GlcA、GlcNAcA、NeuAc及びNeuGcのような酸性の糖残基を総称して酸性糖残基と称することがある。
また、本明細書中、GlcA、GlcNAcA、NeuAc及びNeuGcは、これらの糖残基中のカルボキシル基が他の化合物等とエステル結合又はアミド結合を形成したものも含むことを意味する。例えば、GlcAが、6位のカルボキシル基がエステル結合したエステル化体である場合、エステル化体のうち、下記式(a)の破線部分に示すように、GlcAの6位のカルボニル基までを含む糖残基を含むことを意味する。また、GlcAが、6位のカルボキシル基がアミド結合したアミド化体である場合は、アミド化体のうち、下記式(b)の破線部分に示すように、GlcAの6位のカルボニル基までを含む糖残基を含むことを意味する。
Figure 0006888207
式(1)中、*はエステル結合及びアミド結合する化合物との結合位置を示す。
また、本明細書中、糖鎖供与体中の糖残基は、該糖残基中の水酸基が他の化合物等とエーテル結合したものも含むことを意味する。例えば、Manが、2位の水酸基がエーテル結合したエーテル化体である場合、エーテル化体のうち、エーテル結合する2位の酸素原子までを含む糖残基を含むことを意味する。
糖質由来の基とは、天然又は非天然の糖鎖のみならず、該糖鎖と該糖鎖以外の化合物とが結合した複合体も含むことを意味する。
また、糖鎖転移反応を単に「反応」と称することもある。また、エンドM変異体やエンドM変異体ホモログの糖鎖転移における活性は、単に糖鎖転移活性と称することがある。なお、糖鎖転移活性とは、エンド酵素変異体及びエンド酵素変異体ホモログの糖鎖転移する能力をいい、具体的には一定時間において糖鎖転移して生じる生成物の量(mol/min)で表される。糖鎖転移反応において、加水分解における酵素活性と糖鎖転移における酵素活性を分離して測定することは厳密にはできないが、本開示において用いられるエンドM変異体では、糖鎖転移活性に比べて加水分解活性が著しく抑えられているので、糖鎖転移後に生じた時間に対する生成物の量を測定することで、糖鎖転移活性を見積もることができる。
「糖鎖転移収量」とは、特に断らない限り、反応後に生ずる複合型糖鎖が転移された糖蛋白質の量をいい、「糖鎖転移収率」とは、糖鎖転移した生成物のモル数の、反応に用いた糖鎖受容体のモル数に対する割合を示す。
「エンド−β−Nアセチルグルコサミニダーゼ」とは、一般式(1)の矢印に示されるように、GlcNAcとGlcNAcの間を加水分解する酵素を意味し、「エンド酵素」と称することもある。また、「エンドM」とは、毛カビであるムコールヒエマリス由来のエンド酵素(GenBank Accesion No.BAB43869)、「エンドA」とはアルスロバクタープロトホルミエ由来のエンド酵素(GenBank Accesion No.AAD10851)、「エンドS」とは、ストレプトコッカス パイオジェネス由来のエンド酵素(GenBank Accesion No.AAK00850)を意味する。また、以下のように、アミノ酸が置換されたエンド酵素を「エンド酵素変異体」と称する。
また、蛋白質におけるアミノ酸配列中の特定のアミノ酸残基を示す表記について、例えばエンドMのアミノ酸配列においては、175番目のアスパラギン残基は、N175と示される。また、アミノ酸残基を置換、すなわち他のアミノ酸に置換されたアミノ酸残基の表記について、例えばエンドMの175番目のアスパラギン残基をグルタミン残基に置換したグルタミン残基は、N175Qと示され、これを含むエンドMを、エンドMのN175Q変異体、もしくは単にN175Q変異体と称する。また、エンドMのN175Q変異体、同N175A変異体を総じて、エンドM変異体、と称することがある。なお、配列番号1において、175番目のアミノ酸残基以外に変異が導入された相同性80%以上(配列番号1に対して)のものを、エンドM変異体ホモログと称する。
「免疫グロブリンG」とは、抗体であるIgM、IgA、IgD、IgE、IgGのうちのIgGを指す。本明細書中では、IgGと称することもある。また、免疫グロブリンG又はIgGと表記する場合には、IgGが有する2つの重鎖と2つの軽鎖の両方を含むポリペプチドであることを意味する。また、後述するが、単に免疫グロブリンG又はIgGと表記された場合には、特に断らない限り、その糖鎖構造は限定されない。すなわち、様々な種類のN−結合型糖鎖を含むIgGの混合物であることを意味する。
「定常領域」とは、IgGが有する重鎖のC末端領域を意味し、Fc領域と称することもある。本開示におけるFc領域は、天然の配列を有するFc領域であってもよいし、変異されたFc領域であってもよい。Fc領域とFc領域でない領域との境界は変化する場合もあるが、ヒトIgGにおいては226番目のシステイン(C226)又は230番目のプロリン(P230)の位置からC末端までの領域と定義される。
本明細書等では、炭水化物の部分は、オリゴ糖の記述に通常用いられる命名法を参照して記載される。これらの命名法は、例えば、Hubbardらの文献[Ann.Rev.Biochem.,50,555(1981)]に見出される。この方法に従って、マンノースはMan、2−N−アセチルグルコサミンはGlcNAc、ガラクトースはGal、GlcAはグルクロン酸、フコースはFuc及びグルコースはGlc、という略式表記によって表記される。シアル酸は、5−N−アセチルノイラミン酸に対するNeuAc、及び5−グリコリルノイラミン酸に対するNeuGcという略式表記によって表記される。また、N−アセチルグルコサミニル基はGlcNAc残基、マンノシル基はMan残基と称することもある。また、GlcNAcの6位のヒドロキシメチル基を酸化してカルボキシル基とした糖残基を、GlcNAcAと称する。
「単糖」とは、1つの糖を形成する化合物、例えば、Gal、GlcNAc、Glcなどの糖どうしが結合していない化合物を意味する。
「グリコシド結合」とは、糖鎖中の糖もしくは単糖の1位の水酸基と他の糖の水酸基が脱水縮合することで、互いが酸素原子を介して結合する結合をいい、例えばα1−6グリコシド結合とは、糖の1位と他の糖の6位がα型で結合したグリコシド結合であることをいう。なお、糖の1位の水酸基はα型とβ型が存在する。
また、糖鎖を説明する表現として、単糖が3つ結合した糖鎖は3糖、5つ結合した場合は5糖、のように称することもある。
複数の単糖がグリコシド結合したもの、すなわち糖残基がグリコシド結合で連結したものをオリゴ糖残基と称することがある。また、「オリゴ糖残基」には、単糖が糖残基を形成するもの、例えば、GlcNAcβ1−2−、のような糖残基も含むことを意味する。
本明細書等に記載されるIgGに結合したN−結合型糖鎖は、例えばKabatらの文献[“Sequence of Proteins of Immunological Interest”,(1999)]に示されるように、ヒト型であればIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4、マウス型であればIgG1、IgG2a、IgG2b及びIgG3について、これらのアミノ酸配列における297番目のアスパラギン残基にN−結合型糖鎖が結合することを意味する。
「複合型糖鎖」とは、N−結合型糖鎖の中の特定の糖鎖構造を有する糖鎖であり、少なくともコア糖鎖に由来する構造を有し、かつトリマンノシル基の非還元末端に少なくとも1つのβ1−2グリコシド結合したGlcNAc残基を有する糖鎖をいう。
「コア糖鎖」とは、N−結合型糖鎖の中で、下記C−1で表される糖鎖部分をいい、「トリマンノシル」とは、コア糖鎖の中の3つのマンノース部分をいう。また、C−1の破線部分に示すように、トリマンノシル部位のうち、非還元末端側のα1−6で結合するManをMan2、非還元末端側のα1−3結合するManをMan3及び還元末端側のManをMan1と称する。
Figure 0006888207
「GlcNAc−IgG」とは、1つのGlcNAcが少なくとも1つの定常領域に結合したIgGポリペプチドをさす。すなわち、IgGが有する2つのN−結合型糖鎖のうち、少なくとも1つのコア糖鎖の還元末端部位のGlcNAcのみが、IgGポリペプチドの定常領域に結合したIgGポリペプチドをいう。また、IgGについては、N−結合型糖鎖の非還元末端側[一般式(1)における矢印の左側]を有しないものを、GlcNAc−IgGと称し、同様に糖ペプチドや糖蛋白質については、GlcNAc−ペプチド及びGlcNAc−蛋白質と称する。
「ペプチド」と「蛋白質」は、一般的にはアミノ酸残基数が少ないものがペプチド、多いものが蛋白質と称されており、明確なアミノ酸残基数の違いはないが、本開示においては、50残基以上のものを蛋白質と称する。また、蛋白質をポリペプチドと称することもある。
「1ユニット」とは、複合型のN−結合型糖鎖であるシアログライコペプチド(以下、SGPと称する)の非還元末端側の糖鎖部分を、パラニトロフェニルGlcNAc(GlcNAcβ1−O−pNP)に対し1分間で1μモル転移させる量である。
本開示においては、酵素的な糖蛋白質の調製において、安定な天然型の基質を用いることができ、かつ従来技術では達成できなかった糖鎖転移収率及び糖鎖転移収量の糖ペプチド又は糖蛋白質を製造することができる。本開示におけるこのような効果を有する理由は定かではないが、出願人は以下のように考えている。
本開示で用いられるエンドM変異体は、加水分解活性が著しく低い一方、糖鎖転移活性は維持された変異体である。エンドM変異体はエンドMの反応過程を考慮して作製された変異体である。
エンドMは、天然の基質であるキトビオシル部位(GlcNAcβ1−4GlcNAc)を加水分解する場合においては、まず加水分解時に生じる中間体と想定されるGlcNAcのオキサゾリニウムイオン中間体を生成する。次に、水がオキサゾリニウムイオン中間体に付加される前に、該中間体とは別のGlcNAcの水酸基が付加されることで糖鎖転移反応が行われる。このため、該オキサゾリニウムイオン中間体の疑似物質であるGlcNAcをオキサゾリン化した化合物(以下、オキサゾリン誘導体という)と、上記の変異体とを組み合わせることで、GlcNAc−ペプチドやGlcNAc−糖蛋白質への効果的な糖鎖転移が行われるものと推定できる。
従来から、エンドM変異体の基質としては、オキサゾリン誘導体が有効であり、天然型のキトビオシル構造を有する基質は用いられてこなかった。しかし、エンドM変異体においても、天然型の基質(キトビオシル構造を有する基質)を加水分解して糖鎖転移する能力、すなわちオキサゾリニウムイオン中間体を形成する能力があると考えられる。さらに、該中間体を形成した場合に、適切な糖鎖受容体が存在することで、エンドM変異体の特性、すなわち糖鎖転移する速度が加水分解する速度よりも大きいために、糖鎖転移反応が優先的におこり、十分な収率で糖鎖転移後生成物を得ることができると考えられる。
特に、GlcNAc−IgGのような、GlcNAcがFc領域の内部に位置し、外部からエンド酵素が近づきにくいと考えられる糖鎖受容体に対しては、十分な糖鎖転移収量を得るために長時間の反応が必要になると考えられるので、この場合に、天然型基質のような、反応溶液中でも安定な糖鎖供与体の存在が有効であるものと考えられる。
≪糖ペプチド又は糖蛋白質の製造方法≫
本開示における糖ペプチド又は糖蛋白質を製造する製造方法は、配列番号1で示されるアミノ酸配列の175番目のアミノ酸残基がグルタミン又はアラニンであるアミノ酸配列を有する変異型エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ、あるいは配列番号1で示されるアミノ酸配列の175番目のアミノ酸残基以外の1個又は複数個のアミノ酸残基の欠失、付加又は置換により、前記アミノ酸配列に対して80%以上の相同性の範囲内で修飾されたアミノ酸配列を有する変異型エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの存在下、一般式(1)で表される糖鎖供与体と、糖鎖受容体と、を反応させることにより糖ペプチド又は糖蛋白質を製造する工程を含む。
以下に、詳細について説明する。
[糖ペプチド又は糖蛋白質]
本開示において製造される糖ペプチド又は糖蛋白質としては、天然に見いだされているものも、合成によるものも含む。また、天然に存在する糖蛋白質におけるN−結合型糖鎖が結合するアスパラギンのC末端側には、該アスパラギンから2つ目のアミノ酸残基が必ずスレオニン残基かセリン残基であることが知られているが、本開示においても同様である。
本開示の製造方法で製造される糖ペプチド又は糖蛋白質は、特に制限されない。例えば、動物細胞であれば、細胞外又は細胞表面に分泌しかつN−結合型糖鎖を有する糖蛋白質や糖ペプチドなどが挙げられ、例として、各種ホルモン、細胞接着因子、各種受容体、細胞外マトリクス、各種酵素、各種サイトカイン、抗菌性又は抗ウィルス性ペプチド、抗体などが挙げられる。
この中でも、糖転移収率の観点から、抗菌性又は抗ウィルス性ペプチド及び生理活性ペプチド、ホルモン、サイトカイン又は抗体が好ましい。
[免疫グロブリンG]
本開示における免疫グロブリンG(IgG)は、少なくとも定常領域(以下Fc領域と称する)と可変領域(以下Fab領域と称する)を含む分子を意味する。IgGだけではなく、IgGの変異体、これらを含む融合蛋白質も含まれる。具体的には、例えばヒトIgG、マウスIgG等の非ヒトIgGなどの天然型IgG及びこれらの誘導体を含み、誘導体としてはキメラIgG、ヒト化IgGの抗原抗体反応を誘導可能な組換えIgG等が含まれる。これらは、モノクローナルIgG、ポリクローナルIgGのいずれであってもよく、単独又は2種以上の組合わせも含む。前記天然型IgGの誘導体は、天然型IgGのアミノ酸配列の一部に、欠失、付加、置換等の変異が導入されたIgGを含むことを意味しており、これらの変異は自然に生じたものだけでなく、人為的なものも含まれる。
IgGの溶液中における存在は、例えば、キャピラリー電気泳動(CE)装置、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動用(SDS−PAGE)装置又はMALDI−TOF MSで測定することによって確認される。
CEによる測定は、キャピラリーカラム(30.2cm×50μm、ベックマンコールター社製、ペアーヒューズドシリカ)を備えたベックマンコールター社製のProteomeLab PA800を用い、下記分析条件にて行うことができる。
・分析条件:試料注入後、25℃、15kvの電圧で30分間測定
・検出波長:200nm
SDS−PAGEによる測定は、市販のスラブゲル用の装置(アトー社製、e−PAGEL)において、15%のポリアクリルアミドゲルを用い、20mAで70分間電気泳動後に、ゲルをクマシブリリアントブルーで染色し、得られたゲルを評価することができる。なおマーカーとしては、DynaMarker Muli ColorIII(Biodynamics Laboratory社製)を用いる。
MALDI−TOF MSとしては、例えば、次の方法が挙げられる。
すなわち、反応後の溶液に一定量のアセトンを加え、溶解した部分を乾燥後、一定量のDHBA溶液(20mg/mLの2,5−ジヒドロキシ安息香酸を50%メタノール水溶液に溶解させた溶液)に溶解させる。その後、溶解させた溶液の一部をMALDI−TOF MS分析用のplateにスポットし乾燥させ、ブルカー・ダルトニクス社製autoflex speed−tko1リフレクタシステムによって、下記の条件にて測定することで、反応後の生成物の質量を確認できる。
<条件>
・測定モード:positive ion mode,及びreflector mode
・測定電圧:1.5kv〜2.5kv
・測定分子量の範囲:0〜3000(m/z)及び45000〜60000(m/z)
・積算回数:1000〜8000
(エンド酵素及び変異型エンド酵素)
本開示においては、エンドMのアミノ酸に変異を導入した変異体を用いる。配列番号1で示されるエンド酵素は、ムコールヒエマリス由来のエンドβNアセチルグルコサミニダーゼ(GenBank Accesion No.BAB43869)である。
本開示の一実施形態では、配列番号1で示されるアミノ酸配列の175番目のアミノ酸残基がグルタミン又はアラニンであるアミノ酸配列を有する変異型エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ(エンドM変異体)、あるいは配列番号1で示されるアミノ酸配列の175番目のアミノ酸残基がグルタミン又はアラニンであるアミノ酸配列を有する変異型エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼであって、かつ配列番号1で示されるアミノ酸配列の175番目のアミノ酸残基以外の1個又は複数個のアミノ酸残基の欠失、付加及び又は置換により、前記アミノ酸配列に対して80%以上の相同性の範囲内で修飾されたアミノ酸配列を有する変異型エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ(エンドM変異体ホモログ)の存在下で反応を行うことによって、糖ペプチド又は糖蛋白質を製造する。
本開示では、エンドM変異体としては、N175QもしくはN175Aであることで、糖鎖転移反応後の生成物の加水分解を十分に抑えることができる。また、糖鎖転移収率及び糖鎖転移収量の観点からは、N175Q変異体であることが好ましい。
本開示のエンドM変異体は、通常の遺伝子工学的な手法によって調製することができ、様々な宿主の種類や、対応する適切な蛋白質発現ベクターを用いて調製することができる。宿主としては、大腸菌、ブレビバシラス菌、シアノバクテリウム、乳酸菌、酵母、昆虫細胞及び動物細胞などが挙げられる。この中でも調製のしやすさ、及び発現量の観点から、大腸菌を宿主とする方法や、酵母を宿主とする方法によって調製することが好ましい。具体的な製造方法としては、大腸菌であれば梅川らの文献[J. Biol. Chem. Vol.285(1),511-521,(2010)]に詳しく記載されており、酵母であれば特開平59587号公報に詳しく記載されている。
本開示のエンドM変異体及びエンドM変異体ホモログは、反応において、他のペプチドもしくは蛋白質とそれらのC末端側もしくはN末端側で融合させた融合型エンド酵素変異体もしくは融合型エンド酵素変異体ホモログとしても用いることができる。融合させることができるペプチドもしくは蛋白質としては、糖鎖転移反応を阻害するものでなければ特に限定されないが、例えば、ヘキサヒスチジンペプチド(アミノ酸配列はN末端からHHHHHH)、フラッグペプチド(アミノ酸配列はN末端からDYKDDDDK)、インフルエンザHAポリペプチド(アミノ酸配列はN末端からYPYDVPDYA)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、ルシフェラーゼ、アビジン、キチン結合蛋白質、c−myc、チオレドキシン、ジスルフィド異性化酵素(DsbA)、マルトース結合蛋白質(MBP)など緑色蛍光蛋白質(GFP)が挙げられる。この中でも、エンドM変異体又はエンドM変異体ホモログの調製のしやすさという観点から、ヘキサヒスチジンペプチド及びフラッグペプチドが特に好ましい。
なお、上記の融合型エンドM変異体もしくは融合型エンドM変異体ホモログにおいては、融合させるペプチド又は蛋白質のポリペプチド部分と、エンドM変異体もしくはエンドM変異体ホモログのポリペプチド部分との間には数残基から50残基のリンカーペプチド領域としてのペプチド部分を含む。なお、リンカーペプチド領域を構成するアミノ酸残基の種類としては特に限定されない。リンカーペプチド領域には、プロテアーゼによって加水分解されるアミノ酸配列部分(プロテアーゼサイト)を含めてもよい。プロテアーゼサイトとしては特に限定されないが、例えば、ファクターXaサイト、トロンビンサイト、エンテロキナーゼサイト、プレシジョンプロテアーゼサイトが挙げられる。
天然から見いだされている糖質加水分解酵素は、公知の情報(http://www.cazy.org/)で示されるように、アミノ酸配列の相同性等から、百数十のグリコシルヒドラーゼファミリー(GHファミリー)に分類されている。エンドMは、GHファミリー85に属するグリコシルヒドラーゼであり、他のGHファミリー85に属する蛋白質としては、ヒトから細菌類までに広く分布すること知られている。エンドMのアミノ酸配列(配列番号1)を基に、一般に使用できるホモロジー検索(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を行うと、エンドMと他のGHファミリー85に属する蛋白質とは、アミノ末端側から500番目のアミノ酸付近までの触媒領域を含む領域内で、高い相同性を有することがわかる。
以上の観点から、本開示におけるエンド酵素変異体ホモログは、エンドMの触媒領域を含む500残基程度のアミノ酸配列の長さを有していれば、エンドMとしての糖鎖転移活性を有すると推定できる。
本開示におけるエンドM変異体ホモログは、N175Q変異体もしくはN175A変異体と80%以上の相同性を有し、かつ糖鎖転移活性を有するものであれば、175番目のアミノ酸残基以外のどのアミノ残基を他のアミノ酸に置換、欠失及び付加により調製されたものでもよい。
以上の観点から、本開示においては、エンドM(配列番号1)の175番目のアミノ酸残基以外の1個又は複数個のアミノ酸残基の欠失、付加及び又は置換により生じるエンド酵素変異体ホモログのエンドM(配列番号1)に対する相同性が80%以上であれば糖鎖転移活性を十分に維持できる。また、90%以上であれば、糖鎖転移収率及び糖鎖転移収量が向上しやすいことから好ましく、より好ましくは95%以上であり、特に好ましくは98%以上であり、最も好ましくは99%以上である。
本開示において、反応溶液中のエンドM変異体もしくはエンドM変異体ホモログの濃度は、0.5U〜20U/mlであることが好ましい。0.5U以上であることで、糖鎖転移収量を高めることができ、20U以下であることで、糖鎖転移収率を高めることができる。こここで、1ユニット(U)とは、シアログライコペプチド(以下SGPと称する)1μモルを、1分間で、βパラニトロフェニルGlcNAc(GlcNAcβ1−O−pNP)に転移する酵素量を示す。さらに、濃度としては、1U〜10U/mlであることがより好ましく、2U〜5U/mlであることが特に好ましい。
また、反応に用いるエンドM変異体もしくはエンドM変異体ホモログの精製度においては、反応時間の短縮化、糖鎖転移収率及び糖鎖転移収量の観点から、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動の結果等から、精製度が50%以上であることが好ましく、さらに70%以上であることが好ましく、80%以上であることが特に好ましく、90%以上であることが最も好ましい。精製度が50%以上であることで、反応時間を短縮化することができ、かつ糖鎖転移収率も高めやすい。
(糖鎖供与体)
本開示における糖鎖供与体としては、下記一般式(1)で表される糖鎖供与体であれば、特に限定されない。GlcNAcとGlcNAcとのβ1−4結合を含む構造(キトビオシル構造)を有することで、基質として安定であり、溶液中でも長時間安定に存在できるため、長時間の反応時間を要する糖鎖受容体へも十分に対応できる。
Figure 0006888207
一般式(1)中、XおよびX2は、それぞれ独立の糖質由来の基又は水素原子を表し、XおよびX2の少なくとも一方は、1つ以上のGlcNAc又はGlcNAcAを含み、XおよびX2に含まれるGlcNAc又はGlcNAcAは、α1−3でManに結合したMan又はα1−6でManに結合したManにβ1−2で結合している。X、X、XおよびX6は、それぞれ独立に水素原子又は糖質由来の基を表す。Zは、水素原子又はGlcNAcを表し、Zに含まれるGlcNAcはβ1−4でGlcNAcに結合したManにβ1−4で結合している。Yは一価の置換基を表す。GlcNAcはN−アセチルグルコサミニル基を表し、GlcNAcAはGlcNAcの6位のヒドロキシメチル基がカルボキシル基である糖残基を示す。β1−4はGlcNAcの1位とGlcNAcの4位とのβグリコシド結合又はManの1位とGlcNAcの4位とのβグリコシド結合を表す。Manはマンノシル基を表し、α1−6はManの1位とManの6位とのαグリコシド結合を表し、α1−3はManの1位とManの3位とのαグリコシド結合を表す。
およびX2としては、少なくとも1つのGlcNAcを有し、該GlcNAcが少なくともコア糖鎖部分のMan2もしくはMan3のどちらかにβ1−2でグリコシド結合する残基を有することを意味する。
、X2、X、X、XおよびX6における糖質由来の基としては、GlcNAcβ1−2、Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuAcα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuAcα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuGcα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−2及びNeuGcα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2、異種抗原:Galα1−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2、ポリラクトサミン:[Galβ1−4GlcNAcβ1−3]nGalβ1−4GlcNAcβ1−2(nは任意の数)、ケラタン硫酸[Galβ1−4GlcNAc(6SO3)β1−3]nGalβ1−4GlcNAcβ1−2(nは任意の数)、[Gal(6SO3)β1−4GlcNAc(6SO3)β1−3]nGalβ1−4GlcNAcβ1−2(nは任意の数)、LacDiNAc:GalNAcβ1−4GlcNAcβ1−2、硫酸化LacDiNAc:GalNAcβ1−4GlcNAcβ1−2、末端硫酸修飾(3SO3)Galβ1−4GlcNAcβ1−2、ルイス糖鎖:Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAcβ1−2、Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAcβ1−2、Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAcβ1−2、Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAcβ1−2、血液型抗原:Fucα1−2Galβ1−4GlcNAcβ1−2、Galα1−3(Fucα1−2)Galβ1−4GlcNAcβ1−2、GalNAcα1−3(Fucα1−2)Galβ1−4GlcNAcβ1−2、HNK1抗原:(3SO3)GlcAβ1−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2、GlcAβ1−2、GlcNAcAβ1−2が挙げられ、これらの基のいずれか一つをXおよびX2のどちらか、あるいは両方に有していてもよい。
〜Xが上記の場合には、Zは水素原子でもGlcNAcβ1−4であってもよい。
上記の糖質由来の基の中でも、本開示糖ペプチド又は糖蛋白質の製造方法によって製造されるIgGのADCC活性及び糖鎖転移収率の観点からは、X、X、XおよびXは水素原子であることが好ましい。
この場合に、XおよびX2の両方もしくは片方が、GlcNAcβ1−2、Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuAcα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuAcα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2のいずれか一つであり、かつZが水素原子であること、又はXおよびX2の両方もしくは片方が、GlcNAcβ1−2、Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuAcα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuAcα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2のいずれか一つであり、かつZがGlcNAcであることが好ましい。また、さらに、XおよびX2の両方がGlcNAcβ1−2、Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuAcα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuAcα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2のいずれか一つであり、かつZが水素原子であること、又はXおよびX2の両方がGlcNAcβ1−2、Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuAcα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuAcα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2のいずれか一つであり、かつZがGlcNAcであることがより好ましい。
また、XおよびX2の両方が、Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuAcα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuAcα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2のいずれか一つであり、かつZが水素原子であること、又はXおよびX2の両方が、Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuAcα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuAcα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2のいずれか一つであり、かつZがGlcNAcであることがさらに好ましく、XおよびX2の両方が、NeuAcα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−2もしくはGalβ1−4GlcNAcβ1−2のいずれか一つであり、かつZが水素原子であること、又はXおよびX2の両方が、NeuAcα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−2もしくはGalβ1−4GlcNAcβ1−2のいずれか一つであり、かつZがGlcNAcであることが特に好ましく、XおよびX2の両方が、NeuAcα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−2もしくはGalβ1−4GlcNAcβ1−2のいずれか一つであり、かつZがGlcNAcであることが最も好ましい。
また、上記一般式(1)中のX〜Xの少なくとも一つは、糖質由来の基であり、前記糖質由来の基は、オリゴ糖残基と、アジド基、アルキニル基、エポキシ基、アミノ基、チオール基及びイソシアネート基から選ばれるいずれか一つの基とが、リンカーを介して結合した構造を有する基であってよい。
ここで、アジド基、アルキニル基、エポキシ基、アミノ基、チオール基及びイソシアネート基をクリック反応基と称することがある。すなわち、糖鎖供与体中の糖質由来の基は、前記糖質由来の基を構成するオリゴ糖残基とクリック反応基とが、リンカーを介して結合していてもよい。
上記一般式(1)で表され、前記リンカーが結合していない糖鎖供与体を、リンカー非含有糖鎖供与体と称し、上記一般式(1)で表され、X〜Xの少なくとも一つが糖質由来の基であり、前記糖質由来の基は、オリゴ糖残基とクリック反応基とが前記リンカーを介して結合した構造を有する糖鎖供与体をクリック反応基含有糖鎖供与体と称することがある。また、クリック反応基、リンカー及びオリゴ糖残基を、各ブロックと称することがある。さらに、リンカーとは、後述するリンカーに用いる化合物と後述するクリック反応基を含む化合物とが結合することによって形成したもののうち、クリック反応基以外の部分をさす。
前記クリック反応基とリンカーとの結合比、及びリンカーに対するクリック反応基の配置においては特に限定されない。しかし、糖鎖供与体としての調製のし易さから、結合比は1以上であることが好ましく、1〜10あることがより好ましく、1であることが最も好ましい。また、リンカーに対するクリック反応基の配置においては、オリゴ糖残基とリンカーとが結合する位置を除いたリンカーの末端に配置されることが好ましい。
また、クリック反応基含有糖鎖供与体中におけるクリック反応基の数は特に限定されないが、調製のし易さ及び糖鎖転移収率の観点からは、1以上であることが好ましく、1〜20であることが好ましく、1〜2であることが特に好ましい。
前記リンカーと結合したオリゴ糖残基としては、例えば、GlcNAcβ1−2、Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuAcα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuAcα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuGcα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−2及びNeuGcα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2、異種抗原:Galα1−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2、ポリラクトサミン:[Galβ1−4GlcNAcβ1−3]nGalβ1−4GlcNAcβ1−2(nは任意の数)、ケラタン硫酸[Galβ1−4GlcNAc(6SO3)β1−3]nGalβ1−4GlcNAcβ1−2(nは任意の数)、[(6SO3)Galβ1−4GlcNAc(6SO3)β1−3]nGalβ1−4GlcNAcβ1−2(nは任意の数)、LacDiNAc:GalNAcβ1−4GlcNAcβ1−2、硫酸化LacDiNAc:GalNAcβ1−4GlcNAcβ1−2、(3SO3)Galβ1−4GlcNAcβ1−2、ルイス糖鎖:Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAcβ1−2、Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAcβ1−2、Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAcβ1−2、Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAcβ1−2、血液型抗原:Fucα1−2Galβ1−4GlcNAcβ1−2、Galα1−3(Fucα1−2)Galβ1−4GlcNAcβ1−2、GalNAcα1−3(Fucα1−2)Galβ1−4GlcNAcβ1−2、HNK1抗原:(3SO3)GlcAβ1−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2、GlcAβ1−2、GlcNAcAβ1−2等が挙げられる。
また、クリック反応基含有糖鎖供与体の調製のし易さ及び糖鎖転移収率の観点からは、前記一般式(1)中のX、X、X、X及びZが水素原子であり、XおよびX2の両方もしくは片方が、NeuAc、NeuGc、GlcA及びGlcNAcAから選ばれる酸性糖残基の少なくとも一つを含むものが好ましい。
さらに、前記一般式(1)中のX、X、X、X及びZが水素原子であり、XおよびX2の両方もしくは片方がNeuAcα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuAcα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuGcα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuGcα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2、GlcAβ1−2及びGlcNAcAβ1−2のいずれか一つであることがより好ましい。さらに、前記一般式(1)中のX、X、X、X及びZが水素原子であり、XおよびX2の両方もしくは片方が、NeuAcα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuAcα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuGcα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuGcα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2、GlcAβ1−2及びGlcNAcAβ1−2のいずれか一つであることが特に好ましい。さらに、前記一般式(1)中のX、X、X、X及びZが水素原子であり、XおよびX2の両方が、GlcNAcAβ1−2であることが最も好ましい。
上記クリック反応基においては、水溶液中での安定性及び他の化合物との反応特異性という観点から、アジド基、アルキニル基、エポキシ基及びアミノ基のいずれかであることが好ましく、アジド基及びアルキニル基のいずれかであることがより好ましい。また、クリック反応基と他の化合物との反応においては、それぞれ最適な組合せを選択することで容易にかつ特異的に結合を形成することができる。
前記リンカーとしては、前記クリック反応基及び前記オリゴ糖残基の両方を結合するものであり、本開示の製造方法の効果を損なわないものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、分岐PEG、PEG誘導体、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、デキストリン、ポリオキサゾリン、糖質、ポリサッカリド、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、デンプン、デキストラン、カルボキシメチル−デキストラン、ポリアルキレンオキシド(PAO)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキサゾリン、ポリアクリロイルモルホリン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレート、ポリビニルピロリドン、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリエチレン無水マレイン酸共重合体、ポリスチレン無水マレイン酸共重合体、ポリ(1−ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシメチルホルマール)(PHF)及び2−メタクリロイルオキシ−2’−エチルトリメチルアンモニウムリン酸(MPC)等の水溶性ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリフェニレン及びポリアクリロニトリル等に由来する構造を挙げることができる。中でも、糖鎖供与体としての調製のし易さ及び糖鎖転移収率の観点から、リンカーは、水溶性ポリマーに由来する構造を有していることが好ましく、さらにポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールに由来する構造を有していることがより好ましい。
また、上記リンカーの形成には、上記の化合物(ポリマー)を用いることが好ましい。
また、上記のリンカーの重量平均分子量は特に限定されないが、糖鎖供与体としての調製のし易さ及び糖鎖転移収率の観点から、100〜10000が好ましい。さらに、100〜7000がより好ましく、さらに100〜4000が特に好ましい。
また、上記リンカーの形成に用いるポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールの好ましい繰り返し単位数は、糖鎖供与体としての調製のし易さ及び糖鎖転移収率の観点から、1〜50が好ましく、1〜20がさらに好ましく、3〜10が特に好ましい。
上記のクリック反応基含有糖鎖供与体における各ブロックの構築方法は、例えば、クリック反応基を含む化合物とリンカーとの結合の形成に用いる化合物とを結合させて得た化合物にリンカー非含有糖鎖供与体等のオリゴ糖残基を結合させる方法が挙げられる。また、リンカーの形成に用いる化合物と前記オリゴ糖残基とを結合させて得た化合物にクリック反応基を含む化合物を結合させる方法も挙げられる。各ブロックの構築方法としては、どのような方法でもよく、適宜選択されることが好ましい。
上記クリック反応基含有糖鎖供与体中のクリック反応基とリンカーとの結合方法、及びリンカーとリンカー非含有糖鎖供与体等のオリゴ糖残基との結合方法は、公知の一般的な合成化学的手法、例えば、特開2010−119320号公報、特開2010−5028240号公等に記載される合成方法によって行うことができる。
上記のクリック反応基がアジド基及びアルキニル基である場合において、リンカーと結合させるクリック反応基を含む化合物としては特に限定されず適宜選択されることが好ましいが、クリック反応基含有糖鎖供与体としての調製のし易さ及び糖鎖転移収率の観点からは、下記の一般式(3−1)又は(3−2)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 0006888207
一般式(3−1)中のA及び一般式(3−2)中のKは、それぞれ一価の置換基を表す。一価の置換基としては、前記オリゴ糖残基と結合できるものであれば特に限定されないが、例えば、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、臭素基、塩素基、スルホンサン基、リン酸基、下記構造式(L−1)又は(L−2)で表される置換基等が挙げられる。
Figure 0006888207

*は、上記一般式(3−1)又は(3−2)中のポリエチレングリコールの末端への結合位置を表す。
上記一般式(3−1)で表される化合物の一部は市販されており、例えば、アジド基を含み、官能基が導入された化合物として、11−アジド−3,6,9−トリオキサウンデカン−1−アミン(東京化成工業社製)が知られており、またアルキニル基が導入された化合物として2−[2−(2−プロピニルオキシ)エトキシ]エチルアミンやプロパルギル−PEG5−NHS(東京化成工業社製)が知られている。
また、クリック反応基含有糖鎖供与体の調製においては、上記のリンカーの形成に用いる化合物をそのまま用いてもよいし、リンカーの形成に用いる化合物に官能基を導入したものを用いてもよい。また、リンカーと、上記のリンカー非含有糖鎖供与体との結合を形成させる場合には、例えば、一般式(1)中のX〜Xの少なくとも一つの糖質由来の基が酸性糖残基を有していれば、当該リンカー非含有糖鎖供与体をそのままリンカーとの結合に用いることができるので好ましい。一方、酸性糖残基を有していない場合には、糖質由来の基中のオリゴ糖残基に酸性残基等の官能基を導入したものを用いることができる。官能基の種類としては、例えば、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、イソシアネート基、水酸基、エポキシ基等が挙げられる。
なお、糖質由来の基のオリゴ糖残基とリンカーに用いる化合物との結合種、及びクリック反応基を有する化合物とリンカーに用いる化合物との結合種はどのようなものであってもよく、例えば、アミド結合、エステル結合、エーテル結合、スルフィド結合、及びスルホ基を介した結合等が挙げられる。
一般式(1)において、Yは酸素原子、窒素原子、炭素原子及び硫黄原子がGlcNAcの1位の炭素に直接結合する構造を含む置換基が挙げられる。
としては、糖鎖転移収量及び糖鎖転移収率を低下させるものでなければ、特に限定されない。例えば、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アルキルエステル基、アリールエステル基、アミノ基、アミド基、イミド基、アジド基、カルボキシル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基又はハロゲン基が挙げられ、これらの基の中で、アルコキシ基、アルキルエステル基、アリールエステル基、アミド基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基及びアリールスルホニルオキシ基は、さらに置換基を有していてもよい。
以上の中でも、糖鎖供与体としての調製のしやすさから、Yはヒドロキシル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルケニルオキシ基、置換基を有していてもよいアミド基が好ましい。
さらに、糖鎖供与体としての調製のしやすさ及び糖鎖転移収率の観点から、Yは炭素数1〜10の置換基を有していてもよいアルコキシ基、炭素数2〜10の置換基を有していてもよいアルケニルオキシ基、炭素数6〜24の置換基を有していてもよいアリールオキシ基が好ましく、さらに炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数2〜6のアルケニルオキシ基、炭素数6〜12の置換基を有していてもよいアリールオキシ基及び置換基を有していてもよいアミド基が特に好ましい。
具体的には、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、パラメトキシフェノキシ基、パラニトロフェノキシ基などが挙げられる。
また、置換基を有していてもよいアミド基としては、ペプチド又は蛋白質のアスパラギンの側鎖のアミノ基が結合したアミド基であることが好ましく、反応溶液中への溶解度及び糖鎖転移収率の観点からはペプチドのアスパラギンの側鎖のアミノ基が結合したアミド基がより好ましく、さらに下記N−1及びN−2に示すようなアミド基であることが最も好ましい。
Figure 0006888207


(N−1はGlcNAcに結合したアスパラギン、N−2はGlcNAcに結合したアスパラギンを含むヘキサペプチド(ペプチド部分の配列はLys−Val−Ala−Asn−Lys−Thr)を示す。*はGlcNAcの1位との結合位置を示す。)
また、上記の置換されていてもよい置換基は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、ピリジル基から選択される少なくとも1つであり、置換基が2以上ある場合には、それぞれの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
上記のような糖鎖を調製する方法としては、天然から抽出する方法もしくは化学的に調製する方法が考えられる。複合型糖鎖の中でも、糖残基数の多い糖鎖供与体、例えば8糖以上のオリゴ糖残基を有する糖鎖供与体は、調製の容易さから、卵黄から抽出する方法(例えば国際公開96/2255パンフレット及び特開2011−231293号公報)や、これらの方法とエキソグリコシダーゼ、例えば市販のシアリダーゼ、ガラクトシダーゼもしくはN−アセチルβグルコサミニダーゼを組み合わせることによって、比較的容易に糖鎖供与体を調製することができる。
天然から抽出する方法によって直接に得られる糖鎖供与体は、一般式(1)におけるYがアスパラギンを含むペプチドであるが、アルコキシ基を含む糖鎖供与体においては、調製における容易さから、上記の天然から抽出する方法で得られた糖鎖供与体を、N175Q変異体の作用によって、糖鎖受容体となるアルコキシ基を有するGlcNAc誘導体に糖鎖転移することで得ることができる。このような糖鎖転移によって調製する方法は、例えば特開平10−45788号公報に記載されている。
一方、例えば7つ以下のオリゴ糖残基を有する糖鎖供与体は、上記の方法でもよいし、化学的な合成法によっても調製することができる。化学的な調製法としては、例えば、Wangらの文献[J.Am.Chem.Soc.,Vol.134(29),12308(2012)]に記載の方法によって調製することができる。
また、上記の糖鎖供与体を用いたIgGの製造方法としては、エンドM変異体又はエンドM変異体ホモログの存在下、上記の糖鎖供与体とGlcNAc−ペプチド又はGlcNAc−蛋白質とを反応させることで、IgGを製造することもできる。さらに、糖鎖転移した後に、エキソ型の糖加水分解酵素や糖転移酵素とを組み合わせ、非還元末端側の糖残基もしくはオリゴ糖残基を除去もしくは付加させることによって、所望する複合型糖鎖を有するIgGを得ることもできる。
上記クリック反応基含有糖鎖供与体としては、調製のし易さ及び糖鎖転移収率の観点から、前記クリック反応基がアジド基又はアルキニル基のいずれかであり、前記リンカーが水溶性ポリマーに由来する構造を有し、前記クリック反応基含有糖鎖供与体中の前記クリック反応基の数が1〜4であり、上記一般式(1)中のYは、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルケニルオキシ基及び置換基を有していてもよいアミド基の群から選ばれるいずれか一つであることが好ましい。
さらに、前記クリック反応基がアジド基又はアルキニル基のいずれかであり、前記リンカーがポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールに由来する構造を有し、前記クリック反応基含有糖鎖供与体中の前記クリック反応基の数が1又は2であり、上記一般式(1)中のYは、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数2〜6のアルケニルオキシ基、炭素数6〜12の置換基を有していてもよいアリールオキシ基及び置換基を有していてもよいアミド基の群から選ばれるいずれか一つであることがより好ましい。
さらに、前記クリック反応基がアジド基又はアルキニル基のいずれかであり、前記リンカーがポリエチレングリコールに由来する構造を有し、前記クリック反応基含有糖鎖供与体中の前記クリック反応基の数が1又は2であり、前記一般式(1)中のX、X、X、X及びZが水素原子であり、XおよびX2の両方もしくは片方が、NeuAc、NeuGc、GlcA及びGlcNAcAから選ばれる酸性糖残基の少なくとも一つを含み、上記一般式(1)中のYは、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、パラメトキシフェノキシ基、パラニトロフェノキシ基及びペプチドのアスパラギンの側鎖のアミノ基が結合したアミド基の群から選ばれるいずれか一つであることが特に好ましい。
さらに、前記クリック反応基がアジド基又はアルキニル基のいずれかであり、前記リンカーがポリエチレングリコールに由来する構造を有し、前記クリック反応基含有糖鎖供与体中の前記クリック反応基の数が1又は2であり、前記一般式(1)中のX、X、X、X及びZが水素原子であり、XおよびX2の両方もしくは片方がNeuAcα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuAcα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuGcα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−2、NeuGcα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2、GlcAβ1−2及びGlcNAcAβ1−2のいずれか一つであり、Yは、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、パラメトキシフェノキシ基、パラニトロフェノキシ基、アルキル基及びペプチドのアスパラギンの側鎖のアミノ基が結合したアミド基の群から選ばれるいずれか一つであることが最も好ましい。
上記クリック反応基含有糖鎖供与体としては、具体的には以下のものを挙げることができるが、本開示の製造方法はこれらに限定されるものではない。
Figure 0006888207
Figure 0006888207
Figure 0006888207
Figure 0006888207
上記の一般式(4−1−1)〜一般式(4−4−2)中、nは、それぞれ独立に、1以上の整数を表し、1〜20であることが好ましい。
(糖鎖受容体)
本開示における糖鎖受容体としては、GlcNAcを含み、GlcNAcの1位がペプチド又は蛋白質に結合したものであれば、エンドM変異体の糖鎖転移活性を阻害するものでない限り、特に限定されない。
しかし、糖鎖受容体としての調製のしやすさ及び糖鎖転移収率の観点から、下記一般式(2)で表される糖鎖受容体であることが好ましい。
GlcNAc−R 一般式(2)
(一般式(2)中、Rはアスパラギン残基を含むペプチド又は蛋白質を表す。GlcNAcはN−アセチルグルコサミニル基を表す。)
GlcNAc−ペプチドやGlcNAc−蛋白質としては、上記に記載した糖ペプチド又は糖蛋白質のN−結合型糖鎖の非還元末端部位を除去したものが挙げられる。また、天然に存在する糖蛋白質におけるN−結合型糖鎖が結合するアスパラギンのC末端側には、アスパラギンから2つ目のアミノ酸残基が必ずスレオニン残基かセリン残基であることが知られているが、本開示における糖鎖受容体においても同様である。
本開示の糖鎖受容体としてのGlcNAc−ペプチド又はGlcNAc−蛋白質は、上記の糖ペプチド又は糖蛋白質から、市販のエンド酵素や自家調製したエンド酵素の加水分解処理によって調製することもできるし、アスパラギンにGlcNAcが結合した糖アミノ酸の誘導体において、アミノ酸部位を順次伸長する方法(特許文献、特開平10−45788号公報)で糖ペプチドを調製することもできる。
市販のエンド酵素としては、エンドM(東京化成工業社製),エンドH(ニューイングランドバイオラボ社製)、エンドS(シグマ−アルドリッチ社製),エンドD(コスモバイオ社製),エンドF1〜F3(シグマ−アルドリッチ社製)などが挙げられる。また、市販されていない酵素としては、GHファミリー85に属するグリコシルヒドラーゼ、又はGHファミリー18に属し、かつN−結合型糖鎖を加水分解する酵素であることが示されているものを挙げることができる。
〜GlcNAc−IgG〜
本開示の一実施形態においては、糖鎖受容体として、定常領域にGlcNAc基が結合したIgG(GlcNAc−IgG)を用いることができる。この中でもGlcNAc−IgG1であることが好ましい。
本開示におけるGlcNAc−IgGとは、免疫グロブリンG(IgG)を製造するために用いられる糖鎖受容体であり、1つの定常領域に1つのN−アセチルグルコサミニル基(GlcNAc)が結合した免疫グロブリンG(IgG)である。したがって、GlcNAc−IgGとしては、2つの定常領域に2つのGlcNAcが結合したものと、1つのGlcNAcが結合した1つの定常領域とGlcNAcが結合していない定常領域のものの2種が存在する。本開示においては、両方のIgGを含む。
糖鎖受容体の調製に用いられるIgGの調製方法としては、市販の抗体医薬品の成分であるIgGを用いてもよいし、抗体遺伝子を導入した細胞を用いた方法によって調製されたものを用いてもよいし、酵母によって調製されたものを用いてもよい。
また、糖鎖受容体の調製に用いられるIgGのフコースの含有率としては、ADCC活性の点から、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、特に10%以下であることが好ましい。
GlcNAc−IgGの製造方法としては、国際公開第2013120066号に記載されているように、IgGをエンド酵素、もしくはエキソ型の糖質加水分解酵素で処理することによって得ることができる。エンド酵素としては、例えば、市販の酵素、エンドM(東京化成工業社製),エンドH(ニューイングランドバイオラボ社製)、エンドS(シグマ−アルドリッチ社製),エンドD(コスモバイオ社製),エンドF1〜F3(シグマ−アルドリッチ社製)などが挙げられる。また、市販されていない酵素としては、GHファミリー85に属するグリコシルヒドラーゼ、及びGHファミリー18に属するエンテロコッカスフェカリス由来のエンド酵素(Genbank AAR20477)を調製したものを用いてもよい。これらのエンド酵素は、IgGが含有するN−結合型糖鎖の種類によって、単独でも組み合わせて用いてもよい。
上記のエンド酵素の中でも、IgGが有する様々な種類の糖鎖を加水分解することができる点において、エンドMが最も好ましい。
本開示のIgGの好ましい製造方法は、配列番号1で示されるアミノ酸配列の175番目のアミノ酸残基がグルタミンであるアミノ酸配列を有する変異型エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ、あるいは配列番号1で示されるアミノ酸配列の175番目のアミノ酸残基以外の1個又は複数個のアミノ酸残基の欠失、付加及び又は置換により、前記アミノ酸配列に対して90%以上の相同性の範囲内で修飾されたアミノ酸配列を有する変異型エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの存在下、一般式(1)で表される糖鎖供与体と、糖鎖受容体であるIgG1とのモル比率(糖鎖供与体のモル数/糖鎖受容体のモル数)を50以上で反応することにより製造する方法である。
(反応)
本開示の反応は、エンドM変異体又はエンドM変異体ホモログ、糖鎖供与体及び糖鎖受容体を溶解させた溶液中で行われる。反応に用いる溶液としては、エンドM変異体又はエンドM変異体ホモログの糖鎖転移活性を阻害しないものでれば特に限定されないが、例えば、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、炭酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、MOPS緩衝液、HEPES緩衝液、ホウ酸緩衝液及び酒石酸緩衝液などが挙げられる。これらの緩衝液は、単独でも組み合わせて用いられてもよい。
上記の中でも、エンドM変異体又はエンドM変異体ホモログの糖転移活性の点から、リン酸緩衝液が好ましく、具体的には、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウムが好ましく、より好ましくはリン酸ナトリウム、リン酸カリウムである。
また、リン酸緩衝液の濃度としては、エンドM変異体又はエンドM変異体ホモログの糖転移活性の点から、10mM〜250mMが好ましく、20mM〜150mMがより好ましく、より好ましくは50mM〜100mMである。10mM以上とすることで緩衝能力を高め、250mM以下とすることで、エンドM変異体又はエンドM変異体ホモログの糖鎖転移活性を高め、糖鎖転移収率及び糖鎖転移収量を高めることができる。
また、反応における溶液のpHは、糖鎖転移収率及び糖鎖転移収量を高める観点から、5.5〜8.5が好ましく、6.0〜8.0がより好ましく、6.5〜7.5が特に好ましい。
糖ペプチド又は糖蛋白質の製造方法においては、糖鎖転移収率の観点から、糖鎖供与体の糖鎖受容体に対するモル比率(糖鎖供与体のモル濃度/糖鎖受容体のモル濃度)は、0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましく、1以上であることが特に好ましく、3以上であることが最も好ましい。モル比率が0.1以上であることで、エンドM変異体又はエンドM変異体ホモログの糖鎖転移活性を高めて反応時間を短縮化することができ、かつ糖鎖転移収量及び糖鎖転移収量を高めることができる。
また、糖蛋白質であるIgGの製造方法においては、糖鎖転移収率の観点から、糖鎖供与体の糖鎖受容体に対するモル比率(糖鎖供与体のモル数/糖鎖受容体のモル数)は、5以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、25以上であることが特に好ましい。モル比率を5以上とすることで、エンドM変異体又はエンドM変異体ホモログの糖鎖転移活性を高めて反応時間を短縮化することができ、かつ糖鎖転移収率及び糖鎖転移収量を高めることができる。
一方、糖鎖供与体製造における経済的な観点からは、前記モル比率は0.5〜20であることが好ましく、さらに1〜10であることが好ましく、より好ましくは1〜4である。0.5以上であることで、より糖鎖転移収率を高め、20以下であることで糖鎖供与体製造においてより経済的である。
反応における温度としては、エンドM変異体又はエンドM変異体ホモログの糖鎖転移活性の観点、糖鎖転移収率、糖鎖転移収量を高める観点及び糖鎖受容体やエンドM変異体等の安定性の観点から、4℃〜45℃であることが好ましく、20℃〜40℃であることがより好ましく、25℃〜35℃であることが特に好ましい。4℃以上とすることで、エンドM変異体等の糖鎖転移活性を高めることができ、35℃以下とすることで、糖鎖転移収率及び糖鎖転移収量を高めることができる。
また、不安定な糖鎖受容体への糖鎖転移反応を行う場合には、上記の温度範囲の中でもできるだけ低い温度での反応、すなわち4℃〜10℃での反応が好ましく、特に4℃での反応が好ましい。
IgGを糖鎖受容体に用いる場合の、反応時間としては、エンドM変異体又はエンドM変異体ホモログの糖鎖転移活性の観点と糖鎖転移収率の観点から、5時間〜100時間であることが好ましく、20時間〜70時間であることがより好ましく、35時間から50時間であることが特に好ましい。反応時間を5時間以上とすることで、糖鎖転移収率を高め、100時間以下とすることで、糖鎖転移収量を高めることができる。また、反応方法としては、反応の糖鎖転移収率をさらに高める観点から、一定時間の反応後に、再度、反応溶液中に糖鎖供与体とエンドM変異体又はエンドM変異体ホモログを添加して、一定時間反応させることが好ましい。
IgGを糖鎖受容体に用いる場合の、反応における糖鎖供与体の反応溶液中における濃度としては、糖鎖転移収率の観点から、1μM〜150μMが好ましく、1μM〜50μMがより好ましく、10μM〜50μMが特に好ましい。
(糖蛋白質を含有させた医薬用組成物)
本開示で製造される糖ペプチド又は糖蛋白質は、製造方法として固体、動物組織及び細胞等を使用しないので、外部からの夾雑物又はウィルスなどは混入する可能性は極めて低いので、安全かつ機能を維持した医薬用組成物や薬品の構成成分として提供できる。また、医薬用組成物は、本開示の一実施形態によって製造された糖ペプチド又は糖蛋白質の他、製薬上許容し得る安定化剤、緩衝剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、嬌味剤、着色剤、香料等を適宜添加して、注射剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等の剤形にすることができる。
また、本開示の一実施形態で製造されるIgGは、特定の複合型糖鎖を高含有率で有するIgGであるため、医薬用組成物として極めて有用である。本開示による製造方法によって、所望される糖鎖構造のみを持ったIgGを調製できるため、ADCC活性やCDC活性、及び血中安定性の効果の程度をあらかじめ予想できるような抗体医薬の調製に貢献できる。
以下、本開示の製造方法を実施例によって詳細に説明するが、本開示の製造方法の範囲はこれらの実施例に記載された態様に限定されるものではない。
<糖鎖受容体>
本実施例で用いられる、糖鎖受容体の調製に用いられる市販のモガムリズマブ製剤(協和発酵キリン社製)はIgG1であり、以下の性質を有する。
・分子量:149000
・糖鎖構造:Galが0〜2個付加したFucの含まない複合型糖鎖を主に含有し、Galが0〜2個付加したFucを含む複合型糖鎖及びその他のN−結合型糖鎖を含む
・構造:可変領域の一部がマウス型に置換されたヒト型IgG1
・機能:CCケモカイン受容体4を抗原とする
・調製:モガムリズマブをコードする遺伝子発現構成体をチャイニーズハムスター卵巣細胞に導入し、その後に発現誘導を行って調製
<エンドM変異体>
本実施例で用いられる、エンドM変異体は、N175Q変異体(東京化成工業社製、グライコシンターゼリコンビナント)を用いた。
<各種試薬>
糖鎖供与体の調製、糖鎖受容体の調製及び各種測定に用いた試薬は特に記載がない場合、東京化成工業社製のものをそのまま使用した。
<各種測定方法>
IgG等の精製におけるクロマトグラフィーは、GEヘルスケア社製のProteinA−セファロースを用いたカラム操作により、流速0.5ml/minで行った。カラムは孔径10mmで長さが90mmの簡易カラム(バイオラッド社製)に単体を充填し、所定の緩衝液で平衡化した後に使用した。
CEによる測定は、キャピラリーカラム(長さ30.2cm×孔径50μm、ベックマンコールター社製、ペアーヒューズドシリカ)を備えたベックマンコールター社製のProteomeLab PA800を用い、下記分析条件にて行った。
・分析条件:試料注入後、25℃、15kvの電圧で30分間測定
・検出波長:200nm
なお、CE測定では、測定の前に、還元条件もしくは非還元条件にてあらかじめサンプルの前処理を行った。還元処理を行う理由は、図1に示すように、IgGのS−S結合が切断されて、分子量の大きい重鎖と分子量の小さい軽鎖を生じさせた後にCE測定することで、非還元処理の場合よりも、試料中の糖鎖転移した重鎖と糖鎖転移していない重鎖とのピーク分離がよく、反応の確認が容易になるためである。なお還元処理後の試料は、試料溶液に対し50mMのジチオトライトール(DTT)を加えて、100℃にて10分インキュベートして得られるものを用いた。
SDS−PAGEによる測定は、市販のスラブゲル用の装置(アトー社製のAE−6530)において、15%のポリアクリルアミドゲル(アトー社製のe−PAGEL)を用い、20mAで70分間電気泳動後に、ゲルをクマシブリリアントブルーで染色し、得られたゲルを評価した。マーカーとしては、DynaMarker Muli ColorIII(Biodynamics Laboratory社製)を用いた。なお、検出においては、市販のクマシブリリアントブルーを用いる方法で行った。
また、蛋白質の溶液中での濃度は、該溶液に280nmのUV透過光を照射して得られる吸光度を一般的なUV検出器により測定することで見積もられた。
レクチンブロットは、SDS−PAGEを、市販のスラブゲル用の装置(アトー社製のAE−6687)で行った後、PVDF膜(ミリポア社製、Immobilon−P)に
ブロティング装置(アトー社製、Absorbent Paper CB−09A)を用い、泳動後のゲルを、1mA/cmで60分ブロットすることで転写させ、得られた膜を、その後のレクチン染色に供した。なおマーカーは、上記と同じものを用いた。
NMR測定においては、日本電子社製ECA−400を使用した。
MALDI−TOF MS測定は、ブルカー・ダルトニクス社製autoflex speed−tko1リフレクタシステムを用いて行った。
HPLC測定においては、LaChrom Elite L2000シリーズシステム(日立ハイテクノロジーズ社製)にカラムMightysilRP−18(関東化学社製)を接続し、溶離液として0.1%TFAを含むアセトニトリルと0.1%TFAを含む水とのグラジエント勾配を有する溶液を用い、検出波長を210nmとした。
〔実施例1〕
<糖鎖受容体の調製>
上記の市販のモガムリズマブ製剤18mgを、リン酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH6.25、15ml)に溶解させ、膜濃縮装置[分画分子量10000、アミコンウルトラ15(メルクミリポア社製)]にて4℃で、緩衝液の交換を行った。上記によって得られたモガムリズマブ(IgG1)18mgをリン酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH6.25、15ml)に溶解し、37℃でエンドMの1.5ユニット(U)(約0.600mg)を加え恒温槽中(EYELA社製、THERMISTOR TEMPPET T−80)で振盪しながらインキュベートした。反応溶液は経時的にCEで分析し、図1及び図2のように、IgGから、N−結合型糖鎖のエンドMによる加水分解が完全に行われることを確認するまでCEによる検出を続けた。
48時間後、反応溶液をGE社製のプロテインA−セファロース担体(0.7ml)が充填されたカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィーに供した。クロマトグラフィー操作においては、カラムに反応後の溶液を添加後、はじめにTBS[トリス-塩酸緩衝液(50mM、pH7.5、50mM NaCl含有)]7mlで洗浄し、その後クエン酸緩衝液(50mM、pH3.0.50mM NaCl含有)7mlで、結合したIgGを溶出させた。溶出液は直ちにトリス-塩酸緩衝液(1.0M、pH8.0)で中和した後、膜濃縮装置[分画分子量10000、アミコンウルトラ15(メルクミリポア社製)]を用い、リン酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH7.4、50mM NaCl含有)で、pHが中性になるまで何度も緩衝液の添加と遠心濃縮を繰り返した。なお、図1が示すように、反応時間5時間後、24時間後の試料も同様な操作によって下記のCE測定用の資料を得た。
以上の操作により、反応時間が48時間であった場合に得られたGlcNAc−IgG(糖鎖受容体)は14.6mgであった。
反応の経過は図1及び図2に示す。これらの結果から、還元処理後のCE測定による結果(図1)も、非還元処理後のCE測定による結果(図2)も、24時間後では、原料であるIgGのピークが完全に消滅し、保持時間の短い場所に、新たなピークが生成していることが示された。以上により、原料のIgGがエンドMにより加水分解されて、GlcNAc−IgGがほぼ定量的に生じていることが示された。
<糖鎖供与体>
本実施例で用いられる、糖鎖供与体は、シアログライコペプチド(SGP、東京化成工業社製)であり、以下の構造を有する。なおペプチド部位のHはアミノ末端の水素、OHはカルボキシル末端の水酸基を示す。
Figure 0006888207
<糖鎖転移反応>
上記にて得られたGlcNAc−IgG(糖鎖受容体)12.0mgを、リン酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH7.0、1.2ml)に溶解させ、N175Q変異体(エンドM変異体)3.6U(3.6mg)及び、SGP(糖鎖供与体)69.7mgを加え(最終濃度24.6μM)、恒温槽にて30℃で振盪させながらインキュベートした。糖鎖転移反応の経過は、上記の所定時間のインキュベート後に、反応溶液から一部の溶液を採取し、直接CE測定を行うことで、確認した。インキュベートしはじめてから48時間後、再度、N175Q変異体3.6U(3.6mg)及び、SGP(東京化成工業社製)69.7mg(24μM)を加え、さらに22時間インキュベートした。
上記で得られたIgGを含む溶液1ml(IgGの含有量は12.0mg)は、プロテインA−アガロース担体(0.7ml)が充填されたカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィーに供された。クロマトグラフィーにおいては、実施例1の糖鎖受容体の調製における操作と同様に行った。得られた均一な糖鎖が付加したIgGは6.6mgであった。
<糖鎖転移反応後の測定>
上記で行った各反応時間におけるCE測定の結果は図3及び図4に示す。また、各反応時間におけるSDS−PAGEの結果を図5に示す。また、CE測定における標準物質はベックマンコールター社製の10kdaリファレンスマーカーを用いた。図3及び図4中に「10kD」として示す。
図3及び図4の結果から、時間の経過とともに、GlcNAc−IgGのピークが減少する一方で、複合型糖鎖を有するIgGのピークが増加することが示された。特に、複合型糖鎖を有するIgGのピークはあまり減少せず、さらに70時間後には、GlcNAc−IgGのピークがほとんど見られなくなるまで減少した。
また、図5の結果から、0時間におけるIgGの重鎖のバンド(分子量45kDa〜50kDa付近)が、24時間後のレーンではかなり消失し、代わりに2kDa程度高分子量側に新たなバンドが現れ、70時間後では、IgGの重鎖のバンドがほぼ消失した。
上記で得られた反応後のIgGを含む溶液の一定量を上記のレクチンブロットに記載の方法で、PVDFメンブレンに転写(ブロッティング)させた。メンブレンを0.05%TWEEN20を含有したTBS(TBST)で洗浄した後、1%の牛血清アルブミン(1%BSA)を含むTBSTで1時間常温にてブロッキングを行った。ブロッキング後、メンブレンをTBSTで5分間3回洗浄した後に、ビオチン化SSAレクチン(J−オイルミルズ社製)を2μg/mlの濃度で加え、2時間常温にてインキュベートさせた。インキュベート後、メンブレンをTBSTで5分間、室温で3回洗浄した後に、ホースラディッシュ パー オキシダーゼ化ストレプトアビジン(ベクター社製)を2μg/mlの濃度で2時間常温にてインキュベートさせた。インキュベート後、メンブレンをTBSTで5分間、室温で3回洗浄した後に、DAB HRP substrate(ベクター社製)を添加し、発色したバンドを目視で検出することで、α2−6結合したNeuAc又はNeuGcの含有の有無を判断した。結果を図6に示す。
結果から、エンドM処理の前及びエンドM処理後のレーン1及びレーン2ではバンドが見られず、糖鎖転移反応を行った後のレーン3(矢印の部分)では、45〜48kDa付近の重鎖のバンドの数kDa上部に明らかなバンドが現れた。このことから、糖鎖転移反応後のIgG(モガムリズマブ)は、α2−6結合したシアル酸の構造を含む複合型糖鎖を有していることが示された。
以上の結果から、糖鎖受容体であるGlcNAc−IgGに対し、エンドM変異体の作用によって、糖鎖供与体の糖鎖供与部分が効率よく転移し、複合型糖鎖を高含有で有するIgGが得られることが示された。また、比較的長時間において反応を行っても、徐々にGlcNAc−IgGが減少していることから、糖鎖供与体自体が安定に溶液中に存在し、エンドM変異体の基質としての役割を有していることが示された。
〔実施例2〕
<糖鎖受容体>
糖鎖受容体としては、実施例1に用いた糖鎖受容体であるGlcNAc−IgG(市販のモガムリズマブ製剤のN結合型糖鎖を酵素処理したもの)をそのまま用いた。
<糖鎖供与体(化合物A−1)の調製>
下記構造を有するジシアロノナサッカライド−β−O-pNP(東京化成工業社製、製品番号N0913)の1.00g(0.426mmol)に、DMF50mlを加えて40℃に加熱して溶解させた。その後、11−アジド−3,6,9−トリオキサウンデカン−1−アミン(MW=218.24)2.54ml(12.8mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン2.20ml(12.8mmol)、1−シアノ−2−エトキシ−2−(オキソエチリデンアミノキシ)ジメチルアミノ−モルホリノカルベニウムヘキサフルオロフォスフェート5.48g(12.8mmol)を加えて20時間撹拌した。−O-pNPはパラニトロフェノキシ基を表す。
Figure 0006888207
反応の完了を、薄層クロマトグラフィー〔展開溶液;酢酸エチル/メタノール/水/酢酸=8/6/4/1、v/v〕を用い、Rf値が0.18付近に現れる出発物質の消失によって確認した。反応後の溶液を減圧濃縮することで得た粗体をゲルろ過カラムクロマトグラフィー(充填剤:SephadexLH−20(GEヘルスケア社製)、溶出液:メタノール)にて分離した後に、溶媒を除去し、生成物(化合物A−1(642mg))を得た。生成物について、NMR測定及び質量測定を行い下記の結果を得た。
・NMR測定
1H-NMR (400 MHz,D2O) δ: 8.12 (2H, d, Ph), 7.04 (2H, d, Ph), 5.18 (1H, d, H-1(GlcN)), 5.00 (1H, s, H-1(Man)), 4.81 (1H, s, H-1(Man)), 4.50 (1H, d, H-1(GlcN)), 4.46 (2H, d, H-1 x2(GlcN)), 4.31 (2H, d, H-1 x2(Gal)), 4.12 (1H, s, H-2(Man)), 4.06 (1H, s, H-2(Man)), 3.98 (1H, s, H-2(Man)), 3.93 (2H, t), 2.57 (2H, dd, H-3eq x2(Neu)), 1.97 (3H, s, CH3), 1.92 (6H, s, CH3 x2), 1.90 (6H, s, CH3 x2), 1.88 (3H, s).
・質量測定
MALDI−TOF MS:m/z calcd for C10617315NaO68 :2767.04;found:2767.55
以上の測定結果から、糖鎖供与体である化合物A−1を、収率55%で得られたことを確認した。
<糖鎖転移反応>
糖鎖受容体GlcNAc−IgGの4.0mgを、リン酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH7.0、0.4ml)に溶解させ、N175Q変異体(エンドM変異体)1.2U(1.2mg)及び、化合物A−1(糖鎖供与体)22mgを加え(最終濃度16μM)、恒温槽にて30℃で振盪させながらインキュベートした。所定時間後に、反応溶液から一部の溶液を採取し、直接CE測定を行うことで、糖鎖転移反応の経過を確認した。インキュベートしはじめてから22時間後に、再度、N175Q変異体1.2U(1.2mg)、及び化合物A−1(糖鎖供与体)22mg(24μM)を加え、さらに22時間インキュベートした。なお、化合物A−1中のアジド基を含むポリエチレングリコール(PEG)由来の構造を有するリンカーに相当する部分を、単にN3-PEGと称し、前記アジド基を含むリンカーが結合したジシアログリカン(SG)に相当する部分を、単にN3-PEG-SGと称することがある。また、SGとは、上記のジシアロノナサッカライド−β−pNP中におけるパラニトロフェノキシ基以外の部分を示す。
また、実施例中、糖鎖供与体中の糖鎖構造を有する部分、例えば、SGPの中のジシアログリカン(SG)に相当する部分を単に糖鎖部分と称することがある。
上記で得られたインキュベート後の溶液0.4ml(IgGの含有量は4.0mg)について、実施例1の糖鎖受容体における操作と同様に、プロテインA−アガロース担体(0.2ml)を充填したカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィーによる精製を行い、IgG画分として1.7mgを得た。
<糖鎖転移反応後の測定>
上記で行った糖鎖転移反応後の生成物を還元処理したものについて、CE測定を行った結果を図7に示す。図7中の(a)は、インキュベートを開始した直後(0時間後)の生成物のCE測定による結果を示し、図7中の(b)は、上記で行った糖鎖転移反応後(44時間後(糖鎖供与体及びN175Q変異体を追加後22時間後))の生成物のCE測定による結果を示す。また、CE測定における標準物質はベックマンコールター社製の10kdaリファレンスマーカーを用いた。図7中に「10kD」として示す。
また、上記で行った糖鎖転移反応後の生成物を還元処理したものについてMALDI−TOF MS測定を行った結果を図8に示す。さらに、糖鎖受容体及び糖鎖転移反応後の生成物についてのSDS−PAGEの結果を図9に示す。
図7の結果から、反応時間0時間(図7中の(a))におけるGlcNAc−IgG(糖鎖受容体)のピークが、糖鎖転移反応後(図7中の(b))にはほとんど消失し、代わりに、破線で示すGlcNAc−IgGのピークの位置から矢印で示した高保持時間側の位置に、新しいピークが生ずることが示された。
また、図8の結果から、反応時間0時間(図7中の(a))ではGlcNAc−IgG(糖鎖受容体)の還元後の重鎖に相当する質量ピークが、糖鎖転移反応後(図7中の(b))にはほとんど消失した。代わりに、高質量側、すなわちN3−PEGが結合した複合型糖鎖(N3−PEG−SG)分の分子量が増加した位置に質量ピークが出現した。
また、図9の結果から、エンドM処理前の分子量45kDa〜50kDa付近のバンド(レーン1)が、エンドM処理後(レーン2)には低分子量側にシフトし、さらに、上記の糖鎖転移反応後(レーン3)には、高分子量側に新たな濃い濃度のバンドが現れた。
以上の図7〜9の結果から、糖鎖受容体であるGlcNAc−IgGに対し、エンドM変異体の存在下に糖鎖供与体である化合物A−1(N3−PEG−SG−PNP)を用いて糖鎖転移させることで、2つのN3-PEG-SGを有するIgG(モガムリズマブ)を高収率で得られることが示された。
以上の実施例1及び実施例2の結果から、キトビオシル構造を有する安定な糖鎖供与体を用いることで糖鎖受容体に対し糖鎖転移反応が効率よく進行し、所望の糖鎖供与部分を有する糖蛋白質を高収率で製造可能であることが示された。
〔実施例3〕
<糖鎖受容体>
GlcNAc1−β−O−pNP(東京化成工業社製)をそのまま用いた。
Figure 0006888207

<糖鎖供与体(化合物110)の調製>
糖鎖供与体に用いるGlcNAcA−M3GN2−MP(化合物110)は、石田らの文献[SFG-JSCR, Joint Meeting November,16-19(2014)]に記載された合成方法を参考にして、図に示すような合成経路によって合成した。すなわち、公知の化合物102と、市販の化合物101を反応させ6糖を構築した後脱保護し、4−メトキシフェニル3,6−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−2−フタルイミド―β―D−グルコピラノシドとのグリコシル化反応によって7糖を構築した。続いて7糖を脱保護し、更にアセチル化してアセトアミド体へと誘導し、該アセトアミド体の非還元末端GlcNAcのベンジリデンアセタールを選択的脱保護した後、6位を選択的にカルボン酸へと変換した。その後、接触水素添加法によりベンジルエーテル基を脱保護することで、非還元末端にGlcNAcAを有する化合物110を得た。なお、MPとは、パラメトキシフェニル基を示す。
(化合物103の合成)
設楽らの文献[J. Biol. Chem. Vol.278,3466-3473(2003)]を参考にして合成できる公知の化合物102の500mg(0.28mmol)と、市販の化合物である4−メトキシフェニル−3−O−ベンジル−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−2−フタルイミド-β-D−グルコピラノシド(東京化成工業社製、製品番号M1609)700mg(1.1mmol)とを塩化メチレン12mLに溶解させ、さらにモレキュラーシーブを添加して溶液内を脱水乾燥させた。溶液を−20℃に冷却し、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホン酸を10μL(0.056mmol)添加し、反応させた。薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/1、v/v)にて生成物を確認した後に、トリエチルアミンを添加することで粗体を得た。得られた粗体を、カラムクロマトグラフィー[充填剤:PSQ100B(富士シリシア社製)、展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=2/1]にて精製し、目的とする化合物103を収率46%(収量350mg)で得た。
(化合物104の合成)
化合物103の350mg(0.12mmol)をトルエン5.3mL、アセトニトリル7.0mL、イオン交換水3.5mLの混合溶液に溶解させ、系内を0℃に冷却した。これに硝酸アンモニウムセリウム(IV)を0.7g(1.28mmol)加えて反応させた。反応経過は薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/1、v/v)にて確認を行った。反応の終結を確認した後に、分液処理を行うことで有機層を回収し、粗体を得た。得られた粗体を、カラムクロマトグラフィー(PSQ100B (富士シリシア社製)展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)により精製し、目的とする化合物104を収率57%(収量192mg)で得た。
(化合物105の合成)
前記化合物104の192mg(0.073mmol)に塩化メチレン1.9mLを加えて溶解させた。これを0℃に冷却し、トリクロロアセトニトリル74μL(0.73mmol)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン1μL(0.007mmol)を加えて反応させた。反応経過は薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/酢酸エチル=2/1、v/v)にて確認を行った。反応終結を確認した後に、シリカゲル(PSQ100B (富士シリシア社製))を用いて酢酸エチルで洗浄して濾過を行い、濾液を濃縮して粗体の化合物105を収率98%(収量200mg)で得た。
(化合物106の合成)
化合物(5)200mg(0.0719mmol)と4−メトキシフェニル3,6−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−2−フタルイミド―β―D−グルコピラノシド(東京化成工業社製、製品番号M1615)171mg(0.29mmol)を塩化メチレン3.7mLに溶解させ、さらにモレキュラーシーブを加えて溶液を脱水乾燥させた。その後、溶液を−20℃に冷却し、トリフルオロメタンスルホンサントリメチルシリル0.7μL(0.0036mmol)を加えて撹拌することで反応させた。反応経過は薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/酢酸エチル=3/1、v/v)にて確認を行った。反応終結を確認した後、トリエチルアミンを加えて中和を行った。反応後の混合液をセライト濾過した後、濾液を濃縮した後にカラムクロマトグラフィー(充填剤:PSQ100B(富士シリシア社製)、展開溶媒:トルエン/酢酸エチル=6/1)にて精製を行い、目的とする化合物106を収率65%(収量150mg)で得た。
(化合物107の合成)
化合物106の150mg(0.047mmol)を、n−ブタノール3mLに溶解させ、無水エチレンジアミン190μL(2.8mmol)を加えて還流撹拌することで反応させた。反応経過は薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:塩化メチレン/メタノール=20/1、v/v)にて確認を行った。生成物の確認を行い、反応が終結したことを確認した後に、無水酢酸0.9mL(9.3mmol)を添加し撹拌することでアセチル化を行った。アセチル化反応の経過は、薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:塩化メチレン/メタノール=20/1、v/v)にて確認した。反応終結を確認した後、トリエチルアミンを加えて中和を行い、さらに分液処理によって有機層を回収して粗体を得た。得られた粗体を、カラムクロマトグラフィー(充填剤:PSQ100B (富士シリシア社製)、展開溶媒:塩化メチレン/メタノール=50/1)により精製し、目的とする化合物107を収率80%(収量100mg)で得た。
(化合物108の合成)
化合物107の100mg(0.035mmol)に塩化メチレン2mLを加えて溶解させた。これに室温で80%トリフルオロメタンスルホン酸水溶液を、反応液が濁らない程度加えて室温で撹拌させることで反応を行った。反応経過は薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:塩化メチレン/メタノール=20/1、v/v)にて確認した。反応終結を確認した後、反応液を分液処理し、有機層を回収して粗体を得た。得られた粗体はカラムクロマトグラフィー[充填剤:PSQ100B (富士シリシア社製)、展開溶媒:塩化メチレン/メタノール=30/1]にて精製を行い、目的とする化合物108を収率52%(収量48mg)で得た。
(化合物109の合成)
化合物108の24mg(0.0089mmol)にアセトニトリル0.5mLを加えて溶解させ、続いて0.74Mに調製したリン酸バッファー0.12mLを加えた。これに過塩素酸ナトリウム1.6mg(0.018mmol)、2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン 1−オキシ フリーラジカル0.2mg(0.0018mmol)、次亜塩素酸ナトリウム12%水溶液5μL(0.0018mmol)を順次添加し、室温にて撹拌することで反応を行った。反応経過は薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:塩化メチレン/メタノール=3/1、v/v)にて確認した。反応終結を確認した後、反応液は分液処理を行い、有機層を回収した。得られた粗体はカラムクロマトグラフィー[充填剤:PSQ100B(富士シリシア社製)、展開溶媒:塩化メチレン/メタノール=10/1]にて精製を行い、目的とする化合物109を収率55%(収量13mg)で得た。
(化合物110の合成)
化合物109の13mg(0.0047mmol)に酢酸エチル1.6mL、エタノール1.6mL及びイオン交換水0.8mLを加え溶解させた。これに水酸化パラジウム13mgを添加し、水素雰囲気下室温で一晩撹拌することで反応を行った。反応経過は薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/メタノール/水/酢酸=2/2/1/0.1、v/v)にて確認した。反応終結を確認した後、試薬を濾別し、得られた粗体はゲル濾過クロマトグラフィー(充填剤:GEヘルスケア社製セファデックスG−10、溶出液:イオン交換水)にて精製を行い、目的とする化合物110を収率93%(収量6.5mg)で得た。
・NMR測定
1H-NMR (D2O) δ: 7.03 (2H, dd, J = 8.9, 2.1 Hz, Ph), 6.95 (2H, dd, J = 9.2, 1.8 Hz, Ph), 5.11 (1H, s, H-1(Man)), 5.03 (1H, d, J = 8.2 Hz, H-1(GlcN)), 4.90 (1H, s, H-1(Man)), 4.62 (1H, d, J = 6.0 Hz, H-1(GlcN)), 4.57 (2H, d, J = 8.7 Hz, H-1(GlcN x2)), 4.24 (1H, s, H-1(Man)), 4.17 (1H, s, H-2(Man)), 4.10 (1H, s, H-2(Man)), 2.07 (3H, s, CH3), 2.05 (6H, s, CH3 x2), 2.03 (3H, s, CH3).
・質量測定
MALDI−TOF MS:m/z calcd for C64H92N4O39:1450.53;found:1450.19
以上の測定結果から、目的とする化合物110を、収率55%で得られたことを確認した。
<糖鎖転移反応>
糖鎖受容体であるGlcNAc−β−エチルアジド(東京化成工業社製)の0.625μmolを、リン酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH7.0、0.01ml)に溶解させ、N175Q変異体(エンドM変異体)10mU(1.0mg)及び、糖鎖供与体である化合物10の0.79μmolを加え(モル比率:糖鎖供与体のモル数/糖鎖受容体のモル数=1.264)、恒温槽にて30℃で振盪させながらインキュベートした。1時間後に、反応溶液から一部の溶液を採取し、HPLC測定を行うことで、糖鎖転移反応の経過を確認した。
<糖鎖転移反応後の測定>
上記で行った糖鎖転移反応後の生成物を還元処理したものについて、HPLC測定を行った結果を図10及び図11に示す。図10は、反応時間0時間後における結果を示し、図11は、反応時間1時間後における結果を示す。図10及び図11中の「糖鎖受容体」は、GlcNAc1−β−O−エチルアジドを示し、「糖鎖供与体」は化合物110ある。図11中の「GlcNAc1−β−O−MP」は、化合物110の1時間後での加水分解後生成物を示し、「転移物」は化合物110の還元末端が、糖鎖転移反応によって、1位がβ−O−エチルアジド化された生成物、すなわち化合物110のβ−O−MPがβ−O−エチルアジドとなった化合物を示す。
図10及び図11の結果から、反応時間0時間(図10)における糖鎖受容体と糖鎖供与体のピーク面積が、糖鎖転移反応後(図11))には減少し、代わりに、アクセプターのピークの位置から矢印で示した高保持時間側の位置に、新しいピークが生ずることが示された。また、ドナーの加水分解物の一部としてGlcNAc1−β−O−MPのピークも新たに生じた。
このように、糖鎖受容体であるGlcNAc1−β−O−エチルアジドに対し、エンドM変異体の作用により、糖鎖供与体である化合物110が短時間で、かつ低いモル比率で、より効果的に糖鎖転移させることが示された。
また、糖鎖供与体である化合物110の糖鎖部分は、一般式4−1−1で表される化合物の糖鎖部分(シアログライカン(SG))よりも構造が小さいためエンドM変異体の基質として反応阻害を起こしにくいと推測される。このことから、化合物110の糖鎖部分を有する上記一般式4−2−1で表される化合物も、一般式4−1−1で表される化合物と同様に、2つのN3-PEGを有するIgG(モガムリズマブ)を得るための有効な糖鎖供与体となり得ることが示唆された。
日本出願2014−232200の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

Claims (3)

  1. 配列番号1で示されるアミノ酸配列の175番目のアミノ酸残基がグルタミンであるアミノ酸配列を有する変異型エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ、あるいは配列番号1で示されるアミノ酸配列の175番目のアミノ酸残基がグルタミンであるアミノ酸配列を有する変異型エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼであって、かつ配列番号1で示されるアミノ酸配列の175番目のアミノ酸残基以外の1個又は複数個のアミノ酸残基の欠失、付加又は置換により、前記アミノ酸配列に対して90%以上の相同性の範囲内で修飾されたアミノ酸配列を有する変異型エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの存在下、
    下記一般式(1)で表される糖鎖供与体と、
    定常領域にN−アセチルグルコサミニル基が結合したIgG重鎖を含むポリペプチドである糖鎖受容体と、
    を反応させることにより糖ペプチド又は糖蛋白質を製造する糖ペプチド又は糖蛋白質の製造方法であって、
    Figure 0006888207

    前記一般式(1)で表される糖鎖供与体において、Y は、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、パラメトキシフェノキシ基、パラニトロフェノキシ基又は下記式N−1若しくはN−2であり、オリゴ糖残基NeuAcα2−6Galβ1-4GlcNacと、アジド基、アルキニル基、エポキシ基、アミノ基、チオール基又はイソシアネート基から選ばれるいずれか一つの基とが、重量平均分子量が100〜10000であり、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールに由来する構造を有するリンカーを介して結合した構造を有していてもよい、糖ペプチド又は糖蛋白質の製造方法
    Figure 0006888207

    (N−1はGlcNAcに結合したアスパラギン、N−2はGlcNAcに結合したアスパラギンを含むヘキサペプチド(ペプチド部分の配列はLys−Val−Ala−Asn−Lys−Thr)を示す。*はGlcNAcの1位との結合位置を示す。)
  2. 前記反応を、糖鎖供与体の糖鎖受容体に対するモル比率(糖鎖供与体のモル数/糖鎖受容体のモル数)5以上で行うことで免疫グロブリンGを製造する請求項1記載の糖ペプチド又は糖蛋白質の製造方法。
  3. 前記反応を、糖鎖供与体の糖鎖受容体に対するモル比率(糖鎖供与体のモル数/糖鎖受容体のモル数)1〜4で行うことで免疫グロブリンGを製造する請求項1又は請求項2に記載の糖ペプチド又は糖蛋白質の製造方法。
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