JPH0518703U - Ｈ形鋼圧延用複合スリーブロール - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ロールの原単位およびロール保有数の低減と
ともに、Ｈ形鋼に対する寸法精度向上の要求を満たし得
るＨ形鋼圧延用複合スリーブロールを提供する。 【構成】 強靭性を有する材料からなる中空円筒状のス
リーブ芯体２と、スリーブ芯体２の外周に設けられ、耐
摩耗性、耐焼付性、耐肌荒れ性等を有する材料からなる
中空円筒状の外スリーブ１とを焼きばめにより一体的に
固着してなり、スリーブ芯体２の内周面にはロール軸３
に設けた固定用凸部と噛み合う軸方向の凹部を設け、ス
リーブ芯体２の内周面をロール軸３に嵌合してある。固
定用凸部はキー又はスプライン等により形成できる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案はＨ形鋼の圧延に使用するロールに関するものであり、特にユニバーサ ルミルの水平ロールとして、スリーブの軸方向への移動を可能にすることにより 、スリーブの交換が容易なＨ形鋼圧延用複合スリーブロールに関するものである 。

【０００２】

【従来の技術及び考案が解決しようとする課題】

従来のＨ形鋼の圧延においては、一般的にユニバーサルミルの水平ロールが使 用されている。図６は、従来の水平ロールの一例を示す一部断面正面図である。

【０００３】 図６において、７は耐摩耗材によって形成したスリーブであり、ロール軸８に 、例えば焼きばめにより嵌着されている。９は被圧延Ｈ形鋼であり、ウエブ９ａ およびフランジ部９ｂが圧延により形成される。

【０００４】 上記のような水平ロールにおいて、被圧延材料と接触する部分をスリーブとし て形成し、ロール軸に焼きばめしてなる組立式ロールの場合、スリーブはほとん ど一体型に形成されるため、ロール軸を含めて一体に形成したものと同様に、ス リーブ７の側壁７ａ、７ａの摩耗量は、Ｈ形鋼９の製品寸法の許容誤差内でなけ ればならない。スリーブ７の側壁７ａ、７ａの摩耗量が前記許容誤差を超えると 、側壁７ａ、７ａを旋削して、一回り小さなサイズのＨ形鋼用とする。このため 一定サイズの圧延量は制限される。この結果、ロールの原単位が高くなるという 問題がある。また製品シリーズ毎に、例えば図６に示すスリーブ７の幅寸法の異 なる水平ロールを準備する必要があるため、ロール保有数が膨大となるという問 題も併存している。

【０００５】 ところが、ロールの原単位およびロール保有数の低減とともに、近年において Ｈ形鋼に対する寸法精度向上の要求が一段と厳しくなってきており、そのために 高精度のＨ形鋼圧延用複合スリーブロールが強く望まれている。

【０００６】 従って、本考案は、上記要求を満たし得るＨ形鋼圧延用複合スリーブロールを 提供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

本考案のＨ形鋼圧延用複合スリーブロールは、強靭性を有する材料からなる中 空円筒状のスリーブ芯体と、前記スリーブ芯体の外周に設けられ、耐摩耗性、耐 焼付性、耐肌荒れ性等を有する材料からなる中空円筒状の外スリーブとを焼きば めにより一体的に固着してなり、前記スリーブ芯体の内周面にはロール軸部に設 けた固定用凸部と噛み合う軸方向の凹部を設け、前記スリーブ芯体の内周面を前 記ロール軸部に嵌合したことを特徴とする

【０００８】

【作用】

従来形状のスリーブは圧延時のトルクをロール軸との焼きばめによる摩擦力で 伝達されるようになっているので、ロール軸に強く固着されている。従ってロー 軸からのスリーブの抜き出し等が困難であったのに対し、上記構成を有する本考 案のＨ形鋼圧延用複合スリーブロールではトルクをキー、スプライン等で伝達せ んとするので、スリーブの軸方向への移動またはスリーブの交換が容易となり、 Ｈ形鋼の製造計画に即応した対応、また摩耗等によるスリーブの軸からの抜き出 し交換作業が容易となる。

【０００９】

【実施例】

図１は本考案の一実施例によるＨ形鋼圧延用複合スリーブロールを示す一部断 面正面図である。また図２はその要部断面図である。図１および図２において、 １は外スリーブであり、耐摩耗性、耐焼付性、耐肌荒れ性等を有する材料により 中空円筒状に形成されている。２は強靭性を有する材料によりスリーブ芯体とし て中空円筒状に形成されており、前記スリーブ１の内周面に焼きばめにより嵌合 して一体化し、複合スリーブを形成する。３はロール軸であり、自身に削設した キー溝３１にキー４を嵌入してなる軸方向の凸部を有し、該凸部は、複合スリー ブ内周面に設けたキー溝である凹部２１に嵌入されている。なお６はナットであ り、スリーブの軸方向位置を固定する。

【００１０】 上記構成により、スリーブ芯体２は焼きばめにより圧縮残留応力が付与されて いるので、その内周面部に設けられた凹部２１の強度を向上させて、凹部２１か らの亀裂発生を防止することができる。ここで用いる焼きばめ率は０．３×１０ ^-3 〜１．５×１０^-3の範囲が好ましい。０．３×１０^-3未満であると、外スリー ブ１とスリーブ芯体２との間ですべりが生じるとともに、スリーブ芯体２に十分 な圧縮残留応力が付与されなくなる。１．５×１０^-3を超えると、外スリーブ１ は引張応力が過剰となって割損する。

【００１１】 今その具体例を挙げれば、図１のＨ形鋼圧延用水平ロールにおいて、外スリー ブ１の外径：１０６０φ、外スリーブの内径およびスリーブ芯体２の外径：６６ ０φ、スリーブ芯体の内径：５２５φとし、外スリーブ１の内径部とスリーブ芯 体２の外径部との焼きばめ率を０．７×１０^-3として焼きばめした場合、スリー ブ芯体内周面部には、−１２ｋｇ／ｍｍ² の圧縮残留応力を生じさせることがで きた。

【００１２】 この圧縮残留応力の付与、および強靭性を有する材料によりスリーブ芯体２を 形成することによる強度向上の関係は図５に示す。図５からわかるように、従来 の形状に比べてスリーブ芯体内周部の強度を約２．８倍増大させることができた 。すなわち従来形状の場合には、材料の引張り強さ：５０ｋｇ／ｍｍ² 、残留応 力：＋１０ｋｇ／ｍｍ² （引張り応力）であり、本考案では材料の引張り強さ： １００ｋｇ／ｍｍ² 、残留応力：−１２ｋｇ／ｍｍ² （圧縮応力）となり、スリ ーブ２の内周面部に亀裂発生するまで更に加えられる応力は、従来形状の場合： ４０ｋｇ／ｍｍ² 、本考案の場合：１１２ｋｇ／ｍｍ² となり、１１２／４０＝ ２．８倍の応力に耐え得ることになる。

【００１３】 これによりスリーブ芯体２の内周面部に設けた凹部２１からの亀裂発生を防止 し、キーまたはスプライン型式その他の手段を介して圧延時における軸部からの トルク伝達を可能にするとともに、外スリーブ１の軸方向への移動および外スリ ーブ１の交換を可能にすることができる。なお、図３にはスプライン型式におけ る要部断面図を示している。

【００１４】 図４は本考案の他の実施例によるＨ形鋼圧延用を示す要部断面図である。図４ において１ａ、１ｂおよび１ｃは各々外スリーブであり、耐摩耗性、耐焼付性、 耐肌荒れ性等を有する材料により中空円筒状に形成されている。また、２ａ、２ ｂおよび２ｃは各々強靭性を有する材料によりスリーブ芯体として中空円筒状に 形成し、前記外スリーブ１ａ、１ｂおよび１ｃ内周面に各々嵌合して一体的な複 合スリーブを形成する。複合スリーブ内周部とロール軸３とは各々に設けた凹部 にキー４を嵌入し、両者を固定している。

【００１５】 この実施例は、３箇のうちの適当なスリーブを幅寸法の異なったものと交換す ることにより、Ｈ形鋼のフランジ厚みの変更等、組合せによるロールの幅寸法の 変更に応ぜられるようにしてある。

【００１６】 なお、上述の各実施例において、外スリーブ１は全体を上述のような材料にし た単一材料のスリーブにするだけではなく、例えば外スリーブ１の外周側は耐摩 耗性、耐焼付性、耐肌荒れ性等を有する材料とし、内周側は強靭性を有する材料 とし、両者を遠心鋳造法等により金属的に結合した複合材料のスリーブであって もよい。

【００１７】

【考案の効果】

本考案は以上記述のような構成および作用であるから、構造が簡単であり、製 作が容易かつ安価であるとともに、耐摩耗性、耐焼付性、耐肌荒れ性等およびス リーブ内周面凹部からの破損防止を兼備させ得るという効果がある。また、高精 度なＨ形鋼の圧延を可能にするとともに、製品シリーズ毎に膨大な数量のロール を保有する必要がないため、ロール原単位を大幅に低減させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例によるＨ形鋼圧延用複合スリ
ーブロールを示す一部断面正面図である。

【図２】図１のＡ−Ａ断面図であって、キー係止型式の
ものを示す。

【図３】図１のＡ−Ａ断面図であって、スプライン係止
型式のものを示す。

【図４】本考案の他の実施例によるＨ形鋼圧延用複合ス
リーブロールを示す要部断面図である。

【図５】本考案のＨ形鋼圧延用複合スリーブロールと従
来のＨ形鋼圧延用複合スリーブロールとの凹部の耐割れ
性の相違を説明するグラフである。

【図６】従来の水平ロールの一例を示す一部断面正面図
である。

【符号の説明】

１、１ａ、１ｂ、１ｃ・・・外スリーブ ２、２ａ、２ｂ、２ｃ・・・スリーブ芯体 ３、８・・・ロール軸 ４・・・キー ５・・・スプライン ６・・・ナット ７・・・スリーブ ７ａ・・・スリーブ側面部 ９・・・Ｈ形鋼 ９ａ・・・Ｈ形鋼のウェブ ９ｂ・・・Ｈ形鋼のフランジ部 ２１、３１・・・キー溝（凹部）

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 強靭性を有する材料からなる中空円筒状
   のスリーブ芯体と、前記スリーブ芯体の外周に設けら
   れ、耐摩耗性、耐焼付性、耐肌荒れ性等を有する材料か
   らなる中空円筒状の外スリーブとを焼きばめにより一体
   的に固着してなり、前記スリーブ芯体の内周面にはロー
   ル軸部に設けた固定用凸部と噛み合う軸方向の凹部を設
   け、前記スリーブ芯体の内周面を前記ロール軸部に嵌合
   したことを特徴とするＨ形鋼圧延用複合スリーブロー
   ル。
2. 【請求項２】 請求項１に記載のＨ形鋼圧延用複合スリ
   ーブロールにおいて、前記スリーブ芯体と前記外スリー
   ブとの焼きばめは、０．３×１０^-3〜１．５×１０^-3の
   範囲の焼きばめ率を有するものであることを特徴とする
   Ｈ形鋼圧延用複合スリーブロール。