JPH05111741A - 連続鋳造用ノズル - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 ［目的］ 金属の連続鋳造での製品品質面の信頼性と操
業上の経済性とをさらにより高めること。 ［構成］ 上部ノズル１との上端部での気密嵌合部が球
面と１段以上のテーパ面で構成され、その内の最も下側
の球面が上部に位置するノズル１の下端の嵌合面との間
での有効嵌合率６５％を満たす気密嵌合面３であり、こ
れより上側のテーパ面を気密嵌合補助面１１とした。ま
た嵌合する上部ノズル１の外径より２０〜８５ミリメー
トルの範囲でその径が大のガス逃し口１０を有した鉄皮
８を嵌合部の上端に装着固定してなる。 ［効果］ 鋼の品質の向上と安定化並に操業の安定化と
信頼性の向上及びコストの低減化などにより連続鋳造操
業上、極めて有用な効果をもたらす。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は金属の連続鋳造で金属
の溶湯を取鍋からモールドに至る間に於いて、流下注入
するための機能部材として使用する連続鋳造用のノズル
に関するもので、この連続鋳造用ノズルを使用する際に
接続し組合せて一体として使用する取鍋用下部コレクタ
ーノズルなどの、他の機能部材との気密嵌合組立での嵌
合部の構造の改良に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来の技術について鋼の連続鋳造操業に
於いて、取鍋とタンディッシュの間に配置接続して流下
注入される溶鋼の大気との接触を防止してその酸化を抑
制し、そしてその際に発生するスプラッシュの飛散を防
止すると共に、溶鋼流を整流化しながら取鍋よりタンデ
ィッシュヘ注入する目的で使用する溶鋼流通路用の耐火
性ロングノズルを例にして以下にその詳細を述べる。

【０００３】鋼の連続鋳造に於いてロングノズルに要求
される機能は前記の様に鋼の溶湯が大気と接触して酸化
し、その品質を低下若しくは不安定化させる空気酸化を
防ぐことと、流下注入される溶湯の乱流を防いで整流化
して、タンディッシュ湯面近傍に介在するスラグや非金
属介在物などの不純物の巻込みを抑制すると共に、溶湯
飛沫の飛散を防止して操業の安全と安定を確保すること
などであるが、特に近時では極めて長時間に亘り、ロン
グノズルとコレクターノズルの嵌合部に於ける鋳造中の
気密が保持され微妙なエヤーリークに依る鋳造鋼の品質
の低下や不安定化とバラツキの抑制と、そしてロングノ
ズル自体の耐用の向上を図ることが重要な課題となって
いることは周知の事実である。

【０００４】このことからロングノズルの上端部で、取
鍋のコレクターノズルとの気密嵌合部でのエヤーシール
性は更に重要な問題となって来ており、鋳造される鋼の
品質を確保する上からは勿論のことであるが、前記の様
にロングノズル自体の嵌合部を主体とするその近傍部の
空気酸化劣化による耐用低下を、抑制或いは防止するこ
とにより寿命向上とロングノズルの交換頻度の低減に依
る作業能率の改善や、暑熱作業の軽減化などトータルで
の鋼の連続鋳造の操業の安定化とコスト面での改善に依
る低減化の見地からも、早急に対処しなければならない
極めて重要なテーマとなっているのである。

【０００５】気密嵌合部を備えた鋼の連続鋳造用ロング
ノズルの上端部の構造は従来図１に示した形が一般的に
多用されている。即ちロングノズル１ａの上端部と取鍋
底部に位置するコレクターノズル２ａの接合は嵌合球面
３ａにより嵌合されて、同嵌合部より空気の吸込流入を
防止して更に気密性を高めるために同部上端部外周より
不活性ガスを数箇所の吹出し口５ａより吹出してこれの
対策としていた。

【０００６】このロングノズル１ａの製造方法は、プレ
スにて加圧成形後、焼成された素形材の外側を定められ
た形状と寸法に切削加工に依り仕上げ、そして不活性ガ
ス導入口７ａを備えた鉄皮８ａを耐火性モルタルを介し
て該ロングノズル１ａ上端部外側に装着して、モルタル
の乾燥に依り係止して成るものであって、ロングノズル
１ａの内孔面や嵌合球面３ａ、そして不活性ガスの吹出
し口５ａなどはプレスに依る加圧成形時に金型によりそ
の形が形成されるのである。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】鋼の連続鋳造に於いて
取鍋とタンディッシュの間で使用するロングノズルで
の、取鍋コレクターノズルとの接続のための気密嵌合は
一般的に球面形状での嵌合が多用されているが、その嵌
合面の球面の大きさや嵌合延長の大きさ、そして嵌合面
への耐火性シールパッキン材の配置などの種々の気密向
上対策技術が採り入れられて現在に至っている。そして
近時ロングノズルの耐用の向上が強く求められる環境下
にあるが、これに対して従来のロングノズル１ａでの上
端の嵌合構造は、その嵌合面が一段のみとなっておりし
かもシール性向上を狙う不活性ガスは同部位へ水平に、
コレクターノズル２ａに面に対して直角に吹込むこと
と、上端部の鉄皮８ａの開孔部９ａがロングノズル１ａ
嵌合面内径と同径となっており広い寸法となっているこ
とから、上部開孔部９ａよりの大気の流入巻込みが容易
となっていることで、ガス溜６ａには不活性ガスと空気
が混在し、この混合気で充満されることとなる訳でロン
グノズル１ａの内孔を流下する溶鋼の衝撃を受けて、ロ
ングノズル１ａが揺動して嵌合面に緩みが生じた時に同
部の気密を高める役目をするはずのガスシールが、上記
の現象から狙い通りに有効に作用せず、エヤーリークの
状態が派生しエヤーシール性での信頼性を著しく低下さ
せる条件下に置かれて、鋼の品質確保上の大きな阻害要
因となっていたのである。

【０００８】即ち第１図に於いてロングノズル１ａと取
鍋コレクターノズル２ａは、嵌合球面３ａにより接続嵌
合を成しており、ここで最も重要となる気密嵌合を完全
とする目的で不活性ガスを鉄皮８ａと一体となって成る
不活性ガス導入口７ａよりロングノズル１ａへ導き、ガ
スプール４ａにより円周に均一に充満した不活性ガス
は、水平溝の吹出し口５ａを通って前記嵌合部へ向けて
吹き出す方式であるが、この様に不活性ガスを取鍋下部
のコレクターノズル２ａの外周面に対して直角に吹込む
ことから、この部位での不活性ガスの流れに乱流が生
じ、前記の如く鉄皮８ａの開孔部９ａより大気を巻込ん
で、混合気が生成して嵌合球面３ａ近傍迄を充満するこ
とになり、溶鋼流の流下時の衝撃などの応力が嵌合面に
緩みをもたらした時、特に多数回の繰り返しての長時間
の使用を経過するという条件下では、ロングノズル１ａ
の嵌合面の面荒れが生じて嵌合気密性が損われることか
ら、混合気体が流下する溶鋼により負圧となっているロ
ングノズル１ａの内孔へ常に吸込まれることとなり、鋼
の品質を著しく低下させ或は歩留を極めて不安定とする
のみならず、ロングノズル１ａの嵌合面の酸化を更に促
進し面荒れが進展してしまうため、嵌合気密性を更に悪
化させてしまい、ロングノズル１ａの耐用を短縮化する
ことになって、これらを併せると連続鋳造操業上極めて
多大な不利益をもたらすことから、これらの問題点の解
決手段が待たれる背景にある。

【０００９】

【課題を解決する為の手段】この発明は以上に述べた背
景からこれらの諸問題点を解消することにより、金属の
連続鋳造での製品々質面の信頼性と操業上の経済性とを
更に高めることを目的としてなされたもので、その詳細
について前述と同様に鋼の連続鋳造の操業於いて取鍋と
タンディッシュの間に配置して使用されるロングノズル
に例をとり述べる。

【００１０】即ちこの発明はロングノズルと取鍋ボトム
のコレクターノズルの接続に於いてこの部位の気密嵌合
構造を改良し、気密の信頼性を大巾に高めて大気の吸
入、所謂エヤーリークをなくする事により、繰り返し多
数回の長時間に亘って鋳造する鋼の品質を安定的に目標
レベルに確保すると共に狙いの耐用命数を満足して使用
することの出来るロングノズルを提供するものである。

【００１１】ロングノズル上端部の取鍋用コレクターノ
ズルとの嵌合部の嵌合球面をコレクターノズル側の嵌合
面の延長の大きさに対してその嵌合率が少なくとも６５
％を満たして成る嵌合気密球面とその上方に位置するテ
ーパを嵌合気密補助テーパとした組合せにより成り、気
密性を高めると共に、コレクターノズルとロングノズル
トップ面のフープの開口部の大きさを不活性ガス吹込時
にガス溜へ大気を巻込まないバランスを考慮した値とし
て、嵌合部近傍へ混合気が介在しない様にする事と併せ
て嵌合面に何らかの応力に依る緩みが生じた場合でもエ
ヤーリークが発生しない様にするものである。

【００１２】図２はこの発明のロングノズル１の実施例
の縦断面図で、取鍋コレクターノズル２との気密嵌合面
３と、これの気密嵌合補助面１１を備え、そして更に気
密嵌合を保つ目的で、大気のガス溜６への吸込みを防
ぎ、不活性ガスのガス溜６よりの適度な排出の役目を果
たすガス逃し口１０により、従来の問題点を解消するも
のである。

【００１３】ロングノズルの材質例として骨材にアルミ
ナ４９．５％重量％、シリカ２６．８重量％、黒鉛１
８．４重量％、炭化珪素５．３重量％より成る配合物に
１０．５重量％の有機バインダーを添加して混練し、得
られた坏土をプレスにて加圧成形して焼成したものであ
り、又鉄皮８材質例としてはｓｓ材質鋼鉄製より成り、
この２つは耐火性モルタルにより組み合せ係止したもの
である。

【００１４】なお鉄皮８でのガス逃し口１０の大きさの
設定はコレクターノズル２とロングノズル１の接合に於
ける作業性と、大気の吸込を防ぐ上での嵌合部への不活
性ガスの吹出量とのバランスを考慮して２０〜８５ミリ
メートルの範囲内が望ましい。

【００１５】そして気密嵌合補助面１１は、ロングノズ
ル１上端部構造での強度を必要レベルに確保出来ること
と、吹出し口５より吹出す不活性ガスが気密嵌合部へ容
易に流下することが必要で有り、その角度は３５〜５５
°の範囲が望ましい。なお図２中、４はガスプール、７
は不活性ガス導入口である。

【００１６】この発明のロングノズルは以上の様な構成
としてあり、従来のロングノズルに於ける取鍋コレクタ
ーノズルとの接合上のエヤーシール性の問題点を解消し
て、鋳造される鋼の品質の向上と安定化並にロングノズ
ル自体の耐久性向上などで、連続鋳造操業のトータルコ
ストの低減化を大巾に可能ならしめるものである。

【００１７】なおここでロングノズル上端の嵌合球面
と、コレクターノズル嵌合面での嵌合率を６５％以上と
したのは、これを満たさない場合はエヤーシール性への
悪影響とロングノズル側の嵌合面の面荒れが著しくなる
からであり、又ガス逃し口の大きさとコレクターノズル
外径より２０〜８５ミリメートル大とするのは、この範
囲より小さいと両者を嵌合させる操作性並にその作業性
に難点があり、その結果としてコレクターノズルと鉄皮
が接触することとなるなどの不具合要因となること、そ
して大とした場合は不活性ガス吹出量とのバランスが悪
くなって、大気の巻込みが発生してエヤーシール性が低
下したり、不活性ガスの吹出量を大とする必要に迫られ
ること、そしてこれらの結果としてロングノズルの耐久
性が損われるなど経済的に不利となるからである。

【００１８】

【作用】この発明のロングノズルでの例は以上の構成と
してあり、鋼の連続鋳造での取鍋とタンディッシュ間で
の操業中のロングノズルと取鍋下部のコレクターノズル
の接続に於いて、気密嵌合のエヤーシール性を高いレベ
ルに向上させてこれを安定的に維持することを可能と
し、鋼の酸化を抑制し品質の安定化と歩留の向上並にロ
ングノズルの嵌合部の酸化を抑制することに依る耐久性
向上と、チャージ間の手入れ作業を不要としたことから
経済的に極めて有用な効果をもたらすなど、連続鋳造操
業でのロングノズルの信頼性を高めることとなったので
ある。

【００１９】（表１註） １）表１は従来品と本発明品でのエヤーシール性を鋼中
に巻込まれたＮ₂濃度を単位ｐｐｍで表わし比較した。 ２）測定方法は取鍋とタンディッシュよりサンプリング
した溶鋼を熱伝導度法により測定した。 ３）タンディッシュ内溶鋼のＮ₂濃度から取鍋内溶鋼の
Ｎ₂濃度を減じて得られた値のｎ＝５での測定値での平
均値。 ４）ロングノズルの耐用回数はｎ＝１８の平均値で従来
品に比べ２．４回向上の結果を得た。

【００２０】

【発明の効果】本発明のロングノズルを２５０トン容量
の取鍋にセットし普通鋼の連続鋳造を行なった結果、表
１に示した結果を得た。

【００２１】先ずロングノズル耐用回数は従来品に較べ
て平均２．４回（２６．８％）の向上となり、そしてエ
ヤーシール性について５度の鋳造の結果で検証した処Ｎ
₂濃度で６１．２％の向上が確認出来たのである。この
結果よりこの発明のロングノズルは鋼の連続鋳造操業で
の取鍋とタンディッシュ間に於けるエヤーシール性を大
巾に高めると共にロングノズルの嵌合面の酸化による劣
化を抑制して耐久性を高めるなど、鋼の品質の向上と安
定化並に操業の安定化と信頼性の向上及びコストの低減
化などに依り、連続鋳造操業上、極めて有用な効果をも
たらすこととなったのである。このことより本発明の連
続鋳造用ノズルは連続鋳造の信頼性と経済性を向上させ
るものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】従来のロングノズルの取鍋コレクターノズルと
の嵌合部の縦断面図である。

【図２】本発明の連続鋳造用ノズル例のロングノズルの
取鍋コレクターノズルとの嵌合部の縦断面図である。

【符号の説明】

１，１ａ ロングノズル ２，２ａ コレクターノズル ３ 気密嵌合面 ３ａ 嵌合球面 ４，４ａ ガスプール ５，５ａ 吹出し口 ６，６ａ ガス溜 ７，７ａ 不活性ガス導入口 ８，８ａ 鉄皮 ９ａ 開孔部 １０ ガス逃し口 １１ 気密嵌合補助面

【表１】

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 上部に位置するノズルとの上端部での気
   密嵌合部が球面と１段以上のテーパ面で構成され、その
   内の最も下側の球面が上部に位置するノズルの下端の嵌
   合面との間での有効嵌合率が６５％を満たす気密嵌合面
   であって、これより上側に位置するテーパ面を気密嵌合
   補助面とした事を特徴とする連続鋳造用ノズル。
2. 【請求項２】 嵌合する上部ノズルの外径より、２０〜
   ８５ミリメートルの範囲でその径が大にして成るシール
   用ガス逃し口を有した鉄皮を嵌合部の上端に装着固定し
   てなる請求項１の連続鋳造用ノズル。