JPH0510267B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、自動車のステアリングハンドルの位
置調整装置兼衝撃緩和装置に関するものである。

（従来の技術） ステアリングハンドルの位置を運転者の体格や
好みに合わせて調整可能にすることは従来より行
なわれている。この位置調整を上下方向に行なう
のをチルト方式と称し、ステアリング軸をその下
端付近を中心に上下に傾動させて、該軸の取付傾
斜角を調節可能にしている。ステアリングハンド
ルの位置調整方式には前記チルト方式の他に、そ
の軸方向に調整可能にした方式があり両方式を兼
備したものもある。ステアリングハンドルの位置
を軸方向に調整可能にする方式は、ステアリング
軸を伸縮可能にすることにより実現されている。

一方、自動車の衝突時のステアリングハンドル
による運転者への衝撃を緩和させるために、ステ
アリングハンドルへの一定以上の加圧により、ス
テアリング軸がエネルギーを吸収しつつ短縮する
ようにした衝突緩和装置があり、それと、前記ス
テアリングハンドルの軸方向位置調整装置とを兼
備したものもある（特公昭60−52022号公報参
照）。

（発明が解決しようとする問題点） 前記のステアリングハンドルの軸方向位置調整
装置はその調整に際しては先ずクランプを外して
伸縮自由の状態にし、次に好みの軸方向位置を選
んだ後再びクランプして伸縮不能の状態にするの
であるが、クランプを外した瞬間に伸縮自由にな
つてハンドルが移動するためそれまでの位置が解
らなくなり、該位置を基準とした微調整ができな
いと云う問題点がある。この問題点は前記衝撃緩
和装置を兼ねたものにおいても同様に生じる。

（問題点を解決するための手段） 本発明は前記問題点を解消を目的として次の手
段を採用する。すなわち、伸縮自在に接続された
上側シヤフトと下側シヤフトを上側コラムと下側
コラムにより回転自在に支持すると共に、両コラ
ムをテレスコープ状に伸縮可能に接続し、上側コ
ラムの車体への取付位置を可変にしてステアリン
グハンドルの位置を可変にしたものにおいて、前
記両コラムの重なり部分にボールを圧入介在させ
ると共に、その軸方向移動端にボール乗上げ段を
設ける。

（作用） 上側コラムの車体へのクランプを解いてその位
置を調節すると、それに伴つて上側シヤフトが下
側シヤフトに対して伸縮するのでステアリングハ
ンドルの軸方向位置が調節できるが、その際上下
両コラムの重なり部分に圧入介在させたボールの
摩擦により、両コラムはみだりに伸縮することが
ない。そして、自動車の衝突に際してステアリン
グハンドルに加えられる過大な圧力は両コラムを
縮めるように作用するが、その初期の運動は転動
するボールの摩擦力に抗して行なわれ、ボールが
ボール乗上げ段に達した後は、該段をボールが乗
り上げることによる抵抗力に抗して行なわれるの
で２段階のエネルギー吸収が生じる。

（実施例） 図は本発明をチルト方式と軸方向位置調整方式
とを兼ねた方式のハンドル位置調整装置に実施し
た例を示すものである。

上端にステアリングハンドル２５を固着し、下
端をステアリング機構（図示せず）に連結したハ
ンドルシヤフト２２は上側シヤフト１８と下側シ
ヤフト１９とからなり、それらはセレーシヨン２
６（第３図）により伸縮できる。上側シヤフト１
８と下側シヤフト１９は上側コラム３によつて回
転自在に支持される。両コラム３，１５はテレス
コープ状に嵌合され、それらの接続部には第２図
に示すようにボール１６が圧入されている。ボー
ル１６は円周方向に複数個配置され、上側コラム
３の外周面と下側コラム１５の内周面とにそれぞ
れ設けた有端の溝２７，２８に嵌合しており、所
定の圧力で溝２７，２８に接している。１７はボ
ール保持器であつて、複数のボール１６の位置を
規制するためのものである。上側コラム３は後述
のようにその取付位置を調節できるように、車体
（図示せず）に取付けられ下側コラム１５の下端
はロアーブラケツト２３のケース２４に固定され
る。２９はロツクレバーであつてこれを操作する
こにより、上側コラム３の車体への固定状態をロ
ツクしたり解除したりできる。解除状態において
は、両コラム３，１５とハンドルシヤフト２２と
を一体としてロアーブラケツト２３のヒンジ部３
０を中心に揺動させることができ、ハンドル２５
の位置を上下（矢印Ｙ方向）に変化させること、
すなわち、チルト方式の調整ができる。また、こ
のロツク解除状態においては上側コラム３をその
軸方向（矢印Ｚ方向）に移動させることもでき
る。この移動により、上側コラムは下側コラム１
５に対して進退し、それに伴つてハンドルシヤフ
ト２２が伸縮する。したがつて、ハンドル２５の
位置を軸方向（Ｚ方向）に調整できる。

上側コラム３の前記のような取付位置の調整
は、一例として第４図、第５図に示す構成により
可能となる。１は支持ブラケツトであつて、それ
と一体の取付片２１を介して車体（図示せず）に
固定されており、上側コラム３を両側から抱えて
いる。上側コラム３はコラムブラケツト２と一体
に結合しており、それに設けた軸方向長孔５と支
持ブラケツト１に設けた上下方向長孔４との交叉
部をボルト６が貫通している。ボルト６はその頭
部６ａの側面に設けた平面部６ｂを上下方向長孔
４に嵌合させることにより廻り止めされており、
ロツクレバー２９で操作されるナツト７により支
持ブラケツト１に締着する。コラムブラケツト２
と支持ブラケツト１との間にはワツシヤ８が介在
され、コラムブラケツト２に一体的に固着された
筒状のスペーサ９との協動により、ナツト７によ
る締着力はワツシヤ８の介在のもとに支持ブラケ
ツト１とコラムブラケツト２との間に摩擦力を発
生させる。この摩擦はコラムブラケツト２と一体
の上側コラム３の取付状態を維持するが、衝突に
際しては滑りを生じる程度のものである。支持ブ
ラケツト１の外面からフツク３１が突出してお
り、ボルト６の頭部６ａからもフツク６ｃが突出
しており、それらの間にスプリング１４が張設さ
れている。このスプリング１４は上側コラム３、
コラムブラケツト２、ボルト６を介して掛るハン
ドルシヤフト２２及びハンドル２５の重量とバラ
ンスさせる力を得るためのものである。支持ブラ
ケツト１の外面には上下方向長孔４の両側に沿つ
て一対のボール係止片１０が固設されている。一
方、ボルト６の頭部６ａには貫通孔が設けられ、
その中に挿入された圧縮スプリング１３が２個の
ボール１２を両側に向つて押出している。ボール
１２はボール係止片１０に設けた係止溝１１に嵌
合し、ボルト６の長孔４に沿つた上下動に節度を
与えている。

次に前記装置の作用を説明する。

ロツクレバー２９を操作してナツト７を緩める
と、支持ブラケツト１に対するボルト６及びコラ
ムブラケツト２の圧着状態が解けるので、上側コ
ラム３の車体へのロツクが解除される。そこで、
ステアリングハンドル２５を上下させる、すなわ
ち、チルト式に移動させると上側コラム３が揺動
する。ボルト６はそれに伴つて上下方向長孔４内
をそれに沿つて移動するので、このチルト式移動
を可能にする。その際スプリング１３で付勢され
たボール１２はこの移動に節度を与えるため、み
だりに位置がずれることはない。

ステアリングハンドル２５を軸方向に移動させ
ると、上側コラム３は上側シヤフト１８と共に軸
方向に移動し伸縮が行なわれる。この際にはボル
ト６は軸方向長孔５内を相対的に移動することに
なり、やはり軸方向位置の調節の妨げとならな
い。そして、この伸縮は上側コラム３と下側コラ
ム１５との間に圧入されたボール１６による摩擦
力により、適度の抵抗を与えられた状態で行なわ
れるので、ロツクを解いた瞬間に完全な自由状態
になる従来のものとは異なり、みだりには伸縮し
ない。

ロツクレバー２９を操作してナツト７を締める
と、元のロツク状態に戻り、上側コラム３は所定
の摩擦力で支持ブラケツト１に支持される。この
支持状態は通常のハンドル操作では変化しない。

自動車が衝突してハンドル２５に過大な力が加
わると、支持ブラケツト１は上側コラム３の移動
を許容する。その結果、上側コラム３が下側コラ
ム１５に向つて進行し、ハンドルシヤフト２２が
縮む。この短縮運動の初期には上側コラム３の運
動は支持ブラケツト１との間の摩擦の他に、両コ
ラム３，１５間の摩擦によつて制動され、後期に
はボール１６が溝２７，２８の後端２７ａ，２８
ａに乗り上げることにより制動されるので、２段
階でその運動エネルギーが吸収される。

なお、前記実施例においてはボール１６を溝２
７，２８内に嵌合したが、溝２７，２８は必ずし
も積極的に設ける必要はなく、ボール１６の圧入
による塑性変形溝でもよい。要はボール１６を圧
入することと、その乗上げ用段部（終端２７ａ，
２８ａに相当する）を設けることが必要なのであ
る。

（効果） 本発明は、伸縮自在に接続された上側シヤフト
と下側シヤフトを上側コラムと下側コラムによ
り、回転自在に支持すると共に両コラムをテレス
コープ状に伸縮可能に接続し、上側コラムの車体
への取付位置を可変にしてステアリングハンドル
の位置を調整可能にしたものにおいて、前記両コ
ラムの重なり部分にボールを圧入介在させると共
に、その軸方向移動端にボール乗上げ段を設けて
あるので、自動車の衝突に際してステアリングハ
ンドルに加えられる過大な圧力は両コラムを縮め
るように作用するが、その初期の運動は転動する
ボールの摩擦力に抗して行われ、ボールがボール
乗り上げ段に達した後は、該段をボールが乗り上
げることにより抵抗力に抗して行われるので、２
段階のエネルギー吸収が生じて、運転者への衝突
緩和がより効果的に行えるといえ効果を奏するも
のである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の実施例を示す側面図、第２図
は第１図のＡ部の拡大図、第３図は要部を詳細に
示す側面図、第４図は支持ブラケツト周辺部の側
面図、第５図は第４図の−断面の断面図であ
る。 １……支持ブラケツト、３……上側コラム、１
５……下側コラム、１６……ボール、１８……上
側シヤフト、１９……下側シヤフト、２５……ス
テアリングハンドル、２７ａ，２８ａ……溝の終
端。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 伸縮自在に接続された上側シヤフトと下側シ
   ヤフトを上側コラムと下側コラムにより、回転自
   在に支持すると共に両コラムをテレスコープ状に
   伸縮可能に接続し、上側コラムの車体への取付位
   置を可変にしてステアリングハンドルの位置を調
   整可能にしたものにおいて、前記両コラムの重な
   り部分にボールを圧入介在させると共に、その軸
   方向移動端にボール乗上げ段を設けてなるステア
   リングハンドルの位置調整装置。 ２ 上側コラムの車体への取付位置がその軸方向
   に可変であると共に、上下方向にも可変であるこ
   とを特徴とする特許請求の範囲第１項記載のステ
   アリングハンドルの位置調整装置。 ３ 両コラムの重なり部分に軸方向の有端の溝を
   設け、該溝にボールを圧入介在させることを特徴
   とする特許請求の範囲第１項又は第２項に記載の
   ステアリングハンドルの位置調整装置。