JPH0436251Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案はポリウレタン系樹脂フイルムを成膜し
たり、ポリウレタン系剛性皮革を製造する時に使
用する支持体に関するものである。

〔従来の技術〕

ポリウレタン系樹脂フイルムやポリウレタン系
合成皮革を得る方法としてよく知られているもの
にキヤステイング法と溶融押出法とがある。

キヤステイング法はフイルムとする原料を予め
溶液状とし、これを剥離性を有する支持体上に塗
工、乾燥後、形成されたフイルムを支持体から引
剥がしてフイルムとする方法である。このキヤス
テイング法は合成皮革製造によく利用されてい
る。

一方、溶融押出法はフイルムとする原料を先ず
押出機中で高温溶融化し、これをＴ−ダイスより
剥離性を有する支持体上に押出塗工ラミネート
し、冷却後、フイルムを支持体より引剥がしてフ
イルムを得る方法である。

なお、これらの方法に使用される支持体には適
度な剥離性、耐熱性、耐カール性などの性能が必
要である。ところで、従来使われて来たポリウレ
タン系樹脂フイルム成膜用支持耐としては、シリ
コーン、高圧法低密度ポリエチレン、ポリプロポ
レンなどを剥離層とする支持耐がよく知られてい
る。

しかしこれ等の従来の支持耐では次の如き種々
の問題点がある。

１ シリコーンを剥離層とする支持体ではフイル
ム溶液をこれに塗工した場合、シリコーンの表
面エネルギーが低過ぎるため溶液を撥じいてし
まい。均一なフイルム成膜が困難となる。また
シリコーンを剥離層としているため剥離性が過
剰であるので溶融押出法でフイルムを得ようと
する場合、ラミネート時のチルロール側にフイ
ルムが巻き付いてしまい、成膜が出来なくな
る。更にキヤステイング法の場合も剥離性が過
剰であると成膜工程中にフイルムが支持体より
自然に剥がれてしまい、巻きジワを併発し巻取
作業を困難にする。更に合成皮革製造でよく行
われているように、成膜したフイルムに更に接
着性フイルム溶液を塗工するなどの２次加工を
行なう場合、成膜したフイルムは適度に支持体
に仮着していなければならないが、剥離性が過
剰だとフイルムが支持体から部分的または全面
的に浮いてしまい２次加工が難かしい。

２ また、高圧法低密度ポリエチレンを剥離層と
する支持体では耐熱性が不足し、成膜時に剥離
層表面が熱に侵かされて凹凸となつてしまう。
勿論、均一で平滑な表面を有するフイルムを得
ようとしても無理である。

３ ポリプロピレンの場合は耐熱性は良好である
が、剥離性がまだ不充分である。また、ポリプ
ロピレンでは（ポリプロピレン層を内側とし
MDを軸とする）カールが起こり易く、成膜時
の取扱いが難かしい。

〔考案が解決しようとする問題点〕

本考案者等は上述した従来のフイルム成膜用支
持体の問題点であるフイルム溶液塗工時の撥じ
き、剥離性の不敵、耐熱性・耐カール性の不足を
改良すべく種々検討を行なつた結果、これ等の問
題点を解消し得る本考案のポリウレタン系樹脂フ
イルム成膜用支持体を創案するに到つた。

〔問題点を解決するための手段〕

本考案は機材に，ASTM D747の曲げ剛性率
1000Kg／cm²以下、かつ表面ぬれ特性がJIS K6768
のぬれ指数で34dyn／cm以下、かつ融点が110℃
以上の密度0.910ｇ／c.c.以下の超低密度ポリエチ
レンを主成分とするものから成る剥離層を設けた
新規なポリウレタン系樹脂フイルム成膜用支持体
であり、従来に存在しなかつた適度な剥離性と耐
熱性、耐カール性、塗工性とを有するものであ
る。

以下に本考案を図面を用いて更に詳細に説明す
る。

第１図及び第２図は本考案の代表的なフイルム
成膜用支持体の断面構成図である。

図中１は支持耐の基材、２は剥離層でASTM
D747の曲げ剛性率1000Kg／cm²以下、かつ表面ぬ
れ特性がJIS K6768のぬれ指数で34dyn／cm以下、
かつ融点が110℃以上の、密度0.910ｇ／c.c.以下の
超低密度ポリエチレンを主成分とするものから成
つている。３は剥離層と基材との接着性向上を目
的として設けた接着増強層である。

本考案における剥離層２には曲げ剛性率、ぬれ
指数、融解温度および密度において特定限定値を
有する超低密度ポリエチレンを用いる。

超低密度ポリエチレンの曲げ剛性率はASTM
D747で1000Kg／cm²以下でなければならない。こ
の値を超えて大きくなると剥離性が不足する。本
考案の超低密度ポリエチレンの曲げ剛性率の望ま
しい範囲は800Kg／cm²以下である。

また、超低密度ポリエチレンの表面のぬれ性は
JISK−6768の方法で34dyn／cm以下でなければな
らない。この値を超えて大きくなると剥離性が不
足する。本考案のねれ指数は、34dyn／cm以下、
望ましくは33〜28dyn／cmがよい。

本考案に用いる超低密度ポリエチレンは次差熱
（DSC）法による融点が110℃以上でなければな
らない。110℃未満であると耐熱性が不足してし
まう。

さらに本考案に用いる超低密度ポリエチレンの
密度はJIS K6760法で0.910ｇ／c.c.以下でなけれ
ばならない。密度がこの値を超えると剥離性が不
足してしまう。0.910グラム／c.c.以下望ましくは
0.900〜0.905ｇ／c.c.がよい。

なお、超低密度ポリエチレンとしては、U.C.C.
社のVery low density polyethylene、住友化学
のエクセレンVLシリーズなどが代表的なものと
してあげられる。超低密度ポリエチレンの組成は
基本的にはブテン−１あるいはオクテン−１をエ
チレンに共重合させたものであるが、従来の
LLDPE（Linear low density polyethylene）と
明かに異なりブテン−１、オクテン−１等の共重
合比率が多く、密度も低くなつている。

従来のLLDPEに比べ、本考案のものでは剥離
性、耐カール性が優れている。

なお、本考案における剥離装置を構成する主成
分は、上述の超低密度ポリエチレンでなければな
らないが、これに従来のポリエチレン（高圧法低
密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度
ポリエチレンLLDPEなど）、エチレン−αオレフ
イン共重合体、ポリプロピレンなどを混合しても
よい。剥離層を構成する主成分としての超低密度
ポリエチレンは50重量％以上でることが好まし
い。また、使用上剥離性、ぬれ性を損なわない範
囲で、顔料、耐候安定剤、参加防止剤、滑剤、帯
電防止剤、ブロツキング防止剤、界面活性剤など
を添加してもよい。

次に本考案における基材としては従来一般的に
使われているもの、例えば紙、合成樹脂フイル
ム、金属箔、布などの単体もしくは複合系が使用
できる。

また本考案における接着増強層としてはポリオ
レフイン、およびイソシアネート系、イミン系、
エポキシ系などの接着剤が代表的なものとして挙
げられるが、この他のものでよい。

本考案における剥離層の厚さは5μ以上、望ま
しくは15〜40μがよい。

なお、剥離層を基材に設ける方法としては溶融
押出ラミネーシヨン法が望ましい。溶融押出ラミ
ネーシヨンにあたつての押出温度はＴ−ダイス出
口樹脂温度で250〜290℃とすることが望ましい。

〔実施例〕

次に実施例により本考案を更に詳しく説明す
る。

実施例 １ 坪量128グラム／m²の上質紙の片面に、曲げ剛
性率800Kg／cm²、融点117℃、密度0.905g／c.c.の超
低密度ポリエチレンと、高圧法低密度ポリエチレ
ン（接着増強層）とを共押出機を用いて溶融押出
ラミネーシヨンし、表面ぬれ指数31dyn／cmの超
低密度ポリエチレン（厚さ20μ）／低密度ポリエ
チレン（接着増強層、厚さ10μ）／上質紙の構成
のフイルム成膜用支持体を得た。この支持体を用
いてウレタンフイルムをキヤステイング法により
作成した結果、この支持体はウレタン塗工液の撥
じきもなく、適度な剥離性を示した。また耐熱
性、耐カール性も良好であつた。

実施例 ２ 実施例１と同じ紙の片面に、曲げ剛性率650
Kg／cm²融点115℃、密度0.900g／c.c.の超低密度ポ
リエチレンと、接着増強樹脂ポリプロピレン・ポ
リエチレン混合物とを共押出機を用いて、溶融押
出ラミネーシヨンし、表面のぬれ指数33dyn／cm
の超低密度ポリエチレン（厚さ8μ）／ポリプロ
ピレン・ポリエチレン混合物（接着増強層、厚さ
17μ）／上質紙の構成のフイルム成膜用支持体を
得た。この支持体を用いてウレタンフイルムをキ
ヤステイング法により作成した結果、この支持体
は、ウレタン塗工液の撥じきもなく、適度な剥離
性を示した。また、耐熱性、耐カール性も良好で
あつた。

比較例 １ 基材、剥離層の樹脂の種類は実施例１と同じだ
が、剥離層表面のぬれ指数が35dyn／cmのフイル
ム成膜用支持体に就いて実施例１と同じ方法でウ
レタンフイルムをキヤステイングした結果、支持
体の剥離性が不足しフイルムを支持体より剥がす
ことが難しかつた。

比較例 ２ 実施例１の高圧法低密度ポリエチレンのみでフ
イルム成膜用支持体を得た。このものについて実
施例１と同じ方法でウレタンフイルムをキヤステ
イングした処、耐熱性が不足していて表面が凹凸
となつてしまつた。

本考案に関する測定方法を次に説明する。

DSCによる融点測定： 化学同人社発行第１版２刷『機器分析のてびき
(3)』第６〜12頁の方法に準じた。但し、樹脂試料
量は10±0.5mgとし、先ず温度を160℃まで上昇さ
せ５分間放置し、その後67℃まで下げ１分間放置
後、５℃／分の速度160℃まで上昇させ吸熱ピー
ク温度を求め融点とした。

雰囲気：Air Pan：アルミ ぬれ指数測定； JIS−K6768の方法に準じた。

〔考案の効果〕

本考案に成るフイルム成膜用支持体を用いるこ
とにより剥離性が適度に押さえられているので剥
離層上へポリウレタン系樹脂フイルムやポリウレ
タン系合成皮革を積層する際に撥じきを生ずるこ
とが無く、また加熱による表面の平滑性を損なう
ことも無く、カールの発生も無く極めて円滑に作
業を進め得る効果を発揮するのである。

【図面の簡単な説明】

第１図及び第２図は本考案の代表的なポリウレ
タン系樹脂フイルム成膜用支持体の断面構成図で
ある。 １……基材、２……特定限定の超低密度ポリエ
チレンを主成分とするものから成る剥離層、３…
…接着増強層。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 剥離層が、ASTM D747の曲げ剛性率1000
   Kg／cm²以下、かつ表面ぬれ特性がJIS K6768のぬ
   れ指数で34dyn／cm以下、かつ融点が110℃以上
   の密度0.910グラム／c.c.以下の超低密度ポリエチ
   レンを主成分とするものから成る。前記剥離層を
   有するポリウレタン系樹脂フイルム成膜用支持
   体。