JPH0434640B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

（産業上の利用分野） 本発明は、不溶性電極を陽極として用いるクロ
ムメツキ方法に関するものであり、特にメツキ通
電停止時における該陽極の保護を図るクロムメツ
キ方法に関する。 （従来の技術） 一般にクロムメツキの電極メツキには不溶性陽
極として鉛、鉛合金あるいは二酸化鉛被覆電極等
の鉛系電極、フエライトやマグネタイト電極等の
酸化鉄系電極、また、チタン等の導電性金属基体
表面に白金、イリジウム、ロジウムなどの白金族
金属およびそれらの酸化物を熱分解法、電気メツ
キ法により被覆した貴金属系電極が知らされてい
る。 鉛系電極は、三価クロムイオンの濃度を過度に
保つ反面、クロムメツキ浴中で高い分極電位を示
すため電極を多く消費し、鉛の溶出によるクロム
メツキへの悪影響や浴中にクロム酸鉛の沈澱を多
量に形成する等の欠点がある。 一方、前記の酸化鉄系電極および貴金属系電極
は極めて低い分極電位を示し、電解による消耗も
少なく、浴の汚染や沈澱物の生成はほとんど無い
が、三価クロムイオンの濃度が上昇していまい電
流効率の低下およびメツキ品質を低下させる等の
欠点を有するため鉛系電極と組み合わせて使用さ
れている。 （発明が解決しようとする問題点） ところで、上述の不溶性陽極は、メツキ電解中
は極めて安定で卓越した性能を示すが、メツキ通
電停止時、あるいは非電解時には陽極材質と陰極
材質の単極電位差に基づく電池の形成により短期
間に使用不能になるという欠点を有している。不
溶性陽極は、メツキ電解中、その表面に酸化物被
膜を形成し、この酸化物被膜が導電性を有し、か
つ、耐久性に優れることから不溶性陽極と言われ
るのであるが、酸化物被膜は陽極として酸素発生
のある雰囲気では安定性を示すが、メツキ通電停
止時、あるいは非電解時の還元雰囲気では極めて
弱く、低級酸化物となり、被膜の崩壊を生じ、鉛
系電極の場合には表面にクロム酸鉛を形成する。 このON−OFFすなわち断続電解による陽極表
面の酸化還元の繰り返しによる酸化物被膜の生成
と崩壊に基づく電極寿命に短命化を防止するた
め、外部電源により不溶性陽極に絶えず微弱な電
流を流し、安定な陽分極状態に置く、いわゆるバ
ツクアツプ法が知られている。 この方法は、メツキ槽内にクロムメツキ浴に耐
久性のあるチタン等のバルブ金属の棒状、網状等
の形状の電極活性被膜を有しない補助陰極を設置
し、陽極保護電流密度を0.01〜1A／ｄm²程度に
して行なうものであるが、補助陰極上にクロム金
属を析出させないため、通常陰極電流密度は
10A／ｄm²以下に、また、陽極が部分的に保護電
位以下にならないようにする必要があり、このよ
うにすると補助陰極はかなり大型のものとなり、
製品である被メツキ物に邪魔にならないようメツ
キ槽内に設置するのはかなり困難であつた。 （問題点を解決するための手段） 本発明は上記問題を解消するためになされたも
ので、陰極電流密度を大きくしてもクロム金属が
析出せず、補助陰極を小型化でき、長期間安定し
て操業できるクロムメツキ用不溶性電極の保護方
法を提供しようとするものである。 すなわち本発明は、陽極として不溶性電極を使
用し、メツキ槽内に設置した補助陰極を用いてメ
ツキ通電停止時にも該陽極に補助電流を流すクロ
ムメツキ用電極の保護方法において、該保護陰極
としてバルブ金属またはその金属基合金上に白金
族金属を含む被覆を形成させた電極を使用するこ
とを特徴とするクロムメツキ用電極の保護方法で
ある。 以下、本発明を更に詳しく説明する。クロムメ
ツキ用不溶性電極は、陽極として極めて安定で、
通電を続ける限り優れた耐久性を有し、長期間安
定して使用できる。ところが、実際の操業ではメ
ツキ処理物の入れ換え、夜間操業停止等により、
頻繁に通電を停止することが避けられず、前記し
たようにこうした非電解時に不溶性電極をクロム
メツキ浴に浸漬しておくと容易に損傷し、短期間
で使用できなくなる。 そこで別途電源に接続した補助陰極をメツキ槽
内に設け、メツキ通電停止時にも不溶性電極に電
流を流し、該陽極を陽分極し続ける際、チタン等
のバルブ金属基体上に白金、イリジウム、ロジウ
ム等の白金族金属を含む被覆を形成させた補助陰
極を用いることにより、陰極電流密度を大きくし
てもクロム金属が析出せず、該補助陰極を小型化
できることを見出し本発明に至つた。 従来、バツクアツプ法に用いる補助陰極の形状
は、わずかに陰極上にクロムがメツキ析出し、そ
の電着歪による陰極の破損を防ぐためにかなりの
制約があつたが、本発明で用いる補助陰極ではク
ロムが析出しないため、棒状、すだれ状、網状等
の任意のものが使用できる。また、基体の材質は
クロムメツキ浴に耐久性のあるチタン、ニオブ等
のバルブ金属が適しているが、これらの金属基合
金でも差し支えない。 本発明に用いる補助陰極は、前記バルブ金属ま
たはその金属の合金基体上に白金族金属を含む被
覆を調整したものである。被覆はクロムメツキ浴
に耐久性のあるものならば特に制限されないが、
白金、白金−イリジウム合金、ロジウム等の水素
過電圧の小さい金属または合金が好ましい。な
お、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、あるいは
これにスズ、マンガン等の酸化物を添加したもの
は水素過電圧は低いものの、陰極として使用する
ため、酸化物から金属へと還元され、被覆の崩壊
を生じるなど耐久性がなく、露出したバルブ金属
基体上にクロム金属が析出するので好ましくな
い。 被覆の調整方法は、従来公知の技術が用いら
れ、有機溶剤あるいはアルカリ溶液により脱脂、
洗浄後、サンドブラスト法あるいは塩酸、シユウ
酸、フツ化水素酸などにより化学的にエツチング
したバルブ金属基体上に熱分解法、電気メツキ等
により被覆を施す。なかでも、白金族金属の塩化
物をブタノール等の有機溶剤に溶かし、バルブ金
属基体上に塗布した後電気炉内に置き、加熱分解
して被覆を調整する熱分解法は、表面積が大きく
水素過電圧を低下させるので好適な方法である。
熱分解雰囲気を、真空、窒素等の非酸化性、ある
いは還元性雰囲気で行なえば容易に目的とする金
属あるいは合金被覆が得られる。 本発明に用いる補助陰極は陽極への保護電流通
電を主たる目的とするので、その通電量は特に制
限されないが、電流密度を高くしすぎるとバルブ
金属基体の水素吸蔵量が増大し、被覆が崩壊する
おそれがあるので、50A／ｄm²以下が好ましい。 本発明は、クロムの電気化学的序列が比較的貴
であることから、水素発生電位の低い白金族金属
を含む被覆を有する補助陰極を用いることにより
クロム金属を析出せず、水素発生を優先させるバ
ツクアツプ法である。 補助陰極を用いて不溶性陽極に通電する方法
は、少なくともメツキ通電停止時、または非電解
時に別途電源回路により陽極に停電すれば良く、
通常保護電流は0.01〜1.0A／ｄm²程度であるの
で、メツキ通電中に該電流回路を閉じて小電流を
流したももでもメツキに大きな影響がないので、
保護電流回路はメツキの通電、停止にかかわらず
切らずにおくことができる。 このように、バルブ金属基体上に白金族金属を
含む被覆を有する補助陰極を用い、常時保護電流
を陽極に流し続ける方法をとれば、クロム金属の
析出がないためメツキ浴中のクロム濃度も変化せ
ず、また、従来の補助陰極を用いてバツクアツプ
方法を行なつた際に、補助陰極上に析出したクロ
ムをかき落とすなどの操作もなくなり、簡単かつ
安全に操業を行なうことができる。 （実施例） 以下、実施例により本発明を具体的に説明する
が、これらは本発明を何ら限定するものではな
い。 実施例 １〜３ 直径３mmのチタン棒をトリクレンで脱脂し、熱
シユウ酸でエツチングして粗面化した基体に、塩
化白金酸のブタノール溶液を塗布し、乾燥後、窒
素気流下500℃で加熱焼成する操作を３回繰り返
して金属白金の被覆を有する補助陰極を作成し
た。 また、別途にチタン板をサンドブラスト処理
し、この上に線径0.4mm、24メツシユのチタン製
金網をスポツト溶接し、周辺部を幅５mm×厚み１
mmのチタン製押さえ板でさらにスポツト溶接して
補強したものを基体とし、トリクレン脱脂し、３
％フツ酸でエツチングを行ない、酸化イリジウム
酸のエタノール溶液をハケ塗りした後乾燥し、大
気中450℃、30分間の加熱処理を２回繰り返した。
その後、硝酸鉛250ｇ／、硝酸銅25ｇ／から
なる電着液中で陽極電流密度2.5A／ｄm²、液温
60℃、pH4.0の条件で14時間電着を行ない二酸化
鉛被覆陽極（PbO₂／Ti）を調整した。 この二酸化鉛被覆陽極、補助陰極およびチタン
製板状陰極をメツキ槽内に設置し、クロム酸230
ｇ／、硝酸2.5ｇ／のサージエント浴中でメ
ツキを行なつた。直流電源はメツキ用とバツクア
ツプ用を各々別途に用意し、メツキ時間50分、非
メツキ時間は10分の断続電解を行なつた。陽極電
流密度はメツキ時50A／ｄm²、非メツキ時（バツ
クアツプ時）は0.14〜0.35A／ｄm²とした。この
時、補助陰極の電流密度は20〜50A／ｄm²とし
た。この電極寿命試験の結果を第１表に示す。 比較例 １ 補助陰極を用いず、バツクアツプしないで他は
実施例１と同様に行なつた電極寿命試験の結果を
第１表に示す。 実施例 ４〜６ 塩化白金酸３重量部、塩化イリジウム酸１重量
部、残部イソプロパノールから成る塗布液を用い
た以外は実施例１と同様にして白金−イリジウム
合金を被覆して補助陰極を作成した。 メツキ陽極としては、塩化イリジウム酸のブタ
ノール溶液を塗布した後、大気中で焼成する前記
熱分解法により貴金属被覆電極を調整した。 この補助陰極、貴金属被覆電極を用い、実施例
１と同様な電極寿命試験を行なつた結果を第１表
に示す。ただし実施例１〜３と異なり、保護電流
はメツキ時にも流した。 比較例 ２ 補助陰極を用いず、バツクアツプしないで他は
実施例４〜６と同様に行なつた電極寿命試験の結
果を第１表に示す。 比較例 ３ 直径３mmのチタン棒を補助陰極に用いた以外は
すべて実施例１と同様な電極寿命試験を行なつた
ところ、陽極は１年経過後も継続使用できたが、
補助陰極にクロムが析出し、１〜２か月毎にクロ
ムのかき落としが必要であつた。

【表】 （発明の効果） 本発明により、クロムメツキ用不溶性電極の長
寿命化が図られ、その際、クロム金属が析出しな
い補助陰極を用いるため、メツキ槽内に設置する
際の形状、寸法に制限を受けなくなつた。また、
クロムの損失もなく、補助陰極の点検、交換を必
要としないで、長期に安定したクロムメツキ操業
が可能となつた。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 陽極として不溶性電極を使用し、メツキ槽内
   に設置した補助陰極を用いてメツキ通電停止時に
   も該陽極に補助電流を流すクロムメツキ用電極の
   保護方法において、該保護陰極としてバルブ金属
   またはその金属基合金上に白金族金属を含む被覆
   を形成させた電極を使用することを特徴とするク
   ロムメツキ用電極の保護方法。