JPH04253149A - 二次元磁気走査を用いたイオン照射装置および関連装置 - Google Patents

二次元磁気走査を用いたイオン照射装置および関連装置

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JPH04253149A
JPH04253149A JP3240385A JP24038591A JPH04253149A JP H04253149 A JPH04253149 A JP H04253149A JP 3240385 A JP3240385 A JP 3240385A JP 24038591 A JP24038591 A JP 24038591A JP H04253149 A JPH04253149 A JP H04253149A
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Abstract

(57)【要約】本公報は電子出願前の出願データであるた
め要約のデータは記録されません。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えばイオン注入装
置のようなイオンビームを利用する装置に関し、より具
体的には、イオンを磁気的に二次元で走査してターゲッ
トに照射する装置およびそれに関連する装置に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】シリコンウェーハのような半
導体の改質は、しばしばイオン注入によって行われる。 通常、イオン照射の均一性は、二次元における時変電界
(時間的に変化する電界)を用いて、イオンビームを、
ウェーハ表面を横切ってラスターパターン状に走査する
ように急速に偏向させることにより達成される。各次元
で互いに反対方向に作用する一対の偏向によって、ウェ
ーハに対する平行走査を行うことができる。このような
イオン注入装置においては、ビーム電流すなわちウェー
ハのスループットは、時変電界領域において存在しかつ
ビームの「ブローアップ(膨張)」の原因となる空間電
荷力によって極端に制限される。
【0003】一般的な変形例においては、時変電界は、
ビームを一つの軸に沿って前後に偏向させるために用い
られ、その間にウェーハは垂直軸に沿って機械的に往復
動させられる。しかし、前述したように多くの場合、ビ
ーム電流とウェーハのスループットは、空間電荷力によ
って非常に制限される。更に、ウェーハの機械的な動き
は比較的緩やかであり、全体の照射量が少ない場合、ウ
ェーハのスループットは制限される。
【0004】電子走査のために高周波域で用いられてい
る時変磁界(時間的に変化する磁界)を、原子および分
子イオンビームを走査するのに用いることが提案されて
いる。しかしながら、ウェーハの処理にしばしば用いら
れる重イオン、例えば一価のホウ素(B+ )、リン(
P+ )、ヒ素(As+ )およびアンチモン(Sb+
 )等に対して必要とする走査場エネルギーは、磁界偏
向の場合は電界偏向に比べて1000〜10000倍に
もなる。
【0005】注入イオンよりも質量が1/10000以
下である電子を高速で磁気走査するために開発された技
術を、イオン注入装置に適する構造を作るために拡張す
ることはできない。これまで、イオン注入装置に用いら
れていた磁気走査法は、ほんの数Hzの走査周波数に限
定されていた。更にこれらの構造は、高速走査周波数で
の、即ち100Hz〜1000Hzあるいはそれ以上の
周波数での二次元ラスター走査を作るために適用できな
いし、拡張もできない。
【0006】そこでこの発明は、大電流のイオンビーム
を二次元的に高い走査周波数でかつエネルギーの広い範
囲に亘り走査することを可能にする装置を提供すること
を主たる目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
、この発明のイオン照射装置は、イオンビームを基準軸
に対して磁気的に二次元で偏向させる磁気走査装置と、
この磁気走査装置からのイオンビームを磁気的に二次元
で前記基準軸と所定の関係を有する方向に向け直してタ
ーゲットに入射させる磁気イオンビーム輸送装置とを備
えることを特徴とする。
【0008】一つの局面において、この発明は、後に更
に他の磁界(これは好ましくは静的なもの)が続く時変
磁界の組み合わせを作る整合された構造に関し、この構
造は、適切な配置により、大電流の重イオンビームを二
つの直交方向に高走査周波数でエネルギーの広い範囲に
亘り走査することを可能にする。
【0009】この発明により、イオン電流が10μAか
ら20mA以上の範囲でエネルギーが例えば400ke
Vから5keV以下の範囲という、イオンの非常に広い
範囲に亘って走査可能なイオン注入装置を構成すること
ができる。
【0010】一つの重要な局面において、この発明の特
徴は、低パービアンスから高パービアンスの原子または
分子イオンビームに対する二次元磁気走査装置にあり、
この装置の後ろには、ターゲット上で所望の入射条件に
なるようにビームを二次元で向け直す磁気イオンビーム
輸送装置が続く。
【0011】好ましくは、この局面は、軸方向に分離さ
れた一対の磁気偏向装置によって実施される。この磁気
偏向装置の一つは、第1の方向、例えばウェーハ面によ
り定義されるx−y面でのy方向に走査するためのもの
であり、他の偏向装置はこのy走査装置に後に続いてい
てx方向に走査するためのものである。
【0012】この走査装置を形成する磁石は、時変磁界
を発生する電磁石であり、ビームを二方向に偏向させる
のに必要とする電力を最小にするように配置および構成
されている。
【0013】好ましい実施例において、二つの走査器の
動作に必要な電力を最小限にしながら注入ターゲットの
高いスループットを達成するために、小さいギャップ長
を有し小さい偏向を要求されるy走査器は、約1000
Hzまたはこれ以上の高い走査周波数で動作させられ、
一方、大きいギャップ長を有し大きい偏向角を要求され
るx走査器は、約50Hzあるいはそれ以上の低い走査
周波数で動作させられる。
【0014】好ましくは、各種実施例において、走査器
の後に続く磁気イオンビーム輸送/変換装置が、ターゲ
ットでのイオンビームの所望の関係を達成するために二
つの次元で作用する静磁界を作り出す。好ましくはこの
装置は、ウェーハで平行ビームを作り出すテレセントリ
ック輸送装置(TTS)である。このテレセントリック
輸送装置は、ビーム経路に沿って所定の静磁界を与える
ことにより、走査されたビームを、全てのビーム線が実
質的に平行であるテレセントリックビームに変換する。
【0015】x走査器に続くイオンビーム輸送装置は、
二つの走査器によって与えられるビーム偏向に適合する
比較的大きい開口部を有している。更に、この装置は、
ウェーハでのビームスポットサイズおよび固有偏差を最
適化するように、焦点距離を予め設定できる調整可能な
レンズのように働く。磁気輸送装置のパラメータの適当
な設定により、ウェーハでのビームスポットサイズを、
小ビーム電流に対しては例えばオーバースキャンを最小
にしてビームを効率的に使用するために非常に小さくす
ることもできるし、あるいは、大ビーム電流に対しては
、大電流密度での小さい焦点スポットがウェーハ表面を
損傷するのでスポットサイズを大きくすることもできる
【0016】好ましくは、二つの別に配置された磁気走
査器を採用する走査装置においては、イオンビーム輸送
装置は少なくとも二つのイオン光学的輸送要素を含んで
いる。テレセントリックビームを規定するために、これ
らの組み合わされた要素の焦点は、走査器の中心に来る
ように選ばれる。
【0017】この発明の他の局面は、走査器および磁気
イオンビーム輸送装置の他の実施例にある。
【0018】他の局面において、この発明は、走査装置
に関連する磁界検出要素を採用する二次元磁気走査装置
、および、検出された磁界の値に基づいてこの走査装置
を二次元に亘り所定のイオンドーズプロファイルを作る
よう制御する閉ループ制御装置に関する。
【0019】この発明の一つの特徴は、原子または分子
イオンでもってターゲットの表面を二次元で高速走査す
ることによって、ターゲットの表面に原子または分子イ
オンを照射する装置にある。この装置は、ターゲットを
ビームに対面させるエンドステーションと、原子または
分子イオンのビームを生成するイオン源および関連のビ
ーム形成装置と、基準軸に対してビームを二次元に偏向
させる磁気走査装置とを含んでいる。この走査装置は、
走査の各次元に対して、磁性材料から成るヨークおよび
磁極手段と、関連する励磁コイルとから成る個別の走査
電磁石手段を採用している。この装置はまた、走査装置
に続く磁気イオンビーム輸送装置を備えている。この輸
送装置は、走査装置からその二次元的な偏向の範囲に亘
ってビームを受けるよう配置されており、かつ次のよう
な特性の磁界条件をビーム経路に沿って課するよう構成
されている。即ちこの特性は、二次元的に偏向されたビ
ームを、その前記軸からの所望の瞬間的な二次元的変位
時に、二次元における軸と予め定められた所望の角度関
係を有する方向に向け直すよう選定された特性であり、
それによってターゲット上でビームの所望の走査を得る
ことができる。
【0020】好ましい実施例においては、磁気走査手段
は、走査の少なくとも一つの次元に対して、ビームを1
00Hzより大きい周波数でターゲットの表面上を走査
するよう構成されており、磁気イオン輸送装置は、二次
元的に偏向されたビームを次元的に非結合の状態で向け
直す特性を有しており、かつ走査装置は、ビームを第1
の次元において走査する時変磁界を発生する第1の磁気
走査器を備えており、かつその下流側に同軸状に位置し
ていて、ビームを第2の次元で走査するものであって第
1の走査器とは磁気的に非結合の時変磁界を発生する第
2の磁気走査器を備えている。この走査器は、ビームを
各瞬間に各次元において、ターゲット上におけるビーム
の所望の瞬間的な変位によって規定される各角度で、か
つ互いに非結合の状態で、各基準軸から偏向させるよう
に働く。
【0021】この発明の他の特徴は、低パービアンスか
ら高パービアンス、即ち、0.02/M[amu]1/
2 (mA/keV3/2 、Mはイオンの質量)を越
えるパービアンスを含む広範囲のパービアンスでビーム
をターゲットの表面上を急速に走査することにより、所
望の均一性で原子または分子イオンをターゲット上に照
射する装置にある。この装置は、ターゲットを支持する
エンドステーションと、原子または分子イオンのビーム
を生成するイオン源と、ビームから不所望の質量あるい
はエネルギーのイオンを除去する運動量分析器を含み原
子または分子イオンのビームを生成するビーム形成装置
と、イオンの所望の最終速度を確立する加速器とを備え
ている。 基準軸に対して二次元にビームを偏向させる磁気走査装
置が設けられている。この走査装置は、各次元において
ビームを続けて偏向させる時変磁界を発生する第1およ
び第2の磁気走査器を装置の軸に沿って第1および第2
の位置に備えている。この第1の走査器は、ビームを第
1の次元において急速に走査するよう構成されており、
かつビームが通過する磁気ギャップであって第2の走査
器の磁気ギャップ長よりも短い磁気ギャップ長を有して
おり、かつ第2の走査器よりも急速にビームを走査する
よう構成されている。この走査器は、各瞬間に各次元に
おいて、ターゲット上でのビームの所望の瞬間的な変位
によって規定される各角度で、かつ互いに非結合の状態
で、各基準軸からビームを偏向させるように働く。磁気
走査器のそれぞれは、磁性材料から成るヨークおよび磁
極手段と、関連する励磁コイルとを備えており、かつそ
れぞれは、コイルに時変電流を供給する制御回路および
電源を備えている。この走査器の後ろには、磁気イオン
ビーム輸送装置が続いている。この輸送装置は、走査器
の二次元的な偏向の範囲に亘って走査器からビームを受
けるよう配置されており、かつビーム経路に沿って次の
ような特性の磁界条件を課するよう構成されている。即
ちこの特性は、二次元的に偏向されたビームを、その軸
からの所望の瞬間的な二次元的変位時に、二つの方向に
おいて軸に対して所望の角度関係を有する方向に、次元
的に非結合の状態で向け直すよう選定されており、それ
によって有限のイオン分布サイズをしたビームスポット
をターゲット上で所望に走査することができる。この磁
気イオンビーム輸送装置は、ターゲットにおいて実質的
に一定のビームサイズのビームを生じるよう構成されて
おり、それによってイオンの進行方向は全走査範囲に亘
り所望の方向から約2°未満しかずれない。
【0022】上記およびこれから述べる好ましい各種実
施例においては、第2の走査器は、ビームに影響を及ぼ
す光学的要素を介在させることなく、第1の走査器に近
接して配置されている。第1の走査器は、第2の走査器
の走査周波数より約10倍でしかもその有理倍数でない
走査周波数で動作するよう構成されている。この実施例
の装置は、前記走査装置にリボン状のイオンビームを与
えるよう構成されており、このリボンの断面の短辺側は
、第1の走査器のギャップの厚さ方向に整列させられて
いる。また第2の走査器のギャップは、状態では軸方向
に放射状に広がっており、かつ方向では第1の走査器に
よって作られる偏向ビームのエンベロープの広がりに対
応しており、一方、第2の走査器の磁極の(ギャップに
垂直方向の)幅はこれに対応して軸方向において徐々に
増大している。
【0023】この発明の装置の更に他の各種実施例にお
いては、走査器のコイルおよび関連の磁気回路は、ビー
ムを二つの次元において非結合の状態で偏向させる磁界
を発生するよう働き、かつビーム経路に沿ってほぼ同じ
ように近接して配置されている。好ましくは、この発明
の装置は、円形の鉄ヨークと、ヨークの軸の周りにあっ
て当該軸に向かって延びる複数の磁極と、この磁極に組
み合わされた互いに別のx次元偏向コイルおよびy次元
偏向コイルとを備えている。各偏向方向に対する磁極上
のコイルの巻数は、各偏向軸に対する磁極の角度位置に
従って変えるのが好ましい。また、各組のコイルを、各
次元における偏向のための各励磁電流で駆動されるよう
に直列に接続する手段が設けられる。
【0024】この発明の装置の更に他の実施例において
は、ビーム形成装置はイオン源の共役イオン光学像を形
成し、かつ走査装置はその磁気ギャップを比較的小さく
保つためにこの光学像の領域に設置される。磁気走査装
置の磁極およびヨークの構造は、厚さが1mm未満の磁
性材料の絶縁された積層体から成る。好ましくは、この
積層体の厚さは約0.5mmにするのが良い。イオンビ
ーム輸送装置は、二次元的に偏向されたビームに対して
、当該ビームがターゲットに入射する最終的な位置およ
び角度がイオンビーム輸送装置に入るビームの角度方向
および変位の一次関数であるような線形変換を行うこと
ができる静磁界を確立するための電磁石装置である。 この磁気イオンビーム輸送装置は、好ましくは、各イオ
ンの角度方向が走査範囲に亘り所望の方向から約2°未
満しかずれないようなビームを作るのに十分な静磁界条
件をビーム経路に沿って課するよう構成されている。好
ましくはこの磁気的なイオン輸送装置は、ターゲット上
でのビームの角度を発散、平行および集束する値の範囲
に亘って調整するための調整可能なパラメータを有して
いる。好ましくはこの磁気イオンビーム輸送装置は、前
記二次元における前記基準軸に平行なビームを作る静磁
界条件を与える。好ましくはこの磁気イオンビーム輸送
装置は、ビーム経路に沿って、全走査範囲に亘りターゲ
ットでの実質的に一定のイオン分布スポットサイズを有
するビームを作る静磁界条件を課するよう構成されてい
る。好ましくはこの磁気イオンビーム輸送装置は、ター
ゲットでのビームサイズを調整するための調整可能なパ
ラメータを有している。
【0025】この発明の更に他の実施例においては、イ
オンビーム輸送装置は、前記各磁気走査器が互いに異な
った軸上位置であることについての適応を可能にするよ
うに構成されており、かつ偏向されたビームを所望の角
度関係および変位へ線形変換を行うよう構成された複数
の、軸方向に分離して配置された静磁界印加要素を備え
ている。好ましくはこの磁気イオンビーム輸送装置は、
偏向の二つの次元で有効な静磁界を印加する第2の磁気
手段が後に続く少なくとも一つの静四重極磁界を印加す
る手段を備えている。好ましくは、この磁気イオンビー
ム輸送装置は、交替極性をした少なくとも三つの四重極
磁界を続けて印加する手段を備えている。好ましくはこ
の磁気イオンビーム輸送装置は、少なくとも三つの四重
極電磁石を直列に備えている。好ましくはこの磁気イオ
ンビーム輸送装置は、交替極性をしたそれぞれの四重極
磁界を発生するよう構成された少なくとも三つの異なる
セクションをその長さ方向に沿って有する偏向電磁石を
備えている。好ましくは、四重極磁界装置のxおよびy
次元の対物点は、それぞれ、テレセントリック条件を満
たすような方法で、xおよびy次元磁気走査器において
生じる。好ましくはこのイオンビーム輸送装置は、後述
する表1に示したように実質的に配置される四重極電磁
石を備えている。好ましくはこの四重極磁界のパラメー
タは、ターゲットでのビームスポットサイズのイオン分
布スポットサイズを変化させるよう調整可能であり、従
ってこのビームスポットサイズは全走査範囲に亘り実質
的に一定のままである。好ましくは四重極装置のパラメ
ータは、走査範囲において所定の関係を維持しながら、
ターゲットでのビーム角度を発散、平行および集束関係
の全範囲で変化させるよう調整可能である。好ましくは
第2の磁気手段は、ソレノイド手段を備えている。好ま
しくはこのソレノイド手段は、反対極性をした隣接する
ソレノイドを備えている。
【0026】他の各種実施例においては、イオンビーム
輸送装置はソレノイド装置を有している。好ましくはこ
のソレノイド装置は複数のソレノイドを有しており、こ
の各々のソレノイド中の電流を制御することによりビー
ム回転量を制御するように制御される。好ましくはこの
ソレノイド装置は、更に、所望の制御された量の回転を
与えるようにソレノイドの電流を互いに関連して調整す
る手段を備えている。好ましくはこのソレノイド装置は
、互いに逆方向に電流が流れる一対のソレノイドを備え
ており、それによって第2のソレノイドが第1のソレノ
イドによるビームの回転を補償する。ソレノイド中の電
流の大きさは、好ましくは、ビームの回転を阻止するよ
うに等しくされる。好ましくは走査装置は、異なる軸位
置に設置された第1および第2の走査器を備えており、
かつイオンビーム輸送装置は、更に、ソレノイド装置に
よって与えられるxおよびy次元線の仮想対象を重ねる
磁気装置を備えている。好ましくは第1および第2の次
元に対する走査器は、実質的に重ねられており、かつイ
オンビーム輸送装置は単にソレノイド手段のみを備えて
いる。
【0027】他の各種実施例においては、磁界を印加す
る磁気イオンビーム輸送装置は、四重極電磁石が後に続
く偏向電磁石を備えている。磁界を印加する磁気イオン
ビーム輸送装置は、少なくとも一つのソレノイドが後に
続く偏向電磁石を備えている。走査装置は更に、走査装
置の磁気コイルを所望の実質的に三角波電流励磁波形で
励磁するよう構成された電力増幅器を備えている。好ま
しくはこの電力増幅器は、走査装置に印加される電流を
走査周期の半分の約80%に亘り実質的に線形変換する
方形電圧波形を作るよう構成されている。
【0028】更に他の各種実施例においては、走査装置
は、ビームを一つの次元において約1000Hz程度あ
るいはそれ以上の走査周波数で偏向させ、かつ他の次元
においてビームを約50Hz程度あるいはそれ以上の走
査周波数で偏向させるよう構成されている。
【0029】この発明の更に他の実施例においては、0
.02/M[amu]1/2 (mA/keV3/2 
)より実質的に上および下のパービアンスを含む広いパ
ービアンスの範囲に亘ってビームの走査を可能にするよ
う構成されている。好ましくは、約20mAのヒ素ビー
ムのような大ビーム電流を有するビームを100keV
から約5keVまでという低エネルギーで走査すること
を可能にしている。好ましくはこの発明の装置は、10
ないし20mAの範囲の大ビーム電流を有するビームを
約100ないし400keVの高エネルギーで走査する
ことを可能にしている。好ましくはこの発明の装置は、
ホウ素、リン、ヒ素およびアンチモンのようなイオンを
ウェーハに注入するイオン注入装置として動作する。好
ましくはこの発明の装置は、直径12インチまでの領域
の全面を走査する。好ましくはこの発明の装置は、ター
ゲット上で約10ないし80mmのビーム径を作る。好
ましくはこの発明の装置は、直径12インチまでのウェ
ーハの全面を複数回走査し、それによって10秒未満で
ウェーハ全面に亘り0.5%より良好な照射均一性が1
0秒未満で達成できるよう構成されている。
【0030】更に他の各種実施例においては、この発明
の装置は、走査装置の磁気走査器を駆動する電力増幅手
段を備えており、この電力増幅手段は固有電圧リップル
を発生するが、走査器の走査周波数はこの固有電圧リッ
プルの有理倍数にならないように選定されている。イオ
ンビーム輸送装置は、ラスター走査を行うよう構成され
た走査装置を備えている。この磁気イオンビーム輸送装
置は、回転ラスター走査を行うよう構成された走査装置
を備えている。イオンビーム輸送装置は、リサージュ運
動を行うよう構成された走査装置を備えている。
【0031】他の実施例においては、この発明の装置は
、ダイナミックフィードバック制御装置を備えている。 このフィードバック制御装置は、走査装置の磁界を検出
しかつイオンビームの走査中にこのビームに作用する磁
界を表す信号を発生する磁界検出手段と、走査装置を制
御して、磁界検出手段に応答して二次元のそれぞれにお
ける規定の磁界プロファイルを閉ループ的に作り出すフ
ィードバック制御装置とを備えている。
【0032】各種実施例において、この発明の装置は、
走査装置のターゲットでのドーズ量を検出しかつイオン
ビームの走査中のドーズ量を表す信号を発生するイオン
ドーズ量検出手段と、走査装置を制御して、このドーズ
量検出手段に応答して二つの次元での規定のイオンドー
ズ量を閉ループ的に作り出すフィードバック制御装置と
を備えている。
【0033】この発明の他の特徴は、ターゲットの表面
に原子または分子イオンをターゲット全体に亘り所望の
均一性で照射する装置であって、0.02/M[amu
]1/2 (mA/keV3/2 )を越えるパービア
ンスを含む広範囲のパービアンスでビームの急速走査を
可能にするよう構成された装置にある。この装置は、タ
ーゲットをビームに対面させるエンドステーションと、
原子または分子イオンのビームを生成するイオン源およ
び関連のビーム形成装置と、ターゲットの全表面に亘り
ビームを二次元で走査することができる磁気走査装置と
を備えている。またこの装置は、走査の各次元について
、磁性材料から成るヨークおよび磁極手段ならびに関連
の励磁コイルから成る個別の走査電磁石手段と、規定の
イオンドーズプロファイルを作り出すために望ましい前
記ビームの位置を表す信号を発生する手段と、ダイナミ
ック閉ループフィードバック制御装置とを備えている。 このフィードバック装置は、走査装置の磁界を検出して
ビームの走査中にビームに作用する磁界を表す信号を発
生する磁界検出手段と、走査装置を制御して、この磁界
検出手段に応答して二つの次元における規定の磁界プロ
ファイルを閉ループ的に発生するフィードバック制御装
置とを備えている。
【0034】この発明の他の特徴は、ターゲット表面に
原子または分子イオンをその全表面に亘り所望の均一性
で照射する装置であって、0.02/M[amu]1/
2 (mA/keV3/2 )を越えるパービアンスを
含む広範囲のパービアンスでビームの急速走査を可能に
するよう構成された装置にある。この装置は、ターゲッ
トをビームに対面させるエンドステーションと、原子ま
たは分子イオンのビームを生成するイオン源および関連
のビーム形成装置と、ターゲットの全表面に亘り二次元
におけるビームの走査を可能にする磁気走査装置とを備
えている。またこの装置は、走査の各次元について、磁
性材料から成るヨークおよび磁極手段ならびに関連の励
磁コイルから成る個別の走査電磁石手段と、ビームの所
望の位置を表す信号を発生して規定のイオンドーズプロ
ファイルを作り出す手段と、ダイナミック閉ループフィ
ードバック制御装置とを備えている。このフィードバッ
ク装置は、走査装置のターゲットでのドーズ量を検出し
てビームの走査中のドーズ量を表す信号を発生するイオ
ンドーズ量検出手段と、走査装置を制御して、このドー
ズ量検出手段に応答して二つの次元における規定のイオ
ンドーズ量を閉ループ的に作り出すフィードバック制御
装置とを備えている。
【0035】好ましい実施例においては、この磁界検出
手段は、磁気走査装置内にある誘導コイルを備えており
、および/または制御装置は、磁界検出手段からの信号
をフーリエ成分および/または位相べき級数に分解する
手段を備えている。
【0036】この発明の他の特徴は、原子または分子イ
オンのビームを基準軸に対して第1および第2の次元で
偏向させるよう構成された磁気走査装置にあり、この装
置は、装置の軸に沿って第1および第2の場所に配置さ
れていて各次元においてビームを続けて偏向させる時変
磁界を発生する第1および第2の磁気走査器を備えてい
る。各磁気走査器は、磁性材料から成るヨークおよび磁
極手段ならびに関連の励磁コイルを備えており、かつそ
れぞれは、コイルに時変電流を供給するそれぞれの検出
回路および電源を有している。第1の時変磁界磁気走査
器は、ビームが通過する磁気ギャップであって、この磁
気ギャップのギャップ長は第2の走査器の磁気ギャップ
のギャップ長よりも小さく、かつビームをその対応する
各次元で第2の走査器より速く走査するよう構成されて
おり、それによって第1の走査器に対して高い周波数で
課せられる電力要求が、当該走査器の小さなギャップ長
によって改善される。この走査器は、ビームを、各瞬間
に各次元において、イオンビームの所望の瞬間的な変位
によって規定される各角度で、かつ互いに非結合の状態
で、各基準軸から偏向させるように働く。
【0037】この発明の他の特徴は、原子または分子イ
オンのビームを基準軸に対して第1および第2の次元で
偏向させる磁気走査装置にある。この装置は、磁性材料
から成るヨークおよび磁極手段ならびに関連の励磁コイ
ルから成る第1および第2の時変磁界磁気走査電磁石手
段をそれぞれ採用している。その各々は、コイルに時変
電流を供給する偏向回路および電源をそれぞれ備えてい
る。この走査器のコイルおよび関連の磁気回路は、磁界
を発生してビームを二つの次元において非結合の状態で
偏向させるように働き、かつビーム経路に沿ってほぼ同
様に配置されている。
【0038】好ましい実施例においては、この発明の装
置は、走査装置の後に続くイオンビーム輸送装置を備え
ており、このイオンビーム輸送装置は、走査装置からそ
の二次元的な偏向の全範囲に亘ってビームを受けるよう
配置されており、かつ次のような特性の磁界条件をビー
ム経路に沿って課するよう構成されている。即ちこの特
性は、二次元的に偏向されたビームを、その軸からの所
望の瞬間的な二次元的変位時に、二つの次元における軸
と予め定められた所望の角度関係を有する方向に向け直
すよう選定された特性であり、それによってビームの所
望の走査を得ることができる。
【0039】この発明の他の特徴は、原子または分子イ
オンのビームを二次元で走査する装置にある。この装置
は、イオンビームを二つの次元において基準軸に対して
偏向させる走査装置と、この走査装置の後に続く磁気イ
オンビーム輸送装置とを備えている。この輸送装置は、
二次元的に偏向されたビームを、その軸からの所望の瞬
間的な二次元的変位時に、二つの方向において軸に対し
て所望の角度関係を有する方向に向け直すよう選定され
た特性の磁界条件をビーム経路に沿って課するよう構成
されていて、互いに軸方向に離して設置された複数の静
磁界印加要素を備えており、それによって有限のイオン
分布サイズをしたイオンビームスポットの所要の走査を
作り出すようにしている。好ましい実施例においては、
このビームは異なる軸位置に配置された第1および第2
の走査器を備える装置によって走査される。また、ビー
ム輸送装置は、その各次元における焦点面が、第1およ
び第2の走査器の中心位置の差に各次元において適合す
るよう構成されている。
【0040】この発明の前記種々の特徴には、上述した
ように、その他の好ましい各種実施例の特徴を含んでも
良いことが理解されよう。
【0041】
【実施例】図1および図2を参照して、そこにはこの発
明に従っていて、かつイオンの二つの直交する時変磁気
偏向を利用する二次元イオンビーム走査装置の要素の概
略が示されている。この時変磁気偏向は、それぞれy走
査電磁石26、x走査電磁石28および一連の三つの同
軸の磁気四重極電磁石54、56および58によって作
られる。即ちこの実施例では、y走査電磁石26および
x走査電磁石によって磁気走査装置230が構成されて
おり、三つの四重極電磁石54、56、58によって磁
気イオンビーム輸送装置240が構成されている。xお
よびy方向に向けられておりかつイオンに作用する振動
性磁界が、y走査電磁石26により典型的に1000H
zの周波数で、かつx走査電磁石28により典型的に1
00Hzの周波数で、それぞれ作られる。
【0042】xおよびy次元的に制限された状態である
ビーム31の形でz軸32にほぼ沿う経路を進む正イオ
ンは、走査装置に入射し、かつ対応する周波数で、まず
y走査電磁石26によってy−z平面内で、次いでx走
査電磁石28によってx−z平面内で、振動性角偏向を
受ける。ある瞬間においては、x走査電磁石28から出
て来たばかりのイオンはビームの形状を維持しているけ
れども、今度は、y走査電磁石26およびx走査電磁石
28によってイオンに加えられた角偏向の結果として、
ビームの長手軸33はz軸32に対してある角度を持た
される。第1の四重極電磁石54に達すると、このイオ
ンビーム31の中心は、x走査電磁石28を通過する時
にx方向に受ける角偏向に比例する距離だけ、およびy
走査電磁石26を通過する時にy方向に受ける角偏向に
比例する距離だけ、z軸32から変位させられる。この
三つの四重極電磁石54、56および58は、それぞれ
、イオンビーム31をz軸32に対して更に向け直しか
つ位置変位させる静磁界を発生する。
【0043】好ましい実施例の一つの重要な特徴におい
ては、この三つの四重極電磁石54、56および58は
、偏向されたイオンビーム31を向け直してターゲット
(基板、例えばウェーハ)10でのその長手軸34が、
x−y平面でのビームの位置に拘わらず、z軸32に平
行になる(即ちこのイオンビーム31がテレセントリッ
クになる)ように組み合わされている。しかしながら、
ターゲット10でのイオンビーム31の位置は、x走査
器28およびy走査器26のそれぞれの周波数で、xお
よびy方向に急速に変化している。このイオンビーム3
1の瞬間的なxおよびyの位置は、それぞれ、x走査電
磁石28およびy走査電磁石26によってイオンに与え
られる角偏向に比例しており、かつビームサイズはビー
ム位置に拘わらずほぼ一定である。この二次元平行走査
法は、図1および図2中に実線または破線で描かれたビ
ームエンベロープによって示されており、実線のビーム
エンベロープ60はある瞬間に走査装置に入射するイオ
ンによって描かれるものを表しており、破線のビームエ
ンベロープ61は他の瞬間に入射するイオンによるもの
を示している。
【0044】なお、前記各走査電磁石26、28は、制
御回路200によってその励磁がそれぞれ制御される。 また、各四重極電磁石54、56、58は、電源220
によっそれぞれ励磁され、この電源220はコンピュー
タ210によって制御される。
【0045】好ましい実施例の更に他の重要な特徴は、
全ての走査器要素が、本質的に磁気的のみであるフィー
ルドを有しているということである。このように電界が
存在しないことにより、残留電子はビームエンベロープ
内に保持される。イオンビームは電気的に中性のままで
あり、反発する空間電荷力は存在せず、前述の平行走査
法はイオンビーム強度が増大しても制限なしに有効であ
る。
【0046】これまでは、約0.002/M1/2 よ
り大きいパービアンスI/E3/2 (Iはビーム電流
(mA)、Eはイオンエネルギー(keV))で重い(
Mが1〜1000原子質量単位)イオンビームを急速に
(1kHzあるいはそれ以上で)走査することは不可能
であった。これに関して、現存の電気的偏向法で実現さ
れている走査法と比較してこの発明の効用が非常に大き
いことが図31に示されている。
【0047】この発明の重要性の一例は、xおよびy方
向にほぼ等しい大きさをしておりz軸32に対して位置
が固定されたターゲット領域10(図1)に、ホウ素(
M=11)、リン(M=31)、ヒ素(M=75)およ
びアンチモン(M=121,123)のようなイオンの
ビームを、約400keVから5keVまでのエネルギ
ーでかつ20mAあるいはそれ以上のビーム電流で、均
一にかつ急速に照射するという半導体イオン注入におけ
る要求に応えることができるということである。
【0048】図1および図2は更に、イオン注入装置の
好ましい実施例を示しており、この装置では、ホウ素、
リン、ヒ素あるいはアンチモンのようなほぼ所定のイオ
ン種の正帯電のイオンがイオン源2のプラズマ室3で生
成され、かつ通常方形あるいは円形をしたオリフィス(
アパーチャとも呼ばれる)5(またはオリフィス列)か
ら出てくる。このイオンは、プラズマ室3のオリフィス
5と一直線上に対応しているオリフィス7を有する引出
し電極4によって引き出される。この引出し電極4は、
電源16によりプラズマ室3の電位より典型的には5な
いし80kVだけ負の電位に保持される。プラズマ室の
オリフィス5に対する引出し電極4の幾何学的形状およ
び位置は、イオン軌道の広がり角が典型的に2°未満で
あるように良好に規定されたビームが引出し電極4から
出てくるように選定されている。イオンは、冷却された
分析スリット24および中性粒子フィルタ電磁石14と
組み合わされた分析電磁石6によって、その電荷(Q)
と質量(M)の比Q/Mに従って純化される。
【0049】この好ましい実施例においては、狭い方の
寸法が第1の走査器26のギャップの方向になっている
リボン状のビームが作られ、これによって当該ギャップ
が最小になるようにしている。
【0050】プラズマ室のオリフィス5と引出し電極4
との間にある抑制電極9は、引出し電極4よりも更に負
電位に保たれており、それによって逆流電子がイオン源
のプラズマ室3に到達してこれを損傷させることがない
ようにしている。この抑制電極9はまた、イオンビーム
31が運動量分析器6に向かって進む際にそこから電子
が排出されるのを防ぐ働きをする。イオンビームエンベ
ロープ内に含まれている低エネルギー電子は、ビーム中
のイオン同士の電気的相互作用により生じる反発力(空
間電荷力)の大きさを減らすのに役立つ。
【0051】加速の第2段階は、電源18によって異な
る電位に保たれている2以上の電極を有する後段加速器
8によって成される。その第1の電極13は、引出し電
極4と同電位にある。ビーム中のイオンは、最後の電極
15が第1の電極13より更に負電位(典型的には0な
いし−400kV)にある時に加速される。また、最終
のイオンエネルギーを非常に低くするためには、電源1
8の極性を逆転させても良く、その場合負の値の加速(
即ち減速)が後段加速器8によって行われる。この後段
加速器8は、その両端に電子抑制電極19が設けられて
おり、それによってイオンと逆方向の電子の加速および
それによってもたらされる電源18の不必要な電流負荷
を防止することができる。また、電子は、後段加速器8
のいずれの側の領域でもビームエンベロープから排出さ
れず、これによりイオンビーム中の空間電荷力の発散効
果が小さくされる。イオンは、電源16および18の出
力電圧を組み合わせることにより、イオン電荷状態当た
り5ないし400keVの範囲で選択できるエネルギー
で後段加速器8から出てくる。
【0052】運動量分析器6は、後段加速器8の前に配
置されており、それによってより低い磁気エネルギーで
動作させることを可能にしている。また、この位置に設
ければ、イオン源2からの不所望のイオン種が後段加速
器8に入るのを防ぐことができ、それによって電源18
の電流およびパワーを最小にすることができる。後段加
速器8に続く中性粒子フィルタ14は、偏向電磁石であ
り、運動量分析器6あるいは後段加速器8で作られる中
性粒子とイオンビームとを分離する。即ち中性粒子フィ
ルタ14で偏向されずに通過する中性粒子は、イオンビ
ーム31から分離される。従って、ほぼ純粋なイオン種
のビーム31が走査電磁石26、28に入ることになる
。冷却された分析スリット24が、運動量分析器6の正
中面(z−x面)にあって引出し電極7のイオン光学的
共役像の場所にある点22に配置されている。この共役
像点22の位置は、運動量分析器6および後段加速器8
のイオン光学的性質に依存しており、共役像22のx寸
法が約数mmになるように選定される。従って、冷却さ
れた分析スリット24の幅も同様に小さくなるので、不
所望のイオン種および多数の中性粒子は、冷却された分
析スリット24の本体によって遮断される。ビーム31
は、イオン源2からターゲット10へ真空容器12およ
び24中を輸送される。ターゲット10は、やはり真空
状態にあるエンドステーション47内に設けられている
。典型的には、公知の技術に従って連続処理およびウェ
ーハハンドリングを可能にする適当なウェーハ供給機構
および真空インターロック構造(図示省略)が採用され
る。
【0053】図1および図2に示す好ましい実施例の他
の局面では、磁気要素の全て(分析電磁石6、中性粒子
フィルタ14、yおよびx走査器26および28、三つ
の四重極電磁石54、56および58)は、その励磁コ
イル11、17、78および42の電流を調整すること
によりそれらの磁界の強さを整合して調整することがで
きる電磁石である。ローレンツ力(後に添付した表2の
文献1参照)によれば、磁気要素によって作られるラジ
アンで表した偏向角は、イオン経路に沿って積分した磁
界強度をイオンの磁気剛性Kで割ったものに等しく、こ
こで     K=(2ME/Q2 )1/2       
                        ・
・・(1)であり、M、EおよびQは、それぞれ、イオ
ンの質量、エネルギーおよび電荷である。各磁気要素の
コイル電流をイオンの磁気剛性Kに比例して調整するこ
とにより、特定のイオン種およびエネルギーに無関係に
、イオンの規定の幾何学的偏向が生じる。この特徴の重
要性は、選択された粒子種およびエネルギーの広範囲に
亘って、二次元平行走査装置をイオン注入において用い
ることができるということである。
【0054】図3には好ましい実施例における走査電磁
石の構造が示されており、ここでは一対のコイル78を
流れる振動性電流77によって励磁される磁気回路にお
いて振動性磁界80が発生される。この一対のコイル7
8の各々は、高透磁率の薄い強磁性積層体70から成り
、同様に高透磁率の薄い強磁性積層体から成るヨーク7
3によって互いに結合された磁極71を取り囲んでいる
。二つの磁極71の開口面82は、イオンビームが通過
するギャップ74によって分離されている。ギャップ7
4内では、力は、磁界の方向とイオンの速度ベクトルの
方向の双方に垂直な方向でイオンに作用する。適切に定
義された磁界Bが、次式のように、磁極幅79の寸法W
を磁極ギャップ74の寸法Gの約3倍にすることによっ
て作られる。     W≒3G                 
                         
    ・・・(2)
【0055】好ましい実施例における走査電磁石の重要
な特徴は、磁気エネルギーを殆ど全て磁極ギャップ74
の領域内に集中させることができる高透磁率の磁極71
およびヨーク73にあり、それによって励磁パワーを最
小にすることができる。このような構造では、磁気剛性
Kのイオンに対して振幅α、周波数fで正弦振動的な角
偏向を生じさせるのに必要な励磁パワーPは、MKS単
位で、次のように表される。     P=7.5×106K2α2fG2/L   
               ・・・(3)ここで、
Lは走査場の有効長(第1の走査器26では約150m
m、第2の走査器28では300ないし400mm)で
ある。このことから、小さなギャップ寸法Gが有利であ
ることが分かる。
【0056】好ましい実施例の他の重要な局面は、走査
電磁石の相対的な順序および物理的な位置にある。図1
および図2を参照して、高い方の周波数のy走査電磁石
26は、運動量分析器6の共役焦点および加速器8の近
傍の冷却された分析スリット24のすぐ後に配置されて
いる。ここではリボン状ビームのx寸法は小さい。従っ
て、y走査器26のギャップ(これはx方向にある)は
それに対応して小さい(約10mm)。x走査器28は
、y走査器26のすぐ後ろに配置されている。何故なら
、そのギャップ(これはy方向にある)が、y走査器2
6によって作られる振動性偏向の領域に適合するために
かなり大きく(約50mm)なければならないからであ
る。しかしながら、このx走査器28は、低い周波数で
動作するので、それに必要とする励磁パワーは同様であ
る。ちなみに、高い周波数の走査器を第1の位置ではな
く第2の位置に配置すれば、二つの走査器に対する全動
作パワーはほぼ振幅の程度だけ増大する。
【0057】好ましい実施例の更に他の重要な局面にお
いては、第2の走査器28の動作パワーを、磁極71を
図4および図5に示すように作ることにより減少させる
ことができる。その磁極ギャップ74は、第1の走査器
26によって作られるビーム72の振動性偏向の範囲が
第2の走査器28の入口から出口に向かって増大するの
と同程度に、その入口75における寸法が出口76にお
ける寸法より小さい。更に、入口での磁極幅W′は、式
(2)に従って、出口での幅Wよりも小さい(図4参照
)。好ましい実施例においては、この磁極ギャップ74
は、z軸32に沿う距離と共に入口での寸法G′から出
口での寸法Gまで直線的に増大している。更に、磁極幅
もまた、z軸32に沿う距離と共に式(2)に従って直
線的に増大している。このような磁極プロファイルに対
しては、動作パワーは次式で与えられる。     P′=P{(1−β)/loge β}2  
                 ・・・(4)ここ
で、β=G′/Gであり、Pは同じ長さを有し同じ偏向
を生じるけれども出口の磁極ギャップに等しい均一のギ
ャップを有するものの動作パワーである。この好ましい
実施例においては、β=0.5でありその場合P′=0
.52Pである。換言すれば、第2の走査電磁石28に
おける磁極71の形状を調整することにより、同等の機
能を果たすけれども形状を調整していない一定のギャッ
プを有する走査電磁石に比べて、動作パワーを殆ど1/
2に減少させることができる。
【0058】図6および図7は積層された電磁石の好ま
しい構造を更に示しており、ここでは積層体70は絶縁
材料69の層により互いに電気的に絶縁されている。時
変磁界によって積層体70内に作られるうず電流68は
、各積層体の境界内を流れ、磁極およびヨークの周囲を
回らないようにされている。このうず電流68はコイル
電流とは反対に流れ、図7に示すように磁束80を積層
体70の表面領域に集中させる働きをする。磁界は、表
面からの距離と共にほぼ指数関数的に減少する。表皮深
さと呼ばれる深さδでは、磁界は表面での強度の1/e
(e≒2.7183)になる。磁束は磁極の表面82間
で連続していなければならないので、ギャップ74中の
磁界Bは、次式に示すように、積層体表面81での磁界
BS より常に小さい。     B/BS      ≒(δ/d)・{2[cosh(d/δ)−c
os(d/δ)]    /[cosh(d/δ)+c
os(d/δ)]}1/2 ここでdは積層厚みであり
、δ=1/(πμσf)1/2 であり、μは積層材料
の透磁率であり、σはその導電率であり、fは磁界Bの
正弦周波数であり、単位はいずれもMKS単位である。
【0059】図8はこの発明の更に重要な局面を示しお
り、ここでは積層厚dを十分に小さく、例えば1mm未
満、好ましくは約0.5mm以下にすることによって、
10kHzまでの周波数において0.1テスラより大き
いギャップ磁界を実現することができる。図8中のカー
ブは、d=0.36、0.50および0.64mm、σ
=2.5×106 S/mおよびμ=7000μ0の値
に対して適用され、ここでμ0 =4π×10−7は自
由空間の透磁率である。ヨーク積層体における磁界BS
 は、ヨークの飽和を避けるために1テスラに制限され
ているけれども、十分なギャップ磁界が高い周波数にお
いても得られ、これにより基本周波数のみならず高調波
をも含む波形で2kHzまでの振動性磁界を発生させる
ことができる。フーリエ変換理論によれば、高調波成分
を基本正弦波周波数に加えることにより、任意の連続反
復波形を作ることができる。例えば、少量の奇数高調波
を基本周波数に加えることにより、図10に示すような
三角波形を有する振動性磁界を作ることができる。この
ような波形は、例えば、半導体のイオン注入において有
利である。何故なら、それによってビームを一定速度で
前後に走査し、ターゲット10を均一に照射することが
できるからである。
【0060】図9は、ヨークの磁界BS を1テスラお
よび積層体の厚さを0.5mmに制限することによって
、基本周波数の関数としての三角波振動性磁界66の強
度が、同じ周波数の正弦波磁界65のそれよりもほんの
少しだけ小さいことを示している。実際、2kHzまで
の走査周波数に対しては、ギャップ内において現在のフ
ェライトと同等の三角波磁界強度を達成することができ
る。このようなフェライトは一般的に高価な材料である
が、約0.3テスラで磁気的に飽和する電磁石を構成す
るのに使用することができる。図9中の実線のカーブ6
6を構成するのに使われている三角波形は、走査サイク
ルの83%に相当する−75°から75°までの走査位
相角に亘り、最も一定の走査速度を与える大きさを有す
る21次までの奇数高調波を含んでいる。
【0061】図10は、三角波形を示しており、これは
、高調波の数を21に制限した結果として、振幅64の
先端で真ののこぎり波からはずれている。図11は、こ
の高調波域に対して、走査速度が走査サイクルの150
°(即ち走査時間の83%)に亘り0.2%より良く一
定であることを示している。実際上は、走査の大きさは
、走査速度が次の0を通過して符号を変える期間中(1
7%)、ビームがターゲット外周の外側にあるように十
分に大きくされる。高調波の数を2倍にすれば、走査速
度を上記と同様に一定にするのに、オーバースキャン時
間を約半分に(即ち17%から9%に)減らすことがで
きる。この好ましい実施例の積層された走査電磁石は、
21次より大きい高調波に適合することができるが、現
在商業的に利用できる典型的な電力増幅器では、20〜
40kHzの周波数範囲の高調波に制限されている。
【0062】図12は、磁気四重極電磁石54、56お
よび58の基本構造を示すx−y平面での断面図である
。四つの磁極40が、図1および図2に示す構成に対し
ては、z軸32と一致する対称軸38の周りに対称に配
置されている。この磁極40の軸41は、x軸およびy
軸に対して45°に配置されている。各磁極40はコイ
ル42で囲まれている。所定の四重極電磁石の全てのコ
イルは、物理的形状および巻数に関して同一であるが、
一連の磁極40の先端に、磁気極性NSNSを作るよう
に電気的に励磁される。これらの磁極40は、隣接する
磁極対間に磁束の戻りを生じさせるヨーク36と同様に
、高透磁率の鋼合金で構成されている。イオンビームは
、四重極電磁石の中心領域でかつ真空容器44の内側を
通過する。適切な形状の磁極片を用いれば(表2の文献
2参照)、前記中心領域における磁界は本質的に純粋な
四重極形状となり、次式で表される。     B=+(B0 /r0 )・(yi+xj) 
                 ・・・(5)ここ
でiおよびjはそれぞれxおよびy方向の単位ベクトル
であり、B0 は対称軸38から距離r0 の所での磁
極先端での磁界の強さである。位置(x,y)における
正に帯電したイオンに作用するローレンツ力(表2の文
献1参照)は、次のように表される。     F=Qv×B=−(B0 /r0 )・(xi
−yj)・(2Q2 E/M)1/2        
                         
                         
 ・・・(6)このローレンツ力は、B0 >0の場合
、x方向に集束、y方向に発散を生じさせ、かつx方向
およびy方向における力の成分は、それぞれz軸32か
らのイオンの変位xおよびyに線形的に依存している。 まん中の四重極電磁石56は上記のような極性を有して
おり、一方その前後の第1の四重極電磁石54および第
3の四重極電磁石58は反対の極性を有しており、それ
によって、図1および図2中のビームエンベロープ60
および61の挙動によって示すように、x方向の発散お
よびy方向の集束を生じさせる。
【0063】イオンがターゲット10に入射する時のz
軸32に対する最終的な位置および角度は、二つの走査
器26および28において受ける角偏向および式(6)
に示したような三つの四重極電磁石54、56および5
8で受ける力の総合効果に依存している。詳述すると、
最初はz軸32に沿って進み時間tにおいて第1の走査
器26に入るイオンを考えてみる。このイオンによって
表される経路を、これ以降は「時間tにおける主線」と
呼ぶ。物理的には、この主線は、時間tにおける全イオ
ンビームのほぼ中心線である。第1の走査器26におい
て作られるこの主線の角偏向α(t)は、この走査器を
通過するイオン飛行時間で平均した振動性磁界の値に依
存している。同様のことが、第2の走査器28で作られ
る角偏向β(t)についても言える。殆どの場合、走査
器を通過するイオン飛行時間は、走査器の振動周期によ
り遙かに小さく、その場合、時間平均磁界は、一次につ
いては、イオンが走査器を通過する途中で受ける「瞬時
磁界」になる。とにかく、α(t)およびβ(t)は時
間の振動性関数であり、一般的に、異なる時間tにおけ
る主線は異なる角偏向を受ける。また、α(t)および
β(t)は、物理的に独立した振動性磁界によって作ら
れるので、互いに独立である。ビーム経路に沿う任意の
点において、主線の位置および方向は次の四つの座標で
特徴づけられる。x  :z軸32に対するx位置。 x′:z軸32とz−x平面への主線投射との間の角度
。 y  :z軸32に対するy位置。 y′:z軸32とy−z平面への主線投射との間の角度
【0064】仮にx走査器28およびy走査器26の中
心が、第1の四重極電磁石54の入口境界の前でそれぞ
れ距離pおよびqの所にあれば、時間tにおける主線の
入口境界でのパラメータは、近軸光線近似で次のように
表される。     xi =pα(t),xi ′=α(t),y
i =qβ(t),    yi ′=β(t)   
                         
          ・・・(7)式(6)は、四重極
電磁石において力成分Fx およびFy がそれぞれx
およびyに線形に依存していることを示している。従っ
て、四重極電磁石の出口での主線のパラメータは、入口
でのパラメータの同次形一次変換となる。更に、式(6
)によれば、x方向における力Fx は粒子のy位置に
依存せず、同様に、力Fy は粒子のx位置に依存しな
い。その結果、粒子運動のx投射およびy投射は、互い
に非結合状態になる。従って、三つの四重極電磁石54
、56、58、四重極電磁石間の無磁界ドリフト空間お
よびターゲット10までの最後の無磁界ドリフト空間を
通過するイオンの動きは、x−yで非結合の線形変換と
みなすことができる。従って、ターゲットでの主線のパ
ラメータは、次のような形で表すことができる。     x  =M11xi +M12xi ′=(M
11p+M12)α(t)・・・(8a)    x′
=M21xi +M22xi ′=(M21p+M22
)α(t)・・・(8b)    y  =M33yi
 +M34yi ′=(M33q+M34)β(t)・
・・(8c)    y′=M43yi +M44yi
 ′=(M43q+M44)β(t)・・・(8d)各
係数Mrsは、三つの四重極電磁石54、56、58の
磁極先端磁界B1 、B2 およびB3 の関数であり
、次のように表される。     Mrs≡Mrs(B1 ,B2 ,B3 ) 
                       ・・
・(9)
【0065】正確な関数の形は、各四重極電磁石54、
56、58の長さおよび磁極先端半径並びに四重極電磁
石間の距離に依存している。更に、M11、M12、M
33およびM34の関数形は、最後の四重極電磁石58
からターゲット10までの距離に依存している。リュー
ビルの定理によれば(表2の文献3参照)、x、x′、
y、y′位相空間における粒子密度は、四重極電磁石内
を輸送中保存されなければならない。即ち、xおよびy
運動は非結合であるから、x、x′およびy、y′変換
の行列式はそれぞれ1に等しくなければならず、従って
次のようになる。     M11M22−M12M21=1,M33M4
4−M34M43=1      ・・・(10)この
結果、8個の変換係数Mrsの内の6個のみが独立であ
る。これらの係数は時間に関して静的なものであるので
、式(8a)〜(8d)は、主線のターゲットパラメー
タx、x′およびy、y′がα(t)およびβ(t)と
全く同様に時間的に急速に振動することを示している。
【0066】図14は、ビーム位置が急速に変化するに
も拘わらず、ターゲット10上で不変のビームサイズδ
x、δyをもたらすこの発明の他の局面を示している。 主線と同時に第1の走査電磁石26に入るけれども主線
から量δx0、δy0 だけ変位しておりかつz軸32
に対して角度方向δx0 ′、δy0 ′を有する経路
を描くイオンは、下記のパラメータで第1の四重極電磁
石54の入口に到達する。     xi   =δx0 +pxi ′     
                     ・・・(
11a)    xi ′=α(t)+δx0 ′  
                      ・・・
(11b)    yi   =δy0 +qyi ′
                         
 ・・・(11c)    yi ′=β(t)+δy
0 ′                      
  ・・・(11d)四重極電磁石を通過することによ
る変換を式(8a)〜(8d)に従って行えば、隣接す
る主線から下記の量だけ変位しているターゲット10で
のパラメータが得られる。     δx  =M11δx0 +(M11p+M1
2)δx0 ′      ・・・(12a)    
δx′=M21δx0 +(M21p+M22)δx0
 ′      ・・・(12b)    δy  =
M33δy0 +(M33q+M34)δy0 ′  
    ・・・(12c)δy′=M43δy0 +(
M43q+M44)δy0 ′      ・・・(1
2d)
【0067】これらの変位はα(t)およびβ(t)か
ら独立であり、従って時間tから独立であるので、ビー
ムサイズは結果として一定になる。ターゲット10に対
する照射強度の不均一性は、これはビームサイズが変わ
る場合には起こるけれども、このようにして回避される
。このことは、例えば、高いドーズ均一性が要求される
半導体イオン注入においては有利である。このビームサ
イズの不変性は、式(6)で示したように、四重極電磁
石の作用の直線性から直接来ているということを強調す
ることができる。四重極電磁石が正確な四極対称性を有
しているとすれば、単色ビーム(即ち運動量の広がりを
無視できるビーム)の通常の場合には、式(6)中の第
2項は存在しなくなる。適切な磁極形状(表2の文献2
参照)および端磁界の制御により、高次多極成分(例え
ば12および20極)の影響を最小にすることができる
。利用可能な四重極電磁石アパーチャの80%における
直線性から2%程度の離脱は、商業的な製造業者の仕様
に従って実際上容易に実現することができる(表2の文
献4参照)。
【0068】図15および図16はこの発明の更に他の
有利な局面を示しており、ここでは二つの走査器26、
28および三つの四重極電磁石54、56、58が、主
線を、それらのターゲット10上での急速に振動してい
る位置にも拘わらず、最後の四重極電磁石58からz軸
32に平行に出現させている。図15は、五つの時間t
1 ないしt5 で起こっている代表的な主線45のz
−x平面への投射を示している。図16は同様に、他の
五つの異なった時間t1 ′ないしt5 ′で起こって
いる代表的な主線46のy−z平面への投射を示してい
る。三つの四重極電磁石54、56、58のそれぞれに
おける磁界B1 、B2 およびB3 を、四重極変換
係数が次式に従ってxおよびy走査器位置pおよびqに
関連するように調節することができるので、平行走査モ
ードが可能である。     −M22/M21=p           
                       ・・
・(13a)    −M44/M43=q     
                         
    ・・・(13b)
【0069】これらの結果を式(8b)および(8d)
に代入することにより、平行走査に必要な次の二次元テ
レセントリック条件が得られる。     x′=y′=0              
                        ・
・・(14)8インチのシリコンウェーハ上を平行走査
することができる一組の四重極電磁石のデザインおよび
運転パラメータの一例を後の表1に示す。
【0070】図17および図18は、三つの四重極電磁
石54、56、58の各々における磁界B1 、B2 
およびB3 を、平行走査を達成するだけでなく、ター
ゲット10でのビームサイズおよび角広がりδx、δx
′、δy、δy′のある程度の制御および選択性を同時
に提供できるようにも調節することができるということ
を更に示している。図17は、表1に記載した構成で、
第2の四重極電磁石56における磁界B2 の異なった
値に対して、式(13a)および(13b)のテレセン
トリック条件を維持するための第1および第3の四重極
電磁石54、58における磁界B1 およびB3 を示
している。この磁界の値は、200keVのヒ素イオン
ビームに適用される。他のイオン種およびエネルギーに
対しては、四重極磁界を式(1)で定義するようにイオ
ンの磁気剛性に比例して調整すれば良い。図18は、冷
却された分析スリット24でのイオンの変位δx0 、
δx0 ′、δy0 、δy0 ′の場合に対して、タ
ーゲット10での対応するビームサイズおよび角広がり
X、X′、Y、Y′が、(15)式で示す半サイズおよ
び半角広がりを持つビームエンベロープに拘束され、か
つ楕円エミッタンスが(16)式のようにされることを
示している。     x0   =  3mm     x0 ′=15mrad     y0   =  7mm     y0 ′=  7mrad         
                       ・・
・(15)    {δx0 /x0 }2 +{δx
0 ′/x0 ′}2 ≦1    {δy0 /y0
 }2 +{δy0 ′/y0 ′}2 ≦1    
  ・・・(16)
【0071】ターゲット10での最終のビームサイズお
よび角広がりは、初期ビームサイズを規定する式(15
)のパラメータの他にエミッタンス形状(式(16))
に依存している。即ち、これらのものは、イオン源2の
エミッタンスおよび運動量分析器6、後段加速器8およ
び中性粒子フィルタ14のビーム変換特性に依存してい
る。一般的に、これらのものは、粒子種あるいはエネル
ギーを変えたときに変化する。四重極電磁石の長さ、間
隔ならびに走査器の位置pおよびqのような四重極輸送
装置の固定されたパラメータは、特定の初期ビームに対
してターゲット10でのビームが最適になるように選定
されている。異なる初期ビームに対しては、三つの四重
極電磁石54、56、58の磁界は、ターゲット10で
のビームサイズおよび角広がりを最適化するように調整
される。この好ましい実施例に記載しているようなター
ゲットでのビーム特性を制御する能力は、例えば、半導
体イオン注入において有利である。ビームがウェーハ表
面を横切って走査される時、走査速度は走査端で方向転
換するが、その期間中、ビームは照射強度(あるいはド
ーズ均一性)の不均一性を避けるためにウェーハ外周の
外側にある。ビームサイズが小さい場合には、オーバー
スキャンに費やされる時間が少なくなり、従って注入処
理の効率が高くなる。一方、大電流イオンビームの場合
には、パワー密度が高いとウェーハ表面を損傷するので
、ビームサイズをあまり小さくしてはいけない。ビーム
サイズおよびビーム位置に関係なく、ウェーハ表面への
入射角のz軸32からの偏差は、チャネリング効果を避
けたり利用したりするためには、かつウェーハ表面での
壁や溝に陰ができるのを避けるためには、典型的には1
0mrad(ミリラジアン)未満にすべきである。
【0072】図17および図18は、表1に定義した四
重極電磁石の構成では、平行走査および式(15)およ
び(16)に定義された初期ビームに対しては、第2の
四重極電磁石56の磁界B2 を0.325テスラ(2
00keVのヒ素の場合)に設定すると、z軸32から
の最大の角度偏差が{X′2 +Y′2 }1/2 ≒
9mradになることを示している。ウェーハでのビー
ム形状は、直径が2x≒2y≒27mmのほぼ円である
。これは、5あるいは10mAまでのビーム電流でウェ
ーハに連続的に注入を行うイオン注入装置においては、
満足すべきものである。ウェーハ表面をz軸32に対し
て適当に向けることにより、ウェーハ表面での入射角を
選定可能であることに注意すべきである。ここに記載し
ている好ましい実施例では、低エネルギー(5keV)
のイオンに対してさえ、このような大ビーム電流でウェ
ーハ上を急速かつ平行に走査することができる。これは
、走査および変換要素が全て磁気的なものであり、そう
でない場合にビーム内での空間電荷力の結果として存在
する電流制限を排除することができるからである。
【0073】図19および図20は、ターゲットでのド
ーズ均一性に及ぼす有限のビームサイズの影響を示して
いる。点状ビームでは(これは高パワー密度の理由から
実用的でないが)、ドーズ均一性(図19および図20
中の破線のカーブ)は、有限数の高調波で走査電磁石に
おける三角波磁界波形を構成した場合、かなり高い周波
数で変動している。含有高調波が有限なのは、一般的に
、積層された走査電磁石の磁気的な周波数応答には関係
なく、商業的に利用可能な電源の有限の帯域幅の結果と
して生じるものである。図19および図20中の実線の
カーブは、ウェーハ上でのビームスポットサイズを平均
化すれば、高い周波数の変動が劇的に減衰していること
を示している。このビームスポットサイズは、この場合
、15°の走査位相角の広がりに対応しており、これは
妥当なパワー密度に対する典型的かつ実際的なビームサ
イズである。その結果、高次調波の有限の数によって、
180°の内の170°(94%)に迫るという走査サ
イクルの大部分に亘り、高い周波数の変動は別として、
一定速度の走査を作り出すことができる。半値幅15°
の有限ビームサイズを平均化することにより、図19お
よび図20は、それぞれ21次および41次までの高調
波に対して、走査半サイクルの140°および145°
に亘り0.2%未満のドーズ変動を達成することができ
ることを示している。15°のビーム半値幅に対する均
一なドーズ量の最大の範囲は、無限の周波数応答帯域に
対しても、150°である。従って、この好ましい実施
例においては、有限周波数帯域の結果として、二次元走
査に対するビーム利用の損失は、わずか7ないし13%
(走査軸当たり3.5ないし6.5%)にしかならない
【0074】好ましい実施例の他の動作モードにおいて
は、四重極磁界は次のように調整することができる。     −(M22−cx M12)/(M21−cx
 M11)=p      ・・・(17a)    
−(M44−cy M34)/(M43−cy M33
)=q      ・・・(17b)この場合、ターゲ
ット10でのビームの主線は、z−x平面およびy−z
平面においてそれぞれ曲率cx およびcy を有する
表面に垂直である。特に、cx =cy に選定すれば
、球面(凹か凸かはcx の符号による)に対する垂直
照射が可能になる。係数cの一方または他方を0に設定
すれば、円筒面に対する垂直照射が可能になる。 垂直またはほぼ垂直の照射での利点は、例えばころ軸受
および玉軸受の注入においてスパッタリングを最小にす
ることができることである。
【0075】図32は、8個のアパーチャ201から成
るアレイの使用を示しており、このアパーチャ201は
、四重極電磁石58の後ろに配置されており、対を成す
ように配列されており、その一対が走査領域の各隅近く
に配置される。一対のアパーチャの軸202は、z軸3
2に対して所定の方向を有している。走査サイクル期間
中のある瞬間に、イオンは、四重極電磁石54、56お
よび58が当該瞬間におけるビームの主線204がアパ
ーチャ軸202と一致するように励磁される場合に限り
、一対のアパーチャ201を通過する。この場合、最大
電気信号206が図32に示すファラデーカップ208
で検出され、図33には一つのアパーチャ対から得られ
る信号を示している。この最大電気信号は、式(17)
に関連して先に説明した平行、集束または発散走査のよ
うな特定の照射角に対応している。ファラデーカップ2
08で計測される一つの電気信号の時間間隔T1 は、
y方向(高速走査方向)のビーム幅に比例しており、一
方、最初のパルスと最後のパルスとの間の時間間隔T2
 は、x方向(低速走査方向)のビーム幅の大きさであ
る。また、一対のアパーチャ201の内の一方を電気信
号がちょうど消えるまで距離δx(またはδy)の間を
動かすことにより、ビーム中での内的角度偏差x′=δ
x/Lおよびy′=δy/Lの大きさを得ることができ
る。ここでLは一対のアパーチャ間の距離である。 原理的には、一対のアパーチャ201だけが必要である
。しかしながら、図32に示すように四対を用いれば、
左右および上下方向の走査の対称性の確認を行うことが
できる。
【0076】好ましい実施例においては、狭いギャップ
長を有する第1のy走査電磁石26は、広いギャップ長
を有する第2のx走査電磁石28より高い周波数で励磁
される。前述したように、この構成によって、走査電磁
石を励磁するための膨大なパワーを避けかつ最小にする
ことができる。好ましい実施例においては、y走査器2
6は500ないし1000Hzの周波数で動作させられ
、x走査器28は50ないし100Hzの周波数で動作
させられる。その結果、ビームはターゲット10を横切
ってラスターパターン状に走査される。走査電磁石を図
10に示す三角波振動磁界で励磁することによって、一
定走査速度を得ることができ、それによって図11に示
すように、オーバースキャン領域を除く全ての領域で均
一な照射ドーズ量を得ることができる。ラスター走査さ
れたビームにおける不均一な強度プロファイルから生じ
るドーズ量のパターン化された変化は、二つの走査電磁
石26、28の周波数比に無理数を選ぶことによって、
幾つかの(典型的には約100回程度の)x走査の後に
ほぼ0に時間平均される。例えば、fy =200πH
z(≒628Hz)およびfx =79Hzにすれば、
10進法で、fy /fx =7.9533991・・
・が得られる。
【0077】図21は、図1の走査電磁石26および2
8における振動性磁界を励磁するのに使用される電子制
御回路を概略的に示す。各走査電磁石26、28に対し
て別々の回路およびピックアップコイルが使用される。 この回路はフィードバックループを備えており、それに
よって振動性磁界の振幅、位相および波形が次のように
制御される。即ち、この振動性磁界の振幅、位相および
波形によって、図1のイオンビーム31は、ターゲット
10を横切って前後に、ターゲット外周の外側に規定の
オーバースキャンを行いながら、規定の照射ドーズ量を
生み出すように走査される。
【0078】図21の制御回路200は次のように機能
する。即ち、例えば走査電磁石26のギャップ74中に
置かれたピックアップコイル90を通過する時変磁界に
よって発生される電圧信号は、信号調節器92に供給さ
れ、次いで位相補償器94に供給され、そしてこれから
得られた信号が基準波形信号96から減算され、ターゲ
ットに与えられるドーズ量における誤差を反映する誤差
電圧が作られる。この誤差電圧は増幅器98によって適
当なゲインGAで積分および増幅され、その結果の信号
は基準信号に加えられかつ電力増幅器100の入力端子
に供給される。この電力増幅器100は、走査電磁石2
6のコイル78に電流Iを供給する。この基準信号96
は、走査電磁石26のコイルに印加される電圧に必要と
される所望の波形を表している。ピックアップコイル9
0は、それを通過する磁束鎖交数の変化率に比例する次
のような電圧信号を信号調節器92に供給する。     Vc =nA・dB/dt         
                     ・・・(
18)ここで、Aはピックアップコイル90の面積であ
り、nはピックアップコイル90の巻数である。
【0079】図21に示す電力増幅器100は、それに
与えられる入力信号の電圧を増幅するので、電圧増幅器
として動作する。この増幅器が走査電磁石26のコイル
78に供給する電圧Vは、走査電磁石26のコイル78
に流れる電流Iと次のような関係がある。     V=L・dI/dt+IR         
                   ・・・(19
)ここでRは、走査電磁石26のコイル78のオーム抵
抗に、積層体およびヨーク中のうず電流および磁気ヒス
テリシスによる走査電磁石26の積層体中での電力損を
表す負荷抵抗を加えたものであり、Lは走査電磁石26
の電気的インダクタンスである。
【0080】走査電磁石26のギャップ74中の磁界は
、当該電磁石のヨーク構造の小さな磁気抵抗を当面無視
すれば、走査電磁石26のコイル78を流れる電流Iに
ほぼ比例している。従って、磁界の変化率は、コイルを
流れる電流の変化率に比例しており、次のようになる。     dB/dt≒(μ0 N/G)dI/dt  
              ・・・(20)ここで、
Nはコイル78の巻数であり、Gは電磁石のギャップ7
4である。式(19)における誘導性の項が抵抗性の項
より非常に大であるので、コイル間の電圧Vは次式のよ
うに表される。     V≒(GL/μ0 N)dB/dt     
                 ・・・(21)従
って式(18)を式(21)に代入すれば次式が得られ
る。     V≒GLVc /(μ0 NAn)     
                   ・・・(22
)従って、均一なドーズ量を達成するために電力増幅器
100によって磁気コイル78に供給されなければなら
ない電圧Vが、ピックアップコイル90によって検出さ
れる電圧Vc に比例することになる。
【0081】この単純な関係は概略的なものに過ぎず、
電力増幅器100に対して、コイル78に供給しなけれ
ばならない電圧に正確に関係する信号を供給するために
は、前記信号調節器92および位相補償器94が必要で
ある。この信号調節器92は、利得および信号の形状を
調節することによって、かつまた回路に伴う信号の歪み
を減衰させることによって、信号を調節する。位相補償
器94は、遅延時間から生じる位相シフトが常に存在す
るために必要である。ヨーク材料の透磁率が有限である
ために生じる走査電磁石の電流と磁界との間の位相シフ
トもまた存在している。
【0082】ピックアップコイル90からの信号は、電
磁石26における磁界の時間的変化率に比例している。 ターゲット10を横切るビームの走査速度もまた、走査
電磁石26における磁界の変化率に直接比例している。 実際、式(8a)〜(8d)を微分すると、dx/dt
がdα/dtに比例し、従ってdB/dtに比例するこ
とが分かる。従って、ピックアップコイル90からの信
号は、ターゲット10を横切るビームの走査速度の大き
さを直接表している。単位時間当たりにターゲット10
に供給されるドーズ量は、走査速度の逆数に比例し、従
ってピックアップコイル90で計測される電圧信号Vc
 の逆数に比例している。イオンに与えられる偏向は純
粋に磁界によって作られるので、電界(これは存在しな
い)によってこの条件が満たされることはなく、従って
この好ましい実施例の利点は、ドーズ均一性を図21の
回路によって正確に制御することができるということで
ある。所望のドーズプロファイルからの偏差は、対応す
る電圧プロファイルからの偏差に対応しており、基準信
号96を調節することにより連続的に補正することがで
きる。
【0083】前記電力増幅器100を電圧増幅器ではな
く電流増幅器として動作させることもでき、その場合、
この電力増幅器100はその入力電流に比例する電流を
走査電磁石26に供給する。図21中に示すような方形
波電圧基準信号96の代わりに、図10中に示す三角波
形を基準信号として用いても良い。信号調節器92は、
式(18)に従い、ピックアップコイル90からの信号
を積分してこの基準信号と比較すべき波形を発生する。 静電偏向装置では、走査速度は、少なくとも原理的には
、偏向電極に供給される電圧の変化率を計測することに
よってモニタすることができる。しかしながら、ビーム
電流がより大きくなり空間電荷力がより大きくなるにつ
れて、これらの偏向電極から計測される信号は、電極間
の電界がビームに対して発生させる走査速度には単純に
は関連しなくなる。実際、ある電流で走査作用は殆ど完
全に低下する。高いパービアンス(I/E3/2 )を
有するビームに対しては、ドーズ均一性を確実に制御す
る図21中に示したフィードバック装置に類するフィー
ドバック装置を用いることは不可能であろう。
【0084】好ましい実施例では、図21に示したよう
なフィードバックループを実現するのに最新の高速ディ
ジタル電子回路を利用している。ピックアップコイル9
0からのアナログ信号はディジタル化され、位相補償お
よび信号調節がディジタル的に行われる。同様に、基準
信号はディジタル的に合成される。ディジタル的に実行
することにおいては、フィードバックループを正確な数
学的方法で動作させることができるという利点を有して
おり、それによって純粋なアナログフィードバック回路
にしばしば存在する不安定性を回避することができる。
【0085】実際問題としては、電力増幅器100およ
び走査電磁石26のいずれも有限の周波数応答を有して
いる。ある周波数より上の高調波成分は、電力増幅器1
00における周波数応答の制限によってコイル電流Iに
伝えられない他、電力増幅器100および走査電磁石2
6の双方の周波数応答の制限によって磁界にも伝えられ
ない。しかしながら、図19および図20中に示すよう
に、フーリエ級数の周波数成分を約20〜40kHzよ
りも低い成分だけを含むように切り詰めることにより、
図10中に示すように、わずかに丸味のあるのこぎり波
になるだけである。走査電磁石26の周波数応答は先に
説明しており、図8および図9中に示している。商業的
に入手できる電力増幅器には、完全なのこぎり波形を発
生させるのを妨げる二つの制約がある。一つはその内的
な周波数帯域幅の能力であり、他の一つは、のこぎり波
形を発生させるには、図21中の基準信号96に示すよ
うなほぼ方形波形状の電圧を磁気コイルに供給しなけれ
ばならないということである。この方形波形状は、走査
の半周期の端で、電圧がその大きさを急激に反転させな
ければならないという特性を有している。商業的に入手
できる電力増幅器には、電圧を反転させることができる
割合である電圧スルーレートの制限がある。電圧が反転
している期間中は、ビームはターゲット上のオーバース
キャン位置にあり、従って正確な波形は重要ではない。 しかし、可能な限り高いスルーレートが望ましい。現時
点で入手可能な増幅器は、最大正電圧から最大負電圧ま
でで約40マイクロ秒(μsec)のスルーレートを有
しており、この時間は2kHzまでの走査周波数に対す
る約500μsecの走査期間のわずかの部分である。
【0086】表2の文献5は、商業的に入手可能な電源
に言及している。この電源は、走査電磁石のような非常
に誘導性の負荷を、非常に高い効率および非常に小さい
内部電力損で励磁する能力を有している。しかしながら
、パルス幅変調は、電力増幅器からの電圧出力中に高周
波リップル、典型的には40〜80kHzで1〜3%の
大きさのリップルを生じさせる。この電源からコイルに
印加されるリップル電圧は、式(19)および(20)
に従ってドーズ均一性中にリップルを直接発生させる。 しかし、ビームがターゲットで有限の大きさをしており
、かつこのリップル周波数が走査周波数より非常に大き
い、典型的には殆ど二桁大きいため、ドーズ均一性中の
リップルは非常に減衰させられる。有限数の高調波から
生じるドーズ均一性での変動が図19および図20中に
示すように有限のビーム幅によって非常に減衰させられ
るのと同様のことが、電力増幅器における電圧リップル
から生じるリップル成分についても言える。実際、3%
程度のリップル電圧幅および15°の走査位相角範囲に
対応する典型的なビーム幅の大きさに対して、ドーズ均
一性におけるリップルの影響は0.1%より遙かに小さ
い。仮にターゲットでのビームが四重極電磁石54、5
6および58によって点状に絞られれば(これはイオン
注入において採用されない条件であるけれども)、ウェ
ーハ表面を横切る1回の走査で、電力増幅器100に関
連するリップル、および電力増幅器100の帯域幅の制
限の結果生じる波形中の高調波の数が限られていること
に関連する変動は、ドーズ均一性にはっきり表れる。し
かしそれでも、数走査サイクルの後には、リップルは、
そのリップル周波数が走査周波数の整数倍でないように
走査周波数を予め選定することにより、大幅に減衰する
【0087】他の実施例 図22は二つの走査電磁石に対する代わりの実施例を示
しており、ここでは前述した二つの別個の走査電磁石(
一方がターゲットでのx方向のビームの振動性動作を起
こさせ、他方がターゲットでのy方向の振動性動作を起
こさせる)が、それらによって作られるターゲットでの
ビームの二次元走査と同じ最終結果を達成する一つの構
造によって置き換えられている。
【0088】この例では、ヨーク112を介して磁気的
に接続された複数の磁極110がある。うず電流を減少
させるために、ヨーク112および磁極110のいずれ
もが強磁性の積層体114によって構成されている。コ
イル116(Bx のためのコイル116bおよびBy
 のためのコイル116a)が各磁極110を取り巻い
ており、これらのコイル116は、ヨーク112および
磁極110の構造によって囲まれた領域118内に振動
性磁界を発生させるように独立して励磁される。周囲に
多数の独立した磁極110が存在しているので、各コイ
ル116の励磁電流の位相および振幅を、z軸32に垂
直であるがx−y平面内で任意の方向を向いた横方向磁
界120を発生させるように調節することができる。x
−y平面内に等間隔の角度θ1 、θ2 、θn で配
置された偶数の磁極が存在すれば、かつ角度θr で磁
極上に配置されたコイル116aの巻数がcosθr 
の絶対値に比例していれば、そしてこのようなコイルの
全てが直列に接続されて励磁されると、振動性磁界はy
方向に発生する。もし更に他の組のコイル116bが、
角度θr の磁極における巻数がsinθr の絶対値
に比例するように磁極上に配置されており、かつこれら
のコイルが全て直列に接続されていれば、x方向におけ
る振動性磁界が発生する。二組のコイル116a、11
6bを、種々の走査パターンを発生させるように励磁す
ることができる。 それを下に示す。
【0089】a)仮に二組のコイル116a、116b
の励磁電流が独立でありかつ全く異なった周波数であれ
ば、図23のようにラスター走査が作られる。 b)仮に二組のコイル116a、116bのそれぞれに
低い周波数の電流および高い周波数の電流が与えられ、
かつコンポーネント電流の振幅が時間と共にゆっくり変
調されれば、ターゲット10でラスター走査が作られる
が、図24に示すように方向角はz軸32の周りをゆっ
くり回転する。 c)仮に二組のコイル116a、116bの励磁電流の
周波数が同じで、それらの相対位相が0とは異なってい
れば、ターゲット10でのビームは図25に示すように
、リサージュ運動を行い、一般的にz軸32を中心に楕
円経路126を描く。特別の場合として、それらの相対
位相が90°であれば、正楕円あるいは円形の軌跡が作
られる。
【0090】注入の間にターゲット10をz軸32の周
りに機械的に回転させれば、上記(b)に記載したのと
同様の結果が得られる。x−y平面における走査の向き
を変えることは、図1および図2に示したような固定さ
れたx走査電磁石26およびy走査電磁石28では不可
能である。しかしながら、二つの走査電磁石が単一のユ
ニットに組まれているこの代案では、別々の走査電磁石
で得られるのと同様の、励磁電力を最小にするという可
能性は得られない。図22に示すような走査器を使用す
る場合は、四重極電磁石54、56および58の励磁は
、図15および16中の距離pおよびqが等しくなるよ
うに調節しなければならない。
【0091】図26は、走査器磁極の領域からターゲッ
ト10への変換を行うテレセントリック輸送装置として
働くことができる磁気ソレノイド131の利用を示して
いる。このソレノイド131は、z軸32に対称であっ
て磁気効率を改善する電流搬送コイル130、強磁性材
料から成り平面状の端片134を有する円筒ヨーク13
2から構成されている。レンズとして働く磁界136は
、このソレノイドに入り走査電磁石の作用の結果として
z軸32から変位されているビーム138に対して、更
に、z軸32からの変位および角度方向を与える。また
、このソレノイド131は前述した四重極電磁石のよう
な線形装置であり、ビーム138がターゲット10に入
射する最終的な位置および角度は、四重極電磁石の場合
と同様に、ビーム138の当該ソレノイドへの入射時の
角度方向および変位の一次関数である。このソレノイド
131の効果を表す方程式は、当該ソレノイドがz軸3
2に対して軸対称であるためM11がM33に等しく、
M22がM44に等しく、M12がM34に等しく、か
つM21がM43に等しくなるということを除けば、式
(8a)〜(8d)のものと同様になる。このようなソ
レノイド131は、一般的に、x走査およびy走査に対
する中心がz軸32上で同じ位置になるので、図22に
示した形の走査器と共に使用される。ビーム138の集
束を発生させるのに加えて、このソレノイド131は、
同時に、xおよびy運動の結合の結果として生じるビー
ム138のz軸32の周りの回転を発生させる。
【0092】この単一のソレノイド131を、同様の構
成をしていて二つのコイル中の励磁電流が互いに反対向
きである二つの軸方向に並べられたソレノイドで置き換
えれば、二つのソレノイドを通過した後の正味の回転は
0であるが、集束作用は維持され、かつ二つのソレノイ
ドの長さを組み合わせたのと同じ長さをした単一のソレ
ノイドの集束作用とほぼ同じになる。この二つのソレノ
イドは物理的に分離されている。第1のソレノイドの中
心での磁界は、第2のソレノイドの磁界とは逆方向であ
る。角回転はこの磁界の方向に依存しており、従って二
つのソレノイドにおいては大きさが等しく方向が反対で
ある。一方、集束作用は磁界の大きさのみに依存してお
り、方向には依存していない。
【0093】図27を参照して、好ましい実施例の更に
他の変形例において、一対のソレノイド131aおよび
131b(または図示しない単一のソレノイド)を、走
査電磁石の中心を図に示すようにz軸32上での位置に
おいて分離することができるように、四重極一重項と組
み合わせることができる。この四重極電磁石Qおよびソ
レノイドSの励磁は、図1および図2の三つの四重極電
磁石54、56および58で達成されるものと同様の方
法によって、ターゲット10で平行走査ビームが得られ
るように調節することができる。
【0094】図28、図29および図30は好ましい実
施例の更に他の変形例を示しており、ここでは三つの四
重極電磁石54、56および58が偏向電磁石140で
置き換えられている。偏向電磁石140は、二つの磁極
142および144を有しており、それぞれはコイル1
46で囲まれている。二つの磁極142、144間のギ
ャップは、二重極項に重ねられた四重極項を有する磁界
が発生するように、磁極表面での位置と共に変化するよ
うにしても良い。このような電磁石は、これらの四重極
磁界が個々の四重極電磁石54、56および58が行う
のと同一の機能を行うように働かせることができる。こ
の磁界中の二重極成分は、主線Pr を図28に示すよ
うに曲げる働きをする。この場合、出口ビーム軸150
は入射軸152とは異なる角度にある。仮にこの電磁石
140の第1の部分148および第3の部分154にお
ける磁極ギャップが半径外方向に増加し、一方電磁石の
中心部分156における磁極ギャップが半径外方向に減
少していれば、この電磁石140における四重極成分は
図1に示す個々の四重極電磁石54、56および58と
同様の働きをする。
【0095】このような偏向電磁石140は、大きなタ
ーゲット10が必要な場合には、非常に大きな構造にな
る。これは、その磁極ギャップが少なくともターゲット
10と同じ大きさをしていなければならず、かつ磁極幅
が少なくとも磁極ギャップの3倍なければならないから
である。一方、この偏向電磁石装置140は、その入口
においてビーム中になお存在している不所望な粒子種が
ターゲット10に到達するのを防ぐことができるという
利点を備えている。この偏向電磁石140は二重極磁界
成分を備えているので、それによって運動量分散を起こ
させ、かつターゲット10に輸送されるビームを更に純
化して、不所望の粒子種によるコンタミネーションを少
なくすることができる。
【0096】磁気輸送装置の他の実施例は、四重極電磁
石またはソレノイドが後に続く偏向電磁石を備えており
(図示省略)、この偏向電磁石を、ターゲットでのビー
ムのスポットサイズおよびビームの軸に対する集束、平
行あるいは発散関係を調節可能にするのに使用すること
ができる。
【0097】好ましい実施例に対する前述した変形例の
他の組み合わせを、同一の最終結果を達成するのに使用
することができるのは明らかである。事実、三つの代わ
りに四つの四重極電磁石を使用することができ、これは
、ターゲット10でのビームサイズのより大きな独立し
た制御が要求される場合に有利となり得る。
【0098】好ましい実施例の動作および作用の要約直
径150mmのウェーハ上で均一なドーズ量を与えるよ
うに、y方向において1000Hzの周波数で、かつx
方向において30π≒94.2478Hzの周波数でラ
スター走査される200keVの一価のヒ素イオンビー
ムの場合を考えてみる。
【0099】四重極電磁石54、56、58は表1に示
すパラメータで設定される。このようにすれば、三つの
四重極電磁石54、56および58が、三つの四重極の
組み合わせに対するxおよびyの対物点がx走査電磁石
28およびy走査電磁石26の中心にそれぞれ存在する
ように、即ち式(13a)および(13b)で表したテ
レセントリック条件が満足されるように協働するので、
ウェーハ上でのビームの平行走査を作り出すことができ
る。一般的に、四重極磁界は、当該四重極磁界を計測す
るホール効果素子のような磁気プローブを用いることに
よって、かつ図32に示すようなアパーチャ201を通
して伝達されるビームからの電気信号をモニタすること
によって、設定することができる。
【0100】典型的なイオン源2、分析電磁石6、後段
加速器8および中性粒子フィルタ14に対しては、イオ
ンビームのエミッタンスは式(15)および(16)で
与えられるようになる。この場合、ウェーハでのビーム
のサイズおよび角度のパラメータは、B2 =0.32
1テスラ(四重極電磁石56の磁極先端での磁界)につ
いては図18中に示されているようになる。ウェーハに
おける他のビームサイズを選定しても良く、その場合で
も三つの四重極電磁石54、56、58における磁界を
図17および図18に示したデータに従って調和するよ
うに調節することによって、平行走査条件を維持するこ
とができる。
【0101】ウェーハでのx方向およびy方向における
走査範囲は、式(8a)および(8b)で与えられ、か
つ走査電磁石28および26で作られる偏向角αおよび
βにそれぞれ依存している。一例として、直径150m
mのウェーハをオーバースキャンするのに十分な±90
mmの走査範囲に対して、式(10)ならびに式(13
a)および(13b)におけるテレセントリック条件を
活用すれば、次のようになる。     α=−90M21=117mrad     
               ・・・(23a)  
  β=−90M43=  41mrad      
              ・・・(23b)これら
の偏向幅を作るためには、走査器は式(3)で与えられ
る実効電力で、しかも均一なドーズ量を実現するために
は正弦波形よりも三角波形で励磁されなければならない
。これは式(3)における定数7.5を5.0で置き換
えたものに等しい。
【0102】第1の走査電磁石26について、1000
Hzで動作させ、ギャップが0.02m、長さが0.1
5mを仮定し、かつ200keVの一価のヒ素イオンに
ついて(1)式から計算した磁気剛性K=0.557T
−mを用いると、実効電力は次のようになる。     P1 =6.96kVA          
                      ・・・
(24)第2の走査電磁石28について、94.247
8Hzで動作させ、入口ギャップが0.03m、出口ギ
ャップが0.06mおよび長さが0.4mと仮定すると
、実効電力は次のようになる。     P2 =9.38kVA          
                      ・・・
(25)
【0103】これらの走査器の適切な励磁電力は、前述
したようなピックアップコイルおよび積分器を用いてピ
ーク磁界をモニタすることにより、実験的に設定するこ
とができる。仮に二つの走査器の実効長がそれぞれL1
 およびL2 であれば、それぞれのピーク磁界は次の
ような値に設定される。     B1 =(K/L1 )sinα=0.15T
            ・・・(26a)    B
2 =(K/L2 )sinβ=0.16T     
       ・・・(26b)
【0104】他のイオン種および/またはエネルギーに
対しては、四重極電磁石および走査器の励磁磁界は、式
(1)で与えられる磁気剛性Kに比例して調節しなけれ
ばならない。
【0105】走査電磁石および四重極電磁石には電界が
存在しないので、空間電荷力も存在せず、イオンビーム
のパービアンス(I/E3/2 )に対する制約も本質
的に存在しない。
【0106】多くの異なる実施例がこの発明の精神およ
び範囲内で可能であり、例えば、当面の任務、材料の利
用可能性およびコスト、更にはユーザの特定の設計嗜好
のような要因によって変わる。例えば、低いまたは中程
度のパービアンス範囲で運転する場合には、この発明に
よる輸送装置は静電走査器と組み合わせて使用しても良
い。
【0107】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、大電
流のイオンビームを二次元的に高い走査周波数でかつエ
ネルギーの広い範囲に亘り走査することを可能にする装
置を提供することができる。
【0108】                     表1(四重
極電磁石パラメータ)z軸32に沿う位置(m)     「x」対物点から四重極電磁石54の入口まで
(p)        0.25    「y」対物点
から四重極電磁石54の入口まで(q)       
 0.55    四重極電磁石54の実効長    
                         
   0.36    四重極電磁石54と56との間
隔                        
  0.10    四重極電磁石56の実効長   
                         
    0.60    四重極電磁石56と58との
間隔                       
   0.07    四重極電磁石58の実効長  
                         
     0.36    四重極電磁石58の出口か
らウェーハまで                  
0.25    「y」対物点からウェーハまで   
                         
2.29200keVのAs+ のイオンに対する四重
極電磁石54のパラメータ     開口部直径(mm)            
                      200
    幅(mm)                
                         
 690    磁極先端磁界(T)        
                         
     0.198    全コイル電力(kW) 
                         
          1.9200keVのAs+ の
イオンに対する四重極電磁石56のパラメータ     開口部直径(mm)            
                      280
    幅(mm)                
                        1
000    磁極先端磁界(T)         
                         
    0.321    全コイル電力(kW)  
                         
         7.8200keVのAs+ のイ
オンに対する四重極電磁石58のパラメータ     開口部直径(mm)            
                      240
    幅(mm)                
                         
 820    磁極先端磁界(T)        
                         
     0.243    全コイル電力(kW) 
                         
          3.1四重極電磁石54の入口か
らターゲットまでの伝達マトリクス要素     M11                  
                         
         0.042    M12(mm/
mrad)                    
              0.756    M2
1(mrad/mm)               
                 −1.305  
  M22                    
                         
       0.326    M33      
                         
                     0.08
7    M34(mm/mrad)        
                         
 2.153    M43(mrad/mm)   
                         
    −0.454    M44        
                         
                   0.250

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【図面の簡単な説明】
【図1】  三つ一組の四重極電磁石が後に続く二次元
磁気走査を採用するイオン注入装置の概略上面図であり
、この図において四重極電磁石はz軸に対して約45°
回転させて示している。
【図2】  図1の四重極電磁石部分の部分側面図であ
り、この図において四重極電磁石はz軸に対して約45
°回転させて示している。
【図3】  図1の装置に用いられている積層構造の走
査電磁石の概略斜視図である。
【図4】  図1の装置の第2の走査電磁石の特別に作
られた磁極の端面図である。
【図5】  図4の線3b−3bに沿う断面図である。
【図6】  走査電磁石の好ましい積層構造の概略断面
図である。
【図7】  積層体の表面領域における磁束の集中を示
す図である。
【図8】  走査電磁石に薄い積層体を用いることによ
り、10kHzまでの周波数でかなりのギャップ磁界(
0.1テスラより大きい)が実現可能であることを示す
グラフである。
【図9】  積層電磁石により作られる三角振動性磁界
の大きさが、同じ周波数の正弦波のものよりわずかだけ
小さいことを示すグラフである。
【図10】  奇数次高調波を基本周波数に加えたこと
を表している三角波振動性磁界の波形を示すグラフであ
る。
【図11】  積層された走査電磁石によって達成され
る走査速度を、走査の80%より大きい範囲に亘り0.
2%よりも一定にできることを示す図である。
【図12】  図1の装置に採用している四重極電磁石
の断面図である。
【図13】  図12と同じ四重極電磁石の側面図であ
る。
【図14】  ターゲットでの全走査サイクルに亘るビ
ームサイズの一定性を示す図である。
【図15】  離して設置されたy走査器およびx走査
器によって偏向され、かつ図1に示す三つの四重極電磁
石の磁界を受ける主線の異なる時間におけるz−x平面
への投射を示す図である。
【図16】  離して設置されたy走査器およびx走査
器によって偏向され、かつ図1に示す三つの四重極電磁
石の磁界を受ける主線の異なる時間におけるy−z平面
への投射を示す図である。
【図17】  第2の四重極電磁石の磁界を変化させた
場合の、テレセントリック条件を維持するために図1の
第1および第3の四重極電磁石に必要な磁界の典型的な
例を示す図である。
【図18】  第2の四重極電磁石の磁界を変化させた
場合の、図17の条件についてのビーム半サイズおよび
ビーム半角の変化を示す図である。
【図19】  21次までの高調波での相対照射ドーズ
量を示す図であり、有限ビームサイズがターゲットでの
ドーズ均一性に及ぼす平滑化効果を示している。
【図20】  41次までの高調波での相対照射ドーズ
量を示す図であり、有限ビームサイズがターゲットでの
ドーズ均一性に及ぼす平滑化効果を示している。
【図21】  図1の走査電磁石における振動性磁界を
作りかつ制御するのに使用される電子制御回路の概略図
である。
【図22】  x走査およびy走査に対する単一構造を
採用する代替実施例の走査装置の概略斜視図である。
【図23】  図22のコイル116aおよび116b
の励磁によって達成することができる走査パターンの一
例を示す図である。
【図24】  図22のコイル116aおよび116b
の励磁によって達成することができる走査パターンの他
の例を示す図である。
【図25】  図22のコイル116aおよび116b
の励磁によって達成することができる走査パターンの更
に他の例を示す図である。
【図26】  図22の走査装置に対する磁気イオン輸
送装置として有用なソレノイドの断面図である。
【図27】  四重極電磁石の後に続く一連の二つのソ
レノイドを備えており、かつ例えば図1の装置において
その三つの四重極電磁石の代わりとして有用である磁気
イオンビーム輸送装置の断面図である。
【図28】  図1の装置における一組の四重極電磁石
の代わりとして有用な磁気イオンビーム輸送装置として
働くように四重極磁界を作るよう構成された偏向電磁石
のビーム軸に沿う断面図である。
【図29】  図28と同じ偏向電磁石の図28の線1
5b−15bに沿う断面図である。
【図30】  図28と同じ偏向電磁石のビーム軸に沿
う端面図である。
【図31】  この発明の装置によれば、大ビーム電流
および低ビームエネルギーのような条件下で均一ドーズ
レートを達成するのに、低パービアンスから高パービア
ンスの原子および分子イオンビームを採用することがで
きることを示すパービアンス対質量の図である。
【図32】  走査領域の隅近くで最後の四重極電磁石
の後ろに配置されているアパーチャの組の配列を示すも
ので、アパーチャの各組は、各対を通る典型的な軸が規
定の方向にあるように配置されている。
【図33】  ビームが図32のアパーチャをラスター
状に走査する時に、一対のアパーチャから得られる信号
の検出強度対時間を示す図である。
【符号の説明】
2  イオン源 6  運動量分析器 8  後段加速器 10  ターゲット 14  中性粒子フィルタ 24  分析スリット 26  第1の走査電磁石 28  第2の走査電磁石 31  イオンビーム 47  エンドステーション 54  第1の四重極電磁石 56  第2の四重極電磁石 58  第3の四重極電磁石 131,131a,131b  ソレノイド140  
偏向電磁石 200  制御回路 230  磁気走査装置 240  磁気イオンビーム輸送装置

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】  イオンビームを基準軸に対して磁気的
    に二次元で偏向させる磁気走査装置と、この磁気走査装
    置からのイオンビームを磁気的に二次元で前記基準軸と
    所定の関係を有する方向に向け直してターゲットに入射
    させる磁気イオンビーム輸送装置とを備えることを特徴
    とするイオン照射装置。
  2. 【請求項2】  ビームを二次元でターゲット上を急速
    に走査することによってターゲットの表面に原子または
    分子イオンを照射する装置であって、ターゲットをビー
    ムに対面させるエンドステーションと、原子または分子
    イオンのビームを生成するイオン源および関連のビーム
    形成装置と、ビームを基準軸に対して二次元に偏向させ
    る磁気走査装置であって、走査の各次元に対して、磁性
    材料から成るヨークおよび磁極手段ならびに関連の励磁
    コイルから成る個別の走査電磁石手段を有するものと、
    この磁気走査装置の後に続く磁気イオンビーム輸送装置
    とを備えており、この磁気イオンビーム輸送装置は、前
    記磁気走査装置からその二次元的な偏向の範囲に亘って
    ビームを受けるよう配置されており、かつ二次元的に偏
    向されたビームを軸からの所望の瞬間的な二次元的変位
    時に、前記二次元における軸と予め定められた所望の角
    度関係を有する方向に向け直すよう選定された特性の磁
    界条件をビーム経路に沿って課するよう構成されており
    、それによってターゲット上でビームの所望の走査を行
    うことを特徴とするイオン照射装置。
  3. 【請求項3】  前記磁気走査装置は、ビームを第1の
    次元において走査する時変磁界を発生する第1の磁気走
    査器と、その下流側に位置していて、ビームを第2の次
    元で走査するものであって第1の磁気走査器とは磁気的
    に非結合の時変磁界を発生する第2の磁気走査器とを備
    えており、これらの磁気走査器は、ビームを各瞬間に各
    次元において、ターゲット上におけるビームの所望の瞬
    間的な変位によって規定される各角度で、かつ互いに非
    結合の状態で各基準軸から偏向させるように働く請求項
    2記載の装置。
  4. 【請求項4】  ビームを0.02/M[amu]1/
    2 (mA/keV3/2 、Mはイオンの質量)を越
    えるパービアンスを含む広範囲のパービアンスでターゲ
    ットの表面上を急速に走査することにより、所望の均一
    性で原子または分子イオンをターゲット上に照射する装
    置であって、ターゲットを支持するエンドステーション
    と、原子または分子イオンのビームを生成するイオン源
    と、ビームから不所望の質量あるいはエネルギーのイオ
    ンを除去する分析器およびイオンの所望の最終速度を確
    立する加速器を含み原子または分子イオンのビームを生
    成するビーム形成装置と、基準軸に対して二次元にビー
    ムを偏向させる磁気走査装置と、この磁気走査装置の後
    ろに続く磁気イオンビーム輸送装置とを備えており、前
    記磁気走査装置は、各次元においてビームを続けて偏向
    させる時変磁界を発生させる第1および第2の磁気走査
    器を装置の軸に沿って第1および第2の位置に備えてお
    り、この第1の磁気走査器は、ビームを第1の次元にお
    いて急速に走査するよう構成されており、かつビームが
    通過する磁気ギャップであって前記第2の磁気走査器の
    磁気ギャップ長よりも短い磁気ギャップ長を有しており
    、かつ第2の磁気走査器よりも急速にビームを走査する
    よう構成されており、これらの磁気走査器は、各瞬間に
    各次元において、ターゲット上でのビームの所望の瞬間
    的な変位によって規定される各角度で、かつ互いに非結
    合の状態で前記基準軸からビームを偏向させるように働
    き、かつ当該磁気走査器のそれぞれは、磁性材料から成
    るヨークおよび磁極手段ならびに関連の励磁コイルを備
    えており、かつそれぞれは、当該コイルに時変電流を供
    給する制御回路および電源をそれぞれ備えており、前記
    磁気イオンビーム輸送装置は、前記磁気走査器の二次元
    的な偏向の範囲に亘って前記磁気走査器からビームを受
    けるよう配置されており、かつビーム経路に沿って、二
    次元的に偏向されたビームを軸からの所望の瞬間的な二
    次元的変位時に、前記二次元における軸と所望の角度関
    係を有する方向に次元的に非結合の状態で向け直すよう
    選定された特性の磁界条件を課するよう構成されており
    、それによって有限のイオン分布サイズをしたビームス
    ポットをターゲット上で走査することができ、かつそれ
    によるイオンの進行方向は走査範囲に亘り所望の方向か
    ら約2°未満しかずれないことを特徴とするイオン照射
    装置。
  5. 【請求項5】  ターゲットの表面に原子または分子イ
    オンを所望の均一性で照射するものであり、0.02/
    M[amu]1/2 (mA/keV3/2 、Mはイ
    オンの質量)を越えるパービアンスを含む広範囲のパー
    ビアンスでビームの急速走査を可能にするよう構成され
    た装置であって、ターゲットをビームに対面させるエン
    ドステーションと、原子または分子イオンのビームを生
    成するイオン源および関連のビーム形成装置と、ターゲ
    ットの表面に亘りビームを二次元で走査することができ
    る磁気走査装置とを備えており、この磁気走査装置は、
    走査の各次元について、磁性材料から成るヨークおよび
    磁極手段ならびに関連の励磁コイルから成る個別の走査
    電磁石手段と、規定のイオンドーズプロファイルを作り
    出すために望ましい前記ビームの位置を表す信号を発生
    する手段と、当該磁気走査装置の磁界を検出してビーム
    の走査中にビームに作用する磁界を表す信号を発生する
    磁界検出手段および当該磁気走査装置を制御して、この
    磁界検出手段に応答して前記二次元における規定の磁界
    プロファイルを閉ループ的に発生するフィードバック制
    御装置を含むダイナミック閉ループフィードバック制御
    装置とを備えていることを特徴とするイオン照射装置。
  6. 【請求項6】  ターゲットの表面に原子または分子イ
    オンを所望の均一性で照射するものであり、0.02/
    M[amu]1/2 (mA/keV3/2 、Mはイ
    オンの質量)を越えるパービアンスを含む広範囲のパー
    ビアンスでビームの急速走査を可能にするよう構成され
    た装置であって、ターゲットをビームに対面させるエン
    ドステーションと、原子または分子イオンのビームを生
    成するイオン源および関連のビーム形成装置と、ターゲ
    ットの表面に亘りビームを二次元で走査することができ
    る磁気走査装置とを備えており、この磁気走査装置は、
    走査の各次元について、磁性材料から成るヨークおよび
    磁極手段ならびに関連の励磁コイルから成る個別の走査
    電磁石手段と、前記ビームの所望の位置を表す信号を発
    生して規定のイオンドーズプロファイルを作り出す手段
    と、当該磁気走査装置のターゲットでのドーズ量を検出
    してビームの走査中のドーズ量を表す信号を発生するイ
    オンドーズ量検出手段および当該磁気走査装置を制御し
    て、このドーズ量検出手段に応答して前記二次元におけ
    る規定のイオンドーズ量を閉ループ的に作り出すフィー
    ドバック制御装置を含むダイナミック閉ループフィード
    バック制御装置とを備えていることを特徴とするイオン
    照射装置。
  7. 【請求項7】  原子または分子イオンのビームを基準
    軸に対して第1および第2の次元で偏向させるよう構成
    された磁気走査装置であって、この装置は、装置の軸に
    沿って第1および第2の場所に配置されていて各次元に
    おいてビームを続けて偏向させる時変磁界を発生する第
    1および第2の磁気走査器を備えており、各磁気走査器
    は、磁性材料から成るヨークおよび磁極手段ならびに関
    連の励磁コイルを備えており、かつそれぞれは、コイル
    に時変電流を供給するそれぞれの偏向回路および電源を
    有しており、前記時変磁界を発生する第1の磁気走査器
    は、ビームが通過する磁気ギャップを持ち、このギャッ
    プのギャップ長は第2の磁気走査器の磁気ギャップ長よ
    りも小さく、かつビームをその対応する次元で、第2の
    走査器より速く走査するよう構成されており、それによ
    って第1の磁気走査器に対して高い周波数で課せられる
    電力要求が、当該磁気走査器の小さなギャップ長によっ
    て改善され、かつこれらの磁気走査器は、ビームを、各
    瞬間に各次元において、イオンビームの所望の瞬間的な
    変位によって規定される各角度で、かつ互いに非結合の
    状態で、各基準軸から偏向させるように働くことを特徴
    とする磁気走査装置。
  8. 【請求項8】  原子または分子イオンのビームを基準
    軸に対して第1および第2の次元で偏向させる磁気走査
    装置であって、この装置は、磁性材料から成るヨークお
    よび磁極手段ならびに関連の励磁コイルから成る時変磁
    界を発生する第1および第2の磁気走査電磁石手段をそ
    れぞれ採用しており、その各々は、コイルに時変電流を
    供給する制御回路および電源をそれぞれ備えており、前
    記コイルおよび関連の磁気回路は、磁界を発生してビー
    ムを二つの次元において非結合の状態で偏向させるよう
    に働き、かつビーム経路に沿ってほぼ同様に配置されて
    いることを特徴とする磁気走査装置。
  9. 【請求項9】  原子または分子イオンのビームを二次
    元で走査する装置であって、イオンビームを二次元にお
    いて基準軸に対して偏向させる走査装置と、この走査装
    置の後に続く装置であって、二次元的に偏向されたビー
    ムを軸からの所望の瞬間的な二次元的変位時に、基準軸
    と前記二次元において所望の角度関係を有する方向に向
    け直すよう選定された特性の静磁界条件をビーム経路に
    沿って課するよう構成されていて、互いに軸方向に離し
    て設置された複数の静磁界印加要素を有しており、それ
    によって有限のイオン分布サイズをしたイオンビームス
    ポットの所要の走査を作り出す磁気イオンビーム輸送装
    置とを備えることを特徴とするビーム走査装置。
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