JPH0424607Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 《産業上の利用分野》 この考案は、電池内圧が異常に高まつたときに
内部ガスを安全に放出させる防爆形アルカリ電池
に関する。

《従来の技術》 一般的なアルカリ電池では、発電要素を収納し
た有底円筒形の正極缶の開口部が柔軟性のある合
成樹脂性の封口ガスケツトで塞がれ、この封口ガ
スケツトの外側に負極端子板が装着されるケース
構造となつている。

この種のアルカリ電池においては、内部のガス
圧が異常に高まつたときに破断するように上記封
口ガスケツトの一部薄肉部を形成するとともに、
上記負極端子板の一部にガス抜孔を設けた防爆構
造が従来から知られている。

さらには、封口ガスケツトの上記薄肉部を積極
的に破断させるようにした防爆構造も知られてい
る。つまり、ガスケツトの薄肉部が内圧によつて
外側に脹らむように変形すると、これの外側に配
した金属切刃片に薄肉部が圧接し、この切刃片で
薄肉部の破断のきつかけをつける構成となつてい
る。

《考案が解決しようとする問題点》 上述したアルカリ電池の防爆構造において重要
なことは、内部ガス圧が予め設定した値まで上昇
したときに、封口ガスケツトの上記薄肉部が確実
に破断するように構成することである。ガスケツ
トが破断する圧力、すなわち防爆機構の作動圧が
一定でバラツキの少ないことで、始めて防爆形電
池の安全性・信頼性が得られる。

しかし従来のものでは、ガスケツトの上記薄肉
部を一定の圧力で破断するように形成するのが非
常に困難であり、また上記金属切刃片を用いるも
のでも、切刃片と薄肉部の間隔を高精度に一定に
するのが困難であり、そのため上記作動圧のバラ
ツキが大きかつた。つまり、極く僅かな加工誤差
や組立誤差によつて、防爆機構の作動圧が大きく
変動してしまう。

また従来の防爆機構では、封口ガスケツトが破
断すると漏液するため、その電池は使用不能にな
るだけでなく、漏れた液で周辺を汚してしまう。
アルカリ電池を例えば充電すると、内部でガス発
生反応が起こり、このガス発生で内圧が異常上昇
し、防爆機構が作動する。防爆機構が作動したの
にすぐに気付き、その原因（例えば充電状態）を
即座に取り除いた場合には、発電要素自体は正常
なことが多いので、その後も電池を使用できれば
好都合であり、また漏液しないか最小限で食い止
められることが望ましい。

この考案は上述した従来の問題点に鑑みなされ
たもので、その目的は、作動圧のバラツキが少な
い構造で、しかも内部ガス圧が高いときのみ排気
経路が形成され、ガス圧が低下すれば再び排気経
路が閉塞されるようにした再使用可能な防爆形ア
ルカリ電池を提供することにある。

《問題点を解決するための手段》 そこでこの考案では、上記正極缶の上端開口部
の内周と上記負極端子板の外周縁の間に挾み込ま
れる外周環状壁と、この外周環状壁と同心上に形
成された薄肉な内周環状壁とを含むドーナツ形の
外環体と、この外環体の上記内周環状壁によつて
画成された内周孔に嵌合され、上記集電子が緊密
に嵌合して貫通する中心孔を有する円筒形の内栓
体との２つの部品で構成されていて、上記外環体
の内周孔と上記内栓体の外周部との嵌合部が上記
負極端子板側から上記電池の内方に向けて拡径し
たテーパー状に形成されていて、上記正極缶内の
異常高圧を受けて上記嵌合部における上記内周環
状壁の一部が外方に弾性変形してこの両部品の境
界面に排気経路が形成されるように構成した。

《作用》 内部ガス圧が異常上昇すると、その圧力を受け
て上記外環体と上記内栓体との嵌合部における上
記外環体の内周環状壁の一部が外方に弾性変形し
て、この両部品の境界面に隙間が生じ、その隙間
が排気経路となる。内部ガス圧が低下すると、上
記隙間が生じた上記外環体または上記内栓体の弾
性変形が元に戻り、その結果、上記排気経路が塞
がつて内部が密閉される。

《実施例》 図はこの考案を適用したアルカリ電池の封口部
分の構造を示している。このアルカリ電池は、電
池ケース兼ねる有底円筒形の正極缶１０内に、正
極１２とセパレータ１４と負極１６とからなる発
電要素が同軸上に装填され、負極１６の中心には
負極集電子１８が挿入されている。正極缶１０の
上端開口部は合成樹脂製の封口ガスケツト２０で
密閉され、さらに封口ガスケツト２０の外側には
ガス抜孔２２ａを有する負極端子板２２が嵌合装
着されている。上記集電子１８は封口ガスケツト
２０の中心を貫通し、その上端が負極端子板２２
に接合されている。

この考案においては、上記封口ガスケツト２０
は外環体２４と内栓体２６の２つの部品からなつ
ている。

外環体２４は全体としてドーナツ形をなす部品
で、その上面側には３つの環状壁２４ａ，２４
ｂ，２４ｃが同心に形成されている。もつとも外
側の環状壁２４ａは、正極缶１０の上端開口部の
内周と負極端子板２２の外周縁との間に挾み込ま
れて圧縮変形される。もつとも内側の環状壁２４
ｃは、薄肉状であつて、内栓体２６を嵌合装着す
るための下向きに大径となつたテーパー孔を内周
に形成している。中間の環状壁２４ｂは、環状壁
２４ｃとの間に大きな液溜め空間２４ｄを形成し
ている。

内栓体２６は、上記集電子１８が緊密に貫通す
る中心孔２６ａを有する筒形の部品で、外周形状
は外環体２４の上記テーパー孔に緊密に嵌合する
テーパー形状になつていて、上端部には位置決め
用のフランジ２６ｂが形成されている。

外環体２４の中央のテーパー孔に内栓体２６を
上方から強く押し込んで嵌め合せる。これで外環
体２４と内栓体２６とを一体化してなる封口ガス
ケツト２０となる。なお、外環体２４と内栓体２
６との接合面部分には粘着性シール剤を塗着して
おく。この封口ガスケツト２０と正極缶１０、集
電子１８、負極端子板２２との組立手順は従来と
同じでよい。

以上のように構成されたアルカリ電池におい
て、内部ガス圧が正常であれば、封口ガスケツト
２０を構成する両部品の接合面、すなわち外環体
２４のテーパー状内周面と内栓体２６のテーパー
状外周面との接合面は緊密に接合していて隙間は
なく、電池内部はこの封口ガスケツト２０によつ
て良好に密閉されている。

何らかの原因で内部ガス圧が異常上昇すると、
そのガス圧は外環体２４と内栓体２６の接合面に
作用し、特に、外環体２４の環状壁２４ｃがこの
圧力を受けて外側へ押し拡げられるように弾性変
形する。この変形で外環体２４と内栓体２６との
接合面に隙間が生じ、その隙間が排気経路とな
り、正極缶１０内のガスがガス抜孔２２ａから外
部に放出される。

外部へのガス放出に気が付き、ガス圧を異常上
昇させる原因を取り除けば、内部のガス圧は低下
する。すると外環体２４の環状壁２４ｃが弾性力
で復帰し、外環体２４と内栓体２６とが再び緊密
に接合して電池内部を密閉する。そのため、発電
要素の劣化の程度が軽ければ、その電池を再び使
用できる。

また、上記接合面に生じた隙間からガスが放出
した際に、内部の電解液も出てくることがある
が、この電解液は直接的に外部に漏れ出さず、上
記液溜め空間２４ｄに多くが収容される。そのた
め電池の周辺を汚すことも少なくなる。

《考案の効果》 以上詳細に説明したように、この考案に係る防
爆形アルカリ電池は、内部ガス圧で封口ガスケツ
トの薄肉部を破断させる微妙な構成とは異なり、
外環体と内栓体の２つの部品で構成した封口ガス
ケツトの嵌合部における上記外環体の内周環状壁
の一部が外方に弾性変形して、この両部品の境界
面に隙間が生じ、その隙間が排気経路となるよう
に構成したので、作動圧を安定化、高精度化する
のが容易になり、防爆機構の信頼性が向上する。
また、一度内部ガスを放出してもガス圧が低下す
れば電池は再度密閉されるので、たとえ漏液して
も最小限に食い止められるとともに、電池の再使
用が可能になる。

【図面の簡単な説明】

図はこの考案の一実施例によるアルカリ電池の
主要部分の断面図である。 １０……正極缶、１２……正極、１４……セパ
レータ、１６……負極、１８……集電子、２０…
…封口ガスケツト、２２……負極端子板、２２ａ
……ガス抜孔、２４……外環体、２４ａ，２４
ｂ，２４ｃ……環状壁、２４ｄ……液溜め空間、
２６……内栓体、２６ａ……中心孔、２６ｂ……
フランジ部。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 発電要素を収納した有底円筒形の正極缶と、こ
   の正極缶の上端開口部の内周に嵌合された合成樹
   脂製の封口ガスケツトと、この封口ガスケツトの
   上面側に嵌合されたガス抜孔を有する負極端子板
   と、上記封口ガスケツトの中心を貫通して装着さ
   れ、上記負極端子板の内面に上端が接合された集
   電子とを備えたアルカリ電池であつて； 上記封口ガスケツトは、上記正極缶の上端開口
   部の内周と上記負極端子板の外周縁の間に挾み込
   まれる外周環状壁と、この外周環状壁と同心上に
   形成された薄肉な内周環状壁とを含むドーナツ形
   の外環体と、この外環体の上記内周環状壁によつ
   て画成された内周孔に嵌合され、上記集電子が緊
   密に嵌合して貫通する中心孔を有する円筒形の内
   栓体との２つの部品で構成されていて、上記外環
   体の内周孔と上記内栓体の外周部との嵌合部が上
   記負極端子板側から上記電池の内方に向けて拡径
   したテーパー状に形成されていて、上記正極缶内
   の異常高圧を受けて上記嵌合部における上記内周
   環状壁の一部が外方に弾性変形してこの両部品の
   境界面に排気経路が形成されるように構成された
   防爆形アルカリ電池。