JPH04214841A - 成形加工性に優れたエンジンガスケット用ステンレス鋼およびその製造方法 - Google Patents

成形加工性に優れたエンジンガスケット用ステンレス鋼およびその製造方法

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JPH04214841A
JPH04214841A JP41061390A JP41061390A JPH04214841A JP H04214841 A JPH04214841 A JP H04214841A JP 41061390 A JP41061390 A JP 41061390A JP 41061390 A JP41061390 A JP 41061390A JP H04214841 A JPH04214841 A JP H04214841A
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廣津 貞雄
Yoshihiro Uematsu
美博 植松
Toshihiko Takemoto
敏彦 武本
Shigeto Hayashi
茂人 林
Hideki Tanaka
秀記 田中
Shinji Shibata
新次 柴田
Chikatoshi Maeda
千芳利 前田
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Abstract

(57)【要約】本公報は電子出願前の出願データであるた
め要約のデータは記録されません。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は,内燃機関(エンジンと
呼ぶ)のガスケット用材料に関する。特に本発明は,ビ
ード加工部の締めつけでシール性を確保するエンジン用
ガスケットにおいて優れた諸特性を発現するメタルガス
ケット用材料に関する。 【0002】 【従来の技術】エンジンを構成する部品の一つに,接合
部に介装されるガスケットがある。このガスケットは,
接合面の気密を維持するに必要な諸特性を,エンジン特
有の高温,高圧および高振動下でしかも温度変化と圧力
変化が繰り返される長期期間にわたって具備しなければ
ない。従来,エンジンガスケット用素材としては特に耐
熱性の点からアスベスト等が一般に使用されていた。し
かし,近年のエンジンの高性能化やノンアスベストの法
規制化の動きに対応して,メタルガスケットが使用され
つつある。メタルガスケット用素材としては,冷間圧延
によって簡単に高強度が得られる加工硬化型の準安定オ
ーステナイト系ステンレス鋼,例えばSUS301 系
鋼が主に用いられている。その使用の態様としては,板
厚0.1〜0.4mm程度の所要形状の薄板にビードを
形成し,これを燃焼室の周囲や水溝, 油溝の周囲の接
合面に介装し,このビードを締めつけたときに発生する
高い面圧によってガス, 水, 油をシールするのが一
般である。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】エンジンのシリンダー
ヘッドに使用されるメタルガスケットは,エンジンサイ
クルの圧縮時に高圧となるので特に良好なガスシール性
を必要とする。このため,ビード成形高さを高くして面
圧を高くすると共に,材料強度も十分に強くなければな
らない。これに対応できるステンレス鋼としては,SU
S301系鋼 (SUS301,304,Type30
1L等) が挙げられる。 【0004】しかしSUS301系鋼では,高強度を得
るためには強度な冷間加工を施す必要があり,このため
に成形性が低下し,ビード成形加工時にビード外側R部
に割れが発生するという問題があった。一方,成形加工
性を高めるために強度を低くした場合には,面圧の高さ
でシール性を高めるべく,よりビード成形高さを高くす
る必要がある。そのさいビード成形高さを高くすると,
ビード肩R部(内側R部,外側R部)にミクロクラック
が発生しやすくなり,使用中にこのミクロクラックを起
点に割れが発生し,耐シール性が低下するという問題が
あった。本発明はこのような問題の解決を意図し,エン
ジン用メタルガスケットとして優れた特性を有する材料
の開発を目的としたものである。 【0005】   【課題を解決するための手段】本発明によれば,重量%
において, C;0.03%以下 Si;1.0%以下,  Mn;2.5%以下,  Ni;4.0〜10.0%,  Cr;13.0〜20.0%,  N;0.06〜0.30%, S;0.01%以下,  O;0.007%以下,  を含み,かつ M=330−(480×C%)−(2×Si%)−(1
0×Mn%)−(14×Ni%)−(5.7×Cr%)
 −(320×N%) の式に従うM値が30以上とな
るように各成分量が調整され,残部がFeおよび不可避
的不純物からなる成形加工性に優れたエンジンガスケッ
ト用ステンレス鋼,並びに,この鋼に,さらに, i). 3.0%以下のMoまたは0.5〜3.0%の
Cuの少なくとも1種,  ii). 0.1〜1.0%のTi,NbまたはVの少
なくとも1種, のi群とii群の元素を単独または複
合して含み,且つM=330−(480×C%)−(2
×Si%)−(10×Mn%)−(14×Ni%)−(
5.7×Cr%) −(5×Mo%)−(14×Cu%
)−(320×N%) の式に従うM値が30以上とな
るように各成分量が調整され,残部がFeおよび不可避
的不純物からなる成形加工性に優れたエンジンガスケッ
ト用ステンレス鋼を提供する。 【0006】また,これらの鋼は,鋼板としての製造の
さいに,調質前焼鈍に先立ち減面率で50%を越える冷
間圧延を施し,平均結晶粒径が10μm以下となるよう
に調質前焼鈍を行い,そして調質圧延を施すという製造
法を採用することにより,エンジンガスケットに要求さ
れる諸特性を有利に具備させることができる。また調質
圧延後において,300℃以上600℃以下,好ましく
は350℃以上550℃以下の温度範囲に10秒以上保
持する時効処理を施すことによって一層高強度を発現す
る。この時効処理はガスケットに成形加工する前でも後
でもよい。調質前焼鈍は好ましくは700℃以上100
0℃以下の温度領域で行う。 【0007】以下に,先ず本発明鋼における各成分の含
有量範囲について,その限定理由の概要を説明する。 【0008】〔発明の詳述〕 Cはオーステナイト生成元素であり, 高温で生成する
δフェライトの抑制および冷間加工で誘発されたマルテ
ンサイト相の強化に極めて有効である。しかし,調質圧
延後により良い成形加工性を得るためには冷間加工によ
る強化があまり著しいと成形加工性に劣るようになる。 また,あまりCを高くすると調質前焼鈍, あるいは時
効処理条件によっては炭化物の析出を伴うおそれもある
。この理由によりCは0.03%以下とする。 【0009】Siは脱酸剤として有効であるが,1.0
%以上添加してもその効果は1.0%の場合と同様でむ
しろコスト上昇を招くので1.0%以下とする。下限は
特に限定されないが脱酸効果という面からは0.2%以
上が望ましい。 【0010】Mnは脱酸剤としても有効に働くが,オー
ステナイト相の安定度を支配する元素であり,その活用
は他の元素とのバランスのもとに考慮される。本発明鋼
では2.5%までのMn量でその活用が図られる。ただ
本発明鋼では高強度でかつ成形加工性が重要視されるの
で,特に成形加工性が厳しい形状のガスケットに対して
はMn量を0.5%未満とし,MnS等の介在物の生成
を極力避けるのが好ましい。 【0011】Crは耐食性を確保する上で必須の成分で
ある。エンジン用ガスケットとしての意図する耐食性お
よび耐熱性を付与するためには少なくとも13%以上を
必要とする。しかし, Crはフェライト生成元素であ
るため,高くしすぎると高温でδフェライトが多量に生
成してしまう。そこで,δフェライト相抑制のためにオ
ーステナイト生成元素 (C,N,Ni,Mnなど)を
それに見合った量で添加しなければならなくなるが, 
オーステナイト生成元素を多く添加すると室温でのオー
ステナイト相が安定し,冷間加工によって,あるいはさ
らに以後の時効処理後において, 高強度が得られなく
なる。このようなことからCrの上限は20%とする。 【0012】Niは高温および室温でオーステナイト相
を得るために必須の成分であるが, 本発明鋼の場合,
 室温で準安定オーステナイト相にしてより良好な成形
性を得るため,低い冷間加工で適度なマルテンサイト相
を誘発させ, 高強度が得られるようにしなければなら
ない。 本発明では,Niを4%より低くすると高温で多量のδ
フェライト相が生成し,かつ室温でオーステナイト相以
外にマルテンサイトが生成し難くなる。また,10%を
越えると冷間加工でマルテンサイト相が誘発されにくく
なる。このためNi量は4.0〜10.0%とし,より
好ましくは5.0〜8.0%とする。さらにガスケット
の耐久性および耐熱性の面からも4.0%以上のNiの
添加は有利である。しかし10%を越えて添加してもそ
の効果も飽和状態となる。この理由によりNiは4.0
〜10.0%,好ましくは5.0〜8.0%とする。 【0013】Moは鋼のベース硬さを上昇させるととも
に時効処理後の硬さを上昇させるので高強度を得る上で
有効に作用する。しかし, フェライトフォーマーであ
るために多量に添加するとδフェライト相を晶出させ,
 かえって強度低下の要因となるので上限を3.0%と
する。 【0014】Cuは時効処理の際にSiとの相互作用に
より鋼を硬化させる作用を供するが,少なすぎるとその
効果は小さく, 多すぎると熱間加工性を阻害し,割れ
の要因となる。このため0.5〜3.0%とする。 【0015】Ti,Nb,Vは時効処理後の硬さを上昇
させる上で有効に作用する。この作用を発現させるため
には0.1%以上の添加を必要とする。しかし, 必要
以上に添加すると, 多量の非金属介在物を生成し疲労
強度の低下, 表面性状の悪化につながるのでそれぞれ
の上限を1.0%以下とする。 【0016】NはCと同様にオーステナイト生成元素で
あると共に, オーステナイト相およびマルテンサイト
相を硬化するのに有効な元素である。また, Cに比べ
析出物を形成しにくいため, 耐久性の面からも有効で
ある。 このため, Cに変えて少なくとも0.06%を添加す
る。しかし,多量に添加するとブローホールの原因とな
るので,0.30%以下とし,より好ましくは0.06
〜0.20%とする。 【0017】SはMnとの共存のもとにMnSを生成し
,これが延性および曲げなどの加工性の低下をもたらす
ので0.010%以下とする。なお,ガスケットの形状
によっては薄板で成形加工か厳しい領域のものではMn
およびSはさらに低い方が好ましく,Mn量は0.5%
未満, S量は0.004%以下が好ましい。 【0018】Oは疲労破壊の起点となる非金属介在物を
形成しやすい元素であり, 特にAl,TiなどOと親
和力の強い元素を含むときは顕著となる。このためにO
は低い程好ましいが, 本発明鋼では0.007%まで
は許容される。このためOは0.007%以下とした。 【0019】M値;30以上についてC,Si,Mn,
Ni,Cr,Mo,CuおよびNについて上記の範囲で
含有させるが, 下記(1)式に従うM値が30以上と
なるように各成分を調整する。 M=330−(480×C%)−(2×Si%)−(1
0×Mn%)−(14×Ni%)−(5.7×Cr%)
−(5×Mo%)−(14×Cu%)−(320×N%
)   ・・(1) (1)式の各成分の定数は,本発
明材料の開発中に実験室的に確認されたものである。こ
のM値はオーステナイト安定度の指標となるもので,こ
のM値が30未満のところで冷間圧延あるいは時効処理
後に意図する高強度を得るためには,冷間圧延において
室温で70%以上の強加工を施す必要がありこのために
材料の延性が低下し,エンジン用ガスケットとしてのビ
ード成形性が低下する。このため,M値は30以上を必
要とする。 【0020】このようにして本発明鋼は,冷間加工後の
成形加工性をできるだけ高めるべく,冷間加工によって
生ずるマルテンサイト相を, 低い冷間加工で適量生成
するように成分をバランスさせ,また時効処理後できる
だけ高強度が得られるようにしたものである。また後述
の低温或いは短時間の再結晶焼鈍中(微細結晶処理時)
にCr炭化物の析出を避けるためCを下げ, このC低
下に伴う強度低下(加工硬化の低下分)をNの添加で補
うと共にN添加による時効硬化と微細結晶処理による時
効硬化度の上昇を有効に活用するようにし, より高強
度が発現できるようにした点に特徴がある。そして微細
結晶化により低い調質圧延率でも微細かつ緻密にα’相
を分布させることができること,そしてNの添加は時効
による強度上昇が大きいこと等の知見事実から,調質圧
延率を低く保つことを可能にし,これによって成形加工
性を改善したところに特徴がある。 【0021】なお,これらの成分以外に脱酸剤,脱硫剤
として常用されるCa或いはREM(希土類元素), 
熱間加工性改善効果のあるB(0.01%以下) 等を
必要に応じて含有することができ,また不可避的に混入
する不純物を含有することができる。但し, Alは高
強度でかつ疲労強度の高いものが要求される場合は使用
しないか,あるいは鋼中に非金属介在物を形成しない程
度の量とすることが望ましい。 【0022】上述の範囲に成分組成が調整された本発明
鋼は溶体化処理状態で実質的にはオーステナイト組織を
呈する。この組織状態の鋼に50%を超える冷間圧延を
加え,700℃〜1000℃の温度で,調質前焼鈍を行
うと均一な微細結晶組織を得ることができる。そして,
この微細結晶組織の状態で調質圧延を施すとエンジンガ
スケット材としての優れた特性を得ることができる。ま
たガスケットへの成形加工の前または後に300℃以上
600℃以下の温度範囲に10秒以上保持する時効処理
を施せば硬さの向上ひいては強度が一層高くなり,エン
ジン部材としての耐久性を一層向上させることができる
。 【0023】以下にこの製造条件について説明する。従
来のこの種の鋼板の製造法では結晶粒径は25μ前後の
ものが一般的である。本発明者らはエンジンガスケット
のビード成形加工時のミクロクラックの発生は,この結
晶粒径に関係していることを知見した。後述の実施例で
示すように,調質圧延後のビード成形加工のさいに,ビ
ード加工部における結晶粒界や加工歪によって発生した
スリップバンド部分からミクロクラックが発生しガスケ
ットとしての寿命を短くしている。本発明によれば,ま
ず調質前焼鈍を行う前の冷間圧延において50%を超え
る減面率を付与することにより, 後述の実施例で示す
ように短時間の調質前焼鈍で均一でかつ10μm以下の
微細な結晶粒を得, 調質前焼鈍状態での強度レベルを
高めることで低い調質圧延率でも十分な強度特性を得る
ことができ,このために成形加工性に優れかつ表面肌荒
れ, ミクロクラックの発生のない材料が得られる。し
たがってエンジンガスケットとしての寿命を著しく長く
することができる。また,調質圧延後の時効処理による
強度上昇もN添加と微細結晶処理により従来材に比べ大
きく, 時効処理後同一強度を得んとすれば,調質圧延
後の強度レベルは低くすることが可能で,さらに成形加
工性に優れたものとすることができる。 【0024】ここで調質圧延前焼鈍は700℃以上10
00℃以下とするのがよい。これは700℃以下では微
細結晶粒を得るのに長時間を要し工業的でないこと,さ
らに1000℃以上では再結晶および粒成長が著しく1
0μm以下の結晶粒を安定して得ることが難しいからで
ある。この焼鈍は工業的規模での連続焼鈍ラインで実施
できる。 【0025】調質圧延率については調質圧延前焼鈍後の
強度レベルやオーステナイト相の安定度などに支配され
,これに応じて種々変化させることができるが,本質的
には実施例に示されるごとく従来鋼よりも低い圧下率で
目標強度が達成され,通常は20以上50%以下が適当
である。時効処理については,エンジンガスケットとし
ての強度特性を得るためには300℃以上600℃以下
の温度範囲が好ましい。300℃未満の温度では目標の
強度レベルを得るのに長時間を要し経済的でないし,ま
た600℃を越える温度では, 強度が上昇する以前に
大幅な回復の進行が起こり, メタルガスケットとして
要求される強度が得られないからである。時効処理時間
は10秒以上とする。これ未満の短時間では十分な強度
特性が得られない。この処理時間の上限については製造
コスト面から考えると1時間前後が好ましい。 【0026】以上のように本発明によれば, 前述の成
分組成を採用したうえ,その鋼帯の製造にさいして調質
前焼鈍の前に50%を越える冷間加工を施し, 700
℃〜1000℃の温度範囲で再結晶粒径が10μm以下
, 実質的には1〜5μmとなるような処理条件で調質
前焼鈍を連続焼鈍炉にて行い,そして調質圧延を施すこ
とによって従来材と同等またはそれ以上の強度を得なが
ら, 従来材では得られなかった成形加工性に優れたエ
ンジンガスケット用材料が得られる。なお本発明鋼は固
溶状態で準安定オーステナイト相を呈するので,調質前
焼鈍より前の工程は従来材と同要領で製造することがで
きる。もっとも, 安定した微細結晶粒を得るためには
調質前焼鈍を施す前に50%を越える冷間圧延を施す必
要がある。 【0027】 【実施例】表1に示す化学成分値 (重量%) の本発
明鋼(M1〜10), 従来鋼 (A) および比較鋼
 (a,b)を通常の大気溶解炉で溶製し,熱間圧延を
施した後, 冷延, 焼鈍, 酸洗を行い最終調質圧延
後の板厚を0.25mmとしてサンプルを採取した。さ
らに該鋼板に400℃で30分間の時効処理を施し, 
これを時効処理後のサンプルとした。 なお,各鋼の調質前焼鈍の直前の冷間圧延率, 調質前
焼鈍条件, および調質圧延率の詳細を表2中に示した
。 【0028】図1に,本発明鋼のM1を供試材とした場
合の微細再結晶特性に及ぼす焼鈍時間の影響を示した。 焼鈍前(本発明でいう調質前焼鈍)の冷間圧延率を35
% (●印) 施したものと, 55% (○印) 施
したものではその再結晶特性が異なっている。焼鈍前の
冷間圧延率が55%では,10分前後から硬さは急速に
軟化し,20分では十分再結晶していることが認められ
た。しかしながら,35%冷延材では軟化するのに30
0分前後を必要とし,しかも, 再結晶も部分的に起こ
り, 未再結晶部分を含む混合組織となり均一で微細な
再結晶組織のものが得難かった。すなわち,工業的生産
規模で容易に短時間で均一な再結晶粒を得るためには,
焼鈍前に十分な冷間加工を付与しておくことが必要であ
ることが認められる。 【0029】表2は,表1の各鋼の製造条件と, それ
ぞれの結晶粒径, 時効処理前の成形加工性, 引張特
性, 時効処理後の引張特性を調べた結果および疲労試
験結果を総括して示したものである。表2中のΔTSは
時効処理前後の引張強さ(TS)の差を表している。メ
タルガスケット材としては高強度であることが望ましく
,時効処理後の引張強さで少なくとも170kg/mm
2前後が目標値となる。 【0030】表中の成形加工性のFとRは,各サンプル
を第2図に示す形状に加工したさいの内側R部(F)と
外側R部(R)にミクロクラックが発生しなかったもの
を○印,微細なミクロクラックが生じたものを△印,そ
して割れの発生したものを×印として評価した。 【0031】また振動試験では,これらの成形加工時の
表面状態が疲労特性に及ぼす影響を調査するため,板に
ビード形状を円目状に成形した試験片 (平板に50m
m前後の穴を開け, その外側円周上にビードを成形付
与したもの)を作成し,図3の(a)と(b)に示すよ
うに,この試験片1を負荷変動フランジ2の間に挟んで
(a)の状態から(b)の状態に締め付けを繰り返す振
動試験を100万回実施したあとの板貫通割れ発生の有
無を調べた。 【0032】 【表1】 【0033】 【表2】 【0034】 【発明の効果】表2の結果から次のことがわかる。本発
明に従う発明鋼(M1〜10) の微細結晶処理材では
,いずれのも成形加工時ミクロクラックあるいは割れを
発生することなく, しかも時効処理後十分な引張強さ
を有している。しかし,本発明鋼(M1)でも調質前圧
延率や調質前焼鈍条件が従来法のものでは比較材として
示すように時効処理後高強度を得るためには,時効処理
前の調質圧延率を60%程度まで高める必要があり, 
このため成形加工時に内側, 外側のR部ともにミクロ
クラックが発生する。また成形加工性を高めるために調
質圧延率を45%まで下げると外側のR部には割れを発
生することなく成形できるが,内側R部(F)にはミク
ロクラックが発生する。したがってメタルガスケットと
しての十分な特性が得られない。さらに, 本発明鋼 
(M3) について, 調質前焼鈍の圧延率が低いもの
も比較材に示しているが, この場合には微細結晶処理
を施しても混粒となり内側R部 (F)には微細なミク
ロクラックが発生する。比較鋼(a)はN値が低いもの
であるが,CとNが低いので加工硬化が小さく,時効処
理後に高強度を得るためには,時効処理前の調質圧延率
を高める必要がある。このため,外側R部で割れが発生
する。比較鋼(b)は,本発明で規定するM値が低く本
発明で規定する範囲を外れているものであるが,加工硬
化が小さいので時効処理後高強度を得ようとすると比較
鋼(a)と同様な結果をもたらす。また,従来鋼(A)
も時効処理後170kg/mm2前後の引張強さを得よ
うとすると時効処理前の成形加工後は内側と外側のR部
ともにミクロクラックや割れが発生する。また,時効処
理後の引張強さを160kg/mm2前後となるように
調質圧延率を低下させても結晶粒径が大きいため内側R
部に(F)ミクロクラックが発生する。 【0035】図4〜図6はいずれも成形加工後のR部表
面の走査型電子顕微鏡写真であり,図4のものは本発明
鋼(M1)を従来法で製造した場合の内側R部(F)で
あり,多くのミクロクラックの発生が認められる。図5
は本発明鋼(M1)を本発明法で製造した場合の内側R
部(F)であるが,ミクロクラックの発生は認められな
い。図6は比較鋼(b)の外側R部(R)であるが, 
冷間圧延率が高いため大きな割れが発生している。 【0036】これらの成形加工時の表面状態が疲労特性
に影響を及ぼしていることが振動試験結果から明らかで
ある。本発明に従う鋼はいずれも100万回の振動試験
でも割れは発生しないのに対し, 比較材, 従来鋼お
よび比較鋼のように内側R部ならびに外側R部にミクロ
クラックや割れが存在するものはいずれも貫通割れを発
生してしまい,これらが疲労寿命に大きく影響すること
が認められる。 【0037】このように,本発明鋼は従来のメタルガス
ケット用材であるSUS301に比べ, 時効による強
度上昇が大きいので時効処理前の強度を下げることがで
き, 成形加工性に優れる。特に本発明に従う製造法を
採用すれば成形加工性に著しい特性が得られるのであり
,メタルガスケットとして使用した場合の寿命を著しく
向上させることができる。またその製造法自身はコスト
的に負担となるようなものでもないので経済的有利に製
造できる。 【0038】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に示したM1鋼の焼鈍(調質前焼鈍)の
前の圧延率が35%と55%である材料の700℃での
焼鈍時間と硬さおよび結晶粒径との関係を示す図である
【図2】成形加工性の試験に供した試験片形状を示す断
面図である。
【図3】振動試験の荷重負荷前(a) と荷重負荷状態
(b) の試験状態を示す略断面図である。
【図4】成形加工金属試験片のR部における表面を写し
た顕微鏡写真である。
【図5】成形加工金属試験片のR部における表面を写し
た顕微鏡写真である。
【図6】成形加工金属試験片のR部における表面を写し
た顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1  金属試験片 2  負荷変動フランジ

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】  重量%において, C;0.03%以下 Si;1.0%以下,  Mn;2.5%以下,  Ni;4.0〜10.0%,  Cr;13.0〜20.0%,  N;0.06〜0.30%, S;0.01%以下,  O;0.007%以下,  を含み,かつ M=330−(480×C%)−(2×Si%)−(1
    0×Mn%)−(14×Ni%)−(5.7×Cr%)
    −(320×N%) の式に従うM値が30以上となる
    ように各成分量が調整され,残部がFeおよび不可避的
    不純物からなる成形加工性に優れたエンジンガスケット
    用ステンレス鋼。
  2. 【請求項2】  重量%において, C;0.03%以下 Si;1.0%以下,  Mn;2.5%以下,  Ni;4.0〜10.0%,  Cr;13.0〜20.0%,  N;0.06〜0.30%, S;0.01%以下,  O;0.007%以下,  を含み,さらに, i). 3.0%以下のMoまたは0.5〜3.0%の
    Cuの少なくとも1種,  ii). 0.1〜1.0%のTi,NbまたはVの少
    なくとも1種, のi群とii群の元素を単独または複
    合して含み, 且つM=330−(480×C%)−(
    2×Si%)−(10×Mn%)−(14×Ni%)−
    (5.7×Cr%) −(5×Mo%)−(14×Cu
    %)−(320×N%) の式に従うM値が30以上と
    なるように各成分量が調整され,残部がFeおよび不可
    避的不純物からなる成形加工性に優れたエンジンガスケ
    ット用ステンレス鋼。
  3. 【請求項3】  Mn;0.5%以下, S;0.00
    4%以下, N;0.06〜0.20%である請求項1
    または2に記載のステンレス鋼。
  4. 【請求項4】  重量%において, C;0.03%以下 Si;1.0%以下,  Mn;2.5%以下,  Ni;4.0〜10.0%,  Cr;13.0〜20.0%,  N;0.06〜0.30%, S;0.01%以下,  O;0.007%以下,  を含み,かつ M=330−(480×C%)−(2×Si%)−(1
    0×Mn%)−(14×Ni%)−(5.7×Cr%)
     −(320×N%) の式に従うM値が30以上とな
    るように各成分量が調整され,残部がFeおよび不可避
    的不純物からなるステンレス鋼を,調質前焼鈍に先立ち
    減面率で50%を越える冷間圧延を施し,平均結晶粒径
    が10μm以下となるように調質前焼鈍を行い,そして
    調質圧延を施すことを特徴とする成形加工性に優れたエ
    ンジンガスケット用ステンレス鋼板の製造方法。
  5. 【請求項5】  重量%において, C;0.03%以下 Si;1.0%以下,  Mn;2.5%以下,  Ni;4.0〜10.0%,  Cr;13.0〜20.0%,  N;0.06〜0.30%, S;0.01%以下,  O;0.007%以下,  を含み,さらに, i). 3.0%以下のMoまたは0.5〜3.0%の
    Cuの少なくとも1種,  ii). 0.1〜1.0%のTi,NbまたはVの少
    なくとも1種, のi群とii群の元素を単独または複
    合して含み, 且つM=330−(480×C%)−(
    2×Si%)−(10×Mn%)−(14×Ni%)−
    (5.7×Cr%) −(5×Mo%)−(14×Cu
    %)−(320×N%) の式に従うM値が30以上と
    なるように各成分量が調整され,残部がFeおよび不可
    避的不純物からなるステンレス鋼を,調質前焼鈍に先立
    ち減面率で50%を越える冷間圧延を施し,平均結晶粒
    径が10μm以下となるように調質前焼鈍を行い,そし
    て調質圧延を施すことを特徴とする成形加工性に優れた
    エンジンガスケット用ステンレス鋼板の製造方法。
  6. 【請求項6】    調質前焼鈍は,700℃以上10
    00℃以下の温度領域で行われる請求項4または5に記
    載の製造方法。
  7. 【請求項7】    調質圧延された鋼は,300℃以
    上600℃以下の温度範囲に10秒以上保持する時効処
    理が施される請求項4,5または6に記載の製造方法。
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