JPH1068050A - 耐熱へたり性に優れたばね用ステンレス鋼 - Google Patents
耐熱へたり性に優れたばね用ステンレス鋼Info
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- JPH1068050A JPH1068050A JP22503796A JP22503796A JPH1068050A JP H1068050 A JPH1068050 A JP H1068050A JP 22503796 A JP22503796 A JP 22503796A JP 22503796 A JP22503796 A JP 22503796A JP H1068050 A JPH1068050 A JP H1068050A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 600℃付近の高温で使用されても耐熱へた
り性に優れ、さらに良好な成形性を有し、かつ低価格の
ばね用ステンレス鋼を提供する。 【解決手段】 C 0.15%以下、Si 0.8%以
下、Mn 2.5%以下、Ni 7〜10%、Cr 1
4〜18%、MoとWの1種または2種をMo+(1/
2)×Wで2.0〜5.0%、N 0.05〜0.2%
を含み、かつ、Cr当量が21〜24、Ni当量が11
〜14であり、残部がFeおよび不可避的不純物からな
る。
り性に優れ、さらに良好な成形性を有し、かつ低価格の
ばね用ステンレス鋼を提供する。 【解決手段】 C 0.15%以下、Si 0.8%以
下、Mn 2.5%以下、Ni 7〜10%、Cr 1
4〜18%、MoとWの1種または2種をMo+(1/
2)×Wで2.0〜5.0%、N 0.05〜0.2%
を含み、かつ、Cr当量が21〜24、Ni当量が11
〜14であり、残部がFeおよび不可避的不純物からな
る。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高温で使用される
ばね用ステンレス鋼に係るもので、高温での熱履歴に対
してばね限界が低下しないような高硬度を有するステン
レス鋼に関する。
ばね用ステンレス鋼に係るもので、高温での熱履歴に対
してばね限界が低下しないような高硬度を有するステン
レス鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のばね用ステンレス鋼としては、準
安定オーステナイト鋼であるSUS301等が代表的な
ものとして知られている。また、ばね特性の優れたステ
ンレス鋼として、例えば特開平5−117813号、特
開平6−228641号等には、疲労特性や耐応力腐食
割れ性に優れたメタルガスケット用の鋼や材料が提案さ
れている。これらのばねの使用温度は、高々300℃程
度である。
安定オーステナイト鋼であるSUS301等が代表的な
ものとして知られている。また、ばね特性の優れたステ
ンレス鋼として、例えば特開平5−117813号、特
開平6−228641号等には、疲労特性や耐応力腐食
割れ性に優れたメタルガスケット用の鋼や材料が提案さ
れている。これらのばねの使用温度は、高々300℃程
度である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】近年、例えば300℃
を越える高温部に対しても金属ばねの使用が試みられて
いる。しかしながら通常用いられているばねは、このよ
うな高温で長時間使用した場合には、強度が減少してば
ね特性が低下する(以下、熱へたりと記す)問題があ
る。一方、熱へたりの少ない材料、すなわち耐熱性の高
い材料としては種々の耐熱合金が存在するが、ばねに成
形する際の成形性、さらには低価格という要求に対し
て、これらを同時に満たす材料は存在しないのが現状で
ある。本発明の目的は、600℃付近の高温で使用され
ても耐熱へたり性に優れ、さらに良好な成形性を有し、
かつ低価格のばね用ステンレス鋼を提供することであ
る。
を越える高温部に対しても金属ばねの使用が試みられて
いる。しかしながら通常用いられているばねは、このよ
うな高温で長時間使用した場合には、強度が減少してば
ね特性が低下する(以下、熱へたりと記す)問題があ
る。一方、熱へたりの少ない材料、すなわち耐熱性の高
い材料としては種々の耐熱合金が存在するが、ばねに成
形する際の成形性、さらには低価格という要求に対し
て、これらを同時に満たす材料は存在しないのが現状で
ある。本発明の目的は、600℃付近の高温で使用され
ても耐熱へたり性に優れ、さらに良好な成形性を有し、
かつ低価格のばね用ステンレス鋼を提供することであ
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】発明者は、高温で使用さ
れるばね用材料を開発するに当り、まずコスト面から対
象をNi等の合金元素をあまり多量に含まないFeベー
スとして、種々検討した。その結果、本発明が目的とす
る600℃付近の高強度を得るためには、通常の焼入
れ、焼戻しを行なうマルテンサイト強化機構による強化
はほとんど期待できないことがわかった。一方、オース
テナイト系の材料は、それ自体の強度はそれほど高くな
いが、冷間加工を施すことにより、オーステナイトの加
工硬化と加工誘起マルテンサイトを生成させて、強度の
増加を図ることは可能である。しかし冷間加工による硬
化作用も600℃付近の温度に保持すると、通常は熱へ
たりにより強度が失われていく。
れるばね用材料を開発するに当り、まずコスト面から対
象をNi等の合金元素をあまり多量に含まないFeベー
スとして、種々検討した。その結果、本発明が目的とす
る600℃付近の高強度を得るためには、通常の焼入
れ、焼戻しを行なうマルテンサイト強化機構による強化
はほとんど期待できないことがわかった。一方、オース
テナイト系の材料は、それ自体の強度はそれほど高くな
いが、冷間加工を施すことにより、オーステナイトの加
工硬化と加工誘起マルテンサイトを生成させて、強度の
増加を図ることは可能である。しかし冷間加工による硬
化作用も600℃付近の温度に保持すると、通常は熱へ
たりにより強度が失われていく。
【0005】発明者は、MoおよびまたはWを多少高め
の特定量添加し、さらにNも適正量添加したオーステナ
イト系ステンレス鋼を基本組成として、これを冷間加工
により強化する一方、同時に加工誘起マルテンサイトも
適正量生成させると、600℃に近い温度に保持した後
においても強度が維持されることを新たに見出した。そ
して前記加工誘起マルテンサイトは、初期硬さを確保す
るために適正量必要であるが、必要以上に多くなると、
高温に昇温した際に逆変態によりオーステナイトになっ
て却って強度が低下することがわかった。さらに適度な
加工誘起マルテンサイト量を得るには、組成のバランス
が必要であり、そのためには各添加元素について特定範
囲内に限定するとともに、Cr当量、Ni当量の値をそ
れぞれ適性量に制御することが重要であることを見出し
た。
の特定量添加し、さらにNも適正量添加したオーステナ
イト系ステンレス鋼を基本組成として、これを冷間加工
により強化する一方、同時に加工誘起マルテンサイトも
適正量生成させると、600℃に近い温度に保持した後
においても強度が維持されることを新たに見出した。そ
して前記加工誘起マルテンサイトは、初期硬さを確保す
るために適正量必要であるが、必要以上に多くなると、
高温に昇温した際に逆変態によりオーステナイトになっ
て却って強度が低下することがわかった。さらに適度な
加工誘起マルテンサイト量を得るには、組成のバランス
が必要であり、そのためには各添加元素について特定範
囲内に限定するとともに、Cr当量、Ni当量の値をそ
れぞれ適性量に制御することが重要であることを見出し
た。
【0006】すなわち本発明の第1発明は、重量%で、
C 0.15%以下、Si 0.8%以下、Mn 2.
5%以下、Ni 7〜10%、Cr 14〜18%、M
oとWの1種または2種をMo+(1/2)×Wで2.
0〜5.0%、N 0.05〜0.2%を含み、かつ、 Cr当量=Cr%+(2×Si%)+(1.5×Mo
%)+(0.75×W%) Ni当量=Ni%+(0.5×Mn%)+(30×C
%)+(25×N%)の式によるCr当量が21〜2
4、Ni当量が11〜14であり、残部がFeおよび不
可避的不純物からなることを特徴とする耐熱へたり性に
優れたばね用ステンレス鋼である。
C 0.15%以下、Si 0.8%以下、Mn 2.
5%以下、Ni 7〜10%、Cr 14〜18%、M
oとWの1種または2種をMo+(1/2)×Wで2.
0〜5.0%、N 0.05〜0.2%を含み、かつ、 Cr当量=Cr%+(2×Si%)+(1.5×Mo
%)+(0.75×W%) Ni当量=Ni%+(0.5×Mn%)+(30×C
%)+(25×N%)の式によるCr当量が21〜2
4、Ni当量が11〜14であり、残部がFeおよび不
可避的不純物からなることを特徴とする耐熱へたり性に
優れたばね用ステンレス鋼である。
【0007】また、第2発明は、重量%で、C 0.1
5%以下、Si 0.8%以下、Mn 2.5%以下、
Ni 7〜10%、Cr 14〜18%、MoとWの1
種または2種をMo+(1/2)×Wで2.0〜5.0
%、N 0.05〜0.2%を含み、さらにTi、N
b、Vの1種または2種以上を合計で0.05〜0.3
0%含有し、かつ、 Cr当量=Cr%+(2×Si%)+(1.5×Mo
%)+(5×V%)+(1.75×Nb%)+(1.5
×Ti%)+(0.75×W%) Ni当量=Ni%+(0.5×Mn%)+(30×C
%)+(25×N%)の式によるCr当量が21〜2
4、Ni当量が11〜14であり、残部がFeおよび不
可避的不純物からなることを特徴とする耐熱へたり性に
優れたばね用ステンレス鋼である。
5%以下、Si 0.8%以下、Mn 2.5%以下、
Ni 7〜10%、Cr 14〜18%、MoとWの1
種または2種をMo+(1/2)×Wで2.0〜5.0
%、N 0.05〜0.2%を含み、さらにTi、N
b、Vの1種または2種以上を合計で0.05〜0.3
0%含有し、かつ、 Cr当量=Cr%+(2×Si%)+(1.5×Mo
%)+(5×V%)+(1.75×Nb%)+(1.5
×Ti%)+(0.75×W%) Ni当量=Ni%+(0.5×Mn%)+(30×C
%)+(25×N%)の式によるCr当量が21〜2
4、Ni当量が11〜14であり、残部がFeおよび不
可避的不純物からなることを特徴とする耐熱へたり性に
優れたばね用ステンレス鋼である。
【0008】そして、上記ステンレス鋼の望ましい組成
と特性は、上記鋼組成を有し、少なくともオーステナイ
ト相と加工誘起変態によって生じるマルテンサイトとの
2相を含む組織からなり、かつ前記マルテンサイトが2
5容積%以下であり、さらに前記鋼を580℃で500
時間加熱した際のビッカース硬さが400HV以上であ
る耐熱へたり性に優れたばね用ステンレス鋼である。
と特性は、上記鋼組成を有し、少なくともオーステナイ
ト相と加工誘起変態によって生じるマルテンサイトとの
2相を含む組織からなり、かつ前記マルテンサイトが2
5容積%以下であり、さらに前記鋼を580℃で500
時間加熱した際のビッカース硬さが400HV以上であ
る耐熱へたり性に優れたばね用ステンレス鋼である。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に本発明鋼の成分限定理由に
ついて述べる。Cは、オーステナイト形成元素で、高温
で生成するδフェライトの抑制、冷間加工で誘発された
マルテンサイト相の強化に極めて有効である。しかし添
加量が0.15%を越えると、マルテンサイトが多量に
生成することで、ばねの成形性が困難になるので、加工
性を低下させないためにCの含有量は、0.15%以下
とした。
ついて述べる。Cは、オーステナイト形成元素で、高温
で生成するδフェライトの抑制、冷間加工で誘発された
マルテンサイト相の強化に極めて有効である。しかし添
加量が0.15%を越えると、マルテンサイトが多量に
生成することで、ばねの成形性が困難になるので、加工
性を低下させないためにCの含有量は、0.15%以下
とした。
【0010】Siは、製鋼時の脱酸剤として有効であ
り、また冷間加工によって生成されるマルテンサイト相
を強化するために非常に有効な元素である。一方、Si
は冷間加工によるマルテンサイトの生成に大きく影響を
及ぼす元素なので、Si量の調整は本発明において非常
に重要である。すなわちSiの含有量が0.8%を越え
ると、わずかな冷間加工でも加工誘起マルテンサイトが
多量に生成されるために使用時の昇温により逆変態が容
易に起り、オーステナイト相を生じて却って硬さが大き
く低下する。そのためSiは0.8%以下とした。Mn
も、Si同様、脱酸剤として有効な元素であるが、オー
ステナイト相の安定度を支配する元素でもあり、その活
用は他の元素とのバランスのもとに考慮される。本発明
においては、Mnが2.5%を越えると、成形時の加工
性が悪化するため、2.5%以下とする。
り、また冷間加工によって生成されるマルテンサイト相
を強化するために非常に有効な元素である。一方、Si
は冷間加工によるマルテンサイトの生成に大きく影響を
及ぼす元素なので、Si量の調整は本発明において非常
に重要である。すなわちSiの含有量が0.8%を越え
ると、わずかな冷間加工でも加工誘起マルテンサイトが
多量に生成されるために使用時の昇温により逆変態が容
易に起り、オーステナイト相を生じて却って硬さが大き
く低下する。そのためSiは0.8%以下とした。Mn
も、Si同様、脱酸剤として有効な元素であるが、オー
ステナイト相の安定度を支配する元素でもあり、その活
用は他の元素とのバランスのもとに考慮される。本発明
においては、Mnが2.5%を越えると、成形時の加工
性が悪化するため、2.5%以下とする。
【0011】Crは、耐食性を付与するのに非常に重要
な元素であり、14%以上で効果が顕著になる。しかし
18%を越えると、δフェライトを多量に形成するた
め、耐食性、冷間加工性を大きく悪化させる。したがっ
てCrの量は、14〜18%とする。Niは、高温およ
び室温でオーステナイト相を得るのに必須の元素である
が、本発明鋼の場合には室温で準安定オーステナイト相
にして、冷間加工でマルテンサイト相を誘発させるよう
に制御することが重要である。またNiの含有量が少な
いとδフェライトが生成するので、上記の効果を得るた
めには、最低7%が必要である。しかし、Niが10%
を越えると、冷間加工を施してもマルテンサイト相が誘
発されにくくなる。したがってNiの含有量を7〜10
%とした。
な元素であり、14%以上で効果が顕著になる。しかし
18%を越えると、δフェライトを多量に形成するた
め、耐食性、冷間加工性を大きく悪化させる。したがっ
てCrの量は、14〜18%とする。Niは、高温およ
び室温でオーステナイト相を得るのに必須の元素である
が、本発明鋼の場合には室温で準安定オーステナイト相
にして、冷間加工でマルテンサイト相を誘発させるよう
に制御することが重要である。またNiの含有量が少な
いとδフェライトが生成するので、上記の効果を得るた
めには、最低7%が必要である。しかし、Niが10%
を越えると、冷間加工を施してもマルテンサイト相が誘
発されにくくなる。したがってNiの含有量を7〜10
%とした。
【0012】MoとWは、本発明鋼において最も重要な
元素であり、どちらの元素も基地に固溶して基地の硬さ
を高めるとともに、使用時の昇温による熱へたりを緩和
させる効果があるため、単独または複合で必須添加す
る。これは、Moおよび、またはW自身のドラッグ効果
によると考えられ、MoやWが冷間加工によって多量に
導入された転位を固着させて動きにくくさせるためと推
測される。上記効果によって、本発明鋼は、冷間圧延後
の高硬度を600℃付近に昇温しても、大きな硬度低下
がなく、高硬度を維持することができる。このような効
果を得るために、MoとWの1種または2種をMo+
(1/2)×W量で最低2.0%が必要である。しかし
5.0%を越えると、MoとWはフェライト形成元素で
あるために多量のδフェライトを形成して耐食性や冷間
加工性を低下させるため、MoとWの1種または2種を
Mo+(1/2)×Wで2.0〜5.0%に限定する。
元素であり、どちらの元素も基地に固溶して基地の硬さ
を高めるとともに、使用時の昇温による熱へたりを緩和
させる効果があるため、単独または複合で必須添加す
る。これは、Moおよび、またはW自身のドラッグ効果
によると考えられ、MoやWが冷間加工によって多量に
導入された転位を固着させて動きにくくさせるためと推
測される。上記効果によって、本発明鋼は、冷間圧延後
の高硬度を600℃付近に昇温しても、大きな硬度低下
がなく、高硬度を維持することができる。このような効
果を得るために、MoとWの1種または2種をMo+
(1/2)×W量で最低2.0%が必要である。しかし
5.0%を越えると、MoとWはフェライト形成元素で
あるために多量のδフェライトを形成して耐食性や冷間
加工性を低下させるため、MoとWの1種または2種を
Mo+(1/2)×Wで2.0〜5.0%に限定する。
【0013】Nは、基地に固溶して基地の硬さを上げる
とともに、使用時の昇温による熱へたりを緩和させる効
果を有する。また耐食性を向上させるとともに、オース
テナイト生成元素としてδフェライトの生成を抑制する
効果も大きく、Niのような高価な合金元素を節約し
て、Niの代わりにNを添加することでδフェライトの
生成を抑制し、安価なばね材料を製造するのにも有効で
ある。その効果を得るためには少なくともNの含有量
は、0.05%が必要である。しかし、Nの含有量が
0.20%を越えると、鋳造時に欠陥等が発生し易くな
り、製造上の問題となるため、Nは、0.05〜0.2
%とした。
とともに、使用時の昇温による熱へたりを緩和させる効
果を有する。また耐食性を向上させるとともに、オース
テナイト生成元素としてδフェライトの生成を抑制する
効果も大きく、Niのような高価な合金元素を節約し
て、Niの代わりにNを添加することでδフェライトの
生成を抑制し、安価なばね材料を製造するのにも有効で
ある。その効果を得るためには少なくともNの含有量
は、0.05%が必要である。しかし、Nの含有量が
0.20%を越えると、鋳造時に欠陥等が発生し易くな
り、製造上の問題となるため、Nは、0.05〜0.2
%とした。
【0014】Ti,Nb,Vは、必ずしも添加する必要は
ないが、一次炭化物を形成することで固溶化処理時のオ
ーステナイト結晶粒を微細化させて硬さを上げる効果が
あるので必要に応じて1種または2種以上を添加するこ
とができる。その効果を得るためには、Ti,Nb,V
の1種または2種以上を合計で最低0.05%が必要で
あるが、0.30%を越えて含有すると、粗大な一次炭
化物を形成して冷間加工性を害することから、0.05
〜0.30%にするのがよい。なお、本発明鋼に重量%
で以下に示す範囲の元素が含まれても、特性上何らそこ
なわれるものではない。 Cu 3.0%以下,Co 2.0%以下,Ca 0.
01%以下,Y 0.2%以下, REM(La,Ce,Pr,Nd等) 0.2%以下,B
0.02%以下, Mg 0.02%以下,Al 0.2%以下,Hf
0.2%以下,Zr 0.2%以下。
ないが、一次炭化物を形成することで固溶化処理時のオ
ーステナイト結晶粒を微細化させて硬さを上げる効果が
あるので必要に応じて1種または2種以上を添加するこ
とができる。その効果を得るためには、Ti,Nb,V
の1種または2種以上を合計で最低0.05%が必要で
あるが、0.30%を越えて含有すると、粗大な一次炭
化物を形成して冷間加工性を害することから、0.05
〜0.30%にするのがよい。なお、本発明鋼に重量%
で以下に示す範囲の元素が含まれても、特性上何らそこ
なわれるものではない。 Cu 3.0%以下,Co 2.0%以下,Ca 0.
01%以下,Y 0.2%以下, REM(La,Ce,Pr,Nd等) 0.2%以下,B
0.02%以下, Mg 0.02%以下,Al 0.2%以下,Hf
0.2%以下,Zr 0.2%以下。
【0015】次にCr当量は、フェライト安定化元素を
整理した式であり、Ni当量は、オーステナイト安定化
元素を整理した式である。上記の式がともに条件を満た
していないと、本発明鋼におけるフェライト、オーステ
ナイトのバランスが崩れ、冷間加工後の組織、すなわち
加工誘起マルテンサイトの量や使用時の昇温履歴による
熱へたり性を変動させる大きな要因となる。したがっ
て、Cr当量は21〜24、Ni当量は11〜14の範
囲にそれぞれ規定する。
整理した式であり、Ni当量は、オーステナイト安定化
元素を整理した式である。上記の式がともに条件を満た
していないと、本発明鋼におけるフェライト、オーステ
ナイトのバランスが崩れ、冷間加工後の組織、すなわち
加工誘起マルテンサイトの量や使用時の昇温履歴による
熱へたり性を変動させる大きな要因となる。したがっ
て、Cr当量は21〜24、Ni当量は11〜14の範
囲にそれぞれ規定する。
【0016】次に本発明鋼の望ましい組織と特性につい
て述べる。加工誘起マルテンサイト相は、準安定オース
テナイト組織の初期硬さを高め、同時に高温で使用され
ても熱へたりを最小限維持させるのに必要であるが、加
工誘起マルテンサイト相が容積%で25%を越えると使
用時の昇温により、オーステナイトに逆変態が多く発生
して、硬度低下が著しくなるために、25%以下とする
のがよい。望ましい加工誘起マルテンサイト相の量は、
15〜25%である。さらに本発明鋼は高温で使用して
も、初期のばね特性が最大限維持できるのがよく、その
ためには580℃で500時間、加熱した後の硬さが、
ビッカース硬さ400HV以上であることが望ましい。
て述べる。加工誘起マルテンサイト相は、準安定オース
テナイト組織の初期硬さを高め、同時に高温で使用され
ても熱へたりを最小限維持させるのに必要であるが、加
工誘起マルテンサイト相が容積%で25%を越えると使
用時の昇温により、オーステナイトに逆変態が多く発生
して、硬度低下が著しくなるために、25%以下とする
のがよい。望ましい加工誘起マルテンサイト相の量は、
15〜25%である。さらに本発明鋼は高温で使用して
も、初期のばね特性が最大限維持できるのがよく、その
ためには580℃で500時間、加熱した後の硬さが、
ビッカース硬さ400HV以上であることが望ましい。
【0017】(実施例)表1,2に本発明鋼である試料
No.1〜20および比較鋼である試料No.21〜3
1ならびに従来鋼である試料No.32の化学成分を示
す。なお、比較鋼は、Cr当量、Ni当量のいずれか、
またはいくつかが本発明の限定範囲からはずれたもので
ある。また従来鋼、SUS301相当の成分からなる鋼
である。試料の作製には以下の手順で行った。まず10
kgのインゴットを溶製した後、鍛伸によって断面が2
0mm×40mmの棒材にした。続いて、この素材を1
050℃に加熱し、1時間保持後水冷の焼入れを行なっ
た。その後、この素材からそして厚さ2mmの板を割り
出し、引き続いて、0.6mmの厚さまで70%の冷間
圧延を施した。なお冷間加工後のマルテンサイト量の測
定は、フェライトスコープで実施した。また、各試験片
は、冷間圧延後の硬さを測定した後、使用時の昇温を想
定した試験として、580℃に加熱して、500時間保
持した後に炉から取り出し、硬さを測定した。表3に冷
間加工後のマルテンサイト量測定結果およびビッカース
硬さを、また580℃の温度に500時間保持後のビッ
カース硬さをそれぞれ示す。
No.1〜20および比較鋼である試料No.21〜3
1ならびに従来鋼である試料No.32の化学成分を示
す。なお、比較鋼は、Cr当量、Ni当量のいずれか、
またはいくつかが本発明の限定範囲からはずれたもので
ある。また従来鋼、SUS301相当の成分からなる鋼
である。試料の作製には以下の手順で行った。まず10
kgのインゴットを溶製した後、鍛伸によって断面が2
0mm×40mmの棒材にした。続いて、この素材を1
050℃に加熱し、1時間保持後水冷の焼入れを行なっ
た。その後、この素材からそして厚さ2mmの板を割り
出し、引き続いて、0.6mmの厚さまで70%の冷間
圧延を施した。なお冷間加工後のマルテンサイト量の測
定は、フェライトスコープで実施した。また、各試験片
は、冷間圧延後の硬さを測定した後、使用時の昇温を想
定した試験として、580℃に加熱して、500時間保
持した後に炉から取り出し、硬さを測定した。表3に冷
間加工後のマルテンサイト量測定結果およびビッカース
硬さを、また580℃の温度に500時間保持後のビッ
カース硬さをそれぞれ示す。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
【表3】
【0021】本発明鋼は、いずれも冷間加工した際の加
工誘起マルテンサイト量が25容積%以下であり、初期
硬さが比較的低い。しかし、580℃に加熱した後の硬
さの降下の度合は、小さく、軟化が抑制されており、耐
熱ヘタリ性が優れていることがわかる。これに対して比
較鋼は、冷間加工後のマルテンサイト量が高く、硬さも
高くなる傾向が大きい。さらに580℃に500時間、
加熱保持後のビッカース硬さは、いずれも400を下回
っており、初期硬さと、加熱後の硬さの落差が著しく、
耐熱へたり性が不十分である。また従来鋼は、冷間加工
による加熱硬化性が低く、長時間の加熱による硬度低下
も大きいことがわかる。
工誘起マルテンサイト量が25容積%以下であり、初期
硬さが比較的低い。しかし、580℃に加熱した後の硬
さの降下の度合は、小さく、軟化が抑制されており、耐
熱ヘタリ性が優れていることがわかる。これに対して比
較鋼は、冷間加工後のマルテンサイト量が高く、硬さも
高くなる傾向が大きい。さらに580℃に500時間、
加熱保持後のビッカース硬さは、いずれも400を下回
っており、初期硬さと、加熱後の硬さの落差が著しく、
耐熱へたり性が不十分である。また従来鋼は、冷間加工
による加熱硬化性が低く、長時間の加熱による硬度低下
も大きいことがわかる。
【0022】
【発明の効果】以上述べたように、本発明のばね用ステ
ンレス鋼は600℃付近の高温で使用しても耐熱へたり
性に優れていることから、高温でばね特性が要求される
用途に対して安価に提供することができる。
ンレス鋼は600℃付近の高温で使用しても耐熱へたり
性に優れていることから、高温でばね特性が要求される
用途に対して安価に提供することができる。
Claims (3)
- 【請求項1】 重量%で、C 0.15%以下、Si
0.8%以下、Mn2.5%以下、Ni 7〜10%、
Cr 14〜18%、MoとWの1種または2種をMo
+(1/2)×Wで2.0〜5.0%、N 0.05〜
0.2%を含み、かつ、 Cr当量=Cr%+(2×Si%)+(1.5×Mo
%)+(0.75×W%) Ni当量=Ni%+(0.5×Mn%)+(30×C
%)+(25×N%)の式によるCr当量が21〜2
4、Ni当量が11〜14であり、残部がFeおよび不
可避的不純物からなる耐熱へたり性に優れたばね用ステ
ンレス鋼。 - 【請求項2】 重量%で、C 0.15%以下、Si
0.8%以下、Mn2.5%以下、Ni 7〜10%、
Cr 14〜18%、MoとWの1種または2種をMo
+(1/2)×Wで2.0〜5.0%、N 0.05〜
0.2%を含み、さらにTi、Nb、Vの1種または2
種以上を合計で0.05〜0.30%含有し、かつ、 Cr当量=Cr%+(2×Si%)+(1.5×Mo
%)+(5×V%)+(1.75×Nb%)+(1.5
×Ti%)+(0.75×W%) Ni当量=Ni%+(0.5×Mn%)+(30×C
%)+(25×N%)の式によるCr当量が21〜2
4、Ni当量が11〜14であり、残部がFeおよび不
可避的不純物からなることを特徴とする耐熱へたり性に
優れたばね用ステンレス鋼。 - 【請求項3】 請求項1または2に記載の鋼組成を有
し、少なくともオーステナイト相と加工誘起変態によっ
て生じるマルテンサイト相との2相を含む組織からな
り、かつ前記マルテンサイト相が25容積%以下であ
り、さらに前記鋼を580℃で500時間加熱した際の
ビッカース硬さが400HV以上である耐熱へたり性に
優れたばね用ステンレス鋼。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP22503796A JPH1068050A (ja) | 1996-08-27 | 1996-08-27 | 耐熱へたり性に優れたばね用ステンレス鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP22503796A JPH1068050A (ja) | 1996-08-27 | 1996-08-27 | 耐熱へたり性に優れたばね用ステンレス鋼 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1068050A true JPH1068050A (ja) | 1998-03-10 |
Family
ID=16823070
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP22503796A Pending JPH1068050A (ja) | 1996-08-27 | 1996-08-27 | 耐熱へたり性に優れたばね用ステンレス鋼 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH1068050A (ja) |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2005007915A1 (ja) * | 2003-07-22 | 2005-01-27 | Sumitomo Metal Industries, Ltd. | マルテンサイト系ステンレス鋼 |
JP2012211348A (ja) * | 2011-03-18 | 2012-11-01 | Sumitomo Metal Ind Ltd | 高温耐へたり性に優れる冷間圧延ステンレス鋼板およびその製造方法 |
WO2013146876A1 (ja) | 2012-03-29 | 2013-10-03 | 新日鐵住金ステンレス株式会社 | 耐熱へたり性に優れた高強度ステンレス鋼線、高強度ばね及びその製造方法 |
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WO2022180869A1 (ja) * | 2021-02-24 | 2022-09-01 | 日鉄ステンレス株式会社 | オーステナイト系ステンレス鋼材及びその製造方法、並びに板ばね |
-
1996
- 1996-08-27 JP JP22503796A patent/JPH1068050A/ja active Pending
Cited By (8)
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US7767039B2 (en) | 2003-07-22 | 2010-08-03 | Sumitomo Metal Industries, Ltd. | Martensitic stainless steel |
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