JP2000256802A - 耐へたり性に優れたメタルガスケット用ステンレス鋼材およびその製造法 - Google Patents

耐へたり性に優れたメタルガスケット用ステンレス鋼材およびその製造法

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JP2000256802A
JP2000256802A JP5575199A JP5575199A JP2000256802A JP 2000256802 A JP2000256802 A JP 2000256802A JP 5575199 A JP5575199 A JP 5575199A JP 5575199 A JP5575199 A JP 5575199A JP 2000256802 A JP2000256802 A JP 2000256802A
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Nobukazu Fujimoto
延和 藤本
Takashi Igawa
孝 井川
Hiroshi Fujimoto
廣 藤本
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Nippon Steel Nisshin Co Ltd
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Nisshin Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 500℃以上の温度域で使用できる安価なメタ
ルガスケット用ステンレス鋼材を提供する。 【解決手段】 C:0.05〜0.20%,Mn:0.1〜2.0%,Ni:0.
1〜2.0%,Cr:12.0〜16.0%,Cu:0.3〜3.0%,B:0〜0.0
10%,Mo:0〜1.0%,Si:0〜2.0%を含有し、Nb:0.05〜
1.0%,V:0.05〜1.0%の1種以上を合計で0.05〜1.0%
含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、マル
テンサイト量が30〜95体積%のフェライト+マルテンサ
イトの複相組織を呈する耐へたり性に優れたステンレス
鋼材。γmax=420C+470N+23Ni+7Mn+9Cu-11.5Cr-11.5Si-
12Mo-52Al-23V-47Nb+189で定義されるγmaxの値が30〜9
5である圧延鋼板に対し、フェライト+オーステナイト
の2相温度域に加熱したのち水冷する複相化熱処理を施
す、上記鋼材の製造法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関のエンジ
ンや排気ガス配管等の高温に曝される部位で使用される
メタルガスケット用ステンレス鋼材であって、特に高温
に曝されてもばね特性が低下せず、へたりの生じにくい
鋼材、およびその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来からガスケット材料としてはアスベ
ストが多用されてきたが、環境問題等の規制や機器の小
型化・軽量化の動向により、メタルガスケットの使用が
増加してきている。メタルガスケット用材料としては、
加工硬化によって強度を高めたSUS301等のオーステナイ
ト系ステンレス鋼が代表的なものとして知られている。
また、ばね特性や耐応力腐食割れ性を向上させた材料も
提案されている。
【0003】メタルガスケットは、従来300℃以下で使
用されるのが一般的であったが、近年、500℃以上の高
温に曝される部位への適用も試みられている。従来のス
テンレス鋼では、このような高温で使用した場合、強度
が低下してガスケットとしての特性が劣化する問題があ
った。これはいわゆる「へたり」と呼ばれる現象に起因
した特性劣化である。「へたり」は、高温環境におかれ
た材料が外部応力の作用によって撓み、応力を除去した
後、元の形状に戻らない現象である。へたりが生じると
きには材料硬さの低下を伴うので、高温に曝す前後での
材料硬さの変化を調べることで、へたりの程度を把握す
ることができる。特開平4−214841号公報,特開平10−6
8050号公報には耐へたり性を向上させたオーステナイト
系ステンレス鋼が示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、特開平4−214
841号公報や特開平10−68050号公報に示されるステンレ
ス鋼はNiを4%以上あるいは7%以上含有するオーステナ
イト系のものであるため、材料コストが高くつく。また
これらは冷間圧延によって加工誘起マルテンサイトを適
量生成させる手法を適用するため、化学組成に応じて適
正な冷間圧延率を選択する必要があり、メタルガスケッ
トの製品厚さに合わせたゲージコントロールを実現する
うえでの工程上の制約も大きい。
【0005】本発明は、Ni含有量の低い安価な材料を用
いて、上記のような工程上の制約を受けない手法によ
り、500℃以上の温度で使用できる耐へたり性に優れた
メタルガスケット用ステンレス鋼材を提供することを目
的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1の発明は、質量%で、C:0.05〜0.20%,M
n:0.1〜2.0%,Ni:0.1〜2.0%,Cr:12.0〜16.0%,C
u:0.3〜3.0%,B:0〜0.010%(無添加を含む),Mo:
0〜1.0%(無添加を含む),Si:0〜2.0%(無添加を含
む)を含有し、Nb:0.05〜1.0%およびV:0.05〜1.0%
の1種または2種を合計で0.05〜1.0%含有し、残部がF
eおよび不可避的不純物からなり、マルテンサイト量が3
0〜95体積%に調整されたフェライト+マルテンサイト
の複相組織を呈する耐へたり性に優れたメタルガスケッ
ト用ステンレス鋼材である。
【0007】ここで、フェライト+マルテンサイトの複
相組織とは、フェライト相とマルテンサイト相が混在す
る金属組織をいうが、その中には通常、炭化物が観察さ
れ、その他の微細な析出物が観察される場合もある。
【0008】請求項2の発明は、請求項1の発明におい
て、Cu含有量が1.0〜3.0質量%である点を規定したもの
である。
【0009】請求項3の発明は、請求項1または2の発
明において、B含有量が0.001〜0.010質量%である点を
規定したものである。
【0010】請求項4の発明は、請求項1または2の発
明において、Mo含有量が0.05〜1.0質量%である点を規
定したものである。
【0011】請求項5の発明は、請求項1または2の発
明において、Si含有量が0.1〜2.0質量%である点を規定
したものである。
【0012】請求項6の発明は、請求項1〜5の鋼材の
製造法である。すなわち、請求項1〜5に規定の各成分
元素の含有量を満たしたうえで、さらに下記(1)式で定
義されるγmaxの値が30〜95となるように化学組成が調
整された圧延鋼板に対し、フェライト+オーステナイト
の2相温度域に加熱したのち水冷する複相化熱処理を施
すものである。 γmax=420C+470N+23Ni+7Mn+9Cu−11.5Cr−11.5Si−12Mo−52Al−23V−47 Nb+189 ・・・(1)
【0013】ここで、(1)式には、質量%で表した各元
素の含有量の値を代入する。
【0014】
【発明の実施の形態】発明者らは、フェライト+マルテ
ンサイトの複相組織を呈するステンレス鋼において、
Cuを特定量含有する場合に500℃付近の温度における高
温強度が著しく高まること、Nb+Vの含有量が特定量
以上になると耐へたり性が急激に向上すること、Moや
Siにも耐へたり性を向上させる作用があることを見出し
た。本発明は、これらの知見に基づいて昨今のメタルガ
スケットに求められている特性を実現したものである。
以下、本発明を特定する事項について説明する。
【0015】Cは、マルテンサイト量を増加させるとと
もに、固溶強化によりマルテンサイト相およびフェライ
ト相の強度を高めるのに有効である。これらの効果を得
るには少なくとも0.05質量%以上のC含有量が必要であ
る。しかし、Cがあまり過剰になると、Cr貧化層を生じ
て鋭敏化状態となって耐食性が著しく劣化したり、マル
テンサイトが多量に生成し過ぎてガスケットへの成形加
工が困難になるので、C含有量は0.20質量%以下に限定
する。
【0016】MnおよびNiは、オーステナイト生成元素と
して、高温でフェライト+オーステナイトの2相組織を
形成させるうえで有効に作用する。Mn,Ni量が増加する
と高温で生成するオーステナイトが増加することに伴
い、そのオーステナイトが冷却過程で変態して生成する
マルテンサイトも必然的に増加する。冷却後のフェライ
ト+マルテンサイト複相組織においてマルテンサイトの
割合が多くなると、強度が上昇する。本発明では、要求
される強度レベルに応じて、Cr量やC量との兼ね合いか
らMnやNiの含有量を調整するが、Mn,Niはそれぞれ少な
くとも0.1質量%以上含有させないとメタルガスケット
として必要なマルテンサイト量を確保するための成分調
整が難しくなる。一方、Mn量,Ni量がそれぞれ2.0質量
%を超えて多くなると、マルテンサイト量が多くなりす
ぎて延性が低下し、好ましくない。したがって本発明で
は、Mn,Niとも、それぞれ0.1〜2.0質量%の含有量に規
定する。
【0017】Crは、メタルガスケットとしての耐食性を
維持するうえで12.0質量%以上必要である。しかし、Cr
をあまり多量に含有させると、マルテンサイト相を生成
させるのに必要なMnやNi等のオーステナイト生成元素の
量を増やさなくてはならないとともに、靱性低下を招く
ので、Cr含有量の上限は16.0質量%に規定する。
【0018】Cuは、後述するように、500℃付近の温度
域において材料の硬さを増加させる。この高温での硬化
作用が、耐へたり性を向上させるうえで有利に働くもの
と考えられる。したがってCuの添加は本発明において特
に重要である。上記作用を十分発現させるには少なくと
も0.3質量%以上のCu含有量が必要である。高温での硬
さを特に重視する用途では1.0質量%以上のCu含有量と
するのが望ましい。しかし、あまり多量に含有させると
加工性が低下するので、Cu含有量の上限は3.0質量%に
規定する。
【0019】Bは、熱間加工性を改善する効果がある。
この効果を十分に得るには0.001質量%以上のBを含有さ
せることが望ましい。ただし、あまり多量に含有させる
と低融点化合物が生成するので、却って熱間加工性が悪
くなる。このため、B含有量の上限は0.010質量%に規定
する。
【0020】NbおよびVは、耐へたり性を顕著に向上さ
せる元素として、本発明ではこれらの含有量が極めて重
要な意味をもつ。すなわち、Nb+Vの合計量が0.05質量
%以上になると耐へたり性の顕著な向上が見られ、特に
Nb+Vの合計量が0.15質量%以上の範囲において非常に
優れた耐へたり性が安定して得られるようになる。ただ
し、あまり多量に含有させると介在物の生成に起因して
製造性が悪化するので、Nb+Vの合計量は1.0質量%以下
に抑える必要がある。また、Nb,Vはいずれか一方を単
独で添加した場合と、両者を複合で添加した場合で、ほ
とんど同等の効果を示すことがわかった。したがって、
本発明では、Nb:0.05〜1.0%およびV:0.05〜1.0%の
1種または2種を合計で0.05〜1.0%含有させる。ま
た、Nb:0.05〜1.0%およびV:0.05〜1.0%の1種また
は2種を合計で0.15〜1.0%含有させることが一層望ま
しい。なお、このNb,Vの効果については後述図2のデ
ータで実証する。
【0021】周知のとおり、NbやVはCと結合しやすく炭
化物形成能が強い元素である。このため、Nb,V添加鋼
では、炭化物として失われたCの分だけマルテンサイト
相中の固溶C量は少なくなり、その結果、素材の硬さ
は、同じC含有量のNb,V無添加鋼に比べて若干低くなる
のが通常である。この点からすると、「へたり」は材料
硬さの低下を伴う現象である以上、耐へたり性の改善に
NbやVの添加はむしろマイナスであると予想することも
できる。しかし、このような予想とは反対に、Nb,Vの
添加が耐へたり性の改善に顕著に効くことを発明者らは
見出したのである。
【0022】このようなNb,Vによる耐へたり性向上の
メカニズムは未だ十分に解明されていないが、材料を高
温に曝して使用したときに生じる炭化物の凝集形態が硬
さの低下の抑制に影響しているものと考えられる。すな
わち、材料を高温に曝した際、マルテンサイトが分解し
てM23C6を主体とする炭化物が析出し、これが次第に凝
集・粗大化することにより材料の軟化が起こると考えら
れる。Nb,V添加鋼では高温に曝す前の初期の段階から
鋼中にはNb,Vの微細な炭化物が数多く分散していると
考えられ、高温に曝した際には、すでに分散しているN
b,V炭化物を核として新たな炭化物が析出すると推測さ
れる。また固溶C量が少なくなっている分、新たな炭化
物の析出量も少なくなると考えられる。このため、Nb,
V添加鋼を高温に曝した際には、Nb,Vを添加しない鋼の
場合に比べ、生成する炭化物のサイズはより微細にな
り、その分布はより均一になると考えられる。微細な分
散形態を呈する炭化物はもともと凝集速度が遅いことに
加え、炭化物中にNb,Vが含まれていると、単純な炭化
物と比べ一層凝集・粗大化しにくい性質を示すようにな
ると考えられる。炭化物が凝集・粗大化せずに細かく分
散している方が材料は硬い。したがって、Nb,Vを適量
添加した鋼と無添加の鋼とでは、材料を高温に曝して使
用した際における炭化物の凝集形態の違いに起因して、
硬さの低下の度合い、つまり耐へたり性に顕著な差が生
じるのではないかと推察される。
【0023】Moは、NbやVと同様、炭化物形成能が強い
元素であり、耐へたり性の向上に有効な元素である。こ
の効果を十分に発揮させるには0.05質量%以上含有させ
ることが望ましい。ただし、あまり多量に含有させると
靱性が劣化し、また原料コストも高くなるので、Moを添
加する場合には1.0質量%以下の範囲で行うのがよい。
【0024】Siは、炭化物は作らないが、フェライト相
を強化する作用が強いので、結果的に耐へたり性を向上
させる効果を示す。この効果を十分に発揮させるには0.
1質量%以上含有させることが望ましい。ただし、あま
り多量に含有させると靱性が劣化するので、Siを添加す
る場合には2.0質量%以下の範囲で行うのがよい。
【0025】本発明の鋼材は、高強度と高加工性を両立
させるために、フェライト+マルテンサイトの複相組織
とすることを特徴としている。メタルガスケットとして
十分な高強度を付与するためには、30体積%以上のマル
テンサイト相が必要である。また、十分な高加工性を得
るためにはフェライト相の存在が必須であり、マルテン
サイト相を95体積%以下にしなくてはならない。
【0026】このような金属組織のメタルガスケット用
鋼材を製造する方法として、前記(1)式で定義されるγm
axの値が30〜95となるように化学組成が調整された圧延
鋼板に対し、フェライト+オーステナイトの2相温度域
に加熱したのち水冷する複相化熱処理を施す製造法が適
用できる。複相化熱処理は一種の焼入れ処理であり、そ
の加熱温度は、材料の化学組成によって多少変動する
が、概ね850〜1200℃の範囲である。また、加熱後の冷
却は高温でのオーステナイトがマルテンサイトに変態す
るのに十分な冷却速度とする必要がある。メタルガスケ
ットに加工する圧延鋼板の場合、連続熱処理ラインにお
いて「水冷」することにより十分な冷却速度を確保する
ことができる。
【0027】
【実施例】表1に示す化学組成の鋼を溶製し、インゴッ
トからスラブを経て、板厚3.5mmの熱延板を得た。熱延
板を780℃×6時間加熱したのち、炉冷し、その後酸洗し
て、冷間圧延にて板厚0.7mmの冷延板とした。本発明で
規定する化学組成を有するA01〜A05および比較鋼B02に
ついては、板厚0.7mmの冷延板に「1050℃×均熱1分加熱
→水冷」の条件の複相化熱処理を施し、それぞれ試料A1
〜A5およびB2を得た。比較鋼B01については、板厚0.7mm
の冷延板に「1050℃×均熱1分加熱→水冷」の条件の焼
入れ処理を施して試料B12を採取し、残りについてさら
に550℃×1時間加熱する焼戻し処理を施して試料B11を
得た。比較鋼B03は、従来からメタルガスケット材料と
して用いられているオーステナイト系ステンレス鋼のSU
S301HTであり、これについては板厚0.7mmの冷延板をそ
のまま試料B3とした。各試料の素材硬さ(下記の試験熱
処理前の硬さ)および、マルテンサイト量を表2に示し
ておく。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】上記のようにして作製した各試料につい
て、450〜600℃の範囲の各温度で1時間加熱した後、水
冷する熱処理(以下、試験熱処理という)を施し、試験
熱処理前後の材料硬さを測定した。この試験熱処理後の
常温における硬さの大小関係は、その加熱温度に曝され
ているときの材料の硬さ、すなわち高温における材料硬
さの大小関係とよく対応することがわかっている。つま
り、この試験熱処理後の硬さは、高温における材料硬さ
を評価する指標として用いることができる。図1に結果
を示す。
【0031】図1から、Cuを添加した鋼に複相化熱処理
を施したもの(A1〜A5,B2)は500℃において硬さが顕
著に上昇し、Cu含有量が高いほど各温度での硬さレベル
が高いことがわかる。このうちB2はCu含有量が低いこと
に加え、γmaxが30を下回るためマルテンサイト量が少
なくなりすぎ、メタルガスケット材としての高温硬さが
十分とは言えない。Cuを含有していないB11では高温で
の硬さの上昇が全く見られない。
【0032】500℃付近の高温硬さの上昇は、ε−Cu相
の析出に関係していると考えられる。この500℃付近の
硬化現象が、材料を500℃以上の温度に曝して使用した
場合の耐へたり性の向上に大きく寄与しているものと思
われる。500℃以上の温度、例えば550℃や600℃で長時
間使用した場合、500℃付近の温度を通過する際、ε−C
u相の析出に関係した「硬い」組織状態になるため、炭
化物の析出に伴うマルテンサイトの軟化が相殺され、結
果的に初期の材料硬さの低下が小さく抑えられる(優れ
た耐へたり性を示す)ものと推察される。
【0033】次に、表3に示す化学組成の鋼を溶製し
て、耐へたり性に及ぼすNb,Vの含有量の影響を調べ
た。耐へたり性の評価は、前記A1〜A5と同様の方法で製
造した板厚0.7mmの複相化熱処理材C1〜C6について、550
℃で1時間加熱した後、水冷する試験熱処理を施し、こ
の試験熱処理を施す前後の材料硬さ(Hv)の差ΔHVを調
べることによって行った。図2に結果を示す。
【0034】
【表3】
【0035】図2から、Nb,Vを添加することによって
ΔHVが急激に小さくなることがわかる。Nb+Vの合計量
が0.05質量%以上になると耐へたり性は顕著に向上す
る。さらに、Nb+Vの合計量が0.15質量%以上になると
ΔHVの変化は少なくなり、非常に優れた耐へたり性が安
定して得られるようになる。
【0036】次に、表2に示した各試料(試験熱処理
前)について、180°突き曲げ試験を実施して材料の加
工性を評価した。突き曲げ試験において加工部に割れが
生じない限界の「曲げ半径(mm)/板厚(mm)」の値が小さ
いほど、その材料の加工性は良好であると評価できる。
メタルガスケット用材料に要求される加工性は、この突
き曲げ試験において割れが生じない限界の「曲げ半径(m
m)/板厚(mm)」の値が1.0以下となれば、問題なしと評
価できる。また、この値が0.7以下であれば、非常に優
秀な加工性を有していると評価できる。表4に、突き曲
げ試験結果を示す。
【0037】
【表4】
【0038】表4に示すように、フェライト相の存在し
ないマルテンサイト単相組織を呈する試料B12(焼入れ
処理のまま)では、「曲げ半径(mm)/板厚(mm)」の値が
2.0の場合の突き曲げ加工においても割れを生じる。こ
のような材料はメタルガスケットのビード加工に耐える
ことができないため、B11のように焼戻し処理を施す必
要が生じてしまう。これに対し本発明の試料は、マルテ
ンサイト量が30〜95体積%に調整されたフェライト+マ
ルテンサイトの複相組織を呈するため、メタルガスケッ
ト用材料として十分な加工性を有している。
【0039】表5には、表2に示した試料について、硬
さ,加工性,材料コストおよび総合評価を示す。硬さ
は、550℃で1時間加熱した後、水冷する前記試験熱処理
後の値を示した。加工性は上記の突き曲げによる評価を
示した。材料コストは、原料費の高価なNiの含有量で比
較した。比較例B11は、加工性,材料コストは中庸であ
るが、試験熱処理後の硬さが低めであり、500℃以上の
用途で使用するメタルガスケット材としてはやや性能が
もの足りない。比較例B12は加工性が非常に劣ってお
り、メタルガスケットの加工に不適である。比較例B2は
硬さが特に低く、メタルガスケットの特性が維持できな
い。比較例B3は従来のメタルガスケット材料であり、材
料コストが非常に高い。この材料は550℃での試験熱処
理後の硬さが比較的高いが、これは初期(試験熱処理
前)の硬さレベルが高いためであり、500℃以上の高温
域で使用した場合は「へたり」が生じて特性低下をきた
す(図1参照)。本発明例であるA1〜A3は、硬さ,加工
性および材料コストの3点をバランスよく満たしてお
り、また前述のとおり耐へたり性にも優れるため、500
℃以上の高温域で使用するメタルガスケット用材料とし
て非常に適している。
【0040】
【発明の効果】以上のように、本発明のメタルガスケッ
ト用材は、フェライト+マルテンサイトの複相組織ステ
ンレス鋼に優れた高温強度と耐へたり性を付与したもの
であり、従来のオーステナイト系材料より材料コストが
大幅に低減しているとともに、製造工程も冷間圧延率の
厳密なコントロールが不要であり、安定した品質のもの
がが容易に得られるというメリットがある。特に本発明
は、500℃以上の高温に曝される部位に使用しても優れ
た耐へたり性を示すという、これまでにないメタルガス
ケット用ステンレス鋼材を提供するものである。したが
って本発明は、性能およびコストの両面で、メタルガス
ケット用途におけるステンレス鋼材の適用範囲を拡大
し、その普及に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】材料を1時間加熱後水冷する試験熱処理の加熱
温度と材料硬さHv20の関係を示すグラフである。
【図2】試験熱処理前・後の材料硬さの差ΔHVに及ぼす
Nb+Vの含有量の影響を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤本 廣 山口県新南陽市野村南町4976番地 日新製 鋼株式会社技術研究所内 Fターム(参考) 3J040 EA18 FA02 HA01 HA02 HA06 HA17 HA30 4K037 EA02 EA05 EA12 EA13 EA15 EA17 EA19 EA20 EA27 EA28 EB14 FM04

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、C:0.05〜0.20%,Mn:0.1〜
    2.0%,Ni:0.1〜2.0%,Cr:12.0〜16.0%,Cu:0.3〜
    3.0%,B:0〜0.010%(無添加を含む),Mo:0〜1.0%
    (無添加を含む),Si:0〜2.0%(無添加を含む)を含
    有し、Nb:0.05〜1.0%およびV:0.05〜1.0%の1種ま
    たは2種を合計で0.05〜1.0%含有し、残部がFeおよび
    不可避的不純物からなり、マルテンサイト量が30〜95体
    積%に調整されたフェライト+マルテンサイトの複相組
    織を呈する耐へたり性に優れたメタルガスケット用ステ
    ンレス鋼材。
  2. 【請求項2】 Cu含有量が1.0〜3.0質量%である請求項
    1に記載の鋼材。
  3. 【請求項3】 B含有量が0.001〜0.010質量%である請
    求項1または2に記載の鋼材。
  4. 【請求項4】 Mo含有量が0.05〜1.0質量%である請求
    項1または2に記載の鋼材。
  5. 【請求項5】 Si含有量が0.1〜2.0質量%である請求項
    1または2に記載の鋼材。
  6. 【請求項6】 下記(1)式で定義されるγmaxの値が30〜
    95となる化学組成に調整された圧延鋼板に対し、フェラ
    イト+オーステナイトの2相温度域に加熱したのち水冷
    する複相化熱処理を施す、請求項1〜5に記載の鋼材の
    製造法。 γmax=420C+470N+23Ni+7Mn+9Cu−11.5Cr−11.5Si−12Mo−52Al−23V−47 Nb+189 ・・・(1)
JP5575199A 1999-03-03 1999-03-03 耐へたり性に優れたメタルガスケット用ステンレス鋼材およびその製造法 Withdrawn JP2000256802A (ja)

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