JP3521852B2 - 複相組織ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents

複相組織ステンレス鋼板およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高強度でありなが
ら加工性に優れ、かつ高疲労特性を有する安価な複相組
織ステンレス鋼板およびその製造方法に関するものであ
る。
【0002】本発明にかかるステンレス鋼板は、多種形
状への加工後に使用されるバネないしバネ部品、バネ性
を必要とする電子機器、機械部品全般への使用に適す
る。より具体的には、自動車やオートバイのエンジン用
ガスケットに最適である。
【0003】
【従来の技術】エンジン用ガスケットは燃焼ガス、冷却
水、潤滑油を密閉することを目的としてシリンダーヘッ
ドとブロックとの間の隙間に挿入されるシール部品であ
り、一般的にはエンジンの燃焼室(形状、数)に対応す
る穴 (ポア) の開いた複数(1〜3)枚のステンレス鋼薄板
を重ねた外観からなる。
【0004】その基本構造はポアの周囲にプレス加工等
により円環状の凸部(ビード)が形成され、燃焼に伴い
発生する上述の隙間をその反発力で密閉するものであ
る。従来、ガスケット用材料には高強度でありながら加
工性に優れることが要求され、Cr、Niを主成分とするSU
S301、SUS304等を中心とする準安定オーステナイト系ス
テンレス鋼の調質圧延材が使用されてきた。
【0005】この材料は加工誘起変態による高硬度中間
相であるマルテンサイト相の生成により加工硬化率が大
きく、圧延により比較的容易に高強度が得られる。ま
た、同変態に伴う変形部の硬化によりネッキング (くび
れ) が抑制されて高い均一伸びを示し、加工性にも優れ
る。
【0006】なお、材料の強度と加工性は一般的に相反
する特性であり、高強度化に伴い必要な加工性を維持す
ることが難しくなる。これらのことは、準安定オーステ
ナイト鋼が極めて優れた材料であることを示す。しか
し、高価なNiを多量に含有するため、同材も高価なもの
となっていた。また、強度が圧延率、圧延温度等の条件
に強く依存するため安定した強度を得ることが難しく、
品質的にバラッキが大きいという問題もあった。
【0007】これらの問題に際して、高価なNiを殆ど含
有せず、10〜20% 程度のCrを主成分とするステンレス鋼
の焼入材の適用も特開平7-278758号公報等において検討
され始めている。このステンレス鋼は室温において本来
はフェライト相構造となるはずであるが、Ac1変態点以
上に加熱、高温でのオーステナイト相領域から急冷(焼
入れ) することにより室温において侵入型固溶元素(C
、N)が過飽和に固溶した高硬度中間相であるマルテン
サイト相に変態し、高硬度が得られる。なお、Ac1変態
点は加熱時のオーステナイト相への変態開始温度であ
る。
【0008】しかし、一般にマルテンサイト単相組織と
した場合、焼入まま材は硬くなり過ぎてその後の製品形
状への加工が難しい場合が多い。このため、加工性改善
を目的とした(500 ℃前後での)焼戻しが必要となる。
ただし、この焼戻しが炭化物等の析出による脆化やCr欠
乏相発生によりステンレス鋼として必要な耐食性を損な
う原因になるとともに、製造コストを上昇させる原因と
なっていた。
【0009】これらの状況から、本発明者らは特開2000
−109957号公報 (特願平10-282758号) において、侵入
型固溶元素の量を調整した10〜17% のCrを含有するステ
ンレス鋼をAc1変態点以上のオーステナイトとフェライ
トの二相温度域から焼入することで、硬度調整されたマ
ルテンサイトと残存するフェライトの二相組織とし、そ
の相比率の最適化により焼戻しを施すことなく高硬度と
優れた加工性を両立させたガスケット用材料を提案して
いる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかし、最近のエンジ
ンはユーザニーズ等から高出力傾向にあると同時に、厳
しい排ガス規制に伴う燃費向上 (環境問題) に対応する
ため様々な方法での軽量化も同時に進められている。こ
のような軽量化は、エンジン剛性が低下し、燃焼に伴い
シリンダーヘッドとブロックとの間に発生する隙間が増
大する傾向にあることを示す。
【0011】すなわち、ガスケットの使用環境は更に過
酷となっている。これに伴いガスケット用材料にも上述
のように安価かつ高強度で加工性に優れるとともに、繰
返して付与される変動応力(隙間の増減)に耐える高疲
労特性を有することも要求されている。
【0012】本発明の課題は、安価で高強度かつ加工性
に優れるとともに、高疲労特性を有する例えばバネ用と
して有用なステンレス鋼板とその安定供給を可能とする
製造方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】ところで、少なくとも前
述のようなCrを主成分とする二相組織ステンレス鋼板
に、増大する隙間に対応して更にビードを高くする等の
厳しい加工を施す場合、ガスケットへの加工自体が可能
であるばかりでなく最も厳しい加工が行われるビード部
の表層においてもシワないし微少割れ等の欠陥の発生が
みられない材料が求められる。そのような欠陥のみられ
る材料を疲労試験に供した場合、表層部の欠陥が応力集
中により急激に成長し、ガスケットには早い段階で板を
貫通する割れを生じるおそれがある。
【0014】なお、表層部の欠陥は硬質なマルテンサイ
ト相と軟質なフェライト相の結晶粒界で主に生じると考
えられる。すなわち、ある限度以上の加工を施した場
合、ガスケットへの加工は可能であっても、表層にはそ
のような欠陥が不可避的に発生すると考えられる。しか
し、このことは逆に加工を伴い、加工部に変動応力が繰
返し付与されるようなガスケット、更には同様の状況で
使用される多種バネないしバネ部品の長寿命化には加工
部の表層部に発生する欠陥、言い換えると疲労破壊起点
の発生を抑制することが極めて効果的であることを示す
ものである。
【0015】すなわち、本発明は、Crを主成分とするス
テンレス鋼に対し、焼入に先立つAc1変態点以上の温度
への加熱、保持を、最も強力なオーステナイト安定化元
素の一つである窒素を含むガス雰囲気中で行うことによ
り、表層部を窒化してオーステナイト相を形成すること
で材料の加工性が大幅に改善されるとともに、加工部表
層での欠陥の発生が抑制され疲労特性が飛躍的に向上す
ることを発見したことにもとづくものである。
【0016】この場合、焼入後の (内部) 組織は従来と
同様のマルテンサイトとフェライトの二相とともに、マ
ルテンサイト単相としても充分な性能が得られる。N は
C とともに最も強力なオーステナイト安定化元素であ
り、溶解時に両元素ないしその何れか一方を多量に固溶
させること等により、高価なNiを殆ど含有することなく
材料をオーステナイト単相化することは実験室的には可
能である。
【0017】ただし、通常の工業的溶解装置でそのよう
な量のN およびC を固溶させることは困難であり、特殊
な装置を用いた場合には極めて高価な材料になると考え
られる。仮に固溶させたとしても、その後の板製造が極
めて困難となる。
【0018】本発明は、通常使用される工業的装置での
製造が可能であるとともに、他の製造工程に負担をかけ
ることなく、最終の焼入工程において安価なCrを主成分
とするステンレス鋼の表層部のみをオーステナイト化す
ることで (準安定) オーステナイト系ステンレス鋼と同
等以上の高性能を得るものである。
【0019】ここに、本発明はつぎの通りである。 (1)質量%で C+N : 0.06%以上、0.50% 以下 ( ただし、 0.105 %以下
は除く ) Si : 0.1% 以上、2.0%以下 Mn : 0.1% 以上、3.0%以下 Cr : 10.0%以上、17.0% 以下 Ni : 1.0% 以下 Cu : 2.0% 以下 残部はFeおよび不純物元素から成る化学組成を備え、マ
ルテンサイト単相またはマルテンサイトとフェライトの
二相組織からなる材料の表層部をオーステナイト単相ま
たは同相を含む複相組織としたステンレス鋼板。
【0020】(2) 上記(1) 記載の化学組成を備えた、
マルテンサイト単相またはマルテンサイトとフェライト
の二相組織からなるステンレス鋼板を、所定の板厚に減
厚後、窒素ガスまたは窒素ガスと還元性ガス (例:水
素) を混合した雰囲気中においてAc1変態点以上に加
熱、保持後、焼入することを特徴とする複相組織ステン
レス鋼板の製造方法。
【0021】(3) 上記(1) の複相組織ステンレス鋼を
用いたエンジン用ガスケット。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明において、化学組成および
製造工程を上述のように規定した理由について説明す
る。本明細書において、化学組成を規定する「%」は、
とくにことわりのない限り「質量%」である。
【0023】C +N: 0.06%以上、0.50% 以下 C およびN は強力なオーステナイト安定化元素であると
ともに侵入型固溶元素でもあり、主にマルテンサイト相
を硬化する。それらの効果は両元素でほぼ同等と考えら
れる。両元素合計の含有量が0.06% 未満では焼入後にHv
300 以上の必要な硬度を得ることが難しい。逆に過度に
含有した場合、硬くなり過ぎるため、その後の板製造、
製品への加工が難しくなる。また、0.50% を超えた含有
量の増加により窒化が抑制され、表層部のオーステナイ
ト化が難しくなる。
【0024】したがって、両元素合計含有量を0.06% 以
上、0.50% 以下とした。更に好ましくは、0.10% 以上、
0.40% 以下である。なお、両元素合計の含有量は窒化後
の「表層部に窒素の濃化した」材料での平均値とした。
【0025】Si:0.1%以上、2.0%以下 Siは固溶強化元素であり、C +N 含有量により調整が必
要となるが含有量0.1%未満では焼入後にHv300 以上の硬
度を得ることが難しい。ただし、過度の添加は材料を硬
化し過ぎるとともに、介在物等を形成して板製造、製品
への加工が難しくなる。また、Siはフェライト安定化元
素であるとともに、窒素固溶量を減少して窒化を抑制す
ると考えられ、表層部のオーステナイト化を阻害する。
したがって、含有量を0.1%以上、2.0%以下とした。更に
好ましくは、0.15% 以上、1.8%以下である。
【0026】Mn: 0.1%以上、3.0%以下 Mnはオーステナイト安定化元素である。また、窒素固溶
量を増加して窒化を促進すると考えられ、表層部のオー
ステナイト化のために有効な元素であり、含有量0.1%以
上が必要である。ただし、過度に添加した場合、介在物
等を形成してその後の板製造、製品への加工が難しくな
るとともに、材料がオーステナイト化して逆に焼入後に
必要な硬度を得ることが困難になる。したがって、Mn含
有量を0.1%以上、3.0%以下とした。更に好ましくは、0.
3%以上、2.6%以下である。
【0027】Cr: 10.0% 以上,17.0% 以下 Crはステンレス鋼の基本元素であり、有効な耐食性を得
るためには10.0% 以上添加する。また、窒化を促進する
と考えられるものの、フェライト安定化元素であり、過
度の添加は表層部のオーステナイト化を阻害する。した
がって、その上限を17.0% 以下とした。好ましくは、1
6.0% 以下であり、更に好ましくは15.6%以下である。
【0028】Ni: 1.0%以下 Niは最も強力なオーステナイト安定化元素であり、Mn、
Cu含有量により調整が必要となる。ただし、上述のよう
に高価な元素であるとともに、窒化を抑制すると考えら
れる。したがって、その含有量を1.0%以下とした。更に
好ましくは、 0.9% 以下である。
【0029】Cu: 2.0%以下 Cuはオーステナイト安定化元素であり、Mn、Ni含有量に
より調整が必要となる。窒化への影響は小さいと考えら
れる。ただし、過度に添加した場合、粒界等に析出して
板製造、製品への加工が難しくなる。したがって、その
含有量を2.0%以下とした。更に好ましくは、1.3%以下で
ある。
【0030】残部はFeおよび不純物元素からなる。な
お、これらの成分以外に工業的側面より添加される元
素、例えば溶製時に脱酸剤として使用されるCa、Al、Ti
あるいはREM(希土類金属)、熱間加工性の改善が見込ま
れる B、耐食性を大幅に向上することが期待されるMo等
を必要に応じて総計で1.0%以下含有しても差し支えな
い。
【0031】次に、出発材料の組織の限定理由について
説明する。出発材料の組織をマルテンサイト単相または
マルテンサイトとフェライトの二相組織とするのは、高
硬度のマルテンサイト相により焼入後の材料を強化する
ためである。
【0032】なお、材料の硬度はガスケットを完全に圧
縮した後にも充分なビード高さを維持可能と考えられる
Hv300 以上が望ましい。また、同硬度を満たした上で材
料が優れた加工性を示す相比率は、マルテンサイト量40
体積% 以上90体積% 以下、残部フェライト相の二相状態
であるが、表層部窒化後にはマルテンサイト量30体積%
以上、残部フェライト相の範囲に拡大した。
【0033】材料の表層部をオーステナイト単相または
同相を含む複相組織とするのは、加工性が改善されると
ともに、加工にともなう表層でのシワ、微小割れ等の欠
陥発生が抑制されて製品加工後に高疲労特性を得られる
ためである。
【0034】オーステナイト相を不安定化して同相を含
む複相組織とするのは、加工誘起マルテンサイト変態で
の変形部の硬化により表層部での欠陥発生の更なる抑制
が期待されるためである。
【0035】ここに「表層部」は窒化処理によってオー
ステナイト相が形成される領域であり、通常表層より20
μm、好ましくは15μm程度の深さの領域である。実験
結果より、表層部のオーステナイト相比率は10体積% 以
上で充分な効果が認められた。また、その厚さは3 μm
以上とすることが望ましい。
【0036】次に本発明にかかる製造方法における各工
程の限定理由について説明する。まず、本発明にあって
は、マルテンサイト単相またはマルテンサイトとフェラ
イトの二相組織からなるステンレス鋼板を出発材料とす
るが、これは所定の強度を確保するためと、経済性を考
慮した結果である。
【0037】このようにして用意した出発材料を、例え
ば熱間圧延、冷間圧延等適宜手段で所定厚さに減厚し、
Ac1変態点以上の温度域に加熱後、焼入するのはマルテ
ンサイト相を得るためである。実験結果より、加熱温度
は 850℃以上、焼入時の冷却速度はマルテンサイト変態
を完了すると考えられる200 ℃程度までを10℃/秒以上
とすることが望ましい。加熱、保持中の雰囲気を窒素ガ
スまたは窒素ガスと還元性ガスの混合状態とするのは、
窒素が最も強力なオーステナイト安定化元素の一つであ
り、窒化により表層部をオーステナイト単相または同相
を含む複相組織とすることが可能なためである。窒素ガ
ス単独の場合、一部をArガス等の不活性ガスで置換して
もよい。
【0038】鋼材成分、表面被膜状態等による違いがあ
るものの、窒化は加熱温度が高いほど、保持時間が長い
ほど進行する。したがって、加熱温度は先述のAc1変態
温度も併せて考えるに900 ℃以上、工業的側面より1200
℃以下、保持時間は少なくとも10秒以上、工業的側面よ
り300秒以下が望ましい。水素等の還元性ガスを混合さ
せるのは窒化を阻害する酸化被膜等を減少させるためで
ある。
【0039】したがって、上記熱処理の直前ないし前工
程では、必要に応じて酸洗による被膜除去と低温での乾
燥ないし還元性ガス雰囲気下での予備焼鈍を施してもよ
い。このようにして得られる本発明にかかる複相組織ス
テンレス鋼板は、代表的にはガスケットとして用いられ
るが、その他自動車等のホーン (振動板) 等にも用いる
ことでその優れた特性を発揮することができる。
【0040】
【実施例】表1に示す7種の化学組成からなるCrを主成
分とするステンレス鋼を10Kgの鋳塊にて溶製し、熱間圧
延、焼鈍、脱スケール後、冷間圧延および軟化焼鈍を繰
返して厚さ0.25mmの冷間圧延板を作成し、次の焼入熱処
理を施した。
【0041】熱処理雰囲気は 50 体積% 窒素と 50 体積
% 水素の混合ガスを主として、一部で100%窒素および真
空についても実施した。加熱温度は 900〜1200℃とし、
各温度までの加熱速度を20℃/秒にて固定した。加熱後
の保持時間は30秒を主として、一部180 秒でも実施し
た。その後の焼入れに際しての冷却速度は20℃/秒を主
として、一部10℃/秒でも実施した。
【0042】本実施例に関しては焼入熱処理前に酸化皮
膜等の除去を目的とした特別な処理を施していない。焼
入熱処理後の薄鋼板について、窒素含有量、炭素含有
量、相比率、硬さ、曲げ加工性および疲労強度を調査し
た。
【0043】窒素含有量は材料全体の平均値を化学分析
にて測定した。相比率はそのままの板表面 (表層部) お
よび片面からのエッチングにより板厚を半分まで除去し
た後の表面 (内層部) について、X線回折および光学顕
微鏡でのミクロ組織観察により測定した。
【0044】腐食後の試験片断面をSEM 観察し、窒化さ
れた表層部の厚さも測定した。硬さは上述の表層部およ
び内層部での板表面について、9.8Nの加重でのビッカー
ス硬度を測定した。
【0045】曲げ加工性は圧延方向と平行に採取した幅
(w)20mm ×長さ(L)60mm の短冊状試験片を用いてJIS-Z2
248 に規定されているV曲げ試験を行い、曲げ加工可能
な最小半径(R)に対する薄鋼板の厚さ(t:0.25mm)の比
(R/t)を測定した。
【0046】疲労強度は圧延方向と平行に採取したw10m
m ×L40mm の短冊状試験片に、図1に寸法を付して示す
ようなビード加工を施した試験片を用いて、片振り平面
曲げ試験で106 回後に破断に至らない最大の曲げ応力を
測定した。
【0047】表2に各特性の調査結果を示す。表2に示
すように本発明鋼の組成を満たす例No.1〜6、8〜13は
表層に5 μm以上の厚さからなるオーステナイト相また
は同相を含む複相組織からなる部分が形成され、Hv300
を越える高硬度と1 〜1.4 の優れた曲げ加工性が両立す
るとともに、800 〜1000N/mm2 の高疲労強度を示す。特
に内層部がマルテンサイト単相となった例No.12 につい
ても、窒素雰囲気下での焼入を施していない従来の二相
組織材に対応する例No.7を越える高性能を示した。
【0048】窒化による表層部オーステナイト化は加熱
温度の上昇とともに、保持時間の延長、窒素ガス単独に
比べて窒素ガスと水素ガスの混合状態とすることでも進
行することが確認され、優れた曲げ加工性を示すと同時
に疲労強度が上昇する傾向も認められた。
【0049】これらに対して、窒素雰囲気下での焼入を
施していない例No.7は表層にオーステナイト相含む組織
からなる部分が形成されず、二相組織化によりHv300 を
超える高硬度と1.6 の優れた曲げ加工性を示すものの、
ビード加工部の表層には多くの微少割れが発生して疲労
特性が半減した。
【0050】同様に例No.14 はマルテンサイト単相組織
からなり、Hv460 前後の高強度を示したものの、曲げ加
工性が極端に劣るとともに、疲労強度も更に低下した。
本発明鋼の組成から外れた材料に関して、例No.15 〜16
は硬度がHv300 に未達であるとともに、疲労強度も300
〜400N/mm2の低い値に留まった。更に、例No.17 はHv30
0 を越える高強度を示すものの、曲げ加工性が劣るとと
もに疲労強度が同等の値に留まった。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【発明の効果】本発明により、多種形状への加工後に使
用されるバネないしバネ部品、バネ性を必要とする電子
機器、機械部品全般に適し、特にエンジン用ガスケット
に最適な高強度でありながら加工性に優れ、かつ高疲労
特性を有する安価な複相組織ステンレス鋼板を製造コス
ト上昇を招くことのない一般的製造工程で安定供給する
ことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ビード加工後の疲労試験片形状を示す模式図で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 御所窪 賢一 新潟県上越市港町2丁目12番1号 株式 会社住友金属直江津内 (72)発明者 青木 正紘 新潟県上越市港町2丁目12番1号 株式 会社住友金属直江津内 (56)参考文献 特開2001−140041(JP,A) 特開 平7−316740(JP,A) 特開 平10−130791(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60 C21D 6/00 102 C21D 8/02

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で C+N : 0.06%以上、0.50% 以下 ( ただし、 0.105 %以下
    は除く ) Si : 0.1% 以上、2.0%以下 Mn : 0.1% 以上、3.0%以下 Cr : 10.0%以上、17.0% 以下 Ni : 1.0% 以下 Cu : 2.0% 以下 残部はFeおよび不純物元素から成る化学組成を備え、マ
    ルテンサイト単相またはマルテンサイトとフェライトの
    二相組織からなる材料の表層部をオーステナイト単相ま
    たは同相を含む複相組織としたステンレス鋼板。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の化学組成を備えた、マル
    テンサイト単相またはマルテンサイトとフェライトの二
    相組織からなるステンレス鋼板を、所定の板厚に減厚
    後、窒素ガスまたは窒素ガスと還元性ガスを混合した雰
    囲気中においてAc1変態点以上に加熱、保持後、焼入す
    ることを特徴とする複相組織ステンレス鋼板の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 請求項1の複相組織ステンレス鋼板を用
    いたエンジン用ガスケット。
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