JPH0418094B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コ
ンクリート造の建築物の、柱、梁等の構造部材を
成型するのに用いられるコンクリート打設用型枠
に関する。

（従来の技術） 周知のように、鉄筋コンクリート造の建築物の
柱、梁等の構造部材は、主筋及びせん断補強筋と
いわれる鉄筋と、コンクリートを主な構成要素と
しており、その施工は鉄筋（主筋及びせん断補強
筋）を現地において加工し組み立てた後、木製又
は鋼板製の型枠を指定された寸法、形状通りに鉄
筋を囲んで組み立て、その内部にコンクリートを
打設し、コンクリートが硬化した後、型枠を解体
することによつて構造部材を成型するのが一般的
である。

しかしながら、このような施工においては、鉄
筋の施工（即ち鉄筋の加工や組み立て）及び型枠
の施工（即ち型枠の形成や組み立てや解体）はい
ずれも多大な手間を要すると共に、これらの作業
はいずれも熟練を要し、時として鉄筋の配置間隔
にばらつきを生じたり、鉄筋と型枠の離隔寸法
（いわゆるかぶり部分の厚さ）が確保できない等、
施工精度もあまり良くなく、構造部材の耐震性能
を確保する上でも問題があつた。

このような問題を解決する手段として、従来、
鉄筋の施工に関しては鉄筋先組み工法、又型枠の
施工に関してはプレキヤスト捨型枠による施工が
知られており、これらを単独で又は両者を組み合
わせて施工されることがある。鉄筋先組み工法
は、あらかじめ鉄筋加工場等において指定された
寸法、形状に鉄筋を加工して組み立て、これを所
定位置に搬入して取り付けるのみとする工法で、
これによれば鉄筋の施工精度の向上及び施工の省
力化を図ることができる。又、プレキヤスト捨型
枠は、あらかじめ型枠製作工場等において指定さ
れた寸法、形状のコンクリート製の型枠を成型
し、これを施工場所に搬入して所定位置に取り付
け、内部にコンクリートを打設し、コンクリート
が硬化した後は型枠は解体せずそのまま構造部材
の一部となものである。これによれば、型枠解体
の作業が省けると共に型枠の組み立ても容易にな
り、作業スペースもさほど要しない。さらに型枠
の製作に当つては充分な品質管理を行なうことが
できるから、型枠の精度も向上する。

（発明が解決しようとする問題点） しかしながら、上記のような施工によれば、鉄
筋の施工に関しては前述の問題点はほぼ解決でき
るものの、一方型枠の施工に関しては次のような
問題点を残している。即ち、プレキヤスト捨型枠
は、内部にコンクリートが打設され、コンクリー
トが硬化した後は構造部材の一部となり、構造部
材の耐震性能の一翼を担うものであり、そのため
に打設されたコンクリートと強固に固着し、一体
化される必要があるが、この点において従来のプ
レキヤスト捨型枠はその内面が平滑面であるため
に充分とはいえないという問題がある。又、従来
のプレキヤスト捨型枠は、型枠を構成する各面が
薄い板状の無筋コンクリートであるから型枠とし
ての強度も低く、コンクリート打設時には型枠の
変形を防止するための補強材や、型枠自体の重量
及びコンクリートの荷重を支えるために充分な支
持をする必要があり、さらに運搬時や取り付け作
業時にひび割れを生じやすいといつた取り扱いの
容易さという点においても難点がある。

なお、プレキヤスト捨型枠のコンクリート内部
に、先組みされた主筋及びせん断補強筋を埋設し
たものが梁用の型枠として知られている。これに
よれば、上記の問題点は軽減されるものの、一方
において多量の鉄筋が埋設されコンクリートの厚
みが大きいことから型枠の重量が増大し、型枠の
運搬や移動、高所への揚重に対してクレーン等の
機械が大がかりになり、特に大規模、高層の建築
物においてはそのための手間、費用が増大すると
いう欠点がある。このことは構造部材そのものを
プレフアブ化した場合においてはさらに顕著であ
る。

又、プレキヤスト捨型枠にせん断補強筋のみを
一体に形成することにより、鉄筋の施工の省力化
と型枠強度を確保するという手段も考えられよう
が、この場合においては鉄筋の先組み工法は採用
できず、又前述の型枠とコンクリートの一体化と
いう点においても問題を残している。

本発明は上記の事情を鑑みてなされたもので、
打設されたコンクリートと強固に一体化すると共
に、軽量でかつ適度の強度を有し、取り扱いの容
易なコンクリート打設用型枠を提供することを目
的とする。

（問題点を解決するための手段） 本発明は、内部に梁主筋４およびスターラツプ
筋３から構成される梁鉄筋が配置され、さらに該
梁鉄筋を埋設するようにコンクリートが打設され
ることによりこの打設コンクリートと一体となつ
て鉄筋コンクリート造の梁を構成するコンクリー
ト打設用型枠であつて、捨型枠として用いる断面
略Ｕ字状の型枠Ａの内面における底面または両側
面の少なくとも一方に、前記スターラツプ筋３の
径寸法と同等以上の深さで前記径寸法に対し充分
な幅を有しかつ型枠Ａの断面形状に沿つた方向に
延びる溝２を前記スターラツプ筋の配設ピツチと
同一ピツチに形成すべく複数のリブ１を形成して
成ることを特徴とするものである。

（作用） 本発明による型枠は、あらかじめ型枠製作工場
において指定された寸法、形状に製作され、設置
場所において各構造部材の型枠同士を組み合わせ
て所定位置に取り付けられ、又鉄筋をその内部に
配設し、コンクリートを打設することによつて構
造部材を成型する。この時、スターラツプ筋の配
筋ピツチと一致するピツチの溝を有するように型
枠内にリブを形成しておく。

型枠は捨型枠としてそのまま構造部材の一部、
即ちかぶり部分となるが、ここにおいて型枠内面
に形成されたリブにより、型枠とコンクリートの
接触面積が大きいこと及び型枠とコンクリートが
相互に噛み合う状態となること、さらには内部に
配置される梁鉄筋（スターラツプ筋）と型枠とが
打設コンクリートを介して係合状態となることに
より、型枠と打設コンクリート、さらに梁鉄筋と
型枠とが共に強固に固着し、一体化される。又、
このリブは型枠を補強してその変形を防ぎ、型枠
としての強度を高める機能を併せ持つ。

（実施例） 本発明の実施例を図面を参照して説明する。第
１図ないし第４図は本発明による梁型枠として使
用する型枠Ａの構成を示す。型枠Ａはコンクリー
ト製で、断面がＵ字形をなす長尺の型枠であつ
て、その内方各面に該型枠Ａの断面形状に沿つた
方向に延びる複数のリブ１，１，…が形成され、
これによりそれらリブ１間には同じく型枠Ａの断
面形状に沿つた方向に延びる溝２，２，…が形成
されている。型枠Ａの各部の寸法及び形状等は、
この型枠Ａによつて成型される梁の要求される寸
法、強度等によつて決定されるものであり、又リ
ブ１により形成する溝２の形状及び相互の間隔等
は、この型枠Ａの内部に配設される梁鉄筋のせん
断補強筋（スターラツプ筋）の外径及び取り付け
間隔等によつて決定されるものである。すなわち
第５図に示すように、溝２の間隔は、この型枠Ａ
の内部に配置される梁鉄筋のスターラツプ筋３の
配筋ピツチと一致するように設定される。また、
これら溝２は、この型枠内に配置される梁鉄筋の
スターラツプ筋３の径寸法に対し同等以上の深さ
で、かつ前記径寸法に対し充分な幅を有したもの
となつている。該溝２内に打設コンクリートが充
分に回り込めるようにするためである。なお、型
枠Ａのコンクリートの厚みは、型枠としての強度
も勘案して決定される。

上記の構成による型枠Ａは、従来のプレキヤス
ト捨型枠と同様に、柱型枠及び床型枠と組み合わ
された後、梁鉄筋が第５図ないし第７図に示すよ
うにリブ１相互間の溝２にスターラツプ筋３が配
置され、かつ梁下主筋４が型枠Ａの底面に形成さ
れたリブ１の上面５に当接するように型枠Ａの内
部に配設される。つづいて型枠Ａの内部にコンク
リートを打設することにより、型枠Ａは梁を成型
し、型枠Ａはそのまま梁のかぶり部分となるが、
ここにおいてリブ１は型枠Ａとコンクリートの接
触面積を拡大せしめ、又型枠Ａとコンクリートが
相互に噛み合う状態となるために型枠Ａとコンク
リートは強固に固着することとなる。しかも、ス
ターラツプ筋３が型枠Ａの溝２内に係合状態に入
り込むので、梁鉄筋と該型枠Ａとの一体化も強固
なものとなる。したがつて、全体として、これら
型枠Ａ，コンクリート，梁鉄筋といつた梁構成要
素相互間の強固な一体化が実現される。さらにリ
ブ１は型枠を補強して型枠の変形を防止するか
ら、コンクリート打設時において型枠のはらみを
防止する補強材は不要となる。

なお、型枠Ａの材料はフアイバーコンクリート
が望ましい。フアイバーコンクリートはスチール
フアイバー、カーボンフアイバー、グラスフアイ
バー等のようなコンクリート補強用繊維を混入し
たコンクリート材料で、普通コンクリートに比べ
引張り及びせん断力に対する強度、靭性が著しく
良好であるから、これを型枠材料に使用した場合
はかぶり部分の強度が増し、地震時の曲げやせん
断力によつてかぶり部分が破壊され、剥離するこ
とが改善され、梁の耐震性能が向上する。それと
共に、フアイバーコンクリートで型枠を形成する
ことにより型枠としての強度がさらに高まること
から、型枠の厚みを充分に薄くすることが可能
で、より軽量な型枠を製作することができ、運
搬、揚重、取り付け作業等において取り扱いが一
層容易となる。

次に本発明の別の実施例である、プレストレス
を導入した型枠Ｂについて第８図を参照して説明
する。型枠Ｂは、型枠コンクリートの内部に引張
力を与えられたPC鋼線６が所定位置に埋設され
ている。PC鋼線６の両端部は、型枠Ｂの両端部
に取り付けられている定着用鋼板７，７に固定さ
れている。

PC鋼線６は型枠Ｂの製作時に、いわゆるプレ
テンシヨン工法によつて型枠Ｂのコンクリートに
埋設され、型枠Ｂの引張応力の生ずる部分にあら
かじめ圧縮力を与えることによつて型枠Ｂの引張
強度を増加せしめ、曲げ抵抗を増大せしめるもの
である。これにより、型枠Ｂはスパンの大きい建
築物に対してもコンクリート打設時に受ける荷重
を型枠自体で充分支えることができるから、従来
多数必要とされていた補強材や支持材が省略もし
くは大幅に削減することができる。

さらに型枠Ｂの材料を前述のフアイバーコンク
リートとすれば、上記の効果は一層高まると共
に、型枠製作時においてはPC鋼線を緊張した時
に生ずることのある型枠の割裂を防止することが
できる。

以上本発明の実施例について説明したが、本発
明は上記の実施例に限定されるものではなく、例
えば、リブの形状は第９図に示すように格子状と
しても良い。ただしその場合でも、この格子状の
リブは型枠内面の底面あるいは両側面の少なくと
も一方の面のみに形成するようにし、スターラツ
プ筋３を係合させるための溝２を有する面は必ず
形成するようにする。図示例は型枠内面の両側面
のみリブ１を格子状に形成したものである。又、
この型枠は構造部材が必要とする多様な形状や強
度に対応できるものである。さらに本発明は、型
枠の外表面に内装仕上げ材、例えば、石、タイル
等を先付けすることによつて内装工事の省力化も
図ることができる。

（発明の効果） 以上詳細に説明したように、本発明はプレキヤ
スト捨型枠の内面に、該型枠内に配置される梁鉄
筋のスターラツプ筋の径寸法と同等以上の深さで
前記径寸法に対し充分な幅を有しかつ該型枠の断
面形状に沿つた方向に延びる溝を前記スターラツ
プ筋の配設ピツチと同一ピツチに形成すべく複数
のリブを形成しているから、コンクリートと強固
に一体化して構造部材の耐震性能を充分に確保
し、又比較的軽量でかつ強度も高いから取り扱い
が容易である上、コンクリート打設時における型
枠の膨らみや開き等の変形を有効に防止して補強
部材等の使用も不要とし、型枠施工の省力化を図
ることができる等の効果を有する。また特に、こ
の型枠内に設置される梁鉄筋のスターラツプ筋が
溝内に打設コンクリートを介して係合されるの
で、このスターラツプ筋と型枠、すなわち梁鉄筋
と型枠との一体化も強固なものとなり、これによ
り型枠、コンクリート、梁鉄筋といつた梁構成部
材相互間のより強固な一体化が図れ、かつコンク
リートのかぶりが保たれるといつた効果を奏す
る。又、型枠の材料をフアイバーコンクリートと
すれば、型枠の強度がさらに高まり、又より軽量
とすることができるから、構造部材の耐震性能を
向上させると共に、取り扱いが一層容易となる。

さらに型枠にプレストレスを導入すれば、スパ
ンの大きい建築物に対してもコンクリート打設時
における型枠の支持材が不要となり、作業の省力
化及び工期短縮といつた施工性の向上をより一層
図ることができる等の効果を有する。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第９図は本発明の実施例を示すも
のである。第１図ないし第４図は型枠Ａの構成を
示し、第１図はその全体斜視図、第２図は中央部
分を省略した正断面図、第３図は側面図、第４図
は中央部分を省略した平面図である。第５図ない
し第７図は型枠Ａと梁鉄筋が組み合わされた状態
を示し、第５図はその部分正断面図、第６図は側
面図、第７図は部分平面図である。第８図は型枠
Ｂを示す全体斜視図である。第９図は、リブの形
状を格子状とした場合の実施例の全体斜視図であ
る。 １……リブ、２……溝、３……スターラツプ
筋、４……梁主筋、６……PC鋼線。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 内部に梁主筋４およびスターラツプ筋３から
   構成される梁鉄筋が配置され、さらに該梁鉄筋を
   埋設するようにコンクリートが打設されることに
   よりこの打設コンクリートと一体となつて鉄筋コ
   ンクリート造の梁を構成するコンクリート打設用
   型枠であつて、 捨型枠として用いる断面略Ｕ字状の型枠Ａの内
   面における底面または両側面の少なくとも一方
   に、前記スターラツプ筋３の径寸法と同等以上の
   深さで前記径寸法に対し充分な幅を有しかつ型枠
   Ａの断面形状に沿つた方向に延びる溝２を前記ス
   ターラツプ筋の配設ピツチと同一ピツチに形成す
   べく複数のリブ１を形成して成るコンクリート打
   設用型枠。 ２ 型枠Ａの内面のうち前記溝２の形成されない
   面がコツター面とされていることを特徴とする特
   許請求の範囲第１項記載のコンクリート打設用型
   枠。 ３ 型枠Ａの材料がフアイバーコンクリートから
   なる特許請求の範囲第１項または第２項記載のコ
   ンクリート打設用型枠。 ４ 型枠Ａにプレストレスを導入してなる特許請
   求の範囲第１項から第３項の何れかに記載のコン
   クリート打設用型枠。