JPH037548B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の技術分野〕 本発明は自動車のハンドル操作力を軽減するた
めに用いられる動力舵取装置に関し、特に車両の
走行速度や操舵角度等に応じて適切な操舵感覚が
得られるように構成してなる動力舵取装置に関す
る。

〔従来技術〕

パワーステアリング装置として一般によく知ら
れている、この種の動力舵取装置は、その動力源
である作動油を圧油としてオイルタンクからパワ
ーステアリング本体部に供給する油圧発生源とな
るオイルポンプ、このオイルポンプから供給され
る圧油をハンドル操作に伴なつて分配制御するコ
ントロールバルブとしての流路切換弁、および前
記圧油がその左、右いずれか一方の液室側に流入
されることによつて左、右方向に選択的に移動さ
れるピストンを備えたパワーシリンダなどからな
り、この圧油の供給方向に伴うパワーシリンダの
ピストンの動きをピツトマンアームに伝達してそ
の操舵運動を補助する構成とされている。そし
て、この種の動力舵取装置にあつては、ハンドル
操作による回転運動を用いてパワーシリンダの油
圧回路を切換える構成とするため、その流路切換
えを行なうコントロールバルブとしてロータおよ
びスリーブからなる回転式の流路切換弁を使用す
ることが従来から一般に行なわれている。また、
圧油発生源となるオイルポンプとしては、略楕円
形状のカム面を有するカムリングとその内部で回
転されることによりベーンを放射方向に進退動作
させるロータとからなるベーン型のものが一般に
用いられている。

ところで、上述した動力舵取装置において、そ
の油圧発生源となるベーン型オイルポンプは、通
常、自動車のエンジンにて回転駆動されるもので
あり、このためこのオイルポンプからの圧油の吐
出量はエンジンの回転数に比例して増減される。
そして、このオイルポンプの容量は、自動車の停
車中や低速走行時における操舵力を軽減するた
め、エンジンの低回転域においてもパワーステア
リング本体部の動作に支障ない程度の供給量が得
られるように設定される。したがつて、このよう
な構成では、エンジンの中、高回転域においてオ
イルポンプからの吐出量がパワーステアリング本
体部側で必要とされている供給量よりも大きくな
るもので、このため従来からオリフイスとこのオ
リフイス前後の差圧によつて作動されるフローコ
ントロールバルブとしての流量制御弁を圧油供給
路中に設け、これによつて余分な圧油をオイルタ
ンク側に還流させて供給流量を一定量に維持する
ことが一般に行なわれている。

しかし、実際には、車両が受る操舵抵抗や操向
負荷は、車両の走行状態、特に走行速度によつて
異なるため、操舵出力を制御しても運転者が受る
操舵感覚とは合致しないものである。すなわち、
車両の停車中や低速走行時において、圧油の供給
量が少ないと、軽快な操舵操作を行なえないもの
であり、一方高速走行時において、圧油の供給量
が大きいと、ハンドル操作力が軽すぎて運転者に
不安感を与えると同時に、ハンドルを切過ぎる等
の理由から車両の走行安定性の面で好ましくない
といつた問題を生じるもので、そのバランスを図
ることが難しいものであつた。

そこで、舵取ハンドルに適当な操舵反力を付与
するために、従来のこの種装置にあつては、たと
えば回転式の流路切換弁の一部に、油圧反力室を
設け、これに車両の走行速度等に応じて圧油を供
給することによつて、操舵抵抗に比例した反力を
舵取ハンドルに与え、運転者の操舵感覚を適切に
保つことができるようにしたものが、特開昭52−
133627号公報等により種々提案されている。

しかしながら、このような従来装置において
は、上述した油圧反力室に対し圧油を供給するた
めに、小型の補助ポンプを新たに、あるいは前述
したオイルポンプと一体に設けたり、このオイル
ポンプからの吐出油の一部を分流して利用するよ
うにしたものが多く、これにより装置全体の構造
や配管等が複雑となるばかりでなく、上述した油
圧反力室専用のポンプを駆動するためのロスが大
きいもので、さらにこのようにしても適切な操舵
感覚を得ることができるとは言えないものであつ
た。すなわち、上述した油圧反力室への圧油の供
給量は、主ポンプの約10分の１以下といつた極少
量でよいものであり、このために専用のポンプを
設けることは実用上あまり好ましいものではなか
つた。また、上述した油圧反力室への圧油を、パ
ワーシリンダへの供給路の一部から分流したもの
では、この反力室への圧油として高い油圧が要求
されているときには、オイルポンプの圧力が増加
し、その消費エネルギが大きくなるもので、装置
全体としての駆動コストが増大し、さらに油温が
上昇して装置の動作上の信頼性が低下するといつ
た問題を招くものであつた。

特に、この種の動力舵取装置においては、自動
車の高速走行時における操舵力を、低速走行時よ
りも大きくして走行速度に適した操舵感覚を運転
者に持たせ、これにより走行安定性を向上させる
ことが望まれているので、より簡単な構成によつ
て上述した要請を満足し得る装置の出現が要望さ
れている。

〔発明の概要〕

本発明はこのような事情に鑑みてなされたもの
であり、流路切換弁を切換操作する舵取ハンドル
に操舵反力を与える油圧反力室に対し、ベーン型
オイルポンプにおいてそのロータのスリツト基部
に形成されるベーン背面室内でベーンの往復運動
によつて生じる圧油を取出し、これをソレノイド
コイル型流量制御弁にて制御して導くという簡単
な構成によつて、従来のような専用のポンプを不
用とし、しかも装置全体の省エネルギ化を達成し
得るとともに、適切な圧油を油圧反力室に供給し
て車両の走行速度や操舵角度等に応じた適切かつ
確実な操舵抵抗を得ることができ、これにより停
車時や中低速時には軽く、高速時には重いといつ
た適切で安全面でも優れてなる操舵感覚が得ら
れ、特に高速時においてその効果を発揮し得るも
のであり、また全体の構造も簡単で各部の加工、
組立等も精度よく行なえ、コスト的にも安価な動
力舵取装置を提供するものである。

〔実施例〕

以下、本発明を図面に示した実施例を用いて詳
細に説明する。

第１図は本発明に係る動力舵取装置の一実施例
を示すものであり、同図において、まず、パワー
シリンダ（PS）への油圧発生源としてのベーン
型オイルポンプ１０の概略構成を簡単に説明する
と、図中１１，１２はポンプボデイを構成するフ
ロントボデイおよびリアボデイで、その内部に
は、第２図に示されるように、ベーン１３をその
スリツト１４内に組込むことにより放射方向に進
退動作させるロータ１５およびこれを収容するこ
とにより略楕円形状を呈する内側カム面１６ａに
よつて一対のポンプ室１７Ａ，１７Ｂを形成する
カムリング１６からなるポンプカートリツジ１８
と、このポンプカートリツジ１８内の各ポンプ室
１７Ａ，１７Ｂからの吐出側圧油を所定流量に制
御して吐出ポート（図示せず）に送る流量制御弁
１９と、その一端が外部に突出されることにより
図示しないエンジンなどで回転駆動される前記ロ
ータ１５の回転軸２０等が配設されている。ま
た、これら両ボデイ１１，１２内には、前記ポン
プカートリツジ１８内のポンプ室１７Ａ，１７Ｂ
に対しオイルタンク（Ｔ）に接続された吸込ポー
ト２１からの吸込側流体（作動油）を導くポンプ
吸込側通路２２と、これらポンプ室１７Ａ，１７
Ｂから吐出された圧油が導かれるポンプ吐出側圧
力室２３およびこれに連続して前記流量制御弁１
９を介して吐出ポート（図示せず）に圧油を送る
ポンプ吐出側通路２４などが形成されている。な
お、第１図中２５は前記ポンプカートリツジ１８
の一側に当接されたサイドプレートで、またそれ
以外の構成は周知のベーン型オイルポンプと略同
様であり、その詳細な説明は省略する。

一方、運転者の操舵操作により適宜回転される
舵取ハンドル（図示せず）にて上述したベーン型
オイルポンプ１０からパワーシリンダ（PS）へ
の流路切換えを行なう回転式の流路切換弁３０
は、周知のように、そのバルブボデイ３１内に、
その相対的な回転変位を入力として前述したオイ
ルポンプ１０、オイルタンクＴとパワーシリンダ
PSの左、右シリンダ室との間の流路切換えを行
なうロータおよびスリーブ（共に図示せず）が回
動可能に収容支持されている。そして、これらロ
ータおよびスリーブは、その一端が図示しない舵
取ハンドル側に連結される入力軸３２、およびこ
の入力軸３２にトーシヨンバー３３を介して同軸
上に連結されかつその他端に図示しないパワーシ
リンダ（PS）側の出力手段としてのたとえばラ
ツクと噛合するピニオン等を有する出力側軸３４
とにそれぞれ一体または別体として設けられてい
る。なお、このバルブボデイ３１内における油圧
回路構成は周知の通りであり、互いに対向して摺
接するロータの外周面とスリーブの内周面には、
それぞれ周方向に所定間隔おいて通路溝（図示せ
ず）が形成され、これら通路溝の選択的な連通、
遮断により前述した油圧回路が切換え制御される
ものであるが、このような回転式の流路切換弁３
０の構成およびその動作は従来から周知であり、
その詳細な説明は省略する。

そして、このような構成による回転式の流路切
換弁３０において、その出力側軸３４の中空内部
には、前記入力軸３２側から放射方向に突設され
た一対の突起３５ａ，３５ｂをわずかな周方向間
隙をもつて係合保持する凹溝３６ａ，３６ｂが形
成されている。さらに、この凹溝３６ａ，３６ｂ
にその両側から臨むようにして出力側軸３４内に
は、入力軸３２の回転に対し適宜の操舵反力を与
える油圧反力室３７ａ，３７ｂ；３７ｃ，３７ｄ
が設けられ、その内部には前記一対の突起３５
ａ，３５ｂをそれぞれ両側から挟持する二対のピ
ストン３８ａ，３８ｂ；３８ｃ，３８ｄが移動自
在に収容配置されている。

さて、本発明によれば、上述した構成によるベ
ーン型のオイルポンプ１０と油圧反力室３７ａ，
３７ｂ；３７ｃ，＋３７ｄが設けられた回転式の
流路切換弁３０を備えた動力舵取装置において、
前記油圧反力室（以下３７で総称する）への圧油
供給源として、前記ベーン型オイルポンプ１０に
おいてそのロータ１５のスリツト１４基部に形成
されるベーン背面室４０（第２図参照）内でベー
ン１３の往復運動によつて生じる圧油を取出し、
これを利用するようにしたところに特徴を有して
いる。そして、このような構成によれば、従来の
ような油圧反力室３７への専用のポンプを用いる
ことにより構造などが複雑化するといつた問題が
なくなり、しかもベーン背面室４０で生じるポン
プ作用を巧みに利用するため、その構造の簡素化
とともに装置全体の省エネルギ化を図りコスト低
減化を達成し得るといつた効果を奏するものであ
る。

すなわち、本発明によれば、ベーン型オイルポ
ンプ１０が作動する際において、ベーン１３がロ
ータ１５のスリツト１４内で進退運動することに
よりこのベーン１３が一種のプランジヤポンプと
して働き、これによりベーン背面室４０で生じる
圧油の圧力変動を積極的にポンプとして利用し、
前記油圧反力室３７の油圧源として用いるように
したものである。ここで、上述したベーン背面室
４０で生じる圧油の吐出量は極少量であるが、そ
の一方において油圧反力室３７で必要とされる圧
油量も少なくてよいもので、これによりベーン背
面室４０を油圧反力室３７の油圧源として使用す
ることができるものである。なお、第１図中４１
はリアボデイ１２の後端部に設けられた油圧反力
室３７への圧油吐出ポート、４２はその圧油の一
部をポンプ吐出側に戻すためのリリーフ弁、さら
に４３ａ，４３ｂはベーン背面室４０から圧油吐
出ポート４１に至る圧油通路である。

また、本発明によれば、上述したベーン背面室
４０から前記油圧反力室３７に至る圧油供給部４
４の途中に、ソレノイドコイル型流量制御弁５０
を設け、この流量制御弁５０により油圧反力室３
７への圧油供給流量を、車両の走行速度と操舵角
度によつて適切に制御し、これにより車両の走行
条件に応じた特性をもつ操舵感覚が得られるよう
にしたところにも特徴を有するものである。

すなわち、このソレノイドコイル型流量制御弁
５０は、第１図に示すように、そのバルブハウジ
ング５１内に圧油が流れる通路孔５２が一端側に
開口して形成され、その両端側に前記圧油供給路
４４が接続される入口ポート５３および出口ポー
ト５４が形成されている。そして、前記通路孔５
２内には、油圧反力室３７に供給される圧油の圧
力を一定圧以下に抑える減圧弁となるスプール５
５が摺動自在に保持され、スプリング５６により
出口ポート５４側に付勢されている。なお、この
通路孔５２に臨む入口ポート５３先端にはその油
圧通路を絞る固定オリフイス５７が設けられ、ま
たこのスプール５５はその軸線方向に形成された
通路５５ａ内を流れてその右室に流入した圧油圧
力と、このスプール５５途中に形成された大径部
左方に導かれる後述するオイルタンク（Ｔ）への
戻り通路５８内の圧力によつて作動されるもので
ある。さらに、図中５５ｂはスプール５５の右側
への移動を規制するストツパピンである。

また、前記通路孔５２の開口端には、円柱状プ
ランジヤ６０を収容したシリンダ部材６１の一端
が嵌入され、このシリンダ部材６１の先端部には
前記円柱状プランジヤ６０と一体の弁棒６２の先
端との間で可変オリフイス６３を構成する孔部が
穿設されている。そして、この可変オリフイス６
３の開度によつて上述した圧油供給路４４中の圧
油がオイルタンク（Ｔ）へ戻り通路５８を介して
還流されるように構成されている。ここで、この
可変オリフイス６３の全開時における開口面積
は、前記固定オリフイス５７の開口面積よりも大
きくなるように設定されているものである。ま
た、図中６４は前記円柱状プランジヤ６０をスプ
リング６５と協働して進退動作させるソレノイド
コイルで、このソレノイドコイル６４は、操舵角
センサ７０と車速センサ７１とからの信号を受る
コントローラ７２からの制御電流にて適宜励磁さ
れるものである。さらに、上述した円柱状プラン
ジヤ６０は、、その図示を省略したが、たとえば
（実開昭54−123539号公報）に示されるように、
供給電流に比例した分だけシリンダ部材６１内を
移動するように支持されているものである。

また、上述した第１図に示す実施例では、可変
オリフイス６３を孔部のその外方から進退動作さ
れる円柱状プランジヤ６０の弁棒６２によつて構
成した場合を示しているが、これに限定されず、
第３図に示すように、逆方向に作動される弁棒６
２と孔部とによつて構成するようにしてもよいも
のである。

そして、このような構成によれば、操舵抵抗を
増減させることによりハンドル操作力を変動させ
て運転者に対する操舵感覚を向上させるために用
いられる油圧反力室３７への圧油供給源として、
ベーン型オイルポンプ１０におけるロータ１５内
のベーン背面室４０で生じる圧力変動を巧みに利
用することによつて、従来のような専用のポンプ
は不用となり、各部の構成の簡素化とコスト低減
化などを達成し得るものである。

さらに、上述したように可変オリフイス６３と
これを可変するソレノイドコイル６４とを用い、
上述した油圧反力室３７への圧油供給圧を、操舵
角センサ７０と車速センサ７１からの信号を受る
コントローラ７２にて開閉制御される可変オリフ
イス６３にて適切に制御するように構成すること
によつて、第４図に示すように、その供給電流値
に応じて変化する圧力特性を得ることができ、こ
れにより低、中速走行時や停車中などにおいては
操舵反力は生じることはなく、軽快で適切なハン
ドル操作を行なえるものであり、一方高速走行時
においてはそのハンドル操作を重くして運転者に
対する操舵感覚を向上させ、安定した運転を行な
えるものである。

なお、本発明は上述した実施例構造に限定され
ず、各部の形状、構造等を、適宜変形、変更する
ことは自由である。

たとえば上述した実施例で示したベーン型オイ
ルポンプ１０は、一例を例示したものであり、そ
の構造や形状などは、実施例構造に限定されず、
種々の変形例が考えられるものである。また、回
転式の流路切換弁３０側に設けられる油圧反力室
３７の構造、形状なども適宜変形し得るものであ
る。

〔発明の効果〕

以上説明したように、本発明に係る動力舵取装
置によれば、流路切換弁を切換操作する舵取ハン
ドルに操舵反力を与える油圧反力室に対し、ベー
ン型オイルポンプにおいてそのロータのスリツト
基部に形成されるベーン背面室内でベーンの往復
運動によつて生じる圧油を取出し、これをソレノ
ドコイル型流量制御弁にて制御して導くようにし
たので、簡単かつ安価な構成にもかかわらず、従
来のように専用のポンプを不用とし、しかも装置
全体の省エネルギ化を達成し得るとともに、適切
な圧油を油圧反力室に供給して車両の走行速度や
操舵角度等に応じた適切かつ確実な操舵抵抗を得
ることができ、これにより停止時や中低速時には
軽く、高速時には重いといつた適切で安全面でも
優れてなる操舵感覚が得られ、特に高速時におい
てその効果を発揮し得るものであり、また全体の
構造も簡単で各部の加工、組立等も精度よく行な
える等といつた種々優れた効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係る動力舵取装置の一実施例
を示す装置全体の概略構成図、第２図はその要部
とするベーン背面室を説明するためのポンプカー
トリツジの概略図、第３図はそのソレノイドコイ
ル型流量制御弁における可変オリフイスの変形例
を示す図、第４図は本発明装置における流量制御
特性を示す特性図である。 １０……ベーン型オイルポンプ、１３……ベー
ン、１４……スリツト、１５……ロータ、１６…
…カムリング、１７Ａ，１７Ｂ……一対のポンプ
室、１８……ポンプカートリツジ、３０……回転
式の流路切換弁、３７（３７ａ，３７ｂ；３７
ｃ，３７ｄ）……油圧反力室、４０……ベーン背
面室、４４……圧油供給路、５０……ソレノイド
コイル型流量制御弁、５７……固定オリフイス、
６３……可変オリフイス、７０……操舵角セン
サ、７１……車速センサ、７２……コントロー
ラ。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ ロータのスリツト内に組込まれたベーンを放
   射方向に進退動作させることによつてオイルタン
   クから流路切換弁を介してパワーシリンダ側に圧
   油を給送するベーン型オイルポンプを備えた動力
   舵取装置において、前記ロータのスリツト基部に
   形成されるベーン背面室内でベーンの往復運動に
   よつて生じる圧油を、ソレノイドコイル型流量制
   御弁を介して、前記流路切換弁を切換操作する舵
   取ハンドルに操舵反力を与える油圧反力室に導く
   ように構成したことを特徴とする動力舵取装置。