JPH0345677Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は主に自動車等の座席シートの表皮の
周囲裾部の下部受枠に対して掛止する表皮取着装
置に関する。

〔従来の技術〕

この種の座席シートにおける表皮は、従来の裁
断・縫製によるものから、一体成形もの或いはパ
ツト等のクツシヨン材と一体発泡して成形したも
のが多くなつて来た。こうした成形表皮の周囲裾
部の座席シート下部受枠への取着は、該表皮の周
囲裾部に比較的硬質の生地である表皮取着部材を
ミシン縫いし、その取着部材の下端縁を折返すよ
うにして袋縫いしてワイヤー等を挿着し、この部
分をクリツプ等により下部受枠に掛止していた。
しかし上記成形表皮では物が大きく、こ周囲裾部
に取着部材をミシン縫いする時に取り回しが大変
であつた。また表皮にシワや弛みが生じないよう
に強く引張ると、前記取着部材の縫い目のところ
から表皮が破れてしまう問題があつた。

そこで最近では、前記取着部材をミシン縫いせ
ずに、表皮の周囲裾部を直接下部受枠に掛止させ
る取着方式が多くなつて来た。この主な例として
は実公昭55−23440号や実開昭59−40878号公報に
示されている如く、座席シートの下部受枠の周囲
に下向き開口の断面逆Ｕ字状溝を構成しておき、
この溝内に外周から表皮の周囲裾部下端縁を弾性
部材と共に押し込み挿入して、該弾性部材により
溝内に掛止する構成である。

〔考案が解決しようとする問題点〕 ところで、こうした受枠の溝内に弾性部材より
表皮裾部を弾性掛止する取着方式では、表皮裾部
を逆Ｕ字溝内にその開口側から一方的に押込むだ
けで先端を該溝内方から引張り込むようなことは
できないので、表皮裾部を溝内に十分に押し込ん
で弾性掛止することが非常に困難で、表皮全周に
亘り適度な張り力を持たせる状態に取着できず、
このために座席シートとして組立てた際に周囲部
や上面部に表皮のシワや弛みが多く発生して体裁
の悪いものとなつてしまう問題があつた。

〔問題を解決するための手段〕

この考案の座席シートの表皮取着装置は、上記
事情に鑑みなされたもので、従来の諸欠点を良好
に解消すべく、座席シートの表皮の周囲裾部を通
常の所要寸法より長めに取ると共に、その表皮裾
部にこの周方向に適当間隔を存して複数の切欠き
又は引込みを下端から上方に適当深さに亘り形成
して引き込み裾片を構成する。また、一方座席シ
ート下部受枠の周側壁外面に囲繞する状態に化粧
枠を固設し、この化粧枠と受枠周側壁との相互間
に前記表皮周囲裾部の各引き込み裾片をそれぞれ
上側より挿入して下側から引張れる上下に開口し
た挿入間隙を構成し、またその間隙に前記各引き
込み裾片を引込むことにより表皮裾部に先端が喰
込んで戻り止めを行なうストツパを該化粧枠又は
受枠周側壁から突出して設けると共に、そのスト
ツパより下側寄り位置に前記各引き込み裾片と対
応してそれぞれ周方向に配してカツター挿入用の
横長なスリツトを化粧枠に設けて構成したことを
特徴とする。

〔作用〕

上記構成により、座席シート組立の際に、パツ
ト等のクツシヨン材を覆つた状態の表皮の周囲裾
部の各引き込み片を下部受枠と化粧枠相互間の挿
入間隙にこの上側から下側に貫通する状態に挿入
し、その状態で表皮周囲全体に亘り適度な張り力
を与えるように各引き込み片の下端を適当に引張
る。これで各引き込み片上部寄りの表皮裾部は下
部受枠と化粧枠相互間の挿入間隙内にストツパが
食込むようにして戻り止めされて、表皮全体がシ
ワや弛みを生じることなく体裁良く取着された張
設されるようにある。また各引き込み片は化粧枠
の各スリツトを介して外側から適宜カツターを挿
入して該スリツトのところから切断することで、
それより下側の余分な部分（化粧枠の下側に食み
出す部分）を簡単に除去できて、外観意匠を損う
ようなこともなくなり、非常に操作が簡単でシ
ワ・弛みの発生が少なく極めて体裁の良い表皮取
着が可能となる。

〔実施例〕

以下この考案の一実施例を第１図乃至第３図に
より説明する。まず図中１は表皮で、これは全体
が一体成形されている。つまり成形表皮と言われ
るもの又は内側にパツト等のクツシヨン材２を一
体発泡して成形されるものである。この表皮１の
クツシヨン材２を取囲む周側部３より下側に延出
する周囲裾部４が通常の所要寸法より長めに成形
され、その周囲裾部４の下端から上方適当深さま
でに亘り切欠き５が複数周方向に間隔を存して形
成され、この切欠き５により相に分離して複数の
引き込み片６が構成されている。

一方、座席シート下部の受枠７は強化プラスチ
ツク製一体成形品等で、この周側壁８の外周に囲
繞する状態に化粧枠９が連接部１０を介して一体
的に又は別体的に固着して設けられている。ここ
でその化粧枠９は適当幅の帯環状のもので、内周
面と前記受枠７の周側壁８の外面との間に上下に
開口するスリツト状の挿入間隙１１を構成してい
る。またこの化粧枠９の内周側上端部から斜め下
方に向けて戻り止め用の連続波形状片のストツパ
１２が形成され、そのストツパ１２の断面尖鋭な
先端（下端）が前記受枠７の周側壁８に接触する
状態となつている。さらに化粧枠９の前記ストツ
パ１２の下端より下側位置（上下方向略中間部
位）にはカツター挿入用の複数の横長なスリツト
１３が前記表皮１の裾部４の各引き込み片６に対
応して周方向に間隔を存して配列して形成され
て、それぞれに適当なカツター１４が挿入できる
ようになつている。

而して、上述した構成の座席シートの表皮取着
装置では、第１図及び第２図ａの状態から、クツ
シヨン材２を覆つて表皮１の周側部３の周囲裾部
４の各引き込み片６を下部受枠７と化粧枠９との
間の挿入間隙１１にこの上側から下側に貫通する
ように挿入し、その状態で各引き込み片６下端を
手などで下方に引張つて、第２図ｂ及び第３図ａ
に示す如く周囲裾部４を前記挿入隙間１１内に引
き込むみながら、表皮１全体に亘り適度な張り力
を持たせる。即ち、各引き込み片６の下端をそれ
ぞれまんべんなく適当に下方に引張りながら、そ
の上部の周囲裾部４及び周側部３並びに表皮１上
面部に無用なシワや弛みが無くなるように張り力
を持たせる。こうして各引き込み片６の引張り操
作を行なつて手を放すと、受枠７と化粧枠９相互
間の挿入間隙１１内に引込まれた周囲裾部４は自
動的に爪状のスリツト１２の先端が食込むように
なつている。そのストツパ１２により戻り止めさ
れて完全に固定されるようになる。以上で表皮１
の周囲裾部４の下部受枠７への取着が終了し、そ
の後で第２図ｃに示す如くカツター１４を化粧枠
９の外側から各スリツト１３を介して差込むよう
にして、その内部に位置する各引き込み片６を途
中から切断し、各引き込み片６の切断した下側余
分な部分を下方に引き抜いて除去して、第３図ｂ
に示す体裁の良い状態となす。これで表皮取着作
業が完了する。

なお、上記説明や図面では下部受枠７を下に置
いて上方から表皮１を被せるようにして取着する
ように開示したが、実際にはクツシヨン材２を覆
つた表皮１を上下逆向きして作業台（図示せず）
上面に置き、その上から化粧枠９付き受枠７をこ
れも上下逆向きにして乗せながら、表皮１の周囲
裾部４の各引き込み片６を受枠７と化粧枠９との
間の間隙１１に下側から上側に引き上げるように
挿入して引張る。こうすることで取着作業がより
簡便に行ない得るようになる。

次にこの考案の他の実施例を第４図により説明
する。ここでは表皮１の周側部３の周囲裾部４
に、前述した切欠き５に代えて単なる切込み５Ａ
を形成して引き込み片６Ａを複数構成したもの
で、この場合は各切込み片６Ａが幅広で相互に隣
設状態となるので、この下側余分な部分を切断除
去するために、化粧枠９にはカツター挿入用の複
数の横長なスリツト１３Ａを図示した如く交互に
上下段違い（ちどり状）に配して、各スリツト１
３Ａ相互端部がオーバーラツプするように形成さ
れている。また戻り止め用として爪片状の複数の
ストツパ１２Ａが間隔を存して形成されている。
その他の構成は前述した実施例と同様である。こ
うした構成でも前述同様の効果が得られる。

なお、前記ストツパ１２或いは１２Ａは化粧枠
９から一体に突設したが、別成形して該化粧枠９
に固着しても良く、または受枠７の周側壁８から
突設するようにしても可である。

〔考案の効果〕

この考案は上述した如くなしたから、座席シー
ト組立の際に、パツト等のクツシヨン材を覆つた
状態の表皮の周囲裾部の各引き込み片を部受枠と
化粧枠相互間の挿入間隙にこの上側から下側に貫
通する状態に挿入し、その状態で表皮周囲全体に
亘り適度な張り力を与えるように各引き込み片の
下端を適当に引張つて、表皮の周囲裾部を下部受
枠と化粧枠相互間の挿入間隙内にストツパにより
戻り止めでき、これにて表皮全体を非常に簡単確
実にシワや弛み無く張設した状態に取着できる。
また各引き込み片は化粧枠の各スリツトを介して
外側から適宜カツターを挿入して該スリツトのと
ころから切断することで、それより下側の余分な
部分（化粧枠の下側に食み出す部分）を簡単に除
去できて、外観意匠を損うようなこともなくな
り、非常に操作が簡単でシワ・弛みの発生が少な
く極めて体裁の良い表皮取着が可能となる。

【図面の簡単な説明】

第１図乃至第３図はこの考案の一実施例を示す
もので、第１図は座席シート組立前の表皮と化粧
枠付き下部受枠との斜視図、第２図ａ〜ｃは表皮
周囲裾部の受枠への取着手順を示す各々部分断面
図、第３図ａ及びｂは第２図ｂ及びｃに対応した
側面図、第４図ａ及びｂはこの考案の他の実施例
を示す第３図に相当する側面図である。 １……表皮、２……クツシヨン材、３……表皮
周側部、４……周囲裾部、５……切欠き、５Ａ…
…切込み、６……引き込み片、７……下部受枠、
８……周側壁、９……化粧枠、１１……挿入間
隙、１２，１２Ａ……ストツパ、１３，１３Ａ…
…カツター挿入用スリツト。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 座席シートの表皮の周囲裾部を通常の所要寸法
   より長めに取ると共に、その表皮裾部にこの周方
   向に適当間隔を存して複数の切欠き又は切込みを
   下端から上方に適当深さに亘り形成して引き込み
   裾片を構成し、一方座席シートの下部受枠の周側
   壁外面に囲繞する状態に配して相互間に前記表皮
   裾部の各引き込み裾片をそれぞれ上側より挿入し
   て下側から引張れる上下に開口した挿入間隙を構
   成すると共に上下方向途中に前記各引き込み裾片
   と対応してそれぞれ周方向に配するカツター挿入
   用の横長なスリツトを有した化粧枠を固設し、且
   つその化粧枠と受枠周側壁との相互間の挿入間隙
   内にそのどちらか一方から前記スリツトより上側
   に配して突出して前記各引き込み裾片の引き込み
   により表皮裾部に先端が喰い込んで戻り止めを行
   なうストツパを設け、化粧枠と前記受枠周側壁と
   の間の間隙に引き込んでストツパに掛止した各引
   き込み裾片の下側部分は前記各スリツトを介して
   外側からカツターを挿入して切断して除去される
   れることを特徴とする座席シートの表皮取着装
   置。