JPH0342113B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 この発明は収納可能なハンドプーリを備えたミ
シンに関し、更に詳しくは、縫製の準備中は、ミ
シン主軸に連結したハンドプーリをミシン機枠の
外方に突出させて手動による回転操作を可能と
し、それ以外の場合には、必要に応じて前記ハン
ドプーリをミシン機枠の収納部中に収納し得るよ
うに構成したミシンに関するものである。

従来技術 加工布の縫製に使用される家庭用ミシンおよび
工業用ミシンには、一般にミシン機枠の右側に突
出するハンドプーリが設けられ、このハンドプー
リは主軸に接続してこれと一体的に回転するよう
になつている。前記ハンドプーリは、ミシンによ
る縫製開始の準備時に、使用者の手動操作により
僅かに正逆方向に回転されて、前記主軸にクラン
ク機構を介して接続する針棒を上下方向に変位さ
せる。例えば針棒を下降させて、加工布上の縫製
開始位置が縫針の落下点に一致するように、加工
布を位置決めする作業を容易にしたり、また針棒
を上昇させて、押え足および縫針の交換を容易に
する等のために、針棒の上下位置をハンドプーリ
の回転により変化させる。

発明が解決しようとする問題点 このハンドプーリは、前述の如く縫製の準備に
際してのみ、手動操作のために必要とされるもの
であつて、一旦縫製が開始された後は使用される
ことはない。このようにハンドプーリは使用頻度
が少ない存在であるにも拘わらず、ミシン機枠の
右側面部から常に突出しているので、ミシンの外
観形状に関するデザインの面からは旧態依然とし
たものがあり、斬新の意匠を施す余地に乏しかつ
た。またミシンを移動させる際に、ミシン機枠か
ら外方に突出するハンドプーリが外部障害物に接
触して破損することもあつて、ミシン不使用時に
はハンドプーリは一般に邪魔な存在になつてい
る。

しかも縫製作業中は、前記ハンドプーリは常に
ミシン機枠の外方に突出した状態で回転している
ので、作業者にとつて危険であり、またミシンカ
バーによりミシンを被覆する場合は、当該ミシン
カバーはハンドプーリの厚み分だけ収納空間を予
め設けておく必要があり、従つてスペース的に大
型化する欠点があつた。

発明の目的 この発明は、ハンドプーリを備えたミシンに内
在している前記欠点に鑑み、これを良好に解決す
るべく提案されたものであつて、縫製準備中は、
ハンドプーリをミシン機枠の外方に突出させた状
態として手動操作をなし得るようにし、縫製中そ
の他ミシン不使用時には、必要に応じてこのハン
ドプーリをミシン機枠の収納部中に収納し得るよ
うにて、ミシンの外観形状のデザインに革新的な
変化を与えると共に、ミシン全体の小型化および
安全性の向上を達成することを目的とする。

問題点を解決するための手段 前記目的を達成するため本発明に係る収納可能
なハンドプーリを備えたミシンは、ミシンの主軸
に軸方向に移動可能で、かつ当該主軸と一体的に
回転するよう設けたハンドプーリと、前記主軸に
弾力的に介装されて、常には前記ハンドプーリを
ミシン機枠外方に突出させるべく付勢する弾性部
材と、前記ミシン機枠中に形成され、前記ハンド
プーリを前記弾性部材の弾力に抗して主軸の軸方
向に押圧移動することにより、該ハンドプーリが
収納される収納部と、前記ハンドプーリを前記弾
性部材の弾力に抗してミシン機枠の収納部中に係
止するため、前記ハンドプーリと前記ミシン機枠
または主軸との間に設けられた係止部材と、前記
ハンドプーリの外側端面に形成した開口部内に配
設され、前記係止部材によるハンドプーリの係止
を解除するために操作可能な操作体とを含むこと
を特徴とする。

作 用 本発明のミシンでは、ハンドプーリに設けた操
作体を軸方向内方に押圧すれば、当該ハンドプー
リは前記操作体と共に主軸に対し所定距離だけ移
動して、前記係止部材の作用下にミシン機枠の収
納部中の収納位置において係止される。この状態
において、前記操作体を再び押圧操作すれば、該
操作体は前記係止部材による前記係止を解除し、
弾性部材の作用下に前記ハンドプーリはミシン機
枠外方に突出する。

実施例 次に本発明に係るミシンにつき好適な実施例を
挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
本発明が好適に実施されるミシンは、第６図に示
すように、ベツド面を上部に形成した下方アーム
１０と、この下方アーム１０から立設した脚柱部
１２と、アーム１０の上方に水平に張り出した上
方アーム１４とからなるミシン機枠１６を備えて
いる。前記脚柱部１２の左側面部上方（第６図に
おいて）にはハンドプーリ１８が突出配置されて
いるが、このハンドプーリ１８は後述する機構に
より、ミシン機枠１６中に収納可能になつてい
る。

スプライン機構について 第１図〜第４図に明確に示すように、ミシン機
枠１６中には、主軸としての上軸２０が軸受２２
を介して水平に配設され、図示しない駆動源によ
り回転駆動されるようになつている。この上軸２
０の一端部には前記ハンドプーリ１８がスプライ
ン結合されて、前記上軸２０と一体的に回転する
と共に、軸方向には移動可能に構成されている。
例えばハンドプーリ１８のボス１８ａに穿設した
中心孔２４に、前記上軸２０が摺動自在に挿通さ
れている。前記ボス１８ａには、第１図および第
５図に示す如く、中心孔２４に沿つて上下に連通
する案内溝２６ａ，２６ｂが対向的に形成されて
いる。そして上軸２０を中心孔２４に挿通する際
に、この上軸２０に直交配置した突出ピン２８
を、前記案内溝２６ａ，２６ｂ中に臨ませること
により、前記ハンドプーリ１８は、上軸２０に対
し軸方向移動可能でかつ一体的に回転するように
なつている。なお前記一方の案内溝２６ａは、後
述す係止部材としての係合部材３０がこの溝中に
揺動自在に噛み得るように、前記ボス１８ａの外
表面に連通開口している。

前記上軸２０において、円筒状の圧縮コイルば
ねからなる弾性部材３２が前記軸受２２とハンド
プーリ１８のボス１８ａ端部との間に介装され、
前記ハンドプーリ１８を、常には第４図に示す如
く、ミシン機枠１６の外方に突出するよう弾力的
に付勢している。なおミシン機枠１６の右側面に
は円筒状の収納凹部３４が形成され、この収納凹
部３４は、ハンドプーリ１８を軸方向に押圧した
際に、第２図に示す如く、プーリ本体部がそつく
り収納される寸法に設定されている。

また上軸２０には、図示のように断面状の環
状溝２９が周設され、この環状溝２９に、後述す
る係合部材３０のフツク３０ｂが離脱可能に係合
される。なお前記環状溝２９は、第２図に示す如
く、ハンドプーリ１８がミシン機枠１６に収納さ
れた状態において、ボス１８ａ内に挿通された上
軸２０に前記フツク３０ｂが接触し得る位置に周
設される。

（操作体およひ係合部材について） 前記ハンドプーリ１８のボス１８ａ形成側と反
対に位置する外側端面には、第１図に示す如く、
円筒形状をした開口部３６が凹設形成されてい
る。この開口部３６の底部中央には、前記ボス１
８ａより小径のボス１８ｂが突出形成されてお
り、このボス１８ｂに前記中心孔２４が貫通して
いる。

この開口部３６内には、操作体として円板状の
蓋体３８が配設されて、該開口部を被蓋するよう
になつている。すなわちハンドプーリ１８の前記
ボス１８ａおよび１８ｂには、第１図に示すよう
に、前記案内溝２６ａの開口部と連通する２枚の
直立壁４０，４２が対向的に形成されており、ま
たボス１８ｂ側の直立壁４０，４２の各垂直端部
には、後述する軸ピン３０ａ，３０ａの嵌入を許
容する切欠溝４０ａ，４２ａが形成されている。
前記蓋体３８は、前記開口部３６の内径よりも僅
かに小さい直径を有する円板として構成され、そ
の裏面上方には図示形状の係合部材３０が突出的
に形成されている。また係合部材３０の先端部に
は、下方に向けて鈎状に指向するフツク３０ｂが
形成され、更に当該部材３０の基部近傍両側に、
夫々軸ピン３０ａ，３０ａが突出形成されてい
る。また開口部３６の底部には、ボス１８ａ側の
直立壁４０，４２とボス１８ｂ側の直立壁４０，
４２とを連通する通孔４４が穿設されていて、ハ
ンドプーリ１８への前記蓋体３８の取付時に、係
合部材３０がこの通孔４４を介してボス１８ａ側
に突出するのを許容している。

前記蓋体３８は、係合部材３０に形成した前記
軸ピン３０ａ，３０ａを、前記開口部３６内の切
欠溝４０ａ，４２ａに嵌入させることにより揺動
可能に枢支されて、開口部３６を略完全に被蓋す
るようになつている。このとき、前記開口部３６
側の小径ボス１８ｂの突出寸法を適宜の値に設定
しておくことにより、蓋体３８を前記軸ピン３０
ａを中心として傾動させても、第３図に示す如
く、その裏面がボス１８ｂに当接して、その揺動
は所要角度内に規制される。なお係合部材３０
は、前記通孔４４を介してボス１８ａ側に突出し
て、第２図に示す如く、ボス１８ａに形成した開
口案内溝２６ａ内に揺動可能に臨んでいる。そし
てこの係合部材３０のフツク３０ｂの先端は、上
軸２０に周設した前記環状溝２９の直上方を軸方
向に移動可能になつている。

また第１図〜第４図に示すように、前記係合部
材３０の軸ピン３０ａ近傍に舌片３０ｃが一体的
に形成されている。そして該舌片３０ｃとミシン
機枠１６内に臨んでいるボス１８ａの開放端との
間に、引張コイルばねからなる弾性体４６が弾力
的に介装されて、前記蓋体３８を軸ピン３０ａを
中心として反時計方向に回動付勢している。すな
わち係合部材３０のフツク３０ｂは、前記環状溝
２９と係合する方向に、常に弾力付勢されている
ことになる。なお蓋体３８の表面下方、すなわち
前記係合部材３０の形成部位に対して直径方向の
反対位置には、後述のハンドプーリ１８突出操作
時に指で触れるための押圧部３８ａが凹設されて
いる。なおこの押圧部３８ａは、蓋体３８に凹設
しなくとも、その所要個所に単に絵柄等で表示す
るだけでもよい。

（実施例の作用） 次に本発明の一実施例の作用につき説明する。
先ず第４図に示すように、係合部材３０のフツク
３０ｂが、前記環状溝２９との係合を解除してい
る場合から説明する。このときハンドプーリ１８
は、前記弾性部材３２の圧縮弾力の作用下に上軸
２０に対して軸方向外方に移動させられ、当該ハ
ンドプーリ１８をミシン機枠１６の収納凹部３４
から外方へ突出させている。このとき前記フツク
３０ｂは、上軸２０に突設した前記ピン２８に図
示の如く係合して、ハンドプーリ１８が所定距離
以上外方に延出しないよう規制している。この状
態の下で、ハンドプーリ１８を手動で操作して縫
針の高さ調節を行ない、前述した縫針および押え
足の交換等の縫製準備を好適に実施することがで
きる。

次いで縫製準備の完了後や、ミシン使用終了後
の如く、ハンドプーリ１８をミシン機枠１６中に
収納する場合は、該ハンドプーリ１８の開口周縁
部または前記蓋体３８を上軸２０の軸方向に押圧
する。これによりハンドプーリ１８は、弾性部材
３２の弾力に抗してこれを圧縮しつつ、上軸２０
上を移動する。このとき前述し如く、上軸２０の
環状溝２９は係合部材３０のフツク３０ｂの移動
軌跡に位置し、しかも該フツク３０ｂは前記弾性
体４６により前記環状溝２９と係合する方向に常
に弾力付勢されている。このため前記ハンドプー
リ１８が上軸２０を所要の距離だけ移動したとこ
ろで、第２図に示す如くフツク３０ｂが環状溝２
９に係合し、前記ハンドプーリ１８をミシン機枠
１６に形成した収納凹部３４中に確実に固定する
に至る。

ミシン縫製の準備のためハンドプーリ１８を使
用する必要が生じたときは、蓋体３８の前記押圧
部３８ａを指で押圧操作することにより、当該ハ
ンドプーリ１８はミシン機枠１６の外方に突出す
る。すなわち蓋体３８の押圧部３８ａを押圧する
と、第３図に示すように、蓋体３８および係合部
材３０は、軸ピン３０ａを中心として弾性体４６
の引張弾力に抗して時計方向に揺動し、前記フツ
ク３０ｂを上軸２０の環状溝２９から離脱させ
る。

これにより圧縮状態にあつた前記弾性部材３２
の弾力が一挙に開放されて、第３図に示すよう
に、ハンドプーリ１８を軸方向外方へ移動させ、
ミシン機枠１６の収納凹部３４外方に突出させ
る。なおハンドプーリ１８は、その突出する過程
で前記フツク３０ｂが上軸２０のピン２８に係合
して、所定位置に規制されることは既に述べた通
りである。

発明の効果 以上説明した如く本発明によれば、縫製の準備
中は、前記ハンドプーリをミシン機枠の外方に突
出させて手動による回転操作を可能とし、それ以
外の場合には、前記ハンドプーリをミシン機枠の
収納部中に収納することを可能としたので、ミシ
ンの外観形状のデザインに革新的な変化を与える
ことができる。またミシン携行時に、ハンドプー
リを外部に障害物に打ち当てて破損することもな
い。しかもミシンケースにより被覆する場合であ
つても、当該ミシンケースにハンドプーリを受容
するためのスペースを不要とするので、ミシン全
体の小型化を図ることができる。更にミシン縫製
中にハンドプーリを収納しておけば、回転部が外
部に露出しないので、安全性が一層向上する。

そのうえ、ハンドプーリの外側端面に形成した
開口部中に操作体が配設されていることから、ハ
ンドプーリの収納および突出のための操作をハン
ドプーリの配置個所に集中させて行なうことがで
き、操作性を向上させ得ると共に、操作体をハン
ドプーリと別個にミシン機枠から突出させるもの
でないのでミシンの外観を一層すつきりしたデザ
インにまとめることができる。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明に係るミシンの一実施例を示すも
のであつて、第１図は実施例に係るミシンの要部
を分解状態で示す一部切欠斜視図、第２図は本実
施例の要部縦断面図であつて、フツクが環状溝に
係合してハンドプーリをミシン機枠内に収納して
いる状態を示し、第３図は本実施例の要部縦断面
図であつて、蓋体を押圧したことにより該蓋体が
時計方向に回動して、フツクを環状溝から離脱さ
せた直後の状態を示し、第４図は本実施例の要部
縦断面図であつて、フツクが環状溝から離脱し
て、弾性部材の弾力作用下にハンドプーリをミシ
ン機枠外に突出させている状態を示し、第５図は
蓋体を除去した状態にてハンドプーリを軸方向に
観察した場合における、ボスの案内溝と上軸のピ
ンとの係合状態を示す説明図、第６図は本実施例
に係るミシンの背面側から観察した斜視図であ
る。 １６……ミシン機枠、１８……ハンドプーリ、
２０……上軸、２８……ピン、２９……環状溝、
３０……係合部材、３０ａ……軸ピン、３０ｂ…
…フツク、３２……弾性部材（圧縮コイルばね）、
３４……収納凹部、３６……開口部、３８……蓋
体、４６……弾性体（引張コイルばね）。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ ミシンの主軸２０に軸方向に移動可能で、か
   つ当該主軸２０と一体的に回転するよう設けたハ
   ンドプーリ１８と、 前記主軸２０に弾力的に介装されて、常には前
   記ハンドプーリ１８をミシン機枠１６外方に突出
   させるべく付勢する弾性部材３２と、 前記ミシン機枠１６中に形成され、前記ハンド
   プーリ１８を前記弾性部材３２の弾力に抗して主
   軸２０の軸方向に押圧移動することにより、該ハ
   ンドプーリ１８が収納される収納部３４と、 前記ハンドプーリ１８を前記弾性部材３２の弾
   力に抗してミシン機枠１６の収納部３４中に係止
   するため、前記ハンドプーリ１８と前記ミシン機
   枠１６または主軸２０との間に設けられた係止部
   材３０と、 前記ハンドプーリ１８の外側端面に形成した開
   口部３６内に配設され、前記係止部材３０による
   ハンドプーリ１８の係止を解除するために操作可
   能な操作体３８と を含むことを特徴とする収納可能なハンドプーリ
   を備えたミシン。 ２ 前記係止部材３０はハンドプーリ１８に支持
   され、その係止部材３０の先端部には、主軸２０
   に周設した環状溝２９と係合離脱可能なフツク３
   ０ｂが形成され、 このフツク３０ｂは前記ハンドプーリ１８をミ
   シン機枠１６の収納部３４中にまで移動させた際
   に、前記環状溝２９と係合して当該ハンドプーリ
   １８を収納部３４中に固定し、 またフツク３０ｂが前記環状溝２９と係合して
   いる状態で前記操作体３８を押圧した際に、当該
   フツク３０ｂは前記環状溝２９から離脱する よう構成したことを特徴とする請求項１記載の収
   納可能なハンドプーリを備えたミシン。 ３ 前記係止部材３０はハンドプーリ１８に支持
   され、その係止部材３０とハンドプーリ１８との
   間には弾性体４６が張架され、その係止部材３０
   は前記主軸２０またはミシン機枠１６と係合し得
   るように前記弾性体４６により常時付勢されてい
   ることを特徴とする請求項１記載の収納可能なハ
   ンドプーリを備えたミシン。 ４ 前記係止部材３０および操作体３８は一体に
   形成されると共に、揺動可能にハンドプーリ１８
   に支持されていることを特徴とする請求項１記載
   の収納可能なハンドプーリを備えたミシン。