JPH0342062Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 技術分野 本考案は織機の再起動時における織段防止装置
に関するものである。

従来技術 織布を均一に織るためには、製織中に織布と経
糸との境界である織布の織前線が、筬が緯糸を打
ち寄せる最前進位置である筬の織前線に一致する
ことが必要とされる。筬の織前線はスレーソード
の揺動距離の他に加速度によつて発生するレース
自体のたわみ量やレースの振動等の諸条件の影響
を受けてその位置が決まる。機台の運転速度が低
に場合はレースたわみ量は織成に殆ど影響を及ぼ
さないが、高速化に伴い、筬打ち運動を行なうス
レーソード、レース及び筬等の各運動部材の加速
度がその速度の２乗に比例して急増するため、前
記レースのたわみ量は織成上無視できない程度に
増してくる。そのため、加速度が殆ど発生してい
ない機台の起動時におけける筬打ち時と、加速度
が充分に発生した連続筬打ち時とでは筬の最前進
位置が異なり、これが織段の発生となる。

従つて、織段の発生を防止するために、ワープ
ビームから引出された経糸が織前に導かれる経路
中で該経糸に張力を付与するテンシヨンローラ
に、織機の起動時にエアシリンダを作用させ、経
糸張力を上げて織布の織前線を後方へ即ち筬側に
引つ張り、筬の織前線と織布の織前線とを一致さ
せている。

また、上述のようにエアシリンダを使用する場
合、少なくとも機台を再起動して１回目の筬打ち
をする前にテンシヨンローラを織段防止の作用位
置まで上昇しておくこと及び織機の立上り速度に
応じた時期にテンシヨンローラを織段防止の不作
用位置（元の位置）まで戻すことが必要である。
そして、織機の再織布を行なう際にテンシヨンロ
ーラを織段防止の作用位置まで上昇させるのに要
する時間を考慮して、機台スタートボタンを押し
てから機台が動き始めるまでに時間的余裕をとつ
ているが、安全上の問題から微小時間しかとれな
いので、テンシヨンローラの上昇速度（エアシリ
ンダ又はそのピストンの下降速度）が早いことが
重要であり、一方、テンシヨンローラを織段防止
の不作用位置まで戻す際には、織物の種類、織機
の立上り特性等の違いに応じてテンシヨンローラ
の下降速度を調節し、織布の織前線と筬の織前線
との正確な一致を図ることが重要である。即ち、
後者の際、織布が厚物ならテンシヨンローラをゆ
つくり降下させ、薄物なら速く降下させるのが望
ましく、あるいは、織物の種類によつてテンシヨ
ンローラの作動ストロークを変更する場合に、テ
ンシヨンローラの下降速度を調節しうることが望
ましい。また、モータ結線、織機の負荷（機台の
幅、綜絖枠の枚数等）等で織機の立上り特性が異
なつてくるが、これに伴い、織機の立上り速度に
応じた割合でテンシヨンローラの下降速度を調節
しうることが望ましい。

エアシリンダをテンシヨンローラの上下動のた
めに用いる織段防止装置は例えば特開昭56−
144257号公報に開示されている。ここに開示され
た装置は、第１図にそのエアシリンダ１の一部及
び電磁弁２を示すように、テンシヨンローラを降
下させる際エアシリンダ１内の空気を排気する通
路３に絞り弁４を設けて、排気通路３からの排出
空気量を調節可能とし、シリンダ１内のピストン
ロツド５の下端に係合する図示しないイージング
レバー（これがテンシヨンローラに作用する）の
作用力減衰時間を調節している。

ところがこの装置では、プランジヤ６が上方へ
移動して、所定圧力に減圧された空気が空気入口
管７から弁室８に入り、通路９を経由してエアシ
リンダ１の弁室１０に供給される際、該通路９
は、絞り弁４を設けた通路３及び排出孔１１を介
して大気に連通するので、空気の利用効率が悪い
ばかりか、排出孔１１から排出される分を考慮し
て空気入口管７の圧力設定及び各管路径の設定を
行なわねばならない。また、近年のように、立上
り速度の速い織機に応じるためにシリンダの応答
速度（テンシヨンローラの降下速度）も速くする
ことが要求されるときに、この従来装置では排出
孔１１のオリフイス径を大きくして対応しようと
すれば、元圧を非常に高いものにしなければなら
ず、実際上対応することが困難である。このよう
に、テンシヨンローラ、従つてピストンロツド上
昇速度及び下降速度が相互に関連しているので、
別個に調整することができず、調整作業は非常に
煩雑である。しかも、空気の供給時に弁室１０内
が圧縮空気で満たされると、ピストンロツド５が
動き出す前に通路３及び排出孔１１から圧縮空気
が漏れるので、ピストンロツド５の動作時期が遅
れる。前述したように、スタートボタンを押して
から機台が回り始めるまでの時間は安全上極く短
い時間しかとれないで、このピストンロツドの動
作時期、即ちテンシヨンローラの上昇時期の遅れ
は問題である。

考案の目的 従つて本考案の目的は、織段防止用のエアシリ
ンダの応答性を良好にし、且つ織機の立上り特性
等に基づく立上り速度に応じた割でテンシヨンロ
ーラの下降速度を調節できる織機の織段防止装置
を提供することである。

考案の構成 上述の目的を達成するため、本考案による織機
の織段防止装置は、ワープビームから引き出され
た経糸が織前に導かれる経路中で前記経糸に張力
を付与するテンシヨンローラと、該テンシヨンロ
ーラを揺動自在に支持する可動の支持装置と、該
支持装置に当接するピストンロツドを有するエア
シリンダと、空気入口管を介して空気供給源に接
続される空気供給源接続用ポート、空気出口管を
介して前記エアシリンダに接続されるシリンダ接
続用ポート、及び排気ポートを有する方向切換電
磁弁と、前記エアシリンダと前記方向切換電磁弁
の前記シリンダ接続用ポートを接続する管路中に
介在した調節可能な絞り弁とを備え、前記方向切
換電磁弁は、前記エアシリンダへの空気供給時、
前記空気供給源接続用ポートと前記シリンダ接続
用ポートとを前記排気ポートへの通路を遮断した
まま連通し、前記エアシリンダからの空気排出
時、前記空気供給源接続用ポートと前記シリンダ
接続用ポートとを遮断し、前記絞り弁を介して前
記シリンダ接続用ポートと前記排気ポートとを連
通させるように構成されている。

実施例 １ 第２図は本考案による織段防止装置の第１実施
例の全体構成図、第３図は特に方向切換電磁弁の
配管系統図を示すものである。第２図において、
経糸は矢印２３で示すように、ワープビーム２０
から引出され、バツクローラ２１及びテンシヨン
ローラ２２を経由して図示しない綜絖を通り、周
知の態様で開口運動を行なう。また、開口した上
下の経糸間には緯糸が挿通され、緯糸は図示しな
い筬により周知の態様で織前へ向かつて筬打ちさ
れる。前述したように、織機の再起動時には、筬
の最前進位置である筬の織前線と織布の織前線と
が一致しないため、これを一致させるべくテンシ
ヨンローラ２２を上昇させ、経糸に一時的に矢印
２４方向の張力を付与することにより、織布の織
前線を後方へ即ちテンシヨンローラ２２側へ戻
す。

テンシヨンローラ２２は支軸２５を中心として
揺動自在な支持レバー（支持装置）２６の一端に
支持されている。なお、テンシヨンローラ２２及
び支持レバー２６は、テンシヨンローラ２２の位
置変動をワープビーム２０の回転速度を制御する
変速機へ伝える、例えば特開昭57−176236号公報
に開示されたような図示しない伝達レバー系に接
続しうるが、これは本考案の要旨ではないので、
その更なる説明を省略する。

支持レバー２６の他端には、空気出口管２７に
接続されたエアシリンダ２８のピストンロツド２
９が当接しており、該シリンダ２８は公知の絞り
弁３０を介して方向切換電磁弁３１に接続されて
いる。電磁弁３１は、第３図に示すように、２ポ
ジシヨン３コネクシヨンのノーマルクローズ型で
あり、前記空気出口管２７を介してエアシリンダ
２８に接続されるシリンダ接続用ポート３２と、
空気入口管３３を介して図示しない空気供給源に
接続される空気供給源接続用ポート３４と、排気
ポート３５とを備え、通常、ポート３４が閉じ、
ポート３５が開くようにばね３６によつて付勢さ
れており、ソレノイドSOLが励磁された時に、
ポート３２及び３４が矢印３７で示すように連通
し、空気入口管３３からの圧縮空気の供給を受け
るものである。このように、電磁弁３１は空気の
供給を受けるとき、ポート３２及び３４を排気ポ
ート３５への通路を遮断したまゝ連通させる。な
お、３方弁である電磁弁３１は便宜上、記号化し
て図示したが、上述した構成及び機能を有するも
のならよい。

次に、上述した構成を有する織段防止装置の作
用を第２図〜第４図を参照して説明する。

先ず、停止中の機台を再起動するべく図示しな
い起動スイツチを作動し、機台モータの駆動回路
に通電すると、第４図Ｃに示すように、機台モー
タはｔ時間後に立ち上がる。この時間ｔは、織段
防止ためには十分長いことがよいが、安全上の見
地からは、余り長いと、作業者が織機の中に手を
入れて怪我をする危険があるので、手を入れよう
とする前に立ち上がる最長の時間となるように人
間工学面から決定しうる。第４図Ｃにおいて、0゜
は筬が織前線に達するときの機台の回転角度であ
り、１相、２相、…は角度0゜で再起動後１回目、
２回目…の筬打ちが行なわれることを示してい
る。

一方、起動スイツチの作動と同時に、通常閉じ
ている電磁弁３１のソレノイドSOLに通電され、
電磁弁３１は開弁する（第４図Ａ）。従つて、電
磁弁３１の空気供給源接続用ポート３４とシリン
ダ接続用ポート３２とが連通し、圧縮空気は排気
ポート３５から漏れることなく絞り弁３０を介し
てエアシリンダ２８内に供給され、ピストンロツ
ド２９及び支持レバー２６を介してテンシヨンロ
ーラ２２を上昇させる。第４図Ｂに示すように、
テンシヨンローラ２２が最上昇位置へ達するまで
に時間t′を要するが、本考案においてはシリンダ
２８への圧縮空気の供給時に排気ポート３５から
漏れることがないため、時間t′は前述した時間ｔ
よりも十分に短い。

このようにしてテンシヨンローラ２２がt′時間
後に最上昇位置に上昇して経糸に張力を追加的に
付与し、ｔ時間後に機台モータが回転を開始し実
線１に従つて昇速する。この過程中に１回目の筬
打ちが行なわれるが（１相）、テンシヨンローラ
２２はまだ最上昇位置にあるので、筬打ちは織布
の織前線に一致した位置で行なわれる。そして機
台モータは所定の定常回転に達し、この定常回転
で２相、３相…の筬打ちが行なわれる。

従つて、定常回転に達した後の筬打ちが経糸の
追加的張力を取り去つてから行なわれるように、
例えばタイマー等により電磁弁３１の開弁時間を
制御し、１相の筬打ちが行なわれた後の時間t″に
その閉弁を行なうことができる。電磁弁３１の閉
弁によりポート３４が閉じて排気ポート３５が開
き、エアシリンダ２８内の空気は絞り弁３０を介
して排気ポート３５から排出される。従つて、テ
ンシヨンローラ２２は絞り弁３０の開度に応じた
速度で実線２により示すように最降下位置へと降
下する。絞り弁３０の開度、即ちテンシヨンロー
ラ２２の降下速度は機台モータの立上り速度に応
じて任意に調節可能であり、例えば第４図Ｂに点
線３で示すように降下速度を上げて、機台モータ
が定常回転に達するときにテンシヨンローラ２２
が最降下位置にあるようにしてもよいし、また、
第４図Ｃに点線４で示すように立上り速度の遅い
機台モータが使用されているときは、第４図Ｂに
点線５で示すようにテンシヨンローラ２２の降下
速度を遅くすることができる。これにより、定常
回転に達するまで各相の筬打ちが好適な状態で行
なわれる。

実施例 ２ 第５図の第２実施例においては、並列に接続さ
れた絞り弁３０及び逆止弁３８から構成されるス
ピードコントローラが空気出口管２７に設けられ
ている。一般に絞り弁の利用する最大有効断面積
よりも排気ポートの有効断面積のほうが大きいの
で、絞り弁３０を排気ポート３５に設けた場合に
は、排気時に空気出口管２７内の空気全量が排気
ポートより小さい有効断面積の絞り弁３０を通る
必要があり、テンシヨンローラが最降下位置に達
するまでの最小時間が長くなつて、機台の立上り
特性に対する適応能力に制限を生ずる。

しかし、第２実施例のようにエアシリンダ２８
寄りに、絞り弁３０及び矢印３９の方向への流れ
を許容する逆止弁３８を設けることによつて、エ
アシリンダ２８への空気供給時には第１実施例の
上述した問題点が解決され、排気時には上記問題
点が解決される。

考案の効果 以上のように、本考案によれば、単に電磁弁及
び絞り弁を設けるだけでなく、エアシリンダへの
空気供給時には電磁弁のシリンダ接続用ポートと
空気供給源接続用ポートとの間の経路が排気ポー
トに連通しない構成としたので、織段防止用のエ
アシリンダの応答性が良好になり、且つ織段の立
上り特性等に基づく立上り速度に応じた割合でテ
ンシヨンローラの下降速度を調節できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の織段防止装置における電磁弁付
きエアシリンダの断面図、第２図は本考案による
織段防止装置の第１実施例の全体構成図、第３図
は第２図の織段防止装置における電磁弁配管系統
図、第４図Ａ，Ｂ及びＣは機台回転角度に対する
電磁弁動作、テンシヨンローラ動作及び機台回転
数の関係を示す説明図、第５図は本考案の第２実
施例についての第３図に相当する系統図である。 図中、２０はワープビーム、２１はテンシヨン
ローラ、２６は支持装置（レバー）、２７は空気
出口管、２８はエアシリンダ、２９はピストンロ
ツド、３０は絞り弁、３１は電磁弁、３２はシリ
ンダ接続用ポート、３３は空気入口管、３４は空
気供給源接続用ポート、３５は排気ポート、３８
は逆止弁である。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 １ ワープビームから引き出された経糸が織前に
   導かれる経路中で前記経糸に張力を付与するテ
   ンシヨンローラと、該テンシヨンローラを揺動
   自在に支持する可動の支持装置と、該支持装置
   に当接するピストンロツドを有するエアシリン
   ダと、空気入口管を介して空気供給源に接続さ
   れる空気供給源接続用ポート、空気出口管を介
   して前記エアシリンダに接続されるシリンダ接
   続用ポート、及び排気ポートを有する方向切換
   電磁弁と、前記エアシリンダと前記方向切換電
   磁弁の前記シリンダ接続用ポートを接続する管
   路中に介在した調節可能な絞り弁とを備え、前
   記方向切換電磁弁は、前記エアシリンダへの空
   気供給時、前記空気供給源接続用ポートと前記
   シリンダ接続用ポートとを前記排気ポートへの
   通路を遮断したまま連通し、前記エアシリンダ
   からの空気排出時、前記空気供給源接続用ポー
   トと前記シリンダ接続用ポートとを遮断し、前
   記絞り弁を介して前記シリンダ接続用ポートと
   前記排気ポートとを連通させるように構成され
   ている織機の織段防止装置。 ２ 前記絞り弁は前記空気出口管に設けられてい
   る実用新案登録請求の範囲第１項記載の織機の
   織段防止装置。 ３ 前記絞り弁は前記エアシリンダから前記方向
   切換電磁弁への流れを阻止する機能を有する逆
   止弁付きである実用新案登録請求の範囲第２項
   記載の織機の織段防止装置。