JPH0333590B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は食品に対し保存効果がある揮散性物質
を透過性の制御された高分子連続皮膜フイルムか
らなる袋に包装し、食品と共に包装密封してなる
食品の保存方法に関するものである。 さらに詳しくは、揮散性物質を封入する袋とし
て、外層が完全けん化型ポリビニルアルコールフ
イルムまたはエチレン−酢酸ビニル共重合体けん
化物フイルム、内層がエチレン−酢酸ビニル共重
合体からなる積層フイルムを用いることを特徴と
するものである。 従来から、包装系内に炭酸ガス、窒素ガス等の
不活性気体を充填して食品の色や香りの変化を防
止したり、あるいは酸化や腐敗の進行を抑制する
方法がとられていた。又エチルアルコール等の気
化性液体を無水ケイ酸、パーライト、合成ゼオラ
イト等の無機質粉体に吸着させた粉末や、化学反
応あるいは交換脱着反応などにより炭酸ガス等を
発生する物質を通気孔を設けたフイルム、紙等の
小袋体に充填して包装系内に配置することで同様
の効果を有する包装方法も用いられている。 しかしながら例えばガス充填包装では、特別な
高価なガス充填装置が必要であり又初期ガス濃度
を維持する為に、アルミニウム箔、塩化ビニリデ
ン等ガス透過性の非常に小さい特別な包装材料を
使用する必要があるうえ適用し得る食品に限定が
ある。又食品保存効果を有する気化性液体を無機
質に吸着させ粉末化させる場合、吸着させる量に
限度があり、かつ非常に嵩ばり又流動性等の点で
包装加工作業が煩雑である等の問題点がある。更
に孔をあけた小袋を用いる為に粉末や吸着されて
いる液体が包装系内に出て来る恐れもあり、又ガ
ス発生のコントロールが非常に難かしい欠点を有
していた。 更に近年食品添加物としての食品保存料が忌避
される傾向にあり、蒸気として包装系内の雰囲気
をコントロールすることで特に食品の微生物学的
変敗を防止し得る包装が強く望まれている。 本発明は、これらの事情を鑑みなされたもの
で、食品の保存性に効果があり、安全性の高い揮
散性物質を透過性の制御された高分子連続皮膜フ
イルムからなる袋に包装し、食品と共に包装、密
封してなる食品の保存方法である。 ここで本発明において効果を有する揮散性物質
としては、エチルアルコール、酢酸、プロピオン
酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、クエン酸および
アスパラギン酸等の有機酸、シナモン油、ガーリ
ツク油、オニオン油、マスタード油、ピメントベ
リー油、オレガノ油およびカシア油等の香辛料の
精油のいずれか一種またはこれらの混合物からな
る。 また上記揮散性物質をそのまま使用せず、この
揮散性物質をエチルアルコール、水とエチルアル
コールの混合液に溶解させて用いてもよい。 さらに上記揮発性物質を成分として含む発酵醸
造物、天然抽出物も用いることができる。 そして使用形態として上記揮発性物質を蒸気揮
散性を損なわない範囲で、これら物質に対して可
溶性樹脂を加え粘稠な流動体として用いることが
できる。 この可溶性樹脂として例えば部分ケン化型ポリ
ビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ニト
ロセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエ
チルセルロース、ヒドロキシプロピルロースがあ
る。 フイルムとして、外層が完成けん化型ポリビニ
ルアルコールフイルムまたはエチレン−酢酸ビニ
ル共重合体けん化物フイルム、内層が酢酸ビニル
含有量が３モル％から50モル％、好ましくは８モ
ル％から33％の範囲内のエチレン−酢酸ビニル共
重合体フイルムからなる積層フイルムである。 ここで本発明の包装袋の積層フイルムで用いる
完全けん化型ポリビニルアルコールおよびエチレ
ン−酢酸ビニル共重合体けん化物は、低湿度条件
下において気体遮断性を示し、高湿度条件下では
逆に気体遮断性が低下することは知られている
が、これらは、ヒートシール性がないため使用し
難いものであつた。 またエチレン−酢酸ビニル共重合体は、比較的
大きな気体透過性を有し、しかもヒートシール性
を有することが知られているが、湿度の如何に関
係なく気体透過性を有するため、気体透過性を制
御することはできないものであつた。 本発明は、これら材料を組合せることにより、
気体透過性の制御が可能で、しかも高速シールが
可能な積層フイルムからなる袋に揮散性物質を封
入することにより可能とした。 以下図面に従い本発明を詳細に説明する。 本発明は、第１図に示すように揮散性物質１を
積層フイルムからなる袋２に封入し、該袋２を食
品３と共に容器４内に包装、密封した食品の保存
方法である。 ここで揮散性物質を封入する袋は、第２図に示
すように外層５が、完成けん化型ポリビニルアル
コールフイルムまたはエチレン−酢酸ビニル共重
合体けん化物フイルムからなる。 また内層６は、酢酸ビニル含有量が３モル％か
ら50モル％、好ましくは、８モル％から33モル％
の範囲内のエチレン−酢酸ビニル共重合体フイル
ムからなる。 そして外層５の厚さは、12μ〜75μであること
が望ましい。厚さが12μ以下であると包装作業時
の取扱い上、または流通段階において衝撃等の力
が加わることにより破損したりピンホールが発生
したりするおそれがある。厚さが75μ以上である
場合には高湿度条件下の初期の気体透過速度が低
くなりすぎる傾向があり、またフイルムの剛性が
大きすぎて充填作業時の作業性が悪くなるという
問題が生じる。 内層６は酢酸ビニル含有量が３モル％より50モ
ル％までの範囲内、好ましくは８モル％より33％
までの範囲内にあるものであることが望まれる。
その理由は、エチレン−酢酸ビニル共重合体の気
体透過性は雰囲気中の湿度に対する依存性は比較
的少ないが、酢酸ビニル含有量による差が大き
く、酢酸ビニル含有量が低いほど気体透過性が低
いという特性を有しており、酢酸ビニル含有量が
３モル％より低い場合は気体透過性が低すぎるた
めに外層の完全けん化型ポリビニルアルコール、
あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体のけん化
物の有する気体透過性のコントロール機能が生か
されないという問題がある。また、酢酸ビニル含
有量が50モル％より高い場合はフイルムの粘着力
が大きいためスリツプ性が極端に悪くなるため充
填作業時の作業性に問題があり、しかも乾燥状態
下において包装袋内の充填物より発生する蒸気が
内層のエチレン−酢酸ビニル共重合体の層は非常
に良く透過するが、外層の完全けん化型ポリビニ
ルアルコール、あるいはエチレン−酢酸ビニル共
重合体のけん化物を透過することができず、両層
の蒸気透過性の不均衡が大きくなりすぎるために
蒸気が層間に滞留し、気泡、剥離等が発生しやす
くなるという問題がある。 この内層６の厚さは、20μ〜80μの範囲である
ことが望まれる。厚さが20μ以下である場合は製
袋時のヒートシール強度が低いために耐衝撃性に
問題がある。また厚さが80μ以上である場合は初
期の気体透過速度が低くなつてしまい、気体透過
機能の速効性に欠けるという問題がある。 以上のように本発明において用いる袋は、低湿
度条件下においては、気体遮断性を示し、高湿度
条件下においては、高い気体透過性を示すよう
に、外部雰囲気の湿度により気体透過性を制御す
ることができる。 本発明の食品の保存方法は以上詳細に説明した
様に包装系内に食品の保存効果を有する蒸気が一
定濃度で存在し、包装袋より継続的に供給される
為、包装系内に封入された食品の品質維持及び
黴、細菌等の発生・繁殖の防止が可能であり、一
旦開封された後再度使用することも可能である。 更に本発明は、従来から行なわれている食品保
存料の直接添加と異なり、食品の味や臭気への影
響も少く、安全性の上でもすぐれており、又使用
方法も、少量でかさばらず流動性のある液体を充
填・保持する事で、包装作業的にも簡便で、利用
範囲も広く、食品の流通上において多大なる利用
価値を有するものである。 次に本発明の実施例について説明する。 実施例 １ 完全けん化型ポリビニルアルコールフイルム
50μ（ビニロン−Ｕ、日合フイルム製）と酢酸ビ
ニル含有量14モル％のエチレン−酢酸ビニル共重
合体のフイルム40μを二酸硬化型ウレタン系接着
剤（アドコート305／アドコート355、東洋モート
ン製）により貼り合わせたフイルムを使用し、エ
チレン−酢酸ビニル共重合体側を内面として端部
をヒートシールした寸法７cm×５cmの袋状の包装
袋とし、内容物としてエタノール6gを充填し、
完全密封シールした。以下この包装袋を「袋１」
とする。 また、エチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化物
のフイルム15μ（エバール−Ｆ、クラレ製）と酢
酸ビニル含有量19モル％のエチレン−酢酸ビニル
共重合体のフイルム40μを二液硬化型ウレタン系
接着剤（アドコート527／アドコート9L−１、東
洋モートン製）により貼り合わせたフイルムを使
用し、エチレン−酢酸ビニル共重合体側を内面と
して端部ヒートシールした寸法５cm×５cmの袋状
物の包装袋とし、内容物としてエタノール４ｇを
充填し完全に密封シールした。以下この包装袋を
「袋２」とする。 各々エタノールを充填した両包装袋を調湿され
た部屋の中に置いた時のエタノール蒸気透過率を
各包装袋の重量変化より換算した値を第１表に示
す。更に両包装袋を中の空気の湿度を調整した塩
化ビニリデンコート延伸ポリプロピレン／ポリエ
チレンより成る袋の中に入れ密封した場合の袋中
の空気に含まれるエタノール蒸気濃度をガスクロ
マトグラフにより測定した値を第２表に示す。た
だし、袋中の空気の容積は500mlである。

【表】

【表】 このように本発明で用いる包装袋は雰囲気中の
相対湿度が65％以下の低湿度側では充填されたエ
タノールの蒸気をほとんど完全に遮断し、75％以
上の高湿度側ではエタノール蒸気を良く放出し、
蒸気放出性のコントロール機能を有する。しかも
充填されたエタノールは常に気体の形態で放出さ
れており、液体のエタノールが包装袋より漏れ出
る現像は認められなかつた。 また、ヒートシール性のない完全けん化型ポリ
ビニルアルコール、あるいはエチレン−酢酸ビニ
ル共重合体のけん化物とヒートシール性を有する
エチレン−酢酸ビニル共重合体を組み合わせるこ
とにより、いわゆる熱バーによる高速ヒートシー
ルが可能である。したがつて、充填作業時の作業
スピードが高く、生産性の面において有利であ
る。 以上詳細に説明した様に、本発明で用いる包装
袋は低湿度条件下においては気体透過性を示さ
ず、高湿度条件下においてのみ気体透過性を示す
という外部雰囲気の湿度条件による気体透過性の
コントロール機能を有するので、内容物として食
品の保存効果を有する蒸気を発生する物質を充填
した場合に、保管中には蒸気を放出せず、実際使
用時、すなわち本発明においては食品と共存する
高湿度状態においてのみ蒸気を放出するために食
品保存用途の包装袋として取扱いも便利であり、
しかも内容物は液体の状態で漏れ出ることはない
ので内容物が食品に付着して味覚を損なう心配も
ない。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明の保存方法の一例を示す説明
図、第２図は、本発明において用いる包装袋の断
面図である。 １……揮散性物質、２……袋、３……食品、４
……容器、５……外層、６……内層。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 揮散性物質を外層が完全けん化型ポリビニル
   アルコールフイルムまたはエチレン−酢酸ビニル
   共重合体けん化物フイルム、内層が酢酸ビニル含
   有量が３モル％から50モル％の範囲であるエチレ
   ン−酢酸ビニル共重合体フイルムからなる積層フ
   イルムからなる袋に封入し、該袋を食品と共に包
   装、密封してなる食品の保存方法。 ２ 揮散性物質が、エチルアルコール、酢酸、プ
   ロピオン酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、クエン
   酸およびアスパラギン酸等の有機酸、シナモン
   油、ガーリツク油、オニオン油、マスタード油、
   ピメントベリー油、オレガノ油およびカシア油等
   の香辛料の精油のいずれか一種を成分として含む
   発酵醸造物または天然抽出物である特請請求の範
   囲第１項記載の食品の保存方法。 ３ 揮散性物質が、エチルアルコール、酢酸、プ
   ロピオン酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、クエン
   酸およびアスパラギン酸等の有機酸、シナモン
   油、ガーリツク油、オニオン油、マスタード油、
   ピメントベリー油、オレガノ油およびカシア油等
   の香辛料の精油のいずれか一種またはこれらの混
   合物からなる特許請求の範囲第１項乃至第２項記
   載の食品の保存方法。 ４ 揮散性物質が、エチルアルコール、酢酸、プ
   ロピオン酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、クエン
   酸およびアスパラギン酸等の有機酸、シナモン
   油、ガーリツク油、オニオン油、マスタード油、
   ピメントベリー油、オレガノ油およびカシア油等
   の香辛料の精油のいずれか一種またはこれらの混
   合物をエチルアルコール、水とエチルアルコール
   の混合液に溶解させた溶液からなる特許請求の範
   囲第１項乃至第２項記載の食品の保存方法。 ５ 揮散性物質が、エチルアコール、酢酸、プロ
   ピオン酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、クエン酸
   およびアスパラギン酸等の有機酸、シナモン油、
   ガーリツク油、オニオン油、マスタード油、ピメ
   ントベリー油、オレガノ油およびカシア油等の香
   辛料の精油のいずれか一種またはこれらの混合物
   に該物質に対して可溶な部品ケン化型ポリビニル
   アルコール、ポリビニルブチラール、ニトロセル
   ロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセ
   ルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の可
   溶性樹脂を加えた特許請求の範囲第１項乃至第２
   項記載の食品の保存方法。 ６ 揮散性物質を封入する袋の外層の厚さが12μ
   〜75μ、内層の厚さが20μ〜80μの範囲である特許
   請求の範囲第１項乃至第５項記載の食品の保存方
   法。