JPH0329993Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、直流電動機の尻上り速度特性の補償
回路に関するものである。

〔従来の技術〕

従来、直流電動機の速度制御方式として、電機
子電圧を可変して回転速度を可変制御するものが
広く用いられているが、この方式においては電機
子反作用の影響により電機子電流の増加に伴つて
回転速度が増加するという尻上り特性があり、制
御の安定性を悪くするという弱点を持つている。

そこで、第２図に示すように、電機子１に補償
巻線２を直列に挿入し、この補償巻線２を介して
電機子電流を流すことにより尻上り特性の解消を
図るようにしたものがある。

また、第３図に示すように、電機子１の印加電
圧を主サイリスタ装置４によつて制御する一方、
電機子電流を変流器５により検出して整流器６に
よつて整流した後、増幅器７を介して界磁電流制
御増幅器８に入力し、界磁電流設定器９で設定さ
れた設定値を電機子電流の値に応じて増加させ、
これによつて得た変更後の界磁電流設定値と変流
器１０で検出し、さらに整流器１１で整流した実
際の界磁電流値とが一致するように位相器１２か
ら発生するパルスの位相を制御し、このパルスに
よつて界磁用サイリスタ装置１３を制御して界磁
電流を制御することにより、尻上り特性を補償す
るようにしたものがある。

〔考案が解決しようとする問題点〕

ところが、前者の補償巻線２を用いたもので
は、この補償巻線２に常に一定方向の電機子電流
を流す必要があるため、整流器３を必要とし、さ
らに制御盤と補償巻線２との間を接続するための
ケーブルが必要となり、全体としてコストが高く
なるという問題点があつた。さらに、補償巻線２
が付加されることにより直流電動機本体の外形が
大きくなるという問題点があつた。

一方、後者のものでは界磁電流を単純に強め側
に制御しているため、例えばクレーン等で巻下げ
運転を行う場合、制動電流の増加でも界磁電流が
増加することになり、これに伴いさらに制動電流
が増加し、制動が不安定になつてしまうという問
題点があつた。

〔問題点を解決するための手段および作用〕

本考案は、回転方向を示す信号と電機子電流の
方向を示す信号とに基づき、正転駆動、逆転駆動
時と正転制動、逆転制動時とで界磁電流の補償方
向および補償量を切替える手段を設けることによ
り、上述した問題点を解決している。

〔実施例〕

以下、本考案を図示する実施例に基づき詳細に
説明する。

第１図は本考案の一実施例を示す回路図であ
り、第３図と同一部分は同一記号で表わし、その
説明は省略するものとする。

第１図において、電機子１の電機子電流は第２
図と同様に主サイリスタ装置（図示せず）で制御
され、また界磁巻線Ｆの界磁電流は界磁電流設定
器９の設定値を基準にして界磁電流制御増幅器
８、位相器１２および界磁用サイリスタ装置１３
から成る部分で制御される。

しかし、本実施例においては直流電動機の４象
限の運転モード（正転駆動、逆転駆動、正転制
動、逆転制動）に応じて界磁電流の補償の方向と
補償量が切替えられる。

すなわち、電機子１に直列接続されたシヤント
抵抗１５により電機子電流の値に応じた電圧信号
を取出し、絶縁アンプ１６に入力する。すると、
絶縁アンプ１６の入力は正転駆動時はプラス、逆
転駆動時はマイナスとなり、その出力は正転駆動
時はプラス、逆転駆動時はマイナスとなる。

そこで、このようにして得た電機子電流の方向
を示す電圧を２系統に分け、一系統はリレーRY
２の常閉接点に直接入力し、他の一系統は反転増
幅器１７を介してリレーRY２の常開接点に入力
する。

リレーRY２は、逆転スイツチSW１がオン操
作された時にオンし、回転速度が零になつた時に
オフとなる接点ZRと、自己保持接点RY２（Ｈ）
とを介して自己保持するように構成されている。
従つて、リレーRY２のコモン接点には、正転駆
動時および逆転駆動時ともプラスの電圧信号が得
られる。しかし、正転制動時はリレーRY２はオ
ンとならず、また、絶縁アンプ１６の出力電圧は
マイナスであるため、リレーRY２のコモン接点
の出力電圧はマイナスとなる。さらに、逆転制動
時はリレーRY２はオンとなるが、絶縁アンプ１
６の出力電圧がプラスとなるため、リレーRY２
のコモン接点が出力電圧は正転制動時と同様にマ
イナスとなる。

このリレーRY２のコモン接点の出力電圧は界
磁電流補償用アンプ１８とアンプ１９に並列に供
給される。

アンプ１９はリレーRY２のコモン接点の出力
電圧を増幅してコンパレータ２０に供給する。コ
ンパレータ２０はアンプ１９からの電圧がプラス
ならばリレーRY１をオンし、マイナスならばオ
フにするように構成されている。一方、界磁電流
補償用アンプ１８の入出力端には駆動時ゲイン調
整用の抵抗器VR１と制動時ゲイン調整用の抵抗
器VR２とが並列に接続され、しかも抵抗器VR
２はリレーRY１の常閉接点が開くことによつて
解放されるようになつている。

従つて、正転駆動時および逆転駆動時はリレー
RY１がオンするため、界磁電流補償用アンプ１
８のゲインは大きくなり、逆に正転制動時および
逆転制動時のゲインは小さくなる。

このように駆動時と制動時とでゲインが切替わ
るアンプ１８の入力にはリレーRY２のコモン接
点の出力電圧が供給されている。従つて、このア
ンプ１８の出力電圧は正転駆動時および逆転駆動
時においてプラス電圧となり、逆に正転制動時お
よび逆転制動時においてはマイナス電圧となり、
しかもプラス電圧の出力ゲインの方が大きくな
る。

このアンプ１８の出力電圧は界磁電流制御増幅
器８に入力され、界磁電流設定器９の出力電圧に
加算される。これにより、界磁電流設定器９の出
力電圧には、正転駆動時および逆転駆動時ではプ
ラスの電圧が加算され、逆に正転制動時および逆
転制動時はマイナスの電圧が加算されるものとな
り、駆動時と制動時とで、界磁電流の補償の方向
が切替えられる。しかも、アンプ１８のゲインの
切替えに応じてその補償量も切替えられる。

このような構成によれば、電機子電流の増加に
よつて回転速度が尻上り的に上昇する特性を界磁
電流の増減によつて駆動時および制動時を問わず
補償することができ、安定した速度制御を実現す
ることができる。

従つて、クレーン等のように運動モードが頻繁
に変わる場合の速度制御装置に適用すれば、極め
て有効なものとなる。また、界磁電流の補償量を
抵抗器VR１とVR２とで自由に設定できるため、
各種の直流電動機に容易に適用できる。

考案の効果 以上の説明から明らかなように本考案によれ
ば、界磁電流の補償の方向と補償量とを運転モー
ドに応じて切替えるようにしたため、どの運転モ
ードにおいても尻上り特性を確実に補償すること
ができ、安定した速度制御を実現できるという効
果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例を示す回路図、第２
図および第３図は従来の回路を示す図である。 １……電機子、８……界磁電流制御増幅器、９
……界磁電流設定器、１２……位相器、Ｆ……界
磁巻線、１６……絶縁アンプ、１７……反転増幅
器、１８……界磁電流補償用アンプ、２０……コ
ンパレータ、RY１，RY２……リレー、SW１…
…逆転スイツチ、VR１，VR２……抵抗器。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 直流電動機の電機子電圧を制御する主サイリス
   タ装置と、電機子電流値に応じて界磁電流を制御
   する界磁用サイリスタ装置とを備えた直流電動機
   の速度制御装置において、 電機子に直列接続され、電機子電流の値に応じ
   た電圧信号を取り出すシヤント抵抗と、このシヤ
   ント抵抗により取り出された電圧信号が入力さ
   れ、直流電動機の正転駆動および逆転制動時はプ
   ラス、逆転駆動および正転制動時はマイナス出力
   を送出する絶縁アンプと、この絶縁アンプの出力
   を直流電動機の正転時には直接界磁電流補償用ア
   ンプおよびコンパレータに供給し、直流電動機の
   逆転時には反転増幅器を介して界磁電流補償用ア
   ンプおよびコンパレータに供給する正転逆転切換
   接点と、前記コンパレータの出力側に設けられ、
   正転逆転切換接点から出力される電圧がプラスの
   ときに動作するリレーと、前記界磁電流補償用ア
   ンプに設けられ、前記リレーの動作、不動作に応
   じてゲインが切替えられる補償用アンプのゲイン
   切替部と、前記界磁用サイリスタ装置に流れる界
   磁電流を検出し、この検出値と界磁電流設定器で
   設定した設定値および界磁電流補償用アンプの出
   力値がそれぞれ入力されるアンプと、このアンプ
   の出力が供給され、前記界磁電流補償用アンプの
   出力に応じて界磁電流の補償の方向および補償量
   を切替えて界磁用サイリスタ装置を制御する位相
   器とを備えたことを特徴とする直流電動機の尻上
   り速度特性の補償回路。