JPH0240261Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、内燃機関の副室構造、特に副室をセ
ラミツク材で構成して、機関の熱効率、副室の耐
久性、耐熱性を高めるとともに、セラミツク部材
の外周に金属性のリングをはめあわせて、副室の
取扱いを容易にした副室構造に関するものであ
る。

（従来の技術） セラミツクの耐熱性、断熱性に優れた特性を利
用して、内燃機関、特にデイーゼル機関の渦流室
の一部もしくは、全体をセラミツクで構成し、機
関の熱効率の向上、排気ガス特性の改良、そして
副室の耐久性の向上を図つた試みがいくつか提案
されている。

しかしながら、セラミツク材は、シリンダヘツ
ドを構成する材料、たとえば鋳鉄あるいはアルミ
ニウム合金と比べ、熱膨張率が小さいため、シリ
ンダヘツドが高温になると副室を保持したシリン
ダヘツドの保持力が低下し、特に副室を上、下に
分割して構成するセラミツク製の副室構造におい
ては、副室を構成するセラミツク部材の相対回転
運動が起こり、主燃焼室及び副室を連通する噴孔
の位置がずれて、正常な燃料の着火、爆発がおこ
なわれなかつたり、さらに、激しい回転運動力が
作用した場合には、燃料噴射ノズルやグロープラ
グを損傷するという問題点があつた。

このため、たとえば実開昭58−191330号公報に
開示された副室構造においては第４図に示すよう
に、セラミツクスロウアチヤンバ３ａ、セラミツ
クスアツパーチヤンバ３ｂは、ともにセラミツク
材からなり、各チヤンバにはピン挿入穴、７，１
５がそれぞれ設けられており、またシリンダヘツ
ド１の窪み２の内面に沿つて、シリンダヘツド下
面からセラミツクアツパーチヤンバ３ｂの位置ま
で、ストレートにピン係合用凹部１６が貫通して
設けられている。この既知の副室構造において
は、ピン９がピン挿入穴７，１５にそれぞれ挿入
され、その凹部係合部９ｂでピン係合用凹部１６
に圧入代をもつて係合することにより、セラミツ
クチヤンバ３は、金属性のシリンダヘツド１に固
定されていた。

（考案が解決しようとする問題点） しかしながら、この様な構成では、セラミツク
部材と金属部材との熱膨張率の差が大であること
に起因して機関の運転中、セラミツクス部材と金
属部材との間に隙間が生じるため、急激に圧縮さ
れて高温、高圧になつた空気の中に燃料を噴射
し、着火、爆発させて生じせしめた爆発エネルギ
ーの一部がピン係合用凹部にもれてしまい機関の
出力が低下すると言う問題があつた。

また、シリンダヘツドの下側に設けられた副室
挿入孔に、係合用ピンが突出したセラミツクスア
ツパーチヤンバおよびセラミツクスロウアチヤン
バをそれぞれ別個に挿入しなければならないの
で、高強度ではあつても、脆性材料であるセラミ
ツクス部材を損傷しないよう充分注意しながら位
置決め、組付け作業を行なわなければならず、組
付け作業が非常に煩わしいという欠点があつた。

（考案の目的） 本考案は、上述した問題を解決するためになさ
れたものであり、取扱いが容易で、副室を構成す
る上側及び下側部材が機関の運転中に相対回転す
ることがなく、しかもガスシール性に優れた副室
構造を提供することを目的とする。

（考案の構成） この目的を達成するため、本考案の内燃機関の
副室構造は、上部セラミツク体と上部セラミツク
体に衝合される下部セラミツク体と、これら両セ
ラミツク体にて画成される副室と、この副室と主
燃焼室とを連通する噴孔と、両セラミツク体の外
周にはめあわされる円筒状の金属製のリング部材
とを具える内燃機関の副室構造において、リング
部材の上端部近傍の上部セラミツク体の外周に第
１のキー部材の一部を収容する切込み部を設け、
この切込み部に対応するリング部材の上端部内周
に第１のキー部材の残部を収容する溝部を設け、
これら切込み部と溝部との間に第１のキー部材を
挿入し、リング部材の下端部近傍の下部セラミツ
ク体の外周に第２のキー部材の一部を収容する切
込み部を設け、この切込み部に対応するリング部
材の下端部内周に第２のキー部材の残部を収容す
る溝部を設け、これら切込み部と溝部との間に第
２のキー部材を挿入してなる。

（作用） 従つて、副室を画成する上部及び下部両セラミ
ツク体と、それら部材の外周にはめあわされる金
属製のリング部材を、リング部材の両端近傍にお
いてキー止めした一体の構成としたので、燃料の
爆発、機関の振動に起因する回転力が両セラミツ
ク体に作用しても、両セラミツク体はその軸線ま
わりで回動することがない。しかも金属製のリン
グ部材は、シリンダヘツドと同程度の線膨張率を
有しているので、副室を保持するシリンダヘツド
の保持力が機関の運転中に低下することがない。

（実施例） 以下に本考案の実施例を図面に基づいて説明す
る。

第１図は、本考案の副室構造５０をシリンダヘ
ツド２０に形成した副室挿入孔２１に挿入した状
態を表す。

２２はピストン、２３はこのピストン２２を収
容するシリンダブロツクであり、２４はガスケツ
トである。副室構造５０は、上部セラミツク体２
５、このセラミツク体の衝合する下部セラミツク
体２６、そして両セラミツク体２５，２６に嵌合
される金属製のリング部材４０、さらに上部セラ
ミツク体２５とリング部材４０との間に形成され
た切込み部４５および溝部６１に挿入される第１
のキー部材４４、下部セラミツク体２６とリング
部材４０との間に形成された切込み部４６および
溝部６２に挿入される第２のキー部材４１よりな
る。ここで符号４７は、副室挿入孔２１とリング
部材４０との間に形成された断熱空気層を示す。
この断熱空気層４７は、副室構造５０をシリンダ
ヘツド２０に圧入することにより、金属製のリン
グ部材の上端部４８及び下端部４９にてシールさ
れている。また、圧入することによりリング４０
とシリンダヘツド２０とが相対回転するのを防止
することができるが、一層確実なものとするた
め、第３図に示すように、従来既知のノツクボー
ル８０を、リング部材４０に設けられたノツクボ
ール収容くぼみ８１とシリンダヘツド２０のガス
ケツト２４側の下端面に設けられたノツクボール
係合用凹部８２との間に、介在させてもよい。

シリンダヘツド２０内には燃料噴射ノズル収容
部３１及びグロープラグ収容部３２がそれぞれ形
成してあり、これら収容部は上部セラミツク体に
形成した孔３３，３４を介して副室２８に連通し
ている。

次にセラミツク部材とリング部材との係合の様
子を第２図ａ，ｂ，ｃ，ｄを用いて説明する。

第２図ａに示した実施例は、下部セラミツク体
２６とリング部材４０とを係合させるため、下部
セラミツク体２６の底面外周に第２のキー部材４
１の一部を収容する切込み部４６を設けたもので
ある。この切込み部４６は、平坦な底面を有する
半月状をしており、下部セラミツク体２６に予め
形成しても良く、リング部材４０を嵌着した後に
形成しても良い。なお第２のキー部材４１の残部
は、リング４０に予め形成した溝部６２に収容す
る。

この溝部６２はキー部４１の寸法、特に第２の
キー部材の幅に一致する寸法に形成されていれば
良いので、第２のキー部材４１を挿入する作業は
容易である。

こうして下部セラミツク部体２６とリング部材
４０とは一体に固着することができる。なお、リ
ング部材４０としては、種々の金属が利用可能で
あるが、仕様状況を考慮したならば、耐熱性金属
であることが望ましい。また第１、第２のキー部
材４４，４１は金属材、セラミツク材双方の適用
が可能である。

第２図ｂに示した実施例では、平坦な底面を有
する切込み部４６に代わり、リング部材４０に形
成した溝部６２と同様な溝状の切込み部４６ａを
下部セラミツク体２６の底面外周に形成し、これ
ら切込み部４６ａと溝部６２とにより第２のキー
部材４１を収容する構成としたものである。

第２図ｃに示した実施例は、上部セラミツク体
２５とリング部材４０を係合させるため、リング
部材４０の端面に対応する上部セラミツク体２５
の外周に第１のキー部材４４の一部を収容する切
込み部４５を設けたものである。この切込み部４
５は、平坦な底面を有する半月状をしており、上
部セラミツク体２５に予め形成しても良く、リン
グ部材４０を嵌着した後に形成しても良い。なお
第１のキー部材４４の残部はリング部材４０に予
め形成した溝部６１に収容する。

この溝部６１は、第１のキー部材４４の寸法、
特に第１のキー部材４４の幅に一致する寸法に形
成されていれば良いので、第１のキー部材４４を
挿入する作業は容易である。

第１、第２のキー部材４４及び４１は、圧入、
焼バメなどにより嵌着させても良いし、接着剤で
固着させてもよく、このようにして上部セラミツ
ク部材２５と、リング部材４０とを一体に固着さ
せることができる。

第２図ｄに示した実施例では、平坦な底面を有
する切込み部４５に代わり、リング部材４０に形
成した溝部６１と同様な溝状の切込み部４５ａを
形成し、これら切込み部４５ａと溝部６１とによ
りキー部材４４を収容する構成としたものであ
る。なお図では、キー部材４１，４４が同一直線
上に配置されているが、これに限定されるもので
はない。

また、第１のキー部材および第２のキー部材の
形状としては方形板状のものを図示したが、本考
案はこのような形状に限られるものではなく、円
板状、楕円状等であつても良い。

ここで上部及び下部セラミツク体としては、
Si₃N₄，SiC，ZrO₂，Al₂O₃、ガラスセラミツク
ス、ムライト等を用いる。またキー部材もこれら
セラミツクあるいはセラミツクと同程度の熱膨張
率を有する金属が好ましい。しかし、これら金属
に限定されるものではなく、熱膨張率がセラミツ
クより大きな金属でできていても、切込み部及び
溝部寸法をキー部材より必要程度大きくし、キー
部材の膨張による上部及び下部セラミツク体の押
し割りを防止する構成とすればよい。

（考案の効果） 以上詳述したように本考案の構造では、上部セ
ラミツク体と下部セラミツク体と、これら両セラ
ミツク体の外周に金属製のリング部材を嵌合させ
てなる二分割構成の内燃機関の副室構造におい
て、リング部材の上端部近傍の上部セラミツク体
の外周とリング部材との間にキー部材を挿入し、
リング部材の下端部近傍の下部セラミツク体の外
周とリング部材との間に他のキー部材を挿入して
一体に構成したため、リング部材の外周に圧入に
不都合なキー部材のはみ出し部がないので、圧入
によりシリンダヘツドに確実に取り付けることが
でき、セラミツクと金属との熱膨張率の差に起因
する、副室を保持するシリンダヘツドの保持力の
低下時に発生する上部セラミツク体及び下部セラ
ミツク体の相対回転運動の問題を有利に解決する
ことができる。

しかも、両セラミツク体に一体のリング部材に
より、シリンダヘツドに設けた副室挿入孔との間
にシール性に優れた空気層を容易に形成すること
ができ、またシリンダヘツドへの取付け作業時の
損傷や、搬送中に副室構造が他の副室構造に衝突
して損傷したりすることがほとんどないなど、本
考案の内燃機関の副室構造は、数多くの利点を有
する。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本考案の副室構造をシリンダヘツド
に挿着した様子を示す図、第２図ａは第１図にお
いて線−で切断した時の断面図、第２図ｂは
本考案の他の実施例の一部を断面にして示した
図、第２図ｃは第１図において線−で切断し
た時の断面図、第２図ｄは本考案の他の実施例の
一部を断面にして示した図、第３図は本考案の他
の実施例をシリンダヘツドに挿着した要部断面
図、第４図は従来既知の副室構造を示す図であ
る。 １……シリンダヘツド、２……窪み、３……セ
ラミツクチヤンバ、４……渦流室、９……ピン、
９ｂ……凹部係合部、１６……ピン係合用凹部、
２０……シリンダヘツド、２１……副室挿入孔、
２２……ピストン、２３……シリンダブロツク、
２４……ガスケツト、２５……上部セラミツク
体、２６……下部セラミツク体、２８……副室、
３１……燃料噴射ノズル収容部、３２……グロー
プラグ収容部、３３，３４……孔、４０……リン
グ部材、４１，４４……キー部材、４５，４６…
…切込み部、４７……断熱空気層、４８……上端
部、４９……下端部、６１，６２……溝部、８０
……ノツクボール、８１……ノツクボール収容く
ぼみ、８２……ノツクボール係合用凹部。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 上部セラミツク体と、上部セラミツク体に衝合
   される下部セラミツク体と、これら両セラミツク
   体にて画成される副室と、この副室と主燃焼室と
   を連通する噴孔と、両セラミツク体の外周にはめ
   あわされた金属製のリング部材とを具える内燃機
   関の副室構造において、 リング部材の上端部近傍の上部セラミツク体の
   外周に第１のキー部材の一部を収容する切込み部
   を設け、この切込み部に対応するリング部材の上
   端部内周に第１のキー部材の残部を収容する溝部
   を設け、これら切込み部と溝部との間に第１のキ
   ー部材を挿入し、リング部材の下端部近傍の下部
   セラミツク体の外周に第２のキー部材の一部を収
   容する切込みを設け、この切込み部に対応するリ
   ング部材の下端部内周に第２のキー部材の残部を
   収容する溝部を設け、これら切込み部と溝部との
   間に第２のキー部材を挿入してなることを特徴と
   する内燃機関の副室構造。