JPH029066Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案はデイーゼルエンジンの副室、特に略全
周囲をセラミツク材で形成した副室の構造に関す
る。

（従来技術） デイーゼルエンジンにおいては、燃焼室を主燃
焼室と該主燃焼室に噴孔を介して連通する副室と
で構成し、該副室内に燃料噴射ノズルから燃料を
噴射して着火させると共に、半燃焼状態のガスを
主燃焼室に噴出して拡散燃焼させるようにした所
謂副室式の燃焼方式が採用されることがある。

この燃焼方式においては、炭化水素等の未燃焼
ガスの排出を抑制する上で、或いは燃料噴射時期
を遅らせてデイーゼルノツクを軽減する上で、上
記副室内を高温に保持することが重要であり、そ
こで、例えば実開昭54−97503号公報に開示され
ているように、副室の略全周囲を断熱性に優れた
セラミツク材で形成することが試みられている。
その場合に、該セラミツク材には、燃料噴射ノズ
ルから噴出される燃料噴流の貫通孔と、始動性向
上のために備えられるグロープラグの先端部が挿
通される貫通孔とが設けられる。

然して、上記のように副室をセラミツク材で断
熱するようにした場合、該セラミツク材は内面が
高温、外面が低温の状態となつて、その温度差に
基づく熱膨張差によつて外面側に引張応力が生じ
る。そして、この引張応力は、上記燃料噴流の貫
通孔とグロープラグ挿通用の貫通孔とが近接して
設けられている場合に両貫通孔に挾まれた部分に
集中して作用することになるが、セラミツク材は
一般に引張応力に対して脆弱な性質を有するた
め、上記両貫通孔に挾まれた部分を起点としてヒ
ートクラツクが発生するのである。そして、この
クラツクによつて生じたセラミツク材の欠片が主
燃焼室中に落下し、ピストンやシリンダを損傷す
る等の弊害をもたらす。

（考案の目的） 本考案は、副室の略全周囲をセラミツク材で覆
つたデイーゼルエンジンにおける上記のような問
題を解消するもので、上記セラミツク材における
内外面の温度差ないし熱膨張差によるクラツクの
発生を防止することを目的とする。

（考案の構成） 即ち、本考案においては、主燃焼室に噴孔を介
して連通する副室にグロープラグ及び燃料噴射ノ
ズルが備えられ、且つ該副室の略全周囲がセラミ
ツク材で覆われた構成において、該セラミツク材
に、上記グロープラグの先端が挿通される貫通部
と燃料噴射ノズルから噴出される燃料噴流の貫通
部とを包絡する貫通孔を形成する。つまり、従
来、個々に設けられていた２つの貫通孔を連続さ
せて１つの長円形状の貫通孔とする。

このような構成によれば、セラミツク材に内外
面の温度差による引張応力が生じても、該応力が
集中する２つの貫通孔間の部分、即ち従来ヒート
クラツクの発生起点となつていた部分が除去され
ているから、該クラツクの発生が防止されること
になる。

（実施例） 以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明す
る。

第１図に示すように、デイーゼルエンジン１は
燃焼室として、シリンダブロツク２とシリンダヘ
ツド３とピストン４とによつて形成された主燃焼
室５と、シリンダヘツド３内に設けられて噴孔６
を介して主燃焼室５に連通された副室７とを有す
る。この副室７は、第２図に示すように予め組立
て一体化された中空状の副室構造体８をシリンダ
ヘツド３に設けられた凹部３ａに嵌合することに
より設けられるが、該構造体８は金属製の環状支
持部材９と、ドーム状の上部を除いて該支持部材
の内側に焼きばめされたセラミツク材１０とで構
成され、該セラミツク材１０の内部が副室７とさ
れている。

ここで、この実施例においては、セラミツク材
１０は上記噴孔６が形成された底部１０₁と、略
球形の副室７を形成する中間部１０₂及び上部１
０₃とに分割されていると共に、各部の材質とし
て、高温の燃焼ガスと低温の新気に交互に曝され
る底部１０₁はサーマルシヨツクに強い窒化珪素
が用いられ、またシリンダヘツド３との間の断熱
作用が要求される中間部１０₂及び上部１０₃は特
に断熱性に優れたジルコニア（部分安定化ジルコ
ニア）が用いられている。また、構造体８は支持
部材９の下端に設けられた鍔部９ａの外周面が凹
部３ａの入口部に圧入されることによりシリンダ
ヘツド３に保持されると共に、該支持部材９の外
周面と凹部３ａの内周面との間に生じる間隙ａ
は、セラミツク材１０の上部外周面に形成された
段付面１０ｂないし支持部材９の上端面９ｂと凹
部３ａ内に設けられた段付面３ｂとの間にガスケ
ツト１１を挾在させることによりシールするよう
になつている。

一方、シリンダヘツド３には副室７内に燃料を
噴射する燃料噴射ノズル１２と、エンジンの始動
時に該副室７内を予熱するグロープラグ１３とが
装着されていると共に、上記燃料の噴流ｂを副室
７内に導入するため、またグロープラグ１３の先
端部１３ａを副室７内に突入させるために、上記
セラミツク材１０の支持部材９から露出した上部
には貫通孔１０ａが形成されているが、この貫通
孔１０ａは第３図に示すように燃料噴流の貫通部
Ａとグロープラグ１３の貫通部Ｂとを夫々独立し
て設けたものではなく、両貫通部Ａ，Ｂを包絡す
る長円形状の１つの貫通孔とされている。

上記の構成によれば、エンジン１の運転時に副
室７内には圧縮行程時に主燃焼室５から噴孔６を
通つて空気が押し込められて渦流が形成されると
共に、圧縮行程から膨張行程に移行する際の所定
時期に該副室７内に燃料噴射ノズル１２から燃料
が噴射される。この燃料は副室７内で直ちに着火
されると共に、半燃焼状態のガスとなつて上記噴
孔６から主燃焼室５に噴出され、該主燃焼室５に
おいて更に燃焼してピストン４を押し下げる。

然して上記副室７は、その略全周囲を断熱性に
優れたセラミツク材１０で覆われているから、内
部が高温に保持されて上記燃料の着火、燃焼が良
好に行われるのであるが、その時、セラミツク材
１０は内面が高温、外面が低温の状態となつて、
その温度差に基づく内外面の熱膨張差により外面
側に引張応力が生じる。

この引張応力は、従来のように燃料噴流の貫通
孔とグロープラグの貫通孔とが個々に設けられて
いた場合には、両貫通孔に挾まれた部分（第３図
のＣ部）に集中して、該部分Ｃを起点とするヒー
トクラツクの原因となつていた。しかし、本考案
においては、貫通孔１０ａが燃料噴流ｂの貫通部
Ａとグロープラグ１３の貫通部Ｂとを包絡する１
つの孔とされて上記部分Ｃが除去されているか
ら、引張応力が生じてもクラツクの発生起点とな
る部分がなく、これによりクラツクの発生が防止
されることになる。

（考案の効果） 以上のように本考案によれば、グロープラグと
燃料噴射ノズルとが備えられる副室の略全周囲が
セラミツク材で覆われた構成において、該セラミ
ツク材に上記グロープラグの挿通用貫通部と燃料
噴射ノズルから噴出される燃料噴流の貫通部とを
包絡する貫通孔を形成する構成としたから、上記
セラミツク材における内外面の温度差ないし熱膨
張差に基づくヒートクラツクの発生起点が除去さ
れて、該クラツクの発生が効果的に防止されるこ
とになる。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施例を示すもので、第１図は
エンジンにおける副室周辺の縦断面図、第２，３
図は副室構造体の斜視図及び平面図である。 １……エンジン、５……主燃焼室、６……噴
孔、７……副室、１０……セラミツク材、１０ａ
……貫通孔、１２………燃料噴射ノズル、１３…
…グロープラグ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 主燃焼室に噴孔を介して連通する副室を有し、
   且つ該副室にグロープラグ及び燃料噴射ノズルが
   備えられたデイーゼルエンジンにおいて、上記副
   室の略全周囲をセラミツク材で覆うと共に、該セ
   ラミツク材に、上記グロープラグの先端が挿通さ
   れる貫通部と燃料噴射ノズルから噴出される燃料
   噴流の貫通部とを包絡してなる貫通孔を形成した
   ことを特徴とするデイーゼルエンジンの副室構
   造。