JPH0238027Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、主燃焼室に付随して設けられて燃料
噴射が行われる渦流室を形成する、エンジンの副
室構造に関する。

（従来技術） デイーゼルエンジンにおいては、シリンダブロ
ツクに設けられるシリンダボアに関連して形成さ
れる主燃焼室に加えて主燃焼室の上方に渦流室と
しての副室を設け、この副室に燃料を噴射すると
ともに圧縮空気に副室内での渦流を生成させて、
圧縮空気と燃料との混合状態を良好となし、それ
により、主燃焼室内での燃焼効率を高めてエンジ
ン出力を増大させるとともに、燃料消費特性を向
上させるようにした渦流室式のものが広く使用さ
れている。

斯かるデイーゼルエンジンにおける副室は、通
常、主燃焼室の上方位置においてシリンダヘツド
に穿設されて、噴孔と呼ばれる貫通孔が設けられ
た隔壁部で主燃焼室から区切られ、噴孔を通じて
主燃焼室に連通する空洞部で形成され、その中に
グロープラグが配されるとともに燃料噴射ノズル
の噴射口が臨ましめられる。従つて、副室の壁面
は、隔壁部を除いて、比較的良好な放熱特性を有
するシリンダヘツドの内壁面で形成されており、
副室内の燃焼ガスがその壁面で冷却されてしま
い、主燃焼室内での充分な燃焼効率の向上がはか
れないことになるという不都合がある。

このため、シリンダヘツドに穿設された空洞部
で直接副室を形成するのではなく、シリンダヘツ
ドに穿設された空洞部内に断熱特性に優れたセラ
ミツク材で構成されたチヤンバ部材を嵌合し、こ
のセラミツク材製のチヤンバ部材内に副室を得る
ようにすることが知られている。しかしながら、
斯かる副室構造が採られる場合にも、その外周面
がシリンダヘツドの内壁面に密着するものとなる
セラミツク材製のチヤンバ部材の側壁部を通じて
の放熱により、副室内の燃焼ガスが冷却されてし
まうという問題が残り、また、セラミツク材製の
チヤンバ部材の側壁部に熱勾配が生じて温度分布
が一様でなくなり、側壁部が熱応力が作用してク
ラツクを生じる虞があるという問題がある。

このような問題を解決すべく、副室を構成する
セラミツク材製のチヤンバ部材の外周面とシリン
ダヘツドの内壁面部との接触面積を低減せしめ
て、副室の保温をはかるようにした副室構造が提
案されている。例えば、実開昭54−45816号公報
には、副室を構成するセラミツク材製のチヤンバ
部材が、シリンダヘツドに穿設された空洞部内
に、チヤンバ部材の側壁部外周面とシリンダヘツ
ドの内壁面との間に空間部が形成されるようにし
て挿入され、チヤンバ部材の噴孔が設けられた隔
壁部の側面に焼嵌め等で固着されたリング部材
が、シリンダヘツドの空洞部の開口部分における
内壁面部に圧入もしくは焼嵌めされた副室構造が
記載されている。斯かる副室構造においては、チ
ヤンバ部材の側壁部を包囲する空間部が断熱空気
層を形成し、それによるチヤンバ部材に対しての
保温作用が得られることになる。

しかしながら、この場合、断熱空気層を形成す
る空間部は、燃料通路やプラグ挿入孔を通じてシ
リンダヘツドの外部と連通し、また、チヤンバ部
材を貫通する燃料孔やプラグ孔を通じて副室に連
通しており、密閉部とはされていないので、充分
な断熱効果を得ることが困難である。さらに、チ
ヤンバ部材の隔壁部の側面に焼嵌め等で固着され
たリング部材が、シリンダヘツドの空洞部の開口
部分における内壁面部に圧入もしくは焼嵌めされ
ることにより、チヤンバ部材の位置決めがシリン
ダヘツドの空洞部の開口部分だけでなされるの
で、チヤンバ部材のシリンダヘツドの空洞部内で
の位置及び姿勢が適正に確保されない虞れがあ
り、また、チヤンバ部材におけるリング部材の固
定部に、一般的に大なる工数を要するセラミツク
材に対しての精密な機械的工作が要求されること
になる。

（考案の目的） 斯かる点に鑑み本考案は、主燃焼室の上方にお
いてシリンダヘツドに穿設された嵌合凹部に、副
室となる内部空間を有したセラミツク材で形成さ
れた副室構成部材が、その側壁部を包囲する密閉
された断熱空間部が形成されるようにして嵌合さ
れるとともに、嵌合凹部内における副室構成部材
の位置決めが適正かつ確実になされるようにされ
たエンジンの副室構造を提供することを目的とす
る。

（考案の構成） 本考案に係るエンジンの副室構造は、シリンダ
ヘツドに穿設されて主燃焼室に開口する嵌合凹部
内に、噴孔が貫通する隔壁部とその周縁部分に連
なる側壁部とに囲まれた副室を構成するセラミツ
ク材により形成された副室構成部材が、その側壁
部の上端面を嵌合凹部を形成するシリンダヘツド
の内壁面に第１のシール部材を介在させて対接せ
しめるとともに、側壁部の外周面の上述の上端面
近傍の部分をシリンダヘツドの内壁面に直接当接
せしめ、かつ、その側壁部の外周面と嵌合凹部を
形成するシリンダヘツドの内壁面との間に空間部
を形成し、さらに、その隔壁部を貫通する噴孔を
主燃焼室に開口せしめるようにして設置され、斯
かる副室構成部材の隔壁部の周囲に、この副室構
成部材の側壁部の下端面に直接当接するとともに
第２のシール部材を介在させて対接して、嵌合凹
部の開口部に圧入されたリング部材が配されたも
のとされる。

このようにされることにより、シリンダヘツド
に設けられた嵌合凹部内に副室を構成する、セラ
ミツク材で形成された副室構成部材の側壁部を包
囲する密閉された断熱空間部が形成されて、副室
の保温が充分になされるとともに、シリンダヘツ
ドに設けられた嵌合凹部内における副室構成部材
の位置決めが、副室構成部材における熱応力の作
用が低減されるようになされ、また、副室構成部
材に対する位置決め用リンク部材の圧入が不要と
なされて、確実に行われることになる。

（実施例） 以下、本考案の実施例について述べる。

第１図は、本考案に係るエンジンの副室構造の
一例をそれが適用された渦流室式デイーゼルエン
ジンの部分とともに示す。この第１図において
は、シリンダブロツク１上にガスケツト２を介し
てシリンダヘツド３が配されており、シリンダヘ
ツド３はシリンダブロツク１に締結されている。
シリンダブロツク１の内部にはシリンダボア４が
形成されており、このシリンダボア４にはピスト
ン５が摺動可能に挿入されている。そして、シリ
ンダボア４の側壁、ピストン５の頭部及びシリン
ダヘツド３の下面で囲まれた主燃焼室６が形成さ
れている。

シリンダヘツド３には、主燃焼室６に開口する
空洞状の嵌合凹部７が穿設されており、この嵌合
凹部７内に副室８を構成する、窒化珪素セラミツ
ク等の耐熱性セラミツク材により形成された副室
構成部材９が配設されている。この副室構成部材
９は、上部副室部材１０と下部副室部材１１とで
形成されていて、上部副室部材１０は側壁部１０
ａとこれに連なるドーム状の上壁部１０ｂを有し
ており、また、下部副室部材１１は噴孔１２が貫
通する隔壁部１１ａとその周縁部分に連なる側壁
部１１ｂを有している。そして、上部副室部材１
０の側壁部１０ａの下端面部と下部副室部材１１
の側壁部１１ｂの上端面部とは相互に当接して接
合部を形成しており、これにより、上部副室部材
１０及び下部副室部材１１の内部空間が連結され
て副室８が構成されている。この副室８は、下部
副室部材１１の隔壁部１１ａを貫通する噴孔１２
を介して主燃焼室６に連通している。

このようにして、構成される副室８には、副室
構成部材９の上部副室部材１０の上壁部１０ｂに
設けられた開口部を介して、シリンダヘツド３に
設けられたグロープラグ挿入孔に取り付けられた
グロープラグ２２の先端部が挿入されており、ま
た、シリンダヘツド３に設けられた燃料噴射ノズ
ル取付孔に取り付けられた燃料噴射ノズル２３の
噴射孔が臨ましめられている。

この例では、互いに当接する上部副室部材１０
の側壁部１０ａの下端面部と下部副室部材１１の
側壁部１１ｂの上端面部との間には、環状シール
部材１３が、両側壁部の内部に隠されるようにし
て、介在されており、さらに、上部副室部材１０
の隔壁部１１ａと下部副室部材１１の側壁部１１
ｂとの接合部の外周面は板材によるリング部材１
４により締付けられている。

このようにして、上部副室部材１０と下部副室
部材１１とが組合わされて形成された副室構成部
材９は、その上部副室部材１０の側壁部１０ａの
上端面１０ｃが、嵌合凹部７を形成するシリンダ
ヘツド３の内壁面に設けられた段部１５に、環状
シール部材１６を介在せしめて対接するようにさ
れ、また、上部副室部材１０の側壁部１０ａの上
部が、シリンダヘツド３の内壁面に設けられた段
部１５に続く小径側壁面部１７ａに、比較的小な
る接触面積をもつて比較的緩やかに圧入されて装
着されている。シリンダヘツド３の内壁面には、
小径側壁面部１７ａに段部を介して続く大径側壁
面部１７ｂが、上部副室部材１０の側壁部１０ａ
及び下部副室部材１１の側壁部１１ｂの夫々の外
周面との間に所定の間隔をおいて位置するように
形成されている。

一方、シリンダヘツド３に穿設された嵌合凹部
７の主燃焼室６への開口部には、例えば、金属材
料で形成されたインサートリング部材１８が圧入
されている。このインサートリング部材１８は、
副室構成部材９の下部副室部材１１の隔壁部１１
ａの周囲に配されていることになり、副室構成部
材９の下部副室部材１１の隔壁部１１ａの周縁部
には段部１９が形成されていて、この段部１９
に、インサートリング部材１８の上端面１８ａが
比較的小なる当接面積をもつて直接当接するとと
もに、インサートリング部材１８の内周部に設け
られた段部１８ｂが環状シール部材２０を介在せ
しめて対接している。なお、下部副室部材１１の
隔壁部１１ａの周縁部の外周面とインサートリン
グ部材１８の内周面との間には小なる間隙が設け
られている。

このようにしてシリンダヘツド３に穿設された
嵌合凹部７に副室構成部材９が嵌合されることに
より、副室構成部材９の上部副室部材１０の側壁
部１０ａとシリンダヘツド３の内壁面に形成され
た小径側壁面部１７ａとの係合部が環状シール部
材１６で密封され、また、副室構成部材９の下部
副室部材１１の隔壁部１１ａとインサートリング
部材１８との係合部が環状シール部材２０により
密封され、さらに、副室構成部材９を形成する上
部副室部材１０及び下部副室部材１１の夫々にお
ける側壁部１０ａと側壁部１１ｂとの間の接合部
が環状シール部材１３及びリング部材１４により
密封されて、上部副室部材１０の側壁部１０ａ及
び下部副室部材１１の側壁部１１ｂの外周面とシ
リンダヘツド３の嵌合凹部７を形成する内壁面に
形成された大径側壁面部１７ｂとの間に密閉断熱
空間２１が得られることになる。

ここで、環状シール部材１３，１６及び２０
は、弾性中空部材で形成されているが、この弾性
中空部材の中空部に熱膨張材が充填されるように
なされてもよく、斯かる熱膨張材が充填されたも
のは、熱による疲労が軽減されるものとなる。

また、副室構成部材９は、その上部副室部材１
０の側壁部１０ａの上部がシリンダヘツド３の内
壁面に形成された小径側壁面部１７ａに圧入され
ており、また、その下部副室部材１１の隔壁部１
１ａに設けられた段部１９にインサートリング部
材１８の上端面１８ａが当接しているので、嵌合
凹部７内において左右方向及び上下方向の位置決
めが確実になされたものとなつている。

なお、副室構成部材９を構成する下部副室部材
１１の隔壁部１１ａの周縁部にインサートリング
部材１８が圧入された状態にはなつていないの
で、下部副室部材１１の隔壁部１１ａの周縁部の
外周面に精密な仕上げを施す必要はない。

第２図は、本考案に係るエンジンの副室構造の
他の例をそれが適用されたデイーゼルエンジンの
部分とともに示す。第２図において第１図に示さ
れる各部に対応する部分には、第１図と共通の符
号を付して示し、それらについての重複説明は省
略する。

この例においては、副室構成部材９は、上部副
室部材と下部副室部材とに分割されて形成される
のではなく、窒化珪素セラミツク等のセラミツク
材により、噴孔１２が貫通する隔壁部９ａ、この
隔壁部９ａの周縁部に連なる側壁部９ｂ及び側壁
部９ｂに連なるドーム状の上壁部９ｃが一体形成
されたものとなされている。そして、この副室構
成部材９の側壁部９ｂの厚さが最も薄い部分及び
その近傍の部分の外周面には、例えば、金属板材
で形成された補強リング部材２４が装着されてい
る。即ち、副室構成部材９の隔壁部９ａ、側壁部
９ｂ及び上壁部９ｃは夫々副室８における内圧を
受け、側壁部９ｂはドーム状とされた上壁部９ｃ
に比して肉厚を大にする必要があるが、この肉厚
を大にすることは密閉断熱空間２１を狭めること
になるので、側壁部９ｂの肉厚の増大ををある程
度で制限し、かつ、側壁部９ｂの強度を充分なも
のとするため、補強リング部材２４により側壁部
９ｂの外周面が締付けられているのである。

この例における他の構成及び作用効果は、第１
図に示される例と同様である。

（考案の効果） 以上の説明から明らかな如く、本考案に係るエ
ンジンの副室構造によれば、主燃焼室の上方にお
いてシリンダヘツドに穿設された嵌合凹部に配設
されて副室を形成する、セラミツク材で形成され
た副室構成部材の側壁部の外周面とシリンダヘツ
ドの嵌合凹部を形成する内壁面との間に、副室構
成部材の側壁部を包囲する密閉された断熱空間部
が形成されるので、副室の充分な保温をなすこと
ができ、従つて、副室内の燃焼ガスの副室壁面に
おける冷却を抑制して、燃焼室における燃焼効率
を効果的に向上させ、エンジン出力を増大させる
ことができる。

また、シリンダヘツドの嵌合凹部内における副
室構成部材の位置決めを、副室構成部材とシリン
ダヘツドの嵌合凹部を形成する内周面との接触面
積及びインサートリング部材との接触面積を比較
的小となされたもとで、適正かつ確実になすこと
ができ、このため、副室構成部材はそれに作用す
る熱応力が低減せしめられてクラツクの発生等が
抑制された状態で、常時、正規の位置及び姿勢に
保持されることになる。

さらに、副室構成部材にこれを嵌合凹部内で位
置決めするためのインサートリング部材を圧入す
る必要がないので、副室構成部材を形成するセラ
ミツク材に精密な工作を施すことが要求される部
分が低減せしめられるという利点もある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係るエンジンの副室構造の一
例をそれが適用された渦流式デイーゼルエンジン
の部分とともに示す概略断面図、第２図は本考案
に係るエンジンの副室構造の他の例をそれが適用
された渦流式デイーゼルエンジンの部分とともに
示す概略断面図である。 図中、１はシリンダブロツク、３はシリンダヘ
ツド、６は主燃焼室、７は嵌合凹部、８は副室、
９は副室構成部材、９ａ及び１１ａは隔壁部、９
ｂ，１０ａ及び１１ｂは側壁部、１２は噴孔、１
３，１６及び２０は環状シール部材、１８はイン
サートリング部材、２１は密閉断熱空間である。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. シリンダヘツドに穿設されて主燃焼室に開口す
   る嵌合凹部内に、噴孔が貫通する隔壁部と該隔壁
   部の周縁部分に連なる側壁部とに囲まれた副室を
   構成するセラミツク材により形成された副室構成
   部材が、上記側壁部の一方の端面部分を上記嵌合
   凹部を形成する上記シリンダヘツドの内壁面に第
   １のシール部材を介在させて対接せしめるととも
   に、上記側壁部の外周面の上記端面部分近傍の部
   分を上記シリンダヘツドの内壁面に直接当接せし
   め、上記側壁部の外周面と上記嵌合凹部を形成す
   る上記シリンダヘツドの内壁面との間に空間部を
   形成し、かつ、上記噴孔を上記主燃焼室に開口せ
   しめるようにして設置され、上記副室構成部材の
   隔壁部の周囲に、上記副室構成部材の側壁部の他
   方の端面部分に直接当接するとともに第２のシー
   ル部材を介在させて対接して、上記嵌合凹部の開
   口部に圧入されたリング部材が配されたことを特
   徴とするエンジンの副室構造。