JPH0217149Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、デイゼールエンジンにおける副燃焼
室の構造に係り、特にデイーゼルエンジンの副燃
焼室にセラミツクを適用し、熱効率、耐久性を向
上せしめたセラミツク製デイゼールエンジン副燃
焼室の構造に関するものである。

デイーゼルエンジンの副燃焼室、例えば渦流室
等にセラミツクを用いる試みはこれまでに数多く
為され、特に噴口部を形成する渦流室口体の耐久
性向上のため、セラミツクの持つ優れた耐熱性、
高強度特性を利用して、炭化ケイ素、窒素ケイ素
を始めとする各種セラミツクが試験されてきてい
る。さらに、近年燃費、熱効率の向上を目的とし
て、かかる渦流室全体をセラミツクで形成し、セ
ラミツクの断熱性を利用して、渦流室内部の燃焼
ガス温度の上昇を図る試みも為されている。例え
ば、実開昭58−79019号公報には、上部セラミツ
ク体と下部セラミツク体とからなるセラミツク副
室が明らかにされている。

しかしながら、セラミツクは脆性材料であると
ころから、近年の技術の進歩により極めて高強度
の材質が得られているとしても、上記渦流室のよ
うな熱的環境条件が著しく厳しい場所では、熱衝
撃或いは熱応力による破壊が往々にして起こり得
るのである。

すなわち、渦流室口体、更には渦流室全体をセ
ラミツク化した場合、渦流室内に発生する燃焼熱
により、かかる渦流室を形成する内部壁は極めて
短時間のうちに高温にさらされることとなる。こ
のため、実開昭54−505号公報では、噴口部を有
する渦流室口体に関して、そのサーマルシヨツク
による破損を回避すべく、かかる渦流室口体に金
属環を焼嵌せしめ、圧縮応力をかけてセラミツク
口体内部の引張応力を相殺せしめようとしてい
る。一方、渦流室を構成するセラミツクの外壁部
分は、シリンダヘツドに密着して或いは空気層、
断熱材層等を介して接しており、その部分の温度
は低くなつているのである。このため、渦流室
（副燃焼室）を形成するセラミツクの肉厚方向に
は極めて大きな温度差が現れ、その内側表面（渦
流室内面）部分には圧縮応力、また外側表面部分
には引張応力が働く状態になる。

そして、セラミツクは、一般に圧縮破壊強度は
大きいものの、引張応力に対する抵抗性が低いと
ころから、上記の如く過大な引張力がセラミツク
製の副燃焼室の外表面にかかると、その外表面部
分により割れが発生し、破壊がスタートするので
ありこれがその耐久性を低下せしめている大きな
要因であつたのである。また、このような外表面
部分からの割れの発生は、従来の如く渦流室口体
に金属リングを焼嵌めたのみでは充分に防止し得
るものではなかつたのである。

本考案は、このような事情を背景にして為され
たものであつて、かかるセラミツクの引張力に対
する弱さを克服し、破壊に対する抵抗性の高いセ
ラミツク製副燃焼室を提供することを、その目的
とするものである。

そして、かかる目的を達成するために、本考案
にあつては、デイーゼルエンジンの副燃焼室を形
成する、燃料噴射ノズル孔及びグロープラグ孔を
有する略半分の上部セラミツク体と噴口部を有す
る略半分の下部セラミツク体とを有し、該上部セ
ラミツク体と該下部セラミツク体の少なくとも何
れか一方に、その外側表面の少なくとも一部を含
むように、該副燃焼室を横割りする方向の複数個
の分割面、スリツト及び／又は溝部を設けると共
に、該上部セラミツク体及び該下部セラミツク体
を円筒状の金属リングに嵌入せしめて、前記分割
面、スリツト及び／又は溝部が該金属リングの内
面に接する位置に配されるようにしたことを特徴
としている。

このように、かかる本考案に従えば、円筒状の
金属リングに嵌入された副燃焼室を構成するセラ
ミツク体の外側表面には、該副燃焼室を横割りす
る方向、換言すれば横方向の分割面、スリツト及
び／又は溝部が所定長さにわたつて設けられてい
るところから、燃料の燃焼による内部からの加熱
と外部からの冷却に基づいて、かかる副燃焼室を
形成するセラミツク体の外側表面部分に引張応力
が作用しても、そのような引張力は、円筒状の金
属リングの存在と相俟つて、該外側表面に設けら
れている所定の分割面、スリツト及び／又は溝部
の存在によつて効果的に緩和せしめられて、そこ
に過大な引張力が働かないようにされ、以て外表
面の割れを阻止し、その破壊を効果的に回避せし
めて、その耐久性を向上せしめ得るのである。

以下、図面を参照しつつ、本考案を更に具体的
に設明することとする。

先ず、第１図は、渦流室全体をセラミツクで形
成した渦流室タイプの副燃焼室の一例を示すもの
である。そこにおいて、２は、デイーゼルエンジ
ンのシリンダボデーであり、このシリンダボデー
２内に形成されたシリンダボア４内にピストン６
が摺動自在に嵌合せしめられて、第１図において
上下方向に滑動せしめられるようになつている。
一方、その上方にはガスケツト８を介してシリン
ダヘツド１０が載置され、取付けられている。そ
して、このシリンダヘツド１０には凹所が設けら
れており、その凹所内に渦流室１２の上部室を形
成する、頭頂部が略球形状に形成された上部セラ
ミツク体１４が装着され、更に所定のセラミツク
体から構成される口体、換言すれば下部セラミツ
ク体１６が挿入用円筒状金属リング１８を介して
挿入せしめられ、装着されることによつて、シリ
ンダヘツド１０内に所定の渦流室１２が形成され
るようになつている。

また、上部セラミツク体１４の頭頂部には、そ
れぞれグロープラグ２０、インジエクシヨンノズ
ル２２のための貫通孔２４及び２６が設けられ、
シリンダヘツド１０を貫通するグロープラグ２０
及びインジエクシヨンノズル２２が、該上部セラ
ミツク体１４に対して装着されるようになつてい
る。そして、かかるインジエクシヨンノズル２２
からは、所定の燃料が渦流室１２内に噴射せしめ
られるようになつており、そしてこの渦流室１２
内において燃焼せしめられ、その燃焼渦流が下部
セラミツク体１６の底部に設けられた連絡孔（噴
口）２８を通じて、ピストン６の配置せしめられ
た主燃焼室３０内に導かれるようになつているの
である。

ところで、このような渦流室１２を形成する上
部セラミツク体１４及び下部セラミツク体１６に
は、前述の如く割れが生じ、このためその耐久性
が十分でなかつたのであるが、そのような問題
は、第２図以下に示される本考案に従う対策によ
つて効果的に解消せしめられ得ることとなつたの
である。

まず、第２図においては、渦流室１２を形成す
る上部セラミツク体１４と下部セラミツク体１６
がそれぞれ該渦流室１２を横割りする方向に延び
る二本の分割線３２，３２によつて三分割されて
いるのである。換言すれば、上部セラミツク体１
４及び下部セラミツク体１６はそれぞれ三個の部
分から構成され、そしてそれらの横方向（水平方
向）の当接面が分割面となつて、それぞれのセラ
ミツク体を構成しているのである。

そして、このような上部セラミツク体１４及び
下部セラミツク体１６に分割線３２を形成する分
割面の存在により、該上部セラミツク体１４及び
該下部セラミツク体１６の外側に嵌め込まれた金
属リング１８の存在と相俟つて、それら上部セラ
ミツク体１４及び下部セラミツク体１６の外側表
面、すなわちシリンダヘツド１０側の表面に働く
引張応力が効果的に緩和せしめられることとな
り、これによつて、熱応力によるそれらセラミツ
ク体１４，１６の破壊が良好に防止されて、その
耐久性が著しく向上せしめられ得るのである。

また、このような横方向の分割線３２を形成す
る分割面を設けると共に、或いはそのような分割
面に代えて、第３図乃至第９図に示される如き所
定長さの横方向のスリツト３４、換言すれば部分
的な分割面を、それぞれ上部セラミツク体１４、
下部セラミツク体１６な１本乃至は複数本設ける
ことも可能である。

なお、このように上部セラミツク体１４或いは
下部セラミツク体１６にスリツト３４を設ける場
合にあつては、セラミツク体にある程度の隙間は
必要に応じて耐熱性の充填材が充填せしめられた
り、或いは外側から適当な耐熱性のカバーにて覆
われたりされることによつて、閉塞せしめられる
こととなる。

さらに、かかる分割面、スリツトと共に、若し
くはそれらに代えて第１０図及び第１１図に示さ
れる如き横方向の面内に位置する周溝３６を設け
ることも可能である。なお、第１１図に示される
例にあつては、渦流室１２が、頭部セラミツク体
４０、胴部セラミツク体４２及び底部セラミツク
体４４の三個から形成されており、そしてそれら
セラミツク体の各々に、横方向の面内に位置する
周溝３６がそれぞれ形成されているのである。な
お、このような周溝３６の深さは、セラミツク体
１４，１６，４０，４２，４４の肉厚に応じて、
目的とする応力緩和を行ない得るように適宜に決
定されることとなる。また周溝３６の底部は、応
力集中の生じないように、図示の如く円形に形成
されるか或いはその底部に向つて幅広がりに形成
せしめられることとなる。

また、このようにセラミツク体体の外周面に設
けられる溝部は、例示の如き周溝３６のみに限ら
れるものではなく、周長さよりも短い溝であつて
も何等差支えなく、また周方向複数の溝が断続し
て配列されたものであつても良く、更にはセラミ
ツク体の外周面に螺旋状に形成された溝であつて
も何等差支えないのである。

以上、いくつかの実施例に基づいて詳細に説明
したように、円筒状の金属リングに嵌入せしめら
れて副燃焼室を形成するセラミツク体を少なくと
も、横方向に分割し、或いは横方向のスリツト若
しくは溝部を形成せしめることにより、かかるセ
ラミツク体に作用する熱応力は効果的に緩和せし
められ、これによつて、破壊に対するセラミツク
体の抵抗性が増大せしめられ、以てセラミツク製
副燃焼室の耐久性が著しく向上され得たのであ
る。

なお、本考案に用いられるセラミツク体は、窒
素ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、ジルコン、
ムライト、コーデイエライト、リチウム・アルミ
ニウム・シリケート、アルミニウム・チタネー
ト、マグネシウム・アルミニウム・シリケート、
サイアロン（SIALON）、結晶化ガラス或いはこ
れらの複合体等のセラミツク材料から形成された
何れのものであつても良くまたこれら以外のセラ
ミツク材料を用いることも可能である。また、副
燃焼室の上部に位置せしめられるセラミツク体
は、特に断熱性の良いセラミツク材料、例えば結
晶化ガラス、ジルコニア、高強度電気絶縁用磁器
等から形成されることが好ましく、更に副燃焼室
下部のセラミツク体は耐熱性、耐熱衝撃性に優れ
た窒化ケイ素等の材料にて形成することが望まし
い。

また、以上の説明にあつては、主として副燃焼
室の一つである渦流室を構成するセラミツク体に
ついて述べたが、副燃焼室の他のタイプのもの、
例えば予燃焼室型のもの等においても同様であ
り、そのような予燃焼室型等のものにセラミツク
体を用いる場合にあつても、本考案が好適に適用
され得るものであるということは言うまでもない
ところである。

さらに、上記例示のものにおいては、本考案に
従う分割面、スリツト若しくは溝部が上部セラミ
ツク体及び下部セラミツク体の何れにも設けられ
ているが、それらの何れか一方に設けられる場合
であつても何等差支えなく、本考案は有効に適用
され得るものである。また、本考案に従つて分割
面、スリツト或いは溝部が設けられたセラミツク
体をシリンダヘツドにインサートするための外周
リングや位置決め手段等は適宜公知のものが使用
され、更には副燃焼室、なかでもセラミツク体と
シリンダヘツドとの間に断熱層や断熱材層等を設
けることは、必要に応じて適宜に採用される手段
である。

また、その他、本考案には、本考案の趣旨を逸
脱しない限りにおいて、種々なる変更、改良、修
正等を加え得るものであり、本考案はそのような
変更等を加えた実施形態のものをも、その範囲内
に含むものであること、言うまでもないところで
ある。

【図面の簡単な説明】

第１図はシリンダヘツドの副燃焼室部分を示す
縦断面部分図である。第２図は本考案の一例に係
る副燃焼室の縦断面分解図、第３図及び第５図は
上部セラミツク体の他の例を示す第２図に対応す
る図、第４図は上部セラミツク体の更に他の例を
示す正面図であり、第６図乃至第９図はそれぞれ
下部セラミツク体の他の例を示す第２図に対応す
る図であり、第１０図は上部セラミツク体及び下
部セラミツク体の更に他の例を示す第２図に対応
する図であり、第１１図は本考案に従う副燃焼室
の他の例を示す縦断面図である。 １０：シリンダヘツド、１２：渦流室、１４：
上部セラミツク体、１６：下部セラミツク体、２
０：グロープラグ、２２：インジエクシヨンノズ
ル、２４，２６：貫通孔、２８：連絡孔、３０：
主燃焼室、３２：分割線、３４：スリツト、３
６：周溝、４０：頭部セラミツク体、４２：胴部
セラミツク体、４４：底部セラミツク体。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) デイーゼルエンジンの副燃焼室を形成する、
   燃料噴射ノズル孔及びグロープラグ孔を有する
   略半分の上部セラミツク体と噴口部を有する略
   半分の下部セラミツク体とを有し、該上部セラ
   ミツク体と該下部セラミツク体の少なくとも何
   れか一方に、その外側表面の少なくとも一部を
   含むように、該副燃焼室を横割りする方向の複
   数個の分割面、スリツト及び／又は溝部を設け
   ると共に、該上部セラミツク体及び該下部セラ
   ミツク体を円筒状の金属リングに嵌入せしめ
   て、前記分割面、スリツト及び／又は溝部が該
   金属リングの内面に接する位置に配されるよう
   にしたことを特徴とするデイーゼルエンジンに
   おける副燃焼室の構造。 (2) 前記分割面、スリツト及び／又は溝部が、前
   記セラミツク体の外側表面の全周にわたつて設
   けられている実用新案登録請求の範囲第１項記
   載の副燃焼室の構造。 (3) 前記溝部が、その底部において円形に形成さ
   れ或いはその底部に向つて幅広がりに形成され
   ている実用新案登録請求の範囲第１項または第
   ２項記載の副燃焼室の構造。 (4) 前記副燃焼室が、渦流室である実用新案登録
   請求の範囲第１項記載の副燃焼室の構造。 (5) 前記副燃焼室が、予燃焼室である実用新案登
   録請求の範囲第１項記載の副燃焼室の構造。