JPH03496Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は内燃機関の副室構造、特に副室をセラ
ミツク材で構成して機関の熱効率、副室の耐久
性、耐熱性を高めると共に、セラミツク材の外周
に金属性のリングをはめあわせて副室の取扱いを
容易にした副室構造に関するものである。

（従来の技術） セラミツクの耐熱性、断熱性に優れた特性を利
用して内燃機関、特にデイーゼル機関の渦流室の
一部もしくは全体をセラミツクで構成し、機関の
熱効率の向上、排気ガス特性の改良、そして副室
の耐久性の向上をはかつた試みがいくつか提案さ
れている。

しかしながらセラミツク材はシリンダヘツドを
構成する材料、たとえば鋳鉄あるいはアルミニウ
ム合金に比べ熱膨張率が小さいため、シリンダヘ
ツドが高温になると副室を保持したシリンダヘツ
ドの保持力が低下し、特に副室を上下に分割して
構成するセラミツク製の副室構造においては、副
室を構成するセラミツク部材の相対回転運動が起
り主燃焼室及び副室を連通する噴孔の位置がずれ
て正常な燃料の着火、爆発が行なわれなかつた
り、さらに激しい回転運動が作用した場合には、
燃料噴射ノズルやグロープラグを損傷すると言う
問題があつた。

このため、例えば実開昭58−79019号公報に開
示された副室構造においては第５図に示すように
副室１０を上側部材３と下側部材４とよりなる二
分割構成とし、両部材３，４の衝合面間に耐熱性
金属よりなる環状ガスケツト６及び断熱スペーサ
７を挿着し、環状ガスケツト６の弾性力により両
部材３，４を互いに軸線方向に押圧し、上側部材
３及び下側部材４を一体とする構成をとる。

（考案が解決しようとする問題点） しかしながら、このような構成では上側及び下
側部材３，４の相対回転運動は、環状ガスケツト
６と上側及び下側部材３，４の端面との間の摩擦
力によつてのみ阻止される構成であるため、上下
両部材間に相対運動が生じた場合には、燃焼噴射
ノズルやグロープラグを損傷すると言う問題を未
だ充分解決するには至つていない。

またシリンダヘツドの下側より設けられた副室
挿入孔にセラミツクの上側及び下側部材を別個に
挿入するので組付け作業が煩しいばかりか、高強
度ではあるが脆性材料であるセラミツク部材を損
傷しないよう充分注意しながら位置決め、組付け
作業を行なわなければならないと言う欠点があつ
た。

（考案の目的） 本考案は上述した問題を解決するためになされ
たものであり、取扱いが容易で副室を構成する上
側部材及び下側部材が内燃機関の運転中に相対回
転することのない副室構造を提供することを目的
とする。

（考案の構成） この目的を達成するため本考案の内燃機関の副
室構造は、上部セラミツク体と、上部セラミツク
体に衝合される下部セラミツク体と、これら両セ
ラミツク体にて画成される副室と、この副室と主
燃焼室とを連通する噴孔を具える内燃機関の副室
において、上部および下部セラミツク体の外周面
に両セラミツク体に亘つて延在するとともに、そ
れらの衝合面に交差する少なくとも１個の切欠き
部を設け、この切欠き部の形状を平担若しくは曲
面状の底面を有するほぼ半月状とし、この切欠き
部に、前記底面と面接触する整合面を有する回り
止め部材をはめあわせ、さらに円筒状の金属性の
リング部材を両セラミツク体にはめあわせ、この
リング部材とセラミツク体との間にキーを差し込
み固定してなる。

（作用） 従つて本考案の副室構造では、燃料の爆発、機
関の振動に起因する回転力が副室を構成する上部
および下部セラミツク体に作用しても両セラミツ
ク体の軸線まわりの回転運動は回り止め部材によ
り確実に阻止される。しかも円筒状の金属性のリ
ング部材を脆性材料である両セラミツク体に対し
てキー止めして補強した一体の構造としたのでシ
リンダヘツドに対する副室の位置決め及びシリン
ダヘツドへの取付け作業が容易となる。

（実施例） 以下に本考案の実施例を図面に基づいて説明す
る。

第１図は、本考案の副室構造５０をシリンダヘ
ツド２０に形成した副室挿入孔２１に挿入した状
態を表わす。２２はピストン、２３はこのピスト
ン２２を収容するシリンダブロツクであり、２４
はガスケツトである。副室構造５０は上部セラミ
ツク体２５、このセラミツク体に衝合した下部セ
ラミツク体２６、これら両セラミツク体に亘つて
延在する切欠き部にはめあわされる回り止め部材
２７、さらに両セラミツク体２５，２６にはめあ
わされる円筒状の金属製のリング部材４０及び本
実施例では下側セラミツク体２６とリング部材４
０との間に差し込まれるキー４１より構成され、
両セラミツク体２５，２６により副室２８を画成
する。なお副室２８は噴孔３０を介して主燃焼室
２９に連通している。シリンダヘツド２０内には
燃料噴射ノズル収容部３１及びグロープラグ収容
部３２がそれぞれ形成してあり、これら収容部は
孔３３，３４を介して副室２８に連通している。
従つて本考案の副室構造では所定部位、すなわち
孔３３，３４を除いて燃焼ガスが接触する副室２
８の壁面はすべてセラミツク材であるので、従来
既知の種々の副室構造に比べ、断熱性が一段と向
上している。なお３５は上部セラミツク体２５と
下部セラミツク体２６との衝合面を示す。

本考案の副室構造５０は第２図の(a)に示すよう
に孔３３，３４を設けたほぼ半球状の上部セラミ
ツク体２５と、噴孔３０を有し筒状外観をした下
部セラミツク体２６を衝合する。次いで衝合面３
５に交差して延在する切欠き部３６を形成する。
なお第２図の(b)に示すように本実施例では、切欠
き部３６は平担な底面３７を有する半月状に形成
する。次いでこの底面３７に面接触する整合面３
８を有する回り止め部材２７（第２図の(c)参照）
をはめあわせる。それゆえ上部および下部セラミ
ツク体２５，２６はあたかも一体に形成した如く
挙動し、相対回転運動を生ずることがない。なお
切欠き部３６を上部セラミツク体２５、下部セラ
ミツク体２６にそれぞれ予め形成しておけば上、
下両セラミツク体を衝合する際の位置決め手段と
して切欠き部３６を用いることができる。あるい
は衝合に際して両セラミツク体を接着剤を用いて
所定位置関係に接合した後に切欠き部３６を形成
しても良く、この場合には両セラミツク体の組立
て作業が容易になる。

ここで上部および下部セラミツク体としては、
窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、アルミ
ナ、ガラスセラミツク、ムライト等を用いる。ま
た回り止め部材も同種のセラミツク、あるいはセ
ラミツクと同程度の熱膨張率を有する金属が好ま
しい。しかしこれら金属に限定されるものではな
く、熱膨張率がセラミツクより大きな金属ででき
ていても切欠き部寸法を回り止め部材より必要程
度大きくすることにより、回り止め部材の膨張に
よる上部および下部セラミツク体の押し割りを防
止すれば良い。なお回り止め部材２７の外周面
を、上下両セラミツク体の外周面と同一面内、あ
るいは上下両セラミツク体の外周面より内方に位
置するようにし、金属製のリング４０のはめあわ
せ作業を容易に行なえるようにする。

また、回り止め部材をはめ合わせるに際し、切
欠き部の底面３７と回り止め部材２７の整合面３
８とに接着剤を塗布してからはめあわせれば、よ
り確実に上部セラミツクおよび下部セラミツク体
を一体に固着できることは勿論である。あるいは
回り止め部材を焼結により上下両セラミツク体に
固着してもよい。

なお、本実施例では、底面が平担な切欠き部を
も用いたが、曲面状の底面であつても良く種々の
形状の切欠き部を用いることができる。

次いでこのように上部及び下部セラミツク体を
一体に構成したものに金属性のリング４０を嵌合
させる。この場合嵌合手段としては、焼きばめ、
圧入、接着等既知の方法が用いられる。リング４
０は、下部セラミツク体の外周を覆うとともに上
部セラミツク体の一部を覆い、両セラミツク体の
衝合面を完全に覆う。これらセラミツク体とリン
グ部材の係合はキー４１により行なう。この様子
を第３図の(a)に示す。下部セラミツク体の底面外
周端にキー４１の一部を収容する切込み部４２を
設ける。この切込み部４２は、切欠き部３６と同
様に平担な底面を有する半月状をしており、下部
セラミツク体２６に予め形成しても良く、切欠き
部３６を形成する際に設けても良い。キー４１の
残部は、リング４０に予め形成した溝孔４３に収
容する。この溝孔はキー４１の寸法、特にキーの
副に一致する寸法に形成されていれば良いので、
衝合したセラミツク体をはめあわせ、キー４１を
差し込み固定する作業が簡単に行なわれる。こう
してセラミツク体とリング４０とを一体に固着す
ることができる。なお、リング４０としては種々
の金属が適用可能であるが、使用状況を考慮した
ならば耐熱性金属であることが望ましい。またキ
ー４１は金属材、セラミツク材双方の適用が可能
である。

また第３図の(b)に示した実施例では、平担な底
面を有する切込み部４２に代わり、リング４０に
形成した溝孔４３と同様に、下部セラミツク体に
溝孔４２ａを形成し、これら溝孔４３，４２ａに
よりキー４１を収容する構成としたものである。

なお上述したところから明らかなようにセラミ
ツク体と金属製のリング４０を一体に固定するの
に下部セラミツク体２６とリング４０とをキー４
１を用いて固定したが、上部セラミツク体２５と
リング４０とをキー止めしても同様な効果が得ら
れる。

第４図に示す他の実施例は、回り止め部材２７
により一体に挙動するセラミツク体を、２個のキ
ー４１，４１ａを用いてリング４０の上端部、下
端部に固着し、セラミツク体と金属製のリングを
より緊密に固着したものである。なお図ではキー
４１，４１ａが同一直線上に配置されているが、
これに限定されるものでない。

（考案の効果） 以上詳述したように本考案の構造では、上部セ
ラミツク体と下部セラミツク体とよりなる二分割
構成の副室構造において、上部および下部セラミ
ツク体の衝合面に交差して延在する切欠き部を設
け、この切欠き部の平担若しくは曲面状の底面に
面接触する回り止め部材をはめあわせ上下両セラ
ミツク体の相対回転運動を阻止すると共に、金属
製のリング部材を両セラミツク体にはめあわせ、
キーによりリング部材とセラミツク体を固着し一
体に構成したので、セラミツク体により画成され
る副室を有する副室構造を金属製のシリンダヘツ
ドに、たとえば圧入により確実に取り付けること
ができ、セラミツクと金属との熱膨張率の差に起
因する、副室を保持するシリンダヘツドの保持力
の低下時に発生する相対回転運動の問題を解決す
ることができる。またセラミツク体の外周部を金
属製のリングで保護することができるので、シリ
ンダヘツドへの取付け作業時の損傷や、搬送中に
副室構造が他の副室構造に衝突して損傷したりす
ることがほとんどないなど数多くの利点を有す
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本考案の副室構造をシリンダヘツド
に挿着した様子を示す図、第２図のａは、第１図
に示す構造の１部を斜視図で示した図、第２図の
ｂは、第２図のａにおいて線−で切断した時
の断面図、第２図のｃは、第２図のａに示す副室
構造に使用する回り止め部材の斜視図、第３図の
ａは、第１図において線−で切断した時の断
面図、第３図のｂは、本考案の他の実施例の一部
を断面にして示した図、第４図は、本考案の別な
実施例を示す図、第５図は、従来既知の副室構造
をシリンダヘツドに挿着した様子を示す略断面図
である。 １…シリンダヘツド、２…シリンダブロツク、
３…上側部材、４…下側部材、５…噴孔、６…環
状ガスケツト、７…断熱スペーサ、８…主燃焼
室、９…孔、１０…副室、２０…シリンダヘツ
ド、２１…副室挿入孔、２２…ピストン、２３…
シリンダブロツク、２４…ガスケツト、２５…上
部セラミツク体、２６…下部セラミツク体、２７
…回り止め部材、２８…副室、２９…主燃焼室、
３０…噴孔、３１…燃料噴射ノズル収容部、３２
…グロープラグ収容部、３３，３４…孔、３５…
衝合面、３６…切欠き部、３７…底面（切欠き
部）、３８…整合面、３９…溝孔、４０…金属リ
ング、４１…キー、４２…切込み部、４２ａ，４
３…溝孔。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 上部セラミツク体と、上部セラミツク体に衝合
   される下部セラミツク体と、これら両セラミツク
   体にて画成される副室と、この副室と主燃焼室と
   を連通する噴孔とを具える内燃機関の副室におい
   て、 上部および下部セラミツク体の外周面に、両セ
   ラミツク体に亘つて延在すると共に、それらの衝
   合面に交差する少なくとも１個の切欠き部を設
   け、この切欠き部の形状を平坦若しくは曲面状の
   底面を有するほぼ半月状とし、この切欠き部に、
   前記底面と面接触する整合面を有する回り止め部
   材をはめあわせ、さらに円筒状の金属製のリング
   部材を両セラミツク体にはめあわせ、このリング
   部材とセラミツク体との間にキーを差込み固定し
   てなることを特徴とする内燃機関の副室構造。