JPH023848B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、建築または擁壁の構築・補強などの
土木工事に用いるアンカーロツドに関する。

（従来の技術） 地盤中の引抜抵抗力を付与するために、先端を
拡大させて構成したアンカーロツドが提供されて
いる。そして通常、これらのアンカーロツドは施
工現場で製造されている。たとえば、先端に打込
ヘツドを固定し、かつこの打込ヘツドに、回転に
より拡開する開閉自在の係止片を複数個配設固定
した鋼棒または鋼製パイプなどからなるアンカー
ロツド本体を、地中にあらかじめ掘削した削孔に
挿入し、ついでこのアンカーロツド本体を回転さ
せて拡開した上記係止片により、その周辺の土層
を掘削した後、削孔にモルタル、コンクリートま
たは合成樹脂などを注入して、上記アンカーロツ
ド本体の先端に塊状体を形成させることにより、
引抜抵抗力を有するアンカーロツドを構成してい
た。

（発明が解決しようとする課題） しかし、このようにして製造される従来のアン
カーロツドは、その軸芯に対し、その先端の塊状
体が偏心しがちであるという欠点を有していた。
また先端に塊状体を形成するために、あらかじめ
設けた削孔よりも径の大きな孔を先端に設けなけ
ればならないので掘削機を二種類必要とするか、
またはアンカーロツド本体の回転手段など他の施
工機械を必要とし、しかも再掘削により生じた土
の処理にも工夫を要していた。その結果、従来の
アンカーロツドは高価なものとなつていた。さら
に、このような従来のアンカーロツドの製造上の
問題点は、一体的に実施される、たとえば擁壁の
施工などに著しく大きな制約を課していた。すな
わち、従来のアンカーロツドを製造するには、比
較的大きな径の削孔を設けなければならないの
で、地盤が軟弱な地中に対しては擁壁などを構築
することが困難であつた。また大型の掘削機だけ
でなく、アンカーロツドの回転手段など他の機械
が必要となるので、これら施工機械の移動が作業
性を悪くするだけでなく、比較的広い施工場所を
必要としていた。このことは工事所要日数および
費用が莫大になるだけでなく、人家や施設の密集
地では施工が困難であるという問題を提起してい
た。

本発明は上記従来の欠点を改善し、かつ上記問
題点を解消するためになされたもので、極めて容
易に製造することができ、かつ地中の引抜抵抗力
と支持力が著しく高いアンカーロツドを提供する
ことを目的とし、ひいては擁壁などの施工も迅速
経済的に遂行させうるアンカーロツドを提供する
ことを目的とする。

（課題を解決するための手段） 本発明アンカーロツドは、外管と内管とからな
るアンカーロツド本体の外管の周壁部に、この外
管を直立させたとき略Ｕ字形となる複数個の切目
と、略逆Ｕ字形となる複数個の切目と、略たて直
線状となる複数個の切目を設け、上記アンカーロ
ツド本体の先端開口部に閉塞金具を取付け、この
ようになしたアンカーロツド本体の後端開口部か
ら、上記外管と内管の間に形成した間隙に、膨張
剤を注入充填しうるように構成したものである。

（作用） アンカーロツド本体を構成する外管と内管の間
隙に膨張剤を注入充填させて、アンカーロツド本
体に引抜抵抗力と支持力を高める膨大部および上
開き、下開きの舌片を形成する。

（実施例） 以下、本発明の実施例を添付の図面に従つて説
明する。

第１図は本発明の一実施例を示す分解全体斜視
図である。同図中１はアンカーロツド本体であ
り、金属製または合成樹脂製の円筒体である外管
２と内管３とからなる。大径である外管２の中に
小径の内管３を挿入する。外管２と内管３との間
には、一定幅の間隙４が形成されている。外管２
の先端周壁部には、その外管２を直立させたとき
略Ｕ字形となる複数個の切目６と、略逆Ｕ字形と
なる複数個の切目５と、外管２の軸に沿つて略直
線状となる（外管２を直立させたとき略たて直線
状となる）複数個の切目７とが設けられている。
切目６…により下開きとなる舌片９…が複数個形
成されるとともに、切目５…により上開きとなる
舌片８…が複数個形成される。第２図、第３図お
よび第４図はそれぞれ第１図のｌ−ｌ線横断面
図、ｍ−ｍ線横断面図およびｎ−ｎ線横断面図で
ある。

一方、第１図中１０は閉塞金具であり、後端部
１０ｃがアンカーロツド本体１の内管３の先端開
口部３ａに、中央部１０ｂがアンカーロツド本体
１の外管２の先端開口部２ａに、それぞれ圧入固
定される。閉塞金具１０がアンカーロツド本体１
に取付けられることにより、地中でのアンカーロ
ツド本体１への土の侵入が防止されると共に、外
管２と内管３との間隙４に膨張剤を注入充填しう
る収容室が形成される。なお、アンカーロツド本
体１の先端開口部１ａに対するこの閉塞金具１０
の取付けはここに示したものに限らない。閉塞金
具１０は主として打設用であり、先端部１０ａは
鋭利な形状となつている。このように、アンカー
ロツド本体１と閉塞金具１０とからアンカーロツ
ドＡが構成されている。

以上説明したように、上記実施例によれば、ア
ンカーロツド本体１の外管２の先端周壁部に、外
管２を直立させたとき略Ｕ字形となる複数個の切
目６…と、略逆Ｕ字形となる複数個の切目５…と
複数個の略直線状の切目７…とを設け、アンカー
ロツド本体１の先端開口部１ａに閉塞金具１０を
取付けるだけの簡単な構成なので、工場等でも製
造することができ、しかも極めて容易に製造で
き、それゆえ安価となる。そして現場で打設また
は埋設した後、アンカーロツド本体１の後端開口
部１ｂから外管２と内管３との間隙４に膨張剤を
注入充填すれば、その膨張圧により、下開きとな
る舌片９…と上開きとなる舌片８…が起立すると
共に、その周辺のアンカーロツド本体１が膨大す
る。また、略直線状の切目７…の亀裂拡大に伴
い、その周辺のアンカーロツド本体１が膨大する
ことにより、地中の引抜抵抗力および支持力は著
しく高くなる。内管３が挿入されているので、外
管２の肉厚を小さくしても、さらに切目５…，６
…，７…を数多く設けても、アンカーロツドＡ自
体の強度が大幅に低下することはない。したがつ
て、アンカーロツドＡ自体の径を小さくしても、
切目５…，６…，７…の数を増やすことにより著
しく高い引抜抵抗力および支持力が確保される。
したがつて、地中の強固な地中などにも有利に採
用でき、また軟弱な地盤に埋設する場合にも埋設
用削孔の径をより小さくして地耐力を保有させた
状態で用いることができる。さらに、以下で詳細
に説明するように、工場でアンカーロツド本体１
の外管２の周壁部に切目５…，６…，７…を設
け、現場では打設するだけでよく、また埋設する
場合にも外管２の外径と略等しい径の削孔を掘削
すればよいので、擁壁などの迅速、かつ経済的な
施工を可能となす。

なお、上記実施例においては、アンカーロツド
本体１の外管２と内管３とは円筒体であるが、本
発明においては、中空の角柱であつてもよい。ま
たアンカーロツド自体の強度を大きくするため
に、内管３にセメント、モルタルまたは合成樹脂
を注入してもよく、さらに内管として円柱または
角柱を採用してもよい。略Ｕ字形および略逆Ｕ字
形の切目６，５の形状は、上記実施例の如く厳密
な逆Ｕ字形に限られず、たとえば、略下向きのコ
字形、略逆Ｖ字形などであつてもよい。略直線状
の切目７はアンカーロツド本体１の軸方向だけで
なく、円周方向に沿つて設けてもよい。また切目
５…，６…，７…は、それぞれアンカーロツド本
体１の外管２の軸方向に沿つて略同一線上に設け
られているが必ずしもこのような態様でなくても
よく、アンカーロツド本体１の外管２の円周方向
に沿つて略同一線上に交互に設けてもよい。この
切目の数は多いほど好ましく、また多く設けて
も、アンカーロツド自体の強度は内管３により支
持されて著しく低下することはない。

また、上記実施例においては、アンカーロツド
本体１と閉塞金具１０とは別部材であるが、本発
明においては、一体に形成してもよい。アンカー
ロツド本体１の先端開口部と閉塞金具の取付けは
雌雄の螺合としてもよい。さらに、第５図に示す
ように、閉塞金具１０の後端部１０ｃに嵌合孔１
０ｄを設けて、アンカーロツド本体１の内管３の
先端部を圧入固定させてもよい。なお、埋設用に
は、第６図に示すように先端が平坦な閉塞金具を
採用すればよい。

以下、上記実施例のアンカーロツドＡを採用し
て実施しうる擁壁の補強工法の一例を説明するこ
とにより、本発明のアンカーロツドの作用、効果
をより詳細に説明する。

まず、上記実施例のアンカーロツドＡを複数
本、第７図に示すように擁壁１１に所定の間隔を
置いて穿設した孔１２から擁壁の垂直軸に対して
鋭角に、地中１３の所望の深さまで打込む。この
アンカーロツドＡは擁壁１１の上部に打込むもの
は比較的短く、下部に到るに従い次第に長いもの
を採用するのが好ましい。しかし、必ずしもこの
ような方式に限るものではなく、長いアンカーロ
ツドと短いアンカーロツドとを交互に打込んでも
よい。またアンカーロツドは、地盤が軟弱の場合
は長いものを用いるのが好ましい。

このようにして打込んだ各アンカーロツドＡ…
の後端開口部１ｂから外管２と内管３との間隙４
に、膨張剤１４を切目５…，６…，７…が設けら
れている位置まで注入充填する。このように充填
された膨張剤１４から上の間隙４にはモルタルを
注入充填しておけば、膨張剤１４の膨張効果はよ
り高まる。この膨張剤とは、硅酸塩を主体とする
無機化合物と特定の有機化合物と水との混合物で
ある。たとえば小野田セメント株式会社製のブラ
イスター（商品名）と水との混合物が好適に使用
できる。なお、この膨張剤に少量のセメント、モ
ルタルなどを混合させたものを採用してもよい。

注入充填した膨張剤１４は硬化膨大し、約12〜
24時間経過すると最大の膨張圧を示し、第８図に
示すようにこの膨張圧により舌片８…は上開き、
舌片９…は下開きにそれぞれ起立してアンカーロ
ツドＡには引抜抵抗力と支持力が付与される。そ
れと共に、略直線状の切目７…の亀裂拡大に伴い
アンカーロツド本体１のその周辺部が膨大する
（膨大部１５…）ことにより摩擦力が付与されア
ンカーロツドＡの引抜抵抗力および支持力はさら
に高くなる。第９図は舌片８，９…が上開き、下
開きに起立し、切目７…が亀裂拡大した状態を示
すアンカーロツド本体１の部分斜視図であり、第
１０図、第１１図および第１２図は、それぞれ膨
張剤１４を省略して示す第９図のＸ−Ｘ線横断面
図、Ｙ−Ｙ線横断面図およびＺ−Ｚ線横断面図で
ある。舌片８，９…の起立と相侯つてアンカーロ
ツド本体１の外管２の切目５，６…周辺が膨大す
る（膨大部１６…）ことおよび切目７…の周辺の
膨大部１５の周辺の土層に圧縮応力が加えられ圧
密が生じる。その結果、アンカーロツドＡ…と地
中１３間には大きな摩擦力が生じ、アンカーロツ
ドＡ…の引抜抵抗力および支持力はさらに高くな
る。

膨張剤１４の膨張が終了した後、擁壁１１から
突出した各アンカーロツドＡ…の上端開口部に閉
塞金具を取付ける。

以上のようにして本発明アンカーロツドＡの上
記実施例を採用した擁壁の補強は完了する。な
お、各アンカーロツドＡ…の擁壁からの上端露出
が好ましくないものであれば上端部をコンクリー
トなどで埋設してもよい。また、擁壁１１とアン
カーロツドＡは何らかの手段で係合させている。

（発明の効果） 地中に打込んだアンカーロツドの外管と内管と
の間隙に膨張剤を注入充填させて、外管の周壁に
膨大部および上開き、下開きの舌片を形成し、ア
ンカーロツドに引抜抵抗力と支持力と摩擦力を高
めることができる。したがつて、擁壁の補強用の
アンカーロツドとして優れたものとなる。膨張剤
を外管と内管の間隙に注入充填させるため、少な
い量の膨張剤で目的を達することができる。直管
状のアンカーロツド本体を地中に打設または埋設
し、膨張剤を注入充填するだけでよいので、施工
が容易で、施工機械も多く必要としない。アンカ
ーロツド本体を工場で量産でき、しかも施工性が
よいので経済的で、人家や施設の密集地でも騒音
が少なく、容易かつ迅速に施工できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例を示す分解全体斜視
図、第２図、第３図および第４図はそれぞれ第１
図のｌ−ｌ線横断面図、ｍ−ｍ線横断面図および
ｎ−ｎ線横断面図、第５図および第６図はそれぞ
れ閉塞金具の他の実施例を示す斜視図、第７図は
擁壁に設けられた孔に本発明アンカーロツドを貫
通して地中に打込んだ状態を示す断面図、第８図
は膨張剤の膨張圧により地中で舌片が上開き、下
開きに起立するとともに切目が亀裂拡大してそれ
らの周辺部が膨大した状態を示す断面図、第９図
は同要部斜視図、第１０図、第１１図および第１
２図はそれぞれ膨張剤を省略して示す第９図のＸ
−Ｘ線、Ｙ−Ｙ線およびＺ−Ｚ線横断面図であ
る。 Ａ……アンカーロツド、１……アンカーロツド
本体、２……外管、３……内管、４……間隙、
５，６，７……切目、８，９……舌片、１０……
閉塞金具、１１……擁壁、１３……地中、１４…
…膨張剤、１５，１６……膨大部。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 外管と内管とからなるアンカーロツド本体の
   外管の周壁部に、この外管を直立させたとき略Ｕ
   字形となる複数個の切目と、略逆Ｕ字形となる複
   数個の切目と、略たて直線状となる複数個の切目
   を設け、上記アンカーロツド本体の先端開口部に
   閉塞金具を取付け、このようになしたアンカーロ
   ツド本体の後端開口部から、上記外管と内管の間
   に形成した間隙に、膨張剤を注入充填しうるよう
   に構成したことを特徴とするアンカーロツド。