JP2004156379A - 土留め止水構造および土留め止水工法 - Google Patents

土留め止水構造および土留め止水工法 Download PDF

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Abstract

【課題】凍土からなる土留め止水壁とトンネル覆工材との当接部における凍着(せん断)力と凍着剥離抵抗力を高めて土留め止水壁の崩壊と覆工材の変形および変位を未然に防止することにより、拡幅部の施工をきわめて安全に行えるようにした土留め止水構造および土留め止水工法を提供する。
【解決手段】シールド孔1,1を並行に掘進する。シールド孔1,1間に凍土からなる土留め止水壁2を造成する。土留め止水壁2の両端2a,2aをシールド孔1,1の覆工材として設置された鋼殻セグメント3のスキンプレート3aの上にそれぞれ当接させる。土留め止水壁2の両端2a,2aと鋼殻セグメント3のスキンプレート3aとの当接部イにジベル4を突設する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明はトンネルを並行に掘進した後、その対向する側を掘削して拡幅部を構築する際に、前記トンネル間に凍結工法等により施工される土留め止水構造および土留め止水工法に関し、非開削工法により任意断面形状の地下空間をきわめて効率的にかつ安全に構築することできるものである。
【0002】
【従来の技術】
非開削工法による地下構造物の構築工法として、例えば図5に図示するようにシールド工法によって円形または矩形断面のシールド孔10,10を並行に掘進し、その間に凍土からなる土留め止水壁11をアーチ状に造成した後、その下側を掘削してシールド孔10と連続する拡幅部12を形成する構築工法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この種の工法においては、施工中、上記した土留め止水壁に上から大きな土圧と水圧が作用し、この土圧と水圧はシールド孔の覆工材として設置されたセグメントと土留め止水壁との当接部に大きな軸力とせん断力となって作用するため、この場合の当接部の設計は、このせん断力に対して凍土のセグメントに対する凍着(せん断)力(横ずれに対するせん断抵抗力)が抵抗するものとして行われている。
【0004】
【特許文献1】
特開平4−281990号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この凍着(せん断)力は充分とはいえず、また理論的に明らかにされていない。しかも、セグメントにはグリースや裏込め材などが多く付着している場合が多いため、あるいは空隙内の水が凍結した氷そのものが存在する等の影響により凍着力はさらに小さくなるのを免れない。
【0006】
また、拡幅部を掘削をする際、一部セグメントのスキンプレートを剥がす必要があることから、セグメントの強度不足によりセグメントが内側に変形あるいは変位して凍土とセグメントが剥離する傾向にあり、このため接続部の凍着力を増すために凍土を余分に厚く造成する必要があった。
【0007】
さらに、凍土とセグメントとの剥離などにより土留め止水壁の両端の固定条件がなくなるため、土留め止水壁が左右に移動し、結果的に大きな曲げモーメント等の応力が作用して土留め止水壁が破壊するおそれがあった。
【0008】
また、セグメントと土留め止水壁が剥離すると、地下水が内部掘削面に流入し、凍土の解凍、さらには土砂の流入などが進行して破壊するおそれがあり、それに備えて充分に補強する必要があった。
【0009】
本願発明は以上の課題を解決するためになされたもので、特に凍土からなる土留め止水壁とトンネル覆工材との当接部における凍着(せん断)力と凍着剥離抵抗力を高めて土留め止水壁の崩壊と覆工材の変形および変位を未然に防止することにより、拡幅部の掘削をきわめて安全に行えるようにした土留め止水構造および土留め止水工法を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の地下構造物の土留め止水構造は、トンネルを並行に掘進した後、その対向する側を掘削して拡幅部を構築する際に、前記トンネル間に施工される土留め止水構造において、前記トンネル間に凍土からなる土留め止水壁を造成するとともに、その両端を前記トンネルの覆工材にそれぞれ当接させ、かつ前記土留め止水壁と前記覆工材との当接部にせん断力伝達部材を突設してなることを特徴とするものである。
【0011】
本願発明は、凍土からなる土留め止水壁とトンネル覆工材との当接部における、横ずれに対する抵抗力としての凍着(せん断)力と凍着剥離抵抗力を高めることにより土留め止水壁の崩壊とトンネル覆工材の変位や変形を未然に防止して拡幅部の施工をきわめて安全に行うことを可能にしたものである。
【0012】
この場合のトンネルは、例えばシールド工法によって円形または矩形状に掘進することができ、またその覆工材として鋼殻セグメント、RCセグメント、あるいはPCセグメント等を用いることができるが、施工上、鋼殻セグメントが望ましい。
【0013】
また、せん断力伝達部材はジベルまたは鋼棒、プレート、角形または円形の鋼管あるいはH形鋼などの形鋼、さらにはFRPロッド等で形成することができ、また覆工材として鋼殻セグメントが用いられた場合、せん断力伝達部材は鋼殻セグメントのスキンプレート、または主桁や縦リブ等に溶接またはボルト止めする等して固定することができる。
【0014】
さらに、せん断力伝達部材の径、幅、長さまたは本数やピッチ等を適宜設定することにより、必要な凍着力と剥離抵抗力を得ることができ、またジベルとして異形鉄筋などの異形棒鋼を用いたり、あるいはせん断力伝達部材の表面にプレート等からなる複数のリブを突設することにより剥離抵抗力を高めることができる。
【0015】
なお、せん断力伝達部材をスキンプレートに固定する場合、スキンプレートとして充分な厚さの鋼板を用いるか、あるいはスキンプレートの内側に補強リブを突設する等して補強するのがよい。
【0016】
また、せん断力伝達部材としては、土留め止水壁と覆工材との当接部において、例えば袋の中に充填材としてモルタルやコンクリート等を充填することにより、凍土内にブロック状に膨張させて形成されたもの等もある。
【0017】
請求項2記載の土留め止水構造は、請求項1記載の土留め止水構造において、せん断力伝達部材は鋼棒、プレート、形鋼または鋼管から形成されてなることを特徴とするものである。
【0018】
請求項3記載の土留め止水構造は、請求項1記載の土留め止水構造において、せん断力伝達部材は袋の中にモルタルまたはコンクリートを充填し、前記袋を膨張させて形成されてなることを特徴とするものである。
【0019】
請求項4記載の土留め止水の施工方法は、トンネルを並行に掘進した後、その対向する側を掘削して拡幅部を構築する際に、前記トンネル間に施工される土留め止水工法において、前記トンネル間に凍土からなる土留め止水壁を造成するとともに、その両端部を前記トンネルの覆工材にそれぞれ当接させ、かつ前記土留め止水壁と前記覆工材との当接部にトンネルの内側からせん断力伝達部材をそれぞれ突設することを特徴とするものである。
【0020】
トンネルの内側から土留め止水壁と覆工材との当接部にせん断力伝達部材を突設する方法としては、トンネルを掘進し、土留め止水壁を造成した後、例えばトンネルの内側から覆工材とその地山側の土留め止水壁の端部にボーリング等により連続して削孔し、この削孔にジベルを圧入する方法がある。なお、当接部にせん断力伝達部材を予め突設し、その後に土留め止水壁を造成してもよい。
【0021】
また、当接部にせん断力伝達部材を突設する方法として、例えば覆工材の外側に予め袋を取り付けておき、覆工材を設置した後、土留め止水壁を造成する前に、トンネルの内側から袋の中にモルタルやコンクリートを充填して袋をブロック状に膨張させる方法もある。この場合、止水性が良くかつ凍土との凍着性の良い材料で袋を製作することで止水性の向上も図れる。
【0022】
なお、土留め止水壁を造成した後、土留め止水壁の端部をトンネルの内側から予め余掘りし、その後袋を膨張させてせん断力伝達部材とすることもできる。
【0023】
また、本願発明の他の適用例としては、例えば図4に図示するように、シールド孔10の側部を部分的に凍結させ、その内側を掘削してトンネルと連続する拡幅部12を構築する際、シールド孔10の覆工材10aと凍土からなる土留め壁13との当接部イにも適用することがでる。
【0024】
請求項5記載の土留め止水の施工方法は、請求項4記載の土留め止水の施工方法において、トンネルの内側から覆工材に削孔を形成し、該削孔から土留め止水壁の端部にせん断力伝達部材を圧入することを特徴とするものである。
【0025】
請求項6記載の土留め止水の施工方法は、請求項4記載の土留め止水の施工方法において、覆工材の地山側に予め袋を取り付けておき、該袋にトンネルの内側から充填材を充填することにより袋を膨張させてせん断力伝達部材とすることを特徴とするものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
図1(a),(b)は、本願発明に係る土留め止水構造の一例を示し、図において、シールド孔1,1が並行に構築され、その間に土留め止水壁2がアーチ状に造成されている。
【0027】
シールド孔1,1の地山は鋼殻セグメント3によってそれぞれ覆工されており、また土留め止水壁2は凍土により所定の厚さに造成され、その両端2a,2aはシールド孔1,1の覆工材として設置された鋼殻セグメント3のスキンプレート3aの上にそれぞれ当接している。
【0028】
また、土留め止水壁2とスキンプレート3aとの当接部イに当接部イの横ずれに対する抵抗部材としてせん断力伝達部材(以下「ジベル」という)4が突設されている。ジベル4は棒状に形成されており、例えば鋼棒または鉄筋などから形成されている。
【0029】
また、ジベル4は鋼殻セグメント3のスキンプレート3aに溶接またはボルト止めする等して固定されている。なお、この場合のスキンプレート3aには充分な厚さの鋼板が用いられ、また必要に応じてスキンプレート3aの内側に補強リブが突設されている。
【0030】
このような構成において、土留め止水壁2の両端2a,2aと鋼殻セグメント3(スキンプレート3a)との間の接続部イにおける水平せん断力Qに対しては、ジベル4の凍着(せん断)力によってそれぞれ抵抗する。
【0031】
また、土留め止水壁2の両端2a,2aと鋼殻セグメント3(スキンプレート3a)との間の接続部イにおける剥離力Pに対しては、ジベル4の土留め止水壁(凍土)2に対する凍着剥離抵抗力(定着力)よって抵抗する。
【0032】
この場合、ジベル4の長さ、径、ピッチ、本数などを適宜設定することにより、必要な凍着(せん断)力と凍着剥離抵抗力を得ることができる。また、ジベル4として異形鉄筋などの異形棒鋼を用いることにより凍着剥離抵抗力をさらに高めることができる。
【0033】
このように造成された土留め止水壁2の下側を掘削して、例えば図3に図示するようにシールド孔1,1の対向する側を掘削することによりシールド孔1,1と連続する拡幅部5が構築されている。
【0034】
拡幅部5の天井部分と床部分はそれぞれRCまたはSRC構造の頂版5aと床版5bによって覆工され、また中間部にRCまたはSRC構造の中壁5cが構築されている。
【0035】
次に、上述した土留め止水構造の施工方法について説明する。
▲1▼.シールド孔1,1を並行に掘進した後、一方のシールド孔1側から他方のシールド孔1側に凍結管6をアーチ状に挿通する。そして、凍結管6に冷媒を通して凍結管6周囲の土を一定範囲に渡って凍結させることにより、シールド孔1,1間をアーチ状に連続し、かつ両端2a,2aがシールド孔1,1の覆工材として設置された鋼殻セグメント3のスキンプレート3aの上に当接する土留め止水壁2を造成する。
▲2▼.次に、シールド孔1,1の内側から鋼殻セグメント3のスキンプレート3aと土留め止水壁2の端部2aにボーリング等によりそれぞれ連続して削孔を形成する。そして、この削孔にシールド孔1の内側からジベル4を圧入する。そして、ジベル4をスキンプレート3aに溶接する。
【0036】
図2は、土留め止水壁2と鋼殻セグメント3との当接部イにせん断力伝達部材(以下「せん断キー」という)7を突設した例を示し、図において、袋7aに充填材としてモルタル8aを充填して袋7aをブロック状に膨張させることにより、当接部イにせん断キー7が突設されている。
【0037】
施工方法を説明すると、最初にシールド孔1,1を並行に掘進した後、土留め止水壁2を造成するに先立ち、鋼殻セグメント3のスキンプレート3aの地山側に予め取り付けておいた袋7aに充填材としてモルタル7bを充填して袋7aをブロック状に膨張させる。
【0038】
次に、一方のシールド孔1側から他方のシールド孔1側に凍結管6をアーチ状に挿通する。そして、凍結管6に冷媒を通して凍結管6周囲の土を一定範囲に渡って凍結させて土留め止水壁2を造成する。
【0039】
【発明の効果】
本願発明は以上説明した通りであり、特にトンネルの覆工材と凍土からなる土留め止水壁との当接部に横ずれに対する抵抗部材としてせん断力伝達部材が突設されてなるので、当接部の凍着(せん断)力と凍着剥離抵抗力を高めることにより土留め止水壁の崩壊とトンネル覆工材の変形や変位を未然に防止して拡幅部の施工をきわめて安全に行うことができる等の効果がある。
【0040】
また、ジベルやせん断キーは、トンネルを掘進した後、トンネルの内側からきわめて安全にかつ確実に施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】土留め止水構造の一例を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)における当接部イの拡大断面図である。
【図2】土留め止水構造の他の例を示し、図1(a)における当接部イの拡大断面図である。
【図3】地下構造物の一例を示す縦断面図である。
【図4】地下構造物の他の例を示す縦断面図である。
【図5】従来の土留め止水構造の一例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 シールド孔(トンネル)
2 土留め止水壁
3 鋼殻セグメント
3a スキンプレート
4 ジベル(せん断力伝達部材)
5 拡幅部
5a 頂版
5b 床版
5c 中壁
6 凍結管
7 せん断キー(せん断力伝達部材)
7a 袋
7b モルタルまたはコンクリート(充填材)

Claims (6)

  1. トンネルを並行に掘進した後、その対向する側を掘削して拡幅部を構築する際に、前記トンネル間に施工される土留め止水構造において、前記トンネル間に凍土からなる土留め止水壁を造成するとともに、その両端を前記トンネルの覆工材にそれぞれ当接させ、かつ前記土留め止水壁と前記覆工材との当接部にせん断力伝達部材を突設してなることを特徴とする土留め止水構造。
  2. せん断力伝達部材は鋼棒、プレート、形鋼または鋼管から形成されてなることを特徴とする請求項1記載の土留め止水構造。
  3. せん断力伝達部材は袋の中に充填材を充填することにより前記袋を膨張させて形成されてなることを特徴とする請求項1記載の土留め止水構造。
  4. トンネルを並行に掘進した後、その対向する側を掘削して拡幅部を構築する際に、前記トンネル間に施工される土留め止水工法において、前記トンネル間に凍土からなる土留め止水壁を造成するとともに、その両端部を前記トンネルの覆工材にそれぞれ当接させ、かつ前記土留め止水壁と前記覆工材との当接部に前記トンネルの内側からせん断力伝達部材を突設することを特徴とする土留め止水工法。
  5. トンネルの内側から覆工材に削孔を形成し、該削孔から土留め止水壁の端部にせん断力伝達部材を圧入することを特徴とする請求項4記載の土留め止水工法。
  6. 覆工材の地山側に予め袋を取り付け、該袋にトンネルの内側から充填材を充填することにより前記袋を膨張させてせん断力伝達部材とすることを特徴とする請求項4記載の土留め止水工法。
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