JP4502730B2 - 地盤強化用鋼管 - Google Patents

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本発明は、トンネル工事等における先受け工法や掘削壁面の補強工法等に使用するに適した地盤強化用鋼管に関するものである。
例えば、軟弱な地山におけるトンネル工事では、切羽の前方の地山を補強するために、鋼管を埋設する先受け工法が採用されることが多い。この工法では、先端部にビットを装着したさく孔ロッドに鋼管を外嵌して穿孔を行い。所定深さの穿孔を行ったら、鋼管をそのまま残してさく孔ロッドを引き抜き、鋼管の内部にモルタル等の強化材を注入する。鋼管の胴部には内外に通ずる多数の通孔が穿孔されており、内部に注入された強化材が、その通孔を通って地山に浸透して固化することにより、軟弱な地山が強化されるのである。なお、先受け工法については、多数の特許出願がなされている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
特開2000−204870号公報 特開2001−020657号公報
上記先受け工法に使用される鋼管は、地山に埋設されるものであるから、比較的安価で強度が大きい材質の鋼管が使用される。注入材の注入時には、上記通孔を通して流出する注入材が地山に十分に浸透し、かつ地山と鋼管との隙間に密に充填される必要がある。また、埋設された鋼管が強固に固定されるためには、該鋼管とその外周部の注入材の層とが強固に一体化しているのが望ましい。
しかしながら、従来の鋼管は、外面が平滑な面として形成されているので、外部の注入材の層との引っ掛かりがなく、両者がしっかりと固定されているとは言えなかった。これを改良するため、鋼管の外面にサンドブラスト処理等を施して、面を荒くすることも試みられ、それなりの効果が得られたが、鋼管を地山に強固に固定するという面では未だ満足できるものではなかった。
そこで本発明は、コストをそれほど高くすることなく、地山に埋設する鋼管を該地山にしっかりと固定できるようにすることを課題としている。
上記課題を解決するため、本発明は、次のような構成とした。すなわち、請求項1に記載の本発明に係る地盤強化用鋼管は、掘削されるトンネル等の補強材として地盤に打設される地盤強化用鋼管であって、外周部に螺旋状の凸条が形成され、該螺旋状凸条の間隔部に注入材を鋼管の外部に流出させるための内外に通ずる複数の通孔が設けられていることを特徴としている。
また、請求項2に記載の発明は、上記請求項1の構成のものにおいて、螺旋状凸条が肉盛り溶接によって形成されているものである。また、請求項3に記載の発明は、上記鋼管における螺旋状の凸条の高さを1.5〜7mmとするものであり、請求項4に記載の発明は、上記鋼管における螺旋状の凸条のリードを100〜400mmとするものである。さらに、請求項5に記載の発明は、上記螺旋状の凸条のリード角を25〜45度とするものである。
請求項1に記載の鋼管は、外周面に螺旋状の凸条が形成されており、その螺旋状凸条の間隔部分に多数の通孔が穿孔されているので、該通孔から流出した注入材が螺旋状凸条に沿って流動しつつ地山に浸透するとともに、螺旋状凸条と地山との隙間に密に充填される。このため、螺旋状の凸条が固化した注入材の層内に埋没した状態となり、当該固化した注入材層に対する引っ掛かり効果により、鋼管がしっかりと固定される。
また、請求項2に記載の鋼管は、上記螺旋状の凸条を肉盛り溶接によって形成するので、該凸条の断面形状が丸みを帯びたものとなり、エッジ部やコーナー部が生じないので、注入材が円滑に流動することができ、注入材が行き渡らずに空間が生じたり、部分的に詰まりが生じるようなことがない。このため、鋼管と注入材層とが強力に一体化する。なお、螺旋状の凸条を肉盛り溶接によって形成するので、機械加工等で形成するよりもはるかに安価に形成することができる。さらに、請求項3、請求項4及び請求項5に記載の発明は、上記螺旋状の凸条の各部の寸法を限定するもので、これにより、一層効果的なものとなる。
以下、図面に表された実施形態について具体的に説明する。図1は本発明に係る地盤強化用鋼管を例示するもので、この鋼管1は、外周部に螺旋状の凸条2がほぼ全長にわたって形成されている。螺旋状の凸条2は、肉盛り溶接によって形成されたもので、図3に示すように、円弧状の丸みを帯びた断面形状を有し、その高さhは約5mm、幅wは約5mm、リードLは約300mmである。なお、鋼管1の材質としては、適度の強度を有する鋼種、例えばJISに規定されているSTK400等を使用するのが好ましい。また、肉盛り用の溶接棒としては、例えばJISに規定されているYGW12等(商品例としては、神戸製鋼所製 商品名MG−2)を好適に使用することができる。
凸条2の高さは、穿孔時の抵抗とならないように、先端部に装着されているビットの外周部よりも内側にある必要がある。通常は、この高さhは1.5〜7mmとするのが好ましく、2〜5mmとするのがより好ましい。高さhが高すぎると穿孔時の繰り粉の排出がうまく行われなくなり、穿孔能率が低下する。逆に低過ぎると、注入材層に対する引っ掛かり効果が小さくなる。
螺旋状の凸条2のリードLは100〜400mmとするのが好ましく、150〜300mmとするのがより好ましい。リードLが小さ過ぎると、鋼管軸方向に隣り合う凸条2間に介在する注入材層の管軸方向の長さが短く、当該位置の注入材に作用する剪断力に抗しきれなくなる。また、リードLが大きすぎると、鋼管全体からみて注入材との付着面積を大きくすることができず、所望の摩擦抵抗力を期待できない。実験では、上記の範囲が好ましかった。さらに、実験結果では、螺旋状の凸条2のリード角は25〜45度とするのが好ましく、30〜35度程度とするのがより好ましかった。リード角が小さすぎると繰り粉や注入材の流動がうまく行われなくなり、引っ掛かり抵抗も小さくなる。一方、リード角が大きすぎると、注入材の流動は良好であるが、鋼管の軸方向の移動に対する抵抗性が低下する。鋼管軸と直交方法の成分が不足するからである。
鋼管1の上記凸条2の間隔部には、複数の通孔5が穿孔されている。通孔5は直径が例えば10mmであり、一つの穿孔位置の断面上に180度の位置(鋼管の直径方向に対向する位置)に1個づつ穿孔されている。また、隣接する穿孔位置では、同様に直径方向に対向する位置に1個づつ穿孔されているが、その位置は、隣の穿孔位置の通孔よりも90度位相がずれている。すなわち、通孔5は、交互に90度ずつ位相をずらして所定の間隔で穿孔されていて、隣接する二つの穿孔位置の通孔を重ねると、十文字状となる。なお、通孔5の大きさ、数及び穿孔位置は、注入材が全長にわたって万遍なく行き渡るようなものであればよく、通孔の内径を例えば8〜12mm程度としてもよく、90度ずつ位相をずらす代わりに、鋼管1の軸方向に沿って千鳥状に分散させて穿孔してもよい。
鋼管1の両端部には、150mm程度の凸条2のない部分が設けられている。凸条2は肉盛り溶接で形成するので、このように、任意の位置に凸条のない部分を設けることができる。鋼管1の先端部には、図2(a)に示すように、超硬チップの刃体を有するビット10が取り付けられる。図示例のビット10は、鋼管の外径よりも大きな口径を持つリング状の外側ビットであり、当該ビットの内側、すなわち中空部には、さく孔ロッド12に取り付けた内側ビット15が設けられる。図4は、このビット取り付け部の拡大図である。また、鋼管1の反対側の端部すなわち後端部には、当該鋼管1に回転力を伝達する係止部材20を備えたアダプタ21が溶接固着されている。穿孔中は、この部材20を介して鋼管1にさく岩機の回転力が伝達される。
この地盤強化用鋼管1の使用に際しては、図4に示すように、先端部に内側ビット15を装着したさく孔ロッド12を当該鋼管1内に挿通し、先端部の内側ビット15が鋼管1の外側ビットよりも突出するようにして、当該さく孔ロッド12と鋼管1の後端部をさく岩機(図示を省略)に接続する。そして、さく孔ロッド12と鋼管にさく岩機から打撃と回転と推力を与えつつ穿孔を行う。穿孔中は、さく岩機から水又は圧縮空気が供給され、ビットの先端部から吐出される。穿孔によって生じる繰り粉は大部分が鋼管の内側を通って排出されるが、一部は鋼管の外側を通って後方へ排出される。
所定深さの穿孔が終了し、鋼管1が地山中に埋設されたら、さく孔ロッド12を内側ビット15とともに鋼管1から後方へ引き抜き、鋼管1の後端部に注入装置(図示を省略)を取り付けて、注入材を鋼管1内に圧入する。この注入材は、鋼管内に充満し、該鋼管1に設けられている多数の通孔5を通って外部へ流出して、鋼管の外面に沿って流動しつつ、地山内に浸透して固化する。これにより、地山が強化されるのである。
この鋼管1は、その外周部に螺旋状の凸状2が形成されているので、当該凸条2が固化した注入材の層に埋め込まれた状態となり、両者が強固に一体化する。このため、鋼管に軸方向の力が作用しても、当該凸条2と注入材層との係合によって引っ掛かり抵抗が生じ、鋼管の移動が防止される。このようにして、鋼管が強固に地山中に固定されるのである。凸条2は、ピッチやリードの小さいネジではなく、所定範囲のリードをもつ螺旋状に形成されているので、注入材や繰り粉の流動性と逸脱防止のための引っ掛かり抵抗とを共に向上することができるのである。
上記螺旋状の凸条2は、肉盛り溶接によって形成されたもので、断面形状においてエッジ部やコーナー部のないなだらかな形状となっているので、繰り粉や注入材がスムーズに流動し、部分的に詰まりや空隙が生じない。このため、繰り粉の排出状態が良好であるのみならず、注入材と鋼管との密着性が向上し、すぐれた地盤強化を達成することができるのである。なお、以上の説明では、ビットとして、鋼管1の先端部に固着したリング状の外側ビットと、さく孔ロッドの先端部に装着された内側ビットとの組み合わせを採用したが、口径が拡縮可能な拡縮ビットを使用し、穿孔時は口径を鋼管の外径よりも大きくなるように拡張して穿孔を行い、穿孔終了時には、鋼管の内径よりも小さくなるように口径を収縮して後方へ引き抜くようにしてもよい。この場合は、鋼管の先端部にリングビットを固着しておく必要がない。
以上の説明から明らかなように、本発明に係る地山強化用鋼管は、従来の鋼管の外周面に螺旋状凸条を形成したもので、トンネル工事等における地盤強化を効果的に行うことができるものである。
地山強化用鋼管の正面図である。 その左側面図(a )及び右側面図(b)である。 凸条の断面図である。 ビット付きのさく孔ロッドを挿入した鋼管の先端部の一部断面図である。
符号の説明
1 地山強化用鋼管
2 凸条
5 通孔
10 外側ビット
12 さく孔ロッド
15 内側ビット

Claims (4)

  1. 掘削されるトンネル等の補強材として地盤に打設される地盤強化用鋼管であって、外周部に螺旋状の凸条が形成され、該螺旋状凸条の間隔部に注入材を鋼管の外側に流出させるための内外に通ずる複数の通孔が設けられており、
    前記螺旋状凸条が肉盛り溶接によって円弧状の丸みを帯びた断面形状に形成されていることを特徴とする地盤強化用鋼管。
  2. 螺旋状の凸条の高さが1.5〜7mmである請求項1に記載の地盤強化用鋼管。
  3. 螺旋状の凸条のリードが100〜400mmである請求項1又は2に記載の地盤強化用鋼管。
  4. 螺旋状の凸条のリード角が25〜45度である請求項1乃至3のいずれかに記載の地盤強化用鋼管。
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