JPS6251332B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、建築または土木工事などに用いるア
ンカーロツドに関する。特に、崖、盛土または河
川の堤防などのように、土地に形成された大小さ
まざまの段差の崩壊を防止するための擁壁の構
築、または補強に用いるアンカーロツドに関す
る。

（従来の技術） この種アンカーロツドとしては、地盤中の引抜
抵抗性を付与するために、先端を拡大させて構成
してなるものが提供されている。そして通常、こ
れらのアンカーロツドは施工現場で製造されてい
る。たとえば、先端に打込ヘツドを固定し、かつ
この打込ヘツドに、回転により拡開する開閉自在
の係止片を複数個配設固定した鋼棒または鋼製パ
イプなどからなるアンカーロツド本体を、盛土ま
たは切土などに予め掘削した削孔に挿入し、次い
でこのアンカーロツド本体を回転させて拡開した
上記係止片により、その周辺の土層を掘削した
後、削孔にモルタル、コンクリートまたは合成樹
脂などを注入して、上記アンカーロツド本体の先
端に塊状体を形成させることにより、引抜抵抗性
を有するアンカーロツドを構成していた。

（発明が解決しようとする問題点） しかし、このようにして製造される従来のアン
カーロツドは、その軸芯に対し、その先端の塊状
体が偏心しがちであるという欠点を有していた。

また、先端に塊状体を形成するために、予め設
けた削孔よりも径の大きな孔を先端に設けなけれ
ばならないので掘削機を二種類必要とするか、あ
るいはアンカーロツド本体の回転手段など他の施
工機械を必要とし、しかも再掘削により生じた土
の処理にも工夫を要していた。その結果、従来の
アンカーロツドは高価なものとなつていた。

さらに、このような従来のアンカーロツドの製
造上の問題点は、一体的に実施される、たとえば
擁壁の施工などに著しく大きな制約を課してい
た。すなわち、従来のアンカーロツドを製造する
には、比較的大きな径の削孔を設けなければなら
ないので、地盤が軟弱な盛土または切土に対して
は擁壁などを構築することが困難であつた。また
大型の掘削機だけでなく、アンカーロツドの回転
手段など他の機械が必要となるので、これら施工
機械の移動が作業性を悪くするだけでなく、比較
的広い施工場所を必要としていた。このことは工
事所要日数および費用が莫大になるだけでなく、
人家や施設の密集地では施工が困難であるという
問題を提起していた。

（発明の目的） 本発明は上記従来の欠点を改善し、かつ上記問
題点を解消するためになされたもので、極めて容
易に製造することができ、かつ地盤中の引抜抵抗
性が著しく高いアンカーロツドを提供することを
目的とし、延いては擁壁などの施工も迅速経済的
に遂行させうるアンカーロツドを提供することを
目的とする。

（発明の構成） すなわち、本発明のアンカーロツドは、筒状体
からなるアンカーロツド本体の周壁に、基底部が
このアンカーロツド本体の後端に向いた略コ字形
の切目を設けると共に、上記アンカーロツド本体
の先端開口に閉塞金具を取付けて、上記アンカー
ロツド本体の後端開口から膨脹剤を注入収容しう
るように構成したものである。

（実施例） 以下、本発明の一実施例を図面を参照して説明
する。

第１図は、本発明の一実施例を示す分解部分斜
視図であり、同図中符号１は、金属製または合成
樹脂製の円筒体からなるアンカーロツド本体であ
り、その周壁には基底部がアンカーロツド本体１
の後端に向いている略コ字形の切目２が複数個設
けられている。これら切目２…により略コ字形の
舌片３…が形成される。４は閉塞金具であり、ア
ンカーロツド本体１の先端開口１ａに、先端４ａ
が圧入固定され、取付けられる。閉塞金具４によ
り地盤中でのアンカーロツド本体１への土の侵入
が防止されると共に、アンカーロツド本体１の後
端開口１ｂから膨脹剤を注入収容しうる膨脹剤の
収容室が形成される。このようにアンカーロツド
Ａはアンカーロツド本体１と閉塞金具４とから構
成される。

以上説明したように、上記実施例においては、
アンカーロツド本体１の周壁に略コ字型の切目２
…を設け、先端開口１ａに閉塞金具４を取付ける
だけで構成されるので、製造が極めて容易であ
り、それ故安価となる。そして現場で打設または
埋設した後、アンカーロツド本体１の後端開口１
ｂから膨脹剤を注入すれば、その膨脹圧により、
略コ字形の舌片３…が起立すると共に、その周辺
のアンカーロツド本体１が膨大するので、地盤中
の引抜抵抗性は著しく高くなる。また以下で詳細
に説明するように、工場でアンカーロツド本体１
の周壁に切目２…を入れ、現場では打設するだけ
でよく、また、設する場合にもアンカーロツド本
体１の外径と略等しい径の削孔を掘削すればよい
ので、擁壁などの施工も迅速、かつ経済的な遂行
を可能とさせる。

なお、上記実施例においては、アンカーロツド
本体１は円筒体からなるが、中空の角柱を採用し
てもよい。切目２…の形状も厳密なコ字形に限ら
れず、たとえば〓形、〓形、半円形、Ｕ字形また
はＶ字形などであつてもよく、その基底部がアン
カーロツド本体１の後端に向いていれば、その形
状は問わない。また切目２…の数は、アンカーロ
ツド本体１の強度に大きな影響を与えなければ多
いほど好ましいが、できるだけアンカーの先端近
傍に設けるのが好ましく、その周壁の同一円周上
に３ケ所程度設ければ充分である。さらに上記実
施例においては、アンカーロツド本体１の先端開
口１ａに閉塞金具４が圧入固定されているが、ア
ンカーロツド本体１の先端開口１ａと閉塞金具４
を雌雄の螺合としてもよいし、また閉塞金具４を
アンカーロツド本体１と一体に形成してもよい。
打設用のアンカーロツドとしては、第３図に示す
ように先端が鋭利な形状となしている閉塞金具を
採用するのが好ましい。特に地盤が強固な場合に
は著しい効果を奏する。

以下、打設用の上記実施例のアンカーロツドＡ
を採用して実施しうる擁壁の補強工法の一例を説
明することにより、本発明のアンカーロツドの作
用、効果をより詳細に説明する。

まず、上記実施例のアンカーロツドＡを複数
本、第４図に示すように、擁壁５に所定の間隔を
置いて穿設した孔６から擁壁の垂直軸に対して鋭
角に盛土７中の所望の深さまで打込む。このアン
カーロツドＡは擁壁５の上部に打込むものは比較
的短く、下部に致るに従い次第に長いものを採用
するのが好ましい。しかし必ずしもこのような方
式に限るものでなく、長いアンカーロツドと短い
アンカーロツドを交互に打込んでもよい。またア
ンカーロツドは地盤が軟弱の場合は長いものを用
いるのが好ましい。

このようにして打込んだ各アンカーロツドＡ…
の後端開口１ｂから膨脹剤８を切目２…が設けら
れている位置まで注入する。この膨脹剤８とは、
硅酸塩を主体とする無機化合物と特定の有機化合
物と水との混合物である。たとえば小野田セメン
ト株式会社製のブライスター（商品名）と水との
混合物が好適に使用できる。なお、この膨脹剤に
少量のセメント、モルタルなどを混合させたもの
を採用してもよい。

注入した膨脹剤８は膨大硬化し、通常約12〜24
時間経過すると最大の膨脹圧を示し、第５図に示
すようにこの膨脹圧により、コ字形の舌片３…が
起立してアンカーロツドＡに引抜抵抗性が付与さ
れる。第６図は舌片３…が起立した状態を示すア
ンカーロツド本体１の部分斜視図であり、第７図
は膨脹剤を省略して示す第６図のＹ―Ｙ線断面図
である。舌片３…の起立と相俟つてアンカーロツ
ド本体１の切目２…周辺が膨大する（膨大部９
…）ことにより、それらの周辺の土層に圧縮応力
が加えられ圧密が生じる。その結果、アンカーロ
ツドＡ…と盛土間には大きな摩擦力が生じる。

膨脹剤８の膨脹が終了した後、擁壁５から突出
した各アンカーロツドＡ…の後端開口１ｂに閉塞
金具４を取付けると共にナツトなどの緊締手段に
より各アンカーロツドＡ…に緊張を付与する。こ
のように張力を付与することにより舌片３…は盛
土の抵抗によりさらに起立し、アンカーロツドＡ
…の引抜抵抗性はさらに大きくなる。

以上のようにして本発明のアンカーロツドの上
記実施例を採用した擁壁の補強は完了する。な
お、各アンカーロツドＡ…の擁壁からの後端露出
が好ましくないものであれば、その上に表面層を
被覆してもよい。

このように擁壁を補強するに際して、本発明の
上記実施例のアンカーロツドＡの引抜抵抗性は著
しく高いので、比較的短小なものを採用しても充
分な効果を奏し、しかもその配設数も僅少とする
ことが可能となる。また、たとえば吹き付け工法
によつたコンクリート層の如き薄い擁壁に対して
も、良好な安定性を付与することができる。さら
に工場でアンカーロツド本体１の周壁に切目２…
を入れて現場では打設または埋設するだけでよい
ので、多くの施工機械を必要としなく、それ故現
場での施工機械の移動が容易となる。その結果仮
設足場が簡易なものでも施工に不都合がなく施工
能率が極めて高くなる。したがつて現場の作業員
が少なくて済み省力化が可能となると共に、人家
や施設の密集地でも施工を容易に、かつ迅速に行
なうことができる。

（発明の効果） 以上説明したように、本発明によれば、極めて
容易に製造でき、かつ地盤中の引抜抵抗性が著し
く高いアンカーロツドが提供され、延いては擁壁
などの施工も迅速経済的に遂行させうるアンカー
ロツドを提供することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例を示す分解部分斜視
図、第２図は第１図のＸ―Ｘ線断面図、第３図は
閉塞金具の他の実施例を示す斜視図、第４図は上
記実施例を、擁壁に設けられた孔を貫通して盛土
中に打込んだ状態を示す断面図、第５図は盛土中
で膨脹剤の膨脹圧により、上記実施例に形成され
た舌片が起立し、その周辺部が膨大した状態を示
す断面図、第６図は舌片が起立し、その周辺部が
膨大した状態を示す上記実施例の要部斜視図、第
７図は膨脹剤を省略して示す、第６図のＹ―Ｙ線
断面図である。 Ａ…アンカーロツド、１…アンカーロツド本
体、２…切目、３…舌片、４…閉塞金具、５…擁
壁、７…盛土、８…膨脹剤、９…膨大部。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 筒状体からなるアンカーロツド本体の周壁
   に、基底部がアンカーロツド本体の後端に向いた
   略コ字形の切目を設けると共に、上記アンカーロ
   ツド本体の先端開口に閉塞金具を取付けて、上記
   アンカーロツド本体の後端開口から膨脹剤を注入
   収容しうるように構成したことを特徴とするアン
   カーロツド。