JPH0225214Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は非晶質磁性薄帯を用いた巻鉄心の改良
に関する。

周知のように、変圧器における鉄心材料の低損
失技術の進歩は著しいものがあり、このなかでも
アモルフアスと称する非晶質の磁性材料が、今日
新しい低損失材料として注目を集めている。この
非晶質の磁性材料はその製造過程が珪素鋼帯と異
なり、金属を液状の状態から高速冷却させてつく
られ、前記高速冷時に原子配列の乱れた非晶質状
態を得るようにした点が大きな特徴で、磁気特性
は従来の珪素鋼帯に比べ非常に優れている。しか
し、前記非晶質の磁性材料（以下非晶質磁性薄帯
という）はその製法上板厚を余り厚くすることが
できず、珪素鋼帯の1/10以下で20乃至30μｍ程度
と非常に薄く、その上、弾力性に富んでいるた
め、非晶質磁性薄帯を用いて変圧器等の巻鉄心を
製作するには種々の困難が伴う。例えば、第１図
に示すように、非晶質磁性薄帯を矩形芯金１に所
要の回数巻回して矩形鉄心２を形成し、これを焼
鈍してから矩形芯金１および磁場焼鈍用の励磁コ
イル３を除去して巻鉄心を形成し、この巻鉄心を
次工程に移動させる場合、前記巻鉄心は鉄心自身
の剛性が弱いため、その取り扱いを慎重に行なわ
ないと第２図に示すように、矩形成形を行つても
その形状がくずれ、所定の形状に保持することが
困難であつた。特に、非晶質磁性薄帯は焼鈍を行
うことにより鋼帯自身が脆くなるため、その取り
扱い中に破損したり、あるいは一部が剥離したり
剥落して巻鉄心として使用できなるおそれがあつ
た。又、前記のように、焼鈍後、巻鉄心の形状が
変形すると、磁気特性が著しく低下する。このよ
うに、非晶質磁性薄帯を用いて巻鉄心を形成する
場合は、鋼帯自身の剛性強化と脆性対策を充分に
施さないと、巻鉄心としての使用ができなくなる
欠点があつた。

このため、本考案は非晶質磁性薄帯を巻回した
巻鉄心の最内周部と最外周部に巻鉄心と同質材料
からなる内側及び外側の各補強枠体を嵌合し、か
つ、これら各補強枠体と巻鉄心とをガラス繊維等
高強度繊維材料からなるテープを巻回して一体的
に固定することにより、巻鉄心自身の剛性強化と
脆性対策を施すようにしたもので、以下本考案の
実施例を第３図乃至第５図により説明する。最初
に非晶質磁性薄帯を従前同様、矩形芯金１の外側
に所要回数巻回し、その巻回終端を耐熱性の接着
剤等で止着して第１図に示す矩形鉄心２と同様の
矩形鉄心４を形成する。（尚、非晶質磁性薄帯を
円形に巻回してからこれを矩形状に成形金具を用
いて円形鉄心を矩形状に成形して矩形鉄心４を得
るようにしてもよい。）次に、耐熱性の電線を矩
形芯金１の中空部に挿入しながら矩形鉄心４の脚
鉄部ａに所定数巻回して磁場焼鈍用の励磁コイル
３を形成し、つづいて前記励磁コイル３を備えた
矩形鉄心４を窒素、アルゴン等の不活性ガスの焼
鈍炉に入れて、励磁コイル３に通電し、この状態
で磁場焼鈍を行い、冷却させてから焼鈍炉より前
記矩形鉄心４を取り出す。そして、励磁コイル３
および矩形芯金１を矩形芯金４から取り外す。次
に前記焼鈍を行つた矩形鉄心４の最内周部と最外
周部とに第５図に示す補強枠体５，６を嵌合す
る。前記内側及び外側の両補強枠体５，６は、既
に焼鈍を終えた矩形鉄心４の剛性強化と脆性対策
をはかるために使用し、その製作に当つては、前
記矩形鉄心４の内周面側及び外周面側とにそれぞ
れ密接した状態で嵌合することができるように、
矩形鉄心４と同質材料からなる非晶質磁性薄帯を
あらかじめ所定回数矩形状に巻回して内側及び外
側の矩形枠体を形成し、これら矩形枠体を焼鈍処
理を行い、つづいて、エポキシ樹脂等熱硬化性の
樹脂液中に浸漬し、樹脂を前記矩形枠体の層間に
充分に含浸させてから、前記樹脂含浸を行つた矩
形枠体をそれぞれ乾燥室に入れて樹脂を加熱固化
し、更に、前記樹脂によつて矩形状態を維持する
矩形枠体を第５図で示すように、Ｃ型状に切断し
て、内側及び外側の補強枠体５，６を製作する。
そして、前記のようにして製作した補強枠体５，
６は矩形鉄心４の内周面に内側の補強枠体５を挿
入し、外周面には外側の補強枠体６を嵌合して、
第３図に示す如く、矩形鉄心４の内、外両周面に
補強枠体５，６を密に接合させた状態で巻鉄心７
を形成する。この巻鉄心７は補強枠体５，６の脱
落を防ぐために、巻鉄心７の全周に亘つて第４図
に示すように、ガラス繊維等高強度繊維材料から
なるテープ８を巻付けるか、あるいは、内、外両
補強枠体５，６を矩形鉄心４に耐油性に優れた接
着剤を用いて接着させることにより、前記補強枠
体５，６の脱落を阻止して矩形鉄心４と一体的に
固定し、前記矩形鉄心４の剛性を強くし、かつ、
脆性効果を高める。９は焼鈍後矩形鉄心４の巻始
め端および巻終り端を止着する接着テープであ
る。

本考案は以上説明したように、アモルフアス等
の非晶質磁性薄帯を必要回数巻回し、これを矩形
成形して焼鈍を行つた矩形鉄心の最内周部と最外
周部には、該矩形鉄心と同質材料からなる非晶質
磁性薄帯を事前に別の工程で前記矩形鉄心の内、
外周部に嵌合できるよう所要回数矩形状に巻回
し、これを焼鈍してから樹脂液中に浸漬し、か
つ、浸漬した樹脂を固化させたあと、前記矩形枠
体をＣ型状に切断して一対の内側及び外側の補強
枠体を形成し、内側補強枠体は矩形鉄心の内周面
に、外側枠体は矩形鉄心の外周面にそれぞれ嵌合
し、この状態で、矩形鉄心にガラス繊維等の高強
度繊維材料からなるテープを巻装して前記補強枠
体を矩形鉄心と一体的に固定して非晶質磁性薄帯
からなる巻鉄心を構成するようにしたので、次に
示すような効果を有する。

本考案は、非晶質磁性薄体を巻回して矩形状
に成形したあと焼鈍を行つて設けた矩形鉄心
が、コイルの巻回作業等次工程への移動に際し
ては、形崩れを起さないように前記矩形鉄心の
最内周部と最外周部とに、略矩形鉄心の内、外
周部と同形状で、かつ、同質材料からなる補強
枠体を嵌合し、この補強枠体と矩形鉄心とを、
更に、ガラス繊維テープにより一体的に巻回し
て、前記矩形鉄心が形崩れしないよう補強が施
されているので、本考案の巻鉄心は、その剛性
を著しく強くし、これによつて形崩れを起した
り、変形するようなことが全くないので、優れ
た磁気特性を備えた非晶質磁性薄帯からなる巻
鉄心を容易に得ることができる。

又、矩形状に成形加工した巻鉄心の内、外周
面に嵌合されて該巻鉄心の剛性を強くする補強
枠体は、事前に巻鉄心と同質材料である非晶質
磁性薄帯を、前記巻鉄心の内、外周面の形状に
合せて複数回巻回して形成した矩形枠体に合成
樹脂を含浸・固化させて剛体となし、このあ
と、矩形枠体をＣ型状に切断して設けられてい
るので、焼鈍を終えた矩形状の巻鉄心の内、外
周面に嵌合する場合、前記補強枠体はその切断
端側を互いに内側方向にすぼめたり、あるい
は、外側方向に開拡することによつて、迅速・
確実に巻鉄心の内、外周面に嵌合させることが
できる。

しかも、前記補強枠体はＣ型状に切断して使
用することにより、切断端側が自由端となつて
少なからず弾力性を備えているので、前記のよ
うに、巻鉄心への嵌合時、切断端側をすぼめた
り、開拡して巻鉄心に嵌合させると、前記弾力
性が有効に作用して、Ｃ型状に切断した補強枠
体を巻鉄心の内、外周面に、巻鉄心から脱落し
ないよう確実に嵌合保持させることができる。

更に、本考案は巻鉄心の内、外周面に補強枠
体を別に嵌合させて剛性を強くする他に、前記
補強枠体を嵌合したあと、巻鉄心にガラス繊維
等高強度繊維からなるテープを補強枠体にまた
がつてトロイダル状に包み込むように巻回して
あるため、巻鉄心を、コイルの巻回作業等に際
して次工程に移動する場合とか、コイルの巻回
作業中に、焼鈍によつて脆くなつている巻鉄心
の内、外周面が剥落したり、前記内、外周面の
角部等が欠落することのないように脆性対策が
十分に施されているので、補強枠体の嵌合によ
る剛性強化と相まつて巻線作業や変圧器の組立
作業が鉄心特性を損うことなく円滑・良好に行
うことができる。

その上、巻鉄心全体がテープの巻回によつて
被覆されているので、変圧器の運転中に鉄心か
ら欠落した破片が油中に浮遊し、これが、コイ
ルと接触して短絡事故等を誘発するのを未然
に、かつ、確実に防ぐことができ、この結果、
長期間にわたり安定した状態で運転可能な信頼
性の高い変圧器を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は焼鈍を行う前の巻鉄心を示す正面図、
第２図は焼鈍後矩形芯金を除いた時の従来の巻鉄
心を示す斜視図、第３図は本考案の巻鉄心の要部
を示す斜視図、第４図は本考案の巻鉄心の完成状
態を示す正面図、第５図は本考案巻鉄心の要部を
分解して示す斜視図である。 ４……矩形鉄心、５……内側の補強枠体、６…
…外側の補強枠体、７……巻鉄心。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 非晶質磁性薄帯を所要回数巻回し、かつ、これ
   を矩形状に成形して焼鈍を行つた矩形鉄心４の最
   内周部と最外周部とに嵌合する一対の内側と外側
   との矩形枠体を、前記矩形鉄心４と同質材料から
   なる非晶質磁性薄帯を複数回矩形状に巻回して形
   成し、前記内側及び外側の各矩形枠体の層間に合
   成樹脂を含浸させて固化したあと、前記各矩形枠
   体をＣ型状に切断して内側及び外側の各補強枠体
   ５，６を設け、前記内側補強枠体５を矩形鉄心４
   の最内周部に、外側補強枠体６は矩形鉄心４の最
   外周面部にそれぞれ嵌合し、前記矩形鉄心４に、
   ガラス繊維等高強度繊維材料からなるテープ８を
   該矩形鉄心４の巻回方向と直交させて巻回し、前
   記矩形鉄心４と、内側及び外側の各補強枠体５，
   ６とを一体的に固定するようにしたことを特長と
   する巻鉄心。