JPH0224462Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は人工的に魚類の棲息条件を改善するた
めに海底に設置する人工礁用ブロツクに関する。

（従来の技術） 近年、大型人工魚礁の開発が活溌に進められて
いるが、従来の魚礁の魚を集める仕組は餌場ある
いは産卵場としの機能が重視されてきた。

しかし、これらの集魚機能に加えて、流れのあ
る海域では魚礁の後流域に生じる乱流や渦、或い
は湧昇流が海底の豊富な栄養塩を上層へ移流拡散
させ、太陽光による光合成作用によつてプランク
トンの増殖を促し、海域の基礎生産力を高めると
いう効果がある。事実、世界的にみて湧昇流や渦
流の存在する海域は、例外なく好漁場となつてい
る。

そこで湧昇流を発生させて魚類の棲息条件を改
善しようとしたものとして、従来、平板状をした
遮蔽板を潮流に対向させて、海底に多数立設する
ようにしたもの（例えば特開昭58−101630号）が
開発されている。

（考案が解決しようとする問題点） このような従来の人工礁にあつても、湧昇流が
発生し、漁場の改善がなされるものではあるが、
大水深海域において上層に到る効果的な湧昇流を
得るには、高さの大なる遮蔽板が必要になり、し
かも、これを潮流に対向させて設置するには、そ
の支持が大掛かりとなり、更に、潮流の流れ角度
が変化して遮蔽板に対して潮流が直角に衝突しな
いと、湧昇流は著しく小さいものとなつて所期の
目的が達成できないという問題があつた。

本考案は、このような従来の問題に鑑み、小形
で、しかも大きい湧昇流が得られ、設置が容易
で、更に潮流の角度が多少変化しても湧昇流が発
生する人工礁用ブロツクを提供せんとしたのであ
る。

（問題点を解決するための手段） 本考案は上述の如き問題点を解決するため、海
底面に設置する底板部と、該底板部の上面に立設
した潮流遮蔽板部と、該潮流遮蔽板部の両側端部
にそれぞれ平面がＴ字状配置となるように取り付
けした一対の矩形状をした側板部とを備えて人工
礁用ブロツクを構成したのである。

（作用） かかる構成の本考案の人工礁ブロツクは、潮流
遮蔽板を潮流に直交する向きで、海底に一定間隔
を隔てて設置するものであり、両側板部間に流入
した潮流は両側板部の存在によつて、全てが潮流
遮蔽板に衝突して上昇方向に向きが変えられ、ま
た潮流遮蔽板の背面位置は負圧状態となるが側板
部に沿つて流過した潮流がその背面位置に引き込
まれて渦流が発生し、潮流遮蔽板をのりこえて背
面位置に引き込まれようとする潮流に上昇方向の
運動が与えられる。また、潮流の向きに多少の変
化が生じても両側板部の間に流入した潮流は側部
に逃げることが出来ず、潮流遮蔽板に衝突して上
昇方向の運動が与えられる。

（実施例） 次に本考案の実施の一例を、図面について詳細
に説明する。

図中Ａは本考案に係る人工礁用ブロツクであ
る。このブロツクＡは長方形の平板上をした底板
部１と、この底板部１の上面中央に長手方向に向
けて立設した潮流遮蔽板部２と、この遮蔽板部２
の両側部にそれぞれ平面がＴ字状の配置になるよ
うに備えた一対の矩形状をした側板部３，３とを
一体かさせて成形されており、全体を鉄筋もしく
は鉄骨コンクリートをもつて一体成形するように
している。

このように構成される人工礁用ブロツクは、こ
れを、潮流に対しその遮蔽板部２を、直交する向
きに向けて海底に設置すると、第２図に示すよう
に、両側板部３，３間に流入する潮流は両側板部
３，３によつて流れが拘束されるため、遮蔽板部
に衝突して全てが上昇方向に向きが変えられる。
一方、遮蔽板部２の背面には死水域ａが生じ、こ
れによつて両側板部３，３に沿つてその外側を流
過する潮流が引き込まれ互いに衝突する。その衝
突によつて生じる渦流によつて遮蔽板部２をのり
こえた潮流は上向きの方向性が与えられ、全体と
して大きな湧昇流が発生する。

この人工礁用ブロツクＡの使用に際しては、第
３図に示すように遮蔽板部２を潮流と直角の向き
に配置し、ブロツクＡの全幅Ｄ以上の間隔をあけ
て、一直線上配置に多数設置し、これを、ブロツ
クＡの全幅Ｄの５倍以上の間隔を隔てて多数列配
置に設置する。

（試験例） 本考案によるブロツクと、両側板部を有しない
同じ大きさの対照ブロツクとを水流中に置いた場
合の、後流域の乱れ強度を測定した結果、本考案
によるブロツクは第４図に示すごとくであつたの
に対し、対照ブロツクは第５図に示すごとくであ
つた。なお、ここにいう乱れ強度とは、流速の変
動成分の割合（標準変差）で、渦流の強さを示
す。また、第４図、第５図中ｘは乱れ強度が１
cm／ｓの領域を示し、ｙは乱れ強度が２cm／ｓの
領域を示している。

（考案の効果） 本考案の人工礁用ブロツクは、上述の如く構成
され、底板部上に立設した潮流遮蔽板の両側部
に、それぞれ平面がＴ字上配置になるように、一
対の側板部を備えたことにより、試験例に示すよ
うに従来の、単に平板上の遮蔽板を立設したみの
ものに比べ、著しく大きな湧昇流が得られること
となつたものであり、また、潮流の方向に多少の
変化があつた場合でも、両側板部内に流れ込んだ
潮流は、水平方向に逃げることがなく、遮蔽板に
衝突して湧昇流となり、従来のように全く効果が
得られなくなることがない等、種々の顕著な効果
がある。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施の一例を示すもので、第１
図はブロツクの斜視図、第２図は湧昇流発生状態
を示す平面図、第３図は設置状態の平面図、第４
図は本考案のブロツクによる水流の乱れ強度を示
すグラフ、第５図は対照ブロツクの同様のグラフ
である。 Ａ……人工礁用ブロツク、１……底板部、２…
…潮流遮蔽板部、３……側板部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 海底面に設置する底板部と、該底板部の上面に
   立設した潮流遮蔽板部と、該潮流遮蔽板部の両側
   端部にそれぞれ平面がＴ字状配置となるように取
   り付けした一対の矩形状をした側板部とを備えて
   なる人工礁用ブロツク。