JPH0141971Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、農用トラクタ等の移動農機における
変速装置に関するものである。

従来、農用トラクタ等の移動農機にあつては、
その牽引力に見合つた各種作業を行うため、超低
速から低速及び路上走行用の高速に至る多数段の
変速切換ができるようになつている。しかも、こ
の走行変速機構には近年作業の多様化により前後
進切換をする前後進変速機構が内在されていて、
前進、後進が同一の多数段で作業ができるように
なつているものが増加した。ところが、上記従来
の走行変速機構にあつては路上走行用の最高速で
あつても、後進することができ、従つて、誤つて
最高速後進にすると、後進が速すぎて極めて危険
性が高くなる欠点があつた。そこで、最高速後進
を廃止することも提案されているが、このもの
は、前後進切換可能な高速段のうちの後進変速だ
けを廃止しようとするものであるため、複雑なリ
ンク機構を必要とし、全体構造が複雑となる許り
か、変速操作が煩雑になるという新たな問題点を
発生させていた。

本考案は、上記の如き実状に鑑み入力軸からの
動力を前後進切換機構と、該前後進切換機構の前
後に夫々配設した前部並びに後部変速機構とを介
して伝達し、前後進とも同一の多数段に変速して
車軸側のデフピニオン軸に伝達する動力変速伝達
機構を備えた移動農機において、上記入力軸とデ
フピニオン軸との間には、前記前後進切換機構に
よる伝達経路を経由しない高速前進用の動力伝達
機構を設け、該動力伝達機構には、軸方向に摺動
して上記入力軸からの動力を直接デフピニオン軸
に伝達可能な切換操作部材を配設し、該切換操作
部材を上記後部変速機構切換用の操作レバーに連
動連結して、該操作レバーの高速側への変速切換
操作で前記後部変速機構の動力伝達を解除すると
共に、高速前進用の動力伝達機構への動力伝達を
可能に構成したことにより、簡単な機構により高
速後進を廃止して後進時の安全性を確保できる移
動農機における変速装置を提供することを目的と
したものである。

本考案の構成を、図面に示された一実施例に基
づいて説明すれば、１は本考案が実施された変速
装置であるが、該変速装置１は、主ミツシヨンケ
ース２、副ミツシヨンケース３及び減速ミツシヨ
ンケース４によつて覆蓋されている。主ミツシヨ
ンケース２には走行カウンタ軸５、分配軸６及び
PTO軸７が軸支されているが、走行カウンタ軸
５の一端は、エンジン側からの入力軸８に軸受９
を介して軸支されており、入力軸８と走行カウン
タ軸５とは互いに自由回転する。入力軸８の端部
に設けた駆動歯車８ａは分配軸６に固定の被動歯
車６ａに噛合し、これによつて分配軸６は入力軸
８とともに回転する。分配軸６にはさらに各歯数
の異なる歯車６ｂ，６ｃ，６ｄ，６ｅが固定され
ているが、これら各歯車６ｂ〜６ｅは、PTO軸
７に回転自在に取付けられた歯車７ｂ，７ｃ，７
ｄ，７ｅにそれぞれ噛合すると共に、走行カウン
タ軸５に回転自在に取付けられた歯車５ｂ，５
ｃ，５ｄ，５ｅにもそれぞれ噛合している。
PTO軸７にはさらに軸芯方向へ移動自在なクラ
ツチ７ｆ，７ｇがスプライン結合されているが、
クラツチ７ｆは歯車７ｂ，７ｃに選択係合して歯
車６ｂ，７ｂあるいは歯車６ｃ，７ｃによつて減
速された減速回転をPTO軸７に伝動し、クラツ
チ７ｇは歯車７ｄ，７ｅに選択係合して歯車６
ｄ，７ｄあるいは歯車６ｅ，７ｅによつて減速さ
れた減速回転をPTO軸７に伝動するようになつ
ており、これによつてPTO軸７は４段の回転変
速をすることになる。このPTO軸７は、ジヨイ
ント１０ａを介して副ミツシヨンケース３側のシ
ヤフト１０に連結され、また該シヤフト１０はジ
ヨイント１１ａを介して減速ミツシヨンケース４
側のシヤフト１１に連結されている。そして、
PTO軸７の回転動力は、シヤフト１１から歯車
１１ｂ，１２ａを介して動力取出軸１２に伝達さ
れるようになつている。

一方、前部変速機構を構成する走行カウンタ軸
５にもクラツチ５ｆ，５ｇがスプライン結合され
ており、図示しない主変速側の操作レバーによつ
てクラツチ５ｆの歯車５ｂ，５ｃへの選択係合、
あるいはクラツチ５ｇの歯車５ｄ，５ｅへの選択
係合を行うことにより、走行カウンタ軸５は
PTO軸７と同様４段の主変速をすることになる。
走行カウンタ軸５にはさらに歯車５ａが固定され
ているが、この歯車５ａは分配軸６に回転自在に
設けたカウンタ歯車６ｆを介してPTO軸７に回
転自在に設けた取出歯車７ａに連動連結されてい
る。取出歯車７ａは副ミツシヨンケース３側に突
出し、シヤフト１０に回転自在に設けられたパイ
プ軸１３にジヨイント１３ａを介して連結されて
いる。パイプ軸１３には歯車１３ｂ，１３ｃが固
定されているが、これらは第２図に示す前後進切
換機構、即ち、一方の歯車１３ｂは変速軸１４に
回転自在に設けた歯車１４ａに常時噛合し、また
他方の歯車１３ｃは後進軸１５に回転自在の歯車
１５ａを介して変速軸１４に回転自在に設けた歯
車１４ｂに動力伝動されるようになつている。変
速軸１４にはさらに軸芯方向に摺動自在なクラツ
チ１４ｃが設けられており、図示しない前後進切
換用操作レバーの操作に伴うクラツチ１４ｃの歯
車１４ａ，１４ｂへの選択係合によつて変速軸１
４は正逆回転し、これによつて前後進切換が行わ
れるようになつている。変速軸１４に固定の歯車
１４ｄは、シヤフト１０に回転自在に設けた歯車
１６に常時噛合しているが、この歯車１６と一体
回転する歯車１６ａは減速軸１７に固定の歯車１
７ａに常時噛合している。一方、減速軸１７には
別の歯車１７ｂが固定されているが、該歯車１７
ｂは歯車１６とは別にシヤフト１０に回転自在に
設けた歯車１８に常時噛合している。

次ぎに後部変速機構について説明するに、１９
は変速軸１４と同芯状に設けられた伝動軸である
が、該伝動軸１９の一端部は変速軸１４の端部に
回転自在に支持されている。そして、後述する操
作レバー２０の操作によつて変速軸１４と伝動軸
１９との間を自由に摺動するスライド歯車２１が
両軸１４，１９の間（第２図ｂ位置）に位置する
と両軸１４，１９はスライド歯車２１によつて一
体的に連結され、変速軸１４の回転を直接伝動軸
１９に伝達する。一方、スライド歯車２１を伝動
軸１９側に摺動せしめて変速軸１４と伝動軸１９
との連結を解き、歯車１６ａに噛合せしめると、
変速軸１４の回転は、歯車１４ｄ，１６，１６ａ
及びスライド歯車２１を介して伝動軸１９に伝達
される。さらにスライド歯車２１を摺動せしめて
歯車１８と一体回動する歯車１８ａに噛合せしめ
ると、変速軸１４の回転は、歯車１４ｄ，１６，
１６ａ，１７ａ、減速軸１７、歯車１７ｂ，１
８，１８ａ及びスライド歯車２１を介して伝動軸
１９に伝達される。従つて、伝動軸１９は、スラ
イド歯車２１の摺動によつて３段の副変速が行わ
れることとなり、前述した前部変速機構である走
行カウンタ軸５の４段の主回転変速と合わせる
と、伝動軸１９は都合12段の回転変速を正逆転い
ずれの場合においても行うことになり、これらに
よつて動力変速伝達機構が構成される。伝動軸１
９には駆動歯車１９ａが固定されているが、該駆
動歯車１９ａは前記ジヨイント１１ａに回転自在
に設けられた歯車２２に常時噛合している。一
方、上記歯車２２と一体回転する歯車２２ａは、
減速ミツシヨンケース４側から副ミツシヨンケー
ス３側に突出したデフピニオン軸２３に固定の歯
車２３ａに常時噛合し、これによつて伝動軸１９
の回転駆動はデフピニオン軸２３に伝達される。
そして、デフピニオン軸２３に固定のデフピニオ
ン歯車２３ｂがリングギア２４と噛合し、図示し
ない作動装置、終減速装置を介して走行車輪側に
動力を伝達するようになつている。

一方、前記副ミツシヨンケース３側に突出した
デフピニオン軸２３の端部は、主ミツシヨンケー
ス２から副ミツシヨンケース３まで延長された分
配軸６の端部に回動自在に支承されており、分配
軸６とデフピニオン軸２３上を摺動可能に構成し
た摺動クラツチ２５が後述する操作レバー２０の
操作によつて両軸６，２３間（第１図のｃ位置）
に位置すると、両軸６，２３は摺動クラツチ２５
によつて一体的に連結され、これによつて分配軸
６の回転が変速軸１４等を経由することなく直接
デフピニオン軸２３に伝達され、従つて、デフピ
ニオン軸２３は、変速軸１４等を経由する動力変
速伝達経路とは別の動力伝達経路、即ち、分配軸
６から減速されることなく直接伝達される経路に
よつて高速前進の回転をすることになる。

前記操作レバー２０は副ミツシヨンケース３に
枢軸２０ａを介して回動自在に枢支されている
が、該枢軸２０ａに固定のアームプレート２６に
はピン２７が植設されている。このピン２７は後
部変速機構を構成するスライド歯車２１のシフタ
溝２１ａに係合し、操作レバー２０の傾動操作に
よつて、スライド歯車２１は前述したように歯車
１８ａ，１６ａに噛合する超低速、低速位置から
これら歯車１６ａ，１８ａに噛合しない伝動軸１
９側の中立位置（第２図のａ位置）を経て、伝動
軸１９と変速軸１４とを一体的に連結する中速位
置（第２図のｂ位置）、変速軸１４側の高速位置
（第２図のｃ位置）に移動し、副ミツシヨンケー
ス３側での３段の副変速ができるようになつてい
る。

２８は中間部が支軸２９を介して副ミツシヨン
ケース３側に枢支された作動板であつて、該作動
板２８の一端側に穿設した長孔２８ａには前記の
ピン２７がアームプレート２６とスライド歯車２
１との間に位置して遊嵌している。作動板２８の
他端にはピン３０が植設されており、このピン３
０の先端は摺動クラツチ２５のシフタ溝２５ａに
係合している。従つて、ピン３０は、操作レバー
２０の操作に伴うピン２７の移動とは逆方向に移
動することになるが、このピン３０の移動によつ
て摺動する摺動クラツチ２５は、スライド歯車２
１が変速軸１４側に移動した第２図のｃの高速位
置では分配軸６とデフピニオン軸２３との間に位
置してこれらを一体的に連結する位置（第１図の
ｃ位置）に位置するが、それ以外の位置では分配
軸６側に移動し両軸６，２３はそれぞれ自由回転
するようになつている。

次ぎに、叙述の如く構成した本考案の作用につ
いて説明する。まず、圃場における農耕作業等を
行う場合、その作業条件によつて走行速度を中
速、低速、超低速のいずれかにする必要がある
が、それには、図示しない主走行変速用の操作レ
バーで前部変速機構の走行カウンタ軸５側のクラ
ツチ５ｆ，５ｇのいずれかを、対応する歯車５ｂ
〜５ｅのいずれかに選択係止せしめることによつ
て、パイプ軸１３は４段の変速回転をする。そし
て、やはり図示しない前後進変速用の操作レバー
で前後進切換機構の変速軸１４側のクラツチ１４
ｃを歯車１４ａ，１４ｂのいずれかに選択係止せ
しめることによつて、変速軸１４は前記４段の変
速回転のいずれに対しても正逆回転する。この様
に変速軸１４が回転した状態で、後部変速機構で
ある副変速用の操作レバー２０を操作して超低速
位置、低速位置、中速位置に位置せしめると、ス
ライド歯車２１は、これに連動して歯車１８ａあ
るいは１６ａに噛合し、または変速軸１４と伝動
軸１９とを一体的に連結してデフピニオン軸２３
側に回転伝達される。従つて、デフピニオン軸２
３は、主変速側の４段と副変速側の３段との変速
切換によつて都合12段の前後進走行変速が可能と
なり、作業者は必要に応じて任意の走行変速を選
択して圃場における農耕作業を行うことができ
る。

一方、分配軸６は入力軸８とともに一体回転し
ているが、上記操作レバー２０の変速操作位置で
は摺動クラツチ２５は分配軸６側に位置している
ため、分配軸６側の回転がデフピニオン軸２３側
に直接伝達されることは全くない。

そこで、次ぎに路上走行等、高速走行を行いた
い場合には、操作レバー２０を高速位置に操作す
ればよい。即ち、操作レバー２０を高速位置に操
作すると、スライド歯車２１は変速軸１４側に移
動して変速軸１４と伝動軸１９とは自由となり、
伝動軸１９側からデフピニオン軸２３側への動力
伝達は解除されるが、摺動クラツチ２５によて分
配軸６とデフピニオン軸２３とが一体的に連結さ
れ、従つて、デフピニオン軸２３は、主変速、前
後進変速、副変速を経ることのない別経路、即ち
分配軸６からの直接の動力伝達経路によつて高速
回転し、前進高速走行を行うことができる。

この様に、本考案においては、従来、前後進変
速可能な全変速段の内の１段を最高速に設定して
いたものと異なり、前後進変速可能な全変速段
（本実施例では12段）とは別に前進専用の高速段
を設けた（従つて本実施例では前進13段、後進12
段となる）から、従来最高速となつていた前後進
変速可能な変速段の変速比を大きくして中速側に
設定し得、以て、いちだんときめ細かい前後進変
速走行を行うことができ、各種農耕作業への適応
性が著しく向上することになる。しかも、後進走
行は、上記中速側に速度を抑えられた変速段が最
高速となるから、前進高速走行時の如く高速で走
行することはなく、従つて、後進時の安全性を確
実に高めることができる。そして、この様な前進
専用の高速段は、主変速、前後進変速、副変速か
らなる変速機構を経由しない別の伝動経路、即
ち、分配軸６からデフピニオン軸２３に直接伝動
する経路で得られるようにしたため、前後進変速
走行可能な高速段のうちの後進変速段を廃止する
もののように複雑なリンク機構を設けたりする必
要もなく、簡単に構成することができる。

また、本実施例にあつては、摺動クラツチ２５
は副変速用のスライド歯車２１と平行方向に移動
し、しかも操作レバー２０の操作に伴つて移動す
るスライド歯車２１用のピン２７と連動して摺動
クラツチ２５用のピン３０が移動し、スライド歯
車２１による３段の副変速と摺動クラツチ２５に
よる１段の変速とを行うようにしたから、操作レ
バー２０による上記４段の変速位置を直線状に採
ることができ、従つて操作レバー２０の操作性
は、従来の副変速にもう１段の変速位置を設けた
にもかかわらず、複雑になることはない。

以上要するに、本考案は入力軸８からの動力を
前後進切換機構と、該前後進切換機構の前後に
夫々配設した前部並びに後部変速機構とを介して
伝達し、前後進とも同一の多数段に変速して車軸
側のデフピニオン軸２３に伝達する動力変速伝達
機構を備えた移動農機において、上記入力軸８と
デフピニオン軸２３との間には、前記前後進切換
機構による伝達経路を経由しない高速前進用の動
力伝達機構を設け、該動力伝達機構には、軸方向
に摺動して上記入力軸８からの動力を直接デフピ
ニオン軸２３に伝達可能な切換操作部材を配設
し、該切換操作部材を上記後部変速機構切換用の
操作レバー２０に連動連結して、該操作レバー２
０の高速側への変速切換操作で前記後部変速機構
の動力伝達を解除すると共に、高速前進用の動力
伝達機構への動力伝達を可能に構成したので、高
速後進の阻止は、前後進切換機構を経由しない別
の動力伝達機構を設けることによつて直接行われ
ることになり、従つて、前後進切換可能な高速段
のうちの後進切換だけを不可能となるように構成
した従来のものの如く構造が複雑になることもな
く、単純化し得るうえに、従来最高速にしていた
前後進切換可能な変速段を中速側に移行せしめる
ことができて、後進時の安全性が著しく向上する
ばかりか、作業用の変速段がさらに一段加わるこ
とになつて、各種作業に幅広く対応したよりきめ
細かい変速段を設定することができるものであ
る。

【図面の簡単な説明】

図面は、本考案に係る移動農機における変速装
置の一実施例を示すものであつて、第１図は変速
装置の縦断面図、第２図は同上一部分の平面展開
図、第３図は同上概略正面図、第４図は要部拡大
図、第５図は要部の分解斜視図である。 １……変速装置、５……走行カウンタ軸、６…
…分配軸、８……入力軸、１３……パイプ軸、１
９……伝動軸、２０……操作レバー、２１……ス
ライド歯車、２３……デフピニオン軸、２５……
摺動クラツチ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 入力軸８からの動力を前後進切換機構と、該前
   後進切換機構の前後に夫々配設した前部並びに後
   部変速機構とを介して伝達し、前後進とも同一の
   多数段に変速して車軸側のデフピニオン軸２３に
   伝達する動力変速伝達機構を備えた移動農機にお
   いて、上記入力軸８とデフピニオン軸２３との間
   には、前記前後進切換機構による伝達経路を経由
   しない高速前進用の動力伝達機構を設け、該動力
   伝達機構には、軸方向に摺動して上記入力軸８か
   らの動力を直接デフピニオン軸２３に伝達可能な
   切換操作部材を配設し、該切換操作部材を上記後
   部変速機構切換用の操作レバー２０に連動連結し
   て、該操作レバー２０の高速側への変速切換操作
   で前記後部変速機構の動力伝達を解除すると共
   に、高速前進用の動力伝達機構への動力伝達を可
   能に構成したことを特徴とする移動農機における
   変速装置。