JPH0134311B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 発明の技術分野 本発明は、吸込弁および吐出弁を不要化した、
レシプロ式もしくはロータリ式のいずれにも属さ
ない全く新規な電動圧縮機に関する。

発明の技術的背景とその問題点 たとえばレシプロ式の電動圧縮機においては、
シリンダ室に吸込弁と吐出弁とが設けられてい
て、ピストンの往復動によつて開閉する。そして
被圧縮ガスのシリンダ室への吸込と吐出を制御す
るようになつている。

ところで上記各弁は、いずれも弁板からなるた
め、ピストンの動作に正しく追従することは不可
能であり、わずかのタイミング遅れがでる。この
遅れは被圧縮ガスの過圧縮、過膨張となつて現
れ、体積効率が低下する。また各弁は、長期の使
用に亘ると金属疲労を起して破損する虞れがあ
り、故障の最大発生要因となつている。

ロータリ式の電動圧縮機の一種であるスクロー
ル式のものやスクリユー式のものなどの圧縮機で
は弁が不要であるが、内部構造は複雑で製造性に
難点がある。

しかるに、たとえば実開昭47−3307号公報、実
開昭47−19806号公報および特開昭49−97313号公
報などにはレシプロ式のものにおいて、吸込弁を
不要化した構造が示されている。実公昭53−3452
号公報では吸込弁および吐出弁を不要化した構造
が示されている。また実公昭50−41524号公報で
はロータリ式のものにおける吐出弁を不要とした
構造が示されている。

これら公報によれば、少くとも一方の弁が不要
となるが、レシプロ式もしくはロータリ式のいず
れかの基本構造は変つていない。したがつて改造
による圧縮条件に影響がでる。特に吐出弁に代る
ための溝や孔はトツプクリアランスと同様作用と
なり圧縮効率が低下する。

なお従来の圧縮機構造と全く異るものとして、
たとえば特開昭53−143016号公報にみられるよう
に、ケーシング内に回転円板と、スプリングで押
圧される非回転円板を収容し、これらの間に被圧
縮ガスを吸引し圧縮する構造がある。この場合新
規な圧縮方式ではあるが、各円板の合せ面を歯形
にして、完全に密着できなければならず加工が非
常に面倒であるとともに接触部分が多いので仕事
量を大きくする必要があり、互いに摩耗し易い。
また各円板間に被圧縮ガスを導くための吸込孔お
よび吐出孔は、それぞれの円板を貫通して合せ面
の凹部に連通させたものを複数ずつ設けてなる
が、各孔に導通する被圧縮ガス量に差が生じ、効
果的な圧縮ができるとは認め難い。さらに、圧縮
量を増やすためには非回転円板のストロークを長
くしなければならないが、これは歯形の深さを大
きくすることによりはじめて可能であり、加工性
がさらに悪くなる。

発明の目的 本発明は上記事情にもとづきなされたものであ
り、その目的とするところは、吸込、吐出用の弁
を不要とし、圧縮効率および安全性の向上化を図
れる電動圧縮機を提供しようとするものである。

発明の概要 本発明は、密閉構造のケーシング内に収容する
圧縮機部を、シリンダと、このシリンダのシリン
ダ室に収容されるピストン体とから構成し、上記
ピストン体は、一端面を段部を有する斜面となし
電動機部によつて回転駆動されるピストン受け
と、この斜面に対向する端面を同角度の段部を有
する斜面にし弾性体によりピストン受けに当接す
るよう押圧され往復動するピストン子とから構成
し、被圧縮ガスを吸込路と吸込孔を介してシリン
ダ室に導入し圧縮して吐出孔を介してケーシング
内に吐出するようにしたものである。

発明の実施例 以下本発明の一実施例を図面にもとづいて説明
する。第１図中１はケーシングであり、この内部
はフレーム２によつて上下に区画される。フレー
ム２の下方部位に電動機部３、上方部位に圧縮機
部４が設けられる。上記電動機部３は、フレーム
２に一体に設けられる軸受部２ａに枢支されるシ
ヤフト５と、このシヤフト５に嵌着されるロータ
６およびロータ６の外周面に狭小の間隙を存して
配設されるステータ７とから構成される。上記圧
縮機部４はフレーム２の上面に配設されるシリン
ダ８と、このシリンダ８の内部のシリンダ室８ａ
に収容されるピストン体Ｐとから構成される。す
なわち上記シヤフト５の上端部にピストン受け９
が一体に設けられている。このピストン受け９の
図における上端側の端面は（第２図に示すよう
に）周縁部を除いて所定角度傾斜する第１の斜面
１０が形成されている。第１の斜面１０の周縁部
は水平に凹陥切欠される凹段部１１となつてい
る。さらにシリンダ室８ａには、ピストン子１２
が収容される。このピストン子１２とシリンダ室
８ａ端面との間にはスプリング１３が介設されて
いて、ピストン子１２を上記ピストン受け９側へ
弾性的に押圧している。ピストン子１２の端面
は、周縁部を除いて上記第１の斜面１０と同角度
傾斜する第２の斜面１４が形成されている。第２
の斜面１４の周縁部は水平に突設される突段部１
５となつている。シリンダ８の上端部には一対の
ガイド溝１６，１６が設けられ、ピストン子１２
のシヤフト１７に固定されるキー１８，１８をガ
イドできるようになつていて、ピストン子１２は
上下方向に摺動自在である。このようにピストン
受け９とピストン子１２とでピストン体１９が構
成される。またシリンダ８の周壁一部には吸込孔
２０が開口している。この吸込孔２０は、シリン
ダ８周壁およびフレーム２に設けられる吸込路２
０ａを介して図示しない吸込管に連通する。また
吸込孔２０とシヤフト５の反回転方向に略90゜存
した位置には吐出孔２１が開口し、ケーシング１
内と連通している。（図では吸込孔２０の正反対
位置に記す。） しかして、電動機部３に通電することによりピ
ストン受け９が回転する。このピストン受け９に
弾性的に当接するピストン子１２はピストン受け
９の回転にともなつて少くとも一部が当接したま
ま往復動する。ピストン受け９の位置によつて
は、１回転毎に第１の斜面１０が第２の斜面１４
に密着する。

なお説明すれば、第３図Ａに示すように第２の
斜面１４に対して第１の斜面１０が正反対方向に
傾斜したときにこれらの間の内容積は最大とな
る。これよりも以前、すなわちピストン受け９の
回転を略90゜戻したところで吸込孔２０は開放し、
被圧縮ガスが吸込まれる。Ａの状態からピストン
受け９が回転すると、ピストン受け９の凹段部１
１にピストン子１２の突段部１５が掛合したまま
降下する。上記吸込孔２３はピストン受け９周壁
によつて閉塞され、かつピストン受け９とピスト
ン子１２との間の内容積が順次小さくなるにした
がつて上記被圧縮ガスは圧縮される。第３図Ｂに
示すようにピストン受け９が略180゜回転して吐出
孔２１に対向すると、第１、第２の斜面１０，１
４が互いに密着してこれらの間の内容積は略零と
なり、被圧縮ガスは充分圧縮されて吐出孔２１か
ら吐出される。ピストン受け９がさらに回転して
ピストン子１２が上昇すると、シリンダ室８ａの
内容積が増大してシリンダ室８ａに残留する被圧
縮ガスは膨張する。Ｂの位置から90゜回転したと
ころで再び被圧縮ガスが吸込まれ、上述のサイク
ルを繰返えす。

第４図は上記吐出孔２１側から見たシリンダ室
８ａ内のピストン受け９とピストン子１２との動
きを90゜毎に順に示すものである。すなわちＡの
状態では引続き吸込孔２０が閉成されシリンダ室
８ａに吸込れていた被圧縮ガスは圧縮される。Ｂ
の状態ではピストン子１２が降下して被圧縮ガス
に対する圧縮が引続いて行われる。Ｃの状態では
ピストン子１２が最も降下した位置にあり、かつ
図示しない吐出孔が開口して圧縮された被圧縮ガ
スが吐出される。Ｄの状態では吸込孔２０が開放
され、被圧縮ガスがシリンダ室８ａに吸込まれ、
Ａの状態に戻る。

第５図は吸込孔２０の位置設定理由を示すもの
である。吸込孔２０の位置はピストン受け９の第
１の斜面１０中心よりも下方にあり、この周壁に
よつて開閉される。図でａ曲線は吸込孔２０に摺
接するピストン受け９の端縁高さを示し、吸込孔
２０上端を中心にして現す。すなわち0゜のときピ
ストン受け９の端縁高さを０とすると、これから
90゜回転したとき最高位の部分が摺接し、以下図
のごとき曲線を描く。ｂ曲線はピストン子１２の
最下部位の動きを現し、ピストン受け９が180゜回
転したとき最も降下する。ａ曲線とｂ曲線との間
の斜線部分は被圧縮ガスの存在する部分を表す。
したがつて第４図ＡないしＤとは90゜毎に対応す
る。180゜のところで被圧縮ガスは吐出され、これ
から90゜回転したところ、すなわち270゜を中心と
して前後各90゜の範囲で吸込孔２０が開放される。
図において黒帯部分であり、この間で被圧縮ガス
は膨張し、0゜から180゜の間で被圧縮ガスは圧縮さ
れる。実際には上述のように、吸込孔２０が吐出
孔２１の位置からピストン受け９の回転方向に略
90゜変位した位置に設けられることとなる。

第６図は吐出孔２１の位置設定理由を示すもの
である。ａ曲線は吐出孔２１に摺接するピストン
受け９の端縁高さを示し、Ｘ―Ｘ線は吐出孔２１
の上端位置を現す。ｂ曲線はピストン子１２の最
下部位の動きを現し、これが最も降下する位置に
ピストン受け９の最も低い端縁が対応する。すな
わち180゜前後で吐出孔２１は黒帯部分で示すよう
に開放し、被圧縮ガスは吐出されることとなる。
これより以前に被圧縮ガスは圧縮され、以後に膨
張が行われる。

発明の効果 以上説明したように本発明によれば、密閉構造
のケーシング内に収容する圧縮機部を、シリンダ
およびシリンダのシリンダ室に収容されるピスト
ン体とから構成し、上記ピストン体を、一端面を
段部を有する斜面となし電動機部によつて回転駆
動されるピストン受けおよびこのピストン受けの
斜面に対向する端面を同角度の段部を有する斜面
にしたピストン子と、このピストン子をピストン
受けに当接するよう弾性的に押圧して往復動させ
る弾性体とから構成し、被圧縮ガスを吸込路と吸
込孔を介してシリンダ室に導入し、上記ピストン
受けとピストン子の斜面相互間で圧縮し、吐出孔
を介してケーシング内に吐出するようにしたもの
である。したがつて吸込弁および吐出弁を不要と
し、ピストン体は円滑な動きをもつて被圧縮ガス
の圧縮効率を高め、簡単な構造で組立、保守が容
易な廉価な電動圧縮機を提供できる。また、圧縮
した吐出ガスをケーシング内に吐出するようにし
たので、ケーシング内が高圧化し、よつて弾性体
の弾性力が小さくてすみ、スプリング受けの回転
起動が容易であるとともに電動機部の駆動力が小
さくてすみ圧縮機の小型化推進を図れる。

なお上記実施例では、ピストン受けの斜面およ
びピストン子の斜面のそれぞれ周縁に段部を設け
て互いに面接触させることにより、ピストン受け
とピストン子との円滑な接触を得ることができる
とともに斜面相互の周縁部の摩耗を少くして充分
な耐久性が得られるようにした。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の一実施例を示し、第１図は電動
圧縮機の縦断面図、第２図はピストン体の斜視
図、第３図ＡおよびＢは圧縮機部の動作説明図、
第４図ＡないしＤは第３図とは異る方向から見た
概略的に示す圧縮機部の動作説明図、第５図は吸
込孔の位置設定説明図、第６図は吐出孔の位置設
定説明図である。 １…ケーシング、８ａ…シリンダ室、２０…吸
込孔、２１…吐出孔、８…シリンダ、１９…ピス
トン体、１０…（第１の）斜面、９…ピストン受
け、１４…（第２の）斜面、１２…ピストン子。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 密閉構造のケーシング内に電動機部およびこ
   の電動機部に連結する圧縮機部を収容したものに
   おいて、上記圧縮機部は、シリンダ室を有するシ
   リンダと、このシリンダに開口しシリンダ室と吸
   込路を連通する吸込孔およびシリンダに開口しシ
   リンダ室と上記ケーシングを連通する吐出孔と、
   上記シリンダ室に収容され上記吸込孔および吐出
   孔を開閉して被圧縮ガスを吸込路からシリンダ室
   に導入し圧縮して高圧化しケーシング内に吐出す
   るピストン体とを具備し、上記ピストン体は、一
   端面を斜面となすとともにその周縁に段部を有し
   上記電動機部によつて回転駆動されるピストン受
   けと、このピストン受けの斜面および段部に対向
   する端面に同角度の斜面およびその周縁に段部を
   有するピストン子と、上記ケーシング内の高圧ガ
   ス雰囲気にさらされるとともにピストン子の段部
   および斜面が上記ピストン受けの段部および斜面
   に当接するよう弾性的に押圧し、かつピストン受
   けの回転に伴つてピストン子を往復動させる弾性
   体とからなることを特徴とする電動圧縮機。