JPH0114498Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案はエンジンのマウント装置の改良に関す
る。

一般に、エンジンを車体に搭載するにあたつて
は、エンジンの振動を直接車体に伝達させないよ
うにするため、いわゆるラバーマウント構造のエ
ンジンのマウント装置を用いてエンジンと車体と
を連結し、エンジンを車体に搭載するようにして
いる。

第１図ａは車体１に縦置き式エンジン２を搭載
した状態を示す概略図で、エンジン２は車体１に
マウント装置３，４を介して連結されている。

特に、このマウント装置３，４のうちエンジン
２の後部を支承するマウント装置４は、同図ｂの
要部拡大図に示すようにエンジン２の後部に取付
ボルト５によつて取付固定された略コの字形状の
第１のエンジンマウンテイングブラケツト（以下
単に第１のブラケツトと言う）６と、該第１のブ
ラケツト６と相対応する位置の車体１に取付ボル
ト７によつて固定された略コの字形状の第２のエ
ンジンマウンテイングブラケツト（以下単に第２
のブラケツトと言う）８とを有している。この第
１および第２のブラケツト６，８はそれぞれその
一端部６ａ，８ａに配設した両端に折曲部を有す
る第１および第２のマウント金具９，１０と、そ
れらの金具間に配置した防振ゴム１１を介して互
に連結されている。なお、前記第１のブラケツト
６と第１のマウント金具９および第２のブラケツ
ト８と第２のマウント金具１０とは、それぞれ防
振ゴム１１の両端に植設された植込ボルト１１
ａ，１１ｂと、該ボルトに螺合するナツト１２，
１３によつて共締固定されている。また前記第１
のマウント金具９の折曲部９ａ，９ｂ間の幅W₁
は第２のマウント金具１０の折曲部１０ａ，１０
ｂ間の幅W₂よりも広く形成され、しかも通常状
態で第１のマウント金具９の折曲部９ａ，９ｂが
第２のマウント金具１０の折曲部１０ａ，１０ｂ
を覆うように形成されている。

したがつて、上記構成によると、車両の衝突時
あるいは急制動時に慣性によつてエンジン２が前
方（第１図ａで矢印Ａ方向）に移動すると、前記
第１のマウント金具９の折曲部９ｂと第２のマウ
ント金具１０の折曲部１０ｂとが当接し、その移
動が規制される。

ところで、近年ますます車両の静粛性が要求さ
れている。このためエンジン２の振動を車体１に
できるだけ伝達させないように、マウント装置の
防振ゴム１１のバネ定数を小さくし、その変形量
を大きくするようにしている。ところが防振ゴム
１１のバネ定数を小さくし、その変形量を大きく
すると、車両の衝突時あるいは急制動時にエンジ
ン１の慣性によつて第１図ｃに示すようにエンジ
ン２がマウント装置３（第１図ａ）を中心に矢印
Ｂ方向に回転して浮き上り、これによつて第１の
マウント金具９の折曲部９ｂが第２のマウント金
具１０の折曲部１０ｂを乗りこえ、エンジン１が
更に前方に大きく移動する。このようにエンジン
２が前方に大きく移動するとエンジン２のクーリ
ングフアン１４（第１図ａ）とラジエータ１５と
の衝突による損傷やプロペラシヤフト１６が抜け
落ちたりするトラブルが発生する。

なお、上述したような問題点を解決するために
は実開昭52−106788号公報の第３図乃至第４図に
記載されたマウント装置を単に縦置式のエンジン
の後端に適用すれば良いと考えられるが、この従
来例に記載されたマウント装置は、エンジン側に
固定されたプレートと、このプレートの先端に係
合し、車体側に固定されたプレート状のロールス
トツパとを主要構成要件としており、従つてこの
マウント装置を単に縦置式のエンジンの後端に適
用した場合は、縦置エンジンが前方を中心に回転
すると、エンジン側に固定されたプレートの先端
部が、係合するロールストツパの先端を回転方向
に沿つて上方に引き上げる状態、即ち、プレート
の先端を曲げる状態で、その回転の規制、言い換
えれはエンジンの移動の規制を行うこととなる。
ところが縦置エンジンの後端を支持するマウント
装置のストツパは、出来るだけ機械的強度が高く
高剛性で、エンジンの移動の規制を行う場合は、
一定位置で確実にその移動を規制することが要求
される（もしそうでなければ前述したように他の
補機、例えばクーリングフアンにエンジンが衝突
してしまう）が、上述した従来のマウント装置
は、板状のプレートによる各先端部の係合により
移動を規制する構成であり機械的強度及び剛性が
低く、このため移動規制を行う際に変形し曲り易
く、このため一定位置で確実にエンジンの移動を
規制すること出来なくなる虞があり、さらに移動
規制が繰り返され、長期間使用されると係合部分
の変形によりプレート間の係合が解除され、初期
の性能を維持することが全く出来なくなる虞もあ
る。

この考案は上述した事情に鑑み、常時は車体へ
エンジンの振動を伝達させることなく、また縦置
き式エンジンが急制動時に前方を中心に回転した
際、エンジンの移動を一定位置で確実に停止さ
せ、さらに、長期の使用によつてもその性能を維
持させるようにしたマウント装置を提供すること
を目的とする。

上述した目的を達成するため、この考案のマウ
ント装置では、縦置き式エンジンの後端に取付固
定された第１のエンジンマウンテイングブラケツ
トと、少なくとも前記第１のエンジンマウンテイ
ングブラケツトの上端よりも上方に位置する車体
に一端が支持され、しかも略コの字形状に折り曲
げたプレートにより形成された第２のエンジンマ
ウンテイングブラケツトと、前記第１のエンジン
マウンテイングブラケツトの上端部に固着され、
しかも断面が略コの字形状に折り曲げられたプレ
ートであつて、その一端が前記略コの字形状の第
２のエンジンマウンテイングブラケツト間を挿通
し、かつ交差するように下方へ向けて延設され、
その延設端部に前記第２のエンジンマウンテイン
グブラケツトの周縁に張出す略Ｔ字形の舌片が形
成された第１のマウント金具と、前記第２のエン
ジンマウンテイングブラケツトの下端に固着され
た第２のマウント金具と、前記第１のマウント金
具と前記第２のマウント金具との間を連結する弾
性体とを具え、これにより、ストツパとして作用
する際のマウント装置の機械的強度および剛性を
高めるようにしている。

以下、本考案に係るエンジンのマウント装置の
一実施例を詳述する。

第２図ａは本考案に係るエンジンのマウント装
置を示す要部拡大図で第１図と同一部分を同一符
号で示す。

第２図ａで示すようにエンジン２の後部には取
付ボルト５によつて第１のエンジンマウンテイン
グブラケツト（以下単に第１のブラケツトと言
う）６が取付られており、この第１のブラケツト
６の一端部６ａには第１のマウント金具２０が配
設されている。この第１のマウント金具２０は前
後に折曲部２０ａ，２０ｂを有し、その折曲部２
０ａ，２０ｂのうち一方の折曲部２０ｂは、その
一端２０b′が第２のエンジンマウンテイングブラ
ケツト（以下単に第２のブラケツトと言う）８と
交差するように延設されている。また、この第１
のマウント金具２０の一端２０ｂの両側には、第
２図ａのCC断面で示す同図ｂのように、略Ｔ字
形状の一対の舌片２０ｃ，２０c′が前記第２のブ
ラケツト８の周縁部８ｂに張出して形成されてい
る。なお、前記第１のマウント金具２０の折曲部
２０ａ，２０ｂのうち、一方の折曲部２０ｂの背
面２０ｄには断面三角形状の突部２０ｅが形成さ
れており（第２図ａ）、この突部２０ｅの垂直面
２０e′は第２のブラケツト８の一端８ａに配設さ
れた第２のマウント金具１０の一方の折曲部１０
ｂを適宜間隙をもつて覆つている。また、前記第
２のブラケツト８の周縁８ｂで、前記第１のマウ
ント金具２０に形成した舌片２０ｃ，２０c′に対
応する位置には切欠部８ｃ，８c′が形成されてい
る。

したがつて、上記構成によると、通常の制動時
にエンジン２が前方（矢印Ａ方向）に移動した際
は、第１のマウント金具２０の突出部２０ｅと第
２のマウント金具１０の折曲部１０ｂとが当接
し、エンジン２の移動が規制される。また、急制
動時にエンジン２が第２図ｃに示す矢印Ｂ方向に
回転して浮き上つた場合であつても、前記第１の
マウント金具２０の先端部に形成された略Ｔ字形
の舌片２０ｃ，２０c′が、前記第１のエンジンマ
ウンテイングブラケツト６の上端よりも上方に位
置する車体１に一端が支持され、しかも略コの字
形状に折り曲げたプレートにより形成された第２
のエンジンマウンテイングブラケツト８の周縁８
ｂと係合するため、同様にエンジン２の前方を中
心とする回転が規制されることとなる。。なお、
エンジン２の前方を中心とする回転を規制するス
トツパ機構は、略コの字形状に折り曲げたプレー
トからなる第２のエンジンマウンテイングブラケ
ツト８と、この周縁８ｂに係合する略Ｔ字形の舌
片２０ｃ，２０c′とにより構成されているので、
ストツパ機構として機械的強度が高く、しかも高
剛性となり、さらに回転を規制する際は車体１を
下方から上方へ押し上げ、これにより車体１の剛
性を回転規制の際に利用する構成となるので、ス
トツパ機構の変形が極めて少なく、従つて縦置エ
ンジン２が前方を中心に回転した際、確実に一定
位置でその移動が停止することとなり、また、高
剛性で変形も極めて少ないので長期間の使用によ
つてもそのストツパ機能が低下することはない。

なお、上記実施例において第１のブラケツト６
と第１のマウント金具２０および第２のブラケツ
ト８と第２のマウント金具１０とを別体に成形す
るようにしたが勿論本考案は上記実施例に限定さ
れることなく、第１のブラケツト６と第１のマウ
ント金具２０および第２のブラケツト８と第２の
マウント金具１０とを一体に成形するようにして
も良い。

本考案は、上述したように急制動時等に於ける
縦置き式エンジンの回転を規制するストツパ機構
を機械的強度が高く、しかも高剛性なものとした
ので、急制動時等に於けるエンジンの移動が一定
位置で確実に停止され、このためクーリングフア
ン等の補機にエンジンが衝突することを可及的に
防止することが出来、またその性能が長期間に渡
つて維持されるので、耐久性の高いマウント装置
を提供することも出来る。

【図面の簡単な説明】

第１図ａはエンジンのマウント装置の取付位置
を示す車両の概略図、同図ｂは従来のエンジンの
マウント装置を示す要部破断面図、同図ｃはエン
ジンが移動した際の従来のマウント装置を示す要
部破断面図、第２ａは本考案に係るエンジンのマ
ウント装置を示す要部破断面図、同図ｂは同図ａ
のCC断面図、同図ｃはエンジンが移動した際の
本考案に係るマウント装置を示す要部破断面図で
ある。 １……車体、２……エンジン、６……第１のエ
ンジンマウンテイングブラケツト、８……第２の
エンジンマウンテイングブラケツト、１０……第
２のマウント金具、１１……防振ゴム、２０……
第１のマウント金具、２０ｃ，２０c′……舌片。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 縦置き式エンジンの後端を車体に支持させるエ
   ンジンのマウント装置において、 前記縦置き式エンジンの後端に取付固定された
   第１のエンジンマウンテイングブラケツト６と、 断面略コの字形状に折り曲げ整列された一対の
   プレートからなり、該一対のプレートの端部をそ
   れぞれ前記第１のエンジンマウンテイングブラケ
   ツト６の上端よりも上方に位置する車体に前記一
   対のプレートが車体横方向に整列するように支持
   された第２のエンジンマウンテイングブラケツト
   ８と、 前記第１のエンジンマウンテイングブラケツト
   ６の上端部に車体横方向から見て略コの字形状と
   なるように固着されるとともに、その一端が前記
   第２のエンジンマウンテイングブラケツト８の整
   列した一対のプレート間を挿通し、かつ交差する
   ように下方へ向けて延設され、その延設端部に前
   記第２のエンジンマウンテイングブラケツト８の
   周縁に張り出す略Ｔ字形状の舌片が形成された第
   １のマウント金具２０と、 前記第２のエンジンマウンテイングブラケツト
   ８の下端に固着された第２のマウント金具と、 前記第１のマウント金具と前記第２のマウント
   金具との間を連結する弾性体と を具え、前記縦置き式エンジンが該縦置き式エン
   ジンの先端部を中心に回転した際に、前記第１の
   マウント金具の舌片と前記第２のエンジンマウン
   テイングブラケツトの周縁とを当接させて、前記
   縦置き式エンジンの移動を規制するようにしたこ
   とを特徴とするエンジンのマウント装置。