JP7781985B2 - 食品の製造方法 - Google Patents

食品の製造方法

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本発明は、電子レンジ調理用調味料を用いて野菜類を加熱調理する食品の製造方法に関する。
もやしやキャベツなどの野菜類をレンジで加熱すると、野菜特有の蒸れ臭や青臭さ(以下、これらをまとめて「野菜臭」という。)が生じる。特にもやしは、レンジ加熱により野菜臭が発生しやすいことが知られている(非特許文献1参照)。
このような野菜臭を低減させる方法としては、例えば、電子レンジで加熱する前の野菜に熱湯や酢をかける方法がある。また、従来、α,α-トレハロースの糖質誘導体を含有する不快味及び/又は不快臭の低減剤を溶解した液に野菜を浸漬する方法(特許文献1参照)や、電子レンジで加熱調理したもやしに黄醤を含む調味料を混合する方法(特許文献2参照)も提案されている。
国際公開第2004/060077号 特開2019-13189号公報
藤野 吉世、外2名,"大豆もやしの加熱調理過程における青臭さとテクスチャーの変化",調理科学,一般社団法人日本調理科学会,1991年,Vol.24,No.3,p.193-197
しかしながら、加熱前の野菜に熱湯や酢をかける方法は作業が煩雑であり、特に酢を用いた場合、調理品の味付けが限定されるだけでなく、野菜自体のおいしさを損なう虞もある。また、特許文献1に記載のα,α-トレハロースの糖質誘導体を用いる方法は、野菜の不快臭を抑制すると同時に、調理品のおいしさを形成する上で味の奥深さや複雑さに寄与する「えぐみ」や「渋味」、「苦味」も抑制してしまうという問題がある。
一方、特許文献2に記載の方法は、電子レンジにより加熱されたもやしの青臭さを低減することができるが、中華大豆味噌の一種である黄醤を用いているため、中華料理以外の調理品には適用しにくく、汎用性に欠ける。更に、近年、キャベツ、ニンジン、タマネギ、シイタケなどの複数種の野菜をミックスしたカット野菜の利用が広まっているが、従来、複数種の野菜に対して野菜臭低減の効果がある方法は提案されていない。
そこで、本発明は、種々の野菜について電子レンジ加熱することにより生じる野菜臭を抑えることができ、かつ、汎用性の高い電子レンジ調理用調味料を用いた食品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る食品の製造方法は、生の野菜類を、調味成分並びに野菜臭抑制剤としてα化度が62%以上のα化米粉及び/又はα化度が62%以上の米粉由来α化澱粉が配合された調味料と共に電子レンジで加熱調理する工程を有し、前記野菜類の総量に対して、前記α化米粉及び前記米粉由来α化澱粉の総量が0.01~2質量%になるよう前記調味料を添加する
本発明に係る他の食品の製造方法は、生の野菜類を電子レンジにより加熱調理した後、調味成分並びに野菜臭抑制剤としてα化度が62%以上のα化米粉及び/又はα化度が62%以上の米粉由来α化澱粉が配合された調味料を添加する工程を有し、前記野菜類の総量に対して、前記α化米粉及び前記米粉由来α化澱粉の総量が0.01~2質量%になるよう前記調味料を添加する。
前記調味料は、液状又はペースト状ででもよく、また、調味液と具材とを含む具材入り液状調味料でもよい
本発明によれば、電子レンジで加熱された種々の野菜類について野菜臭さを抑えることができる。
以下、本発明を実施するための形態について、添付の図面を参照して、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態に係る野菜臭抑制剤について説明する。本実施形態の野菜臭抑制剤は、α化米粉若しくは米粉由来のα化澱粉又はその両方からなり、電子レンジを用いた野菜類の調理に使用される。
[α化米粉・α化澱粉]
α化処理が施された米粉及びα化処理が施された米粉由来の澱粉は、電子レンジにより加熱された野菜類から発せられる野菜臭を抑制する効果があり、特にα化米粉は野菜臭抑制効果が高い。α化米粉や米粉由来のα化澱粉は、主に、保水性改善のために小麦粉や小麦代用米粉に混合されたり、食品にとろみをつけるための増粘剤や食品同士を結合する接着剤として用いられたりしている。一方、本発明者は、α化米粉や米粉由来のα化澱粉に、電子レンジで加熱された野菜類から発せられる野菜臭を抑制する効果があることを新たに見出した。
本実施形態の野菜臭抑制剤を構成するα化米粉及び米粉由来のα化澱粉の原料となる米は、うるち米、もち米及びインディカ米などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、黒米や赤米などの古代米など種々の米を用いることができる。そして、α化米粉は、例えば原料米の精白米、未熟米、玄米、破砕精米及び白糠などを、蒸煮、焙炒又は炒煎などによって加熱して変性させるか、膨化処理(パフ化)を施すことによってα化した後、粉砕することにより製造することができる。
また、米粉由来のα化澱粉は、α化された米粉から澱粉質のみを精製したもの又は米粉由来の澱粉をα化処理したものであり、例えば原料米の澱粉質に水を加えて加熱糊化し、その状態で乾燥することにより製造することができる。なお、本実施形態の野菜臭抑制剤を構成するα化米粉及び米粉由来のα化澱粉は、前述した方法で製造されたものに限らず、原料米が粉砕などのように摩擦熱が生じる加工工程を経て、結果としてα化された米粉などを用いてもよい。
本実施形態の野菜臭抑制剤を構成するα化米粉及び米粉由来のα化澱粉のα化度は、野菜臭抑制効果向上、野菜への絡みやすさ、調理した食品の粉っぽさを抑制する観点から62%以上であることが好ましく、より好ましくは74%以上である。なお、ここでいうα化度は、米粉及び/又は澱粉全体の平均値である。
また、米粉及び米粉由来の澱粉におけるα化度は、例えば、処理温度や処理時間の調整、pHや攪拌・摩砕などの処理条件の調整、塩類、水分、極性の高い有機物、界面活性剤、脂質、糖類及び親水性高分子などの添加の有無や添加量の調整、湿熱処理にするといった処理方法の変更などのように、α化に影響する要因を1又は2以上変更又は適用することにより、目的とする値にすることができる。また、α化度の低い原料とα化度の高い原料を混合することでも、α化度の調整が可能である。
α化米粉及び米粉由来のα化澱粉の粒子径は、特に限定されるものではなく、調理品の種類などに応じて適宜設定することができるが、例えばメディアン径で14~500μm程度である。α化米粉及び米粉由来のα化澱粉の粒子径をこの範囲にすることにより、他の成分との混合性が向上すると共に、調理に用いた場合に食品にざらつきなどが発生せず、良好な口あたりや食感を得ることができる。
本実施形態の野菜臭抑制剤にα化米粉及び米粉由来のα化澱粉の両方が含まれる場合、これらの混合比は、特に限定されるものではないが、米粉由来のα化澱粉よりも野菜臭抑制効果の高いα化米粉を多く含むことが好ましい。
[添加成分]
本実施形態の野菜臭抑制剤には、前述したα化米粉及び米粉由来のα化澱粉の効果を阻害しない範囲であれば、賦形剤や増粘剤などの添加剤を含んでいてもよい。本実施形態の野菜臭抑制剤に添加される賦形剤としては、例えばデキストリン、アラビアガム、ゼラチン、キサンタンガム、グアガム、米以外の植物由来の粉末及びその澱粉などが挙げられる。
[使用方法]
次に、本実施形態の野菜臭抑制剤の使用方法、即ち、本実施形態の野菜臭抑制剤を用いて、電子レンジにより野菜を加熱調理する方法について説明する。本実施形態の野菜臭抑制剤(α化米粉や米粉由来のα化澱粉)は、例えば電子レンジ加熱前の野菜類に振りかけたり又は電子レンジ加熱後の野菜類と和えたりすることで、電子レンジ加熱により生じた野菜臭を抑制することができる。その際、本実施形態の野菜臭抑制剤は、粉状のまま用いてもよいが、水、湯及びだし汁などに溶いたものを用いてもよい。また、本実施形態の野菜臭抑制剤は、味付けのための調味成分と併用することもでき、その場合、電子レンジ加熱前に調味成分と共に野菜臭抑制剤を野菜類に振りかけてもよいが、調味成分と野菜を電子レンジで加熱した後で野菜臭抑制剤を加えてもよい。
以上詳述したように、本実施形態の野菜臭抑制剤は、α化度が62%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化度が62%以上のα化澱粉で構成されているため、混合するという容易な操作で、野菜類を電子レンジで加熱した際に生じる野菜臭を抑制することができる。これらα化米粉及び米粉由来のα化澱粉を用いた野菜臭抑制方法は、特定の野菜だけでなく、種々の野菜類について野菜臭さを抑えることができ、複数種の野菜が混在するミックス野菜などに対しても優れた野菜臭抑制効果が得られる。
更に、α化米粉及び米粉由来のα化澱粉は、野菜や調味成分の香味、食感又は外観を阻害しないため、本実施形態の野菜臭抑制剤は、様々な料理に利用することができ、従来の方法に比べて汎用性が高い。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る調味料について説明する。本実施形態の調味料は、電子レンジを用いた野菜類の調理に使用される調味料であり、調味成分と共に、野菜臭抑制剤としてα化米粉及び/又は米粉由来のα化澱粉とを含有する。本実施形態の調味料は、液状、ペースト状及び粉体のいずれでもよい。
[α化米粉・α化澱粉]
本実施形態の調味料に含有されるα化米粉及び米粉由来のα化澱粉は、α化処理が施された米粉及びα化処理が施された米粉由来の澱粉であればよいが、野菜臭抑制効果向上、野菜への絡みやすさ、調理した食品の粉っぽさを抑制する観点からα化度が62%以上のものが好ましく、α化度が74%以上のものがより好ましい。
また、本実施形態の調味料を製造する際は、前述した第1の実施形態の野菜臭抑制剤のように予めα化処理が施された米粉や米粉由来の澱粉を配合してもよいが、α化されていない米粉や米粉由来の澱粉を配合し、調味料の製造過程で高温での加熱処理などを行うことで調味料中の米粉や米粉由来の澱粉をα化してもよい。
[調味成分]
調味成分は、食品の味や風味、外観などを向上させるものであり、例えば砂糖、液糖、ブドウ糖、三温糖及び水あめなどの糖類、醤油、塩、味噌類、醸造酢、香辛料、酵母エキス、畜肉系、魚介系又は野菜系のエキスや調味料、みりん、日本酒、ワイン及びエタノールなどの酒類調味料、各種オイル、柚子やカボスなどの柑橘類、ネギやニンニクなどの香味野菜やその加工品、澱粉類並びに増粘剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、調理品に応じて各種調味成分を配合することができる。
[その他の成分]
本実施形態の調味料が液状又はペースト状の場合、濃度や粘度を調整するために、調味成分由来の水とは別に、水が添加されていてもよい。また、本実施形態の調味料には、具材として、豚肉や牛肉などの肉類、魚介類、海藻類、野菜類、きのこ類、果実及びそれらの加工品などが配合されていてもよく、これらの具材と調味液とを含む液体調味料とすることもできる。具材入り液体調味料の場合、例えばα化米粉及び米粉由来のα化澱粉うちいずれか一方又は両方と調味成分とを含む調味液に、加熱された又は非加熱の具材を添加することで製造することができる。
[使用方法]
次に、本実施形態の調味料の使用方法、即ち、本実施形態の調味料を用いて、電子レンジにより野菜を加熱調理する方法について説明する。本実施形態の調味料は、電子レンジにより加熱された野菜類に混ぜ合わせてもよく、また、加熱前の野菜類に振りかけて野菜類と共に電子レンジで加熱してもよい。なお、野菜類に調味成分の香味を十分に付与する観点から、調味料は加熱前の野菜類に振りかけ、野菜類と共に電子レンジ加熱した後、野菜類と調味料とを混ぜ合わせることが望ましい。
本実施形態の調味料はそのまま使用することができるが、水や湯などで所定濃度に希釈して使用してもよい。また、本実施形態の調味料と野菜類を電子レンジにより加熱調理する際には、肉類、魚介類、海藻類及び豆腐などの野菜類以外の具材やご飯及びうどんなどが含まれていてもよい。例えば、本実施形態の調味料が具材を含む具材入り液体調味料の場合、電子レンジにより加熱調理された野菜類と混合したり、野菜類と一緒に電子レンジで加熱したりすることで総菜とすることができ、得られた総菜は、更に麺類又は米飯とを組み合わせて具入り麺や丼物とすることもできる。
以上詳述したように、本実施形態の調味料は、野菜臭抑制剤としてα化米粉及び/又は米粉由来のα化澱粉が配合されているため、混合するという容易な操作で、野菜類を電子レンジで加熱した際に生じる野菜臭を抑制することができる。また、本実施形態の調味料に含まれるα化米粉及び米粉由来のα化澱粉は、野菜や調味成分の香味、食感及び外観を阻害しないため、本実施形態の調味料は、様々な料理に利用することができ、従来の方法に比べて汎用性が高い。
(第3の実施形態)
次に、本実施形態の第3の実施形態に係る食品について説明する。本実施形態の食品は、野菜類と、前述した第1の実施形態の野菜臭抑制剤又は第2の実施形態の調味料とを含有し、α化米粉及び米粉由来のα化澱粉の総含有量が野菜類の総含有量の0.01~2質量%となっている。
本実施形態の食品に含まれる野菜類としては、例えば、もやしなどの発芽野菜、キャベツやほうれん草などの葉物野菜、ニンジンや大根などの根菜、豆類やキノコ類など、電子レンジにより加熱調理され得る種々の野菜に用いることができ、これらの野菜は、単独でも、組み合わされた状態(ミックス野菜)でもよい。また、本実施形態の食品には、肉類、魚介類、海藻類、きのこ類、果実及びそれらの加工品などの野菜以外の具材が含まれていてもよい。
本実施形態の食品は、野菜臭抑制剤としてα化米粉及び/又は米粉由来のα化澱粉を含んでいるため、野菜を電子レンジで加熱調理しても野菜臭により野菜や調味成分の香味、食感及び外観が阻害されることなく、総菜などの食品を手軽においしく調理することができる。また、本実施形態の食品で用いている野菜臭抑制剤は米を原料とするものであるため、この野菜臭抑制剤を含む本実施形態の食品は、米飯や麺類との相性がよく、丼物や麺の具として好適である。なお、本実施形態における上記以外の構成及び効果は、前述した第1の実施形態と同様である。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。
(第1実施例)
本発明の第1実施例においては、野菜臭抑制剤の種類を変えて実施例及び比較例の醤油ベース液体調味料を調整し、野菜臭抑制効果について評価した。
<評価用試料>
評価に用いた試料(液体調味料)の基本となる配合組成を下記表1に示す。本実施例においては、野菜臭抑制剤として米粉又は澱粉を0.6g配合し、水の配合量を調整することで、原材料の合計配合量が30gになるようにした。なお、下記表1に示す原材料のうち、醤油はキッコーマン株式会社製 濃口醤油、チキンエキスはアリアケジャパン株式会社製 チキンエキス、ごま油はかどや製油株式会社製 金印純正ごま油、食塩はジャパンシーズニング株式会社製 食塩をそれぞれ用いた。
各液体調味料は、醤油、チキンエキス、ごま油及び食塩に水を混ぜてよく攪拌し、これにα化米粉などを分散しながら添加し、80℃で加熱混合することにより作製した。なお、以下の評価は、前述した液体調味料の作製工程では米粉などのα化度は変化しない(α化していない米粉がα化されることはない)という前提で実施している。
<評価方法>
各液体調味料の評価は、3名の分析型官能評価パネル(訓練期間:8~21年)によって、以下の方法で実施した。先ず、もやし150gを耐熱容器に移し、それに前述した方法で調整した液体調味料30gと水150gを加えて、600Wの電子レンジで4分間加熱調理した後、もやしと液体調味料を混ぜ合わせてもやし入り中華スープを作製した。そして、得られたもやし入り中華スープについて、官能評価を行った。
なお、官能評価におけるパネルのバイアス(偏り)を排除し、評価の精度を高めるために、サンプルは、調理後直ちに3等分にしてパネルに提供した。その際、サンプルの試験区番号や配合組成はパネルに知らせず、各試験区のサンプルをランダムに提示した。また、評価を実施するにあたり、パネル全体で討議し、各評価項目の特性に対してすり合わせを行って、各パネルが共通認識を持つようにした。
〔野菜臭〕
もやし入り中華スープを試食し、電子レンジ加熱により生じる野菜臭について、α化米粉又は米粉由来のα化澱粉を添加しなかった場合の野菜臭を規準とし、野菜臭の低減度合いを下記の4段階で評価した。
4:強い(α化米粉などを添加しなかった場合の野菜臭と同等又はそれ以上)
3:やや弱い
2:弱い
1:非常に弱い
そして、3人のパネルによる評価点の合計が9点以上だったものを×(不可)、6~8点だったものを△(可)、5点以下であったものを○(良)、3点以下でかつ野菜臭が大幅に低減されていたものを◎(優)とした。
以上の評価結果を下記表2に示す。なお、下記表2に示す「α化米粉A」は、うるち米を加水分解によりα化したものであり、メディアン径は157μmであった。また、「α化米粉B」は、うるち米を膨化することによりα化したものであり、メディアン径は45μmであった。
上記表2に示すように、液体調味料にα化米粉又は米粉由来のα化澱粉を配合したNo.2,3,5の液体調味料を用いた中華スープでは、もやしに由来する野菜臭が抑制されていた。ただし、No.5の液体調味料を用いた中華スープは、調理直後は野菜臭がほとんど感じられず、パネルによる評価点の合計も3点であったが、時間が経過しスープが冷めると野菜臭が感じられるようになったため、野菜臭の評価は○(良)とした。
一方、α化していない米粉を配合したNo.4の液体調味料及び米粉以外を原料とするα化澱粉を配合したNo.6,7の液体調味料を用いた中華スープは、米粉や澱粉を添加していないNo.1の液体調味料を用いた中華スープと同様にもやしに由来する野菜臭が強く、野菜臭抑制効果は認められなかった。更に、α化していない米粉やワキシコーン由来のα化澱粉を配合すると、液体調味料を調整する段階で原材料の不均一や所望しない強い粘性が発生し、調理品(中華スープ)の品質に影響を及ぼすことが確認された。
(第2実施例)
次に、本発明の第2実施例として、上記表1の基本配合組成を基に、野菜臭抑制剤であるα化米粉の配合量を変えて実施例及び比較例の醤油ベース液体調味料を調整し、野菜臭抑制効果、米臭及び濁度について評価した。評価用試料(液体調味料)は、第1実施例と同じ方法及び条件で作製した。また、α化米粉には、第1実施例で用いたα化米粉A(うるち米を加水分解によりα化したもの)を用いた。
各液体調味料の評価は、第1実施例と同様の方法及び条件で、もやし入り中華スープを作製し、3名の分析型官能評価パネル(訓練期間:8~21年)によって官能評価を実施した。なお、「野菜臭」については、前述した第1実施例と同様の方法及び基準で評価したため、以下「米臭」及び「濁度」の評価方法のみ説明する。また、「米臭」及び「濁度」の評価においても、パネル全体で討議し、各評価項目の特性に対してすり合わせを行って、各パネルが共通認識を持つようにすると共に、総合評価の算出方法や基準について、官能評価の結果をもとに基準化できるように、パネル全体で事前に協議した上で設定した。
〔米臭〕
米臭とは、精米したときに米糠や米から発せられる臭いである。そこで、本実施例では、もやし入り中華スープを試食し、α化米粉を添加しなかった場合の米臭を規準(評価点1)とし、米臭の度合いを下記の4段階で評価した。
4:米臭が強く、ごま油、醤油、チキンエキスなどの調味成分の香りが弱い
3:米臭があり、調味成分の香りがやや弱い
2:米臭がわずかに感じられる
1:米臭はほとんど感じられない
そして、3人のパネルによる評価点の合計が9点以上だったものを×(不可)、6~8点だったものを△(可)、5点以下であったものを○(良)、3点以下でかつ野菜臭が大幅に低減されていたものを◎(優)とした。
〔濁度〕
もやし入り中華スープを目視で確認し、α化米粉を添加しなかった場合の濁度を規準(評価点1)とし、濁りの度合いを下記の4段階で評価した。
4:非常に濁っている
3:濁っている
2:やや濁っている
1:濁りがなく澄んでいる
そして、3人のパネルによる評価点の合計が9点以上だったものを×(不可)、6~8点だったものを△(可)、5点以下であったものを○(良)、3点以下でかつ野菜臭が大幅に低減されていたものを◎(優)とした。
以上の結果を下記表3に示す。
上記表3に示すように、液体調味料にα化米粉を配合したNo.12~20の液体調味料を用いた中華スープでは、α化米粉が配合されていないNo.11の液体調味料を用いた中華スープに比べてもやしに由来する野菜臭が抑制されていた。ただし、No.20の液体調味料を用いた中華スープは、α化米粉量が野菜(もやし)量の2質量%を超えていたため、米由来の香りが強くなり、調味成分の香りが阻害されると共に、スープの濁りが大きかった。
これに対して、No.12~No.19の液体調味料を用いた中華スープは、α化米粉量が野菜(もやし)量の0.01~2質量%の範囲であるため、米臭も濁りもほとんど確認されず、あっても僅かであった。更に、α化米粉量が野菜(もやし)量の0.07~0.67質量%であるNo.14~17の液体調味料は、特に野菜臭の抑制効果が高かった。
(第3実施例)
次に、本発明の第3実施例として、上記表1の基本配合組成を基に、野菜臭抑制剤であるα化米粉のα化度を変えて実施例及び比較例の醤油ベース液体調味料を調整し、野菜臭抑制効果、米臭及び濁度について評価を行った。各項目の評価方法及び条件は、前述した第2実施例と同じにした。
各液体調味料に含まれるα化米粉のα化度は、前述した第1実施例で用いたα化米粉A(α化度:94.4%)と、α化度が15.3%の米粉を混合することにより調整した。なお、各米粉のα化度は、財団法人日本醤油研究所編集、「しょうゆ試験法」、p.97-100に記載のα化度の測定方法により測定した。また、各液体調味料30g中の米粉の配合量は0.6gで統一した。本実施例の評価結果を下記表4に示す。
上記表4に示すように、α化米粉を配合したNo.21~27の液体調味料を用いた中華スープは、もやしに由来する野菜臭が抑制されており、特にα化度が62%以上のα化米粉を用いたNo.25~27の液体調味料は、野菜臭の抑制効果が高かった。
(第4実施例)
次に、本発明の第4実施例として、上記表1の基本配合組成を基に、野菜臭抑制剤としてもち米を膨化処理によりα化したα化米粉C、インディカ米を膨化処理によりα化したα化米粉Dを用いて液体調味料を調整し、野菜臭抑制効果、米臭及び濁度について評価を行った。その際、各液体調味料30g中の米粉の配合量は0.6gで統一した。また、各項目の評価方法及び条件は、前述した第2実施例と同じにした。本実施例の評価結果を下記表5に示す。なお、表5には、うるち米をα化したα化米粉Aを用いた液体調味料の評価結果を併せて示す。
上記表5に示すように、もち米を原料米とするα化米粉Cを配合したNo.31の液体調味料を用いた中華スープ、インディカ米を原料米とするα化米粉Dを配合したNo.32の液体調味料を用いた中華スープは、いずれも野菜臭抑制効果が認められ、米臭及び濁度も良好であった。これらNo.31,32の液体調味料の効果は、うるち米を原料とするうるち米を原料米とするα化米粉Aを配合したNo.16の液体調味料と大きな差異はなかった。
(第5実施例)
次に、本発明の第5実施例として、前述した第1実施例で用いたα化米粉Aを配合した液体調味料を用い、もやしに代えてキャベツ又はエノキダケを具材として中華スープを調理し、野菜臭抑制効果、米臭及び濁度について評価した。その際、キャベツは、包丁により一口大に切ったものを用いた。また、エノキダケは、石づき部分を切り離したものを用いた。また、各項目の評価方法及び条件は、前述した第2実施例と同じにした。以上の結果を下記表6に示す。
上記表6に示すように、α化米粉を含まないNo.41,44の液体調味料を用いた中華スープは野菜臭が強かったが、うるち米を原料米とするα化米粉Aを配合したNo.42,43,45,46の液体調味料を用いた中華スープは、具材がキャベツやエノキダケの場合でも、優れた野菜臭抑制効果が認められ、米臭及び濁度も良好であった。
(第6実施例)
次に、本発明の第6実施例として、上記表3に示すNo.16の液体調味料を用いて野菜うどんを調理し、野菜臭抑制効果を評価した。具体的には、もやし150gを耐熱容器に移し、No.16の液体調味料30gと、水150g、うどん玉160gを加え、600Wの電子レンジで7分間加熱調理した後、よく混ぜ合わせて野菜うどんを得た。そして、この野菜うどんを試食したところ、電子レンジ加熱による野菜臭は感じられなかった。
(第7実施例)
次に、本発明の第7実施例として、下記表7に示す組成の粉末状調味料と、下記表8に示す組成の液体調味料を調整し、それぞれ野菜臭抑制効果及び米臭について評価した。本実施例において、野菜臭抑制剤であるα化米粉には、第1実施例で用いたα化米粉A(うるち米を加水分解によりα化したもの)を用いた。
なお、上記表7,8に示す原材料のうち、粉末酢は株式会社ミツカンホールディングス社製 粉末醸造酢、食塩はジャパンシーズニング株式会社製 食塩、粉末油脂はミヨシ油脂株式会社製 マジックファット202、酵母エキスは富士食品工業株式会社製 ハイマックスGL、こしょうは株式会社カネカサンスパイス製 ブラックペッパー、赤唐辛子は株式会社カネカサンスパイス社製 赤唐辛子、米酢はマルカン酢株式会社製 米酢、サラダ油は日清オイリオグループ株式会社製 日清菜種白絞油を用いた。
粉末調味料は、全ての原料を均一に混合することにより調整した。また、液体調味料は、米酢、食塩、サラダ油、酵母エキス、こしょう及び赤唐辛子を混ぜてよく攪拌し、これにα化米粉などを分散しながら添加した後、80℃で加熱しながら混合することにより調整した。なお、以下の評価は、前述した液体調味料の作製工程では米粉などのα化度は変化しない(α化していない米粉がα化されることはない)という前提で実施している。
<評価方法>
各調味料の評価は、下記A~Eの方法で調理したもやしの和え物を、3名の分析型官能評価パネル(訓練期間:8~21年)によって官能評価することにより行った。
〔調理法A〕
もやし150gを、水洗いして水気を切った後、耐熱容器に移し、それに表8に示す組成の液体調味料25.4gを加えて軽く混ぜ、容器に食品用ラップフィルムをかけて600Wの電子レンジで4分間加熱調理した。
〔調理法B〕
もやし150gを、水洗いして水気を切った後、耐熱容器に移し、それに表8に示す液体調味料の原材料のうちα化米粉のみをふりかけ、容器に軽く食品用ラップフィルムをかけて600Wの電子レンジで4分間加熱調理した。次に、食品用ラップフィルムを外し、表8に示す液体調味料におけるα化米粉以外の原材料を加えて混ぜた。
〔調理法C〕
もやし150gを、水洗いして水気を切った後、耐熱容器に移し、それに表7に示す組成の粉末調味料2.38gをふりかけて軽く混ぜ、容器に食品用ラップフィルムをかけて600Wの電子レンジで4分間加熱調理した。
〔調理法D〕
もやし150gを、水洗いして水気を切った後、耐熱容器に移し、食品用ラップフィルムを軽くかけて600Wの電子レンジで4分間加熱調理した。次に、食品用ラップフィルムを外し、粗熱をとってから、表7に示す組成の粉末調味料2.38gをふりかけて混ぜた。
〔調理法E〕
もやし150gを、水洗いして水気を切った後、耐熱容器に移し、それに表7に示す粉末調味料の原材料のうちα化米粉のみをふりかけ、容器に軽く食品用ラップフィルムをかけて600Wの電子レンジで4分間加熱調理した。次に、食品用ラップフィルムを外し、粗熱をとってから、表7に示す粉末調味料におけるα化米粉以外の原材料を加えて混ぜた。
各項目の評価方法及び条件は、前述した第2実施例と同じにした。本実施例の評価結果を下記表9に示す。
以上の結果から、本発明によれば電子レンジで加熱された種々の野菜類について野菜臭さを抑えることができ、野菜や調味成分の味を阻害しないことが確認された。

Claims (4)

  1. 生の野菜類を、調味成分並びに野菜臭抑制剤としてα化度が62%以上のα化米粉及び/又はα化度が62%以上の米粉由来α化澱粉が配合された調味料と共に電子レンジで加熱調理する工程を有し、
    前記野菜類の総量に対して、前記α化米粉及び前記米粉由来α化澱粉の総量が0.01~2質量%になるよう前記調味料を添加する食品の製造方法
  2. 生の野菜類を電子レンジにより加熱調理した後、調味成分並びに野菜臭抑制剤としてα化度が62%以上のα化米粉及び/又はα化度が62%以上の米粉由来α化澱粉が配合された調味料を添加する工程を有し、
    前記野菜類の総量に対して、前記α化米粉及び前記米粉由来α化澱粉の総量が0.01~2質量%になるよう前記調味料を添加する食品の製造方法。
  3. 前記調味料は、液状又はペースト状である請求項1又は2に記載の食品の製造方法
  4. 前記調味料は、調味液と具材とを含む具材入り液状調味料である請求項1又は2に記載の食品の製造方法
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