JP7555321B2 - 塗料用水性樹脂組成物及び塗料 - Google Patents
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Description
・樹脂成分に含める前記混合物の一例として、アクリル系樹脂エマルションとポリエステル系樹脂エマルションを所定の質量比範囲で含むものを用いる。
以下では、(A)造膜性樹脂成分、(A1)アクリル系樹脂のエマルション、(A2)ポリエステル系樹脂のエマルション、(A3)水溶性ポリマー、(B)黒色材、(B1)黒色顔料と樹脂の複合物、(C)希釈溶媒、とする。
塗料用水性樹脂組成物であって、
(A)、及び(B)を少なくとも含み、
(A)は、互いに相溶しない複数の水分散樹脂の混合物を含み、
(B)は、粒子径が2μm以上4μm以下の(B1)を90質量%以上含み、(A)の樹脂固形分:1に対する(B)の質量比が1.3以上4.0以下である、組成物
が提供される。
・(A)に含まれる混合物中の一の水分散樹脂として、他の一又は複数の水分散樹脂との混合物から形成される造膜後の膜のヘイズ値が配合量の増加に伴って上昇するものを用いることができる。
・(A)は、(A1)及び(A2)を90質量%以上含み、(A1)の樹脂固形分:1に対する(A2)の樹脂固形分の質量比が1.8以上4.4以下であることが好ましい。
・(B1)は、カーボンブラックを内包したアクリル樹脂粒子を含むことが好ましい。
・(A)は、(A3)を更に含んでもよく、この場合、(A1)の樹脂固形分:1に対する(A3)の質量比が1.2以上1.7以下であることができる。
上記の組成物、及び(C)を含み、
B型粘度計による25℃での粘度が1mPa・s以上300mPa・s以下である、塗料
が提供される。
・模型部品の塗布用であってよい。
・カメラ部品の塗布用であってよい。
・スプレーコート法による塗布用であってよい。
・ペン型塗布具を用いた方法による塗布用であってよい。
・筆塗り法による塗布用であってよい。
・ディップコート法による塗布用であってよい。
・ディスペンサー法による塗布用であってよい。
上記の塗料を内部に充填したペン型塗布具
が提供される。
上記の塗料から形成された膜であって、
膜が形成された面の最表面の、入射角度60°の入射光に対する光沢度(以下単に「光沢度」ともいう。)が1.0%未満、波長550nmの光に対する反射率(以下単に「反射率」ともいう。)が1.5%未満、SCE方式によるCIELAB表色系でのL値が15未満、である膜
が提供される。
・膜に透過での遮光性が求められる場合、膜が形成された面の最表面の、光学濃度が2.0以上、であってよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率又は含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本発明の一形態に係る塗料用水性樹脂組成物(以下単に「組成物」ともいう。)は、(A)造膜性樹脂成分、及び(B)黒色材、を含む。(A)は、互いに相溶しない複数の水分散樹脂(以下単に「エマルション粒子」ともいう。)の混合物を含む。
(A)及び(B)を含む組成物から形成される膜は、従来の塗料用水性樹脂組成物から形成される膜と比較して、低光沢(1.0%未満)であることに加え、これまで以上の超低反射(1.5%未満)と超低L値(15未満)を発現する。理由は定かではないが、(A)中に複数の水分散樹脂の混合物を含む場合、造膜後の膜中に非相溶領域が形成され、その結果、造膜後の膜は非相溶膜となる。この非相溶膜と該膜中に配合された(B)との作用が、効果的に、低光沢、超低反射、超低L値の発現に寄与しているものと考えられる。
組成物の形成に用いる(A)は、塗面に対する定着材であり、(B)のバインダーでもある。具体的には、互いに相溶しない複数(2種以上)の水分散樹脂(エマルション粒子)の混合物を含む。例えば、組み合わせる水分散樹脂の数が2の場合において、一の水分散樹脂を樹脂A、他の水分散樹脂を樹脂Bとしたとき、樹脂Bとして、樹脂Aとの相溶性が低い樹脂を用いる。
この場合、樹脂Bは、樹脂Aとの混合物から形成される造膜後の膜のヘイズ値が混合量に応じて上昇していくものでなければならない。具体的には、樹脂Bを樹脂Aと質量比1:1で混合した混合物から形成される造膜後の膜(厚み12μm)のヘイズ値が3.5%以上(好ましくは4.5%以上)となる樹脂Bを、樹脂Aと相溶しない樹脂(すなわち樹脂Aと非相溶の樹脂)と定義することができる。ヘイズ値は、後述の方法で測定することができる。
(A)に含める複数の水分散樹脂の混合物が(A1)を含むことにより、耐水性に優れ、塗面に対する密着性に優れた膜を形成できる。これに加え、造膜後の膜に対し、膜強度と耐光性等のメリットが付与される。
(A)の一部を構成する(A1)は、アクリル系樹脂を含むものであり、更に本発明の組成物中にエマルション状態で含まれるものである。ここで、エマルション状態であるとは、樹脂エマルションに含まれる樹脂等が微粒子として組成物中に分散している状態を示す。エマルション状態の樹脂は、一般的に連続相である水性溶剤が蒸発や浸透等により減少すると、増粘・凝集する性質を持ち、塗面への密着を促進することができる。
一形態において、(A1)中のアクリル系樹脂は、架橋性樹脂粒子であり、例えば、架橋性を有し、更に、水酸基及びカルボキシル基のうち少なくとも一方を有するアクリル樹脂粒子であってよい。
なお、酸価とは、試料(樹脂の固形分)1g中の酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウム(KOH)の質量(mg)と定義される(以下同じ)。このような酸価は、樹脂を構成するモノマーの種類や含有量等によって調整することができる。上記酸価は、例えば、アクリル系樹脂中の(メタ)アクリル酸等の酸基含有モノマー由来の構成単位の含有量等により調整することができる。
なお、水酸基価とは、試料(樹脂の固形分)1g中の水酸基(ヒドロキシル基)をアセチル化するのに要するKOHの質量(mg)と定義される(以下同じ)。
モノアルコール類としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノニルアルコール、n-デカノール、又はこれらの異性体、シクロペンタノール、シクロヘキサノール等が挙げられ、好ましくはアルキル基の炭素数が1~6のアルコールを使用できる。
多価アルコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール等を使用できる。
多価アルコールの低級アルキルエーテル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル等を使用できる。
水溶性有機溶媒の含有量としては、極力少なくすることが好ましく、配合しないこともできる。配合する際の含有量は、混合溶媒100質量%中、0~10.0質量%が好ましく、更に好ましくは0~5.0質量%である。10.0質量%を超えるときには乾燥不良や耐ブロッキング性が低下する。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)に含める複数の水分散樹脂の混合物が(A2)を含むことにより、造膜後の膜に対し、膜強度の向上等のメリットが付与される。
(A)の一部を構成する(A2)は、ポリエステル系樹脂を含むものであり、更に本発明の組成物中にエマルション状態で含まれる。この点は(A1)と同様である。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ガラス転移温度(Tg)は、DSC法により、示差走査熱量分析計を用いて測定される。より具体的には、ガラス転移温度は、示差走査熱熱量計(DSC)(例えば、島津製作所社の示差走査熱量計「DSC-50」)により測定することができる。なお、ガラス転移温度が複数観測される場合は、より吸熱量の大きい、主転移温度を採用することができる。
酸価と水酸基価は、JIS規格(JIS K0070、1992)で定められた方法(電位差滴定法)に準して測定される。
粒子径は、一次粒子の平均粒子径であり、例えば、動的光散乱法による粒度分布測定器(FPAR-1000:大塚電子社)を用いて測定され、また例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた画像解析を利用して測定(特定)することもできる。
エマルションの固形分含有率は、150℃×2h乾燥後の残分より算出される。
(A)は、複数の水分散樹脂の混合物とともに、(A3)水溶性ポリマーを含有してもよい。(A)が(A3)を含むことにより、造膜後の膜の、塗面への接着性向上が期待される。
また、平均重合度は約300~2300が好ましく、更に好ましくは約1500~1900である。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
組成物の形成に用いる(B)は、(B1)黒色顔料と樹脂の複合物、を含む。
黒色顔料との複合物を構成する樹脂は、水に対して不溶性であるものが用いられる。この様な樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂、エチレン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、アミド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。中でも、分散性の観点から、アクリル樹脂又はウレタン樹脂が好ましく、より好ましくはアクリル樹脂である。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、ビーズという名称の前に樹脂名をつけることによって樹脂粒子の呼称を一部省略することができる。例えば、アクリル樹脂からなる樹脂粒子をアクリルビーズと呼ぶこともある。
なお、(B1)の粒子径は、粒子径分布において積算(累積)百分率で表される積算値が50%となる粒径(D50)の値をいう。
また、形成される膜表面の光沢度をより低減するために、(B1)として、不定形粒子を用いてもよい。(B1)として不定形粒子を用いることにより、膜となったとき、(B1)の表面及び内部で光が屈折を繰り返すことにより、膜表面の光沢度を更に低減することができる。
組成物には、前記成分((A)、(B))以外に、本発明の効果を妨げない限り、その他の任意成分が含まれていてもよい。しかしながら、前記成分((A)、(B))の合計質量が、組成物の固形分100質量%中、好ましくは50質量%以上である。この質量割合は、組成物に要求される物性によって異なるが、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、である。
本発明の一形態に係る水性塗料(以下単に「塗料」ともいう。)は、塗面に上記組成物からなる膜を形成するために使用されるものであり、上記組成物、及び(C)希釈溶媒、を含む。
塗料中の、上記組成物の含有量は、塗料の全固形分の総量(100質量%)に対して、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、である。その上限は、特に制限されず、100質量%である。
塗料の形成の用いる(C)は、塗料の粘度を調整する目的で配合される。(C)を使用することにより、塗料の均一性を向上させる。また、塗料の粘度を適度に調整することができ、塗面に膜を形成するときの、塗料の操作性及び塗布厚の均一性を高くすることが可能となるため、最終的に得られる物品のデザイン性向上に大いに寄与しうる。
塗料は、前記成分(組成物、(C))以外に、本発明の効果を妨げない限り、その他の添加剤の1種又は2種以上を含んでいても良い。その他の添加剤としては、例えば、レベリング剤、増粘剤、pH調整剤、潤滑剤、分散剤、消泡剤、硬化剤、反応触媒等が挙げられる。
その他の添加剤が配合される場合の配合量としては、塗料中の樹脂の固形分100質量部に対し、0~100質量部とすることが好ましく、0~30質量部とすることがより好ましい。
一形態に係る上記塗料は、カメラ部品の塗布用であってよい。
一形態に係る上記塗料は、スプレーコート法による塗布用であってよい。
一形態に係る上記塗料は、ペン型塗布具を用いた方法による塗布用、筆塗り法による塗布用、ディップコート法による塗布用、又は、ディスペンサー法による塗布用であってよい。
一形態に係る上記塗料は、ペン型塗布具に収容して用いることができる。
本発明の一形態に係る膜は、上記塗料を被塗物に塗布して塗膜を形成した後に、該塗膜を乾燥させて成膜することにより形成される。
塗料充填機構が上記塗料を直に充填する構成のものである場合、(B)の再分散を容易とするために、塗料収容体には塗料を攪拌する攪拌ボール等の攪拌体を内蔵することが好ましい。攪拌体の形状としては、球状体、棒状体等が挙げられる。攪拌体の材質は特に限定されないが、具体例として、金属、セラミック、樹脂、硝子等が挙げられる。
塗料充填機構が塗料吸蔵体を備えるものである場合は、塗料吸蔵体は、撚り合わせた繊維を用いてなる繊維集束体で構成することが好ましい。
一形態において、ペン型塗布具は、円筒軸筒内に、塗料収容体と、上記塗料を攪拌するために塗料収容体に内蔵された撹拌体と、塗料収容体に収容される上記塗料のペン先への供給を調節する弁機構と、を有し、ペン先押圧式で弁機構を解放し、上記塗料をペン先に流出させる液式のペン体であってよい。
被塗物として、例えば、以下を挙げることができる。
・携帯電話、スマートフォン、タブレット、パソコン、パソコン周辺機器(キーボード、プリンタ、外付けディスク等)、腕時計、オーディオ機器、各種OA機器等の電気・電子機器。
・冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、テレビ、録画機器等の家電製品。
・階段、床、机、椅子、タンス、その他の家具、木工製品。
・各種建材、フローリング、建物の内壁・外壁等。
・自動車やオートバイ等の車両又はその部品:具体的には、車両のボディ、内装品(メーターパネル、ダッシュボード、ハンドル等)、バンパー、スポイラー、ドアノブ、ヘッドライト、テールライト、アルミホイール、オートバイのガソリンタンク等。
・光学用途、例えば各種カメラユニットに装着されるレンズ、レンズ鏡筒内壁、レンズユニットの内外カバー、レンズのスペーサー等のカメラ部品。
・眼鏡、ゴーグル、これらに類する製品。
・樹脂成形品からなるホビー製品、その組み立て用部品(例えば、組み立て模型(プラスチックモデル等)、該模型キットにおける組み立て模型のパーツ、等)。
上記塗料から形成される膜の特性は、以下のとおりである。
上記塗料から形成される膜は、膜表面の、光沢度が1.0%未満、反射率が1.5%未満、L値が15未満、であることが好ましい。上記塗料から形成される膜に透過での遮光性が求められる場合には、上記特性(膜表面の、光沢度が1.0%未満、反射率が1.5%未満、L値が15未満)に加え、更に、膜表面の光学濃度が2.0以上、であることが好ましい。
上記L値は、膜最表面の、SCE方式による、CIE 1976 L*a*b*(CIELAB) 表色系での明度L*値のことである。SCE方式とは、正反射光除去方式のことであり、正反射光を除去して色を測定する方法を意味する。SCE方式の定義は、JIS Z 8722(2009)に規定されている。SCE方式では、正反射光を除去して測定するため、実際の人の目で見た色に近い色となる。
CIEは、Commission Internationale de l‘Eclairageの略称であり、国際照明委員会を意味する。CIELAB表示色は、知覚と装置の違いによる色差を測定するために、1976年に勧告され、JIS Z 8781(2013)に規定されている均等色空間である。CIELABの3つの座標は、L*値、a*値、b*値で示される。L*値は明度を示し、0~100で示される。L*値が0の場合は黒色を意味し、L*値が100の場合は白の拡散色を意味する。a*値は赤と緑の間の色を示す。a*値がマイナスであれば、緑寄りの色を意味し、プラスであれば赤寄りの色を意味する。b*値は黄色と青色の間の色を意味する。b*がマイナスであれば青寄りの色を意味し、プラスであれば、黄色寄りの色を意味する。
A(造膜性樹脂成分)として、以下のものを準備した。
・A1a: アクリル系樹脂エマルション(モビニール7471、三菱ケミカル社)
(アクリル酸エステル共重合体、樹脂Tg23℃、樹脂固形分44%)
・A2a: ポリエステル系樹脂エマルション(バイロナールMD1200、東洋紡社)
(樹脂Tg67℃、樹脂固形分34%、Mn15,000、酸価1mgKOH/g、水酸基価5mgKOH/g)
・A3a: ポリビニルアルコール(ゴーセノールKH17、三菱ケミカル社)
(樹脂固形分15%、重合度約1700、ケン化度78.5~81.5モル%)
・B1a: 黒色アクリルビーズ(粒子径2~3μm)
(ラブコロール224(SMD)ブラック、大日精化工業社、CB含有量18%)
・B2a: 黒色アクリルビーズ(粒子径7~9μm)
(ラブコロール220(MD)ブラック、大日精化工業社、CB含有量5%)
・B2b: CB(粒子径150nm)
(MHIブラック_#273、御国色素社、CB含有量9.5%)
・B2c: 複合シリカ(粒子径3μm)
(ベクシアID、富士シリシア化学社)
・C1: 水
・C2: アルコール
被塗物として、スマートフォンの筐体(プラスチック製の外箱)を準備した。
1.水性塗料の作製
表1及び2に示す所定量の水及びアルコールの混合溶媒中に、総固形分(質量%)と各成分の固形分比が表1~3記載の値となるよう実験例ごとの各成分を入れ、攪拌混合することにより水性塗料(以下単に「塗料」ともいう。)を調製した。
各実験例で得られた塗料を、下記(3-3-1)塗布性1と同様の手法によるスプレーコート法によって、被塗物に向けて噴霧して塗膜を形成した後に、該塗膜を常温で5~10分程度、静置することにより、被塗物の塗面に、平均膜厚が20μmの、スプレーコート法による膜1を成膜した。
下記(3-3-2)塗布性2で使用したマーキングペンによって、被塗物上を同様に塗り潰して塗膜を形成した後に、該塗膜を常温で5~10分間放置することにより、被塗物の塗面に、平均膜厚が10μmの、筆記による膜2を成膜した。
各実験例で得られた塗料について、下記に示す方法で各種特性(粘度、注入性、塗布性1及び塗布性2、液垂れ性)を評価した(塗料評価)。また、各実験例で得られた塗料から形成された膜1及び2について、下記に示す方法で各種特性(特性)を評価した(膜評価)。結果を表1~3に示す。
(3-1-1)粘度1
塗料の粘度1は、B型粘度計(東機産業社製:VISCOMETER BM2)を用い、25℃、60rpm、1分後、No.1ロータ、の条件で測定した。評価基準は、以下のとおりである。
×:粘度が50mPa・s超え(粘度が過高)
(3-1-2)粘度2
塗料の粘度2は、B型粘度計(東機産業社製:VISCOMETER BM2)を用い、25℃、60rpm、1分後、No.2ロータ、の条件で測定した。評価基準は、以下のとおりである。
×:粘度が230mPa・s超え(粘度が過高)
塗料の注入性は、エアースプレーへの注入の様子を観察することにより評価した。
エアー缶(スプレーワークエアーカン420D:タミヤ社)にエアーブラシ(スプレーワークHGシングルエアーブラシ:タミヤ社)を取り付けたエアースプレーを用い、各塗料がエアーブラシのカップからノズルに入っていく様子を目視で観測し、注入性を評価した。評価基準は、以下のとおりである。
△:詰まりはなかったが、ややノズルに液剤が入っていく速度が遅かった
×:液剤が詰まり、ノズルに液剤が入っていかなかった
塗料の塗布性1は、スプレーコート法による塗布後の塗りムラを観察することにより評価した。各塗料を、上記(3-2)で用いたエアースプレーに注入し、エアーブラシ先端から10cmの距離から、10秒間、被塗物の外表面に向けて噴霧し、形成された塗膜(乾燥前)について、目視により塗りムラを評価した。
(3-3-2)塗布性2
塗料の塗布性2は、マーキングペンによる筆記後の塗りムラを観察することにより評価した。ペン先押圧式でバルブを解放し、ペン先に流出させる液式のペン体(ユニ・ボスカPC-1M:三菱鉛筆社)の円筒軸筒内に、各実験例で得られた塗料と撹拌用ステンレスボール(直径5mm)1個を同時に充填した後、組み立てをし、チゼル型に研磨したペン先を含むマーキングペンを作製した。このマーキングペンを使用し、被塗物上の2センチ四方の範囲を縦一方向からの筆記で塗り潰し、形成された塗膜(乾燥前)について、目視により塗りムラを評価した。
◎:塗りムラ(厚みムラ)は確認されなかった
〇:塗りムラがごく一部、確認された
×:塗りムラが多くの範囲に確認された
塗料の液垂れ性は、スプレーコート法による塗布後の被塗物からの液垂れを観察することにより評価した。
上記(3-3-1)と同様に、各塗料を、上記(3-2)で用いたエアースプレーに注入し、エアーブラシ先端から10cmの距離から、10秒間、被塗物の外表面に向けて噴霧した後の、被塗物からの、付着した液滴の液垂れ性を評価した。評価基準は、以下のとおりである。
△:塗布後の被塗物を垂直に立てて置いた際、次第に液が垂れてきた
×:塗布後の被塗物を垂直に立てて置いた際、すぐに液が垂れ出した
(3-5)特性
-光沢度-
各被塗物に形成された膜1及び2双方の表面の、入射角60°の測定光に対する光沢度(60°鏡面光沢度)は、グロスメータ(VG 7000:日本電色工業社)を用い、JIS Z8741に準拠した方法で光沢度9点測定し、その平均値を光沢度とした。評価基準は、以下のとおりである。
〇:光沢度が0.5%以上0.7%未満(低光沢性が優れている)
△:光沢度が0.7%以上1.0%未満(低光沢性が良好)
×:光沢度が1.0%以上(低光沢性が不十分)
各被塗物に形成された膜1及び2双方の表面の、波長550nmの光に対する反射率(550nm反射率)は、分光測色計(CM-5:コニカミノルタ社)を用い、JIS Z8722に準拠した方法で反射率9点測定し、その平均値を反射率とした。評価基準は、以下のとおりである。
〇:反射率が1.0%以上1.25%未満(低反射性が優れている)
△:反射率が1.25%以上1.5%未満(低反射性が良好)
×:反射率が1.5%以上(低反射性が不十分)
各被塗物に形成された膜1及び2双方の表面の黒色度は、該膜表面の、SCE方式による、CIE 1976 L*a*b*(CIELAB)表色系での明度L*値を測定することにより評価した。その明度L*値は、分光測色計(CM-5:コニカミノルタ社)を用い、JIS Z8781-4:2013に準拠した方法で測定した。評価基準は、以下のとおりである。
測定においては、光源としてCIE標準光源D65を用い、視野角度10°として、SCE方式によりCIELAB表示色でL*値を求めた。CIE標準光源D65は、JIS Z 8720(2000)「測色用イルミナイト(標準の光)及び標準光源」に規定されており、ISO 10526(2007)にも同じ規定がある。CIE標準光源D65は、昼光で照明される物体色を表示する場合に使用される。視野角度10°については、JIS Z 8723(2009)「表面色の視覚比較方法」に規定されており、ISO/DIS 3668にも同じ規定がある。
〇:L値が10以上12未満(黒色度が優れている)
△:L値が12以上15未満(黒色度が良好)
×:L値が15以上(黒色度が不十分)
各被塗物に形成された膜1及び2の遮光性は、該膜の光学濃度を算出することにより評価した。各被塗物に形成された膜1及び2の光学濃度は、光学濃度計(X-rite 361T(オルソフィルタ):日本平版機材社)を用い、被塗物の膜側に垂直透過光束を照射して、膜がない状態との比をlog(対数)で表して算出した。光学濃度6.0以上は測定の検出上限値である。評価基準は、以下のとおりである。なお、本評価は、被塗物自体に透過性があり、かつその上に形成される膜に遮光性が求められる場合を想定したものである。膜に遮光性が求められない場合、ここでの評価は総合評価に影響を与えない。
〇:光学濃度が2.5以上3.0未満(遮光性が優れている)
△:光学濃度が2.0以上2.5未満(遮光性が良好)
×:光学濃度が2.0未満(遮光性が不十分)
各被塗物に形成された膜1及び2双方の被塗物表面への密着性は、該膜に市販のカッターナイフにて切り込みを碁盤目状に入れ、そこにセロハンテープ(セロテープ、ニチバン社)を貼り付けた後引き剥がし、膜の残存状態を目視にて確認することにより評価した。評価基準は、以下のとおりである。
〇:膜残存が95%以上100%未満(密着性が優れている)
△:膜残存が90%以上95%未満(密着性が良好)
×:膜残存が90%未満(密着性が不十分)
上記光沢度、反射率、黒色度、及び密着性を総合評価した。評価基準は、以下のとおりである。なお、遮光性については、上記のとおり、必要な場合とそうでない場合とがあるため、総合評価の対象からは除外した。
〇:光沢度、反射率、黒色度、及び密着性の各評価のうち少なくとも1つが〇で、いずれも×でない
×:光沢度、反射率、黒色度、及び密着性の各評価のうち少なくとも1つが×
表1で示すように、塗料に含まれる組成物中に(A)として(A1)と(A2)の1つ以上を含めなかった場合(実験例1~3)、膜特性の、光沢度、反射率、L値、密着性の1つ以上、を満足させることができなかった。一方、(A)として(A1)と(A2)の双方を組成物中に含めたとしても(実験例4~10)、(A1)の樹脂固形分:1に対する(A2)の樹脂固形分の質量比が1.8未満(実験例4)か、4.4超(実験例10)であると、膜特性の、密着性を満足させることができなかった。(A1)と(A2)の双方を含め、かつ(A1)の樹脂固形分:1に対する(A2)の樹脂固形分の質量比範囲が適切(1.8以上4.4以下)であっても(実験例6、11~17)、(B)中に粒子径が所定範囲の(B1)を含まない(実験例11~13)か、又は(B)中に粒子径が所定範囲の(B1)を含んでいても、(A1)の樹脂固形分:1に対する(B)の質量比が1.3未満(実験例14)か、4.0超(実験例17)であると、膜特性の、光沢度、反射率、L値、密着性、の1つ以上を満足させることができなかった。
これに対し、(A1)の樹脂固形分:1に対する(A2)の樹脂固形分の質量比範囲が適切(1.8以上4.4以下)であり、かつ(A1)の樹脂固形分:1に対する(B)の質量比も適切(1.3以上4.0以下)であると(実験例5~9、15、16)、塗料の特性、及び膜特性、のすべてを満足させることができた。
これに対し、(A1)の樹脂固形分:1に対する(A2)の樹脂固形分の質量比範囲が適切(1.8以上4.4以下)であり、かつ(A1)の樹脂固形分:1に対する(B)の質量比も適切(1.3以上4.0以下)であると(実験例5a~9a、15a、16a)、塗料の特性、及び膜特性、のすべてを満足させることができた。
Claims (11)
- 塗料用水性樹脂組成物であって、
(A)、及び(B)を少なくとも含み、
(A)は、互いに相溶しない複数の水分散樹脂の混合物を含み、該混合物中の一の水分散樹脂として、他の一又は複数の水分散樹脂との混合物から形成される造膜後の膜のヘイズ値が配合量の増加に伴って上昇するものを用い、
(B)は、粒子径が2μm以上4μm以下の(B1)を90質量%以上含み、(A)の樹脂固形分:1に対する(B)の質量比が1.3以上4.0以下である、組成物。
(A)造膜性樹脂成分
(B)黒色材
(B1)黒色顔料と樹脂の複合物 - 塗料用水性樹脂組成物であって、
(A)、及び(B)を少なくとも含み、
(A)は、(A1)及び(A2)を90質量%以上含み、(A1)の樹脂固形分:1に対する(A2)の樹脂固形分の質量比が1.8以上4.4以下であり、
(B)は、粒子径が2μm以上4μm以下の(B1)を90質量%以上含み、(A)の樹脂固形分:1に対する(B)の質量比が1.3以上4.0以下である、組成物。
(A)造膜性樹脂成分
(A1)アクリル系樹脂のエマルション
(A2)ポリエステル系樹脂のエマルション
(B)黒色材
(B1)黒色顔料と樹脂の複合物 - (B1)は、カーボンブラックを内包したアクリル樹脂粒子を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
- (A)は、(A3)を更に含み、(A1)の樹脂固形分:1に対する(A3)の質量比が1.2以上1.7以下である、請求項2又は3に記載の組成物。
(A3)水溶性ポリマー - 請求項1~4のいずれかに記載の組成物、及び(C)を含み、B型粘度計による25℃での粘度が1mPa・s以上300mPa・s以下である、塗料。
(C)希釈溶媒 - 模型部品の塗布用である、請求項5に記載の塗料。
- カメラ部品の塗布用である、請求項5に記載の塗料。
- B型粘度計による25℃での粘度が1mPa・s以上50mPa・s以下である、スプレーコート法による塗布用の請求項5に記載の塗料。
- B型粘度計による25℃での粘度が80mPa・s以上230mPa・s以下である請求項5に記載の塗料を、内部に充填したペン型塗布具。
- 請求項5に記載の塗料から形成された膜であって、膜が形成された面の最表面の、入射角度60°の入射光に対する光沢度が1.0%未満、波長550nmの光に対する反射率が1.5%未満、SCE方式によるCIELAB表色系でのL値が15未満、である膜。
- 膜に透過での遮光性が求められる場合、膜が形成された面の最表面の、光学濃度が2.0以上、である請求項10に記載の膜。
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