JP7553904B2 - 状態評価装置 - Google Patents
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Description
特許文献1には、検査対象物の表面をハンマーで打撃した際に発生する打音をマイクを用いて検出し、マイクからの信号に基づいて打音検出波形を生成し、打音検出波形に発生する1周期分の波形の振幅に基づいて検査対象物の状態を評価する検査対象物の状態評価装置が提案されている。
また、同一の状態評価装置であっても、ハンマーを駆動するアクチュエータの動作毎のばらつきや状態評価装置の設置状態の影響を受けてハンマーの駆動力がばらつき、生成された打音検出波形の振幅がばらつくことが懸念される。
打音検出波形の振幅にばらつきが生じると、同一の検査対象物に対する評価結果にもばらつきが生じやすくなるため何らかの改善が求められる。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、検査対象物の状態の評価を正確に行なう上で有利な検査対象物の状態評価装置および状態評価方法を提供することにある。
請求項2記載の発明は、前記評価値算出部は、前記ハンマーにより前記標準試験体を打撃して前記波形特性値検出部による前記波形特性値の検出を複数回行なうことで得られた複数の波形特性値の平均値を基準特性値として決定する基準特性値決定部と、前記任意の検査対象物を検査対象とした際に前記波形特性値検出部で検出された波形特性値を、前記基準特性値決定部で決定された前記基準特性値で除すことによって正規化した正規化特性値を算出する正規化特性値算出部と、前記正規化特性値算出部で算出された前記正規化特性値を底、前記任意の数をべき指数としたべき乗演算を行い、評価値を算出するべき乗演算部と、を備えることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、前記評価値算出部は、前記ハンマーによる打撃時に前記ハンマーに生じる打撃力の最大値である最大打撃力を検出する最大打撃力検出部と、前記波形特性値検出部で検出された前記波形特性値を前記最大打撃力で除すことで1次正規化特性値を算出する1次正規化特性値算出部と、前記ハンマーにより前記標準試験体を打撃して前記波形特性値検出部による前記波形特性値の検出を複数回行なうことで得られた複数の前記1次正規化特性値の平均値を前記基準特性値として決定する基準特性値決定部と、前記任意の検査対象物を検査対象とした際に前記1次正規化特性値算出部で算出された前記1次正規化特性値を前記基準特性値で除すことで2次正規化特性値を算出する2次正規化特性値算出部と、前記2次正規化特性値のうち前記波形特性値に関する係数および前記最大打撃力に関する係数を底、前記任意の数をべき指数としたべき乗演算を行い前記評価値を算出するべき乗演算部と、を備えることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、前記打撃部は、前記ハンマーと、前記ハンマーに打撃方向の駆動力を加えるアクチュエータと、前記アクチュエータを駆動する駆動部と、前記駆動部を制御して前記駆動力を調節する調整部と、前記ハンマー、前記アクチュエータ、前記駆動部および前記調整部の少なくともいずれかを収容する筐体と、を備え、前記筐体は、前記ハンマーで前記検査対象物を打撃する際には、前記検査対象物から離れた位置に配置される、ことを特徴とする。
請求項5記載の発明は、前記評価部は、前記評価値と予め定められた第1のしきい値との比較結果に基づいて前記任意の検査対象物の内側の剥離の有無を判定する、ことを特徴とする。
請求項6記載の発明は、前記ハンマーの打撃力を検出して打撃力検出波形を生成する打撃力波形生成部をさらに備え、前記波形生成部は、前記打音検出波形をサンプリングして波形データとしてサンプリングするサンプリング部を備え、前記打撃力検出波形のうち前記打音検出波形の前記第1の波形を発生させる1周期分の波形を第2の波形とし、前記第2の波形の最大値または最小値のうち時間的に早い方の値に対応する時刻を基準時刻としたとき、前記波形特性値検出部による前記第1の波形の波形特性値の検出は、前記サンプリング部によりサンプリングされた前記波形データのうち前記基準時刻よりも前の時点からサンプリングされた前記波形データに基づいてなされる、ことを特徴とする。
請求項7記載の発明は、前記評価部は、前記打撃力検出波形の波形特性値が予め定められた第2のしきい値未満であるときに前記検査対象物の状態の評価を中止する、ことを特徴とする。
請求項8記載の発明は、前記マイクは、前記ハンマーを中心にして当該中心から等距離で対称に配置された複数のマイクで構成され、前記波形生成部、前記波形特性値検出部、前記評価値算出部は、前記各マイクに対応して1つずつ設けられ、それぞれの前記評価値算出部による前記評価値の算出は、前記各マイクに対応して検出された前記波形特性値を用いてなされ、前記評価部による前記任意の検査対象物の状態の評価は、それぞれの前記評価値算出部で算出された前記評価値に基づいてなされる、ことを特徴とする。
請求項9記載の発明は、検査対象物をハンマーで打撃したときの打音をマイクで検出し、前記マイクからの信号に基づいて打音検出波形を生成し、前記打音検出波形を構成する複数の1周期の波形のうちN番目(Nは1以上の自然数)の波形を第1の波形としたとき、前記第1の波形の振幅値または実効値を波形特性値として検出し、予め定められた標準試験体を検査対象物としたときに前記波形特性値検出部で検出された前記波形特性値を基準特性値とし、任意の検査対象物を検査対象とした時に前記波形特性値検出部で検出された前記波形特性値を前記基準特性値で除すことによって正規化された正規化特性値を算出し、前記正規化特性値を底、任意の数をべき指数としたべき乗演算を行うことにより評価値を算出し、前記評価値に基づいて前記任意の検査対象物の状態を評価する、ことを特徴とする。
したがって、状態評価装置毎のばらつき、例えば、マイクの感度の個体差、ハンマーを駆動するアクチュエータの個体差などの影響を受けて、生成された打音検出波形の振幅や実効値がばらついたとしても、評価値はばらつきの影響を受けないので、検査対象物の状態の評価を正確に行なう上で有利となる。
請求項2記載の発明によれば、任意の検査対象物を打撃した際の波形特性値を、基準特性値で除すことによって正規化した正規化特性値を算出し、当該正規化特性値にべき乗演算を行って評価値を算出するので、例えばハンマーに生じる打撃力等を検出する必要がなく、簡易な方法で検査対象物の状態の評価を正確に行なう上で有利となる。
請求項3記載の発明によれば、任意の検査対象物を打撃した際の波形特性値を最大打撃力で除すことで1次正規化特性値を算出し、標準試験体を用いて算出した1次正規化特性値である基準特性値により1次正規化特性値を除すことで2次正規化特性値を算出し、2次正規化特性値のうち波形特性値に関する係数および前記最大打撃力に関する係数にべき乗演算を行って評価値を算出するので、打撃時の打撃力に関わらず一定のしきい値により評価値を評価することができ、1台の状態評価装置による検査対象物の状態の評価を行なう毎に生じるハンマーの打撃力のばらつき、および、状態評価装置毎のばらつきの双方の影響を受けること無く、検査対象物の状態の評価を正確に行なう上で有利となる。
請求項4記載の発明によれば、検査対象物の状態や材料に応じて適切な音圧の打音が得られるようにハンマーの打撃力を調整できるため、検査対象物の状態の評価を正確に行なう上でより有利となる。また、ハンマーで前記検査対象物を打撃する際には、筐体が検査対象物から離れた位置に配置されるので、第1の波形の波形特性値を安定して検出する上で有利となる。
請求項5記載の発明によれば、評価値と第1のしきい値との比較結果に基づいて検査対象物の内側の剥離の有無を判定するので、検査対象物の内側の剥離の有無を簡単かつ確実に判定する上で有利となる。
請求項6記載の発明によれば、打撃力検出波形に基づいて基準時刻を設定し、基準時刻よりも前の時点からサンプリングされた波形データから第1の波形の波形特性値を検出するので、第1の波形を正確に得ることができ、検査対象物の状態の評価を正確に行なう上で有利となる。
請求項7記載の発明によれば、打撃力検出波形の波形特性値が予め定められた第2のしきい値未満であるときに検査対象物の状態の評価を中止するので、検査対象物の状態を誤って評価することを回避でき、検査対象物の状態の評価を正確に行なう上で有利となる。
請求項8記載の発明によれば、各マイク毎に生成されたそれぞれの打音検出波形の第1の波形の波形特性値に対応する評価値を検査対象物の状態評価に用いるようにしたので、検査対象物の内部の剥離の有無及び健全部と剥離部と境界である剥離境界の評価判定を効率よく的確に行なう上で有利となる。
以下、本発明の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置(以下、状態評価装置という)について状態評価方法と共に図面を参照して説明する。
まず、図1を参照して、本実施の形態の状態評価装置10の構成について説明する。
本実施の形態では、状態評価装置10が、検査対象物である建物外面部の状態、すなわち、タイルなどの外装材の浮きや剥がれなどの接着状態を評価する場合について説明する。
なお、本明細書において、検査対象物とは建物や構造物であり、検査対象物が建物であった場合、検査対象物は、建物外面部の他、例えば、室内の床、天井、壁面、室内のコンクリート躯体などを広く含むものである。
また、本明細書において建物外面とは、建物の最も外側に位置する建物の外面をいい、建物外面部とは、タイルやモルタルなどの外装材が設けられていない場合には、建物外面に加え、この建物外面近くの内部の状態を含むものとする。また、建物外面部とは、タイルやモルタルなどの外装材が設けられている場合には、外装材の表面に加え、外装材の表面の内側の外装材部分や外装材の内側の建物躯体の表面や表面近くの内部を含むものとする。
状態評価装置10は、検出ユニット12と、本体ユニット14とで構成されている。
検出ユニット12は、作業者が把持して状態を評価すべき外装材2の表面に当て付けて使用されるものであり、本体ユニット14は、検出ユニット12で検出された打撃力、打音および振動のうち一以上の物理量を表す信号に基づいて外装材2の状態を評価するものである。
検出ユニット12と本体ユニット14とは、前記の信号を伝送する不図示のケーブルによって接続されている。
筐体16は、矩形状の底壁1602と、底壁1602の四辺から起立する4つの側壁1604、1606、1608、1610と、4つの側壁1604、1606、1608、1610の上部を接続する上壁1612とを備えている。
底壁1602には後述するハンマー20が出没する開口1620が設けられている。
3個のローラ18A、18B、18Cのうち、2個のローラ18A、18Bは、底壁1602の対向する一対の端面に回転可能に取着され、同軸上に配置されている。
残りの1個のローラ18Cは、側壁1608の下部に金具17を介して回転可能に取着され、平面視したときにローラ18Cは、2個のローラ18A、18Bの軸線と平行する軸線上に配置されている。
そして、3個のローラ18A、18B、18Cは、それら3個のローラ18A、18B、18Cの外周面が外装材2の表面に当接された状態で底壁1602の下面と外装材2の表面とが一定の間隔Hをおいて互いに平行するように設けられている。
すなわち、筐体16は、ハンマー20で検査対象物2を打撃する際には、検査対象物2から離れた位置に配置される。なお、図2等では底壁1602の下面と外装材2の表面との間隔Hがローラ18の半径程度となっているが、例えば間隔Hが数ミリ程度となるように筐体16に対するローラ18の取付位置を設計してもよい。または、ハンマー20による検査対象物2の打撃時に間隔Hが任意の値になるように、筐体16を昇降させる昇降機構を設けてもよい。
本実施の形態では、アクチュエータ22としてソレノイド22Aを用いている。
ソレノイド22Aは、筐体16の内部に配置され1つの側壁1606に取着されている。
ソレノイド22Aは、コイルを備えるソレノイド本体2202、3個のローラ18A、18B、18Cが外装材2の表面に当接された状態で外装材2の表面と直交する方向に移動可能に設けられたプランジャ2204とを備えている。
プランジャ2204は、コイルに駆動電力が供給されることでソレノイド本体2202から突出する突出位置に移動され、駆動電力の供給が停止されることでソレノイド本体2202に没入する没入位置に移動されるように構成されている。
図3、図4に示すように、ハンマー20は、プランジャ2204の下端に設けられ、プランジャ2204の移動により底壁1602の開口1620を介して出没する。
3個のローラ18A、18B、18Cの外周面が外装材2の表面に当接された状態で、プランジャ2204が突出位置に移動することでハンマー20が外装材2の表面を打撃し、プランジャ2204が没入位置に移動することでハンマー20が外装材2の表面から離間する。
図2、図3、図4に示すように、第1マイク24Aは、底壁1602の下面に取着され、第2マイク24Bは、側壁1610の外面の下部に防振ゴム23を介して取着されている。
本実施の形態では、第1マイク24A、第2マイク24Bの2つのマイクを備える場合について説明するがマイクの数は1つでも3つ以上であってもよい。
操作部32は、作業者によって操作されることで駆動部30に対してコイルへの駆動電力の供給を指示するものであり、押しボタンスイッチなどにより構成されている。
調整部34は、駆動部30を制御してハンマー20に与える駆動力を調節するものである。
本実施の形態では、調整部34は、作業者によって操作されることでソレノイド本体2202のコイルに供給する駆動電力の電圧を増減するものであり、例えば、回転ボリューム(可変抵抗器)などにより構成されている。
このようにハンマー20に与える駆動力を調節可能とすることで、検査対象物の状態や材料に応じて適切な音圧の打音が得られるようにハンマー20の打撃力を調整できるように図られている。
本実施の形態では、ハンマー20、アクチュエータ22、駆動部30、操作部32、調整部34によって特許請求の範囲の打撃部が構成されている。
本実施の形態では、打音波形検出回路36は、基本的に筐体16の外部にある第2の24Bで生成された検出信号を用いて打音検出波形を生成する。これは、筐体16の外部にある第2の24Bを使用する方が筺体16内の反響音等の影響を受けにくく、精度よく剥離判定できるためである。
一方、底壁1602の下面に取着された第1マイク24Aは、例えば第2マイク24Bで正常に集音が行えているかの判定や、第2マイク24Bでの集音に不具合があった場合のバックアップ用などに用いられる。
なお、後述する第2の実施の形態のように、第1マイク24Aで生成された検出信号と第2マイク24Bで生成された検出信号とを別系統で処理し、それぞれの評価値を適宜利用できるようにしてもよい。
本実施の形態では、打音波形検出回路36、打音波形サンプリング部40によって特許請求の範囲の波形生成部が構成されている。
本実施の形態では、打撃力センサ26、打撃力波形検出回路38、打撃力波形サンプリング部42によって特許請求の範囲の打撃力波形生成部が構成されている。
なお、第1の波形は、その振幅値または実効値が大きいほど、振幅や波長、実効値等の波長特性値を正確に計測する上で有利となる。したがって、本実施の形態では、打音検出波形のうち最初に発生する1周期分の波形が2番目以降の波形に比較して振幅値または実効値が大きく、そのため、打音検出波形のうち最初に発生する1周期分の波形を第1の波形とした場合について説明する。
しかしながら、第1マイク24A、第2マイク24B、打音波形検出回路36の特性、検出時の環境、あるいは、検査対象物の状態などの諸条件によっては、打音検出波形のうち2番目以降に発生する波形が最も振幅値または実効値が大きなものとなる場合がある。
したがって、その場合は、2番目以降に発生する振幅値または実効値が最も大きくなる波形を第1の波形とすればよい。
また、本実施の形態では、波形特性値として振幅値を用いる場合について説明する。波形特性値として実行値を用いる場合には、以下の説明の「振幅値」を「実効値」と読み替えればよい。
なお、本実施の形態では、第1の波形の振幅は、第1の波形の最大値と最小値との差分の絶対値とした。しかしながら、第1の波形の振幅は、振幅の基準値(0V)を基準として第1の波形の1周期のうち前半の波形のピーク値(極値)の絶対値としてもよく、あるいは、第1の波形の1周期のうち後半の波形のピーク値(極値)の絶対値としてもよい。
本実施の形態では、打撃力検出波形のうち最初に発生する1周期分の波形を第2の波形とする。
波形特性値検出部44は、打撃力波形サンプリング部42から供給される打撃力検出波形に基づいて前記の基準時刻を決定する。
波形特性値検出部44による第1の波形の振幅値の検出は、打音波形サンプリング部40によりサンプリングされた波形データのうち基準時刻よりも前の時点からサンプリングされた波形データに基づいてなされる。
このようにすることで第1の波形を確実に検出する上で有利となる。
本実施の形態では、評価値算出部46の具体的な演算方法について2つ例を挙げて説明する。
図5(A)、(B)に標準試験体の一例を示す。
標準試験体54は、本体部5402と、閉塞板5404とを含んで構成されている。
本体部5402は、平面視正方形の扁平な板状を呈しており、例えば、一辺の長さが300mm、高さが60mmである。
本体部5402の中央には、高さ方向に沿って円形の孔5406が貫通形成されており、例えば、孔5406の内径は160mmである。
本実施の形態では、本体部5402の材料としてコンクリートを用いたが、金属材料、合成樹脂材料など従来公知の様々なソリッドな材料が使用可能である。
本実施の形態では、閉塞板5404の材料としてガラスを用いたが、コンクリート、金属材料、合成樹脂材料など従来公知の様々なソリッドな材料が使用可能である。
閉塞板5404は、本体部5402と輪郭を合致させた状態で本体部5402の上面に重ね合わされた状態で閉塞板5404の下面と本体部5402の上面とが図示しない接着剤により接着され固定されている。
接着剤は、本体部5402の上面の全域と閉塞板5404の下面との間に介在している。
本実施の形態では、接着剤としてエポキシ系接着剤を用いたが、接着剤としてシリコーン樹脂系接着剤、変性シリコーン樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、ゴム系接着剤など従来公知の様々な接着剤が使用可能である。
なお、中心線CL1、CL2と、閉塞板5404の四辺との交点方向を、それぞれN方向、E方向、S方向、W方向とする(以下、単に「N」「E」「S」「W」等と記す)。
このように構成された標準試験体54によれば、閉塞板5404ががたつくことなく本体部5402にしっかりと固定されているので、状態評価装置10を用いてハンマー20により打撃目標点5408を打撃したときに閉塞板5404の箇所から発生する打音のばらつきが少なく、したがって、打音検出波形の振幅のばらつきが抑制されたものとなる。
このような標準試験体54を予め用意しておく。
<方法1>
図19は、方法1における評価値算出部46(評価値算出部46αとする)の機能的構成を示すブロック図である。
評価値算出部46αは、基準特性値決定部4602、正規化特性値算出部4604、べき乗演算部4606を備える。
すなわち、作業者が状態評価装置10を用いて標準試験体54の打撃目標点5408をハンマー20で打撃して波形特性値検出部44で振幅値を検出する操作を複数回繰り返することで、複数の振幅値を得られる。
基準特性値決定部4602は、得られた複数の振幅値の平均値を算出し、平均値を基準振幅値A0として決定する。
正規化振幅値Arを用いる理由は以下の通りである。
状態評価装置10を構成するマイクは、感度に個体差があり、同一音圧の打音を検出しても出力する検出信号の大きさにばらつきがある。
そこで、波形特性値検出部44で検出された振幅値Aiを、基準振幅値A0で除すことによって正規化された正規化振幅値Arを求めると、マイクの感度のばらつきの影響を受けることなく、同一音圧の打音を検出すると同一の正規化振幅値を得ることができる。
なお、べき指数となる任意の数とは、例えば自然数(正の整数)の他、分数(3/4など)や小数を含む実数(1.5など)などであってもよい。また、任意の数=1の場合は、実質的にべき乗演算が行われないこととなる。よって、任意の数は1以外とする。
また、正規化振幅値Ar=Ai/A0の分子部分と分母部分のべき指数を異なる値にしてもよい。具体的には、例えば評価値E=Ai3/A04などとする場合である。この場合、分子部分と分母部分のべき指数が共に1とならないようにする。すなわち、分子部分または分母部分いずれかのべき指数が1以外であればよい。
図20は、方法2における評価値算出部46(評価値算出部46βとする)の機能的構成を示すブロック図である。
評価値算出部46βは、最大打撃力検出部4610、1次正規化特性値算出部4612、基準特性値決定部4614、2次正規化特性値算出部4616、べき乗演算部4618を備える。
ハンマー20の打撃力は、アクチュエータ22の動作状態や検出ユニット12の設置状態などの影響を受けることから、ある程度の範囲でばらつくことがある。
そこで、第1の波形の振幅値Aを最大打撃力Fで除すことで振幅値を正規化した1次正規化振幅値A/Fを得ることにより振幅値に対する打撃力のばらつきの影響の抑制が図られている。
すなわち、作業者が状態評価装置10を用いて標準試験体54の打撃目標点5808をハンマー20で打撃して波形特性値検出部44で振幅値を検出し1次正規化特性値算出部48で1次正規化振幅値を算出する処理を複数回繰り返することで、複数の1次正規化振幅値を得る。
基準特性値決定部4614は、得られた複数の1次正規化振幅値の平均値を算出し、平均値を基準振幅値A0/F0として決定する。
なお、基準振幅値A0/F0のうち、A0(第1の波形の振幅値Aの平均値に対応)を「第1波振幅標準値」、F0(最大打撃力Fの平均値に対応)を「打撃力標準値」と称する。
なお、2次正規化振幅値Ar/Frのうち、振幅値Aに関する係数(Ar=Ai/A0)を「相対振幅値」、打撃力に関する係数(Fr=Fi/F0)「を相対打撃力」という。
2次正規化振幅値を用いる理由は以下の通りである。
状態評価装置10を構成するマイク24A、24Bは、感度に個体差があり、同一音圧の打音を検出しても出力する検出信号の大きさにばらつきがある。
そこで、1次正規化特性値算出部4612で算出された1次正規化振幅値Ai/Fiを、基準振幅値A0/F0で除すことによって正規化された2次正規化振幅値を求めると、マイク24A、24Bの感度のばらつきの影響を受けることなく、同一音圧の打音を検出すると同一の2次正規化振幅値を得ることができる。
すなわち、方法2における評価値Eは、E=(Ar)i/(Fr)j(i,jは任意の数)とする。
例えば、振幅値Aに関する係数に対するべき指数を2、最大打撃力Fに関する係数に対するべき指数を1とすれば、評価値E=Ar2/Fr=(Ai/A0)2/(Fi/F0)となる。
なお、方法1と同様、べき指数となる任意の数とは、例えば自然数(正の整数)の他、分数(3/4など)や小数を含む実数(1.5など)などであってもよい。
また、任意の数=1の場合は、実質的にべき乗演算が行われないこととなる。よって、振幅値Aに関する係数または最大打撃力Fに関する係数の少なくともいずれかは、任意の数を1以外とする。
また、振幅値Aに関する係数および最大打撃力Fに関する係数におけるべき指数が、異なる値であってよいことは無論である。具体的には、例えば上記のように評価値E=Ar2/Frなどとする場合である。
詳細に説明すると、評価部50は、評価値Eと予め定められた第1のしきい値T1との比較結果に基づいて任意の検査対象物、すなわち外装材2の内側の剥離の有無を判定する。
図6は、外装材2の状態と外装材2の打音の音圧との関係を示す線図であり、言い換えると打音検出波形を示す。図6において、横軸は外装材2をハンマー20で打撃してからの経過時間(μs)を示し、縦軸は打音の音圧(Pa)を示す。
ハンマー20で打撃する外装材2の箇所として以下の4箇所を選んでいる。
なお、本明細書において、外装材2の健全部とは建物躯体に対する外装材2の接着状態が良好で剥離が無い部分を示し、外装材2の剥離部とは外装材2が部分的に建物躯体から剥離した部分を示す。
a:健全部
b:健全部きわ(健全部のうち外装材2が建物躯体から剥離した剥離部に近接した部分)
c:剥離部きわ(剥離部のうち健全部に近接した部分)
d:剥離部
図6から明らかなように、a健全部、b健全部きわの打音検出波形の振幅に対して、c剥離部きわ、d剥離部の打音検出波形の振幅が大きな値となっていることがわかる。
このような知見から第1の波形の振幅に対応する評価値Eと予め定められた第1のしきい値T1との比較結果に基づいて外装材2の剥離の有無を判定することが可能となる。
なお、第1のしきい値T1は、図6のように、外装材2の接着状態、言い換えると、外装材2の剥離の有無のそれぞれに対応した評価値Eを求め、外装材2の剥離を確実に判定するに足る第1のしきい値T1を設定すればよい。
あるいは、外装材2の健全部において評価値Eを求め、その評価値Eに予め定められた定数を乗算しあるいは定数を加算するなどして第1のしきい値T1を設定すればよい。
なお、評価値算出部46が方法1を採る場合には、第1のしきい値T1を一定値ではなく、打撃力F(特に相対打撃力(Fi/F0))の関数として定めてもよい。
すなわち、何らかの原因によってハンマー20による外装材2の表面に対する打撃がなされなかった場合(空打ち)か、打撃が不十分であった場合には、外装材2の状態の評価を中止することで、外装材2の状態の評価を正確に行なう上で有利となる。
なお、第2のしきい値T2は、ハンマー20により外装材2の表面を打撃した場合と、空打ちした場合とのそれぞれで検出された打撃力検出波形の振幅を実測し、外装材2に対して正確に打撃がなされた状態と、空打ちあるいは不十分な打撃がなされた状態とを確実に判定するに足る第2のしきい値T2を設定すればよい。
出力部52として以下のものが例示される。
判定結果を表示するディスプレイ装置。
判定結果を印刷媒体に印刷するプリンタ装置。
判定結果を記録媒体に記録する記録装置。
判定結果を回線を介して各種端末装置やデータロガーに送信する通信装置。
コンピュータは、CPU、ROM、RAM、ハードディスク装置、キーボード、マウス、ディスプレイ装置、入出力インターフェースなどを有している。
ROMは所定の制御プログラムなどを格納し、RAMはワーキングエリアを提供するものである。
ハードディスク装置は、波形特性値検出部44、評価値算出部46、評価部50を実現するための制御プログラムを格納している。
キーボードおよびマウスは、操作者による操作入力を受け付けるものである。
ディスプレイ装置は、画像を表示するものであり、例えば、液晶表示装置などで構成される。ディスプレイ装置は出力部52として機能させることができる。
図21は、間隔Hを0mm、1mm、2mm、3mmとした場合(全ての方向に等しく隙間を開けた場合)の第1の波形の振幅値を比較するグラフである。
図21では、間隔H=1mmの振幅値とした場合を基準に、H=0mm、2mm、3mmの場合の振幅値を、ハンマー20に加える駆動力(駆動電圧)ごとに比較している。横軸が間隔H=1mmの振幅値、縦軸がH=0mm、2mm、3mmの場合の振幅値である。
隙間のある間隔H=1mmにおける振幅値と、同じく隙間のある間隔H=2mmおよび3mmにおける振幅値とは相関は高くなっている(R2=0.98以上)。これに対して、隙間のないH=0mmにおける振幅値との相関はばらつきがみられる。
このことから、筐体16の底壁1602の下面と外装材2の表面とに間隔Hを設けた時の方が、安定して振幅値を計測できるものと考えられる。
図22は、H=1mm時を基準値(A0)とした相対振幅値(Ai/A0)と相対打撃力(Fi/F0)との関係を示すグラフであり、図22(A)は剥離部、図22(B)は健全部の値を示している。図22の縦軸は方法1における正規化振幅値に対応する。
なお、図22~図24において、「gap(またはken_gap)_nαSβ.xlsx」(αおよびβは整数)との表記があるが、これは標準試験体54(図5参照)のN方向にαmm、S方向にβmmの隙間をそれぞれ設けたことを示す。αまたはβが0の場合は(その方向には)隙間なし、またαとβの値が異なる場合には場所によって隙間の高さが異なる(傾きがある)ことになる。
隙間をあけたH=1mm時を基準とした場合、相対打撃力(Fi/F0=Fr)と相対振幅値(Ai/A0)との相関関係は良好であり、実際の外壁診断時においても安定した結果を得やすいと考えられる。ただし、隙間がない(H=0mm)場合や一部(片側)のみ隙間を設けた場合には、相関が悪くなっている。
一方で、相対打撃力(Fi/F0)と相対振幅値(Ai/A0)との関係は、原点を通る比例関係ではない。
縦軸を(Ai/A0)/(Fi/F0)=Ar/Frとした場合、打撃力が変わると値が変化し、一定のしきい値(第1のしきい値T1)で検査対象物の状態を判定することが不自然なことがわかる。
図24は、図22の縦軸を2乗したグラフであり、図24(A)は剥離部、図24(B)は健全部の値を示している。図24の縦軸は方法1の評価値Eに対応する。
図24に示す通り、(Ai/A0)2と相対打撃力Fi/F0はほぼ原点を通る比例関係となることが確認された。
また、図25は、図24の縦軸を相対打撃力Fi/F0で除した((Ai/A0)2/(Fi/F0))グラフであり、図25の縦軸は方法2の評価値Eに対応する。なお、図25では剥離部の値と健全部の値とを同一のグラフ上にプロットしている。
図25に示すように、(Ai/A0)2をFi/F0で除した値を評価値Eとすることによって、打撃力によらず一定のしきい値(第1のしきい値T1)を用いて検査対象物の状態を判定することができる。
また、図24に示す通り、(Ai/A0)2と相対打撃力Fi/F0はほぼ原点を通る比例関係となることから、例えば相対打撃力Fi/F0を変数とする1次式などによって第1のしきい値T1を設定することができる。
まず、標準試験体54を用いた基準振幅値A0の決定について図7のフローチャートを参照して説明する。
まず、状態評価装置10の検出ユニット12を標準試験体54の閉塞板5404の上に載置し、ハンマー20が打撃目標点5408の直上に位置するように位置決めする(ステップS10)。
次に、作業者は、操作部32を操作し(ステップS12)、これによりハンマー20が閉塞板5404の打撃目標点5408を打撃する(ステップS14)。
ハンマー20が閉塞板5404の打撃目標点5408を打撃することで発生した打音は、第1マイク24A、第2マイク24Bによって検出され、それら2つのマイクから生成された検出信号(本実施の形態においては主に第2マイク24B)に基づいて打音波形検出回路36により打音検出波形が生成され、生成された打音検出波形は打音波形サンプリング部40によってサンプリングされ、サンプリングされた波形データは波形特性値検出部44に供給される(ステップS16)。
波形特性値検出部44は、供給された波形データに基づいて第1の波形の振幅値を検出する(ステップS18)。
基準特性値決定部4602は、基準振幅値A0を決定するための波形特性値検出部44による第1の振幅値の検出動作が所定回数なされたか否かを判定する(ステップS20)。
判定結果が否定であれば、基準特性値決定部4602は、操作部32の操作が必要である旨をディスプレイ装置に表示させ、これにより制御はステップS12に戻る。
判定結果が肯定であれば、基準特性値決定部4602は、振幅値の平均値を算出し基準振幅値を決定し、基準振幅値A0を正規化特性値算出部4604に供給する(ステップS22)。
以上で基準振幅値の決定動作が終了する。
まず、作業者は、検出ユニット12の3個のローラ18A、18B、18Cを診断対象となる外装材2の表面に当接させる(ステップS30)。必要があれば、底壁1602の下面と外装材2の表面との間隔Hが所定値になるように調整する。
次に、作業者は、操作部32を操作し(ステップS32)、これにより打撃部20が外装材2の表面を打撃する(ステップS34)。
打撃部20が外装材2の表面を打撃することで発生した打音は、第1マイク24A、第2マイク24Bによって検出され、それら2つのマイク(本実施の形態においては主に第2マイク24B)から生成された検出信号に基づいて打音波形検出回路36により打音検出波形が生成され、生成された打音検出波形は打音波形サンプリング部40によってサンプリングされ波形特性値検出部44に供給される(ステップS36)。
また、打撃部20が外装材2の表面を打撃することでハンマー20で発生した打撃力は、打撃力センサ26によって検出され、打撃力センサ26から生成された検出信号に基づいて打撃力波形検出回路38により打撃力検出波形が生成され、打撃力検出波形は、打撃力波形サンプリング部42によってサンプリングされ、サンプリングされた波形データは波形特性値検出部44に供給され、これにより波形特性値検出部44は基準時刻を決定する(ステップS38)。
正規化特性値算出部4604は、波形特性値検出部44で検出された振幅値Ai、すなわち、打音波形サンプリング部40によってサンプリングされた波形データを、基準振幅値A0で除すことによって正規化された正規化振幅値Ar=Ai/A0を算出する(ステップS41)。また、べき乗演算部4606は、正規化特性値算出部4604で算出された正規化振幅値Arを底、任意の整数(本実施の形態では2)をべき指数としたべき乗演算を行い、評価値E=Ar2=(Ai/A0)2を算出し、評価部50に供給する(ステップS42)。
打撃力検出波形の振幅が予め定められた第2のしきい値T2未満であると判定された場合には、評価部50は、外装材2の状態の評価を中止し、出力部52から測定のやり直しを促す旨の報知を行なう(ステップS50)。このような報知は例えばディスプレイ装置により所定のやり直しを促す旨のコメントを表示することでなされる。
そして、ステップS30に移行する。
一方、ステップS44で打撃力検出波形の振幅が予め定められた第2のしきい値T2未満でないと判定された場合には、評価部50は、正規化振幅値と第1のしきい値T1との比較に基づいて外装材2の剥離の有無の判定を行なう(ステップS46)。
出力部52は、評価部50から供給された外装材2の剥離の有無の判定結果を出力し(ステップS48)、一連の動作を終了する。これ以降、次の診断対象となる外装材2について上記と同様の処理を繰り返して行なう。
図7については、ステップS18とステップS20の間に、最大打撃力検出部4610により今回の打撃時にハンマー20に生じる最大打撃力を特定するステップ、1次正規化特性値算出部4612により第1の波形の振幅値を最大打撃力で除すことで1次正規化振幅値を算出するステップ、を行う。
また、ステップS20では、基準特性値決定部4614が、基準振幅値を決定するため1次正規化特性値算出部4612による1次正規化振幅値の算出動作が所定回数なされたか否かを判定する。
ステップS20の判定結果が否定であれば、基準特性値決定部4614は、操作部32の操作が必要である旨をディスプレイ装置に表示させ、これにより制御はステップS12に戻る。
ステップS20の判定結果が肯定であれば、基準特性値決定部4614は、1次正規化振幅値の平均値を算出し基準振幅値A0/F0を決定し、基準振幅値A0/F0を2次正規化特性値算出部4616に供給する。
したがって、状態評価装置10毎のばらつき、例えば、マイクの感度の個体差、ハンマー20を駆動するアクチュエータ22の個体差などの影響を受けて、生成された打音検出波形の振幅がばらついたとしても、正規化振幅値はばらつきの影響を受けないので、検査対象物の状態の評価を正確に行なう上で有利となる。
したがって、第1の波形を正確に得ることができ、外装材2の状態の診断を正確に行なう上で有利となる。
なお、駆動部30からソレノイド22Aに供給される駆動信号からトリガ信号を生成し、打音波形検出回路36によって生成された打音検出波形を打音波形サンプリング部40でトリガ信号に同期してサンプリングして第1の波形を得るようにしてもよいが、駆動信号は時間的なばらつきがあるため、第1の波形を安定して正確に得る上で不利となる。
これに対して、本実施の形態のようにすると、打撃力検出波形から生成された第2の波形から得た基準時刻よりも前の時点からサンプリングされた波形データによって第1の波形を得ることができるため、第1の波形を安定して正確に得る上でより有利となる。
したがって、ハンマー20による外装材2の表面に対する打撃がなされなかった場合(空打ち)か、打撃が不十分であった場合には、外装材2の状態の評価を中止することにより、誤った評価を行なうことが回避でき、外装材2の状態の評価を正確に行なう上で有利となる。
次に第2の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態では、ハンマー20やアクチュエータ22の部分から発生する不要な音をマイク20A、20Bが検出しないようにするために、マイク20A、20Bをハンマー20の外装材2(例えばタイル)への打点から一定の距離(例えばタイル一枚分に相当する距離)離した位置に配置することが好ましい。
そのため、検査対象物が多数のタイルから構成されている場合は、以下のような点が懸念される。
すなわち、タイルの打点がタイルの剥離箇所であるにもかかわらず、音をピックアップするマイクの位置が剥離のない健全部の真上にある場合、マイク20A、20Bからは健全部と同等の打音検出信号、すなわち、健全部の場合と同程度に小さい振幅の打音検出信号しか出力されない場合がある。
その結果、タイルの剥離箇所を健全部と誤判定するおそれがあり、このような誤判定は、健全部と剥離部との境界付近で発生しやすい傾向となることから、剥離境界の様相をより正確に把握することで正確な検査対象物の状態評価を行なう必要がある。
そして、第1の実施の形態と同様に各打音検出波形から検出される第1の波形の振幅値から評価値Eをそれぞれ求め、それら複数の評価値Eに基づいて検査対象物の状態の評価を行なうようにした。
図9に示すように、第1の実施の形態と同様に、状態評価装置10Aは、検出ユニット12Aと、本体ユニット14Aとで構成されている。
なお、本実施の形態では、打撃点P1から各マイク25A~25Dまでの距離を53mmとした場合について説明するが、これに限らず、100mm以内であればよい。
第2マイク25Bは、図10、図12に示すように、筐体16を構成する後面側の側壁1606の外面下部に防振ゴム23を介して取着されている。
第3マイク25Cは、図11、図12に示すように、筐体16を構成する左面側の側壁1608の外面下部に防振ゴム23を介して取着されている。
第4マイク25Dは、図10、図11、図12に示すように、筐体16を構成する右面側の側壁1610の外面下部に防振ゴム23を介して取着されている。
本実施の形態では、第1マイク25A、第2マイク25B、第3マイク25C及び第4マイク25Dの4つのマイクを備える場合について説明するが、マイクの数は2つまたは6つ乃至それ以上であってもよい。
また、各マイク25A~25Dの受音面は、外装材2の検査対象面である表面に対して正対するように配置されており、外装材2の表面から各マイク25A~25Dまでの高さは5mm以内であることが望ましい。
第1~第4打音波形サンプリング部40A~40Dは、第1~第4打音波形検出回路36A~36Dによって生成された打音検出波形を予め定められたサンプリング周期でサンプリングするものである。
本実施の形態では、第1~第4打音波形検出回路36A~36D、第1~第4打音波形サンプリング部40A~40Dが特許請求の範囲の波形生成部を構成している。
なお、第1~第4波形特性値検出部44A~44Dによる第1の波形の振幅値の検出は、第1~第4打音波形サンプリング部40A~40Dによりサンプリングされたそれぞれの波形データのうち基準時刻よりも前の時点からサンプリングされた波形データに基づいてなされることは第1の実施の形態と同様である。
図6で説明したように、健全部a、健全部きわb、剥離部きわc、剥離部dの打音検出波形をそれぞれ打音検出波形a、b、c、dとした場合、健全部aの打音検出波形a、健全部きわbの打音検出波形bの振幅に対して、剥離部きわcの打音検出波形c、剥離部dの打音検出波形dの振幅が大きな値となっていることがわかる。
このような知見から第1の波形の振幅に対応する評価値Eと予め定められた第1のしきい値T1との比較結果に基づいて、第1~第4マイク25A~25Dがそれぞれ対向する箇所の外装材2の剥離の有無の判定を行なうと共に、外装材2の健全部と剥離部の剥離境界を判定することが可能となる。
したがって、本実施の形態では、評価部50は、第1~第4マイク25A~25Dで検出された各打音検出波形に対応する評価値Eと、予め定められた第1のしきい値T1との比較結果に基づいて検査対象物の内側の剥離の有無を判定し、また、検査対象物の健全部と剥離部の剥離境界を判定する。
まず、状態評価装置10の検出ユニット12Aを標準試験体54の閉塞板5404の上に載置し、ハンマー20が打撃目標点5408の直上に位置するように位置決めする(ステップS60)。
この際、平面視した状態で第1~第4マイク25A~25Dが図14(A)に示す2本の中心線CL1、CL2と一致するように、検出ユニット12Aの位置決めを行なう。
なお、第1~第4マイク25A~25Dと、標準試験体54の第1、第2中心線CL1、CL2との位置関係は、図14(A)~(D)に示すように、90°ずつ位相が異なる4種類の位置関係が存在する。
そこで、本実施の形態では、4種類の位置関係のそれぞれで第1~第4マイク25A~25Dのそれぞれから第1の波形の振幅値を得るようにする。
ハンマー20が閉塞板5404の打撃目標点5408を打撃することで発生した打音は、第1~第4マイク25A~25Dによって検出され、それら4つのマイクから生成された検出信号に基づいて第1~第4打音波形検出回路36A~36Dにより打音検出波形がそれぞれ生成され、生成された各打音検出波形は第1~第4打音波形サンプリング部40A~40Dによってサンプリングされ、サンプリングされた各波形データは第1~第4波形特性値検出部44A~44Dに供給される(ステップS66)。
第1~第4波形特性値検出部44A~44Dは、供給された各波形データに基づいて第1~第4マイク25A~25Dに対応する第1の波形の振幅値をそれぞれ検出する(ステップS68)。
第1~第4評価値算出部46A~46Dの基準振幅算出部4602(図19参照)は、それぞれ基準振幅値A0を決定するための第1~第4波形特性値検出部44A~44Dによる第1の振幅値の検出動作が所定回数なされたか否かを判定する(ステップS70)。
判定結果が否定であれば、基準振幅算出部4602は、操作部32の操作が必要である旨をディスプレイ装置に表示させ、これにより制御はステップS62に戻る。
次に、作業者は、第1~第4マイク25A~25Dと、標準試験体54の第1、第2中心線CL1、CL2との4種類の位置関係の全てについて第1の振幅値の検出動作がなされたか否かを判定する(ステップS72)。
ステップS72の判定結果が否定であれば、検出ユニット12Aを90°回転させ(ステップS74)、ステップS62に戻る。
ステップS72の判定結果が肯定であれば、第1~第4評価値算出部46A~46Dの基準特性値決定部4602(図19参照)は、それぞれ各振幅値の平均値を算出して第1~第4のマイクのそれぞれに対応する基準振幅値A0を決定し、各基準振幅値A0を正規化特性値算出部4604(図19参照)に供給する(ステップS76)。
以上で基準振幅値の決定動作が終了する。
なお、本実施の形態では、第1~第4マイク25A~25Dと、標準試験体54の第1、第2中心線CL1、CL2との位置関係の位相を90°ずつ変えて第1の波形の振幅値を複数個得るとともに、マイク毎に第1の波形の振幅値を平均化して各基準振幅値を決定したので、標準試験体54の形状や構造の影響が抑制された基準振幅値を得る上で有利となる。
まず、作業者は、検出ユニット12Aの3個のローラ18A、18B、18Cを診断対象となる外装材2(任意の検査対象物)の表面に当接させる(ステップS80)。
次に、作業者は、操作部32を操作し(ステップS82)、これにより打撃部20が外装材2の表面を打撃する(ステップS84)。
打撃部20が外装材2の表面を打撃することで発生した打音は、第1~第4マイク25A~25Dによって検出され、それら4つのマイクから生成された検出信号に基づいて第1~第4打音波形検出回路36A~36Dによりそれぞれ打音検出波形が生成され、生成された各打音検出波形は第1~第4打音波形サンプリング部40A~40Dによってサンプリングされ第1~第4波形特性値検出部44A~44Dに供給される(ステップS86)。
また、打撃部20が外装材2の表面を打撃することでハンマー20に発生した打撃力は、打撃力センサ26によって検出され、打撃力センサ26から生成された検出信号に基づいて打撃力波形検出回路38により打撃力検出波形が生成され、生成された打撃力検出波形は打撃力波形サンプリング部42によってサンプリングされ第1~第4波形特性値検出部44A~44Dに供給される(ステップS88)。
第1~第4評価値算出部46A~46Dにそれぞれ設けられた正規化特性値算出部4604(図19参照)は、第1~第4波形特性値検出部44A~44Dで検出された振幅値Ai、すなわち、第1~第4打音波形サンプリング部40A~40Dによってサンプリングされた各波形データを、各基準振幅値A0で除すことによって正規化された正規化振幅値Arを算出する(ステップS91)。そして、第1~第4評価値算出部46A~46Dにそれぞれ設けられたべき乗演算部4606(図19参照)は、正規化特性値算出部4604で算出された正規化振幅値Arを底、任意の数(本実施の形態では2)をべき指数としたべき乗演算を行い、評価値E=Ar2=(Ai/A0)2を算出し、評価部50に供給する(ステップS92)。
打撃力検出波形の振幅が予め定められた第2のしきい値T2未満であると判定された場合には、評価部50は、外装材2の状態の評価を中止し、出力部52から測定のやり直しを促す旨の報知を行なう(ステップS100)。
そして、ステップS80に移行する。
一方、ステップS94で打撃力検出波形の振幅が予め定められた第2のしきい値T2未満でないと判定された場合には、評価部50は、評価値Eと第1のしきい値T1との比較に基づいて外装材2の剥離の有無の判定と、健全部と剥離部の剥離境界の判定とを行なう(ステップS96)。
出力部52は、評価部50から供給された外装材2の剥離の有無の判定結果、健全部と剥離部の剥離境界の検出結果を出力し(ステップS98)、一連の動作を終了する。これ以降、次の診断対象となる外装材2について上記と同様の処理を繰り返して行なう。
図16は、建物外面部にタイルが貼り付けられている部分の正面図であり、検出ユニット12Aを4箇所の異なる位置P10~P13に位置させた状態を示している。
より詳細に説明すると、建物のコンクリート躯体4の外表面には、外装材2が設けられている。
外装材2は、コンクリート躯体4の外表面に層状に設けられた下地モルタル202と、下地モルタル202の外表面に張り付け材204により張り付けられたタイル206とを備えている。
また、図16は、コンクリート躯体4の外表面と下地モルタル202との間に剥離部8が発生している場合を示しており、L1は剥離部8と健全部6との境界を表わす剥離境界線を示している。
図中、ハッチングが無い部分が健全部6であり、ハッチングが有る部分が剥離部8である。
図17は、図16のAA線断面図である。なお、図17では、筐体16の底壁1602の下面と外装材2の表面との間隔Hは図示を省略している。
図18(A)~(D)は検出ユニット12Aの位置P10~P13に対応して検出された第1~第4マイク25A~25Dに対応する4つの打音検出波形を示す波形図である。
なお、説明の都合上、図18(A)~(C)に比較して図18(D)は時間軸(横軸)の単位距離当たりの時間(μs)を拡大して記載している。
また、図18(A)~(C)では、4つの打音検出波形の振幅が非常に小さいため、4つの打音検出波形が重なり合って表示されている。
したがって、各マイクの打音検出波形から得られる評価値Eと第1のしきい値T1との比較に基づいて打撃点P1が健全部6に位置していることがわかる。
(2)検出ユニット12Aが位置P11に位置し、打撃点P1および第2~第4マイク25B~25Dが健全部6に位置し、第1マイク25Aが剥離部8きわに位置している場合、図17(B)に示すように、第2~第4マイク25B~25Dの打音検出波形は振幅が小さいものとなっており、第1マイク25Aの打音検出波形は他の3つのマイクの打音検出波形の振幅よりも僅かに振幅が大きくなっているものの、その差は無視できる程度である。
したがって、各マイクの打音検出波形から得られる評価値Eと第1のしきい値T1との比較に基づいて打撃点P1が健全部6に位置していることがわかる。
(3)検出ユニット12Aが位置P12に位置し、打撃点P1および第2~第4マイク25B~25Dが健全部6に位置し、第4マイク25Dが剥離部8きわに位置している場合、図17(C)に示すように、第1~第3マイク25A~25Cの打音検出波形は振幅が小さいものとなっており、第4マイク25Dの打音検出波形は他の3つのマイクの打音検出波形の振幅よりも僅かに振幅が大きくなっているものの、その差は無視できる程度である。
したがって、各マイクの打音検出波形から得られる評価値Eと第1のしきい値T1との比較に基づいて打撃点P1が健全部6に位置していることがわかる。
(4)検出ユニット12Aが位置P13に位置し、打撃点P1および第2、第3マイク25B、25Cが剥離部8に位置し、第1マイク25A、第4マイク25Dが健全部6に位置している場合、図17(D)に示すように、第1、第4マイク25A、25Dの打音検出波形の振幅に比較して、第2、第3マイク25B、25Cの打音検出波形の振幅が顕著に大きくなっており、振幅の差が明瞭にあらわれている。
したがって、各マイクの打音検出波形から得られる評価値Eと第1のしきい値T1との比較に基づいて打撃点P1が剥離部8に位置していることが判定される。
言い換えると、第1~第4マイク25A~25Dの打音検出波形から得られる評価値Eと第1のしきい値との比較に基づいて、打撃点P1が健全部6、剥離部8の何れに位置しているか判定するようにした。
したがって、第1の実施の形態と同様の効果が奏されることは無論のこと、外装材2の剥離の有無及び外装材2の健全部6と剥離部8と境界である剥離境界の評価判定を効率よく的確に行なう上で有利となる。また、打撃点の周辺に複数のマイクを設けることで、一つの打撃点の周辺の浮き状況を面で捉えることが可能である。このため、検査対象物の状態評価を効率よく的確に行なう上で有利となる。
さらに、本発明は、建物の室内の床、天井、壁面、室内のコンクリート躯体などを評価する場合に広く適用可能である。
また、本発明は、検査対象物が建物に限定されず、高架橋やダムなどの構造物などを評価する場合に広く適用可能である。
以下、本発明にかかる検査対象物の状態評価装置および状態評価方法の実施例について説明する。
本実施例では、第2の実施の形態に示したような4方向にマイクを配置した検出ユニットを用い、また評価値Eについては方法2のように打撃力を用いて算出するものとする。
<検出ユニットの構成>
図26は実施例にかかる状態評価装置の検出ユニット60の構成図、図27は検出ユニット60の外観写真、表1は検出ユニット60の仕様を示す表である。
なお、図26および図27は検出ユニット60の主要部のみを示し、例えばローラ等の移動機構については図示を省略している。また、視認性の観点から図27では符号の表示を省略している。
図26に示すように、実施例にかかる状態評価装置の検出ユニット60は、アルミニウム製の筐体602(筐体602の装置底板612)、マイク604、ソレノイドアクチュエータ606、圧電素子608、打撃ヘッド(ハンマー)610を備える。
ソレノイドアクチュエータ606は、最大打撃周波数10Hzでの高速打撃が可能であり、打撃ストロークは10mmである。ソレノイドアクチュエータ606の先端に取り付けられている打撃ヘッド610は、直径6mm、先端曲率半径5mmのステンレス鋼である。最大ストローク時における打撃ヘッド610の装置底板612からの突出長を5mmとし(図26(B)参照)、多少の凹凸のあるタイル面でも打撃できるようにした。
打撃力センサとして、打撃ヘッド610とソレノイドアクチュエータ606のシャフト間に圧電素子608を取り付け、打撃時の圧電効果によって生じる電圧値を測定することとした。この打撃力センサ(圧電素子608)を用いれば、打撃応答音を補正できるだけでなく、打撃力をトリガとして、打撃応答音の大小によらず測定を行うことができるため、高速連続打撃におけるデータ収録を的確に行える利点がある。
ソレノイドアクチュエータ606の駆動電圧は、3.5,4,5,6,8Vの5段階で可変とし、検査対象に応じて適切に打撃力の変更ができるようにした。また,打撃力を可変とすることで、打撃力が打撃応答音に与える影響について実験的に検討を行えるようにした。
サンプリング周波数は、打撃力および打撃応答音の波形を適切に収録できるように、200kHzとした。
つぎに、実施例で使用する試験体について説明する。
実施例では、図28に示すような3種類の試験体を作製した。高精度で均質性を確保でき、陶磁器質タイルと似た物性とすることを意図して、いずれの試験体も試験面はガラス製とした。
試験体Aは、直径300mm、厚さ60mmの円板状の石英ガラス製試験体である。裏面中央部には直径160mm,深さ50mmの空洞を設けた。結果として、試験体表面に厚さ10mmの試験面を残存させたものである。
試験体Aは、高精度で加工され、長期間変質することがないことから、装置較正のための標準試験体として位置づける。
試験体Bは、タイルがコンクリートに張り付けられた状態に近い構成で剥離状態を模した試験体である。安価で作製可能なため、検査現場などで日常的に用いるのに適している。
ダ石灰ガラスをエポキシ樹脂系接着剤で全面接着(張代約1mm)した試験体である。
試験体Cは、タイルがコンクリートに完全に接着され、剥離の生じていない健全状態を模したもので、試験体Aおよび試験体Bの比較対象用の試験体として作製したものである。
なお、試験体A~Cに用いたガラス(石英ガラスおよびソーダ石灰ガラス)の仕様を表2に示す。
試験体の打撃箇所は、4つのマイク604に対して均等な打撃応答音が入力されると想定される試験体中央部とした。ここで、検出ユニット60が傾いたり壁面から離れたりする状況として、表3に示すように装置底板612と試験面との間に種々の隙間が生じた場合を想定した測定条件を設定した。
同一測定条件・方向における測定回数は各2回とした。また,打撃力が打撃応答音に与える影響について考察するため、ソレノイドアクチュエータの駆動電圧606は、3.5,4,5,6,8Vの5通りとした。
最大打撃力Fおよび第1の波形の振幅値A(以下「第1波振幅値A」とする)を較正するための標準値として、標準試験体である試験体Aの試験体中央を測定した際の、最大打撃力Fの平均値を打撃力標準値F0、また、第1波最大振幅Aの平均値を第1波振幅標準値A0とする。なお、標準値F0およびA0は、駆動電圧ごとおよび各マイク602ごとに設定した。
つぎに、上記の標準値を用いて最大打撃力および第1波振幅値を相対化することとし、下記式(1)および式(2)のように相対打撃力Frおよび相対振幅値Arとして定義した。
Fr=(Fi/F0)・・・(1)
Ar=(Ai/A0)・・・(2)
すなわち、第1の実施の形態で説明した2次正規化振幅値Ar/Frのうち、振幅値Aに関する係数を相対振幅値Ar、最大打撃力Fに関する係数を相対打撃力Frとした。
上述のように、装置底板612と試験体表面との間に生じる隙間を想定して表3のとおり種々の隙間条件を設定したが、どの隙間条件で測定した値を2次正規化用(較正用)の標準値F0,A0とするかを検討した。
(1)密着状態(n0s0)を標準的な隙間条件として設定した場合
装置底板612と試験体Aを密着させた状態(n0s0)での測定値FおよびAを標準値F0およびA0とした場合の、相対振幅値Arと相対打撃力Frとの関係を図30に示す。なお、図30~図33において、(A)には表3に示す全ての隙間条件の結果を示し、(B)には装置を傾けない4種の隙間条件(n0s0,n1s1,n2s2,n3s3)のみの結果を示した。
図30では、密着状態である隙間条件n0s0の時のFrおよびArが1となる。
また、図30より、隙間厚が大きくなるとソレノイドアクチュエータ606のストロークが増すために相対打撃力Frが増大し、それに応じて相対振幅値Arも増大する傾向があることがわかる。
また、密着状態を標準条件とすると、隙間がある条件におけるArとFrの関係において大きなばらつきが生じる。さらに、装置を傾けて片側だけを密着させた条件(n2s0)では、装置底板612と試験体表面が密着している側のマイク604と、装置底板612と試験体表面に隙間がある側のマイク604とで、収録・算出されるArが大きく異なることがわかる。
装置底板612と試験体Aとに均等に1mmの隙間を設けた状態(n1s1)での測定値FおよびAを標準値F0およびA0とした場合の、相対振幅値Arと相対打撃力Frの関係を図31に示す。
図31について検討すると、ソレノイドアクチュエータ606のストロークが増すことでFrが増大し、それに伴いArも増大する傾向は図30と同様である。しかし、密着状態(n0s0)にある隙間条件を除いたその他の隙間条件においては、ArとFrの関係におけるばらつきは小さく、より明確な関係性が認められる。
図30および図31の結果から、標準試験体である試験体Aを用いて標準値F0およびA0を測定する場合や、タイル壁面など実際の評価対象物の測定を行う場合に、安定したArおよびFrを得るためには、所定のスペーサーを装置底板612に取り付けるなどして、測定時に常に隙間状態が保持されることが望ましいことが推測される。
一方で、隙間を大きくとりすぎると、ソレノイドアクチュエータ606のストロークの限界のため、打撃ヘッド610が壁面を打撃しにくくなる。
本実施の形態では、種々検討の結果、隙間条件n1s1を標準隙間条件に設定した。
試験体BにおけるArとFrの関係を図32に示す。標準値F0およびA0は、標準試験体である試験体Aの隙間条件n1s1での測定値FおよびAである。
図32より、試験体BにおけるArとFrの関係は、試験体Aの場合とほぼ同等であり、最大打撃力Fおよび第1波振幅Aについては試験体Aと試験体Bとの差異がほとんどないことがわかる。
つぎに、試験体CにおけるArとFrの関係を図33に示す。標準値F0およびA0は、図32と同様に、試験体Aの隙間条件n1s1での測定値FおよびAである。
図33より、試験体CのFrは、試験体Aのそれと比較して15%程度大きいが、試験体CのArは非常に小さいことがわかる。
以上の検討結果をもとに、相対打撃力Frおよび相対振幅値Arの関係を利用して、相対打撃力の変動によらず、安定して剥離判定ができるパラメータを検討することとした。
図31のArとFrの関係から、下記式(3)に示す評価値Eを定義する。
E=(Ar)i/(Fr)j・・・(3)(i,jは任意の数)
本実施例では、変数iおよびjの値として、試行的に式(4)および式(5)の2つの場合について検討することとした。
(ケース1)E=Ar/Fr・・・(4)(i=1,j=1)
(ケース2)E=Ar/√Fr・・・(5)(i=1,j=1/2)
なお、図34および図35において(A)は試験体A、(B)は試験体B、(C)は試験体Cのグラフをそれぞれ示す。
図34より、べき乗演算を行わないケース1ではFrの増加に対して、Eは減少傾向にあることがわかる。しかしながら、評価値Eは、駆動電圧や隙間条件により打撃力が変動した場合でも変動せずに安定していることが望ましい。
ケース2の場合のEとFrの関係を図35に示す。
図35より、ケース2ではいずれの試験体においても、隙間条件によらずEはほぼ一定となることがわかる。したがって、本発明にかかる状態評価装置においては、ケース2の方が、評価値Eとしてより適していると考える。
また、図35において、剥離状態を模して裏面に空洞部を設けた試験体Aおよび試験体Bの評価値E(図35(A)および(B)参照)と、コンクリートに完全に接着された健全状態を模した試験体Cの評価値E(図35(C)参照)とを比較すると、空洞の有無によりEの値が大きく異なることがわかる。このことからも、タイルの剥離判定を行う際に評価値Eを剥離判定パラメータとして用いることは有効であるといえる。
10、10A 状態評価装置
20 ハンマー
22 アクチュエータ
24A 第1マイク
24B 第2マイク
25A 第1マイク
25B 第2マイク
25C 第3マイク
25D 第4マイク
26 打撃力センサ
30 駆動部
32 操作部
34 調整部
36 検出回路
36A 第1検出回路
36B 第2検出回路
36C 第3検出回路
36D 第4検出回路
38 打撃力波形検出回路
40 サンプリング部
40A 第1サンプリング部
40B 第2サンプリング部
40C 第3サンプリング部
40D 第4サンプリング部
42 打撃力波形サンプリング部
44 波形特性値検出部
44A 第1波形特性値検出部
44B 第2波形特性値検出部
44C 第3波形特性値検出部
44D 第4波形特性値検出部
46(46α、46β) 評価値算出部
46A 第1評価値算出部
46B 第2評価値算出部
46C 第3評価値算出部
46D 第4評価値算出部
4602 基準特性値決定部
4604 正規化特性値算出部
4606 べき乗演算部
4610 最大打撃力検出部
4612 1次正規化特性値算出部
4614 基準特性値決定部
4616 2次正規化特性値算出部
4618 べき乗演算部
50 評価部
52 出力部
54 標準試験体
Claims (3)
- 検査対象物の表面をハンマーで打撃する打撃部と、
前記ハンマーによる打音を検出する複数のマイクと、
複数の前記マイクで集音され複数の前記マイク毎に生成された打音の波形に基づいて、前記検査対象物の表面上の複数の前記マイクのそれぞれに対応する複数の位置を評価点とする複数の評価値を算出する評価値算出部と、
複数の前記マイク毎に生成された前記打音の波形の振幅に対応する複数の前記評価値のそれぞれと予め定められた第1のしきい値との比較結果に基づいて、前記検査対象物の状態を評価する評価部と、
を備えることを特徴とする検査対象物の状態評価装置。 - 前記検査対象物の状態は、建物または構造物に設けられた外装材の接着状態であり、
前記第1のしきい値は、前記外装材の接着状態が良好で剥離が無い部分である健全部において算出された前記評価値に基づいて設定される、
ことを特徴とする請求項1記載の検査対象物の状態評価装置。 - 前記評価部は、前記波形の振幅が予め定められた第2のしきい値未満であるときに前記検査対象物の状態の評価を中止する、
ことを特徴とする請求項1または2記載の検査対象物の状態評価装置。
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