JP7334902B2 - 検査対象物の状態評価装置および状態評価方法 - Google Patents
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Description
例えば、下記特許文献1には、建物躯体に接着された外装材の表面を打撃ハンマーで打撃した際に発生する打音を、打撃ハンマーの打撃点を中心にして当該中心から等距離で対象に配置した4つの第1~第4マイクにより検出し、それら4つのマイクからの検出信号に基づいて第1~第4検出回路により打音検出波形がそれぞれ生成され、各打音検出波形は第1~第4サンプリング部によってサンプリングされ評価部に供給される。打音検出波形のうち最初に発生する1周期分の波形を第1の波形としたとき、評価部は、第1の波形の振幅または波長に基づいて検査対象物の建物躯体に対する検査対象物の状態を評価する。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、検査対象物の状態の評価を高精度に行なう上で有利な検査対象物の状態評価装置および状態評価方法を提供することにある。
請求項2記載の発明は、前記評価部は、複数の前記評価点を含んだ領域を打撃毎の評価領域とし、複数の前記評価値の差分が第1の所定値以上の場合、前記評価領域内に前記検査対象物の状態が異なる領域が混在していると判定する、ことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、前記評価部は、前記評価値が所定の閾値以上の前記評価点を含む領域を第1の状態にある領域、前記評価値が前記閾値未満の前記評価点を含む領域を第2の状態にある領域と評価する、ことを特徴とする。
請求項4記載の発明は、前記評価部は、前記第1の領域は前記検査対象物の内部に剥離が生じていると評価し、前記第2の領域は前記検査対象物の内部に剥離が生じていないと評価する、ことを特徴とする。
請求項5記載の発明は、前記評価部は、前記評価値のうち下位の第1の所定数を抽出し、前記第1の所定数の前記評価値の平均値をNa、前記評価値全体に対する前記第1の所定数の前記評価値の標準偏差をNbとしたときに、Na+β×Nb(βは正の数)を前記閾値とする、ことを特徴とする。
請求項6記載の発明は、複数の前記マイクは、前記打撃部による打撃点を中心に対向する位置に設けられており、前記評価部は、対向する2つのマイクに対応する2つの評価点の前記評価値同士の差分が第2の所定値以上の場合、前記打撃点の近傍に前記検査対象物の状態が異なる境界があると評価する、ことを特徴とする。
請求項7記載の発明は、前記評価部は、前記境界を境として一方の領域は前記検査対象物の内部に剥離が生じていると評価し、他方の領域は前記検査対象物の内部に剥離が生じていないと評価する、ことを特徴とする。
請求項8記載の発明は、前記評価部は、前記評価値の上位の第1の所定数を抽出し、前記第1の所定数の前記評価値の平均値に基づいて、前記検査対象物の表面から前記剥離までの距離を推定する、ことを特徴とする。
請求項9記載の発明は、検査対象物の表面をハンマーで打撃する打撃部と、前記ハンマーによる打音を検出する複数のマイクと、を備える状態評価装置を用いた検査対象物の状態評価方法であって、複数の前記マイクで集音された打音に基づいて、前記検査対象物の表面上の前記マイクに対応する位置を評価点とする複数の評価値を算出する評価値算出工程と、打撃毎に算出された複数の前記評価値の差分に基づいて、前記検査対象物の状態を評価する評価工程と、を含むことを特徴とする。
請求項10記載の発明は、前記評価工程では、複数の前記評価点を含んだ領域を打撃毎の評価領域とし、複数の前記評価値の差分が第1の所定値以上の場合、前記評価領域内に前記検査対象物の状態が異なる領域が混在していると判定する、ことを特徴とする。
請求項11記載の発明は、前記評価工程では、前記評価値が所定の閾値以上の前記評価点を含む領域を第1の状態にある領域、前記評価値が前記閾値未満の前記評価点を含む領域を第2の状態にある領域と評価する、ことを特徴とする。
請求項12記載の発明は、前記評価工程では、前記第1の領域は前記検査対象物の内部に剥離が生じていると評価し、前記第2の領域は前記検査対象物の内部に剥離が生じていないと評価する、ことを特徴とする。
請求項13記載の発明は、前記評価工程では、前記評価値のうち下位の第1の所定数を抽出し、前記第1の所定数の前記評価値の平均値をNa、前記評価値全体に対する前記第1の所定数の前記評価値の標準偏差をNbとしたときに、Na+β×Nb(βは正の数)を前記閾値とする、ことを特徴とする。
請求項14記載の発明は、複数の前記マイクは、前記打撃部による打撃点を中心に対向する位置に設けられており、前記評価工程では、対向する2つのマイクに対応する2つの評価点の前記評価値同士の差分が第2の所定値以上の場合、前記打撃点の近傍に前記検査対象物の状態が異なる境界があると評価する、ことを特徴とする。
請求項15記載の発明は、前記評価工程では、前記境界を境として一方の領域は前記検査対象物の内部に剥離が生じていると評価し、他方の領域は前記検査対象物の内部に剥離が生じていないと評価する、ことを特徴とする。
請求項16記載の発明は、前記評価工程では、前記評価値の上位の第2の所定数を抽出し、前記第2の所定数の前記評価値の平均値に基づいて、前記検査対象物の表面から前記剥離までの距離を推定する、ことを特徴とする。
請求項2および10記載の発明によれば、複数の評価値の差分が大きい(第1の所定値以上)場合、評価領域内に検査対象物の状態が異なる領域が混在していると判定するので、検査対象表面に対する状態分布を容易に把握する上で有利となる。
請求項3および11記載の発明によれば、検査対象物内部の状態を判定するので、表面からは観察できない検査対象物内部の状態を把握し、検査対象物のメンナンス性を向上させる上で有利となる。
請求項4および12記載の発明によれば、検査対象物内部の剥離(例えば外装材の剥離)の有無を判定するので、表面からは観察できない検査対象物内部の状態を把握し、検査対象物のメンナンス性を向上させる上で有利となる。
請求項5および13記載の発明によれば、評価値の一部を用いて検査対象物の状態が異なる領域の境界を識別する閾値を算出するので、閾値として固定値を用いる場合と比較して、より精度よく境界を識別する上で有利となる。
請求項6および14記載の発明によれば、対向して配置される2つの評価点の評価値同士の差分が第2の所定値以上の場合、打撃点の近傍に検査対象物の状態が異なる境界があると評価するので、検査対象物の状態が変化する箇所を容易に特定する上で有利となる。
請求項7および15記載の発明によれば、検査対象物内部の剥離(例えば外装材の剥離)の有無を判定するので、表面からは観察できない検査対象物内部の状態を把握し、検査対象物のメンナンス性を向上させる上で有利となる。
請求項8および16記載の発明によれば、評価値の一部を用いて検査対象物の表面から剥離までの距離を推定するので、剥離の位置をより詳細に把握する上で有利となる。
以下、本発明の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置(以下、状態評価装置という)について状態評価方法と共に図面を参照して説明する。
まず、図1を参照して、本実施の形態の状態評価装置10の構成について説明する。
本実施の形態では、状態評価装置10が、検査対象物である建物外面部の状態、すなわち、タイルなどの外装材の浮きや剥がれなどの接着状態を評価する場合について説明する。
より詳細には、本実施の形態では、建物外面に接着剤を介して外装材が接着されている場合に、外装材と接着剤との界面、建物外面と接着剤との界面、接着剤の内部、外装材の内部、建物外面の内部のいずれかの箇所に、空隙、浮き、ひび(対向する部材同士の間に空隙は生じていない(略接触状態にある)ものの、接着されていない状態)等が生じているすなわち正常でない状態を総称して、「剥離」と称するものとする。
なお、本明細書において、検査対象物とは建物や構造物であり、検査対象物が建物であった場合、検査対象物は、平板状の建物外面部の他、例えば、室内の床、天井、壁面、室内のコンクリート躯体などを広く含むものである。
また、本明細書において建物外面とは、建物の最も外側に位置する建物の外面をいい、建物外面部とは、タイルやモルタルなどの外装材が設けられていない場合には、建物外面に加え、この建物外面近くの内部の状態を含むものとする。また、建物外面部とは、タイルやモルタルなどの外装材が設けられている場合には、外装材の表面に加え、外装材の表面の内側の外装材部分や外装材の内側の建物躯体の表面や表面近くの内部を含むものとする。
検出ユニット12Aは、作業者が把持して状態を評価すべき外装材2の表面に当て付けて使用されるものであり、本体ユニット14は、検出ユニット12Aで検出された打撃力、打音および振動のうち一以上の物理量を表す信号に基づいて外装材2の状態を評価するものである。
検出ユニット12Aと本体ユニット14とは、前記の信号を伝送する不図示のケーブルによって接続されている。
筐体16は、矩形状の底壁1602と、底壁1602の四辺から起立する4つの側壁1604、1606、1608、1610と、4つの側壁1604、1606、1608、1610の上部を接続する上壁1612とを備えている。
底壁1602には後述するハンマー20を筐体16から出し入れするための開口1620が設けられている。
3個のローラ18A、18B、18Cのうち、2個のローラ18A、18Bは、底壁1602の対向する一対の端面に回転可能に取着され、同軸上に配置されている。
残りの1個のローラ18Cは、側壁1608の下部に金具17を介して回転可能に取着され、平面視したときにローラ18Cは、2個のローラ18A、18Bの軸線と平行する軸線上に配置されている。
そして、3個のローラ18A、18B、18Cは、それら3個のローラ18A、18B、18Cの外周面が外装材2の表面に当接された状態で底壁1602の下面と外装材2の表面とが一定の間隔Hをおいて互いに平行するように設けられている。
すなわち、筐体16は、ハンマー20で検査対象物を打撃する際には、検査対象物から離れた位置に配置される。なお、図2等では底壁1602の下面と外装材2の表面との間隔Hがローラ18の半径程度となっているが、例えば間隔Hが数ミリ程度となるように筐体16に対するローラ18の取付位置を設計してもよい。または、ハンマー20による検査対象物の打撃時に間隔Hが任意の値になるように、筐体16を昇降させる昇降機構を設けてもよい。
本実施の形態では、アクチュエータ22としてソレノイド22Aを用いている。
ソレノイド22Aは、コイルを備えるソレノイド本体2202、3個のローラ18A、18B、18Cが外装材2の表面に当接された状態で外装材2の表面と直交する方向に移動可能に設けられたプランジャ2204とを備えている。
本体部2202は、筐体16内の底壁1602上に設けられた台1614上に設置されている。
プランジャ2204は、コイルに駆動電力が供給されることでソレノイド本体2202から突出する突出位置に移動され、駆動電力の供給が停止されることでソレノイド本体2202に没入する没入位置に移動されるように構成されている。
図3、図4に示すように、ハンマー20は、プランジャ2204の下端に設けられ、プランジャ2204の移動により底壁1602の開口1620を介して出没する。
3個のローラ18A、18B、18Cの外周面が外装材2の表面に当接された状態で、プランジャ2204が突出位置に移動することでハンマー20が外装材2の表面を打撃し、プランジャ2204が没入位置に移動することでハンマー20が外装材2の表面から離間する。
第1マイク25A、第2マイク25B、第3マイク25C及び第4マイク25Dは、ハンマー20による外装材2への打撃点P1(図3参照)を中心にして当該中心から等距離離れて対称に配置されている。具体的には、打撃点P1を中心とする半径40mmの円周上に互いに90°の角度をおいて点対称に配置されている。よって、複数のマイク25A~25Dは、ハンマー20(打撃部)による打撃点を中心に対向する位置に設けられている。
なお、本実施の形態では、打撃点P1から各マイク25A~25Dまでの距離を40mmとした場合について説明するが、これに限らず、例えば0mm以上1000mm以下、5mm以上50mm以下、あるいは10mm以上100mm以下であればよい。
第2マイク25Bは、図2、図4に示すように、筐体16を構成する後面側の側壁1606の外面下部に防振ゴム23を介して取着されている。
第3マイク25Cは、図3、図4に示すように、筐体16を構成する左面側の側壁1608の外面下部に防振ゴム23を介して取着されている。
第4マイク25Dは、図2、図3、図4に示すように、筐体16を構成する右面側の側壁1610の外面下部に防振ゴム23を介して取着されている。
本実施の形態では、第1マイク25A、第2マイク25B、第3マイク25C及び第4マイク25Dの4つのマイクを備える場合について説明するが、マイクの数は2つまたは6つ乃至それ以上であってもよい。マイクの数をより多くすれば一度の打撃により多くの打音データを得られる一方で、それぞれの打音データを処理するためのリソースが必要となる。
また、各マイク25A~25Dの受音面は、外装材2の検査対象面である表面に対して正対するように配置されており、外装材2の表面から各マイク25A~25Dまでの高さは0mm以上100mm以下、1mm以上10mm以下、あるいは1mm以上7mm以下であることが望ましい。
図1に示すように、本体ユニット14は、駆動部30と、操作部31と、調整部32と、打撃力データ処理部33と、第1~第4打音データ処理部34A~34Dと、基準データ記憶部35と、第1~第4評価値算出部36A~36Dと、評価部50と、出力部52とを含んで構成されている。
なお、本体ユニット14の各構成部で行う処理は、本体ユニット14のみで行うに限らず、例えば複数の処理装置(マイコンとパーソナルコンピュータなど)で分散して行ってもよい。
操作部31は、作業者によって操作されることで駆動部30に対してコイルへの駆動電力の供給を指示するものであり、押しボタンスイッチなどにより構成されている。
調整部32は、駆動部30を制御してハンマー20に与える駆動力を調節するものである。
本実施の形態では、調整部32は、作業者によって操作されることでソレノイド本体2202のコイルに供給する駆動電力の電圧を増減するものであり、例えば、回転ボリューム(可変抵抗器)などにより構成されている。
このようにハンマー20に与える駆動力を調節可能とすることで、検査対象物の状態や材料に応じて適切な音圧の打音が得られるようにハンマー20の打撃力を調整できるように図られている。
本実施の形態では、ハンマー20、アクチュエータ22、駆動部30、操作部31、調整部32によって特許請求の範囲の打撃部が構成されている。
より詳細には、打撃力データ処理部33は、打撃力センサ26で生成された検出信号をA/D変換して打撃力検出波形を生成し、打撃力検出波形を予め定められたサンプリング周期でサンプリングする。そして、サンプリングした打撃力検出波形からハンマー20による打撃時にハンマー20に生じる打撃力の最大値、言い換えると打撃力のピーク値である最大打撃力Fを特定する。
より詳細には、第1~第4打音データ処理部34A~34Dは、まずそれぞれ第1~第4マイク25A~25Dで生成された検出信号をA/D変換して打音検出波形を生成し、打音検出波形を予め定められたサンプリング周期でサンプリングする。
つぎに、第1~第4評価値算出部36A~36Dは、サンプリングされた打音検出波形を構成する複数周期の波形のうち、最も大きい振幅値(最大振幅値A)を波形特性値として検出する。
また、本実施の形態では、最大振幅値Aは、波形の最初の1周期の最大値と最小値との差分の絶対値とした。しかしながら、最大振幅値Aは、振幅の基準値(0V)を基準として波形の1周期のうち前半の波形のピーク値(極値)の絶対値としてもよく、あるいは、波形の1周期のうち後半の波形のピーク値(極値)の絶対値としてもよい。
より詳細には、基準データ記憶部35は、標準試験体をハンマー20で打撃した際の最大打撃力Fを基準打撃力F0、各マイク25A~25Dで得られた打音データの最大振幅値(波形特性値)Aを基準振幅値A0として記録する。本実施の形態では、標準試験体を複数回ハンマー20で打撃し、それぞれの打撃時に得られた最大打撃力Fの平均値を基準打撃力F0、各マイク25A~25Dの最大振幅値Aの平均値を基準振幅値A0(A01~A04)としている。
標準試験体54は、本体部5402と、空隙部5404とを含んで構成されている。
本体部5402は、平面視正方形の扁平な板状を呈しており、例えば、一辺の長さが300mm、高さが60mmである。
空隙部5404は、本体部5402の一方の面からくり抜かれた円形の空隙である。空隙部5404は、本体部5402の中心点Oを中心とした正円形状であり、その直径は160mm、高さは50mmである。
本実施の形態では、標準試験体54の材料として石英ガラスを用いた。なお、標準試験体54の材料としては、コンクリート、ガラス、金属材料、合成樹脂材料など従来公知の様々なソリッドな材料が使用可能である。
なお、中心線CL1、CL2と、閉塞板5404の四辺との交点方向を、それぞれN方向、E方向、S方向、W方向とする(以下、単に「N」「E」「S」「W」等と記す)。
このように一部材で構成された標準試験体54によれば、状態評価装置10を用いてハンマー20により打撃目標点を打撃したときに閉塞板5404の箇所から発生する打音のばらつきが少なく、したがって、打音検出波形の振幅のばらつきが抑制されたものとなる。
すなわち、第1~第4評価値算出部36A~36Dは、複数のマイク25A~25Dで集音された打音に基づいて、検査対象物の表面上のマイク25A~25Dに対応する位置を評価点とする複数の評価値Emを算出する。
なお、図1では、図面の視認性の観点から、各第1~第4評価値算出部36A~36Dと基準データ記憶部35、および各第1~第4評価値算出部36A~36Dと打撃力データ処理部33との接続は、図示を省略している。
本実施の形態では、それぞれ第1~第4評価値算出部36A~36Dは、検査対象物の打撃ごとに得られる最大打撃力Fと最大振幅値Aとを用いて、下記式(1)~(3)によりマイク別評価値Emを算出する。
Fr=F/F0・・・(1)
Ar=A/A0・・・(2)
Em=(Ar)i/(Fr)j(i=1,j=1/2)・・・(3)
すなわち、状態評価装置10を構成するマイク25A~25Dは、感度に個体差があり、同一音圧の打音を検出しても出力する検出信号の大きさにばらつきがある。そこで、最大振幅値Aを、基準振幅値A0で除すことによって、マイク25A~25Dの感度のばらつきの影響を受けることなく、同一音圧の打音を検出すると同一のマイク別評価値Emを得ることができる。
例えば、最大打撃力を用いずに、下記式(4)~(5)のようにマイク別評価値Emを算出してもよい。
この場合も、式(5)のべき指数iは、測定条件に応じて任意の数を設定してよい。
Ar=A/A0・・・(4)
Em=(Ar)i=(Ai/A0)i(i=2)・・・(5)
また、検査対象物の打撃ごとに得られる最大振幅値Aをそのままマイク別評価値Emとしてもよい。
評価部50の説明に先立って、打音波形の振幅と外装材2の剥離の有無との一般的な関係について説明する。
図6は、外装材2の状態と外装材2の打音の音圧との関係を示す線図であり、言い換えると打音検出波形を示す。図6において、横軸は外装材2をハンマー20で打撃してからの経過時間(μs)を示し、縦軸は打音の音圧(Pa)を示す。
ハンマー20で打撃する外装材2の箇所として以下の4箇所を選んでいる。
なお、本明細書において、外装材2の健全部とは建物躯体に対する外装材2の接着状態が良好で剥離が無い部分を示し、外装材2の剥離部とは外装材2が部分的に建物躯体から剥離した部分を示す。
a:健全部
b:健全部きわ(健全部のうち外装材2が建物躯体から剥離した剥離部に近接した部分)
c:剥離部きわ(剥離部のうち健全部に近接した部分)
d:剥離部
図6から明らかなように、a:健全部、b:健全部きわの打音検出波形の振幅に対して、c:剥離部きわ、d:剥離部の打音検出波形の振幅が大きな値となっていることがわかる。
図7A~図7Dにおいて、点線で囲まれた領域は剥離が生じている領域(剥離部)、点線から外側の領域は剥離が生じていない領域(健全部)である。図7A~図7Dでは、打撃点が3か所設定されており、打撃点aは健全部、打撃点bは剥離部、打撃点cは剥離部きわに位置している。
また、図7A~図7Dでは、検査対象物表面から剥離が生じている箇所までの距離(剥離部深さ)が異なる。図7Aの剥離部深さは9mm、図7Bの剥離部深さは19mm、図7Cの剥離部深さは29mm、図7Cの剥離部深さは39mmとなっている。
また、例えば打撃点cのように打撃点が剥離部にあるが、一部のマイク(図7では第2マイク25B)の位置が剥離部上にない場合は、剥離部上にあるマイク(第1マイク25A、第3マイク25C、第4マイク25D)のマイク別評価値Emは大きくなるが、剥離部上にないマイク(第2マイク25B)のマイク別評価値Emは小さくなる。
また、例えば打撃点aのように打撃点が健全部にある場合は、マイク25A~25Dの位置に関わらず、全てのマイク25A~25Dにおいてマイク別評価値Emが小さくなる。
また、図7A~図7Dを比較すると、剥離部深さが深くなるほど打撃応答音振幅が小さくなり、この結果マイク別評価値Emが小さくなる。
このような知見から、例えば打音検出波形の振幅に対応するマイク別評価値Emと予め定められた閾値Tとの比較結果に基づいて外装材2の剥離の有無を判定することが可能となる。
評価部50は、打撃点の打撃毎に算出された複数のマイク別評価値Em1~Em4の差分に基づいて、検査対象物の状態を評価する。
本実施の形態では、評価部50は、以下の方法1または方法2により検査対象物の状態を評価する。
図8は、評価部50による評価方法(方法1)を模式的に示す説明図である。
図8A~図8Dは、図7A~図7Dに示すマイク別評価値Em1~Em4に基づいて評価を行った結果を示している。図8中、網掛け部が剥離部と判定した領域となっている。
方法1では、検査対象物の表面に4つのマイクが面する位置(以下、単に「マイクの位置」という場合もある)を投影し、4つのマイクの位置(評価点)で囲まれた領域を打撃毎の評価領域とする。すなわち、複数の評価点を含んだ領域を打撃毎の評価領域とする。そして、複数のマイク別評価値Emの差分が所定値(以下「第1の所定値」とする)以上の場合、すなわち差分が大きい場合には、評価領域内に検査対象物の状態が異なる領域が混在していると判定する。例えば本実施の形態では、マイク別評価値Emの差分が大きい(差分が第1の所定値以上である)評価領域内に、剥離部と健全部との境界があると判定する。
図8では視認性の観点から評価領域をマイク25A~25Dの位置を結んだ領域よりも大きく図示している。実際には、マイク25A~25Dの位置を結んだ領域を評価領域としてもよいし、図8のようにマイク25A~25Dの位置を結んだ領域よりも大きい領域を評価領域としてもよい。
また、打撃点cの打撃時の評価領域は、符号Rcで示す範囲である。上述のように、打撃点cは打撃点は剥離部にあるが、一部のマイク(マイク25B)は剥離部上なく、このマイク25Bではマイク別評価値Emが小さく(閾値T未満)であり、マイク別評価値Em同士の差分が大きく(第1の所定値以上)なっている。よって、評価部50は、評価領域Rc内に剥離部と健全部との境界があると判定する。具体的には、評価領域Rcのうち、第1マイク25A、第3マイク25Cおよび第4マイク25Dを含む領域Rc1は剥離部と判定し、第2マイク25Bを含む領域Rc2は健全部と判定する。
また、打撃点aの打撃時の評価領域は、符号Raで示す範囲である。上述のように、打撃点aは打撃点が健全部にあるので、全てのマイク25A~25Dにおいてマイク別評価値Emが小さく(閾値T未満)なっており、マイク別評価値Em同士の差分は小さく(第1の所定値未満)なっている。よって、評価部50は、評価領域Ra全体が健全部である判定する。
この時、評価部50は、評価値が所定の閾値T以上の評価点を含む領域を第1の状態にある領域、評価値が閾値T未満の評価点を含む領域を第2の状態にある領域と評価する。より具体的には、評価部50は、第1の領域は検査対象物の内部に剥離が生じていると評価し、第2の領域は検査対象物の内部に剥離が生じていないと評価する。
また、検査対象物の状態が異なる境界(例えば剥離部と健全部の境界)が識別しやすくなるので、例えばマイク別評価値Emの差分が大きい領域の打撃密度を高くするなどして、より精度の高い判定を行うことができる。
判定部50は、例えば各評価点の評価値(マイク別評価値Em)のうち下位の所定数(第1の所定数:ここではN個)を抽出し、N個のマイク別評価値Emの平均値をNa、マイク別評価値Emの全体数に対するN個のマイク別評価値Emの標準偏差をNbとしたときに、α×Na+β×Nb(α、βは任意の数)を閾値Tとする。本実施の形態では、α=1、β=正の数とし、閾値T=Na+β×Nbとする。
なお、所定数とは、具体的な個数ではなく、例えば評価点の数に対する割合(評価点のうち下位M%など)のように指定してもよい。
また、本実施の形態では、マイク別評価値Emが相対的に大きい領域を剥離あり(非健全部)と評価するため、下位の所定数とは、全ての評価点のマイク別評価値Emを大きい順に並べた場合の下位の所定数である。一方、例えばマイク別評価値Emが相対的に小さい領域を非健全部と評価する場合には、下位の所定数とは、全ての評価点のマイク別評価値Emを小さい順に並べた場合の下位の所定数とすればよい。
この方法は、例えば同条件での検査をくり返し行う場合(例えば同じサイズ、同じ素材の検査対象物をくり返し検査する場合)などに有効である。
図9および図10は、評価部50による評価方法(方法2)を模式的に示す説明図である。また、図11は、模擬剥離試験体の平面図である。
方法2では、状態評価装置10の4つのマイク25A~25Dのうち、打撃点を挟んで対向する2つのマイク、例えば第1マイク25A(Mic1)と第3マイク25C(Mic3)や、第2マイク25B(Mic2)と第4マイク25D(Mic4)のマイク別評価値同士の差分を算出し、差分が所定値(以下「第2の所定値」とする)以上の場合、すなわち差分が大きい場合には、2つのマイク間、言い換えると打撃点の近傍に、検査対象物の状態が異なる境界があると評価する。
図11に示す模擬剥離試験体は、鉄筋コンクリート壁体に対して、二丁モザイクタイルをポリマーセメントモルタルを用いて張り付けたものであり、大きく3つの剥離部(斜線で示す範囲S、M、L)が形成されている。
また、符号Cは(M1-M3)または(M2-M4)のうち差分値が大きい方の絶対値を打撃点にプロットしたものである。
この時、評価部50は、境界を境として一方の領域は検査対象物の内部に剥離が生じていると評価し、他方の領域は検査対象物の内部に剥離が生じていないと評価する。
このため、評価部50は、マイク別評価値Emの上位の所定数(第2の所定数:ここではL個)を抽出し、L個のマイク別評価値Emの平均値に基づいて、検査対象物の表面から剥離までの距離(剥離部深さ)を推定するようにしてもよい。
なお、この場合の所定数も、具体的な個数ではなく、例えば評価点の数に対する割合(評価点のうち上位L%など)のように指定してもよい。
図12の各プロットは、模擬剥離試験体の剥離部を打撃した際のそれぞれのマイク別評価値Emを大きい順にならべた際の上位3%の平均値(以下、上位平均値という)であり、試料A-1は図11に示す模擬剥離試験体の剥離部Sを、試料A-2は図11に示す模擬剥離試験体の剥離部Mを、試料A-3は図11に示す模擬剥離試験体の剥離部Lを、試料B~Dは図示しない模擬剥離試験体の剥離部を、それぞれ打撃して得られたマイク別評価値Emに基づいている。
試料A-1~A-3に着目すると、剥離部深さ9mm、19mm、29mm、39mmにそれぞれ形成した模擬剥離試験体を打撃した際の上位平均値は、剥離部深さと一定の相関関係があると考えられる。これは、上述した図9、図10からも明らかである。
このため、外装材2の剥離部深さとそれぞれの深さに対応したマイク別評価値Emの上位平均値との相関関係を予め求めておき、この相関関係に基づいて外装材2の剥離部深さを求めることができる。
すなわち、何らかの原因によってハンマー20による外装材2の表面に対する打撃がなされなかった場合(空打ち)か、打撃が不十分であった場合には、外装材2の状態の評価を中止することで、外装材2の状態の評価を正確に行なう上で有利となる。
なお、評価中止閾値は、ハンマー20により外装材2の表面を打撃した場合と、空打ちした場合とのそれぞれで検出された打撃力検出波形の振幅を実測し、外装材2に対して正確に打撃がなされた状態と、空打ちあるいは不十分な打撃がなされた状態とを確実に判定するに足る評価中止閾値を設定すればよい。
出力部52として以下のものが例示される。
判定結果を表示するディスプレイ装置。
判定結果を印刷媒体に印刷するプリンタ装置。
判定結果を記録媒体に記録する記録装置。
判定結果を回線を介して各種端末装置やデータロガーに送信する通信装置。
コンピュータは、CPU、ROM、RAM、ハードディスク装置、キーボード、マウス、ディスプレイ装置、入出力インターフェースなどを有している。
ROMは所定の制御プログラムなどを格納し、RAMはワーキングエリアを提供するものである。
ハードディスク装置は、上記各種処理を実行するための制御プログラムを格納している。
キーボードおよびマウスは、操作者による操作入力を受け付けるものである。
ディスプレイ装置は、画像を表示するものであり、例えば、液晶表示装置などで構成される。ディスプレイ装置は出力部52として機能させることができる。
まず、標準試験体54を用いて基準振幅値A0等の基準データを決定する(ステップS100)。
より詳細には、状態評価装置10の検出ユニット12Aを標準試験体54の上に載置し、ハンマー20が打撃目標点(中心点O)の直上に位置するように位置決めする。この時、平面視した状態で第1~第4マイク25A~25Dの位置が2本の中心線CL1、CL2と一致するように、検出ユニット12Aの位置決めを行なう。
次に、作業者が操作部31を操作することにより、ハンマー20が閉塞板5404の打撃目標点を打撃する。この時生じた打音は、第1~第4マイク25A~25Dによって検出され、第1~第4打音データ処理部34A~34Dは、それら4つのマイクから生成された検出信号に基づいて各マイク25A~25Dに対応する最大振幅値を検出する。
つぎに、検出ユニット12Aの標準試験体54上の位置を90°回転させ、上記最大振幅値の検出をくり返す。すなわち、第1~第4マイク25A~25Dがそれぞれ「N」「E」「S」「W」に位置するように、標準試験体54の第1、第2中心線CL1、CL2との4種類の位置関係の全てについて最大振幅値を検出する。
各マイク25A~25Dについて4つ(90°回転毎)の最大振幅値が得られると、それぞれのマイク25A~25Dで平均値を算出して各マイク25A~25Dに対応する基準振幅値A0を決定する。
また、打撃力についても同様に、各打撃時における最大打撃力を特定し、最大打撃力の平均値を基準打撃力F0として決定する。
これら基準振幅値A0および基準打撃力F0は、基準データ記憶部35に記憶される。
なお、基準振幅値の決定は毎回(検査対象物の検査毎)行う必要はなく、2回目以降は基準データ記憶部35に記憶された基準振幅値A0および基準打撃力F0を用いればよい。
作業者は、検出ユニット12Aの3個のローラ18A、18B、18Cを診断対象となる外装材2(任意の検査対象物)の表面に当接させ、操作部31を操作することにより、ハンマー20で外装材2(検査対象物)の表面を打撃する(ステップS102)。
また同時に、ハンマー20が外装材2の表面を打撃することでハンマー20に発生した打撃力は、打撃力センサ26によって検出され、打撃力データ処理部33で処理され、今回の打撃時における最大打撃力Fが特定される。
検査対象領域の打撃点は、検査対象領域内で均一な密度となるように予め決めておくのが好ましい。本実施の形態では、例えば図11に示した二丁モザイクタイル1枚につき6か所(横3か所、縦2か所)を打撃するものとした。
すなわち、方法1の場合は、評価点を結んだ領域を打撃毎の評価領域とし、各評価点における評価値の差分が小さい場合(第1の所定値未満の場合)は評価領域内の状態は一致しており、差分が大きい場合(第1の所定値以上の場合)は評価領域内に状態が異なる町域が混在していると評価する。また、評価値が閾値T以上の評価点を含む領域は内部に剥離が生じていると評価し、評価値が閾値T未満の評価点を含む領域は内部に剥離が生じていないと評価する。
また、方法2の場合は、打撃点に対向して配置されている2つのマイクに対応する2つの評価点のマイク別評価値Em同士の差分が第2の所定値以上の場合、打撃点の近傍の境界を境として一方の領域は検査対象物の内部に剥離が生じていると評価し、他方の領域は検査対象物の内部に剥離が生じていないと評価する。
なお、上記のフローチャートでは、検査対象物の全領域の打撃が終了してから評価部50による評価を行うようにしているが、これに限らず、所定箇所の打撃で得られた複数のマイク別評価値Emが算出されたらすぐに評価部50による評価をおこなってもよい。言い換えると、ステップS118は、ステップS110の前に行ってもよい。
例えば上記評価方法1によれば、複数の評価値の差分が第1の所定値以上の場合、評価領域内に検査対象物の状態が異なる領域が混在していると判定するので、検査対象表面に対する状態分布を容易に把握する上で有利となる。より具体的には、検査対象物内部の剥離(例えば外装材の剥離)の有無を判定するので、表面からは観察できない検査対象物内部の状態を把握し、検査対象物のメンナンス性を向上させる上で有利となる。
また、評価値の一部を用いて検査対象物の状態が異なる領域の境界を識別する閾値Tを算出するようにすれば、閾値として固定値を用いる場合と比較して、より精度よく境界を識別する上で有利となる。
また、例えば上記評価方法2によれば、対向して配置される2つの評価点の評価値同士の差分が第2の所定値以上の場合、打撃点の近傍に検査対象物の状態が異なる境界があると評価するので、検査対象物の状態が変化する箇所を容易に特定する上で有利となる。
また、評価値の一部を用いて検査対象物の表面から剥離までの距離を推定するようにずれば、剥離の位置をより詳細に把握する上で有利となる。
さらに、本発明は、建物の室内の床、天井、壁面、室内のコンクリート躯体などを評価する場合に広く適用可能である。
また、本発明は、検査対象物が建物に限定されず、高架橋やダムなどの構造物などを評価する場合に広く適用可能である。
10 状態評価装置
12A 検出ユニット
14 本体ユニット
20 ハンマー
25A-25D 第1~第4マイク
26 打撃力センサ
33 打撃力データ処理部
34A-34D 第1~第4打音データ処理部
35 基準データ記憶部
36A-36D 第1~第4評価値算出部
50 評価部
52 出力部
Claims (10)
- 検査対象物の表面をハンマーで打撃する打撃部と、
前記打撃部を中心にして前記打撃部から等距離で配置された、前記ハンマーによる打音を検出する複数のマイクと、
複数の前記マイクで集音された打音に基づいて、前記検査対象物の表面上の前記マイクに対応する位置を評価点とする複数の評価値を算出する評価値算出部と、
打撃毎に算出された複数の前記評価値に基づいて、前記検査対象物の状態を評価する評価部と、を備え、
前記評価部は、複数の前記評価点を含んだ領域を評価領域とし、複数の前記評価値の全てが閾値T以上の場合は前記評価領域全体に剥離が生じていると評価し、
前記評価部は、複数の前記評価値の一が閾値以上、前記評価値の他が閾値未満であり、複数の評価値の差分が大きい場合は、前記評価領域内に剥離がある第1の領域と剥離がない第2の領域があると、前記検査対象物の状態を評価する、
ことを特徴とする検査対象物の状態評価装置。 - 前記評価部は、前記評価値のうち下位の第1の所定数を抽出し、前記第1の所定数の前記評価値の平均値をNa、前記評価値全体に対する前記第1の所定数の前記評価値の標準偏差をNbとしたときに、Na+β×Nb(βは正の数)を前記閾値とする、
ことを特徴とする請求項1記載の検査対象物の状態評価装置。 - 検査対象物の表面をハンマーで打撃する打撃部と、
前記打撃部を中心にして前記打撃部から等距離で配置された、前記ハンマーによる打音を検出する複数のマイクと、
複数の前記マイクで集音された打音に基づいて、前記検査対象物の表面上の前記マイクに対応する位置を評価点とする複数の評価値を算出する評価値算出部と、
打撃毎に算出された複数の前記評価値に基づいて、前記検査対象物の状態を評価する評価部と、を備え、
複数の前記マイクは、前記打撃部による打撃点を中心に対向する位置に設けられており、
前記評価部は、対向する2つのマイクに対応する2つの評価点の前記評価値同士の差分が第2の所定値以上の場合、前記打撃点の近傍に前記検査対象物の状態が異なる境界があると評価する、
ことを特徴とする検査対象物の状態評価装置。 - 前記評価部は、前記境界を境として一方の領域は前記検査対象物の内部に剥離が生じていると評価し、他方の領域は前記検査対象物の内部に剥離が生じていないと評価する、
ことを特徴とする請求項3記載の検査対象物の状態評価装置。 - 前記評価部は、前記評価値の上位の第1の所定数を抽出し、前記第1の所定数の前記評価値の平均値に基づいて、前記検査対象物の表面から前記剥離までの距離を推定する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の検査対象物の状態評価装置。 - 検査対象物の表面をハンマーで打撃する打撃部と、前記打撃部を中心にして前記打撃部から等距離で配置された、前記ハンマーによる打音を検出する複数のマイクと、を備える状態評価装置を用いた検査対象物の状態評価方法であって、
複数の前記マイクで集音された打音に基づいて、前記検査対象物の表面上の前記マイクに対応する位置を評価点とする複数の評価値を算出する評価値算出工程と、
打撃毎に算出された複数の前記評価値に基づいて、前記検査対象物の状態を評価する評価工程と、
を含み、
前記評価工程においては、複数の前記評価点を含んだ領域を評価領域とし、複数の前記評価値の全てが閾値T以上の場合は前記評価領域全体に剥離が生じていると評価し、
前記評価工程においては、複数の前記評価値の一が閾値以上、前記評価値の他が閾値未満であり、複数の評価値の差分が大きい場合は、前記評価領域内に剥離がある第1の領域と剥離がない第2の領域があると、前記検査対象物の状態を評価する、
ことを特徴とする検査対象物の状態評価方法。 - 前記評価工程では、前記評価値のうち下位の第1の所定数を抽出し、前記第1の所定数の前記評価値の平均値をNa、前記評価値全体に対する前記第1の所定数の前記評価値の標準偏差をNbとしたときに、Na+β×Nb(βは正の数)を前記閾値とする、
ことを特徴とする請求項6記載の検査対象物の状態評価方法。 - 検査対象物の表面をハンマーで打撃する打撃部と、前記打撃部を中心にして前記打撃部から等距離で配置された、前記ハンマーによる打音を検出する複数のマイクと、を備える状態評価装置を用いた検査対象物の状態評価方法であって、
複数の前記マイクで集音された打音に基づいて、前記検査対象物の表面上の前記マイクに対応する位置を評価点とする複数の評価値を算出する評価値算出工程と、
打撃毎に算出された複数の前記評価値に基づいて、前記検査対象物の状態を評価する評価工程と、
を含み、
複数の前記マイクは、前記打撃部による打撃点を中心に対向する位置に設けられており、
前記評価工程では、対向する2つのマイクに対応する2つの評価点の前記評価値同士の差分が第2の所定値以上の場合、前記打撃点の近傍に前記検査対象物の状態が異なる境界があると評価する、
ことを特徴とする検査対象物の状態評価方法。 - 前記評価工程では、前記境界を境として一方の領域は前記検査対象物の内部に剥離が生じていると評価し、他方の領域は前記検査対象物の内部に剥離が生じていないと評価する、
ことを特徴とする請求項8記載の検査対象物の状態評価方法。 - 前記評価工程では、前記評価値の上位の第2の所定数を抽出し、前記第2の所定数の前記評価値の平均値に基づいて、前記検査対象物の表面から前記剥離までの距離を推定する、
ことを特徴とする請求項6から9のいずれか1項記載の検査対象物の状態評価方法。
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