JP6954528B2 - 検査対象物の状態評価装置および状態評価方法 - Google Patents
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特許文献1には、検査対象物の表面をハンマーで打撃した際に発生する打音をマイクを用いて検出し、マイクからの信号に基づいて打音検出波形を生成し、打音検出波形に発生する1周期分の波形の振幅に基づいて検査対象物の状態を評価する検査対象物の状態評価装置が提案されている。
また、同一の状態評価装置であっても、ハンマーを駆動するアクチュエータの動作毎のばらつきや状態評価装置の設置状態の影響を受けてハンマーの駆動力がばらつき、生成された打音検出波形の振幅がばらつくことが懸念される。
打音検出波形の振幅にばらつきが生じると、同一の検査対象物に対する評価結果にもばらつきが生じやすくなるため何らかの改善が求められる。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、検査対象物の状態の評価を正確に行なう上で有利な検査対象物の状態評価装置および状態評価方法を提供することにある。
本発明は、前記評価部は、前記2次正規化振幅値と予め定められた第1のしきい値との比較結果に基づいて前記検査対象物の内側の剥離の有無を判定することを特徴とする。
本発明は、前記ハンマーにより前記標準試験体を打撃して前記振幅値検出部による前記振幅値の検出を複数回行なうことで得られた複数の前記1次正規化振幅値の平均値を前記基準振幅値として決定する基準振幅値決定部をさらに備えることを特徴とする。
本発明は、前記打撃部は、前記ハンマーと、前記ハンマーに打撃方向の駆動力を加えるアクチュエータと、前記アクチュエータを駆動する駆動部と、前記駆動部を制御して前記駆動力を調節する調整部とを備えることを特徴とする。
本発明は、前記最大打撃力検出部は、前記ハンマーの打撃力を検出する打撃力センサと、前記打撃力センサの信号から打撃力検出波形を生成する打撃力波形生成部と、前記打撃力検出波形をサンプリングする打撃力検出波形サンプリング部と、前記サンプリングされた打撃力検出波形から前記最大打撃力を特定する最大打撃力特定部とを備えていることを特徴とする。
本発明は、前記波形生成部は、前記打音検出波形をサンプリングして波形データとしてサンプリングするサンプリング部を備え、前記打撃力検出波形のうち前記打音検出波形の前記第1の波形を発生させる1周期分の波形を第2の波形とし、前記第2の波形の最大値または最小値のうち時間的に早い方の値に対応する時刻を基準時刻としたとき、前記振幅値検出部による前記第1の波形の振幅値の検出は、前記サンプリング部によりサンプリングされた前記波形データのうち前記基準時刻よりも前の時点からサンプリングされた前記波形データに基づいてなされることを特徴とする。
本発明は、前記評価部は、前記最大打撃力が予め定められた第2のしきい値未満であるときに前記検査対象物の状態の評価を中止することを特徴とする。
本発明は、検査対象物をハンマーで打撃したときの打音を前記ハンマーを中心にして当該中心から等距離で対称に配置された複数のマイクで検出し、前記複数のマイクからの信号に基づいて打音検出波形を前記各マイクに対応して生成し、前記ハンマーによる打撃時に前記ハンマーに生じる最大打撃力を検出し、前記各マイクに対応して生成された前記打音検出波形を構成する複数の1周期の波形のうちN番目(Nは1以上の自然数)の波形を第1の波形としたとき、前記第1の波形の振幅値を前記各マイクに対応して検出し、前記各マイクに対応して前記検出された振幅値を前記最大打撃力で除すことで1次正規化振幅値を前記各マイクに対応して算出し、前記検査対象物とは別物で予め定められた標準試験体を前記ハンマーで打撃した場合に前記各マイクに対応して算出された前記1次正規化振幅値を前記各マイクに対応した基準振幅値として決定し、前記各マイクに対応して算出された前記1次正規化振幅値を前記各マイクに対応して決定された前記基準振幅値で除すことで前記各マイクに対応して2次正規化振幅値を算出し、前記各マイクに対応して算出された前記2次正規化振幅値に基づいて検査対象物の状態を評価することを特徴とする。
したがって、1台の状態評価装置による検査対象物の状態の評価を行なう毎に生じるハンマーの打撃力のばらつき、および、状態評価装置毎のばらつきの双方の影響を受けること無く、検査対象物の状態の評価を正確に行なう上で有利となる。
本発明によれば、外装材の剥離の有無を簡単かつ確実に判定する上で有利となる。
本発明によれば、基準振幅値の精度の向上を図れることから、2次正規化振幅値をより正確に得ることができ、検査対象物の状態の評価を正確に行なう上でより有利となる。
本発明によれば、検査対象物の状態や材料に応じて適切な音圧の打音が得られるようにハンマーの打撃力を調整できるため、検査対象物の状態の評価を正確に行なう上でより有利となる。
本発明によれば、最大打撃力を正確に検出する上で有利となる。
請求項6記載の発明によれば、第1の波形を正確に得ることができ、検査対象物の状態の評価を正確に行なう上で有利となる。
本発明によれば、検査対象物の状態を誤って評価することを回避でき、検査対象物の状態の評価を正確に行なう上で有利となる。
本発明によれば、各マイク毎に生成されたそれぞれの打音検出波形の第1の波形の振幅に対応する2次正規化振幅値を検査対象物の状態評価に用いるようにしたので、検査対象物の内部の剥離の有無及び健全部と剥離部と境界である剥離境界の評価判定を効率よく的確に行なう上で有利となる。
以下、本発明の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置(以下、状態評価装置という)について状態評価方法と共に図面を参照して説明する。
まず、図1を参照して、本実施の形態の状態評価装置10の構成について説明する。
本実施の形態では、状態評価装置10が、検査対象物である建物外面部の状態、すなわち、タイルなどの外装材の浮きや剥がれなどの接着状態を評価する場合について説明する。
なお、本明細書において、検査対象物とは建物や構造物であり、検査対象物が建物であった場合、検査対象物は、建物外面部の他、例えば、室内の床、天井、壁面、室内のコンクリート躯体などを広く含むものである。
また、本明細書において建物外面とは、建物の最も外側に位置する建物の外面をいい、建物外面部とは、タイルやモルタルなどの外装材が設けられていない場合には、建物外面に加え、この建物外面近くの内部の状態を含むものとする。また、建物外面部とは、タイルやモルタルなどの外装材が設けられている場合には、外装材の表面に加え、外装材の表面の内側の外装材部分や外装材の内側の建物躯体の表面や表面近くの内部を含むものとする。
状態評価装置10は、検出ユニット12と、本体ユニット14とで構成されている。
検出ユニット12は、作業者が把持して状態を評価すべき外装材2の表面に当て付けて使用されるものであり、本体ユニット14は、検出ユニット12で検出された打音や振動を表す信号に基づいて外装材2の状態を評価するものである。
検出ユニット12と本体ユニット14とは、前記の信号を伝送する不図示のケーブルによって接続されている。
筐体16は、矩形状の底壁1602と、底壁1602の四辺から起立する4つの側壁1604、1606、1608、1610と、4つの側壁1604、1606、1608、1610の上部を接続する上壁1612とを備えている。
底壁1602には後述するハンマー20が出没する開口1620が設けられている。
3個のローラ18A、18B、18Cのうち、2個のローラ18A、18Bは、底壁1602の対向する一対の端面に回転可能に取着され、同軸上に配置されている。
残りの1個のローラ18Cは、側壁1608の下部に金具17を介して回転可能に取着され、平面視したときにローラ18Cは、2個のローラ18A、18Bの軸線と平行する軸線上に配置されている。
そして、3個のローラ18A、18B、18Cは、それら3個のローラ18A、18B、18Cの外周面が外装材2の表面に当接された状態で底壁1602の下面と外装材2の表面とが一定の間隔をおいて互いに平行するように設けられている。
本実施の形態では、アクチュエータ22としてソレノイド22Aを用いている。
ソレノイド22Aは、筐体16の内部に配置され1つの側壁1606に取着されている。
ソレノイド22Aは、コイルを備えるソレノイド本体2202、3個のローラ18A、18B、18Cが外装材2の表面に当接された状態で外装材2の表面と直交する方向に移動可能に設けられたプランジャ2204とを備えている。
プランジャ2204は、コイルに駆動電力が供給されることでソレノイド本体2202から突出する突出位置に移動され、駆動電力の供給が停止されることでソレノイド本体2202に没入する没入位置に移動されるように構成されている。
図3、図4に示すように、ハンマー20は、プランジャ2204の下端に設けられ、プランジャ2204の移動により底壁1602の開口1620を介して出没する。
3個のローラ18A、18B、18Cの外周面が外装材2の表面に当接された状態で、プランジャ2204が突出位置に移動することでハンマー20が外装材2の表面を打撃し、プランジャ2204が没入位置に移動することでハンマー20が外装材2の表面から離間する。
図2、図3、図4に示すように、第1マイク24Aは、底壁1602の下面に取着され、第2マイク24Bは、側壁1610の外面の下部に防振ゴム23を介して取着されている。
本実施の形態では、第1マイク24A、第2マイク24Bの2つのマイクを備える場合について説明するがマイクの数は1つでも3つ以上であってもよい。
打撃力センサ26は、ハンマー20に取着され、ハンマー20の外装材2への打撃によって発生するハンマー20の振動を検出して振動に対応する検出信号を生成するものである。このような打撃力センサ26として圧電センサなど従来公知の様々なセンサが使用可能である。
操作部32は、作業者によって操作されることで駆動部30に対してコイルへの駆動電力の供給を指示するものであり、押しボタンスイッチなどにより構成されている。
調整部34は、駆動部30を制御してハンマー20に与える駆動力を調節するものである。
本実施の形態では、調整部34は、作業者によって操作されることでソレノイド本体2202のコイルに供給する駆動電力の電圧を増減するものであり、例えば、回転ボリューム(可変抵抗器)などにより構成されている。
このようにハンマー20に与える駆動力を調節可能とすることで、検査対象物の状態や材料に応じて適切な音圧の打音が得られるようにハンマー20の打撃力を調整できるように図られている。
本実施の形態では、ハンマー20、アクチュエータ22、駆動部30、操作部32、調整部34によって特許請求の範囲の打撃部が構成されている。
なお、本実施の形態では、検出回路36が第1マイク24Aおよび第2マイク24Bで検出された検出信号によって打音検出波形を生成する場合について説明するが、第1マイク24Aおよび第2マイク24Bの何れか一方のみを用いてもよい。しかしながら、本実施の形態のように2つのマイクを用いて検出信号を生成すると打音を確実に検出する上で有利となる。
また、マイクの数は1つであっても3つ以上であってもよい。
本実施の形態では、検出回路36、サンプリング部40によって特許請求の範囲の波形生成部が構成されている。
なお、第1の波形は、その振幅が大きいほど、振幅の値、あるいは、波長の値を正確に計測する上で有利となる。したがって、本実施の形態では、打音検出波形のうち最初に発生する1周期分の波形が2番目以降の波形に比較して振幅が大きく、そのため、打音検出波形のうち最初に発生する1周期分の波形を第1の波形とした場合について説明する。
しかしながら、第1マイク24A、第2マイク24B、検出回路36の特性、検出時の環境、あるいは、検査対象物の状態などの諸条件によっては、打音検出波形のうち2番目以降に発生する波形が最も振幅が大きなものとなる場合がある。
したがって、その場合は、2番目以降に発生する振幅が最も大きくなる波形を第1の波形とすればよい。
なお、本実施の形態では、第1の波形の振幅は、第1の波形の最大値と最小値との差分の絶対値とした。しかしながら、第1の波形の振幅は、振幅の基準値(0V)を基準として第1の波形の1周期のうち前半の波形のピーク値(極値)の絶対値としてもよく、あるいは、第1の波形の1周期のうち後半の波形のピーク値(極値)の絶対値としてもよい。
本実施の形態では、打撃力検出波形のうち最初に発生する1周期分の波形を第2の波形とする。
振幅値検出部44は、打撃力検出波形サンプリング部42から供給される打撃力検出波形に基づいて前記の基準時刻を決定する。
振幅値検出部44による第1の波形の振幅値の検出は、サンプリング部40によりサンプリングされた波形データのうち基準時刻よりも前の時点からサンプリングされた波形データに基づいてなされる。
このようにすることで第1の波形を確実に検出する上で有利となる。
したがって、本実施の形態では、打撃力センサ26と、打撃力検出波形検出回路38(打撃力波形生成部)と、打撃力検出波形サンプリング部42と、最大打撃力特定部46とによって、ハンマー20による打撃時にハンマー20に生じる打撃力の最大値である最大打撃力を検出する最大打撃力検出部が構成されている。
ハンマー20の打撃力は、アクチュエータ22の動作状態や検出ユニット12の設置状態などの影響を受けることから、ある程度の範囲でばらつくことがある。
そこで、第1の波形の振幅値を最大打撃力で除すことで振幅値を正規化した1次正規化振幅値を得ることにより振幅値に対する打撃力のばらつきの影響の抑制が図られている。
図5(A)、(B)に標準試験体の一例を示す。
標準試験体58は、本体部5802と、閉塞板5804とを含んで構成されている。
本体部5802は、平面視正方形の扁平な板状を呈しており、例えば、一辺の長さが300mm、高さが60mmである。
本体部5802の中央には、高さ方向に沿って円形の孔5806が貫通形成されており、例えば、孔5806の内径は160mmである。
本実施の形態では、本体部5802の材料としてコンクリートを用いたが、金属材料、合成樹脂材料など従来公知の様々なソリッドな材料が使用可能である。
本実施の形態では、閉塞板5804の材料としてガラスを用いたが、コンクリート、金属材料、合成樹脂材料など従来公知の様々なソリッドな材料が使用可能である。
閉塞板5804は、本体部5802と輪郭を合致させた状態で本体部5802の上面に重ね合わされた状態で閉塞板5804の下面と本体部5802の上面とが接着剤により接着され固定されている。
接着剤は、本体部5802の上面の全域と閉塞板5804の下面との間に介在している。
本実施の形態では、接着剤としてエポキシ系接着剤を用いたが、接着剤としてシリコーン樹脂系接着剤、変性シリコーン樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、ゴム系接着剤など従来公知の様々な接着剤が使用可能である。
このように構成された標準試験体58によれば、閉塞板5804ががたつくことなく本体部5802にしっかりと固定されているので、状態評価装置10を用いてハンマー20により打撃目標点5808を打撃したときに閉塞板5804の箇所から発生する打音のばらつきが少なく、したがって、打音検出波形の振幅のばらつきが抑制されたものとなる。
このような標準試験体58を予め用意しておく。
すなわち、作業者が状態評価装置10を用いて標準試験体58の打撃目標点5808をハンマー20で打撃して振幅値検出部44で振幅値を検出し1次正規化振幅値算出部48で1次正規化振幅値を算出する処理を複数回繰り返することで、複数の1次正規化振幅値を得る。
基準振幅値決定部50は、得られた複数の1次正規化振幅値の平均値を算出し、平均値を基準振幅値として決定する。
2次正規化振幅値を用いる理由は以下の通りである。
状態評価装置10を構成するマイク24A、24Bは、感度に個体差があり、同一音圧の打音を検出しても出力する検出信号の大きさにばらつきがある。
そこで、1次正規化振幅値算出部48で算出された1次正規化振幅値を、基準振幅値で除すことによって正規化された2次正規化振幅値を求めると、マイク24A、24Bの感度のばらつきの影響を受けることなく、同一音圧の打音を検出すると同一の2次正規化振幅値を得ることができる。
詳細に説明すると、評価部54は、2次正規化振幅値と予め定められた第1のしきい値との比較結果に基づいて検査対象物すなわち外装材2の内側の剥離の有無を判定する。
図6は、外装材2の状態と外装材2の打音の音圧との関係を示す線図であり、言い換えると打音検出波形を示す。図6において、横軸は外装材2をハンマー20で打撃してからの経過時間(μs)を示し、縦軸は打音の音圧(Pa)を示す。
ハンマー20で打撃する外装材2の箇所として以下の4箇所を選んでいる。
なお、本明細書において、外装材2の健全部とは建物躯体に対する外装材2の接着状態が良好で剥離が無い部分を示し、外装材2の剥離部とは外装材2が部分的に建物躯体から剥離した部分を示す。
a:健全部
b:健全部きわ(健全部のうち外装材2が建物躯体から剥離した剥離部に近接した部分)
c:剥離部きわ(剥離部のうち健全部に近接した部分)
d:剥離部
図6から明らかなように、a健全部、b健全部きわの打音検出波形の振幅に対して、c剥離部きわ、d剥離部の打音検出波形の振幅が大きな値となっていることがわかる。
このような知見から第1の波形の振幅に対応する2次正規化振幅値と予め定められた第1のしきい値との比較結果に基づいて外装材2の剥離の有無を判定することが可能となる。
なお、第1のしきい値は、図6のように、外装材2の接着状態、言い換えると、外装材2の剥離の有無のそれぞれに対応した2次正規化振幅値を求め、外装材2の剥離を確実に判定するに足る第1のしきい値を設定すればよい。
あるいは、外装材2の健全部において2次正規化振幅値を求め、その2次正規化振幅値に予め定められた定数を乗算しあるいは定数を加算するなどして第1のしきい値を設定すればよい。
すなわち、何らかの原因によってハンマー20による外装材2の表面に対する打撃がなされなかった場合(空打ち)か、打撃が不十分であった場合には、外装材2の状態の評価を中止することで、外装材2の状態の評価を正確に行なう上で有利となる。
なお、第2のしきい値は、ハンマー20により外装材2の表面を打撃した場合と、空打ちした場合とのそれぞれで検出された最大打撃力を実測し、外装材2に対して正確に打撃がなされた状態と、空打ちあるいは不十分な打撃がなされた状態とを確実に判定するに足る第2のしきい値を設定すればよい。
出力部56として以下のものが例示される。
判定結果を表示するディスプレイ装置。
判定結果を印刷媒体に印刷するプリンタ装置。
判定結果を記録媒体に記録する記録装置。
判定結果を回線を介して各種端末装置やデータロガーに送信する通信装置。
コンピュータは、CPU、ROM、RAM、ハードディスク装置、キーボード、マウス、ディスプレイ装置、入出力インターフェースなどを有している。
ROMは所定の制御プログラムなどを格納し、RAMはワーキングエリアを提供するものである。
ハードディスク装置は、最大打撃力特定部46、1次正規化振幅値算出部48、基準振幅値算出部50、2次正規化振幅値算出部52、評価部54を実現するための制御プログラムを格納している。
キーボードおよびマウスは、操作者による操作入力を受け付けるものである。
ディスプレイ装置は、画像を表示するものであり、例えば、液晶表示装置などで構成される。ディスプレイ装置は出力部56として機能させることができる。
まず、標準試験体58を用いた基準振幅値の決定について図7のフローチャートを参照して説明する。
まず、状態評価装置10の検出ユニット12を標準試験体58の閉塞板5804の上に載置し、ハンマー20が打撃目標点5808の直上に位置するように位置決めする(ステップS10)。
次に、作業者は、操作部32を操作し(ステップS12)、これによりハンマー20が閉塞板5804の打撃目標点5808を打撃する(ステップS14)。
ハンマー20が閉塞板5804の打撃目標点5808を打撃することで発生した打音は、第1マイク24A、第2マイク24Bによって検出され、それら2つのマイクから生成された検出信号に基づいて検出回路36により打音検出波形が生成され、生成された打音検出波形はサンプリング部40によってサンプリングされ、サンプリングされた波形データは振幅値検出部44に供給される(ステップS16)。
振幅値検出部44は、供給された波形データに基づいて第1の波形の振幅値を検出する(ステップS18)。
また、最大打撃力特定部46は、ハンマー20に生じる最大打撃力を特定し(ステップS20)、1次正規化振幅値算出部48は、第1の波形の振幅値を最大打撃力で除すことで1次正規化振幅値を算出する(ステップS22)。
基準振幅値決定部50は、基準振幅値を決定するため1次正規化振幅値算出部48による1次正規化振幅値の算出動作が所定回数なされたか否かを判定する(ステップS24)。
判定結果が否定であれば、基準振幅値決定部50は、操作部32の操作が必要である旨をディスプレイ装置に表示させ、これにより制御はステップS12に戻る。
判定結果が肯定であれば、基準振幅値決定部50は、1次正規化振幅値の平均値を算出し基準振幅値を決定し、基準振幅値を1次正規化振幅値算出部48に供給する(ステップS26)。
以上で基準振幅値の決定動作が終了する。
まず、作業者は、検出ユニット12の3個のローラ18A、18B、18Cを診断対象となる外装材2の表面に当接させる(ステップS30)。
次に、作業者は、操作部32を操作し(ステップS32)、これにより打撃部20が外装材2の表面を打撃する(ステップS34)。
打撃部20が外装材2の表面を打撃することで発生した打音は、第1マイク24A、第2マイク24Bによって検出され、それら2つのマイクから生成された検出信号に基づいて検出回路36により打音検出波形が生成され、生成された打音検出波形はサンプリング部40によってサンプリングされ振幅値検出部44に供給される(ステップS36)。
また、打撃部20が外装材2の表面を打撃することでハンマー20で発生した打撃力は、打撃力センサ26によって検出され、打撃力センサ26から生成された検出信号に基づいて打撃力検出波形検出回路38により打撃力検出波形が生成され、打撃力検出波形は、打撃力検出波形サンプリング部42によってサンプリングされ、サンプリングされた波形データは振幅値検出部44に供給され、これにより振幅値検出部44は基準時刻を決定する(ステップS38)。
最大打撃力特定部46は、サンプリングされた打撃力検出波形に基づいて最大打撃力を特定し1次正規化振幅値算出部48に供給する(ステップS42)。
1次正規化振幅値算出部48は、第1の波形の振幅値を最大打撃力で除して1次正規化振幅値を算出する(ステップS44)。
2次正規化振幅値算出部52は、1次正規化振幅値算出部48から供給された1次正規化振幅値を基準振幅値で除して2次正規化振幅値を算出し評価部54に供給する(ステップS46)。
最大打撃力が予め定められた第2のしきい値未満であると判定された場合には、評価部54は、外装材2の状態の評価を中止し、出力部56から測定のやり直しを促す旨の報知を行なう(ステップS54)。このような報知は例えばディスプレイ装置により所定のやり直しを促す旨のコメントを表示することでなされる。
そして、ステップS30に移行する。
一方、ステップS48で最大打撃力が予め定められた第2のしきい値未満でないと判定された場合には、評価部54は、2次正規化振幅値と第1のしきい値との比較に基づいて外装材2の剥離の有無の判定を行なう(ステップS50)。
出力部56は、評価部54から供給された外装材2の剥離の有無の判定結果を出力し(ステップS52)、一連の動作を終了する。これ以降、次の診断対象となる外装材2について上記と同様の処理を繰り返して行なう。
したがって、1次正規化振幅値は、第1の波形の振幅値を最大打撃力で除すことによって正規化されている。そのため、1次正規化振幅値は、ハンマー20による外装材2の表面の打撃動作毎に発生するハンマー20の打撃力のばらつきの影響を受けない。
また、2次正規化振幅値は、1次正規化振幅値を、標準試験体に基づいて求めた基準振幅値で除すことによって正規化されている。そのため、2次正規化振幅値は、状態評価装置10毎のばらつきの影響を受けて、生成された打音検出波形の振幅が状態評価装置10毎にばらついたとしても、2次正規化振幅値は、状態評価装置10毎のばらつきの影響を受けない。
したがって、1台の状態評価装置10による検査対象物の状態の評価を行なう毎に生じるハンマー20の打撃力のばらつき、および、状態評価装置10毎のばらつきの双方の影響を受けること無く、検査対象物の状態の評価を正確に行なう上で有利となる。
したがって、第1の波形を正確に得ることができ、外装材2の状態の診断を正確に行なう上で有利となる。
なお、駆動部30からソレノイド22Aに供給される駆動信号からトリガ信号を生成し、検出回路36によって生成された打音検出波形をサンプリング部40でトリガ信号に同期してサンプリングして第1の波形を得るようにしてもよいが、駆動信号は時間的なばらつきがあるため、第1の波形を安定して正確に得る上で不利となる。
これに対して、本実施の形態のようにすると、打撃力検出波形から生成された第2の波形から得た基準時刻よりも前の時点からサンプリングされた波形データによって第1の波形を得ることができるため、第1の波形を安定して正確に得る上でより有利となる。
したがって、ハンマー20による外装材2の表面に対する打撃がなされなかった場合(空打ち)か、打撃が不十分であった場合には、外装材2の状態の評価を中止することにより、誤った評価を行なうことが回避でき、外装材2の状態の評価を正確に行なう上で有利となる。
次に第2の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態では、ハンマー20やアクチュエータ22の部分から発生する不要な音をマイク20A、20Bが検出しないようにするために、マイク20A、20Bをハンマー20の外装材2(例えばタイル)への打点から一定の距離(例えばタイル一枚分に相当する距離)離した位置に配置することが好ましい。
そのため、検査対象物が多数のタイルから構成されている場合は、以下のような点が懸念される。
すなわち、タイルの打点がタイルの剥離箇所であるにもかかわらず、音をピックアップするマイクの位置が剥離のない健全部の真上にある場合、マイク20A、20Bからは健全部と同等の打音検出信号、すなわち、健全部の場合と同程度に小さい振幅の打音検出信号しか出力されない場合がある。
その結果、タイルの剥離箇所を健全部と誤判定するおそれがあり、このような誤判定は、健全部と剥離部との境界付近で発生しやすい傾向となることから、剥離境界の様相をより正確に把握することで正確な検査対象物の状態評価を行なう必要がある。
そして、第1の実施の形態と同様に各打音検出波形から検出される第1の波形の振幅値から第1の正規化振幅値をそれぞれ求め、それら第1の正規化振幅値から第2の正規化振幅値をそれぞれ求め、それら複数の第2の正規化振幅値に基づいて検査対象物の状態の評価を行なうようにした。
図9に示すように、第1の実施の形態と同様に、状態評価装置10Aは、検出ユニット12Aと、本体ユニット14Aとで構成されている。
なお、本実施の形態では、打撃点P1から各マイク25A〜25Dまでの距離を53mmとした場合について説明するが、これに限らず、100mm以内であればよい。
第2のマイク25Bは、図10、図12に示すように、筐体16を構成する後面側の側壁1606の外面下部に防振ゴム23を介して取着されている。
第3のマイク25Cは、図11、図12に示すように、筐体16を構成する左面側の側壁1608の外面下部に防振ゴム23を介して取着されている。
第4のマイク25Dは、図10、図11、図12に示すように、筐体16を構成する右面側の側壁1610の外面下部に防振ゴム23を介して取着されている。
本実施の形態では、第1のマイク25A、第2のマイク25B、第3のマイク25C及び第4のマイク25Dの4つのマイクを備える場合について説明するが、マイクの数は2つまたは6つ乃至それ以上であってもよい。
また、各マイク25A〜25Dの受音面は、外装材2の検査対象面である表面に対して正対するように配置されており、外装材2の表面から各マイク25A〜25Dまでの高さは5mm以内であることが望ましい。
第1〜第4のサンプリング部40A〜40Dは、第1〜第4の検出回路36A〜36Dによって生成された打音検出波形を予め定められたサンプリング周期でサンプリングするものである。
本実施の形態では、第1〜第4の検出回路36A〜36D、第1〜第4のサンプリング部40A〜40Dが特許請求の範囲の波形生成部を構成している。
なお、第1〜第4の振幅値検出部44A〜44Dによる第1の波形の振幅値の検出は、第1〜第4のサンプリング部40A〜40Dによりサンプリングされたそれぞれの波形データのうち基準時刻よりも前の時点からサンプリングされた波形データに基づいてなされることは第1の実施の形態と同様である。
すなわち、第1〜第4の基準振幅値決定部50A〜50Dは、第1〜第4のマイク25A〜25Dのそれぞれに対応して基準振幅値を決定するものであり、第1〜第4の基準振幅値決定部50A〜50Dの動作は第1の実施の形態の基準振幅値決定部50と同様である。
すなわち、第1〜第4の2次正規化振幅値算出部52A〜52Dは、第1〜第4のマイク25A〜25Dのそれぞれに対応して第2正規化振幅値を算出するものであり、第1〜第4の2次正規化振幅値算出部52A〜52Dの動作は第1の実施の形態の2次正規化振幅値算出部52と同様である。
図6で説明したように、健全部a、健全部きわb、剥離部きわc、剥離部dの打音検出波形をそれぞれ打音検出波形a、b、c、dとした場合、健全部aの打音検出波形a、健全部きわbの打音検出波形bの振幅に対して、剥離部きわcの打音検出波形c、剥離部dの打音検出波形dの振幅が大きな値となっていることがわかる。
このような知見から第1の波形の振幅に対応する2次正規化振幅値と予め定められた第1のしきい値との比較結果に基づいて、第1〜第4のマイク25A〜25Dがそれぞれ対向する箇所の外装材2の剥離の有無の判定を行なうと共に、外装材2の健全部と剥離部の剥離境界を判定することが可能となる。
したがって、本実施の形態では、評価部54は、第1〜第4のマイク25A〜25Dで検出された各打音検出波形に対応する2次正規化振幅値と、予め定められた第1のしきい値との比較結果に基づいて検査対象物の内側の剥離の有無を判定し、また、検査対象物の健全部と剥離部の剥離境界を判定する。
まず、状態評価装置10の検出ユニット12Aを標準試験体58の閉塞板5804の上に載置し、ハンマー20が打撃目標点5808の直上に位置するように位置決めする(ステップS60)。
この際、平面視した状態で第1〜第4のマイク25A〜25Dが図14(A)に示す2本の中心線CL1、CL2と一致するように、検出ユニット12Aの位置決めを行なう。
なお、第1〜第4のマイク25A〜25Dと、標準試験体58の第1、第2中心線CL1、CL2との位置関係は、図14(A)〜(D)に示すように、90°ずつ位相が異なる4種類の位置関係が存在する。
そこで、本実施の形態では、4種類の位置関係のそれぞれで第1〜第4のマイク25A〜25Dのそれぞれから第1の波形の振幅値を得るようにする。
ハンマー20が閉塞板5804の打撃目標点5808を打撃することで発生した打音は、第1〜第4のマイク25A〜25Dによって検出され、それら4つのマイクから生成された検出信号に基づいて第1〜第4の検出回路36A〜36Dにより打音検出波形がそれぞれ生成され、生成された各打音検出波形は第1〜第4のサンプリング部40A〜40Dによってサンプリングされ、サンプリングされた各波形データは第1〜第4の振幅値検出部44A〜44Dに供給される(ステップS66)。
第1〜第4の振幅値検出部44A〜44Dは、供給された各波形データに基づいて第1〜第4のマイク25A〜25Dに対応する第1の波形の振幅値をそれぞれ検出する(ステップS68)。
また、最大打撃力特定部46は、ハンマー20に生じる最大打撃力を特定し(ステップS70)、第1〜第4の1次正規化振幅値算出部48A〜48Dは、第1の波形の振幅値を最大打撃力で除すことで1次正規化振幅値をそれぞれ算出する(ステップS72)。
第1〜第4基準振幅値決定部50A〜48Dは、基準振幅値を決定するための第1〜第4の1次正規化振幅値算出部48A〜48Dによる1次正規化振幅値の算出動作が所定回数なされたか否かを判定する(ステップS74)。
判定結果が否定であれば、第1〜第4基準振幅値決定部50A〜48Dは、操作部32の操作が必要である旨をディスプレイ装置に表示させ、これにより制御はステップS62に戻る。
次に、作業者は、第1〜第4のマイク25A〜25Dと、標準試験体58の第1、第2中心線CL1、CL2との4種類の位置関係の全てについて第1の振幅値の検出動作がなされたか否かを判定する(ステップS76)。
ステップS76の判定結果が否定であれば、検出ユニット12Aを90°回転させ(ステップS78)、ステップS62に戻る。
ステップS76の判定結果が肯定であれば、第1〜第4の基準振幅値決定部50A〜48Dは、各振幅値の平均値を算出して第1〜第4のマイク25A〜25Dのそれぞれに対応する基準振幅値を決定し、各基準振幅値を第1〜第4の1次正規化振幅値算出部48A〜48Dに供給する(ステップS80)。
以上で基準振幅値の決定動作が終了する。
なお、本実施の形態では、第1〜第4のマイク25A〜25Dと、標準試験体58の第1、第2中心線CL1、CL2との位置関係の位相を90°ずつ変えて第1の波形の振幅値を複数個得るとともに、マイク毎に第1の波形の振幅値を平均化して各基準振幅値を決定したので、標準試験体58の形状や構造の影響が抑制された基準振幅値を得る上で有利となる。
まず、作業者は、検出ユニット12Aの3個のローラ18A、18B、18Cを診断対象となる外装材2の表面に当接させる(ステップS100)。
次に、作業者は、操作部32を操作し(ステップS102)、これにより打撃部20が外装材2の表面を打撃する(ステップS104)。
打撃部20が外装材2の表面を打撃することで発生した打音は、第1〜第4のマイク25A〜25Dによって検出され、それら4つのマイクから生成された検出信号に基づいて第1〜第4の検出回路36A〜36Dによりそれぞれ打音検出波形が生成され、生成された各打音検出波形は第1〜第4のサンプリング部40A〜40Dによってサンプリングされ第1〜第4の振幅値検出部44A〜44Dに供給される(ステップS106)。
また、打撃部20が外装材2の表面を打撃することでハンマー20で発生した打撃力は、打撃力センサ26によって検出され、打撃力センサ26から生成された検出信号に基づいて打撃力検出波形検出回路38により打撃力検出波形が生成され、生成された打撃力検出波形は打撃力検出波形サンプリング部42によってサンプリングされ第1〜第4の振幅値検出部44A〜44Dに供給される(ステップS108)。
最大打撃力特定部46は、サンプリングされた打撃力検出波形に基づいて最大打撃力を特定し第1〜第4の1次正規化振幅値算出部48A〜48Dに供給する(ステップS112)。
第1〜第4の1次正規化振幅値算出部48A〜48Dは、第1〜第4のマイク25A〜25Dに対応する第1の波形の振幅値を最大打撃力で除して第1〜第4のマイク25A〜25Dに対応する1次正規化振幅値を算出する(ステップS114)。
第1〜第4の2次正規化振幅値算出部52A〜52Dは、第1〜第4の1次正規化振幅値算出部48A〜48Dから供給された第1〜第4のマイク25A〜25Dに対応する1次正規化振幅値を基準振幅値で除して第1〜第4のマイク25A〜25Dに対応する2次正規化振幅値を算出し評価部54に供給する(ステップS116)。
最大打撃力が予め定められた第2のしきい値未満であると判定された場合には、評価部54は、外装材2の状態の評価を中止し、出力部56から測定のやり直しを促す旨の報知を行なう(ステップS124)。このような報知は例えばディスプレイ装置により所定のやり直しを促す旨のコメントを表示することでなされる。
そして、ステップS100に移行する。
一方、ステップS118で最大打撃力が予め定められた第2のしきい値未満でないと判定された場合には、評価部54は、第1〜第4のマイク25A〜25Dに対応する2次正規化振幅値と第1のしきい値との比較に基づいて外装材2の剥離の有無の判定を行なう(ステップS120)。
出力部56は、評価部54から供給された外装材2の剥離の有無の判定結果を出力し(ステップS122)、一連の動作を終了する。これ以降、次の診断対象となる外装材2について上記と同様の処理を繰り返して行なう。
図16は、建物外面部にタイルが貼り付けられている部分の正面図であり、検出ユニット12Aを4箇所の異なる位置P10〜P13に位置させた状態を示している。
より詳細に説明すると、建物のコンクリート躯体4の外表面には、外装材2が設けられている。
外装材2は、コンクリート躯体4の外表面に層状に設けられた下地モルタル202と、下地モルタル202の外表面に張り付け材204により張り付けられたタイル206とを備えている。
また、図16は、コンクリート躯体4の外表面と下地モルタル202との間に剥離部8が発生している場合を示しており、L1は剥離部8と健全部6との境界を表わす剥離境界線を示している。
図中、ハッチングが無い部分が健全部6であり、ハッチングが有る部分が剥離部8である。
図17は、図16のAA線断面図である。
図18(A)〜(D)は検出ユニット12Aの位置P10〜P13に対応して検出された第1〜第4のマイク25A〜25Dに対応する4つの打音検出波形を示す波形図である。
なお、説明の都合上、図18(A)〜(C)に比較して図18(D)は時間軸(横軸)の単位距離当たりの時間(μs)を拡大して記載している。
また、図18(A)〜(C)では、4つの打音検出波形の振幅が非常に小さいため、4つの打音検出波形が重なり合って表示されている。
したがって、各マイクの打音検出波形に対応して得られる2次正規化振幅値と第1のしきい値との比較に基づいて打撃点P1が健全部6に位置していることがわかる。
(2)検出ユニット12Aが位置P11に位置し、打撃点P1および第2〜第4のマイク25B〜25Dが健全部6に位置し、第1のマイク25Aが剥離部8きわに位置している場合、図18(B)に示すように、第2〜第4のマイク25B〜25Dの打音検出波形は振幅が小さいものとなっており、第1のマイク25Aの打音検出波形は他の3つのマイクの打音検出波形の振幅よりも僅かに振幅が大きくなっているものの、その差は無視できる程度である。
したがって、各マイクの打音検出波形に対応して得られる2次正規化振幅値と第1のしきい値との比較に基づいて打撃点P1が健全部6に位置していることがわかる。
(3)検出ユニット12Aが位置P12に位置し、打撃点P1および第2〜第4のマイク25B〜25Dが健全部6に位置し、第4のマイク25Dが剥離部8きわに位置している場合、図18(C)に示すように、第1〜第3のマイク25A〜25Cの打音検出波形は振幅が小さいものとなっており、第4のマイク25Dの打音検出波形は他の3つのマイクの打音検出波形の振幅よりも僅かに振幅が大きくなっているものの、その差は無視できる程度である。
したがって、各マイクの打音検出波形に対応して得られる2次正規化振幅値と第1のしきい値との比較に基づいて打撃点P1が健全部6に位置していることがわかる。
(4)検出ユニット12Aが位置P13に位置し、打撃点P1および第2、第3のマイク25B、25Cが剥離部8に位置し、第1のマイク25A、第4のマイク25Dが健全部6に位置している場合、図18(D)に示すように、第1、第4のマイク25A、25Dの打音検出波形の振幅に比較して、第2、第3のマイク25B、25Cの打音検出波形の振幅が顕著に大きくなっており、振幅の差が明瞭にあらわれている。
したがって、各マイクの打音検出波形に対応して得られる2次正規化振幅値と第1のしきい値との比較に基づいて打撃点P1が剥離部8に位置していることが判定される。
言い換えると、第1〜第4のマイク25A〜25Dの打音検出波形に対応して得られる2次正規化振幅値と第1のしきい値との比較に基づいて、打撃点P1が健全部6、剥離部8の何れに位置しているか判定するようにした。
したがって、第1の実施の形態と同様の効果が奏されることは無論のこと、外装材2の剥離の有無及び外装材2の健全部6と剥離部8と境界である剥離境界の評価判定を効率よく的確に行なう上で有利となる。
さらに、本発明は、建物の室内の床、天井、壁面、室内のコンクリート躯体などを評価する場合に広く適用可能である。
また、本発明は、検査対象物が建物に限定されず、高架橋やダムなどの構造物などを評価する場合に広く適用可能である。
10、10A 状態評価装置
20 ハンマー
22 アクチュエータ
24A 第1のマイク
24B 第2のマイク
25A 第1のマイク
25B 第2のマイク
25C 第3のマイク
25D 第4のマイク
26 打撃力センサ
30 駆動部
32 操作部
34 調整部
36 検出回路
36A 第1の検出回路
36B 第2の検出回路
36C 第3の検出回路
36D 第4の検出回路
38 打撃力検出波形検出回路
40 サンプリング部
40A 第1のサンプリング部
40B 第2のサンプリング部
40C 第3のサンプリング部
40D 第4のサンプリング部
42 打撃力検出波形サンプリング部
44 振幅値検出部
44A 第1の振幅値検出部
44B 第2の振幅値検出部
44C 第3の振幅値検出部
44D 第4の振幅値検出部
46 最大打撃力特定部
48 1次正規化振幅値算出部
48A 第1の1次正規化振幅値算出部
48B 第2の1次正規化振幅値算出部
48C 第3の1次正規化振幅値算出部
48D 第4の1次正規化振幅値算出部
50 基準振幅値決定部
50A 第1の基準振幅値決定部
50B 第2の基準振幅値決定部
50C 第3の基準振幅値決定部
50D 第4の基準振幅値決定部
52 2次正規化振幅値算出部
52A 第1の2次正規化振幅値算出部
52B 第2の2次正規化振幅値算出部
52C 第3の2次正規化振幅値算出部
52D 第4の2次正規化振幅値算出部
54 評価部
56 出力部
58 標準試験体
Claims (8)
- 検査対象物をハンマーで打撃する打撃部と、
打音を検出するマイクと、
前記マイクからの信号に基づいて打音検出波形を生成する波形生成部と、
前記ハンマーによる打撃時に前記ハンマーに生じる打撃力の最大値である最大打撃力を検出する最大打撃力検出部と、
前記打音検出波形を構成する複数の1周期の波形のうちN番目(Nは1以上の自然数)の波形を第1の波形としたとき、前記第1の波形の振幅値を検出する振幅値検出部と、
前記検出された振幅値を前記最大打撃力で除すことで1次正規化振幅値を算出する1次正規化振幅値算出部と、
前記検査対象物とは別物で予め定められた標準試験体を前記ハンマーで打撃した場合に前記1次正規化振幅値算出部で算出された前記1次正規化振幅値を基準振幅値としたとき、前記1次正規化振幅値算出部で算出された前記1次正規化振幅値を前記基準振幅値で除すことで2次正規化振幅値を算出する2次正規化振幅値算出部と、
前記2次正規化振幅値に基づいて検査対象物の状態を評価する評価部と、
を備え、
前記マイクは、前記ハンマーを中心にして当該中心から等距離で対称に配置された複数のマイクで構成され、
前記波形生成部、前記振幅値検出部、前記1次正規化振幅値算出部、前記2次正規化振幅値算出部は、前記各マイクに対応して1つずつ設けられ、
前記各1次正規化振幅値算出部による前記1次正規化振幅値の算出は、前記各マイクに対応して検出された前記基準振幅値を用いてなされ、
前記評価部による検査対象物の状態の評価は、前記各2次正規化振幅値算出部で算出された前記2次正規化振幅値に基づいてなされる、
ことを特徴とする検査対象物の状態評価装置。 - 前記評価部は、前記2次正規化振幅値と予め定められた第1のしきい値との比較結果に基づいて前記検査対象物の内側の剥離の有無を判定する、
ことを特徴とする請求項1記載の検査対象物の状態評価装置。 - 前記ハンマーにより前記標準試験体を打撃して前記振幅値検出部による前記振幅値の検出を複数回行なうことで得られた複数の前記1次正規化振幅値の平均値を前記基準振幅値として決定する基準振幅値決定部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1または2記載の検査対象物の状態評価装置。 - 前記打撃部は、前記ハンマーと、前記ハンマーに打撃方向の駆動力を加えるアクチュエータと、前記アクチュエータを駆動する駆動部と、前記駆動部を制御して前記駆動力を調節する調整部と、
を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の検査対象物の状態評価装置。 - 前記最大打撃力検出部は、
前記ハンマーの打撃力を検出する打撃力センサと、
前記打撃力センサの信号から打撃力検出波形を生成する打撃力波形生成部と、
前記打撃力検出波形をサンプリングする打撃力検出波形サンプリング部と、
前記サンプリングされた打撃力検出波形から前記最大打撃力を特定する最大打撃力特定部とを備えている、
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の検査対象物の状態評価装置。 - 前記波形生成部は、前記打音検出波形をサンプリングして波形データとしてサンプリングするサンプリング部を備え、
前記打撃力検出波形のうち前記打音検出波形の前記第1の波形を発生させる1周期分の波形を第2の波形とし、前記第2の波形の最大値または最小値のうち時間的に早い方の値に対応する時刻を基準時刻としたとき、
前記振幅値検出部による前記第1の波形の振幅値の検出は、前記サンプリング部によりサンプリングされた前記波形データのうち前記基準時刻よりも前の時点からサンプリングされた前記波形データに基づいてなされる、
ことを特徴とする請求項5記載の検査対象物の状態評価装置。 - 前記評価部は、前記最大打撃力が予め定められた第2のしきい値未満であるときに前記検査対象物の状態の評価を中止する、
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項記載の検査対象物の状態評価装置。 - 検査対象物をハンマーで打撃したときの打音を前記ハンマーを中心にして当該中心から等距離で対称に配置された複数のマイクで検出し、
前記複数のマイクからの信号に基づいて打音検出波形を前記各マイクに対応して生成し、
前記ハンマーによる打撃時に前記ハンマーに生じる最大打撃力を検出し、
前記各マイクに対応して生成された前記打音検出波形を構成する複数の1周期の波形のうちN番目(Nは1以上の自然数)の波形を第1の波形としたとき、前記第1の波形の振幅値を前記各マイクに対応して検出し、
前記各マイクに対応して前記検出された振幅値を前記最大打撃力で除すことで1次正規化振幅値を前記各マイクに対応して算出し、
前記検査対象物とは別物で予め定められた標準試験体を前記ハンマーで打撃した場合に前記各マイクに対応して算出された前記1次正規化振幅値を前記各マイクに対応した基準振幅値として決定し、前記各マイクに対応して算出された前記1次正規化振幅値を前記各マイクに対応して決定された前記基準振幅値で除すことで前記各マイクに対応して2次正規化振幅値を算出し、
前記各マイクに対応して算出された前記2次正規化振幅値に基づいて検査対象物の状態を評価する、
ことを特徴とする検査対象物の状態評価方法。
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