JP2012013631A - 鋼管等の内部判別方法およびその判別装置 - Google Patents

鋼管等の内部判別方法およびその判別装置 Download PDF

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俊良 岡村
Seiji Kuroda
清次 黒田
Yasuhiro Matsuo
康博 松尾
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Abstract

【課題】 既設の鉄塔等の部材内部のコンクリート等の充填材の充填状態を簡便な方法にて正確に判別できる鋼管等の内部判別方法およびその判別装置を提供する。
【解決手段】 部材表面への打撃により発生させた弾性波を解析することにより部材内における内部を判別する鋼管等の内部判別方法において、鋼管等の部材1の打撃側とその反対側で測定した振動の伝播時間の長短比較により、部材1における内部空洞1bの有無を判別することにより、鋼管等部材1の外部での打撃による加振のみの作業だけで、部材1の打撃側とその反対側で例えばAEセンサ3、2で測定した振動の伝播時間の長短を比較して、X線照射資格や内視鏡等の挿入も不要で、簡便に短時間で容易かつ正確な鋼管等の内部の空洞の有無の判別が可能となる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、既設の鉄塔等の構造物に用いられている鋼管部材におけるその部材内部のコンクリート充填状態(完全または中心部が空洞か、あるいは全くの空洞か)を判別するための判別方法およびそれに用いる判別装置に関する。
従来、鉄塔等の構造物に鋼管等が用いられる場合に、鋼管内部にコンクリートやモルタル等を充填して補強することがあった。このような充填部材の充填状態としては、内部を完全に埋める場合と、中心部に空洞を残す場合とがあった。しかし、建設時から多年を経過している既設の鉄塔等においては設計資料等が消失している場合も多く、充填状態の判別が外部からの正確な判断は困難であった。
これらの鋼管等の内部の充填状態の判別方法としては、従来、鉄塔上部から内視鏡等を挿入して確認する方法があったが、そのために、部材内に内視鏡を送り込むための装置をウインチ等を用いて主柱部材の頂部フランジに設置する等の対策が必要であり、また、部材の一部が完全充填鋼管から構成されていた場合には、それ以上の内視鏡の進行が不可能となって判別不能に陥ることがあった。そこで、本件出願人による下記特許文献1に開示されたようなX線照射方法や、下記特許文献2に開示された弾性波受信センサを用いたものが提案された。
特開2005−257610号公報(要約書参照) 特開2003−57024号公報(要約書参照)
前記特許文献1に開示されたX線照射方法では、対象物にX線を照射することにより、対象物の部材内部が充填されているかどうかを判別する方法であるが、装置自体がやや大型化する他、塔上部での作業が些か困難である上、装置の操作は有資格者に限られてしまった。また、放射線作業区域を設けて撮影フィルムの判別に時間を要する等、現場での判別作業に限界があった。さらに、前記特許文献2に開示された弾性波受信センサを用いたコンクリート基礎の拡底部計測方法では、地中に埋設されて外部から判別が困難な、コンクリート基礎下端の拡底部の長さ等を計測するために、弾性波受信センサを用いて弾性波の到達までの初動時間を計測手段が記載されている。しかしながら、この計測方法は、基礎自体の内部の状態を判別するものではなく、単に、コンクリート基礎下端の拡底部の長さ等を計測するに過ぎないものであった。
そこで、前述した特許文献に記載されたような、部材内部の判別方法等の課題を解決して、既設の鉄塔等の部材内部のコンクリート等の充填材の充填状態を簡便な方法にて正確に判別できる鋼管等の内部判別方法およびその判別装置を提供することを目的とする。
このため本発明は、部材表面への打撃により発生させた弾性波を解析することにより部材内における内部を判別する鋼管等の内部判別方法において、部材の打撃側とその反対側で測定した伝播速度の長短比較により、部材における内部空洞の有無を判別することを特徴とする。また本発明は、部材表面への打撃により発生させた弾性波を解析することにより部材内における内部を判別する鋼管等の内部判別方法において、部材の打撃側における卓越振動数の高低比較により、部材における内部空洞の有無を判別することを特徴とする。また本発明は、前記鋼管等の内部判別方法に使用する鋼管等の内部判別装置において、前記打撃側の部材表面に当接させた加振棒と前記打撃側の反対側の部材表面にそれぞれ弾性波受信センサを設置したことを特徴とする。また本発明は、前記鋼管等の内部判別方法に使用する鋼管等の内部判別装置において、前記打撃側の部材表面に弾性波受信センサを設置したことを特徴とする。また本発明は、前記弾性波受信センサと部材表面との間の接触面に粘土状のコーキング材を介在させたことを特徴とする。また本発明は、前記各鋼管等の内部判別方法を併用することを特徴とする。また本発明は、鉄塔等の前記鋼管等の上部において取得された計測データの記録と演算処理とを、無線システムによって地上からの遠隔操作により制御可能に構成したことを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とする。
本発明によれば、請求項1の構成要件である、部材表面への打撃により発生させた弾性波を解析することにより部材内における内部を判別する鋼管等の内部判別方法において、部材の打撃側とその反対側で測定した振動の伝播時間の長短比較により、部材における内部空洞の有無を判別することにより、鋼管等部材の外部での打撃による加振のみの作業だけで、部材の打撃側とその反対側で測定した振動の伝播時間の長短を比較して、X線照射資格や内視鏡等の挿入も不要で、簡便に短時間で容易かつ正確な鋼管等の内部の空洞の有無の判別が可能となる。
また、請求項2の構成要件である、部材表面への打撃により発生させた弾性波を解析することにより部材内における内部を判別する鋼管等の内部判別方法において、部材の打撃側における卓越振動数の高低比較により、部材における内部空洞の有無を判別することにより、部材の打撃側のみでの卓越振動数の高低を比較して、少ない卓越振動数の検出センサの配設のみでより簡便に短時間で容易かつ正確な鋼管等の内部の空洞の有無の判別が可能となる。さらに、請求項3の構成要件である、前記鋼管等の内部判別方法に使用する鋼管等の内部判別装置において、前記打撃側の部材表面に当接させた加振棒と前記打撃側の反対側の部材表面にそれぞれ弾性波受信センサを設置した場合は、センサと一体化した加振棒の先端を打撃できるので、打撃瞬間の振動を正確に検知できること、およびハンマー等で部材表面を直接打撃する方法に比べて打撃点のぶれがなく、振動の検出精度が向上する。
さらにまた、請求項4の構成要件である、前記鋼管等の内部判別方法に使用する鋼管等の内部判別装置において、前記打撃側の部材表面に弾性波受信センサを設置した場合は、少ない卓越振動数の検出センサの配設のみでよいので、構成がより簡素化される。また、請求項5の構成要件である、前記弾性波受信センサと部材表面との間の接触面に粘土状のコーキング材を介在させた場合は、きわめて簡便に、弾性波受信センサと部材表面との間を面接触とでき、線接触に比べて検出感度が高まるので、検出精度も向上する。
さらに、請求項6の構成要件である、前記各鋼管等の内部判別方法を併用する場合は、部材の打撃側とその反対側で測定した振動の伝播時間の長短比較による内部判別と、部材の打撃側のみでの卓越振動数の高低比較による内部判別とを合わせて総合的に判定することで、2種類の測定作業を要するにも関わらず、実鉄塔の上部での一度の一連作業で2種類の測定データが得られて、より正確な鋼管等部材の内部の空洞状態の判別が可能となる。さらにまた、請求項7の構成要件である、鉄塔等の前記鋼管等の上部において取得された計測データの記録と演算処理とを、無線システムによって地上からの遠隔操作により制御可能に構成した場合は、無線中継ボックス等を設置する等してケーブルの高所作業が不要となり、作業場所が高所であっても、計測データの記録や演算処理の送受信を長尺のケーブル等を用いることなく、地上から無線により安全で容易かつ迅速に行える。
本発明の鋼管等の内部判別方法およびその判別装置を用いて、鉄塔上部において測定作業を実施している様子を示す模式図である。 本発明の鋼管等の内部判別方法およびその判別装置の第1実施例を示すもので、伝播時間の長短比較による計測データ等の送受信にケーブルを使用した場合および計測データ等の送受信に無線システムを使用した場合の構成図である。 本発明の鋼管等の内部判別方法およびその判別装置の第2実施例を示すもので、卓越振動数の高低比較による計測データ等の送受信にケーブルを使用した場合および計測データ等の送受信に無線システムを使用した場合、あるいは加振棒を用いた場合の構成図である。 本発明の第1実施例による測定中の、中空鋼管および空洞のある鋼管の試験体部材断面図である。 本発明の第2実施例による測定中の、中空鋼管および空洞のある鋼管の試験体部材断面図である。 本発明の第1実施例による測定中の、空洞のある鋼管および完全充填鋼管の実鉄塔主柱部材断面図である。 本発明の第2実施例による測定中の、空洞のある鋼管および完全充填鋼管の実鉄塔主柱部材断面図である。 本発明の図4に対応した第1実施例による試験体の計測結果(伝播時間)図である。 本発明の図5に対応した第2実施例による試験体の計測結果(応答波形および卓越振動)図である。 本発明の図6に対応した第1実施例による実鉄塔主柱部材の計測結果(伝播時間)図である。 本発明の図7に対応した第2実施例による実鉄塔主柱部材の計測結果(応答波形および卓越振動)図である。
以下、本発明の鋼管等の内部判別方法およびその判別装置を実施するための好適な形態を図面に基づいて説明する。本発明の鋼管等の内部判別方法およびその判別装置は、図2に示すように、部材(鋼管1等)表面への打撃により発生させた弾性波を解析することにより部材内における内部を判別する鋼管等の内部判別方法において、部材1の打撃側に設置した弾性波受信センサであるAEセンサ3とその反対側のAEセンサ2とで測定した振動の伝播時間の長短比較により、部材1における内部空洞1b等の有無を判別することを特徴とする。
図1は、本発明の加振装置100を用いて鉄塔上部において測定作業を実施している様子を示す模式図であり、図2(A)は伝播時間の長短比較による計測データ等の送受信にケーブル8を使用した場合、および図2(B)は計測データ等の送受信に無線システム(無線中継ボックス11)を使用した場合の構成図である。本実施例は、弾性波受信センサである2台のAEセンサ2および3を鋼管1の直径を挟んで両側に配置して、打撃による弾性波の伝播時間を計測し、内部の空洞の有無を判別するものである。加振装置100は、打撃側の加振棒4と該加振棒4に取り付けられたAEセンサ3およびプレート5で構成されている。AEセンサ3は加振棒4に溶接等により固定されたプレート5に固定され、かつ加振棒4に接触しないように取り付けてある。
鋼管1に振動を与えるには、加振棒4の一端を鋼管1の表面に打撃点となるB点に密着させ、加振棒4の他端をハンマー20等で打撃することにより、弾性波を生じさせ、打撃側のAEセンサ3で受信した振動は演算装置7に、受信側AEセンサ2で受信した振動はプリアンプ6を通して演算装置7にそれぞれ記録され、演算装置7では伝播時間(振動波形の起動時)が演算されて、計測制御装置9を経て、その時間差Δtが表示器10に出力される。前記プリアンプ6の配設は、打撃点の反対側A点での感度が低下するのを一定の入力レベルの電圧まで増幅するために行われる。本実施例では、AEセンサ3が固定された加振棒4を打撃するので、打撃点BからAEセンサ3までは一定距離となり、鋼管1の表面をハンマー20で直接打撃する場合に比べて打撃点Bがぶれないので、測定値のばらつきが少ない。
なお、加振棒4が鋼管1の表面に直立固定されるように、磁石等を利用した固定具4b(図3(C))で加振棒4(4a)を取り付けられるようにすれば、打撃の反動で打撃点Bがずれることがなくなり、かつ、作業者が加振棒4から手を離すことも可能となるので、作業性は向上する。なお、上述した場合では、AEセンサは鋼管1の両側にそれぞれ1個の場合を示しているが、それぞれ複数個を設置し、平均値を採用する等の手法も可能である。
図3は、本発明の鋼管等の内部判別方法およびその判別装置の第2実施例を示すもので、図3(A)は卓越振動数の高低比較による計測データ等の送受信にケーブルを使用した場合、図3(B)は計測データ等の送受信に無線システムを使用した場合、そして図3(C)は加振棒を用いた場合の構成図である。本実施例では、AEセンサ2近傍の鋼管1の表面をハンマー20等で打撃し、弾性波を生じさせ、AEセンサ2で受信した振動は演算装置7に記録され、スペクトル解析されて卓越振動数が表示器10に出力される。出力された卓越振動数の高低比較により内部空洞有無を判別することができる。
なお、各鋼管の測定データを比較する場合、打撃位置が異なると測定値の正確性が損なわれるので、例えば、図3(C)に示すように、打撃点BをAEセンサ2と同じ円周上かつAEセンサ2から一定距離に設定してマーキングして打撃を加えるか、あるいは、その打撃点Bを直接ハンマー20で打撃せずに、加振棒4aを添えてその先端をハンマー20で打撃する等、打撃点Bの位置ぶれを防止することは、打撃毎の取得するデータのばらつきを抑制して測定精度を確保する上で有効な方法である。ここで、前記第1実施例でも説明したように、加振棒4aは磁石等を用いた固定具4bで鋼管1等に取り付けるようにすれば、打撃の反動で打撃点Bがずれることがなくなり、かつ、作業者が加振棒4aから手を離すことも可能となり、作業性が向上する。
本発明の第3実施例は、前述した第1実施例のものと第2実施例のものとを併用して構成されるもので、部材の打撃側とその反対側で測定した振動の伝播時間の長短比較による内部判別と、部材の打撃側のみでの卓越振動数の高低比較による内部判別とを合わせて総合的に判定することで、2種類の測定作業を要するにも関わらず、実鉄塔の上部での一度の一連作業で2種類の測定データが得られて、異なる2つの判別方法によるので判別精度が向上して、より正確な鋼管等部材の内部の空洞状態の判別が可能となる。ここで、第1実施例における図2(A)の加振装置100とプリアンプ6とを取り外せば、図3(A)に示す卓越振動数で判別する方法になるので、上記第2実施例は、実鉄塔の上部での一度の一連作業で2種類の測定データが得られ、かつ即座に精度よく判別できるという格別の利点がある。
従来、演算装置7と計測制御装置9とはケーブル8で接続される(図2(A)および図3(A)の実線)のが通常であるが、本発明では、特に好適には、図2(B)あるいは図3(B)に示すように、そのケーブル8に代えて、無線システムとして無線中継ボックス11を設置したものである。このように、演算装置7と計測制御装置9とを無線システムによって接続することで、地上から遠隔操作できるようにしたので、ケーブル8が不要であるだけでなく、ケーブル配線に伴う高所作業の危険性も排除することができ、有益で安全な方法と言える。
以下に、本発明の判別方法を用いて鋼管部材内部の空洞判別を実施した例を説明する。先ず、下記試験体について実施した結果を示す。
・(中空鋼管)鋼管サイズ φ216.3×6、長さ300mm
・(コンクリートに空洞のある鋼管)鋼管サイズφ216.3×6、コンクリート厚さ45mm、長さ300mm
<伝播時間の長短比較による方法>
図2(A)または図2(B)に示す方法により、上記2種類の試験体について、計測、解析により伝播時間を算出した。図4は加振装置100とAEセンサ2および3の設置状況の平面視を示す。図8は出力結果である伝播時間と弾性波の振幅との関係を示すもので、図8(A)は図4(A)の出力結果、図8(B)は図4(B)の出力結果である。これらにより、中空鋼管の伝播時間が58μs、コンクリートに空洞のある鋼管の伝播時間が56μsであった。コンクリートに空洞のある鋼管の伝播時間の方が若干短くなっていることが理解される。
<卓越振動数の高低比較による方法>
図3(A)または図3(B)に示す方法により、前記2種類の試験体について、計測、解析により卓越振動数を算出した。図5はAEセンサ2の設置状況の平面視を示す。図9は出力結果である応答波形とスペクトル波形を示すもので、図9(A)(B)は図5(A)(B)の各応答波形の出力結果、図9(C)(D)は図5(A)(B)の各スペクトル波形の出力結果である。これらにより、中空鋼管の卓越振動数は1.2kHz、2.1kHz、3.2kHz、コンクリートに空洞のある鋼管の卓越振動数は3.2kHz、7.2kHzであり、コンクリートに空洞のある鋼管の卓越振動数の方が高めの振動数となっていることが理解される。
次に、実鉄塔の下記主柱部材について実施した結果を示す。
・(コンクリートに空洞のある鋼管)鋼管サイズφ216.3×7、コンクリート厚さ45mm
・(完全充填鋼管)鋼管サイズ φ216.3×7、コンクリート完全充填(空洞なし)
<伝播時間の長短比較による方法>
図2(A)または図2(B)に示す方法により、上記実鉄塔の2種類の主柱部材について実施した結果を示す。図6は加振装置100とAEセンサ2および3の設置状況の平面視を示す。図10は出力結果である伝播時間と弾性波の振幅との関係を示すもので、図10(A)は図6(A)の出力結果、図10(B)は図6(B)の出力結果である。これらにより、コンクリートに空洞のある鋼管の伝播時間が55μs、完全充填鋼管の伝播時間が49μsであった。完全充填鋼管の伝播時間の方が若干短くなっていることが理解される。
<卓越振動数の高低比較による方法>
図3(A)または図3(B)に示す方法により、前記2種類の主柱部材について、計測、解析により卓越振動数を算出した。図7はAEセンサ2の設置状況の平面視を示す。図11は出力結果である応答波形とスペクトル波形を示すもので、図11(A)(B)は図7(A)(B)の各応答波形の出力結果、図11(C)(D)は図7(A)(B)の各スペクトル波形の出力結果である。これらにより、コンクリートに空洞のある鋼管の卓越振動数は3.3kHz、7.8kHz、完全充填鋼管の卓越振動数は8.1kHz、12.3kHzであり、完全充填鋼管の卓越振動数の方が高めの振動数となっていることが理解される。
以上の測定結果から、第1実施例の弾性波伝播時間の長短比較による方法のみにても空洞が少ない程伝播時間が短いことが分かるので、第1実施例単独でも鋼管内部の空洞有無の判別が可能であり、鋼管サイズ毎にデータをさらに蓄積すればさらに精度を高めることができる。一方、第2実施例の卓越振動数の高低比較による方法でも鋼管内部の充填程度に応じて卓越振動数の高低を明らかにできる。第1実施例および第2実施例の各方法のみで打撃のばらつき等に起因して測定値に僅かながらも誤差が生じる虞れがある場合でも、これら各実施例の方法を併用した第3実施例による測定結果を総合して判別するように構成して、測定精度を格段に向上させることができる。
以上のことにより、本発明によれば、既設の鉄塔等について用いられている部材が、中空鋼管か、コンクリート完全充填鋼管か、あるいは中心部に空洞を有する鋼管かを、部材の外部である部材表面への打撃のみによる測定方法において、伝播時間の長短比較および卓越振動数の高低比較により、短時間で容易かつ正確に判別できる測定方法とその測定装置を提供することができる。
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、判別すべき部材の種類(中空、中心部に空洞のあるもの、完全充填の中実の円形断面の鋼管の他、適宜断面形状の鋼管等にも判別対象となる)、打撃点の設定形態(弾性波受信センサが取り付けられた加振棒が当接する部位の他、弾性波受信センサが取り付けられた部位から所定距離の位置にマーキングしてこの点を打撃点としてもよい)、打撃ハンマーの種類(各種形式のハンマーが採用可能であるが、同じ測定作業内では同じものを使用して、叩く作業者が異なっても、同じ伝播時間、卓越振動数が得られるようにしなければならない)、弾性波受信センサの形式(AEセンサの他、適切な加速度センサも採用し得る)、およびその鋼管等部材表面への取付け形態(治具等で固定する他、磁石等により固定できるが、面接触を促進させるために、粘土等のコーキング材を介在させて固定することもできる。また、コーキング材と磁石とを組み合わせて取り付けることも採用できる)ならびに加振棒への取付け形態(好適には、打撃による衝撃が加わる加振棒と離してプレートを介して取り付けられる)、振動の伝播時間の長短比較および卓越振動数の高低比較のための演算装置における演算形態、計測制御装置の形式、表示器の形式およびその表示形態、無線システムとしての無線中継ボックスの形式およびその設置部位、鉄塔等の上部において取得された計測データの記録と演算処理との無線システムによる地上からの遠隔操作制御形態等はついては適宜選定できる。また、実施例に記載の諸元はあらゆる点で単なる例示に過ぎず限定的に解釈してはならない。
本発明によれば、既設の鉄塔等の構造に用いられている鋼管部材において、その部材がコンクリート充填部材かどうか等について、従来の方法よりも短時間で簡便かつ正確に判別が可能となり、既存構造体の実態を反映させた、より正確な構造解析や、補修・補強方法検討における必要不可欠な情報の提供が可能となった。そして、本願発明は、鉄塔以外の構造物の鋼管等の内部の判別に適用が可能である。
1 鋼管
1a コンクリート
1b 空洞
2 弾性波受信センサ(AEセンサ等)
3 加振棒に取り付けられたAEセンサ
4 加振棒
4a 加振棒
4b 固定具
5 プレート
6 プリアンプ
7 演算装置
8 ケーブル
9 計測制御装置
10 表示器
11 無線中継ボックス
20 ハンマー等
100 加振装置
A 鉄塔主柱部材の測定位置
B 打撃点

Claims (7)

  1. 部材表面への打撃により発生させた弾性波を解析することにより部材内における内部を判別する鋼管等の内部判別方法において、部材の打撃側とその反対側で測定した振動の伝播時間の長短比較により、部材における内部空洞の有無を判別することを特徴とする鋼管等の内部判別方法。
  2. 部材表面への打撃により発生させた弾性波を解析することにより部材内における内部を判別する鋼管等の内部判別方法において、部材の打撃側における卓越振動数の高低比較により、部材における内部空洞の有無を判別することを特徴とする鋼管等の内部判別方法。
  3. 前記請求項1に記載の鋼管等の内部判別方法に使用する鋼管等の内部判別装置において、前記打撃側の部材表面に当接させた加振棒と前記打撃側の反対側の部材表面にそれぞれ弾性波受信センサを設置したことを特徴とする鋼管等の内部判別装置。
  4. 前記請求項2に記載の鋼管等の内部判別方法に使用する鋼管等の内部判別装置において、前記打撃側の部材表面に弾性波受信センサを設置したことを特徴とする鋼管等の内部判別装置。
  5. 前記弾性波受信センサと部材表面との間の接触面に粘土状のコーキング材を介在させたことを特徴とする請求項3または4に記載の鋼管等の内部判別装置。
  6. 前記請求項1および2の鋼管等の内部判別方法を併用することを特徴とする鋼管等の内部判別方法。
  7. 鉄塔等の前記鋼管等の上部において取得された計測データの記録と演算処理とを、無線システムによって地上からの遠隔操作により制御可能に構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の鋼管等の内部判別方法。
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