JP7486354B2 - タマネギ含有加工品の製造方法 - Google Patents

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本発明が関係するのは、タマネギ含有加工品の製造方法である。
近年、市場で求められているのは、調理の簡易化である。簡易化が求められる調理工程の中でも、長時間の加熱を要するものは、特にその需要が高い。長時間の加熱を要するものを例示すると、煮込み、炒め等である。
タマネギは、味のベースとして、様々な調理で用いられる。タマネギを調理に用いる理由の1つとして、うま味の強化やコクの付与が挙げられる。特に、炒めタマネギは、ハンバーグやカレー、スープ、パスタ等幅広いメニューで使用されている。うま味を付与する成分としては、一般的にアミノ酸や核酸、特定の香気成分等が知られている。
タマネギ含有加工品を製造する技術は各種知られているが、タマネギを加工する過程で生じる異味・異臭を低減させる方法に関するものは、限られたものしか知られていない。具体的には、次のとおりである。
特許文献1が開示するのは、炒め玉葱の製造方法であり、その目的は、異味の抑制であり、その手段は、熱水との接触後に食用油の共存下で加熱することである。
特許文献2が開示するのは、オニオンピューレ又はオニオンパウダーの製造方法であり、その目的は、異味・異臭の抑制であり、その手段は、生オニオンをそのまま或いは一片の体積が8立方センチメートル以上になるものを加熱することである。
特許文献3が開示するのは、ユリ科野菜の甘味を引き出す方法であり、その目的は、異味・異臭の抑制であり、その手段は、低温での加熱処理である。
特開2000-023633号公報 特開2004-081096号公報 特開2007-319139号公報
本発明が解決しようとする課題は、タマネギ含有加工品の異味を抑制することである。つまり、タマネギ含有加工品のエグ味を抑制することである。
以上を踏まえて、本願発明者が鋭意検討して見出したのは、タマネギを加熱する際に、タマネギの品温が80℃以上に到達するまでの時間が長いと、タマネギのエグ味が発生しやすくなることである。すなわち、タマネギの昇温速度を速くすることで、エグ味が抑制されたタマネギ含有加工品を製造することが可能になる。この観点から、本発明を定義すると、以下のとおりである。
本発明に係るタマネギ含有加工品の製造方法を構成するのは、少なくとも、逐次投入及び加熱である。逐次投入において、少なくとも、タマネギが温水に逐次投入される。加熱において、少なくとも、逐次投入されたタマネギが、加熱される。加熱における熱媒は、少なくとも、温水である。タマネギを最初に投入する量は、前記温水の重量の2倍未満である。タマネギをN番目(Nは2以上の自然数)に投入する条件は、加熱中のタマネギの品温が80℃以上であることである。
本発明が可能にするのは、異味が抑制されたタマネギ含有加工品の提供である。すなわち、エグ味が抑制されたタマネギ含有加工品の提供である。
本実施の形態に係るタマネギ含有加工品の製造方法の流れ図である。
<タマネギ含有加工品>タマネギ含有加工品とは、タマネギを主原料とする加工品であり、容器包装に入れられたものである。タマネギ含有加工品を例示すると、タマネギ含有炒め品、タマネギ含有ペースト、タマネギ含有ピューレー、タマネギ含有エキス、タマネギ含有ジュース、タマネギ含有乾燥品、タマネギ含有粉末品、タマネギ含有冷凍品、タマネギ含有凍結乾燥品等である。
<本実施の形態に係るタマネギ含有加工品>
本実施の形態に係るタマネギ含有加工品(以下、「本タマネギ含有加工品」という。)は、好ましくは、タマネギ含有炒め品、タマネギ含有ペースト、タマネギ含有ピューレー又はタマネギ含有エキスである。本タマネギ含有加工品が排除しないのは、油、塩、砂糖、香辛料等の各種調味料やタマネギ以外の野菜である。
<本タマネギ含有加工品のピルビン酸含有量>
本タマネギ含有加工品のピルビン酸含有量は、0.05%未満であることが好ましい。ピルビン酸は、タマネギに含まれる前駆体から、タマネギを切断した際に生じる酵素によって生成される。ピルビン酸は、タマネギの異味(エグ味など)や異臭の指標成分として知られている。ピルビン酸は、加熱などによる酵素失活により、生成を抑制することができる。
<本タマネギ含有加工品の糖度>
本タマネギ含有加工品の糖度の下限値は、使用用途に応じて決めればよい。好ましくは、7%以上である。より好ましくは、11%以上である。本タマネギ含有加工品の糖度の上限値は、使用用途に応じて決めればよい。好ましくは、80%以下である。
<本タマネギ含有加工品の糖度に対するピルビン酸含量の比>
本タマネギ含有加工品の糖度に対するピルビン酸含量の比は、好ましくは0.004以下である。糖度に対するピルビン酸含量の比とは、ピルビン酸含有量(%)を糖度で除した値である。つまり、糖度を1とした場合のピルビン酸含有量を表している。糖度に対するピルビン酸含量の比が小さければ、ピルビン酸含有量が低くなる。
<ピルビン酸含有量>
ピルビン酸含有量の測定方法は、吸光光度法である。ピルビン酸の定量は、検量線に基づいて算出される。
<糖度>
糖度の測定方法は、糖度計である。糖度計を例示すると、屈折計である。この屈折計が利用するのは、糖含量と屈折率との関係である。この屈折計の測定値は、いわゆるBrix値(%)である。Brix値が示すのは、単位重量あたりの可溶性固形分の量である。可溶性固形分に含まれるのは、厳密には、糖及び糖以外の可溶性固形分であるが、本明細書において糖度の指標をBrix値(%)とする。
<タマネギ含有加工品におけるエグ味>
タマネギ含有加工品が呈するのは、エグ味である。エグ味とは、異味の1種である。エグ味とは、タマネギを飲み込んだ後に口内に残る不快なネギの味を表す。人によっては、エグ味と同時に酸味を感じる場合もある。エグ味の強いタマネギ含有加工品は、消費者に忌避される可能性があるため、好ましくない。
<本タマネギ含有加工品の製造方法の概要>
図1が示すのは、本タマネギ含有加工品の製造方法(以下、「本製法」という。)の流れである。本製法を構成するのは、主に、洗浄(S10)、切断(S20)、逐次投入(S30)、加熱(S40)及び充填(S50)である。
<洗浄(S10)>
洗浄工程では、少なくとも、タマネギが洗浄される。その目的は、異物の除去である。異物を例示すると、タマネギの皮や、タマネギに付着する泥、土、砂等である。タマネギを洗浄する手段を例示すると、水への接液である。接液する方法を例示すると、浸漬、噴霧、流水等である。タマネギを洗浄する回数は、1回又は2回以上である。洗浄に使用する水を例示すると、水道水、井戸水、浄水等である。洗浄に使用する水は、必要に応じて、殺菌剤等の添加物を含んでもよい。洗浄工程は、タマネギ含有加工品を製造する工場内で行ってもよい。洗浄工程は、タマネギ含有加工品を製造する工場内に搬入する前に行ってもよい。また、必要に応じて、洗浄工程の前にタマネギの皮を剝皮する剝皮工程を入れても良い。
<切断(S20)>
切断工程では、少なくとも、タマネギが切断される。その目的は、ハンドリングの向上である。タマネギを切断する手段を例示すると、カッター、スライサー、グレーダー、コミトロール、フードプロセッサー等である。タマネギを切断する回数は、1回又は2回以上である。切断後の大きさや形状は、タマネギ含有加工品の使用目的に応じて決まるため、限定されない。例示すると、2分の1カット、4分の1カット、ダイス状、スライス状、みじん状等である。切断工程は、必ずしも洗浄工程の後である必要はなく、洗浄工程の前にあってもよい。尚、切断工程は、必要に応じて実施しなくてもよい。切断工程を実施しない場合、タマネギは、ホール状である。
<逐次投入(S30)>
逐次投入工程では、少なくとも、タマネギが温水に逐次投入される。その目的は、タマネギの昇温速度を速めることである。タマネギを最初に投入する量は、温水の重量の2倍未満である。好ましくは、温水の重量の1倍以下である。タマネギを最初に投入する時点における温水の温度は、好ましくは、80℃以上である。より好ましくは、90℃以上である。タマネギを最初に投入する時点における温水の体積は、加熱器の容積に応じて変わるため、特に限定されない。好ましくは、加熱器の容積の40%未満である。より好ましくは、加熱器の容積の30%未満である。さらに好ましくは、加熱器の容積の20%未満である。最も好ましくは、加熱器の容積の10%未満である。タマネギをN番目(Nは2以上の自然数)に投入する条件は、加熱中のタマネギの品温が80℃以上であることである。好ましくは、90℃以上であることである。タマネギをN番目(Nは2以上の自然数)に投入する量は、好ましくは、(N-1)番目までに投入されたタマネギ及び温水の重量の0.7倍未満である。より好ましくは、(N-1)番目までに投入されたタマネギ及び温水の重量の0.5倍以下である。加熱器は、タマネギ及び温水に熱を加えられるものであればよく、特に限定されない。例示すると、直火釜、蒸気釜、焙焼釜、蒸煮釜、IHニーダー等である。本工程が排除しないのは、油やタマネギ以外の野菜等の投入である。
<加熱(S40)>
加熱工程では、少なくとも、タマネギが加熱される。加熱における熱媒は、少なくとも、温水である。その目的は、タマネギの昇温である。加熱工程は、逐次投入工程と同時に行われる。加熱する手段は、公知のものでよい。例示すると、直火、蒸気、IH等である。本工程で制御するのは、タマネギの品温である。タマネギの品温とは、タマネギの内部温度である。加熱は、タマネギの品温が80℃以上になるまで行われる。本工程が排除しないのは、油やタマネギ以外の野菜等との加熱である。
<充填(S50)>
充填工程では、少なくとも、加熱されたタマネギが容器に充填される。それにより得られるのは、タマネギ含有加工品である。充填する容器は、公知のものでよく、特に限定されない。好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン又はそれらの複合素材等であり、アルミ等のバリア層を含むものであってもよい。尚、必要に応じて、充填工程の前に、破砕工程を行ってもよい。また、必要に応じて、充填工程の後に、殺菌工程や冷凍工程を行ってもよい。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
市販の生タマネギを剥皮し、ダイサー(榎村鐵工所社製)で0.5cm角にカットした。焙焼釜(カジワラ社製、容積12.5L)に水を1L入れ加熱した。水が沸騰した時点でカットしたタマネギ1kgを投入した。投入したタマネギを加熱した。タマネギの品温が80℃以上になった後、さらにタマネギ1kgを投入した。これを繰り返し、最終的に5kgのタマネギを投入した。投入したタマネギの重量が約70%になった時点で加熱をやめた。加熱後、ミキサーでピューレー状になるまで破砕した。
<比較例1>
市販の生タマネギを剥皮し、ダイサー(榎村鐵工所社製)で0.5cm角にカットした。焙焼釜(カジワラ社製、容積12.5L)にカットしたタマネギ1kgを投入した。投入したタマネギを加熱した。タマネギの品温が80℃以上になった後、さらにタマネギ1kgを投入した。これを繰り返し、最終的に5kgのタマネギを投入した。投入したタマネギの重量が約70%になった時点で加熱をやめた。加熱後、ミキサーでピューレー状になるまで破砕した。
<比較例2>
市販の生タマネギを剥皮し、ダイサー(榎村鐵工所社製)で0.5cm角にカットした。焙焼釜(カジワラ社製、容積12.5L)に水を5L入れ加熱した。水が沸騰した時点でカットしたタマネギ5kgを一気に投入した。投入したタマネギを加熱した。投入したタマネギの重量が約70%になった時点で加熱をやめた。加熱後、ミキサーでピューレー状になるまで破砕した。
<比較例3>
市販の生タマネギを剥皮し、ダイサー(榎村鐵工所社製)で0.5cm角にカットした。焙焼釜(カジワラ社製、容積12.5L)に水を1L入れ加熱した。水が沸騰した時点でカットしたタマネギ2kgを投入した。投入したタマネギを加熱した。タマネギの品温が80℃以上になった後、さらにタマネギ2kg投入した。投入したタマネギを加熱した。タマネギが80℃以上になった後、さらにタマネギ1kg投入し、最終的に5kgのタマネギを投入した。投入したタマネギの重量が約70%になった時点で加熱をやめた。加熱後、ミキサーでピューレー状になるまで破砕した。
<比較例4>
市販のオニオンソテーピューレー(カゴメ社製、オニオンソテーピューレー70)を比較例4とした。
<タマネギの品温>
実施例1及び比較例1から3について、タマネギを投入してからタマネギの品温が80℃以上になるまでのおおよその時間を計測した。
Figure 0007486354000001
表1が示すのは、実施例1及び比較例1から3において、タマネギを投入してからタマネギの品温が80℃以上になるまでのおおよその時間である。表1からわかることは、実施例1は、比較例1から3に比べ、タマネギを投入してからタマネギの品温が80℃以上になるまでの時間が短くなることである。つまり、実施例1は、比較例1から3に比べ、タマネギの昇温速度が速くなる。
<ピルビン酸含有量の測定>
本実施例で採用したピルビン酸含有量の測定器は、分光光度計U-3900(HITACHI社製)である。測定波長は、420nmとした。測定サンプルの前処理は、以下のとおりである。ピューレー状の測定サンプルをろ紙(ADVANTEC社製、No.5A)でろ過した。得られたろ液のピルビン酸含有量を測定した。測定に用いる試薬(ジニトロフェニルヒドラジン希釈液)の調製方法は、以下のとおりである。市販の2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(50%含水)(和光純薬社製)を0.0125g秤量した。秤量した2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(50%含水)を2Nの塩酸100mLに溶解させた。溶解液と蒸留水を容積比で2:1の割合となるように混合した。混合した液をジニトロフェニルヒドラジン希釈液とした。測定方法は、以下のとおりである。ジニトロフェニルヒドラジン希釈液3.5mLと測定サンプル50μLとを混合した。混合した液を40℃の環境下に10分間静置した。静置した液を、流水で冷却した。冷却した液を反応液とした。0.6Nの水酸化ナトリウム溶液3.5mLと反応液1.2mLを混合した。混合した液の吸光度を測定した。ピルビン酸含有量は、検量線により算出した。検量線の作成に必要な標準試薬は、市販のピルビン酸(東京化成工業株式会社)から調製した。
<糖度の測定>
本実施例で採用した糖度(Brix)の測定器は、デジタル屈折計RX5000i(ATAGO社製)である。測定時の品温は、20℃であった。
<官能評価>
本実施例で採用した官能評価の方法は、オープンパネルテストである。評価者は、訓練されたパネル4名とした。評価サンプルは、実施例1及び比較例1から4の合計5サンプルとした。評価項目は、エグ味とした。エグ味の定義は、タマネギを飲み込んだ後に口内に残る不快なネギの味とした。評価は、「強い」「やや強い」「やや弱い」「弱い」の4段階で行った。
Figure 0007486354000002
表2が示すのは、実施例1及び比較例1から4の各測定値及び官能評価の結果である。表1からわかることは、実施例1は比較例1から4に比べ、ピルビン酸含有量及び糖度に対するピルビン酸含量の比が小さくなることである。さらに、比較例1から4は、実施例1に比べ、エグ味を強く感じることである。つまり、温水中に温水の重量の2倍未満のタマネギを投入し、加熱し、タマネギが80℃以上に昇温してから、さらにタマネギを投入することを繰り返すことで、エグ味を抑制することが可能となる。その理由は、推察ではあるが、タマネギの昇温速度が上がることで、エグ味を呈する成分の原因となる酵素反応が抑制されることである。ただし、作用機序はこれに限定されない。
本発明が有用な分野は、タマネギ含有加工品の製造である。

Claims (3)

  1. タマネギ含有加工品の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以下の工程 である:
    逐次投入:逐次投入されるのは、少なくとも、タマネギであり、その投入先は、温水であり、当該タマネギを最初に投入する時点において、前記温水の温度は、80℃以上であり、かつ、
    加熱:同時に加熱されるのは、少なくとも、前記逐次投入されたタマネギであり、その熱媒は、少なくとも、前記温水であり、
    そこにおいて、
    当該タマネギを最初に投入する量は、前記温水の重量の2倍未満であり、かつ、
    当該タマネギをN番目(Nは2以上の自然数)に投入する条件は、加熱中のタマネギの品温が80℃以上であることである。
  2. 請求項1の製造方法であって、
    当該タマネギをN番目に投入する量は、(N-1)番目までに投入されたタマネギ及び 温水の重量の0.7倍未満である。
  3. 請求項1又は2の製造方法であって、
    当該タマネギをN番目に投入する条件は、加熱中のタマネギの品温が90℃以上であることである。
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