JP7485912B2 - 継手構造の製造方法、継手構造、及び自動車部品 - Google Patents

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Description

本発明は、継手構造の製造方法、継手構造、及び自動車部品に関する。
自動車の軽量化、及び衝突安全性の向上を目的として、高強度鋼板の適用が進められている。しかしながら、高強度鋼板から構成されるスポット溶接継手には、母材鋼板の引張強さが780MPaを超えると十字引張強さ(Cross Tension Strength、CTS)が低下するという課題がある。また、鋼板の引張強さが1500MPaを超えると、十字引張強さのみならず引張せん断強さ(Tensile Shear Strength、TSS)も低下する傾向にある。
スポット溶接継手の強度が低下すると、非常に厳しい条件における衝突などにより部材が変形した時に溶接部の破断が生じる恐れがある。従って、たとえ鋼板の強度を向上させたとしても、部材全体としての耐荷重が不足する恐れがある。そこで、高強度鋼板から構成される継手の強度を向上させる接合方法が求められている。
継手の十字引張強さを向上させる手段の一つとして、本発明者らは機械的接合に着目した。機械的接合とは、例えばリベット接合である。リベット接合とは、鋼板に通し穴を形成し、この通し穴に締結部材(フランジ部と軸部とを有するリベット)を挿通させ、リベットの軸部の先端を室温で塑性変形させ、そしてリベットの頭部及び塑性変形部によって鋼板をかしめる接合法である。
リベット接合継手構造の製造方法に関し、例えば以下のような技術が開示されている。
特許文献1には、締結具によって2個以上の構成部材を互いに結合させる方法であって、各構成部材は、穴を備えるとともに、前記構成部材は、前記穴が互いに重なり合って前記締結具を前記穴内において受けるように配置され、前記穴内に配置される前記締結具は、機械的に加圧および加熱されることで、前記締結具が変形させられて、以って前記構成部材が互いに結合させられる方法において、前記締結具は本質的に前記締結具の変形段階においてのみ加熱されて、前記締結具から結合させられる前記構成部材への熱伝達が最小限に抑えられ、結合は、前記締結具と前記構成部材とのいずれもが金属間合金群の材料に含まれる同一または同様の合金により製作されて行なわれることを特徴とする方法が開示されている。
特許文献2には、1対の電極の間にリベットの頭部と先端部分とをはさんで通電加熱すると共に押圧してリベッティングする方法において、リベットの頭部裏面と被リベット材との間に、断面積が小さく、且つ、リベット穴にリベットの軸部が十分密着充填すると共に、又は、それ以後に、頭部裏面と被リベット材とが接触するような高さを有する間座部を設けて、リベッティングすることを特徴とするリベッティング方法が開示されている。
特許文献3には、リベットを電極ではさみ、電気を通して抵抗熱により加熱し、加圧成形を行うリベットの締結方法において、通電加熱後一旦成形側頭部電極をリベットから話して、リベットの先端部まで加熱をゆきわたらせることを特徴とするリベットの締結方法が開示されている。
特許文献4には、結合されるべき少なくとも2部材に貫通して形成されるリベット穴を少なくとも一部テーパ状穴に形成し、このリベット穴にリベットを嵌合させ、通電かしめによりリベットの軸部をテーパ状穴に沿った形状に膨出変形させ、通電かしめ後のリベットの熱収縮によりリベットの軸部とテーパ状穴とを密着させ隙間なく結合させることを特徴とするリベットの通電かしめによる部材結合方法が開示されている。ここで、通電かしめ時のリベット温度は700~900℃であるとされている。
特許文献5には、複数のワークをリベットを用いて結合するリベット締め方法であって、複数のワークに挿通したリベットを1対の電極間に挟んで加圧した状態で通電し、通電によるリベット自体の抵抗発熱でリベットを軟化させて、リベットの端部をかしめる、ことを特徴とするリベット締め方法が開示されている。
特表2006-507128号公報 特開昭55-27456号公報 特開昭53-78486号公報 特開昭61-165247号公報 特開平10-205510号公報
高強度金属板(特に高強度鋼板)に対してリベット接合などの機械的接合を適用した例を、本発明者らは確認することができなかった。高強度金属板の強度に釣り合う程度の高強度材料から締結部材を製造するためには、加工コストがかかる。また、締結部材を用いて金属板を接合すると、部品点数が増大して、継手の製造コストが増大する。その一方、高強度金属板を機械的接合することのメリットは知られていなかった。以上の理由により、高強度金属板の接合手段は専ら溶接(特にスポット溶接)とされており、機械的接合の適用例は皆無であった。例えば、特許文献1~5のいずれにおいても、その接合対象は低強度材料とされている。
しかし本発明者らは、高強度鋼板をリベット接合することにより得られる継手(リベット接合継手)の十字引張強さが、スポット溶接継手のそれよりも著しく高いことを知見した。鋼板を機械的に接合するリベット接合によれば、接合部の低強度化が生じないので、高強度鋼板から構成される継手構造のCTSを高く保持可能であると考えられた。
しかしながら、例えば自動車部品の製造において、スポット溶接に代えてリベット接合を用いることは容易ではない。スポット溶接においては、鋼板に加熱及び加圧をすることが必要とされる。鋼板に加熱及び加圧をするためには一対の電極が用いられている。一方、リベット接合においては、鋼板にリベットを挿通させ、次いでリベットに加熱及び加圧をすることが必要とされる。スポット溶接用の電極は、リベットの加熱及び加圧に転用可能であるものの、スポット溶接用の設備をリベット接合のための設備として転用するためには、鋼板にリベットを供給するための機構を、この設備に追加する必要がある。しかしながら、接合設備への機構の追加は、生産コストの増大を招き、さらに生産ラインの汎用性を低下させる恐れがある。特に、自動車の車体製造工程である、メインボディのファイナルアッセンブリーラインにリベットを供給するための機構を追加することは、生産ラインの汎用性を低下させる。
なお、本発明者らは、予め鋼板の通し穴にリベットを挿通させてから鋼板を接合設備に移動させることも検討した。この方法によれば、接合設備にリベット供給機構を追加する必要はない。しかしながら、リベットを挿通させた鋼板を接合設備に移動させる間に、リベットの脱落が生じるケースが見られた。従って、生産の歩留まりを損なわないために、リベットの供給は接合設備において行われる必要があると考えられた。
リベットの供給を確実かつ容易に行う方法について、先行技術においては十分に検討されていない。例えば、特許文献1~5のいずれにおいても、リベット供給の効率化などを通じてリベット接合継手構造の生産性を向上させることについて何ら検討されていない。以上の事情により、リベット接合とは異なり、且つスポット溶接との代替が容易な機械的接合方法が切実に求められている。
上述の事情に鑑みて、本発明は、生産性に優れ、且つCTSに優れた継手構造の製造方法、並びに、生産性及びCTSに優れた継手構造及び自動車部品を提供することを課題とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)本発明の一態様に係る継手構造の製造方法は、第1部材に、軸部を有する締結部材の第1端を接合する工程と、第2部材の通し穴に、前記締結部材の前記軸部を挿通させる工程と、前記締結部材の第2端を塑性変形させて、前記第1部材及び前記第2部材を締結する工程と、を備え、前記第1部材を、金属板とし、前記第2部材を、鋼板とし、前記締結部材を、金属部材とし、前記第1部材及び前記締結部材が導通するように、第1部材に軸部を有する締結部材の第1端を接合させ、前記第2部材の前記通し穴に前記締結部材の前記軸部を挿通させた後、且つ、前記締結部材の前記第2端を塑性変形させる前に、前記締結部材の前記第2端及び前記第1部材それぞれに一対の電極を配置し、次いで前記一対の電極に通電することにより、前記締結部材を通電加熱する工程をさらに備え、前記第2端を、前記一対の電極を用いて加圧することによって塑性変形させ、前記軸部が中実である
)上記(1)に記載の継手構造の製造方法では、前記第1部材に、前記締結部材の前記第1端を、アークスタッド溶接によって接合してもよい。
)上記(1)又は(2)に記載の継手構造の製造方法では、前記締結部材の前記第1端がフランジ部を有してもよい。
)上記(1)~()のいずれか一項に記載の継手構造の製造方法では、前記第2部材を2以上の部材としてもよい。
)上記(1)~()のいずれか一項に記載の継手構造の製造方法は、前記第2部材の前記通し穴に、前記締結部材の前記軸部を挿通させる前に、前記第1部材の、前記締結部材が接合される箇所の周辺、及び前記第2部材の、前記通し穴の周辺の一方又は両方に接着剤を塗布する工程をさらに備えてもよい。
)上記(1)~()のいずれか一項に記載の継手構造の製造方法は、スポット溶接、レーザ溶接、及びアーク溶接からなる群から選択される一種以上の溶接方法によって前記第1部材及び前記第2部材を接合する工程をさらに備えてもよい。
)上記(1)~()のいずれか一項に記載の継手構造の製造方法では、前記第2部材を、引張強さ780MPa以上の鋼板としてもよい。
)本発明の別の態様に係る継手構造は、第1部材と、通し穴を有する第2部材と、軸部を有する締結部材と、を備え、前記締結部材の第1端が前記第1部材に接合され、前記締結部材の前記軸部が前記第2部材の前記通し穴に挿通され、前記締結部材が、その第2端に塑性変形部を有し、前記塑性変形部によって、前記第2部材が前記第1部材に締結されており、前記第1部材が、金属板であり、前記第2部材が、鋼板であり、前記締結部材が、金属部材であり、前記第1部材と前記締結部材とが、導通するように接続されており、前記軸部が中実である
)上記(8)に記載の継手構造では、前記締結部材の前記第1端が前記第1部材に溶接されていることを特徴とする。
10)上記(8)又は(9)に記載の継手構造では、前記締結部材の前記第1端がフランジ部を有することを特徴とする。
11)上記()~(10)のいずれか一項に記載の継手構造では、前記第2部材が2以上の部材であることを特徴とする。
12)上記()~(11)のいずれか一項に記載の継手構造は、前記第1部材における前記締結部材が接合された箇所の周辺、及び前記第2部材における前記通し穴の周辺に配された接着剤をさらに備えてもよい。
13)上記()~(12)のいずれか一項に記載の継手構造は、前記第1部材及び前記第2部材を接合する、スポット溶接部、レーザ溶接部、及びアーク溶接部からなる群から選択される一種以上の溶接部をさらに備えてもよい。
14)上記()~(13)のいずれか一項に記載の継手構造では、前記第2部材が、引張強さ780MPa以上の鋼板であることを特徴とする。
15)上記()~(14)のいずれか一項に記載の継手構造では、前記締結部材の前記軸部の軸線に平行な断面視において、前記塑性変形部の頂面が、前記軸部の前記軸線に沿った方向において、前記締結部材の近傍の前記第2部材の面から、前記軸部から離れる側に向けて0.6mm離れた位置よりも、前記軸部側にあることを特徴とする。
16)本発明の別の態様に係る自動車部品は、上記()~(15)のいずれか一項に記載の継手構造を備える。
17)上記(16)に記載の自動車部品は、バンパーリンフォース、Aピラー、サイドシル、ルーフレール、フロアメンバー、フロントサイドメンバー、リアサイドメンバー、シート骨格、シートレール又はバッテリーケースのフレームであってもよい。
18)上記(16)に記載の自動車部品は、バンパーリンフォース及びクラッシュボックス、Bピラー、Aピラー、サイドシル、及びルーフレールからなる群から選択される二種以上、又は、フロアメンバー、フロントサイドメンバー、リアサイドメンバー、フロアーパネル、及びダッシュパネルからなる群から選択される二種以上が、上記()~(15)のいずれか一項に記載の継手構造によって接合されたものであってもよい。
本発明によれば、生産性に優れ、且つCTSに優れた継手構造の製造方法、並びに、生産性及びCTSに優れた継手構造及び自動車部品を提供することができる。
本実施形態に係る継手構造の製造方法の一例を示す図である。 本実施形態に係る継手構造の製造方法の一例を示す図である。 本実施形態に係る継手構造の製造方法の一例を示す図である。 本実施形態に係る継手構造の一例を示す断面図である。 本実施形態に係る継手構造の一例を示す断面図である。 本実施形態に係る継手構造の一例を示す斜視図である。 本実施形態に係る継手構造の一例を示す断面図である。 本実施形態に係る継手構造の一例を示す断面図である。 本実施形態に係る自動車部品の一例であるBピラーの断面図である。 本実施形態に係る自動車部品の一例であるバンパーの断面図である。
本発明者らは、部材を容易に機械的接合する方法について鋭意検討を重ねた。その結果、本発明者らは、部材を接合する工程を(1)複数の被接合材のうち1つに締結部材を接合する工程(予備接合)と、(2)残りの被接合材を、締結部材を用いてかしめ接合する工程(本接合)とに分離した。予備接合を行うことにより、本接合を行う設備において締結部材を供給する必要がなくなる。また、予備接合を行うことにより、締結部材が被接合材から脱落することもなくなる。この予備接合及び本接合を含む多段階接合方法により、部材を容易に接合することが可能となった。また、この多段階接合方法を高強度鋼板に適用した場合、締結部材によって機械的接合される部材において低強度化を生じさせることがなく、従って継手構造のCTSを向上させられることも確認された。また、この多段階接合方法は高強度鋼板の接合のために検討されたものであるが、接合装置の構造を簡素化しうるという点で、高強度鋼板に限られない幅広い材料に適用可能であることも見いだされた。
上述の知見に基づいて得られた、本発明の一態様に係る継手構造1の製造方法は、図1に示されるように、第1部材11に、軸部131を有する締結部材13の第1端を接合する工程と、第2部材12の通し穴121に、締結部材13の軸部131を挿通させる工程と、締結部材13の第2端を塑性変形させて、第1部材11及び第2部材12を締結する工程と、を備える。以下に、本実施形態に係る継手構造の製造方法について詳述する。
(予備接合)
まず、第1部材11に、軸部131を有する締結部材13の一方の端部を接合する。本実施形態では便宜上、締結部材13の両端部のうち、第1部材11に接合される方を第1端と称し、もう一方を第2端と称する。また、第1部材11と締結部材13との接合を予備接合と称する。強度を確保する観点、及び第2部材12の通し穴121に軸部131を挿通させやすくする観点からは、軸部131が第1部材11の接合面(即ち、締結部材13が接合される面)に略垂直となるように、締結部材13を第1部材11に接合することが好ましい。
(挿通)
次に、第2部材12の通し穴121に、締結部材13の軸部131を挿通させる。これにより、軸部131の先端(即ち、締結部材13の第2端)が、第2部材12を貫通し、第2部材12の外部に露出する。
(本接合)
そして、締結部材13の第2端を塑性変形させる。これにより、締結部材13の第2端に塑性変形部132が形成されて、第1部材11及び第2部材12が、塑性変形部132によって締結されることとなる。
第1部材11、第2部材12、及び締結部材13の材質は特に限定されない。また、第1部材11と締結部材13とを予備接合する手段も特に限定されない。さらに、締結部材13の第2端を塑性変形させる手段も特に限定されない。例えば、本実施形態に係る継手構造の製造方法を、自動車部品のような高強度を要する継手構造に適用する場合、材質、並びに予備接合及び本接合の手段の好適な組み合わせの一例として、図2に示されるように、第1部材11を、金属板とし、第2部材12を、引張強さ780MPa以上の高強度鋼板とし、締結部材13を、金属部材とし、第1部材11及び締結部材13が導通するように、第1部材11に軸部131を有する締結部材13の第1端を接合させ、第2部材12の通し穴に締結部材13の軸部131を挿通させた後、且つ、締結部材13の第2端を塑性変形させる前に、締結部材13の第2端及び第1部材11それぞれに一対の電極Aを配置し、次いで一対の電極Aに通電することにより、締結部材13を通電加熱する工程をさらに備え、第2端を、一対の電極Aを用いて加圧することによって塑性変形させる構成を挙げることができる。
予備接合においては、第1部材11及び締結部材13の間が電気的に導通が取れるように、両者を接合することが好ましい。これは、後述するように、締結部材13を通電加熱可能な状態とするためである。第1部材11及び締結部材13が導通するような接合方法として、例えば溶接、摩擦圧接、及び任意の機械的接合(ねじ留め等)が挙げられる。溶接及び摩擦圧接は、継手構造の強度を確保する観点からも好ましい。溶接の種類は特に限定されないが、例えばアークスタッド溶接とすることが好ましい。アークスタッド溶接とは、ボルトや丸棒など(以下スタッドという)の先端と母材との間に、アーク溶接と同じようにアークを発生させ、そのアークの熱エネルギーで金属を溶融させ、溶融部分にスタッドを押し付けて行う溶接法である。アークスタッド溶接によって予備接合を行うと、第1部材11に穴を開けたり、ねじ加工をしたりする必要がなく、短時間で接合を完了させられるので好ましい。なお、予備接合を溶接によって行う場合、第1部材11及び締結部材13の材質は同一、または溶接が可能な程度に近接していることが好ましい。
第1部材11の形状は特に限定されない。予備接合の手段を溶接及び摩擦圧接などとすれば、締結部材13を取り付けるための通し穴、及びねじ穴等を第1部材11に設ける必要はない。第1部材11を薄板(例えば厚さ0.5mm~3.6mmの板)とすれば、締結部材13の通電加熱の効率を向上させることができて好ましい。
第1部材11の材質も特に限定されない。第1部材11を金属材料、又は金属板とすれば、締結部材13を通電加熱して軟化させることができるので好ましい。第1部材11を鋼材又は鋼板としてもよい。第1部材11を鋼板とした場合、引張強さは980MPa以上、1180MPa以上、又は1500MPa以上としてもよい。第1部材11の引張強さの上限は特に限定されないが、例えば2700MPa以下としてもよい。第1部材11をアルミ板、CFRP板、及びチタン板などとしてもよい。第1部材11に種々の表面処理がなされていてもよい。例えば、第1部材11がGAめっき、GIめっき、EGめっき、Zn-Mgめっき、Zn-Al-Mgめっき、Alめっき、並びにホットスタンプによって母材金属と合金化されたZn系めっき(Zn-Fe、Zn-Ni-Fe)及びAl系めっき(Al-Fe-Si)等を有してもよい。
締結部材13は、本接合の完了前に、その軸部131の長さが第2部材12の通し穴121の深さ(即ち第2部材12の厚さ)よりも長くなるようにする必要がある。軸部131の長さが不足した場合、締結部材13の第2端を塑性変形させて、第1部材11及び第2部材12を締結することができなくなる。上述の要件を満たす限り、軸部131の長さは特に限定されないが、例えば
第2部材12の合計板厚+軸部の径×0.3≦軸部の長さ≦第2部材12の合計板厚+軸部の径×2.0
とすることが望ましい。
この要件が満たされる限り、締結部材13の形状は特に限定されない。本接合の完了前に、締結部材13が軸部131のみからなる略柱状であってもよい。一方、締結部材13を、その第1端にフランジ部133を有するリベット状の形状としてもよい。これにより、図4に示されるような継手構造1が得られ、第1部材11と締結部材13との接合強度を増大させ、継手構造1の強度を高めることができる。締結部材13のフランジ部133の形状は、一般的なフランジ形状とすればよい。例えばフランジ部133のうち、第1部材11と接触する面は、フラット形状でもよいし、なだらかな凸状の曲率を有してもよい。また、第1部材11と接触する面の中央部付近に、アークを点火させるための突起を持たせてもよい。フランジ部133の平面視での形状は、例えば略円形状、又は略多角形(四角形、又は六角形等)形状とすることができる。また、フランジ部133の座部(第2部材12と接触する面)に、軸部131を取り囲む凹部(いわゆる座部アンダーカット)が設けられていてもよい。このような凹部は、フランジ部133に弾性を付与し、これにより締結部材13のかしめ力を一層増大させる。また、フランジ部133の座部に、1つ以上の突起部が設けられていても良い。このような突起部は、リベッティング時に被接合材にめり込むこと、又は被接合材との接合部を形成することにより、締結部材13のかしめ力を一層増大させる。突起部の形状は、円状、多角形状、軸部を囲むリング状が挙げられる。
軸部131の断面形状も特に限定されず、略円形状、略多角形形状などとすることができる。軸部131の径(軸部131の断面が円形ではない場合は、軸部131の円相当径)も特に限定されないが、継手強度を確保する観点から、3mm以上としてもよい。軸部131の径は、軸部131の軸線方向に沿って一定であってもよいし、締結部材13の第2端に向かって軸部131の径が減少する形状(いわゆるテーパ形状)であってもよい。テーパ部が、軸部131の全体にわたって形成されていても、軸部131の先端(即ち締結部材13の第2端)付近にのみ形成されていてもよい。テーパ形状を有する締結部材13は、通し穴121に挿通させやすいので好ましい。
締結部材13の材質も特に限定されないが、鋼材、ステンレス、チタン、アルミニウムなど金属製であることが好ましい。締結部材13を金属材料から構成すれば、締結部材13を通電加熱して軟化させることができるので好ましい。締結部材13は表面処理がされていないものでよいが、耐食性が必要な場合は表面処理がなされていてもよい。例えば、亜鉛系めっき、アルミ系めっき、クロム系めっき、ニッケル系めっき、クロメート処理などが締結部材13にされても良い。特に耐食性が必要な場合や、後塗装なしで使用する場合は、締結部材13をステンレス製締結部材とすることが望ましい。締結部材13は、例えば、コイル線材を切断し、これを切削加工、もしくは冷間鍛造加工することによって製造される。生産性の観点では、締結部材13の製造方法は冷間鍛造加工が望ましい。締結部材13は、加工ままで用いてもよい。一方、締結部材13が鋼材の場合は、冷間鍛造後に焼入れ、焼戻しの熱処理を締結部材13に施しても良い。熱処理により、締結部材13の頭部も含めた締結部材13全体の硬さを上げることで、継手強度がさらに向上する。第1部材11及び第2部材12を鋼板とする場合、締結部材13も低炭素鋼などの鋼材から構成されるものとすることが好ましい。特に、第1部材11及び第2部材12が高強度鋼材である場合、締結部材13も相応の強度を持つ高強度鋼材とすることが好ましい。
第2部材12は、締結部材13の軸部131を挿通させるための通し穴121を有する。通し穴121の構成は特に限定されない。通し穴121の形状は、軸部131の断面形状に合わせて種々選択することができる。通し穴121の形状は、例えば円形等とすることができる。一方、通し穴121の形状が4角形、5角形、6角形、8角形など多角形であってもよい。これらの多角形の角部に曲率を持たせても良い。また、通し穴121の形状が楕円、又は、円の一部に凸部あるいは凹部がある形状であっても良い。通し穴121を円形状以外の形状とすることにより、接合した板材が、軸部131を中心に回転することを防止したり、接合部のガタつきを軽減したりすることができるので、さらに望ましい。
軸部131を挿通させるための通し穴121は、レーザ切断、金型を用いた打ち抜き、ドリルを用いた穿孔等の任意の手段で形成することができる。第2部材12がホットスタンプ鋼板である場合は、熱間での金型打ち抜き、あるいはレーザ切断によって通し穴121を形成することが望ましい。
複数の被接合材間の通し穴121の中心軸は一致していなくても良い。また、通し穴121の大きさは第2部材12の深さ方向に一定であってもよい。一方、深さ方向に通し穴121の大きさが相違する段形状、またはテーパ形状を、通し穴121に適用してもよい。
また、通し穴121の直径の最小値は、軸部131の直径の最大値よりも0.1mm~5mm大きいことが望ましい。0.1mmより小さいと挿通性が悪化し、5mmより大きいと通し穴121の隙間を十分に充填させることが難しくなるためである。より望ましくは、0.3mm~3mmの範囲であり、最適には0.3mm~1.5mmの範囲である。
通し穴121を有する限り、第2部材12の形状は特に限定されない。例えば第2部材12の板厚を0.5mm~3.6mmとしてもよい。また、第2部材12を2以上の部材としてもよい。即ち、本実施形態に係る継手構造の製造方法では、被接合材が3以上であってもよい。軸部131の長さが、複数の第2部材12の合計厚さより長ければ、締結部材13は複数の第2部材12を容易に締結することができる。第2部材12が複数枚の板材である場合、これら板材の好適な組み合わせとして例えば、板厚が約1.6mmの板材と約2.3mmの板材との2枚重ね、又は板厚が0.75mmの板材と、1.8mmの板材と、1.2mmの板材との3枚重ねが挙げられる。板材の好適な組み合わせの範囲として例えば、板厚が約0.7mm~2.9mmの板材と0.7mm~2.9mmの板材との2枚重ね、又は板厚が0.7mm~1.6mm板材と、0.7mm~2.9mmの板材と、0.7mm~2.9mmの板材との3枚重ねが挙げられる。
板材は、冷間もしくは熱間でのプレス成形、冷間でのロール成形、又はハイドロフォーム成形された成形品であっても良い。また、板材はパイプ状に成形されていても良い。
第2部材12の材質も特に限定されず、例えば金属材料、又は金属板とすればよい。第2部材12を鋼材又は鋼板としてもよい。第2部材12を鋼板とした場合、引張強さは780MPa以上、980MPa以上、1180MPa以上、又は1500MPa以上としてもよい。第2部材12をアルミ板、CFRP板、及びチタン板などとしてもよい。第2部材12に種々の表面処理がなされていてもよい。例えば、第2部材12がGAめっき、GIめっき、EGめっき、Zn-Mgめっき、Zn-Al-Mgめっき、Alめっき、並びにホットスタンプによって母材金属と合金化されたZn系めっき(Zn-Fe、Zn-Ni-Fe)及びAl系めっき(Al-Fe-Si)等を有してもよい。第2部材は、締結部材13によって機械的に接合されるので、溶接とは異なり低強度化のおそれがない。従って、例えば、第2部材の材質を引張強さ590MPa以上又は980MPa以上の高強度鋼板とすることにより、従来のスポット溶接継手よりも高いCTSを有する継手構造1を得ることができる。なお、上述した第1部材11と第2部材12とが異なる材料であってもよい。例えば、鋼板とアルミ板との組み合わせ、及び鋼板とCFRP板との組み合わせ、等でもよい。
第1部材11、第2部材12、及び締結部材13が金属製であり、さらに第1部材11と締結部材13とが電気的に導通が取れている場合、本実施形態に係る継手構造の製造方法は、第2部材12の通し穴121に締結部材13の軸部131を挿通させた後、且つ、締結部材13の第2端を塑性変形させる前に、締結部材13の第2端及び第1部材11それぞれに一対の電極Aを配置し、次いで一対の電極Aに通電することにより、締結部材13を通電加熱する工程をさらに備えることができる。通電加熱によって締結部材13を軟化させ、その変形抵抗を小さくすることにより、締結部材13の第2端を塑性変形させることが容易となる。特に、締結部材13が高強度を有する場合、締結部材13の軟化は生産性の向上のために効果的である。
なお、締結部材13を軟化させる手段は、通電加熱に限られない。例えば高周波加熱、及びガス加熱等によって締結部材13を軟化させてもよい。しかし、作業効率を考慮すると、一対の電極Aを用いた通電加熱が極めて有利である。何故なら、一対の電極Aを、締結部材13に加圧して、その第2端を塑性変形させるための手段としても用いることができるからである。この場合、通電加熱及び塑性変形を連続的に実施して、接合に要する時間を著しく短縮することができる。
電極Aは、例えばスポット溶接用の電極とすることができる。スポット溶接用の電極は、鋼板を通電加熱し、且つ加圧するための機構を備えているからである。通電加熱、及び加圧を行う設備は、例えばスポット溶接設備とすることができる。これにより、既存のスポット溶接設備を本実施形態に係る継手構造の製造方法に転用することができる。例えば電極Aは、フラット型電極、シングルR型、CF型、及びDR型等であっても良い。電極Aの材質の例としては、導電性に優れたクロム銅、アルミナ分散銅、及びクロムジルコニウム銅等が挙げられる。
溶接機の電源の例としては、単相交流、直流インバータ、及び交流インバータ等が挙げられる。ガンの形式の例としては、定置式もしくはC型、又はX型等が挙げられる。電極Aが締結部材13(例えばリベット)に印加する加圧力は、例えば150kgf~1000kgfである。加圧力は、好適には250kgf~600kgfである。加圧力の設定値は一定値で良いが、必要に応じて、加圧力を変化させても良い。締結部材13の一部が、加熱及び加圧の際に一旦溶融し、凝固してもよい。溶融凝固部にブローホールが発生する場合は、ブローホールを潰すために、通電後半もしくは通電終了後に加圧力を上げてもよい。また、通電終了後の保持時間の間に、加圧力を変化させてもよい。電極による締結部材13の加圧方向は、締結部材13の軸部131が伸びる方向に対して、10°以下の角度とすることが、良好な接合部を得る観点から望ましい。締結部材13の加圧方向は、より望ましくは締結部材13の軸部131が伸びる方向に対して4°以下である。通電時間は、例えば0.15秒~2秒である。通電時間は好適には0.2秒~1秒である。通電回数は1回でも良い(いわゆる単通電)が、必要に応じて2段通電、3段以上の多段通電や電流を調整して焼戻しのテンパー通電を行っても良い。また、パルス通電や、電流を徐々に上げるアップスロープ、電流を徐々に下げるダウンスロープの通電でも良い。また、通電の前半に高い電流を流して溶融凝固部を形成させ、後半に電流を下げても良い。
本実施形態に係る継手構造の製造方法は、締結部材13以外の接合手段をさらに含んでもよい。異なる2種以上の接合手段を組み合わせることにより、継手構造1の接合強度を一層高めることができる。
例えば、本実施形態に係る継手構造の製造方法は、図3に示されるように、第2部材12の通し穴121に、締結部材13の軸部131を挿通させる前に、第1部材11の、締結部材13が接合される箇所の周辺、及び第2部材12の、通し穴121の周辺の一方又は両方に接着剤14を塗布する工程をさらに備えてもよい。これにより、締結部材13の周囲を接着して、継手構造1の接合強度を一層高めることができる。接着剤14の他に、シーラーを第1部材11及び第2部材12の一方又は両方に塗布してもよい。シーラーはリベット接合継手構造1の耐水性及び耐食性を高める。なお、接着剤14又はシーラーの塗布は、締結部材13の軸部131を挿通させる前の任意のタイミングで行うことができる。図3においては、接着剤14の塗布が予備接合の後に行われているが、接着剤14の塗布を予備接合の前に行ってもよい。これにより図5に示されるような継手構造1が得られる。熱硬化型接着剤の場合、接着剤の硬化は、締結部材による接合後、電着塗装ラインでの焼き付け工程の加熱で行なってもよい。反応硬化型の接着剤の場合は、接着剤の硬化は、締結部材による接合後、時間が経過することにより行われる。接着剤としてはエポキシ系もしくはゴム系が望ましい。シーラーとしてはスポットシーラーが望ましい。
締結部材13と接着剤14とを併用することで継手構造の剛性を一層向上できる利点が得られる。また、締結部材13と接着剤14とを併用することで、異種金属の接合や金属とCFRPとの接合において、重ね面の接触腐食を防止することができる。また、締結部材13の塑性変形部132を覆うようにシーラーを塗布しても良い。これにより締結部材13の塑性変形部132と、金属あるいはCFRPとの間の隙間からの、水の侵入を防ぐことができる。さらに、異種金属の接合の場合や、金属とCFRPとの接合の場合は、少なくとも片側の金属板に、接合前に化成処理と塗装とを施してもよい。これにより、異種材料間の接触腐食についてもさらに強く抑制し、耐食性を高めることができる。また、接着層として、アイオノマーなどの樹脂接着テープを用いても良い。
また、本実施形態に係る継手構造の製造方法が、スポット溶接、レーザ溶接、及びアーク溶接(例えばMAG溶接、MIG溶接、CO溶接、及びプラズマ溶接等)からなる群から選択される一種以上の溶接方法によって第1部材11及び第2部材12を接合する工程をさらに有してもよい。これにより継手構造1の接合強度を一層高めることができる。溶接は、締結部材13を塑性変形させる前に行われても、後に行われてもよい。
ここまで、本実施形態に係る継手構造の製造方法を、自動車部品のような高強度を要する継手構造の製造に適用する場合について想定した。しかしながら、本実施形態に係る継手構造の製造方法は、種々の部品に適用可能である。例えば第1部材11及び第2部材12を橋梁用の厚板(板厚3.6mm~板厚15mm)とし、本実施形態に係る製造方法を橋梁の建設に使うこともできる。建設現場における締結部材13の挿通が不要となるので、本実施形態に係る継手構造の製造方法によれば、橋梁の工期を大きく短縮することができる。この場合、締結部材13の軟化は、ガスバーナーを用いた加熱等によって行えばよい。船舶、及び航空機等の製造に、本実施形態に係る継手構造の製造方法を適用することもできる。また、第1部材11、第2部材12、及び締結部材13を非金属材料(例えば樹脂など)としてもよい。この場合、通電加熱によって締結部材13を軟化することは難しいものの、本接合において締結部材13を挿通する必要がないという、本実施形態に係る継手構造の製造方法の効果を十分に得ることができる。第1部材11、第2部材12、及び締結部材13を非金属材料とした場合、予備接合は、接着剤を用いた接着など、材質に応じた種々の手段によって行うことができる。
次に、本発明の別の態様に係る継手構造について説明する。本実施形態に係る継手構造1は、第1部材11と、通し穴121を有する第2部材12と、軸部131を有する締結部材13と、を備え、締結部材13の第1端が第1部材11に接合され、締結部材13の軸部131が第2部材12の通し穴121に挿通され、締結部材13が、その第2端に塑性変形部132を有し、塑性変形部132によって、第2部材12が第1部材11に締結されている。
第1部材11及び第2部材12の構成は特に限定されない。また、第2部材12に形成され、締結部材13の軸部131が挿通される通し穴121の構成も特に限定されない。軸部131を有する締結部材13の構成も特に限定されない。第2部材12が2以上の部材であってもよい。これらの具体例は、本実施形態に係る継手構造の製造方法の説明において詳述された通りである。
締結部材13は、軸部131と、その第2端に形成された塑性変形部132とを有する。軸部131は、第2部材12の通し穴121に挿通される。締結部材13の第1端は第1部材に接合されており、締結部材13の第2端(即ち軸部131の先端)は潰されて塑性変形部132とされている。これにより、締結部材13は第2部材12を第1部材に締結する。当然ながら、締結部材13の径は、通し穴121の径より大きくされる必要がある。締結部材13の具体例は、本実施形態に係る継手構造の製造方法の説明において詳述された通りである。図4に示されるように、締結部材13の第1端がフランジ部133を有してもよい。
例えば、第1部材11が、金属板であり、第2部材12が、鋼板(例えば引張強さ780MPa以上の高強度鋼板)であり、締結部材13が、金属部材であってもよい。高強度鋼板が被接合材とされた通常のスポット溶接継手においては、溶接部において高強度鋼板の低強度化が生じるので、CTSが低下する。一方、本実施形態に係る継手構造において、第2部材12は締結部材13を用いて機械的に接合されるので、低強度化が生じない。従って、本実施形態に係る継手構造1は、従来のスポット溶接継手構造よりも高いCTSを有する。また、第1部材11と締結部材13とが、導通するように接続されていてもよい。このような構成を有する継手構造1の製造にあたっては、一対の電極Aを用いた通電加熱によって締結部材13を軟化させ、さらに、これら電極Aを用いて締結部材13の第2端を塑性変形させることができる。従って、このような構成を有する継手構造1は、極めて高い生産性を有する。
第1部材11と締結部材13との接合部の形態は特に限定されない。例えば、締結部材13の第1端が第1部材11に溶接されていてもよい。換言すると、本実施形態に係る継手構造1は、第1部材11と締結部材13の第1端とを接合する溶接部を有してもよい。溶接部は、例えばアークスタッド溶接部であってもよいし、その他の溶接方法によって得られた溶接部(例えばレーザ溶接部等)であってもよい。一方、第1部材11と締結部材13との接合部が摩擦圧接部であってもよいし、接着剤によって形成された接着部であってもよい。
継手構造1が、締結部材13以外の手段による接合部をさらに有してもよい。例えば、第1部材11における締結部材13が接合された箇所の周辺、及び第2部材12における通し穴121の周辺に配された接着剤14をさらに有していてもよい。接着剤14によって第1部材11及び第2部材12を接合することにより、継手構造1の接合強度を一層高めることができる。図5に示されるように、継手構造1がフランジ部133及び接着剤14を兼備することも妨げられない。接着剤14と同様に配されたシーラーを継手構造1が有してもよい。
また、継手構造1が、第1部材11及び第2部材12を接合する、スポット溶接部、レーザ溶接部、及びアーク溶接部からなる群から選択される一種以上の溶接部をさらに有してもよい。締結部材13と、その他の接合手段とを併用した継手構造1の例(バンパー)を図6に示す。図6に示されるように、衝突時に負荷される応力が高くなると予想される部位に、本実施形態に係る締結部材13(図6における黒丸部分)を用いた接合を行い、その他の箇所では別の接合手段(例えば安価なスポット溶接によって形成されるスポット溶接部15)(図6における白丸部分)を採用してもよい。
本実施形態に係る継手構造1では、図7又は図8に示されるように、締結部材13の軸部131の軸線に平行な断面視において、塑性変形部132の頂面が、軸部131の軸線に沿った方向において、締結部材13の近傍の第2部材12の面122から、軸部131から離れる側に向けて0.6mm離れた位置よりも、軸部131側にあってもよい。好ましくは、塑性変形部132の頂面が、締結部材13の近傍の第2部材12の面122(外面)よりも軸部131側にある。ここで、第2部材12の面122(外面)とは、第2部材12において、他の板材と接していない面を意味する。これにより、塑性変形部132が第2部材12から突出することを抑制し(または、突出部の高さを0.6mm以内に抑制し)、塑性変形部132と、その他の部品との干渉を抑制することができる。
図7および図8の例では、締結部材13の塑性変形部132の頂面が、締結部材13の近傍の第2部材12の面122(外面)よりも、軸部131側にある。一方、塑性変形部132の頂面が最大で0.6mmだけ外面からはみ出していてもよい。即ち、図7及び図8において、塑性変形部132の頂面が、点線から0.6mm突出したとしても、他の部品との干渉を抑制する効果が得られる。
上述した手法により第1部材11及び第2部材12を接合する前、あるいは、接合してから、第1部材11及び第2部材12をプレス成形することで、塑性変形部132の頂面が、軸部131の軸線に沿った方向において、締結部材13の近傍の第2部材12の面122から、軸部131から離れる側に向けて0.6mm離れた位置よりも、軸部131側にあるようにしてもよい。図7の例では、第2部材12が、締結部材13の近傍において、塑性変形部132の側へ変形されている。これにより、図7の例では、塑性変形部132の頂面が、軸部131の軸線に沿った方向において、締結部材13の近傍の第2部材12の面122から0.6mm離れた位置よりも、軸部131側に配されている。図8の例では、第2部材12が、締結部材13の近傍において塑性変形部132の側へ変形され、かつ、第1部材11が、締結部材13の近傍において、第2部材12に対応して変形されている。これにより、図8の例では、塑性変形部132の頂面が、軸部131の軸線に沿った方向において、締結部材13の近傍の第2部材12の面122から0.6mm離れた位置よりも、軸部131側に配されている。なお、図7及び図8に記載の破線は、第2部材12の面122に一致する面を示す。
本発明の別の態様に係る自動車部品は、本実施形態に係る継手構造1を有する。これにより、本実施形態に係る自動車部品は、通常のスポット溶接継手よりも高いCTSを有し、且つ通常のリベット接合継手より高い生産性を有する。本実施形態に係る自動車部品とは、例えば、衝突安全性を確保するために重要な部材であるバンパー、及びBピラーである。図9に、本実施形態に係る自動車部品の一例であるBピラーの断面図を示す。図6及び図10それぞれに、本実施形態に係る自動車部品の一例であるバンパーの斜視図及び断面図を示す。また、バンパーリンフォース、Aピラー、サイドシル、ルーフレール、フロアメンバー、フロントサイドメンバー、リアサイドメンバー、フロントサスタワー、トンネルリンフォース、トルクボックス、シート骨格、シートレール及びバッテリーケースのフレームを、本実施形態に係る自動車部品としてもよい。また、本実施形態に係る自動車部品を、バンパーリンフォース及びクラッシュボックスが、本実施形態に係る継手構造によって接合されているもの、Bピラー、Aピラー、サイドシル、及びルーフレールからなる群から選択される二種以上が、本実施形態に係る継手構造によって接合されているもの、又は、フロアメンバー、フロントサイドメンバー、リアサイドメンバー、フロアーパネル、及びダッシュパネルからなる群から選択される二種以上が、本実施形態に係る継手構造によって接合されているものとしてもよい。
第1部材に、軸部を有する締結部材の第1端を接合する工程(第1の工程)と、第2部材の通し穴に、締結部材の軸部を挿通させる工程と、締結部材の第2端を塑性変形させて、第1部材及び第2部材を締結する工程(第2の工程)と、を有する継手構造の製造方法によって、種々の継手構造を製造した。
第1部材及び第2部材を構成する供試材として、板厚1.6mm且つ引張強さ1.8GPa級の鋼板と、板厚1.6mm且つ引張強さ1.5GPa級の鋼板と、板厚2.0mm且つ引張強さ0.78GPa級の鋼板とを用いた。
第1の工程は、ドローン・アークスタッド溶接法で実施した。締結部材は、以下の構成を有するフランジ付きスタッドとした。
・材質:低炭素鋼製
・フランジ部の形状:直径13mm、及び厚さ2mmであり、鋼板と接触する側になだらかな曲率をもつ形状
・軸部の形状:直径6mm、長さ10mm
このフランジつきスタッドのフランジ部を、第1部材と溶接した。溶接条件は以下の通りとした。
・メイン電流値:1700A
・メイン電流時間:26~36msecの範囲内で調整
・リフト距離:1.2mm
・押し込み深さ:1.2mm
第2の工程では、予めレーザピアスで直径7mmの穴を空けた第2部材の穴に、第1部材に接合されたスタッドを挿通し、スポット溶接機の電極でスタッドを挟み込み、スタッドに加圧しながら通電し、これにスタッドを変形させて、第2部材をかしめた。第2の工程の実施条件は以下の通りとした。
・電極:Cu-Cr合金製造のフラット型電極
・加圧力:400kgf
・通電時間:333msec
・電流値:6kA~8kAの範囲内で調整
・保持時間:300msec
また、本発明と対比される比較例の継手構造を、スポット溶接によって製造した。比較例のスポット溶接条件は、以下の通りとした。
電極:DR型先端径6mm、円柱部の径16mm
・加圧力:400kgf
・通電時間:333msc
・電流:7kA
・保持時間300msec
これらの条件で接合された試験片については、JIS Z3137に準拠してCTSを評価した。結果を以下に示す。発明例では、スポット溶接よりも高いCTSが得られた。
Figure 0007485912000001
本発明は、生産性に優れ、且つCTSに優れた継手構造の製造方法、並びに、生産性及びCTSに優れた継手構造及び自動車部品を提供することができるので、高い産業上の利用可能性を有する。
1 継手構造
11 第1部材
12 第2部材
121 通し穴
122 第2部材の面
13 締結部材
131 軸部
132 塑性変形部
133 フランジ部
14 接着剤
15 スポット溶接部

Claims (18)

  1. 第1部材に、軸部を有する締結部材の第1端を接合する工程と、
    第2部材の通し穴に、前記締結部材の前記軸部を挿通させる工程と、
    前記締結部材の第2端を塑性変形させて、前記第1部材及び前記第2部材を締結する工程と、
    を備え
    前記第1部材を、金属板とし、
    前記第2部材を、鋼板とし、
    前記締結部材を、金属部材とし、
    前記第1部材及び前記締結部材が導通するように、第1部材に軸部を有する締結部材の第1端を接合させ、
    前記第2部材の前記通し穴に前記締結部材の前記軸部を挿通させた後、且つ、前記締結部材の前記第2端を塑性変形させる前に、前記締結部材の前記第2端及び前記第1部材それぞれに一対の電極を配置し、次いで前記一対の電極に通電することにより、前記締結部材を通電加熱する工程をさらに備え、
    前記第2端を、前記一対の電極を用いて加圧することによって塑性変形させ、
    前記軸部が中実である
    ことを特徴とする継手構造の製造方法。
  2. 前記第1部材に、前記締結部材の前記第1端を、アークスタッド溶接によって接合することを特徴とする請求項1に記載の継手構造の製造方法。
  3. 前記締結部材の前記第1端がフランジ部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の継手構造の製造方法。
  4. 前記第2部材を2以上の部材とする
    ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の継手構造の製造方法。
  5. 前記第2部材の前記通し穴に、前記締結部材の前記軸部を挿通させる前に、
    前記第1部材の、前記締結部材が接合される箇所の周辺、及び
    前記第2部材の、前記通し穴の周辺
    の一方又は両方に接着剤を塗布する工程をさらに備える
    ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の継手構造の製造方法。
  6. スポット溶接、レーザ溶接、及びアーク溶接からなる群から選択される一種以上の溶接方法によって前記第1部材及び前記第2部材を接合する工程をさらに備えることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の継手構造の製造方法。
  7. 前記第2部材を、引張強さ780MPa以上の鋼板とすることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の継手構造の製造方法。
  8. 第1部材と、
    通し穴を有する第2部材と、
    軸部を有する締結部材と、
    を備え、
    前記締結部材の第1端が前記第1部材に接合され、
    前記締結部材の前記軸部が前記第2部材の前記通し穴に挿通され、
    前記締結部材が、その第2端に塑性変形部を有し、
    前記塑性変形部によって、前記第2部材が前記第1部材に締結されており、
    前記第1部材が、金属板であり、
    前記第2部材が、鋼板であり、
    前記締結部材が、金属部材であり、
    前記第1部材と前記締結部材とが、導通するように接続されており、
    前記軸部が中実である
    ことを特徴とする継手構造。
  9. 前記締結部材の前記第1端が前記第1部材に溶接されていることを特徴とする請求項に記載の継手構造。
  10. 前記締結部材の前記第1端がフランジ部を有する
    ことを特徴とする請求項8又は9に記載の継手構造。
  11. 前記第2部材が2以上の部材である
    ことを特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載の継手構造。
  12. 前記第1部材における前記締結部材が接合された箇所の周辺、及び前記第2部材における前記通し穴の周辺に配された接着剤をさらに備える
    ことを特徴とする請求項8~11のいずれか一項に記載の継手構造。
  13. 前記第1部材及び前記第2部材を接合する、スポット溶接部、レーザ溶接部、及びアーク溶接部からなる群から選択される一種以上の溶接部をさらに備えることを特徴とする請求項8~12のいずれか一項に記載の継手構造。
  14. 前記第2部材が、引張強さ780MPa以上の鋼板であることを特徴とする請求項8~13のいずれか一項に記載の継手構造。
  15. 前記締結部材の前記軸部の軸線に平行な断面視において、前記塑性変形部の頂面が、前記軸部の前記軸線に沿った方向において、前記締結部材の近傍の前記第2部材の面から、前記軸部から離れる側に向けて0.6mm離れた位置よりも、前記軸部側にあることを特徴とする請求項8~14のいずれか一項に記載の継手構造。
  16. 請求項8~15のいずれか一項に記載の継手構造を備える自動車部品。
  17. バンパーリンフォース、Aピラー、サイドシル、ルーフレール、フロアメンバー、フロントサイドメンバー、リアサイドメンバー、シート骨格、シートレール又はバッテリーケースのフレームである
    ことを特徴とする請求項16に記載の自動車部品。
  18. バンパーリンフォース及びクラッシュボックス、
    Bピラー、Aピラー、サイドシル、及びルーフレールからなる群から選択される二種以上、又は、
    フロアメンバー、フロントサイドメンバー、リアサイドメンバー、フロアーパネル、及びダッシュパネルからなる群から選択される二種以上
    が、請求項8~15のいずれか一項に記載の継手構造によって接合されたものであることを特徴とする請求項16に記載の自動車部品。
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