(本開示の基礎となった知見)
本発明者は、上記特許文献1の部品実装システムに関し、以下の課題が生じることを見出した。
上記特許文献1の部品実装システムでは、位置ずれ量についての標準偏差などの代表値が閾値以上ずれている場合に、部品実装システムに不具合が発生していると判定し、その不具合発生を報知する。しかし、その報知が行われたときには、既に不具合が発生している。
そこで、代表値の変化を監視し、その変化に基づいて、不具合が発生する前に、その不具合発生の予兆があるか否かを判定する部品実装システムが想定される。この代表値には、工程能力指数であるCpを用いることができる。つまり、部品実装システムは、現時点で算出されたCpの、前回算出されたCpからの変化量を算出し、その変化量が閾値未満のときに、不具合発生の予兆があると判定して報知を行う。なお、変化量は、例えば低下量であって負の値であり、閾値も負の値である。
しかしながら、Cpは、位置ずれ量の標準偏差を除数として用いることによって算出される値であるため、Cpが高い場合には、その標準偏差が少し変化しただけでもCpは大きく変動する。その結果、実際には不具合発生の予兆がないにも関わらず、Cpが大幅に低下することによって、不具合発生の予兆に関する報知が行われてしまう可能性がある。
このような課題を解決するために、本開示の一態様に係る部品実装システムは、複数の部品を少なくとも1つの基板へ実装する部品実装部と、複数の時点のそれぞれについて、当該時点において部品の実装に用いられたパラメータのずれを少なくとも示す検査情報に基づいて、当該時点における前記部品実装部による部品の実装の精度を表す評価値を算出する評価値算出部と、前記複数の時点のそれぞれで算出された前記評価値を用いた判定を行う判定部と、前記判定部による判定結果を出力する出力部と、を備え、前記判定部は、第2時点において算出された評価値である第2評価値に対する、第1時点において算出された評価値である第1評価値の変化率を、第1変化率として算出し、前記第1変化率が所定の閾値未満であるかを判定し、前記第1時点および第2時点は、前記複数の時点に含まれ、前記第2時点は、前記第1時点よりも前の時点である。なお、評価値は、部品の実装の精度が高いほど高いまたは大きい値である。例えば、前記複数の時点のそれぞれで算出される前記評価値は、前記パラメータのずれに対する工程能力指数であってもよい。
これにより、工程能力指数などの評価値の変化量ではなく、その評価値の変化率が閾値未満であるか否かが判定され、その判定結果が出力される。したがって、変化前の評価値が高い値であっても低い値であっても、その値に関わらず、例えば位置ずれのばらつきに応じて、そのばらつきの要因となる部品実装システムの不具合発生の予兆を適切に判定し、部品実装の作業者にその予兆を知らせることができる。その結果、部品実装の精度を高く維持することができる。
また、前記パラメータは、前記部品実装部によって基板に実装された部品の位置であってもよい。
これにより、部品の位置ずれのばらつきの要因となる不具合発生の予兆を適切に判定して作業者に知らせることができる。
また、前記出力部は、前記判定部によって前記第1変化率が前記所定の閾値未満であると判定された場合、前記判定結果の出力として、エラーを報知してもよい。
これにより、第1変化率が閾値未満であれば、エラーが報知されるため、作業者に対して部品実装システムの確認およびメンテナンスを促すことができる。
また、前記第1評価値は、前記複数の時点のうちの最新の時点である前記第1時点で得られた前記検査情報に基づいて算出された評価値であってもよい。
これにより、第1評価値は、例えば現時点である最新の時点における工程能力指数であって、後述のCp今回値であるため、現時点における第1変化率に対して判定を行うことができる。その結果、現時点における不具合発生の予兆を適切に判定することができる。
また、前記第2評価値は、前記複数の時点のうちの前記第1時点の直前の時点である前記第2時点で得られた前記検査情報に基づいて算出された評価値であってもよい。
これにより、第2評価値は、例えば前回に算出された工程能力指数であって、後述のCp前回値であるため、比較的短期間における変化率に対して判定を行うことができる。その結果、比較的短期間の状況から不具合発生の予兆を適切に判定することができる。
また、前記判定部は、さらに、第3時点において算出された評価値である第3評価値に対する、前記第1評価値の変化率を、第2変化率として算出し、前記第2変化率が前記所定の閾値未満であるか否かを判定し、前記第3時点は、前記複数の時点のうちの前記第2時点の直前の時点であってもよい。
これにより、第3評価値は、例えば前々回に算出された工程能力指数であって、後述のCp前々回値であるため、比較的長期間における変化率に対して判定を行うことができる。その結果、比較的長期間の状況から不具合発生の予兆を適切に判定することができる。例えば、短期間の状況からその予兆を判定することができなくても、長期間の状況からその予兆を適切に判定することができる場合がある。
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたは記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。また、記録媒体は、非一時的な記録媒体であってもよい。
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
(実施の形態)
[全体構成]
図1は、本実施の形態における部品実装システム1の概略構成の一例を示す図である。本実施の形態における部品実装システム1は、基板に電子部品を実装して実装基板を製造する機能を有し、例えば、管理装置3、半田印刷装置M1、部品実装装置M2,M3および検査装置M4を備えている。半田印刷装置M1、部品実装装置M2,M3および検査装置M4は、通信ネットワーク2を介して管理装置3に接続されている。なお、電子部品は、単に部品とも呼ばれる。
半田印刷装置M1は、実装対象の基板に部品接合用の半田をスクリーン印刷する。部品実装装置M2,M3は、その部品接合用の半田が印刷された基板に部品を移送搭載する部品実装作業を行う。検査装置M4は、部品実装装置M2,M3により部品を実装された実装後の基板における部品の実装状態を検査して、その部品の正しい実装位置からの位置ずれ状態を検出する。そして、検査装置M4は、その検出された位置ずれ状態を示す基板検査情報を生成する。管理装置3は、ライン管理機能と併せて、検査装置M4によって生成された基板検査情報に基づいて、部品実装装置M2,M3による実装時の精度を表す評価値を算出する。なお、ライン管理機能は、実装基板の製造ラインを管理する機能であって、その製造ラインは、例えば、半田印刷装置M1、部品実装装置M2,M3および検査装置M4からなる。また、本実施の形態では、部品実装システム1は、1つの製造ラインを備えるが、その製造ラインの数は1つに限らず、2つ以上であってもよい。さらに、製造ラインに含まれる部品実装装置の数は2つに限らず、1つであっても、3つ以上であってもよい。
[部品実装装置の構成]
図2および図3は、部品実装装置M2またはM3の構成を示す図である。なお、図2は、部品実装装置M2またはM3を鉛直上方から見た構成の一例を示し、図3は、図2における部品実装装置M2またはM3のIII-III線での断面を示している。また、本実施の形態では、部品実装装置M2と部品実装装置M3とは、同一の構成を有するが、互いに異なる構成を有していてもよい。
図2において、基台4の上面の中央には、X方向(すなわち基板搬送方向)に沿う基板搬送機構5が配設されている。基板搬送機構5は、上流側装置から受け渡された基板6を搬送して、以下に説明する部品実装部10が部品実装作業を行うための位置に、基板6を位置決めして保持する。本実施の形態においては、基板6には、実装範囲が設定され、さらに、その実装範囲を分割することによって得られる複数の格子状のセル領域である複数の実装領域6a(i)が設定されている。前述の評価値の算出においては、インデックス(i)によって特定される実装領域6a毎に個別に評価値が算出されてもよい。
なお、本開示において、同種のユニットが複数存在する場合には、必要に応じて、それらのユニットは、インデックス(i)によって区別される。iは、例えば任意の自然数であってもよい。ユニットの一例は、上述の実装領域6aであって、基板6に16個の実装領域6aが設定される場合、それらの実装領域6aは、実装領域6a(i=1)~6a(i=16)によって区別される。また、ユニットは、後述のテープフィーダ8、吸着ノズル11a、または実装ヘッド11であってもよい。
基板搬送機構5の両側方(すなわちY方向の正側および負側)には、部品供給部7が配置されており、部品供給部7には複数のテープフィーダ8が並設されている。なお、Y方向は、水平面においてX方向と直交する方向である。テープフィーダ8は、実装対象の部品を保持したキャリアテープをピッチ送りすることにより、部品実装部10の実装ヘッド11によって部品の吸着が行われる部品吸着位置に、部品を供給する。基台4の上面においてX方向の一方側の端部には、X方向と直交するY方向に沿ってY軸ビーム13が配設されており、Y軸ビーム13には2基のX軸ビーム12が、Y方向に移動自在に結合されている。
2基のX軸ビーム12には、それぞれ実装ヘッド11がX方向に移動自在に装着されている。実装ヘッド11は複数の保持ヘッド11b(図3参照)を備えた多連型ヘッドであり、それぞれの保持ヘッド11bの下端部には、図3に示すように、電子部品を吸着して保持し個別に昇降可能な吸着ノズル11aが装着されている。
Y軸ビーム13およびX軸ビーム12の駆動によって、実装ヘッド11はX方向およびY方向に移動する。これにより2つの実装ヘッド11は、それぞれ対応した部品供給部7のテープフィーダ8の部品吸着位置から部品を吸着ノズル11aによって吸着保持して取り出して、基板搬送機構5に位置決めされた基板6の実装点に移送搭載する。Y軸ビーム13、X軸ビーム12および実装ヘッド11は、部品を基板6に実装する部品実装部10を構成する。
部品供給部7と基板搬送機構5との間には、部品認識カメラ9が配設されている。部品供給部7から部品を取り出した実装ヘッド11が部品認識カメラ9の上方を移動する際に、部品認識カメラ9は実装ヘッド11に保持された状態の部品を撮像して認識する。実装ヘッド11にはX軸ビーム12の下面側に位置して、それぞれ実装ヘッド11と一体的に移動する基板認識カメラ14が装着されている。実装ヘッド11が移動することにより、基板認識カメラ14は、基板搬送機構5に位置決めされた基板6の上方に移動し、基板6を撮像して認識する。実装ヘッド11による基板6への部品実装動作においては、部品認識カメラ9による部品の認識結果と、基板認識カメラ14による基板認識結果とを加味して搭載位置補正が行われる。
図3に示すように、部品供給部7には、フィーダベース15aに予め複数のテープフィーダ8が装着された状態の台車15がセットされる。フィーダベース15aには、個々のテープフィーダ8が装着されたフィーダ位置を特定するためのフィーダアドレスが設定されている。フィーダベース15aにセットされた個々のテープフィーダ8(i)は、これらのフィーダアドレスを介して特定される。部品供給部7に装着された台車15には、部品を収納したキャリアテープ17を巻回状態で収納する供給リール16が保持されている。供給リール16から引き出されたキャリアテープ17は、テープフィーダ8によって吸着ノズル11aによる部品吸着位置までピッチ送りされる。
図4は、実装ヘッド11の一例を示す図である。図4に示すように、実装ヘッド11は複数の保持ヘッド11bを備えた多連型ヘッドであり、各保持ヘッド11bは駆動機構11cを備えている。駆動機構11cの駆動により、各保持ヘッド11bの下端部に装着された吸着ノズル11aは、昇降する(矢印a)とともに、ノズル軸AN廻りに回転する(矢印b)。
部品実装部10は、複数の部品を少なくとも1つの基板6へ実装する部品実装作業を行う。この部品実装部10による部品実装作業においては、実装ヘッド11が備えた吸着ノズル11aによって、部品供給部7に装着されたテープフィーダ8から部品を取り出して基板6に移送搭載する単位作業が反復実行される。この部品実装作業においては、基板6における実装領域6a(i)(図2参照)、部品供給部7におけるテープフィーダ8(i)、部品実装システム1内の部品実装装置M2またはM3における実装ヘッド11(i)、および、実装ヘッド11における吸着ノズル11a(i)が、個々の単位作業毎に特定されている。つまり、単位作業には、その単位作業で用いられた実装領域6a(i)と、テープフィーダ8(i)と、実装ヘッド11(i)と、吸着ノズル11a(i)とが関連情報として関連付けられる。
そして、基板検査情報は、検査装置M4によって実行される実装後検査の検査結果として、単位作業によって実装された部品と、その部品の位置ずれ状態と、その単位作業に関連付けられている関連情報とを示す。つまり、位置ずれ状態は、インデックス(i)によって個別に特定される実装領域6a(i)、テープフィーダ8(i)、実装ヘッド11(i)、吸着ノズル11a(i)と個別に紐付けられている。これにより、部品実装部10による実装時の精度を表す評価値を、実装領域6a(i)、テープフィーダ8(i)、実装ヘッド11(i)、吸着ノズル11a(i)のそれぞれの評価対象毎(すなわちユニット毎)に求めることが可能である。
[処理機能]
図5は、管理装置3と、部品実装装置M2,M3と、検査装置M4とのそれぞれの構成の一例を示すブロック図である。図5において、管理装置3、部品実装装置M2,M3および検査装置M4は、通信ネットワーク2を介して互いに接続されている。
[部品実装装置の処理機能]
部品実装装置M2、M3はそれぞれ、上述の部品実装部10、実装制御部20、記憶部21、演算処理部23、表示部24、認識処理部25、基板認識カメラ14、および部品認識カメラ9を備えている。実装制御部20は、記憶部21に記憶された実装プログラムd11やデータに基づいて、部品実装部10、演算処理部23、表示部24、および認識処理部25を制御する。例えば、実装制御部20が実装プログラムd11に基づいて部品実装部10を制御することにより、部品実装作業が実行される。
演算処理部23は、後述する補正値算出処理や評価値算出処理などの演算処理を必要に応じて実行する。なお、これらの演算処理を管理装置3が実行する場合には、演算処理部23の機能は必要とされない。表示部24は、液晶パネルなどの表示装置であり、演算処理部23によって実行された演算結果などを必要に応じて表示する。
認識処理部25は、基板認識カメラ14および部品認識カメラ9による撮像結果を認識処理する。基板認識カメラ14による撮像結果を認識処理することにより、基板6の位置が検出され、部品認識カメラ9による撮像結果を認識処理することにより、実装ヘッド11に保持された状態における部品の位置が検出される。部品実装部10による部品実装作業においては、実装制御部20は、これらの検出された部品および基板6のそれぞれの位置を用いて部品実装部10を制御する。
[検査装置の処理機能]
検査装置M4は、検査制御部30、記憶部31、検査処理部34、および検査用カメラ35を備えている。検査処理部34は、検査用カメラ35による撮像結果に基づいて所定の検査処理を行う。検査制御部30は、記憶部31に記憶された検査プログラムd21やデータに基づいて検査処理部34を制御する。検査処理部34は、検査制御部30による制御に基づいて上述の検査処理を行い、検査結果を示す基板検査情報d22を記憶部31に格納する。また、検査制御部30は、記憶部31に格納されている基板検査情報d22を、通信ネットワーク2を介して管理装置3に送信する。
図6は、基板検査情報d22の内容を説明するための図である。基板検査情報d22は、部品実装後の基板6に実行される実装後検査の結果を示す。部品実装作業では、部品供給部7のテープフィーダ8から実装ヘッド11の吸着ノズル11aによって取り出した部品Pを、基板6に設定された実装点Mである目標位置に移送搭載する。つまり、部品実装装置M2またはM3は、実装点Mに部品Pを実装しようとする。このとき部品Pの部品中心Cが必ずしも実装点Mに対して正しく一致するとは限らず、X方向にΔXだけ位置ずれし、Y方向にΔYだけ位置ずれし、θ方向(XY面内での回転方向)にΔθだけ位置ずれする場合がある。
これらの位置ずれは、基板6に実装された部品Pを検査用カメラ35によって撮像した結果を検査処理部34によって認識処理することにより取得される。ΔX、ΔY、およびΔθは、それぞれ位置ずれ量であり、これらの位置ずれ量によって上述の位置ずれ状態が定義される。また、部品Pの位置ずれ情報は、その部品PのΔX、ΔY、およびΔθを示す情報である。検査処理部34は、部品実装後の基板6である実装基板の検査を行うごとに、その実装基板の基板6に実装されている全ての部品Pのそれぞれの位置ずれ情報をまとめることにより当該実装基板の基板検査情報d22を生成する。なお、基板検査情報d22には、上述の全ての部品Pのそれぞれの位置ずれ情報に関連付けて、その位置ずれ情報に対応する部品Pと、上述の関連情報とが示されている。そして、このように実装基板ごとに生成された基板検査情報d22が記憶部31に格納される。すなわち基板検査情報d22は、基板6へ実装された少なくとも1つの部品のそれぞれの位置ずれ情報を少なくとも含む。
本実施の形態においては、基板検査情報d22によって示される部品ごとの位置ずれ情報は、その部品の目標位置である実装点Mが属する実装領域6a(i)と、その部品が取り出されたテープフィーダ8(i)と、その部品の実装動作を行った実装ヘッド11(i)と、その部品を吸着した吸着ノズル11a(i)とに個別に紐付けられている。これにより、部品実装装置M2およびM3による部品実装作業に対する実装後検査の結果を、ユニット毎に評価することができる。つまり、その実装後検査の結果を、実装領域毎、テープフィーダ8毎、実装ヘッド11毎、または吸着ノズル11a毎に区分して評価することができる。そしてこれらの基板検査情報d22は、通信ネットワーク2を介して管理装置3に送信される。
[管理装置の処理機能]
管理装置3は、全体制御部40、記憶部41、演算処理部46、および表示部49を備えている。全体制御部40は、記憶部41に記憶された実装プログラムd1やデータに基づいて演算処理部46および表示部49を制御する。これにより、部品実装システム1を構成する各装置による作業動作および演算処理が実行される。記憶部41には、実装プログラムd1および閾値データd5が記憶されている。また、全体制御部40または演算処理部46によって、基板検査情報d2、評価値算出データd3、および変化率算出データd4が、その記憶部41に格納される。演算処理部46は、補正値算出部46a、評価値算出部46b、および判定部46cを備えている。表示部49は、液晶パネルなどの表示装置であり、判定部46cによる判定結果などを示す表示画面を表示する。
実装プログラムd1は、部品実装作業を実行するための動作プログラムや実装座標データなどの情報を含む。このような実装プログラムd1は、上位システムなど他装置から管理装置3に渡された後、通信ネットワーク2を介して実装プログラムd11として部品実装装置M2、M3へ伝達される。基板検査情報d2は、検査装置M4によって生成された基板検査情報d22が通信ネットワーク2を介して管理装置3に伝達されたデータである。例えば、全体制御部40は、通信ネットワーク2を介して検査装置M4から基板検査情報d22を取得し、その基板検査情報d22を基板検査情報d2として記憶部41に格納する。その結果、記憶部41には、部品実装済みの複数の基板6のそれぞれの基板検査情報d2が格納される。評価値算出データd3は、後述する評価値算出部46bによる評価値算出処理によって算出された評価値を示すデータである。閾値データd5は、後述する判定部46cによる判定に用いられる閾値を示すデータである。変化率算出データd4は、その判定部46cによって算出される評価値の変化率を示すデータである。
補正値算出部46aは、基板6へ実装された部品の位置ずれ情報を少なくとも含む基板検査情報d2に基づいて、実装プログラムd1を補正する補正値を算出する処理を行う。すなわち、補正値算出部46aは、図6に示す位置ずれ量ΔX、ΔY、およびΔθのそれぞれについて、その位置ずれ量の100%または予め規定された所定割合を補正値として算出する。なお、位置ずれ量が正の値の場合には、補正値は、負の値であってもよい。さらに補正値算出部46aは、算出された補正値に基づいて実装プログラムd1を補正する補正処理を行う。この補正処理において、補正値算出部46aは、直近の基板検査情報d2を含めた所定期間の複数の基板検査情報d2に基づいて補正値を算出する。例えば、補正値算出部46aは、予め設定された第1規定数の基板検査情報d2を蓄積し、蓄積された第1規定数の基板検査情報d2に示される位置ずれ量を統計処理する。補正値算出部46aは、その統計処理によって、例えば、それらの位置ずれ量の平均値などを算出し、その平均値を用いて、実装プログラムd1を補正するための補正値を算出する。
そして、全体制御部40は、補正値算出部46aによって補正された実装プログラムd1を、通信ネットワーク2を介して部品実装装置M2およびM3に送信する。その結果、その送信された実装プログラムd1が、記憶部21に動作実行用の実装プログラムd11として記憶される。つまり、記憶部21に記憶されている実装プログラムd1が、補正後の実装プログラムd1に更新される。実装制御部20は、部品実装部10を制御して部品実装を行う際には、その補正された実装プログラムd11にしたがって部品を基板6に実装する。
評価値算出部46bは、記憶部41に記憶されている少なくとも1つの基板検査情報d2に基づいて、部品実装部10による実装時の精度を表す評価値を算出する処理を、評価値算出処理として行う。この評価値算出処理によって、評価値算出部46bは、算出された評価値を示す評価値算出データd3を記憶部41に格納する。ここでは、評価値として、例えば工程能力指数Cpが用いられる。評価値算出部46bは、例えば、予め定められた第2規定数の基板検査情報d22が生成されてそれらが基板検査情報d2として記憶部41に格納されるたびに、その第2規定数の基板検査情報d2を用いて、そのときの評価値である工程能力指数Cpを算出する。なお、第2規定数は、1以上の整数である。また、工程能力指数Cpは、以下、Cp値とも呼ばれる。
判定部46cは、評価値算出部46bによって算出された評価値であるCp値の変化率を算出する。そして、判定部46cは、その算出された変化率を示す変化率算出データd4を記憶部41に格納する。さらに、判定部46cは、記憶部41から閾値データd5を読み出し、その算出されたCp値の変化率が、その閾値データd5に示される閾値未満であるか否かを判定する。表示部49は、その判定部46cによる判定結果を出力する。つまり、本実施の形態では、表示部49は、判定結果を出力する出力部の一例である。
[Cp値、Cp値の変化率、および、変化率に対する判定の詳細]
図7は、基板検査情報d2に基づいて算出される工程能力指数Cpを説明するための図である。
図7の(a)に示す規格幅Tは、実装された部品を正常に半田接合可能な許容位置ずれ量を規定するものであり、実際に部品を接合した実験結果を評価することにより、経験的に予め定められている。また、許容範囲上限UCLおよび許容範囲下限LCLは、位置ずれ量の許容範囲の上限および下限を規定するものである。許容範囲上限UCLと許容範囲下限LCLとの差分が、上述の規格幅Tに相当する。ここでは、部品の接合特性、すなわち、当該部品を正常に所定回数半田接合して得られる位置ずれ量を統計処理して求められる標準偏差σの±3倍の±3σが、許容範囲上限UCLおよび許容範囲下限LCLとしてそれぞれ採用されている。
図7の(b)は、第2規定数の基板検査情報d2に基づいて算出される統計諸量を示している。図7の(b)におけるグラフの横軸は、位置ずれ量を示し、縦軸は、発生頻度を示す。まず、評価値算出部46bは、第2規定数の基板検査情報d2に示される同一品種の部品の位置ずれ量ΔX、ΔYおよびΔθを個別に統計処理する。これにより、評価値算出部46bは、その品種の位置ずれ量ΔX、ΔYおよびΔθのそれぞれについて、その位置ずれ量のばらつきの程度を示す標準偏差σを算出する。そして、評価値算出部46bは、予め与えられる規格幅Tと、算出された標準偏差σとに基づいて、工程能力指数Cp=T/6σを評価値として求める。このような評価値であるCp値は、ΔX、ΔYおよびΔθのそれぞれに対して算出される。
例えば、Cp値の算出に必要な位置ずれ量(例えばΔX)の数が30個であって、1枚の基板6に実装される品種Aの部品の数が5個であれば、Cp値の算出には、6枚の基板6に実装された品種Aの部品の位置ずれ量が必要とされる。したがって、評価値算出部46bは、第2規定数を6として扱い、新たな6つの基板検査情報d2が記憶部41に格納されるごとに、その新たな6つの基板検査情報d2に示される品種Aの部品の位置ずれ量から、その部品の位置ずれ量に対するCp値を算出する。
より具体的には、時点t3において、1枚目から6枚目までの6枚の部品実装済みの基板6に対する検査装置M4の検査処理が終了すると、評価値算出部46bは、その検査処理の結果を示す6つの基板検査情報d2を用いて、品種Aの部品のCp値を算出する。つまり、時点t3におけるCp値が算出される。
次に、時点t2において、7枚目から12枚目までの6枚の部品実装済みの基板6に対する検査装置M4の検査処理が終了すると、評価値算出部46bは、その検査処理の結果を示す6つの基板検査情報d2を用いて、品種Aの部品のCp値を算出する。つまり、時点t2におけるCp値が算出される。
さらに、時点t1において、13枚目から18枚目までの6枚の部品実装済みの基板6に対する検査装置M4の検査処理が終了すると、評価値算出部46bは、その検査処理の結果を示す6つの基板検査情報d2を用いて、品種Aの部品のCp値を算出する。つまり、時点t1におけるCp値が算出される。
現時点が時点t1であれば、時点t1におけるCp値は、最新のCp値であり、Cp今回値またはCp現在値とも呼ばれる。また、時点t2におけるCp値は、Cp前回値とも呼ばれ、時点t3におけるCp値は、Cp前々回値とも呼ばれる。
このように、本実施の形態における評価値算出部46bは、複数の時点のそれぞれについて、当該時点において部品の実装に用いられたパラメータのずれを少なくとも示す検査情報に基づいて、当該時点における部品実装部10による部品の実装の精度を表す評価値を算出する。また、本実施の形態では、そのパラメータは、部品実装部10によって基板6に実装された部品の位置である。つまり、本実施の形態では、検査情報は、基板検査情報d2である。また、本実施の形態では、その複数の時点のそれぞれで算出される評価値は、上述のパラメータのずれに対する工程能力指数である。
このような評価値算出部46bは、例えば、最初にCp値を算出したときに、そのCp値を示す評価値算出データd3を生成して記憶部41に格納する。その後、評価値算出部46bは、新たなCp値を算出するごとに、その新たなCp値を評価値算出データd3に書き込むことによって、その評価値算出データd3を更新してもよい。
判定部46cは、上述の複数の時点のそれぞれで算出された評価値を用いた判定を行う。具体的には、判定部46cは、第2時点において算出された評価値である第2評価値に対する、第1時点において算出された評価値である第1評価値の変化率を、第1変化率として算出し、その第1変化率が所定の閾値未満であるかを判定する。ここで、第1時点および第2時点は、上述複数の時点に含まれ、第2時点は、第1時点よりも前の時点である。また、第1評価値は、上述の複数の時点のうちの最新の時点である第1時点で得られた基板検査情報d2に基づいて算出された評価値である。例えば、第1時点は、上述の時点t1に相当し、第1評価値は、例えばCp今回値である。第2評価値は、その複数の時点のうちの第1時点の直前の時点である第2時点で得られた基板検査情報d2に基づいて算出された評価値である。例えば、第2時点は、上述の時点t2に相当し、第2評価値は、例えばCp前回値である。
また、判定部46cは、さらに、第3時点において算出された評価値である第3評価値に対する、第1評価値の変化率を、第2変化率として算出し、その第2変化率が所定の閾値未満であるか否かを判定する。その第3時点は、上述の複数の時点のうちの第2時点の直前の時点である。例えば、第3時点は、上述の時点t3に相当し、第3評価値は、例えばCp前々回値である。
具体的には、判定部46cは、例えば、記憶部41の評価値算出データd3が生成または更新されるごとに、その評価値算出データd3を読み出す。さらに、判定部46cは、その評価値算出データd3に示されるCp今回値、Cp前回値、およびCp前々回値を特定する。そして、判定部46cは、以下の(式1)および(式2)によって、Cp値の変化率Jr1およびJr2を算出する。なお、変化率Jr1は、上述の第1変化率に相当し、変化率Jr2は、上述の第2変化率に相当する。
変化率Jr1=(Cp今回値-Cp前回値)/Cp前回値 ・・・(式1)
変化率Jr2=(Cp今回値-Cp前々回値)/Cp前々回値・・・(式2)
(式1)を用いることによって、比較的短期間におけるCp値の変化を適切に示す変化率Jr1を算出することができる。また、(式2)を用いることによって、比較的長期間におけるCp値の変化を適切に示す変化率Jr2を算出することができる。具体的には、上述の例において、7枚目の部品実装済みの基板6における位置ずれ量から、8枚目の部品実装済みの基板6における位置ずれ量が大きく変化する場合がある。このような場合、時点t1におけるCp値であるCp今回値と、時点t2におけるCp値であるCp前回今回値との差分は小さく、(式1)では、適切な変化率を算出することができない可能性がある。しかし、(式2)では、時点t3におけるCp値であるCp前々回値が反映されているため、適切な変化率を算出することができる。
次に、判定部46cは、記憶部41から閾値データd5を読み出し、変化率Jr1およびJr2の少なくとも一方が、閾値データd5によって示される閾値Jr0未満であるか否か、すなわち、Jr0>Jr1またはJr0>Jr2が満たされているか否かを判定する。変化率Jr1およびJr2の少なくとも一方が閾値Jr0未満であると判定すると、判定部46cは、表示部49を用いてエラーを報知する。判定部46cは、Cp値の変化率を閾値Jr0と比較することによって、Cp値のエラーを判定しているとも言え、さらに、部品実装システム1において不具合発生の予兆があることをエラーとして判定しているとも言える。そして、表示部49は、判定部46cによって変化率が所定の閾値未満であると判定された場合、判定結果の出力として、エラーを報知する。
なお、上述の例では、評価値算出データd3にCp前々回値が示されているが、そのCp前々回値が示されていない場合には、判定部46cは、変化率Jr2を算出することなく、変化率Jr1を用いて判定を行う。
図8は、本実施の形態においてエラーと判定されるCp値の一例を示す図である。
例えば、閾値データd5によって示される閾値Jr0は、-0.25である。この場合、Cp前回値が1.00のときに、上記(式1)において変化率Jr1が閾値Jr0未満となるCp今回値は、0.75未満である。つまり、Cp今回値が0.75未満のときに、そのCp今回値に対してエラーと判定される。また、Cp前回値が1.33のときに、上記(式1)において変化率Jr1が閾値Jr0未満となるCp今回値は、1.00未満である。つまり、Cp今回値が1.00未満のときに、そのCp今回値に対してエラーと判定される。また、Cp前回値が1.67のときに、上記(式1)において変化率Jr1が閾値Jr0未満となるCp今回値は、1.25未満である。つまり、Cp今回値が1.25未満のときに、そのCp今回値に対してエラーと判定される。
なお、ΔXまたはΔYのCp値の算出に用いられる規格幅Tは、例えば、0.08mm(許容範囲上限UCL=+0.04mm、許容範囲下限LCL=-0.04mm)である。また、ΔθのCp値の算出に用いられる規格幅Tは、例えば、10度(許容範囲上限UCL=+5度、許容範囲下限LCL=-5度)である。
ここで、上述のように、Cp値が高ければ、部品実装システム1に不具合発生の予兆がなくても、標準偏差が少し変化しただけでもそのCp値は大きく変化する。したがって、Cp値の変化量、すなわち(Cp今回値-Cp前回値)が閾値未満のときに、エラーと判定される場合には、Cp値、すなわちCp前回値の大きさに応じて、閾値を設定することが望まれる。例えば、Cp前回値=1.00に対する閾値として-0.25が設定され、Cp前回値=1.33に対する閾値として-0.41が設定され、Cp前回値=1.67に対する閾値として-0.60が設定される。
しかし、本実施の形態では、Cp値の変化率に基づいて判定が行われるため、Cp前回値の大きさに応じて閾値を設定する必要がない。つまり、本実施の形態では、Cp値の変化率によってエラーが判定されるため、互に異なる複数のCp前回値のそれぞれに対して、互いに異なる閾値Jr0を設定する必要がない。本実施の形態では、それらの互いに異なる複数のCp前回値のそれぞれに対して同一または共通の閾値Jr0と、Cp値の変化率とを比較すればよい。したがって、処理負担を抑えながら、不具合発生の予兆をより適切に判定することができる。
また、Cp値の算出に用いられる規格幅Tは、部品のサイズによって異なる。しかし、Cp値の変化率は、無次元の数値であって、部品のサイズに依存しない値である。したがって、本実施の形態では、そのCp値の変化率を用いてエラーの判定を行うため、部品のサイズに関わらず、エラーの判定を適切に行うことができる。
図9は、表示部49によって表示されるエラー報知画面の一例を示す図である。
表示部49は、例えば図9に示すように、エラー報知画面49aを表示することによって、エラーを報知する。そのエラー報知画面49aには、「Cp値が大きく低下しています。部品実装に用いられたユニットを確認してください。」というメッセージが表示されていてもよい。
また、評価値算出部46bは、上述のユニット(i)ごとに、Cp値を算出し、判定部46cは、そのユニット(i)ごとに算出されたCp値に対してエラーの判定を行ってもよい。つまり、評価値算出部46bは、同一のユニットを用いて実装された複数の部品の位置ずれ量から、そのユニットに対応するCp値を算出し、判定部46cは、そのユニットに対応するCp値に対してエラーの判定を行う。そのユニットが例えばテープフィーダ8(i=3)である場合には、図9に示すように、エラー報知画面49aには、例えば「エラー対象ユニット:テープフィーダ(i=3)」などが表示される。つまり、判定部46cは、エラーと判定されたCp値に対応するユニットが、インデックス(i=3)によって特定されるテープフィーダであることを表示部49に表示する。
[処理フロー]
図10は、本実施の形態における管理装置3の処理動作の一例を示すフローチャートである。なお、このフローチャートでは、主に管理装置3に含まれる評価値算出部46bおよび判定部46cの処理動作が示され、他の構成要素の処理動作の詳細な説明は省略されている。
まず、評価値算出部46bは、Cp値の算出に未だ使用されていない第2規定数の基板検査情報d2が記憶部41に格納されているか否かを判定する(ステップS1)。
ここで、評価値算出部46bは、規定数の基板検査情報d2が格納されていると判定すると(ステップS1のYes)、その第2規定数の基板検査情報d2を用いてCp値を算出する(ステップS2)。このステップS2で算出されるCp値は、Cp今回値として扱われる。そして、このとき、評価値算出部46bは、そのCp今回値を記憶部41の評価値算出データd3に書き込むことによって、その評価値算出データd3を更新する。あるいは、評価値算出部46bは、Cp今回値が書き込まれた評価値算出データd3を生成して記憶部41に格納する。
なお、ステップS2の処理が行われるときに、一回前のステップS2の処理によって算出された過去のCp今回値が、評価値算出データd3に既に書き込まれているときには、その過去のCp今回値はCp前回値として扱われる。言い換えれば、その過去のCp今回値はCp前回値に置き換えられる。同様に、二回前のステップS2の処理によって算出された過去のCp前回値が評価値算出データd3に既に書き込まれているときには、その過去のCp前回値はCp前々回値として扱われる。言い換えれば、その過去のCp前回値はCp前々回値に置き換えられる。
一方、評価値算出部46bは、第2規定数の基板検査情報d2が格納されていないと判定すると(ステップS1のNo)、その第2規定数の基板検査情報d2が記憶部41に格納されるまで待機する。
ステップS2の処理が行われた後、判定部46cは、記憶部41の評価値算出データd3を参照し、その評価値算出データd3にCp前回値が示されているか否かを判定する(ステップS3)。ここで、Cp前回値が示されていると判定すると(ステップS3のYes)、判定部46cは、上述の(式1)によって、変化率Jr1を算出する(ステップS4)。一方、評価値算出データd3にCp前回値が示されていないと判定部46cによって判定されると(ステップS3のNo)、評価値算出部46bは、ステップS1からの処理を繰り返し実行する。
ステップS4の処理が行われた後、判定部46cは、記憶部41の閾値データd5を参照し、そのステップS4で算出された変化率Jr1が、その閾値データd5によって示される閾値Jr0未満であるか否かを判定する(ステップS5)。そして、判定部46cは、変化率Jr1が閾値Jr0未満であると判定すると(ステップS5のYes)、エラー報知を行う(ステップS9)。すなわち、判定部46cは、表示部49に上述のエラー報知画面49aを表示する。
一方、判定部46cは、変化率Jr1が閾値Jr0未満でないと判定すると(ステップS5のNo)、記憶部41の評価値算出データd3を参照し、その評価値算出データd3にCp前々回値が示されているか否かを判定する(ステップS6)。ここで、Cp前々回値が示されていると判定すると(ステップS6のYes)、判定部46cは、上述の(式2)によって、変化率Jr2を算出する(ステップS7)。一方、評価値算出データd3にCp前々回値が示されていないと判定部46cによって判定されると(ステップS6のNo)、評価値算出部46bは、ステップS1からの処理を繰り返し実行する。
ステップS7の処理が行われた後、判定部46cは、記憶部41の閾値データd5を参照し、そのステップS7で算出された変化率Jr2が、その閾値データd5によって示される閾値Jr0未満であるか否かを判定する(ステップS8)。そして、判定部46cは、変化率Jr2が閾値Jr0未満であると判定すると(ステップS8のYes)、エラー報知を行う(ステップS9)。すなわち、判定部46cは、表示部49に上述のエラー報知画面49aを表示する。一方、変化率Jr2が閾値Jr0未満でないと判定部46cによって判定されると(ステップS8のNo)、評価値算出部46bは、ステップS1からの処理を繰り返し実行する。
以上のように、本実施の形態における部品実装システム1では、部品の実装に用いられたパラメータのずれを示す検査情報に基づいて評価値を算出し、さらに、その評価値の変化率Jr1が閾値Jr0未満であるかを判定する。その評価値は、パラメータのずれに対する工程能力指数である。したがって、変化前の評価値が高い値であっても低い値であっても、その値に関わらず、部品実装システム1の不具合発生の予兆を適切に判定し、部品実装の作業者にその予兆を知らせることができる。その結果、部品実装の精度を高く維持することができる。
また、検査情報は、基板検査情報d2であって、パラメータは、部品実装部10によって基板6に実装された部品の位置である。これにより、部品の位置ずれのばらつきの要因となる不具合発生の予兆を適切に判定して作業者に知らせることができる。
また、表示部49は、判定部46cによって変化率Jr1が閾値Jr0未満であると判定された場合、その判定結果の出力として、エラーを報知する。これにより、変化率Jr1が閾値Jr0未満であれば、エラーが報知されるため、作業者に対して部品実装システム1の確認およびメンテナンスを促すことができる。
また、第1評価値は、例えばCp今回値であって、複数の時点のうちの最新の時点である第1時点で得られた検査情報に基づいて算出された評価値である。これにより、現時点における変化率Jr1に対して判定を行うことができる。その結果、現時点における不具合発生の予兆を適切に判定することができる。
また、第2評価値は、例えばCp前回値であって、複数の時点のうちの第1時点の直前の時点である第2時点で得られた検査情報に基づいて算出された評価値である。これにより、比較的短期間における変化率に対して判定を行うことができる。その結果、比較的短期間の状況から不具合発生の予兆を適切に判定することができる。
また、判定部46cは、さらに、第3時点において算出された評価値である第3評価値に対する第1評価値の変化率を、変化率Jr2として算出し、その変化率Jr2が閾値Jr0未満であるか否かを判定する。その第3時点は、上述の複数の時点のうちの第2時点の直前の時点である。また、第3評価値は、例えばCp前々回値である。これにより、比較的長期間における変化率に対して判定を行うことができる。その結果、比較的長期間の状況から不具合発生の予兆を適切に判定することができる。例えば、短期間の状況からその予兆を判定することができなくても、長期間の状況からその予兆を適切に判定することができる場合がある。
以上、本開示の1つまたは複数の態様に係る部品実装システムなどについて、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、その実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態に施したものも本開示に含まれてもよい。
例えば、上記実施の形態では、評価値として工程能力指数であるCp値を用いたが、他の工程能力指数を用いてもよい。例えば、評価値としてCpk値を用いてもよい。このCpk値は、Cpk=(1-k)×Cpによって算出される。kは、k=|M|/(T/2)によって算出される偏り値である。なお、Mは、図7の(b)に示すように、位置ずれ量の平均値であり、|M|はその平均値の絶対値である。
また、Cp値などの評価値を部品の品種ごとに算出してもよく、複数品種を含むグループ単位で評価値を算出してもよい。
さらに、上記実施の形態では、部品の実装に用いられたパラメータは、部品実装部10によって基板6に実装された部品の位置であるが、これに限定されるものではない。パラメータは、テープフィーダ8に備えられているモータのトルク量であってもよい。なお、このモータは、キャリアテープをピッチ送りするために用いられる。この場合、検査情報は、そのトルク量のずれを示し、評価値は、そのトルク量のずれによって影響される部品実装の精度を表す。または、パラメータは、吸着ノズル11aの流量であってもよい。なお、この流量は、部品を吸着するために吸い込まれる空気の流量である。この場合、検査情報は、その流量のずれを示し、評価値は、その流量のずれによって影響される部品実装の精度を表す。また、パラメータが、モータのトルク量または吸着ノズル11aの流量である場合には、管理装置3は、部品実装装置M2またはM3などに備えられているセンサから、そのトルク量のずれまたは流量のずれを示す検査情報を取得してもよい。
また、上記実施の形態では、(式1)および(式2)によって変化率Jr1および変化率Jr2が算出されるが、他の式によって変化率Jr1および変化率Jr2が算出されてもよい。例えば、Jr1=Cp今回値/Cp前回値によって、変化率Jr1が算出され、Jr2=Cp今回値/Cp前々回値によって、変化率Jr2が算出されてもよい。この場合、閾値Jr0は、(式1)および(式2)によって算出される変化率Jr1および変化率Jr2に対して用いられる閾値よりも1だけ大きい値である。
また、上記実施の形態では、変化率Jr1に対して比較される閾値と、変化率Jr2に対して比較される閾値とが、同じ閾値Jr0であるが、これらの閾値を互い異ならせてもよい。これにより、不具合発生の予兆をより適切に判定することができる。
また、上記実施の形態では、管理装置3によって補正値の算出、評価値の算出、および評価値の変化率に対する判定が行われるが、部品実装装置M2またはM3によって行われてもよく、検査装置M4によって行われてもよい。部品実装装置M2またはM3によって評価値の変化率に対する判定が行われる場合には、部品実装装置M2またはM3の表示部24にエラー報知画面49aが表示される。
また、上記実施の形態では、位置ずれ量ΔX、ΔY、およびΔθのそれぞれに対して評価値が算出されるが、これらのうちの1つまたは2つのみに対して評価値が算出され、その評価値の変化率に対してエラーの判定が行われてもよい。
また、上記実施の形態では、ユニット(i)ごとに評価値が算出され、その評価値の変化率に対してエラーの判定が行われてもよいが、ユニットに関わらずに評価値が算出され、その評価値の変化率に対してエラーの判定が行われてもよい。
また、上記実施の形態では、表示部49による表示によってエラーが報知される。しかし、エラーの報知は、音声または音の出力、あるいは振動などによって行われてもよい。つまり、管理装置3は、音声または音の出力、あるいは振動などによって、判定部46cによる判定結果を出力する出力部を備えてもよい。
なお、上記実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)またはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。ここで、上記実施の形態などを実現するソフトウェアプログラムは、例えば、図10に示すフローチャートに含まれる各ステップをコンピュータに実行させる。
なお、以下のような場合も本開示に含まれる。
(1)上記の少なくとも1つの装置は、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクユニット、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムである。そのRAMまたはハードディスクユニットには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、上記の少なくとも1つの装置は、その機能を達成する。ここでコンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
(2)上記の少なくとも1つの装置を構成する構成要素の一部または全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムである。前記RAMには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
(3)上記の少なくとも1つの装置を構成する構成要素の一部または全部は、その装置に脱着可能なICカードまたは単体のモジュールから構成されているとしてもよい。ICカードまたはモジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどから構成されるコンピュータシステムである。ICカードまたはモジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしてもよい。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、ICカードまたはモジュールは、その機能を達成する。このICカードまたはこのモジュールは、耐タンパ性を有するとしてもよい。
(4)本開示は、上記に示す方法であるとしてもよい。また、これらの方法をコンピュータにより実現するコンピュータプログラムであるとしてもよいし、コンピュータプログラムからなるデジタル信号であるとしてもよい。
また、本開示は、コンピュータプログラムまたはデジタル信号をコンピュータ読み取り可能な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD(Compact Disc)-ROM、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリなどに記録したものとしてもよい。また、これらの記録媒体に記録されているデジタル信号であるとしてもよい。
また、本開示は、コンピュータプログラムまたはデジタル信号を、電気通信回線、無線または有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものとしてもよい。
また、プログラムまたはデジタル信号を記録媒体に記録して移送することにより、またはプログラムまたはデジタル信号をネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしてもよい。