JP7477264B2 - 交流電圧の極性検出器及びこれを用いた電源装置 - Google Patents

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Description

本発明は、交流電圧の極性検出器及びこれを用いた電源装置に関する。
例えば、商用電源等の交流電源を直流電源に変換して機器に供給する際、供給電力の力率を改善するため、商用電源の入力側には力率改善回路(以下、「PFC」と称する。)が設置される。PFCは大別すると、入力側に整流用のダイオードブリッジを備えたのものと、整流用のダイオードブリッジを省略したタイプ(ブリッジレス)のものに分類される。後者であるブリッジレスPFCは、整流用のダイオードブリッジを省略したことにより、ブリッジダイオードタイプのものより小型化及び効率改善効果が期待できる。
その一方で、ブリッジレスPFCの回路には、入力電源である商用交流が整流されることなく入力されるため、回路内にスイッチング素子のブリッジを構成し、交流入力電圧の周期に同期させて整流動作を行う必要がある。同期整流動作では、各スイッチング素子のON-OFF状態を交流入力電圧の極性変化に合わせて制御するため、ブリッジレスPFCの回路内では、交流入力電圧の極性情報を制御回路に供給することが必要となる。
このような交流極性の検出に関する先行技術として、例えば直流電源装置における交流極性検出器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この公知の交流極性検出器は、交流電源から分配した交流入力電圧を電流制限用抵抗で降下させて2つのフォトカプラに印加し、これら2つのフォトカプラを用いて交流入力電圧の極性を検出する。そして、各フォトカプラの出力論理状態を表す交流極性信号をスイッチ制御部に供給し、その交流極性信号に基づいてスイッチ制御部が各スイッチング素子のON-OFF状態を制御して同期整流し、直流電源として負荷に供給する。
国際公開第2008/090917号(図1)
先行技術のように、フォトカプラを用いて交流極性を検出する手法では、フォトカプラに流す電流をその動作が可能となる下限値よりも高く設定する必要があることから、電流制限抵抗をあまり大きくすることができない。電流制限抵抗を過度に高抵抗にしてしまうと、それだけフォトカプラの動作可能な範囲が狭まり、交流電圧のゼロ点の両側でスイッチング制御不可能状態(不確定領域)が長くなるからである。このことは、極性検出のためにはある程度の大電力を消費せざるを得ないことを意味すると同時に、単純に不確定領域を狭めることは極めて困難であることも意味している。
そこで本発明は、極性検出のための新たな技術を提供するものである。
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。なお、以下の説明における括弧書きはあくまで参考であり、本発明はこれに限定されない。
〔第1発明〕
第1に本発明は、交流電圧の極性検出器を提供する。極性検出器は、変換器、絶縁トランス及び検出器で構成される。変換器は、入力される交流電圧の極性の変化をインピーダンスの変化に変換する。絶縁トランスは、変換されたインピーダンスの変化を一次側へ入力し、絶縁された二次側への出力として伝送する。そして検出器は、絶縁トランスにより伝送されるインピーダンスの変化に基づいて、入力される交流電圧の極性(又は極性の変化)を検出する。
例えば、交流電圧が正極性の区間では、変換器による変換後のインピーダンスの絶対値が低く、逆に負極性の区間では高くなる。このようなインピーダンスの高低変化は、絶縁トランスによって一次側から二次側へ絶縁状態で伝送されることから、検出器では、伝送されたインピーダンスの高低変化を交流入力電圧の極性変化に当てはめ、極性変化として検出することができる。
検出器は電流に基づいて極性を検出するのではなく、インピーダンス変化に基づいて検出することから、検出器の入力電流は微少とすることができる。したがって、検出のための消費電力はフォトダイオードを用いた検出器よりも大幅に少ない。また、変換後のインピーダンスの変化は入力される交流電圧の単純な極性の変化に依存するため、交流電圧のゼロ点近傍でも極性又は極性の変化を検出することができる。したがって、同期整流動作における不確定領域を容易に少なくすることができる。
〔第2発明〕
第2に本発明は、交流電圧の極性検出器を提供する。極性検出器は、ダイオードを用いた変換器、絶縁トランス及び検出器で構成される。この場合の変換器は、入力される交流電圧の極性の変化によりダイオードの端子間インピーダンスが変化する特性を利用している。このような変換器を絶縁トランスの一次側に接続し、そのダイオードの端子間インピーダンスの変化を入力して二次側への出力として伝送する。そして検出器は、絶縁トランスにより伝送されるインピーダンスの変化に基づいて、入力される交流電圧の極性を検出する。
第2発明の極性検出器において、変換器のダイオードは低電流で端子間インピーダンスが変化するため、検出電力を低く抑えることができる。その他の点は第1発明と同様である。
〔第3発明〕
第3に本発明は、交流電圧の極性検出器を提供する。極性検出器は、ダイオードブリッジを用いた変換器、絶縁トランス及び検出器で構成される。この場合の変換器は、入力される交流電圧の変化によりブリッジダイオードの両端間インピーダンスが変化する特性を利用している。このような変換器を絶縁トランスの一次側に接続し、そのブリッジ間インピーダンスの変化を入力して二次側への出力として伝送する。そして検出器は、絶縁トランスにより伝送されるインピーダンスの変化に基づいて、入力される交流電圧の極性を検出する。
第3発明の極性検出器は、入力される交流電圧の極性変化がノイズとして伝送される点を改善した。すなわち、第2発明では交流電圧の極性変化のタイミングでダイオードの端子間電圧が変動し、これがコモンノイズとして絶縁トランスの一次側へ入力されることを妨げない。
これに対し、第3発明の極性検出器では、変換器においてダイオードブリッジを構成することにより、交流電圧の極性変化のタイミングでダイオードブリッジ両端間の電圧は変化するものの、ブリッジ内部で隣り合うダイオードのカソード-アノード間の電圧変化は、構成するダイオードブリッジのバランスが完全であれば0となる。このため、変換器の出力に伝送されるノイズを減衰することができる。その他の点は第1発明と同様である。
〔電源装置〕
本発明は、さらに電源装置を提供する。電源装置は、ブリッジレスPFC回路、スイッチング電源回路(DCDCコンバータ)から構成される。ブリッジレスPFC回路は、制御回路とFETブリッジ回路より構成される。ブリッジレスPFC回路は、入力される交流電流を整流して力率を改善した状態の整流波を出力する。スイッチング電源回路は、ブリッジレスPFC回路からの出力を用いて直流電源を機器等の負荷に供給する。制御回路は、第1発明、第2発明又は第3発明のいずれかの極性検出器による検出結果を用いてFETブリッジ回路の力率改善動作及び整流動作を制御する。
力率改善回路をブリッジレスPFCとすることで、小型化及び効率改善効果が図られる上、本発明の極性検出器を採用することで力率改善動作及び整流動作の制御に必要な極性検出のための電力を小さく抑えることができる。
本発明によれば、極性検出のための新たな技術を提供することができる。
一実施形態の電源装置の構成を概略的に示すブロック図である。 交流電圧の入力波形と極性信号の出力波形との関係を示すタイミングチャートである。 第1例の極性検出回路の構成を概略的に示すブロック図である。 変換器Aによる交流入力電圧の極性変化からインピーダンス変化への変換を示す図である。 ダイオードの電圧電流特性を示す図である。 ダイオード特性を利用して構成した変換器Aの回路例を示す図である。 絶縁トランス及び検出器Bの回路例を示す図である。 第2例の極性検出回路の構成を概略的に示すブロック図である。 第3例の極性検出回路の構成を概略的に示すブロック図である。 圧電トランスPZT1の等価回路を示す図である。 図10中の二次側電極対から見た圧電トランスPZT1の等価回路を示す図である。 図11の等価回路をさらに変換した等価回路を示す図である。 圧電トランスPZT1の入力インピーダンスの周波数特性を示す図である。 図12の等価回路を周波数範囲の限定によってさらに単純化した等価回路を示す図である。 本実施形態の極性検出回路と対比される比較例の回路構成を示す図である。 第3例の極性検出回路をより詳細に示した回路図である。 発振器Eの出力から圧電トランスPZT1、コンデンサC1,C2を含む等価回路を示す図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
〔電源装置〕
図1は、一実施形態の電源装置100の構成を概略的に示すブロック図である。
電源装置100は、大きく分けてスイッチング電源回路110及び力率改善回路(以下、本実施形態において「ブリッジレスPFC回路」と称する。)120から構成されている。電源装置100は、商用電源等の交流電圧をブリッジレスPFC回路120の入力端子AC1,AC2に入力し、全波整流してスイッチング電源回路(DC-DCコンバータ)110に伝送し、スイッチング電源回路110で直流電源(例えばDC+12V)を生成して外部機器等の負荷に供給するものである。
ブリッジレスPFC回路120は、入力される商用交流(例えばAC100V50Hz又は60Hz)をMOSFET(Q1~Q4)で力率改善動作及び同期整流するブリッジレスタイプのものである。力率改善動作及び同期整流では、商用交流の周期内で2つのインダクタL1,L2を用いた電流の蓄積と放出、コンデンサCzを用いた平滑が高周波(例えば100kHz)で行われる。
ブリッジレスPFC回路120は、第1FET駆動回路122、第2FET駆動回路124及び制御回路126を備え、このうち第1FET駆動回路122はMOSFET(Q1,Q2)の組を駆動し、第2FET駆動回路124はMOSFET(Q3,Q4)の組を駆動する。制御回路126は第1FET駆動回路122及び第2FET駆動回路124にそれぞれ駆動信号GD1,GD2を印加し、これを受けて第1FET駆動回路122及び第2FET駆動回路124は、各MOSFET(Q1~Q4)のON-OFF状態を切り替える。
ブリッジレスPFC回路120は電流検出回路128を備えており、この電流検出回路128は入力電流の瞬時値を検出し、電流信号SIを制御回路126に供給する。また制御回路126には、分圧抵抗Rで検出した出力電圧信号Svoが入力される。制御回路126は、ブリッジレスPFC回路120からの出力電圧を設定値に維持するため、電流信号SIを参照しつつ交流入力電圧の極性変化に合わせて駆動信号GD1,GD2を出力するタイミングを制御し、MOSFET(Q1~Q4)を用いた力率改善動作及び同期整流動作を通じて出力電圧の平均値を制御する。なお、ブリッジレスPFC回路120による同期整流や力率改善については公知であるため、その詳細については省略する。
ブリッジレスPFC回路120は極性検出回路130を備え、この極性検出回路130は、入力される交流電圧の極性変化を検出し、極性信号OUT1,OUT2を制御回路126に供給する。制御回路126は、極性信号OUT1,OUT2を参照しつつ、上記のように第1FET駆動回路122及び第2FET駆動回路124に印加する駆動信号GD1,GD2のタイミングを制御する。
その他にブリッジレスPFC回路120は、補助電源129を備えている。補助電源129は、商用交流から補助電源(+Vcc)を生成し、ブリッジレスPFC回路120内部の各所(第1FET駆動回路122、第2FET駆動回路124、制御回路126、電流検出回路128、極性検出回路130)に供給する。
図1中に太い破線で示したように、ブリッジレスPFC回路120内部では、いくつかの構成に跨がって一次側の要素と二次側の要素とに分かれており、一次側と二次側とは内部で絶縁されている。入力端子AC1,AC2に接続するインダクタL1,L2や、4つのMOSFET(Q1~Q4)、平滑用のコンデンサCz、分圧抵抗R等はいずれも一次側の要素である。制御回路126は、その全体が二次側の要素であるが、第1FET駆動回路122や第2FET駆動回路124、電流検出回路128、極性検出回路130の各部は、それぞれ内部において一次側の要素と二次側の要素とが電気的に絶縁されており、制御回路126とは二次側の要素のみで接続されている。なお、スイッチング電源回路110も内部で一次側の要素と二次側の要素とに分かれており、これらが内部で絶縁されている。
〔極性信号〕
図2は、交流電圧の入力波形と極性信号の出力波形との関係を示すタイミングチャートである。
〔時刻t0〕
図2中(A):交流電圧の入力波形は、周期的に極性(正-負)を変化させる正弦波となる。ここでは、ある時刻t0から入力交流電圧が正方向に変化していくものとする。
〔時刻t1~t2〕
図2中(B):正極性に対応する極性信号OUT1の論理は、ローレベル(GND)を真、ハイレベル(V1)を偽とすると、交流電圧が正方向にある程度まで振幅が増加する時刻t1でハイレベルからローレベル=真となる。
図2中(C):一方、負極性に対応する極性信号OUT2は、その論理を同じとすると、交流電圧が正極性にある時刻t1~t2の区間はハイレベル=偽のままとなっている。
この間、極性信号OUT1,OUT2によって表される極性情報は、「入力端子IN-Aが正極性かつ入力端子IN-Bが負極性」を表すものとなる。
〔時刻t2〕
図2中(A),(B):交流電圧が正極性で0Vに接近してくると、極性信号OUT1はローレベルからハイレベル=偽となり、論理が反転する。
図2中(C):極性信号OUT2はハイレベル=偽のままである。
〔時刻t3〕
図2中(A),(B),(C):交流電圧が0Vとなるが、ここでは極性信号OUT1,OUT2が変化しない。また、時刻t3から入力交流電圧は負方向に変化していく。
〔時刻t4〕
図2中(C):負極性に対応する極性信号OUT2は、時刻t2から時刻t4の間もハイレベル=偽であったが、交流電圧が負方向にある程度まで振幅が増加する時刻t4からはローレベル=真となる。
図2中(B):一方、正極性に対応する極性信号OUT1は、交流電圧が負極性にある時刻t4ではハイレベル=偽のままとなっている。
このように、時刻t2から時刻t4までの区間では、極性信号OUT1,OUT2がともにハイレベル=偽であるため、これによって表される極性情報は「不確定領域」を表すものとなる。「不確定領域」は、制御回路126がMOSFET(Q1~Q4)の駆動制御を行わない時間帯であり、ブリッジレスPFC回路120は見かけ上、ダイオードブリッジとして作用する。時刻t4以降は「不確定領域」を過ぎ、以下となる。
〔時刻t4~t5〕
図2中(C):負極性に対応する極性信号OUT2は、交流電圧が負極性にある時刻t4~時刻t5の区間はローレベル=真である。
図2中(B):一方、正極性に対応する極性信号OUT1は、交流電圧が負極性にある時刻t4~時刻t5の区間はハイレベル=偽のままとなっている。
この間、極性信号OUT1,OUT2によって表される極性情報は、「入力端子IN-Aが負極性かつ入力端子IN-Bが正極性」を表すものとなる。
〔時刻t5〕
図2中(A),(C):交流電圧が負極性で0Vに接近してくると、極性信号OUT2はローレベルからハイレベル=偽となり、論理が反転する。
図2中(B):極性信号OUT1はハイレベル=偽のままである。
〔時刻t6〕
図2中(A),(B),(C):交流電圧が0Vとなるが、ここでは極性信号OUT1,OUT2が変化しない。また、時刻t6から入力交流電圧は再び正方向に変化していく。
〔時刻t7〕
図2中(B):正極性に対応する極性信号OUT1は、時刻t5から時刻t7の間もハイレベル=偽であったが、交流電圧が正方向にある程度まで振幅が増加する時刻t7からはローレベル=真となる。
図2中(C):一方、負極性に対応する極性信号OUT2は、交流電圧が正極性にある時刻t7ではハイレベル=偽のままとなっている。
このように、時刻t5から時刻t7までの区間では、極性信号OUT1,OUT2がともにハイレベル=偽であるため、これによって表される極性情報は「不確定領域」を表すものとなる。
このように、極性検出回路130は、入力される交流電圧の極性変化(不確定領域を含む)を検出し、その結果に応じて極性信号OUT1,OUT2を制御回路126に出力する。なお、時刻t7以降は時刻t1から時刻t7までと同様のサイクルとなる。
〔極性検出回路〕
ここで本実施形態では、極性検出回路130に特有の構成を採用しており、以下では極性検出回路130について説明する。
〔第1例〕
図3は、第1例の極性検出回路130の構成を概略的に示すブロック図である。第1例の極性検出回路130は、変換器A132、絶縁トランス134及び検出器B136を備えている。
〔変換器〕
変換器A132は、入力端子AC1,AC2から交流電圧を入力し、その極性の変化をインピーダンスの変化に変換する機能を有している。すなわち、変換器A132は、交流入力電圧の極性の変化に応じてインピーダンスが変化する回路である。印加される電圧の値によってインピーダンスが変化する素子としては、ダイオード等が考えられる。したがって、変換器A132の回路は、例えばダイオードによって構成することができる。ダイオードで構成される変換器A132への入力電流は微小であり、極性検出回路130が極性検出のために消費する電力は、フォトダイオードを用いた従来型の極性検出器よりも大幅に小さく抑えられる。
〔絶縁トランス〕
絶縁トランス134は、一次側に変換器A132が接続されており、これと絶縁された二次側には検出器B136が接続されている。したがって、図1中に太い破線で示した絶縁境界線は、極性検出回路130の中で絶縁トランス134を縦断することになる。変換器A132から出力されるインピーダンスの変化は、絶縁トランス134の一次側に入力されるが、絶縁トランス134は、入力されたインピーダンスの変化を絶縁された二次側への出力として伝送する。
〔検出器〕
検出器B136は、絶縁トランス134の一次側のインピーダンス変化に対応した二次側への伝送量の変化を検出し、その結果を交流入力電圧の極性として出力する。すなわち検出器B136は、絶縁トランス134により伝送されたインピーダンスの変化に基づいて、交流入力電圧の極性の変化を検出する。検出器B136は、検出結果として上記の極性信号OUT1,OUT2を出力することができ、その出力パターンは図2に示したものと同様である。したがって、検出器B136はIN-Aが正、IN-Bが負のとき極性信号OUT1をローレベルとして極性を検出し、IN-Aが負、IN-Bが正のとき極性信号OUT2をローレベルとして極性を検出する。なお、極性信号OUT1,OUT2の論理は逆でもよい。
〔極性変化からインピーダンス変化への変換〕
図4は、変換器A132による交流入力電圧の極性変化からインピーダンス変化への変換を示す図である。
図4中(A):入力される交流電圧は、例えば時刻t0から正方向に振幅が増加し、時刻t3でゼロ点をクロスして負方向に振幅が増加した後、時刻t6においてゼロ点に戻る周期を繰り返す。なお、図4中の時刻t0,時刻t3,時刻t6,時刻t9等のタイミングは図2と同じである。
図4中(B):変換器A132は、上記のように交流入力電圧の極性の変化をインピーダンスの変化へと変換するので、入力電圧波形がゼロ点をクロスする各時刻t0,時刻t3,時刻t6,時刻t9を境にインピーダンスレベルが極端に変化する。この例では、交流電圧の極性が正の区間では変換器A132のインピーダンスの絶対値が低く(低インピーダンス)、極性が負の区間ではインピーダンスの絶対値が高い(高インピーダンス)。変換器A132は、このような矩形波状に変化するインピーダンスを出力する。
上記のように、変換器A132から出力されるインピーダンスは、絶縁トランス134により一次側から二次側の検出器B136へと伝送される。したがって、検出器B136による極性の検出は、伝送されるインピーダンスの変化(図4中(B))に基づいて行われる。すなわち、低インピーダンスが伝送される区間ではIN-Aが正、IN-Bが負であるとして極性信号OUT1をローレベルで出力し、高インピーダンスが伝送される区間ではIN-Aが負、IN-Bが正として極性信号OUT2をローレベルで出力する。また、不確定領域は、インピーダンス変化の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの近傍となり、この間の出力は極性信号OUT1,OUT2ともにハイレベルで出力する。
〔ダイオード特性〕
図5は、ダイオードの電圧電流特性を示す図である。一般的かつ、あくまで一例として、ここでは耐圧400V、整流電流0.2Aのダイオードを取り上げる。ダイオードは、逆バイアスがかかると端子間抵抗はほぼ無限大となり、順方向に電圧を加えると微小な順方向電流Im(例えば0.1mA程度)で端子間抵抗Zmが数kΩ(例えば6kΩ)にまで低下する。本実施形態では、このようなダイオード特性を利用して交流電圧極性の変化をインピーダンス変化に変換するものとしている。
〔ダイオードを用いた回路例〕
図6は、ダイオード特性を利用して構成した変換器A132の回路例を示す図である。変換器A132は、回路を検出用抵抗R1,R2、インピーダンス変化用ダイオードD1のシンプルな構成とし、出力端子の前段に直流から入力交流電圧の周波数までをカットするコンデンサC1,C2を設けている。この場合の変換器A132によるインピーダンス変化は以下となる。
〔交流電圧が正極性〕
交流入力電圧が正極性(IN-A:正 IN-B:負)のときはダイオードD1が順方向バイアスとなり、低インピーダンスとなる。
〔交流電圧が負極性〕
交流入力電圧が負極性(IN-A:負 IN-B:正)のときはダイオードD1が逆方向バイアスとなり、高インピーダンスとなる。
〔検出器の回路例〕
図7は、絶縁トランス134及び検出器B136の回路例を示す図である。
先ず、絶縁トランス134として巻線トランスT1を用いる。巻線トランスT1は、その巻数比を1:1とすることで、変換器A132から出力されるインピーダンスをそのまま二次側に伝送する。
検出器B136は、回路内にマルチバイブレータ136aを有する。すなわち、コンパレータIC1、抵抗R4~R7、コンデンサC3は、マルチバイブレータ136aを構成している。このマルチバイブレータ136aは、高周波(例えば100kHz)で発振し、抵抗R3と巻線トランスT1の二次端子間にほぼ電源電圧(Vcc)の高周波矩形波を印加する。
コンパレータIC1の出力電流は、抵抗R8で電圧に変換する。巻線トランスT1の二次側のインピーダンスが大きいときは、コンパレータIC1の出力電流は小さいので、抵抗R8の端子間電圧は低くなる。一方、巻線トランスT1の二次側のインピーダンスが小さいときは、コンパレータIC1の出力電流は大きいので、抵抗R8の端子間電圧は高くなる。このような電圧変化をコンパレータIC2,IC3で検出し、各コンパレータIC2,IC3の出力を検出器B136の出力、つまり極性信号OUT1,OUT2とすることができる。
コンパレータIC2,IC3の前段に設けた抵抗R9~R11は、コンパレータIC2の非反転入力端子及びコンパレータIC3の反転入力端子にそれぞれ閾値電圧を供給する。このとき、各抵抗R9~R11の値の設定により、コンパレータIC2の非反転入力端子に印加する閾値電圧値は、コンパレータIC3の反転入力端子に印加する閾値電圧値よりも微小電圧だけ高めに設定する。これは、交流入力電圧の極性の不確定領域に対応するためである。
検出器B136による検出出力は以下となる。
〔交流電圧が正極性〕
交流入力電圧の極性が正極性(IN-A:正 IN-B:負)のときは、巻線トランスT1の二次側のインピーダンスが低下するため、抵抗R8の端子間電圧は、これによってコンパレータIC2の反転入力端子に印加される電圧を非反転入力端子に印加されている閾値より高くする。その結果、極性信号OUT1はローレベルで出力されることになる。
〔交流電圧が負極性〕
交流入力電圧の極性が負極性(IN-A:負 IN-B:正)のときは、巻線トランスT1の二次側のインピーダンスが高くなるので、コンパレータIC1の出力電流が低下して抵抗R8の端子間電圧は低下する。このため、抵抗R8の端子間電圧は、コンパレータIC3の反転入力端子に印加した閾値より低くなる。その結果、極性信号OUT2はローレベルで出力される。
〔不確定領域の設定〕
交流入力電圧の極性が不確定領域にある場合、抵抗R8の端子間電圧は、コンパレータIC2の非反転入力端子に印加される閾値より低く、そしてコンパレータIC3の反転入力端子に印加される閾値より高い。したがって、極性信号OUT1,OUT2はいずれもハイレベルで出力される。
このように、第1例(図3)に示す極性検出回路130は、交流電圧の極性検出機能を有しており、その動作は図3に示すものとして実現することができる。
このとき、変換器A132は極低電流Imでもインピーダンス変化を生じることができ、また、巻線トランスT1を用いた絶縁トランス134は高周波対応のもので足りる。
これにより、従来型の極性検出器よりも検出電力が少なく、かつ小型軽量の極性検出回路130を実現することができる。なお、検出電力の巻線トランスT1を高周波対応としたことによる小型軽量化については、比較例との比較をもってさらに後述する。
〔第2例〕
図8は、第2例の極性検出回路230の構成を概略的に示すブロック図である。第2例の極性検出回路230は、変換器C232、絶縁トランス134及び検出器B136を備えている。したがって、第2例の極性検出回路230は、第1例(図3)の極性検出回路130の変換器A132(図6)を別構成としたものである。
別構成の変換器C232は、ダイオードブリッジの構成を採用している。変換器A132(図6)の場合、交流入力電圧の極性変化のタイミングでダイオードD1の端子間電圧が極端に変動し、その変動が変換器A132の出力にノイズとして伝送されることがある。
一方、別構成とした変換器C232は、ダイオードブリッジの構成を採用したことにより、以下の利点がある。すなわち、交流入力電圧が極性変化するタイミングにおいて、ブリッジ一端側のダイオードD1,D4のアノードと他端側のダイオードD2,D3のカソード間の電圧は確かに変化するものの、ブリッジ内部におけるダイオードD1のカソード、ダイオードD2のアノードとダイオードD4のカソード、ダイオードD3のアノード間の電圧変化は、ダイオードブリッジのバランスが完全であれば0となる。このため変換器C232の出力に伝送されるノイズ電圧を大幅に減衰させることができる。その他の動作は、第1例(図3)に示す極性検出回路130の動作と同様である。
〔第3例〕
図9は、第3例の極性検出回路330の構成を概略的に示すブロック図である。第3例の極性検出回路330は、変換器D332、圧電トランス334、発振器E338及び検出器F336を備えている。したがって、第3例の極性検出回路330は、第1例(図3)とも第2例(図8)とも異なる構成例を開示している。
第3例の極性検出回路330では、絶縁トランス134として圧電トランスPZT1を用いている。圧電トランスPZT1は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛等の圧電体を板状に成形し、分極処理して一次側(駆動部)と二次側(発電部)とを構成したものである。圧電体の表面には、一次側の対向電極P1,P2及び二次側の対向電極P3,P4が例えば銀ペースト等で厚膜形成されている。なお、圧電トランスPZT1は、複数の圧電体層を積層した積層体で構成されていてもよく、内層に電極が配置されていてもよい。
また、変換器D332は、ダイオードブリッジ構成を採用した点では第2例の変換器C232と共通するが、変換器C232で用いていた直流カット用コンデンサC1,C2を省略した構成としている。すなわち、絶縁トランスに巻線トランスを採用した場合、巻線トランスの一次側のインダクタンスは高周波に対応した値とするため、商用交流の50Hz/60Hzに対するインピーダンスが非常に低くなり、過大な電流が一次巻線に流れてしまう。このため直流カット用コンデンサC1,C2が必要となる。
これに対し、圧電トランスPZT1の一次側は商用交流に対して非常に大きなインピーダンス値を示すので、変換器D332ではそのような直流カット用コンデンサC1,C2を省略することができる。なお、変換器D332の基本動作は変換器C232と同様である。
圧電トランスPZT1は、一次側に入力される変換器D332のインピーダンス変化を二次側に伝送する。圧電トランスPZT1は上記のように4端子の構造であり、通常、一次側の電極対(対向電極P1,P2)と二次側の電極対(対向電極P3,P4)との間は、十分な距離をあけて絶縁されている。したがって、圧電トランスPZT1もまた、変換器D332で変換されたインピーダンスの変化を一次側で入力し、絶縁された二次側へ伝送することができる。
〔図10~図14:等価回路による説明〕
図10は、圧電トランスPZT1の等価回路を示す図である。また図11は、図10中の二次側電極対(対向電極P3,P4)から見た圧電トランスPZT1の等価回路を示す図である。ただし、ここでは一次側電極対(対向電極P1,P2)に変換器D334の出力の抵抗Rinを接続しているものとする。図12は、図11の等価回路をさらに変換した等価回路を示す図であり、図14は、図12の等価回路を周波数範囲の限定によってさらに単純化した等価回路を示す図である。
図10の等価回路から図12の等価回路への変換は、以下の式により説明できる。
先ず、図12の等価回路における等価抵抗Raは以下の〔数1〕で表される。また、等価コンデンサCaは以下の〔数2〕で表される。
Figure 0007477264000001
Figure 0007477264000002
ここで図13は、圧電トランスPZT1の入力インピーダンスの周波数特性を示す図である。通常、圧電トランスPZT1の入力インピーダンスは、位相が+90度に近い領域(共振周波数fr~反共振周波数frrの領域)で誘導性となり、それ以外では容量性となる。共振周波数fr~反共振周波数frrの領域では、インピーダンス絶対値が周波数の増加に伴って増加する(|Zr|~|Zrr|)。
このとき、発振器E338は、圧電トランスPZT1の入力インピーダンスが誘導性を示す周波数(共振周波数fr~反共振周波数frrの領域)で発振する自励又は他励式の発振器として構成している。したがって、図12の等価回路は、圧電トランスPZTのインピーダンスが誘導性となる共振周波数fr~反共振周波数frrの領域であれば、さらに単純化した図14の等価回路で表すことができる。
図12の等価回路から図14の等価回路への単純化は、以下のように説明することができる。
先ず、上記の〔数1〕から等価抵抗Raは、以下の〔数3〕の条件において最大値を示し、〔数4〕で表される。
Figure 0007477264000003
Figure 0007477264000004
また、以下の〔数5〕の条件において、等価抵抗Raは〔数6〕となる。
Figure 0007477264000005
Figure 0007477264000006
したがって、変換器D332の出力の抵抗Rinの増加(mの増加)に対し、等価抵抗Raは単調に減少する。等価抵抗Raが抵抗Rinの増加に対して単調に減少するため、抵抗Rinの増大に伴い、図12の等価回路における二次側電極対、すなわち対向電極P3-P4間インピーダンスの抵抗成分が減少することになる。
上記のような現象は、図12の等価回路をさらに単純化した図14の等価回路として表したとき、変換器D332の出力の抵抗Rinが(1/ωC01)より大きい領域で増加したとき、等価抵抗Rxの値が単調に減少することを意味する。すなわちこれは、抵抗Rinが増加したとき、圧電トランスPZT1の二次側インダクティブインピーダンスのQが単調に増大することを意味する。
したがって、交流入力電圧の極性変化に対応する変換器D332のインピーダンス変化を(1/ωC01~∞)までの間に選定すれば、極性変化を圧電トランスPZT1の二次側のインダクティブインピーダンスのQの変化として伝送できることになる。このQの変化を検出器F336で検出すれば、最終的に検出器F336は、インピーダンス変化に基づいて交流入力電圧の極性を検出できることとなる。
このような第3例(図9)の極性検出回路330の構成は、さらに以下の優位性を発揮する。
すなわち、第3例(図9)の極性検出回路330の構成は、絶縁トランス334として圧電トランスPZT1を採用したことにより、第2例(図8)の構成に対して直流カット用コンデンサC1,C2の構成を省略することができる。
また、この他にも一次-二次間の結合容量を小さくすることができるという利点がある。絶縁トランスの中でも圧電トランスは、巻線トランスに比較して一次側と二次側との結合容量が小さいからである。絶縁トランスにおける一次側と二次側との結合容量は、一次側のノイズを二次側に伝えてしまうものであることから、結合容量は小さい方が耐ノイズ性能に対して有利であることは言うまでもない。特に、PFCとしての一次側は高周波ノイズが多いため、内部で絶縁された一次側と二次側との間の結合容量が小さいことは、従来型のものに比較して多大なアドバンテイジとなる。
〔比較例との対比〕
以上の利点を比較例との対比をもって説明する。
図15は、本実施形態の極性検出回路130,230,330と対比される比較例の回路構成を示す図である。
〔比較例1〕
図15中(A):比較例1の極性検出回路は、2つのフォトカプラPH1,PH2で交流入力電圧の極性を検出する従来型のものであり、先行技術としても挙げたものである。比較例1の極性検出回路においても、入力端子IN-A,IN-B間に交流入力電圧を入力し、これを電流制限用の抵抗R1,R2を介してフォトカプラPH1,PH2に印加する。
交流入力電圧の電圧極性がIN-A=正、IN-B=負であるとき、電流は入力端子IN-Aから抵抗R1、フォトカプラPH1のダイオードD1を経て抵抗R2へと流れ、フォトカプラPH1のトランジスタQ1をON状態にする。一方、フォトカプラPH2のQ2はOFF状態である。このとき、極性信号OUT1はローレベル(Low)、極性信号OUT2はハイレベル(High)となる。
反対に、交流入力電圧の極性がIN-A=負、IN-B=正であるとき、電流は入力端子IN-B端子から抵抗R2、フォトカプラPH2のダイオードD2を経て抵抗R1へと流れ、フォトカプラPH2のトランジスタQ2がON状態となり、フォトカプラPH1のトランジスタQ1がOFF状態となる。このときは、極性信号OUT1がハイレベル(High)、極性信号OUT2がローレベル(Low)となる。
交流入力電圧が0Vに近い場合は、各フォトカプラPH1,PH2のダイオードD1,D2に流れる電流が減少し、両トランジスタQ1,Q2はいずれもOFF状態となって不確定領域を検出する。
〔比較例2〕
図15中(B):比較例2の極性検出回路は、商用周波数に対応した絶縁トランスT1を用いた構成である。ここでも同様に、電流制限用の抵抗R1,R2を有するが、比較例2では、絶縁トランスT1のインダクタンス成分を抵抗成分に近づけるための抵抗R3を有している。その他の抵抗R4~R7は、コンパレータIC1の非反転入力端子及びコンパレータIC2の反転入力端子にバイアス電圧を供給すると同時に、絶縁トランスT1の二次側端子P4に中点電圧1/2×VCC=2.5Vを供給する。各バイアス電圧は、中点電圧から微小電圧だけプラス又はマイナスした電圧である。コンパレータIC1の非反転入力に供給する中点電圧にプラスした微小電圧ΔVの値は、以下の〔数7〕で表される。
Figure 0007477264000007
また、コンパレータIC2の反転入力端子に供給する微小電圧ΔVは、上記の中点電圧に対してマイナスする方向に設定され、以下の〔数8〕で表される。
Figure 0007477264000008
この微小電圧値ΔV,ΔVは、交流入力電圧が0V近辺となる極性の不確定領域において、コンパレータIC1,IC2の誤動作を防止し、極性の不確定領域であることを出力する閾値となる。その他、入力端子IN-A,IN-B間に交流入力電圧を入力する点は比較例1等と同様である。
交流入力電圧の極性がIN-A=正、IN-B=負のとき、絶縁トランスT1の二次側端子P3は二次側端子P4に対して正となる。絶縁トランスT1の二次側端子P3,P4間の電圧値がΔVを超えると、コンパレータIC1の出力はローレベル(Low)となる。
逆に、交流入力電圧の極性がIN-A=負、IN-B=正のときは、絶縁トランスT1の二次側端子P3は二次側端子P4に対して負となる。絶縁トランスT1の二次側端子P3,P4間の電圧値がΔVを超えて負側に増加すると、コンパレータIC2の出力はローレベル(Low)となる。したがって、この様子は比較例1や本実施形態と同様である。
〔比較例1の問題点〕
比較例1の極性検出回路は、先行技術について述べたように、検出電力が大きくなるという問題がある。比較例1の極性検出回路は、ある程度の電流でフォトカプラPH1,PH2を駆動する必要があることから、電流制限用の抵抗R1、R2の値を高抵抗にすることができず、不確定領域を少なくすることは困難である。
例えば、フォトカプラPH1,PH2の必要電流を2mA程度とすると、交流入力電圧が実効値で100Vrms、不確定領域を10V以下とすると、抵抗R1+R2の値は、(R+R)≦(10/(2×10-3)=5kΩとなる。したがって、ここでの検出のための電力は(100)/(5×10)=2Wとなる。このことは、200WのPFCであれば約1%の効率低下につながることを意味している。また、検出のための電力を下げるため抵抗値R1,R2の値を高くすると、フォトカプラPH1,PH2の動作保証が困難となり不確定領域を広げる結果となる。
〔比較例2の問題点〕
比較例2の極性検出回路は、絶縁トランスT1が商用周波数(50Hz/60Hz)対応のものであるため、その形状や重量が問題となる。一般的に商用周波数対応の絶縁トランス(巻線トランス)の形状は、巻き数や磁気特性の関係から必然的に30mm×30mm×30mm程度となり、その重量は150g以上となる。
〔本実施形態の優位性〕
(1)本実施形態の極性検出回路130,230,330は、交流入力電圧の極性の変化をインピーダンスの変化に変換する手法を用いるため、回路の実現に際してダイオードを用いるだけでよく、フォトカプラや商用周波数対応(低周波型)の絶縁トランスを用いる必要がない。このため、電流制限用の抵抗R1,R2の値を高抵抗に設定することができ、比較例1,2と比較して検出のための電力を大幅に低減させることができる。
(2)本実施形態では、交流入力電圧の極性の変化をインピーダンスの変化に変換した上で極性の変化を検出するため、例えば図4に示すように、交流入力電圧のゼロ点近傍までの検出が可能である。したがって、各種の設定により極性検出における不確定領域を容易に狭めることができる。
(3)本実施形態の極性検出回路130,230,330では、絶縁トランス134,334に高周波対応のものを用いることができる。このため、巻線トランスを用いる極性検出回路130,230においても、比較例2のような商用周波数対応の大型なものではなく、比較的小型軽量のものを用いることができる。特に、極性検出回路330では絶縁トランス334に圧電トランスを用いているため、巻線トランスと比較した場合の小型化及び軽量化の利点は格別である。一例として容積比で2%以下、質量比で1%以下に抑えることができる。
〔第3例の詳細〕
図16は、第3例の極性検出回路330をより詳細に示した回路図である。ここでは主に、変換器D332、発振器E338及び検出器F336の回路構成をより詳細に示している。
変換器D332は、交流入力電圧の極性に応じて圧電トランスPZT1の一次側電極P1-P2間の終端インピーダンスを可変する。交流入力電圧の極性がIN-A=正、IN-B=負の場合、ダイオードD1~D4は導通状態となり、一次側電極P1-P2間の終端抵抗の値は大略で(R+R)となる。
一方、交流入力電圧の極性がIN-A=負、IN-B=正の場合、ダイオードD1~D4は遮断状態となり、一次側電極P1-P2間の終端抵抗の値は(R+R+R)となる。ここで、抵抗R3~R5の値R~Rについては以下の〔数9〕の条件を満たすものを選定する。
Figure 0007477264000009
このように抵抗R3~R5の値を選定することで、変換器D334の出力するインピーダンス変化を1/(ωC01)~∞までの範囲間に選定することができる。
ここで、ωは発振器E338の発振角周波数であり、また、コンデンサC1,C2及び圧電トランスPZT1の二次側電極P4-P3間のインダクタンスLxとの直列共振周波数である。したがってωは、二次側電極P4-P3間のインピーダンスが誘導性の値をとる角周波数でもある。
検出器F336は、発振器E338のコンデンサC1の端子間電圧を整流した直流電圧を抵抗R22~R24で作った基準電圧と比較し、その比較結果を出力する。
図17は、発振器E338の出力から圧電トランスPZT1、コンデンサC1,C2を含む等価回路を示す図である。図17に示す電圧源Vosは、発振器E338のトランジスタQ1,Q2のコレクタから出力される角周波数ωの電流源出力を電圧源として等価的に表したものである。このとき電圧源Vosの値は以下の〔数10〕で表される。
Figure 0007477264000010
Ic:電流源の出力電流
図17に示す等価抵抗Rxは、上述したように交流入力電圧の極性がIN-A=正、IN-B=負のとき、等価抵抗Rxの値は大きくなり、図17中の直列共振回路のQは低くなる。その結果、コンデンサC1に流れる共振電流値は少なくなり、コンデンサC1の端子間電圧は低くなる。
一方、交流入力電圧の極性がIN-A=負、IN-B=正のときは、等価抵抗Rxの値が小さくなり、図17中の直列共振回路のQは高くなる。その結果、コンデンサC1に流れる共振電流が増加して、コンデンサC1の端子間電圧は高くなる。
コンデンサC1の端子間電圧は、抵抗R20、ダイオードD5、コンデンサC3、抵抗R21から構成される整流回路で直流電圧に変換される。この直流電圧をコンパレータIC2,IC3により、基準電圧と比較して結果を出力する。ここでの基準電圧は、上述したようにコンパレータIC2の反転入力端子、コンパレータIC3の非反転入力端子に入力している。コンパレータIC2の反転入力端子の基準電圧は、コンパレータIC3の非反転入力端子の基準電圧より微小電圧だけ低く設定する。このように設定することで、交流入力電圧の極性がIN-A=正、IN-B=負のときはQが低下して整流回路からの直流電圧が低い状態となるので、検出器F336から出力される極性信号OUT1はローレベル(Low)、極性信号OUT2はハイレベル(High)となる。
逆に、交流入力電圧の極性がIN-A=負、IN-B=正のときは、直列共振回路のQが高くなるので、整流回路からの直流電圧も高くなり、出力される極性信号OUT1はハイレベル(High)、極性信号OUT2はローレベル(Low)となる。
以上の2つの条件の中間、すなわち交流入力電圧の極性が不確定となる領域では、整流回路からの直流電圧は、コンパレータIC3の非反転入力端子に印加した基準電圧よりやや低く、コンパレータIC2の反転入力端子に印加した基準電圧よりやや高い電圧となる。その結果、出力される極性信号OUT1,OUT2はともにハイレベル(High)となる。このようにして、図2で挙げた極性信号OUT1,OUT2の出力パターンを得ることができる。
上述した極性検出回路130,230,330によれば、交流入力電圧の極性の変化をインピーダンスの変化に変換し、これを絶縁された一次側から二次側へ伝送した上で、伝送されたインピーダンスの変化に基づいて、元の交流入力電圧の極性を検出するという、これまでにない新たな検出原理を提供することができる。また、極性検出回路130,230,330は、その検出手法を実現する回路の構成により、検出電力の低減及び構成部品の小型軽量化をも実現することができる。
本実施形態の極性検出回路130,230,330を用いた電源装置100は、ブリッジレスPFC回路120として効率を向上しつつ、検出電力の低減により効率改善効果をさらに向上させることができる。また、不確定領域を容易に低減できることから、ブリッジレスPFC回路120の力率改善効果をさらに向上させることもできる。
本発明は、上述した一実施形態に制約されることなく、種種に変形して実施可能である。
電源装置100は、図1に示す構成だけでなく、同様の機能を発揮できる構成に変形して実施することができる。
極性検出回路130,230,330は、変換器、絶縁トランス及び検出器(極性検出回路330については発振器が追加される)を基本構成としているが、これらが物理的に分離されている必要はなく、一部が一体化されていてもよい。
変換器A132、変換器C232、変換器D332、検出器B136、マルチバイブレータ136a、発振器E338等の構成として挙げた回路図はあくまで例示であり、それらの回路構成を適宜に追加変更して構成することができる。
また、各回路図において、コンパレータIC1~IC3の電源やGND端子の図示を省略している場合、これらを適宜用いることとする。
各実施形態において図示とともに挙げた構造はあくまで好ましい一例であり、基本的な構造に各種の要素を付加し、あるいは一部を置換しても本発明を好適に実施可能であることはいうまでもない。
100 電源装置
110 スイッチング電源
120 PFC
126 制御回路
130 極性検出回路
132 変換器
134 絶縁トランス
136 検出器
136a マルチバイブレータ
338 発振器

Claims (2)

  1. 入力される交流電圧の極性の変化をダイオードブリッジによりインピーダンスの変化に変換する変換器と、
    前記変換器によるインピーダンスの変化を一次側へ入力し、絶縁された二次側への出力として伝送する圧電トランスと、
    前記圧電トランスの二次側にて前記圧電トランスの共振周波数と反共振周波数との間の周波数領域で発振する発振器と、
    前記発振器を含む前記圧電トランスの二次側でのインピーダンスの変化に基づいて、入力される交流電圧の極性を検出する検出器と
    を備えた交流電圧の極性検出器。
  2. 入力される交流電流を整流して力率を改善した状態の整流波を出力するFETブリッジ回路を有し、前記FETブリッジ回路の動作を制御回路で制御するブリッジレスPFC回路と、
    前記ブリッジレスPFC回路からの出力を用いて直流電源を供給するスイッチング電源回路とを備え、
    前記制御回路は、請求項1に記載の交流電圧の極性検出器による検出結果を用いて前記FETブリッジ回路の力率改善動作及び整流動作を制御することを特徴とする電源装置。
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