以下、本件開示に係る制御装置及び電力変換装置の実施形態について、図面を用いて説明する。
<第1実施形態の構成>
図1は、第1実施形態に係る制御装置30及び電力変換装置1の構成の一例について示す図である。図1において、電力変換装置1は、図1中左側の一端側(入力側)で直流母線2を介して太陽光パネル4と接続され、図1中右側の他端側(出力側)で交流回路3を介して交流電力系統5と接続される。
電力変換装置(PCS:Power Conditioning System)1は、例えば、太陽光パネル4から供給される直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を交流電力系統5側(交流側)に出力する。すなわち、本実施形態における電力変換装置1は、太陽光発電(PV:Photovoltaics)用の電力変換装置(PV-PCS:Photovoltaics-Power Conditioning System)である。以下、本明細書において、電力変換装置1は、「PV-PCS1」又は単に「PCS1」とも称される。
図1に示すように、電力変換装置1は、直流スイッチ11と、直流コンデンサ12と、インバータ13と、交流リアクトル14と、交流コンデンサ15と、交流スイッチ16とを有する。また、電力変換装置1は、第1電流センサ21と、第1電圧センサ22と、第2電流センサ23と、第2電圧センサ24と、第3電流センサ25と、制御装置30とを有する。なお、制御装置30は、図中配線は省略するが、電力変換装置1の各要素と電気的に接続されている。
直流母線2は、太陽光パネル4と、電力変換装置1におけるインバータ13の直流端(入力側)とを接続する。直流母線2は、太陽光パネル4によって発電された直流電力をインバータ13に供給する。直流母線2には、例えば、太陽光パネル4からインバータ13の直流端に向かって順に、第1電流センサ21と、直流スイッチ11と、第1電圧センサ22と、直流コンデンサ12とが配されている。
交流回路3は、電力変換装置1におけるインバータ13の交流端(出力側)と、交流電力系統5とを接続する。交流回路3は、例えば、電流又は電圧の位相を互いにずらした三系統の単相交流を組み合わせた三相交流電力を三本の電線・ケーブルを用いて供給する三相三線式の三相交流回路である。交流回路3は、インバータ13によって変換された交流電力を交流電力系統5側に供給する。交流回路3には、例えば、インバータ13の交流端から交流電力系統5に向かって順に、第2電流センサ23と、交流リアクトル14と、交流コンデンサ15と、交流スイッチ16と、第2電圧センサ24と、第3電流センサ25とが配されている。
太陽光パネル(太陽電池パネル)4は、直流母線2を介しインバータ13の直流端(入力端)と接続される。太陽光パネル4は、太陽光モジュール、太陽電池モジュール、又は単に太陽電池、モジュール等とも称され、例えば、複数の太陽電池セルを組み合わせて1枚のパネルとしたものである。太陽光パネル4は、例えば、複数枚のパネルを互いに直列又は並列に組み合わせた太陽電池ストリングや、太陽電池ストリングを組み合わせた太陽電池アレイであってもよい。太陽光パネル4は、太陽光によって発電を行い、発電された直流電力を、直流母線2を介してインバータ13に供給する。なお、以下、本明細書において、太陽光パネル4は、「太陽電池パネル4」又は「PV(Photovoltaics)パネル4」とも称される。
交流電力系統(系統)5は、交流回路3を介しインバータ13の交流端(出力端)と接続される。交流電力系統5は、不図示の変圧器と接続され、不図示の変圧器によって変圧された交流電力を需要家の受電設備に供給するための、発電・変電・送電・配電を統合したシステムであり、例えば、不特定の負荷が接続される。なお、以下、本明細書において、交流電力系統5は、「電力系統5」又は単に「系統5」とも称される。
直流スイッチ(直流遮断器)11は、直流母線2において、第1電流センサ21と第1電圧センサ22との間に設けられる。直流スイッチ11は、制御装置30や不図示のオペレータ等からの投入指示又は開放指示に従って、太陽光パネル4とインバータ13との間の直流母線2を投入(接続)又は開放(遮断)する。直流スイッチ11が開放されると、太陽光パネル4からインバータ13に供給される直流電力が遮断される。なお、以下、本明細書において、直流スイッチ11は、「DC(Direct Current)スイッチ11」とも称される。
直流コンデンサ12は、直流母線2において、第1電圧センサ22とインバータ13の直流端との間に設けられる。直流コンデンサ12は、太陽光パネル4から出力される直流電圧を平滑化させる平滑コンデンサである。直流コンデンサ12は、例えば、DCスイッチ11が投入されているときは、太陽光パネル4からの直流電力により充電されて電圧が上昇し、DCスイッチ11が開放されているときは、例えば、不図示の放電回路や放電抵抗等により放電されて電圧が低下する。以下、本明細書において、直流コンデンサ12は、「DCコンデンサ12」とも称される。
インバータ(インバータ回路)13は、直流端である一端側が直流母線2を介してDCコンデンサ12及びDCスイッチ11と接続され、交流端である他端側が交流回路3を介して交流リアクトル14と接続される。インバータ回路13は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等の複数のスイッチング素子で構築される。インバータ回路13は、例えば、後述のパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)制御部65で生成されるスイッチング素子のゲート駆動信号(ゲート信号)であるパルス幅変調(PWM)信号によって制御される。
インバータ13は、太陽光パネル4から供給される直流電力を一端側から取得し、パルス幅変調信号(ゲート信号)による制御に従い、取得した直流電力を交流電力に変換して、出力端である他端側から出力して系統5側に供給する。なお、以下、本明細書において、パルス幅変調信号は、「PWM信号」とも称される。
交流リアクトル14は、交流回路3において、インバータ13の交流端と直列に接続される。交流リアクトル14は、例えば、騒音を低減させる効果やサージ電圧を抑制させる効果を有する平滑要素である。交流リアクトル14は、例えば、分岐点15aを介してL型に接続された交流コンデンサ15とともにインバータ13の不図示のスイッチング素子がスイッチングするときに発生するリプル(振動)を低減させるLCフィルタ回路(フィルタ回路)を構成する。なお、以下、本明細書において、交流リアクトル14は、「AC(Alternating Current)リアクトル14」とも称される。
交流コンデンサ15は、電気(電荷)を蓄え又は放出する電子部品であり、交流回路3において、分岐点15aを介してACリアクトル14とL型に接続される。交流コンデンサ15は、例えば、L型に接続されたACリアクトル14とともにインバータ13の不図示のスイッチング素子がスイッチングするときに発生させるリプル(振動)を低減させるLCフィルタ回路(フィルタ回路)を構成する。交流コンデンサ15は、ACリアクトル14とともにフィルタ回路を構成することで、不図示の系統側に高調波(高調波電流)が流出することを抑制する。以下、本明細書において、交流コンデンサ15は、「ACコンデンサ15」とも称される。
交流スイッチ(交流遮断器)16は、交流回路3において、ACリアクトル及びACコンデンサと交流電力系統5との間に直列に設けられる。交流スイッチ16は、例えば、制御装置30や不図示のオペレータ等からの投入指示又は開放指示に従って、インバータ13と系統5との間の交流回路3を投入(接続)又は開放(遮断)する。交流スイッチ16が開放されるとインバータ13から系統5側に供給される交流電力が遮断される。以下、本明細書において、交流スイッチ16は、「ACスイッチ16」とも称される。
第1電流センサ21は、例えば、公知の直流電流計又は直流電流センサ等であり、直流側のPVパネル4とDCスイッチ11との間に配置され、PVパネル4から流れる直流電流iDCの値を検出する。なお、第1電流センサ21が配置される位置は、図1に示される位置には限られず、PVパネル4から流れる直流電流iDCの値を検出可能な位置であればどこでもよい。以下、本明細書において、直流電流iDCの値は、単に「直流電流iDC」とも称される。第1電流センサ21によって検出された直流電流iDCは、制御装置30によって取得される。
第1電圧センサ22は、例えば、公知の直流電圧計又は直流電圧センサ等であり、直流側のDCスイッチ11とDCコンデンサ12との間に配置され、DCコンデンサ12の直流電圧vDCの値を検出する。なお、第1電圧センサ22が配置される位置は、図1に示される位置には限られず、DCコンデンサ12の直流電圧vDCの値を検出可能な位置であればどこでもよい。以下、本明細書において、直流電圧vDCの値は、単に「直流電圧vDC」とも称される。第1電圧センサ22によって検出された直流電圧vDCは、制御装置30によって取得される。
第2電流センサ23は、例えば、公知の交流電流計又は交流電流センサ等であり、交流側のインバータ13とACリアクトル14との間に配置され、インバータ13の出力電流である三相交流電流のインバータ出力電流iACの値を検出する。なお、第2電流センサ23が配置される位置は、図1に示される位置には限られず、インバータ13の出力電流であるインバータ出力電流iACの値を検出可能な位置であればどこでもよい。以下、本明細書において、インバータ出力電流iACの値は、単に「インバータ出力電流iAC」とも称される。第2電流センサ23によって検出されたインバータ出力電流iACは、制御装置30によって取得される。
第2電圧センサ24は、例えば、公知の交流電圧計又は交流電圧センサ等であり、交流側のACスイッチ16と系統5との間に配置され、系統5における三相交流電圧である系統電圧vGridの値を検出する。なお、第2電圧センサ24が配置される位置は、図1に示される位置には限られず、系統5における系統電圧vGridの値を検出可能な位置であればどこでもよい。以下、本明細書において、系統電圧vGridの値は、単に「系統電圧vGrid」とも称される。第2電圧センサ24によって検出された系統電圧vGridは、制御装置30によって取得される。
第3電流センサ25は、例えば、公知の交流電流計又は交流電流センサ等であり、交流側のACスイッチ16と系統5との間に配置され、系統5に流れる三相交流電流である交流電流iGridの値を検出する。なお、第3電流センサ25が配置される位置は、図1に示される位置には限られず、系統5に流れる交流電流iGridの値を検出可能な位置であればどこでもよい。以下、本明細書において、交流電流iGridの値は、単に「系統電流iGrid」とも称される。第3電流センサ25によって検出された系統電流iGridは、制御装置30によって取得される。
制御装置30は、例えば、電力変換装置1の内部又は外部に設けられ、図中配線等は省略されているが、インバータ13を始めとする電力変換装置1の各構成と、有線又は無線によって接続されている。なお、制御装置30は、不図示のインバータ制御回路の機能として実現されていてもよい。
制御装置30は、例えば、プログラムを実行することにより動作するCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の後述のプロセッサ91(図9参照)を有する。また、制御装置30は、後述の記憶部70やメモリ92(図9参照)等を有し、例えば、記憶部70又はメモリ92に記憶された所定のプログラムを実行することによりプロセッサ91を動作させて電力変換装置1の動作を統括的に制御する。
なお、制御装置30は、例えば、不図示の上位装置からの指示や不図示の操作部を介したオペレータからの指示等に従って動作してもよい。なお、不図示の上位装置は、例えば、複数台の電力変換装置1を統括的に監視及び制御するものであり、各電力変換装置1と、有線又は無線で接続されている。
図1に示すように、制御装置30は、PLL(Phase Locked Loop)制御部41と、第1変換部42と、第2変換部43と、電力制御部44との構成又は機能を有する。また、制御装置30は、実効値(RMS:Root Mean Square Value)算出部51と、変調率算出部52と、リミッタ調整部53との構成又は機能を有する。また、制御装置30は、リミッタ54、最大電力点追従制御部(MPPT制御部)55と、第1減算部56と、直流電圧制御部57との構成又は機能を有する。なお、本実施形態において、変調率算出部52は、リミッタ調整部53の構成又は機能を有し、MPPT制御部55は、リミッタ54の構成又は機能を有する。また、制御装置30は、第1加算部61と、第3変換部62と、第2減算部63と、電流制御部64と、PWM制御部65との構成又は機能を有する。
なお、上記の各構成又は機能は、制御装置30が有する後述の処理回路90(図9参照)における後述のプロセッサ91(図9参照)が実行するプログラムにより実現されても、後述のハードウェア93(図9参照)により実現されてもよい。制御装置30は、所定のプログラムを実行して、上記の各構成又は機能により、以下の処理を行う。
PLL制御部41は、第2電圧センサ24と、第1変換部42と、第2変換部43と接続される。PLL制御部41は、第2電圧センサ24の検出値である系統電圧vGridの情報を取得する。PLL制御部41は、系統電圧vGridに基づいてPLL制御を行い、系統電圧vGridに同期した基準位相θの情報を第1変換部42と、第2変換部43とに出力する。
第1変換部42は、第2電圧センサ24と、PLL制御部41と、電力制御部44と、実効値算出部51と接続される。第1変換部42は、第2電圧センサ24の検出値である系統電圧vGridの情報と、PLL制御部41から出力される基準位相θの情報とを取得する。第1変換部42は、取得した基準位相θに基づいて三相二相変換(dq変換)を行い、系統電圧vGridをd軸電圧の値とq軸電圧の値とに変換する。なお、dq変換の基準位相θは、例えば、q軸電圧成分を0とする。第1変換部42は、d軸電圧の値の情報とq軸電圧の値の情報とを電力制御部44と実効値算出部51とに出力する。
第2変換部43は、第2電流センサ23と、第3電流センサ25と、電力制御部44と接続される。第2変換部43は、第2電流センサ23の検出値であるインバータ出力電流iACの情報と、第3電流センサ25の検出値である系統電流iGridの情報と、PLL制御部41から出力される基準位相θの情報とを取得する。第2変換部43は、取得した基準位相θに基づいて三相二相変換(dq変換)を行い、インバータ出力電流iACと系統電流iGridとをd軸電流の値とq軸電流の値とに変換する。なお、dq変換の基準位相θは、例えば、q軸電圧成分を0とする。第2変換部43は、d軸電流の値の情報とq軸電流の値の情報とを電力制御部44に出力する。
電力制御部44は、第1変換部42と、第2変換部43と、第1加算部61と、第3変換部62と接続される。電力制御部44は、第1変換部42からd軸電圧の値の情報とq軸電圧の値の情報とを取得し、第2変換部43からd軸電流の値の情報とq軸電流の値の情報とを取得する。電力制御部44は、取得したd軸電圧の値の情報と、q軸電圧の値の情報と、d軸電流の値の情報と、q軸電流の値の情報とに基づいて、d軸電流指令値i*
dの情報と、q軸電流指令値i*
qの情報とを求める。電力制御部44は、求めたd軸電流指令値i*
dの情報を第1加算部61に出力し、求めたq軸電流指令値i*
qの情報を第3変換部62に出力する。
実効値算出部(RMS算出部)51は、第1変換部42と、変調率算出部52と接続される。実効値算出部51は、第1変換部42からd軸電圧の値の情報とq軸電圧の値の情報とを取得する。実効値算出部51は、取得したd軸電圧の値の情報とq軸電圧の値の情報とに基づいて、系統電圧実効値vRMSを算出する。実効値算出部51は、算出した系統電圧実効値vRMSの情報を変調率算出部52に出力する。なお、以下、本明細書において、実効値算出部51は、「RMS算出部51」とも称される。
変調率算出部52は、第1電圧センサ22と、実効値算出部51と接続される。変調率算出部52は、第1電圧センサ22の検出値である直流電圧vDCの情報と、実効値算出部51から系統電圧実効値vRMSの情報とを取得する。変調率算出部52は、取得した直流電圧vDCの情報と系統電圧実効値vRMSの情報とに基づいて、変調率を算出する。なお、変調率算出部52は、常時又は所定間隔毎に変調率を算出してもよく、任意のタイミングで変調率を算出してもよい。
変調率算出部52は、リミッタ調整部53を有し、例えば、算出した変調率をリミッタ調整部53に出力する。なお、変調率算出部52は、算出した変調率が1を超えた(変調率>100%)か否かの情報をリミッタ調整部53に出力してもよい。あるいは、変調率算出部52は、算出した変調率が1を超えた(変調率>100%)場合にのみ、算出した変調率、又は算出した変調率が1を超えた(変調率>100%)という情報を、リミッタ調整部53に出力してもよい。
リミッタ調整部53は、例えば、変調率算出部52の一部として設けられ、変調率算出部52を介して実効値算出部51と接続され、また、MPPT制御部55を介してリミッタ54と接続される。また、リミッタ調整部53は、図中配線は省略されているが、記憶部70とも接続される。リミッタ調整部53は、変調率算出部52から変調率についての情報を取得し、記憶部70から下限リミッタ設定値vL1の情報と定格値vRの情報とを取得する。
リミッタ調整部53は、取得した下限リミッタ設定値vL1と、定格値vRと、系統電圧実効値vRMSとに基づいて下限リミッタ動作値vL2を算出する。なお、リミッタ調整部53は、変調率が1を超えていても(変調率>100%)、1を超えていなくても(変調率≦100%)、常に計算を行い、下限リミッタ動作値vL2の値を更新(算出)する。そして、リミッタ調整部53は、算出した下限リミッタ動作値vL2の値をリミッタ54に出力する。その結果、変調率は、1を超えなくなっていく。
なお、リミッタ調整部53は、演算の結果、下限リミッタ動作値vL2の値に変動がない場合、下限リミッタ動作値vL2の値をリミッタ54に出力しなくてもよい。反対に、リミッタ調整部53は、変調率の変動の有無や、下限リミッタ動作値vL2の値の変動の有無に拘わらず、常時又は所定間隔毎に、或いは任意のタイミングで、下限リミッタ動作値vL2の値をリミッタ54に出力してもよい。
なお、変調率算出部52とリミッタ調整部53とは、図1に示す構成には限られず、変調率算出部52とリミッタ調整部53とは、少なくともMPPT制御部55と非同期に動作するものであればよい。すなわち、変調率算出部52とリミッタ調整部53とは、MPPT制御部55と非同期に動作するものであれば、一体的な構成であっても全く別の構成であってもよく、また、リミッタ調整部53が変調率算出部52を有する構成であってもよい。
リミッタ54は、例えば、MPPT制御部55の一部として設けられ、変調率算出部52を介して、リミッタ調整部53と接続される。リミッタ54は、リミッタ調整部53から下限リミッタ動作値vL2についての情報を取得する。なお、リミッタ54は、下限リミッタ動作値vL2の値が変動した場合にのみ、リミッタ調整部53から下限リミッタ動作値vL2についての情報を取得してもよい。また、リミッタ54は、常時又は所定間隔毎に、或いは任意のタイミングで、リミッタ調整部53から下限リミッタ動作値vL2についての情報を取得してもよい。
リミッタ54は、リミッタ調整部53から下限リミッタ動作値vL2についての情報を取得したときは、リミッタ54に設定されている直流電圧指令下限リミッタvLの値を更新する。これにより、変調率に応じて、直流電圧指令下限リミッタvLの値が更新される。なお、リミッタ54は、下限リミッタ動作値vL2の値に変動が無いときは、直流電圧指令下限リミッタvLの値を更新しなくてもよい。リミッタ54は、更新された下限リミッタ動作値vL2の値を現時点での直流電圧指令下限リミッタvLの値として設定する。
最大電力点追従制御部(MPPT制御部)55は、第1電流センサ21と、第1電圧センサ22と、第1減算部56と接続される。MPPT制御部55は、第1電流センサ21の検出値である直流電流iDCの情報と、第1電圧センサ22の検出値である直流電圧vDCの情報とを取得する。MPPT制御部55は、取得した直流電流iDCの情報と、直流電圧vDCの情報とに基づいて、例えば、公知の山登り法に基づくMPPT制御を行い、直流電圧指令値v’*
DCを算出する。MPPT制御部55によるMPPT制御の範囲(リミッタの範囲)は、例えば、装置毎に定められている。なお、直流電圧指令値v’*
DCは、「第1直流電圧指令値」の一例である。
MPPT制御部55は、リミッタ54を有し、算出した直流電圧指令値v’*
DCと、リミッタ54に設定されている現時点での直流電圧指令下限リミッタvLとを比較する。MPPT制御部55は、比較した結果、算出した直流電圧指令値v’*
DCが、リミッタ54に設定されている直流電圧指令下限リミッタvLよりも小さい値であるときは、直流電圧指令下限リミッタvLの値を次回の直流電圧指令値v*
DCとして決定する。一方、MPPT制御部55は、算出した直流電圧指令値v’*
DCが、リミッタ54に設定されている直流電圧指令下限リミッタvL以上の値であるときは、算出した直流電圧指令値v’*
DCの値をそのまま次回の直流電圧指令値v*
DCとして決定する。MPPT制御部55は、決定した直流電圧指令値v*
DCの情報を、第1減算部56に出力する。なお、直流電圧指令値v*
DCは、「第2直流電圧指令値」の一例である。
第1減算部56は、第1電圧センサ22と、MPPT制御部55と接続される。第1減算部56は、第1電圧センサ22の検出値である直流電圧vDCの情報と、MPPT制御部55から出力される直流電圧指令値v*
DCの情報とを取得する。第1減算部56は、直流電圧指令値v*
DCから直流電圧vDCを減算した値を算出する。第1減算部56は、算出した直流電圧指令値v*
DCから直流電圧vDCを減算した値の情報を直流電圧制御部57に出力する。
直流電圧制御部57は、第1減算部56と、第1加算部61と接続される。直流電圧制御部57は、第1減算部56から出力される直流電圧指令値v*
DCから直流電圧vDCを減算した値の情報を取得する。直流電圧制御部57は、取得した情報を制御して、d軸電流指令値を算出する。直流電圧制御部57は、算出したd軸電流指令値の情報を第1加算部61に出力する。
第1加算部61は、電力制御部44と、直流電圧制御部57と、第3変換部62と接続される。第1加算部61は、電力制御部44から出力されるd軸電流指令値i*
dの情報と、直流電圧制御部57から出力されるd軸電流指令値の情報とを取得する。第1加算部61は、取得したd軸電流指令値i*
dとd軸電流指令値とを加算した値を算出する。第1加算部61は、算出したd軸電流指令値i*
dとd軸電流指令値とを加算した値の情報を第3変換部62に出力する。
第3変換部62は、電力制御部44と、第1加算部61と、第2減算部63と接続される。第3変換部62は、電力制御部44から出力されるq軸電流指令値i*
qの情報と、第1加算部61から出力されるd軸電流指令値i*
dとd軸電流指令値とを加算した値の情報とを取得する。第3変換部62は、取得した情報を二相三相変換(逆dq変換)して電流指令値i*
ACを算出する。第3変換部62は、算出した電流指令値i*
ACの情報を第2減算部63に出力する。
第2減算部63は、第2電流センサ23と、第3変換部62と、電流制御部64と接続される。第2減算部63は、第2電流センサ23の検出値であるインバータ出力電流iACの情報と、第3変換部62から出力される電流指令値i*
ACの情報とを取得する。第2減算部63は、電流指令値i*
ACからインバータ出力電流iACを減算した値を算出する。第2減算部63は、算出した電流指令値i*
ACからインバータ出力電流iACを減算した値の情報を電流制御部64に出力する。
電流制御部64は、第2減算部63と、PWM制御部65と接続される。電流制御部64は、第2減算部63から出力される電流指令値i*
ACからインバータ出力電流iACを減算した値の情報を取得する。電流制御部64は、取得した情報を制御して電圧指令値を算出する。電流制御部64は、算出した電圧指令値をPWM制御部65に出力する。
パルス幅変調制御部(PWM制御部)65は、インバータ13と、電流制御部64と接続される。PWM制御部65は、電流制御部64から電圧指令値を取得する。PWM制御部65は、取得した電圧指令値に基づいてPWM制御を行い、パルス幅変調信号(PWM信号)であるゲート信号を発生させる。PWM制御部65は、発生させたゲート信号をインバータ13に出力し、インバータ13の不図示のスイッチング素子を制御して、インバータ13の動作を統括的に制御する。なお、PWM制御部65は、「インバータ制御部」の一例である。
記憶部70は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、その他の半導体メモリ等の揮発性又は不揮発性の記憶媒体である。記憶部70は、例えば、不図示のバス(システムバス)等により、各種の情報の入出力が可能なように制御装置30の各部と接続されている。記憶部70は、例えば、制御装置30の各部の動作に必要なプログラムを記憶するとともに、制御装置30の各部により、各種の情報の書き込みや読み出しが行われる。
また、記憶部70は、例えば、第1電流センサ21等の各センサ等によって取得された値を記憶する。また、記憶部70は、例えば、リミッタ調整部53やMPPT制御部55等の各部による演算に用いられる各種の演算式、係数、閾値等や、所定の定格値、リミッタ値等を記憶する。また、記憶部70は、例えば、実効値算出部51、変調率算出部52、リミッタ調整部53、MPPT制御部55等の各部による演算結果等を記憶する。
なお、記憶部70は、制御装置30の外部に設けられ、有線又は無線で制御装置30と接続されていてもよく、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disc)等の外部記憶媒体等であっても、オンラインストレージ等であってもよい。また、記憶部70は、後述のメモリ92(図9参照)と共通であってもよい。
図2は、図1に示す変調率算出部52及びリミッタ調整部53の構成及び処理の一例を示す図である。
変調率算出部52は、図中配線は省略されているが、図1で説明したとおり、第1電圧センサ22と、実効値算出部51と接続され、第1電圧センサ22から直流電圧vDCの情報を取得し、実効値算出部51から系統電圧実効値vRMSの情報とを取得する。変調率算出部52は、取得した直流電圧vDCの情報と系統電圧実効値vRMSの情報とに基づいて、変調率を算出する。
変調率算出部52は、図2の下部に一例として示すとおり、例えば、以下の(1)式により変調率を算出する。なお、(1)式において、系統電圧実効値×√2は、系統電圧のピーク値である。
変調率=系統電圧実効値×√2/直流電圧 ・・・(1)
なお、図2の下部に示すとおり、変調率が100%より大きい(変調率>100%)とき、すなわち、変調率が1を超えたときは、過変調とされる。
一例として、系統電圧実効値vRMSが600Vであり、直流電圧vDCが1000Vである場合について説明する。この場合、(1)式に基づいて変調率を算出すると、変調率は、600V×√2/1000V=84.9%となる。この場合、変調率は1を超えていない(変調率≦100%である)ため、過変調ではない。なお、過変調でない場合、電力変換装置1は、安定動作可能である。
一方、別の例として、系統電圧実効値vRMSが10%上がってしまって660Vとなり、そのときにちょうど直流電圧vDCが下がってしまい930Vとなってしまった場合について説明する。この場合、(1)式に基づいて変調率を算出すると、660V×√2/930V=100.4%となる。この場合、変調率は1を超えている(変調率>100%である)ため、過変調である。なお、過変調である場合、電力変換装置1は、安定動作することができない。
変調率算出部52は、図1で説明したとおり、算出した変調率、又は算出した変調率が1を超えた(変調率>100%)か否かの情報をリミッタ調整部53に出力する。或いは、変調率算出部52は、算出した変調率が1を超えた(変調率>100%)場合にのみ、算出した変調率、又は算出した変調率が1を超えた(変調率>100%)という情報を、リミッタ調整部53に出力してもよい。
リミッタ調整部53は、図中配線は省略されているが、図1で説明したとおり、実効値算出部51と、リミッタ54と、記憶部70と接続される。リミッタ調整部53は、例えば、下限リミッタ設定値取得部53aと、系統電圧実効値取得部53bと、定格値取得部53cと、除算部53dと、上下限リミッタ53eと、乗算部53fと、下限リミッタ動作値出力部53gとを有する。
下限リミッタ設定値取得部53aは、記憶部70と、乗算部53fと接続される。下限リミッタ設定値取得部53aは、記憶部70から、MPPT基準電圧の下限リミッタ設定値vL1を取得し、取得した下限リミッタ設定値vL1を乗算部53fに出力する。なお、MPPT基準電圧の下限リミッタ設定値vL1は、例えば、仕様として、装置毎に所定の値に定められている。図2に示す例では、下限リミッタ設定値取得部53aは、記憶部70から、下限リミッタ設定値vL1として900Vを取得し、取得した900Vを乗算部53fに出力する。
系統電圧実効値取得部53bは、実効値算出部51と、除算部53dと接続される。系統電圧実効値取得部53bは、実効値算出部51から、実効値算出部51によって算出された系統電圧実効値vRMSを取得し、取得した系統電圧実効値vRMSを除算部53dに出力する。図2に示す例では、系統電圧実効値取得部53bは、実効値算出部51から、系統電圧実効値vRMSとして630Vを取得し、取得した630Vを除算部53dに出力する。
定格値取得部53cは、記憶部70と、除算部53dと接続される。定格値取得部53cは、記憶部70から定格値vRを取得し、取得した定格値vRを除算部53dに出力する。なお、定格値vRは、例えば、仕様として、装置毎に所定の値に定められている。図2に示す例では、定格値取得部53cは、記憶部70から、定格値vRとして600Vを取得し、取得した600Vを除算部53dに出力する。
除算部53dは、系統電圧実効値取得部53bと、定格値取得部53cと、上下限リミッタ53eと接続される。除算部53dは、系統電圧実効値取得部53bから系統電圧実効値vRMSを取得し、定格値取得部53cから定格値vRを取得し、取得した系統電圧実効値vRMSを定格値vRで除算する。そして、除算部53dは、系統電圧実効値vRMSを定格値vRで除算した値を上下限リミッタ53eに出力する。
図2に示す例では、除算部53dは、系統電圧実効値取得部53bから系統電圧実効値vRMSとして630Vを取得し、定格値取得部53cから定格値vRとして600Vを取得し、取得した630Vを600Vで除算する。そして、除算部53dは、630Vを600Vで除算した値である1.05を上下限リミッタ53eに出力する。
上下限リミッタ53eは、除算部53dと、乗算部53fと接続される。上下限リミッタ53eは、除算部53dから、系統電圧実効値vRMSを定格値vRで除算した値を取得する。そして、上下限リミッタ53eは、取得した値と、上下限リミッタ53eに設定されている上限値及び下限値(上下限値)とを比較する。上下限リミッタ53eは、取得した値が、上下限値の範囲内であるときは、上下限リミッタ53eで限定された値として、取得した値をそのまま乗算部53fに出力する。一方、上下限リミッタ53eは、取得した値が、上下限値の範囲外であるときは、上下限リミッタ53eで限定された値として、取得した値を上下限値の範囲内に限定した値を、乗算部53fに出力する。
図2に示す例では、上下限リミッタ53eは、除算部53dから、630Vを600Vで除算した値である1.05を取得する。そして、上下限リミッタ53eは、取得した1.05が、上限値である1.1及び下限値である1.0の範囲内であるため、上下限リミッタ53eで限定された値として、取得した1.05をそのまま乗算部53fに出力する。
なお、上下限リミッタ53eに設定されている上限値及び下限値は、例えば、仕様として、装置毎に所定の値に定められていてもよいが、下限値は、1.0であってもよい。これにより、系統電圧実効値vRMSが定格値vRよりも大きくなった場合にのみ、下限リミッタ動作値vL2が制御されることとなり、下限リミッタ動作値vL2の値がMPPT基準電圧の下限リミッタ設定値vL1よりも小さくなることを防止することができる。
乗算部53fは、下限リミッタ設定値取得部53aと、上下限リミッタ53eと、下限リミッタ動作値出力部53gと接続される。乗算部53fは、下限リミッタ設定値取得部53aから、下限リミッタ設定値vL1を取得し、上下限リミッタ53eから、上下限リミッタ53eで限定された値を取得する。乗算部53fは、取得した下限リミッタ設定値vL1と、上下限リミッタ53eで限定された値とを乗算する。乗算部53fは、下限リミッタ設定値vL1と上下限リミッタ53eで限定された値とを乗算した値を、下限リミッタ動作値出力部53gに出力する。
図2に示す例では、乗算部53fは、下限リミッタ設定値取得部53aから、下限リミッタ設定値vL1として900Vを取得し、上下限リミッタ53eから、上下限リミッタ53eで限定された値として1.05を取得する。そして、乗算部53fは、900Vと1.05とを乗算した値である945Vを、下限リミッタ動作値出力部53gに出力する。
下限リミッタ動作値出力部53gは、乗算部53fと、リミッタ54と接続される。下限リミッタ動作値出力部53gは、乗算部53fから、下限リミッタ設定値vL1と上下限リミッタ53eで限定された値とを乗算した値を取得し、取得した値を下限リミッタ動作値vL2としてリミッタ54に出力する。図2に示す例では、下限リミッタ動作値出力部53gは、乗算部53fから945Vを取得し、取得した945Vを下限リミッタ動作値vL2としてリミッタ54に出力する。
以上の処理により、リミッタ54(図1参照)は、リミッタ調整部53(下限リミッタ動作値出力部53g)から下限リミッタ動作値vL2についての情報を取得したときは、リミッタ54に設定されている直流電圧指令下限リミッタvLの値を更新する。これにより、変調率に応じて、直流電圧指令下限リミッタvLの値を更新させることができ、従来よりも直流側の運転範囲を広くとることができるとともに、過変調を避けて安定して電力変換装置1を運転させることができる。
すなわち、直流電圧指令下限リミッタvLは、電力変換装置1の系統電圧の運転範囲を考慮して設定する必要があるが、系統電圧の上限は、一般に各国の連携規定で定格の110%まで必要である。しかし、一日の大部分において、系統電圧は、定格の100%付近である。このため、定格の110%を想定して、過変調とならないように、例えば、予め装置のスペックよりも高めの直流電圧指令下限リミッタvLを設定してしまうと、直流側の運転範囲が狭くなってしまう。図2の例では、図2の下部に示すとおり、MPPT電圧のリミッタ範囲は900V~1300Vであるが、下限電圧を系統電圧の上昇分を考慮して上げてしまうと、運転範囲が、例えば、990V~1300V等となり、直流側の運転範囲が狭くなってしまう。
一方、本実施形態によれば、例えば、変調率に応じて、系統電圧実効値vRMSが上昇したときは、直流電圧指令下限リミッタvLを上昇させ、また、系統電圧実効値vRMSが下降したときは、直流電圧指令下限リミッタvLを下降させることができる。これにより、変調率に応じて、直流電圧指令下限リミッタvLの値を更新させることができ、従来よりも直流側の運転範囲を広くとることができるとともに、過変調を避けて安定して電力変換装置1を運転させることができる。
<第1実施形態の動作>
図3は、図1に示すMPPT制御部55の動作の一例について示すフローチャートである。図3に示すフローチャートは、電力変換装置1の運転が開始されるとともに開始される。
ステップS1において、MPPT制御部55は、現在の直流電圧指令値v*
DCにΔVを加算又は減算した値に変更した直流電圧指令値1を算出する。例えば、MPPT制御部55は、現在の直流電圧指令値v*
DCにΔVを加算した値に変更した直流電圧指令値1を算出する。なお、加算及び減算の順序は、例えば、装置毎に定められた所定の法則に則った順序で行われても、任意の順序で行われてもよい。
ステップS2において、MPPT制御部55は、直流電圧指令値v*
DCが直流電圧指令値1である場合の電力計算1回目の電力P1を算出する。
ステップS3において、MPPT制御部55は、ステップS1とは逆に、現在の直流電圧指令値v*
DCにΔVを加算又は減算した値に変更した直流電圧指令値1を算出する。例えば、MPPT制御部55は、ステップS1で現在の直流電圧指令値v*
DCにΔVを加算したときは、ステップS1とは逆に、現在の直流電圧指令値v*
DCにΔVを減算した値に変更した直流電圧指令値2を算出する。一方、例えば、MPPT制御部55は、ステップS1で現在の直流電圧指令値v*
DCにΔVを減算したときは、ステップS1とは逆に、現在の直流電圧指令値v*
DCにΔVを加算した値に変更した直流電圧指令値2を算出する。上記のステップS1では、MPPT制御部55は、現在の直流電圧指令値v*
DCにΔVを加算したため、ステップS3では、ステップS1とは逆に、現在の直流電圧指令値v*
DCにΔVを減算した値に変更した直流電圧指令値2を算出する。
ステップS4において、MPPT制御部55は、直流電圧指令値v*
DCが直流電圧指令値2である場合の電力計算2回目の電力P2を算出する。
ステップS5において、MPPT制御部55は、ステップS2で算出した電力計算1回目の電力P1と、ステップS4で算出した電力計算2回目の電力P2とを比較し、電力計算1回目の電力P1の方が電力計算2回目の電力P2よりも大きいか否かを判定する。そして、MPPT制御部55は、電力計算1回目の電力P1の方が電力計算2回目の電力P2よりも大きいときは(Yes側)、ステップS6に処理を移行させる。一方、MPPT制御部55は、電力計算1回目の電力P1が電力計算2回目の電力P2よりも大きくないときは(No側)、ステップS7に処理を移行させる。すなわち、MPPT制御部55は、電力計算2回目の電力P2の方が電力計算1回目の電力P1よりも大きいときは、ステップS7に処理を移行させる。
ステップS6において、MPPT制御部55は、次回の直流電圧指令値v’*
DCを直流電圧指令値1に変更するよう制御する。次回の直流電圧指令値v’*
DCが直流電圧指令値2に変更されるよりも直流電圧指令値1に変更された方が、電力が大きくなるためである。
ステップS7において、MPPT制御部55は、次回の直流電圧指令値v’*
DCを直流電圧指令値2に変更するよう制御する。次回の直流電圧指令値v’*
DCが直流電圧指令値1に変更されるよりも直流電圧指令値2に変更された方が、電力が大きくなるためである。
図4は、図1に示すMPPT制御部55による公知の山登り法に基づくMPPT制御の一例を説明する図である。図4において、縦軸は電力Pであり、横軸は電圧Vである。図4中、2本の山なりの曲線は、太陽電池が光を受けて発電する際の出力特性を表す曲線であり、電力電圧特性曲線と呼ばれる。なお、以下、本明細書において、太陽電池の出力特性である電力電圧特性曲線は、「PV(Power Voltage)カーブ」とも称される。
例えば、同一の太陽光パネル(太陽電池パネル)であっても、日照や温度等の周囲環境の変化によって、PVカーブは変化する。PVカーブPVAとPVカーブPVBとは、周囲環境の変化によって変化したPVカーブの一例を表している。PVカーブPVAにおいて、最適動作点PmppAは、動作電流と動作電圧との積が最も大きくなる極大点であり、開放電圧VOCAは、太陽電池の出力端子に負荷等を何も接続せず、開放した状態での電圧である。同様に、PVカーブPVBにおいて、最適動作点PmppBは、動作電流と動作電圧との積が最も大きくなる極大点であり、開放電圧VOCBは、太陽電池の出力端子に負荷等を何も接続せず、開放した状態での電圧である。
例えば、現在のPVカーブがPVカーブPV
A であった場合において、現在の直流電圧指令値が直流電圧指令値v*
DCであった場合について説明する。この場合、MPPT制御部55は、現在の直流電圧指令値v*
DCにΔVを加算した直流電圧指令値1を算出し(S1)、その場合の電力計算1回目の電力P1Aを算出する(S2)。その後、MPPT制御部55は、現在の直流電圧指令値v*
DCにΔVを減算した直流電圧指令値2を算出し(S3)、その場合の電力計算2回目の電力P2Aを算出する(S4)。そして、MPPT制御部55は、電力P1Aと、電力P2Aとを比較し(S5)、グラフより、電力P2Aの方が電力P1Aよりも大きいため、次回の直流電圧指令値v’*
DCを直流電圧指令値2に変更するよう制御する(S7)。
一方、例えば、現在のPVカーブがPVカーブPV
B であった場合、MPPT制御部55は、現在の直流電圧指令値v*
DCにΔVを加算した直流電圧指令値1を算出し(S1)、その場合の電力計算1回目の電力P1Bを算出する(S2)。その後、MPPT制御部55は、現在の直流電圧指令値v*
DCにΔVを減算した直流電圧指令値2を算出し(S3)、その場合の電力計算2回目の電力P2Bを算出する(S4)。そして、MPPT制御部55は、電力P1Bと、電力P2Bとを比較し(S5)、グラフより、電力P1Bの方が電力P2Bよりも大きいため、次回の直流電圧指令値v’*
DCを直流電圧指令値1に変更するよう制御する(S6)。
これにより、MPPT制御部55は、例えば、常に上述の公知の山登り法に基づくMPPT制御を行うことで、周囲環境の変化によりPVカーブが変化しても、常に電力が最大となる最適動作点Pmppで電力変換装置1を動作させることができる。すなわち、MPPT制御部55は、例えば、常に上述の公知の山登り法に基づくMPPT制御を行うことで、PVカーブの頂点(最適動作点Pmpp)の位置が変化しても、常に電力が最大となる最適動作点Pmppで電力変換装置1を動作させることができる。
図3に戻り、ステップS8において、MPPT制御部55のリミッタ54は、リミッタ調整部53から下限リミッタ動作値vL2についての情報を取得したときは、リミッタ54に設定されている直流電圧指令下限リミッタvLの値を更新する。なお、リミッタ54は、下限リミッタ動作値vL2の値に変動が無いときは、直流電圧指令下限リミッタvLの値を更新しなくてもよい。リミッタ54は、更新された下限リミッタ動作値vL2の値を現時点での直流電圧指令下限リミッタvLの値として設定する。なお、ステップS8の動作は、例えば、図2で説明したとおり、MPPT制御部55によって行われるMPPT制御とは非同期に行われる。このため、ステップS8の動作は、ステップS8で示されるタイミングで行われる必要はなく、任意のタイミングで行われる。
ステップS9において、MPPT制御部55は、ステップS6又はステップS7で決定された直流電圧指令値v’*
DCが、リミッタ54に設定されている現時点での直流電圧指令下限リミッタvLよりも小さいか否かを判定する。MPPT制御部55は、直流電圧指令値v’*
DCが、リミッタ54に設定されている直流電圧指令下限リミッタvLよりも小さい値であるときは(Yes側)、ステップS10に処理を移行させる。一方、MPPT制御部55は、直流電圧指令値v’*
DCが、リミッタ54に設定されている直流電圧指令下限リミッタvL以上の値であるときは(No側)、ステップS11に処理を移行させる。
ステップS10において、MPPT制御部55は、直流電圧指令下限リミッタvLの値を次回の直流電圧指令値v*
DCとして決定する。これにより、系統電圧vGrid(系統電圧実効値vRMS)が変動しても、過変調を抑制することができる。
ステップS11において、MPPT制御部55は、直流電圧指令値v’*
DCの値をそのまま次回の直流電圧指令値v*
DCとして決定する。直流電圧指令値v*
DCが直流電圧指令下限リミッタvLよりも大きい値であるときは、過変調とはならないためである。
ステップS12において、MPPT制御部55は、ステップS10又はステップS11で決定された直流電圧指令値v*
DCを、第1減算部56(図1参照)に出力する。
ステップS13において、MPPT制御部55は、MPPT制御が終了したか否かを判定する。MPPT制御部55は、MPPT制御が終了したと判定したときは(Yes側)、図3のフローチャートの処理を終了させる。一方、MPPT制御部55は、MPPT制御が終了していないと判定したときは(No側)、ステップS1に処理を戻し、ステップS1からステップS13の処理を繰り返す。
図5は、図3で説明したMPPT制御部55の動作における具体的な処理の一例を説明する図である。図5において、縦軸は、電圧Vであり、横軸は、時刻tであり、左から右にむけて時間が流れている。また、直線aは、直流電圧指令値v*
DC又はv’*
DCを示す線であり、細直線bは、直流電圧指令値1又は2を示す線であり、太破線cは、直流電圧指令下限リミッタvLを示す線である。また、破線a’は、直流電圧指令下限リミッタvLが更新されなかったと仮定した場合の直流電圧指令値v*
DC又はv’*
DCを示す線である。また、細破線b’は、直流電圧指令下限リミッタvLが更新されなかったと仮定した場合の直流電圧指令値1又は2を示す線である。また、破線c’は、直流電圧指令下限リミッタvLが更新されなかったと仮定した場合の直流電圧指令下限リミッタvLを示す線である。
時刻t1において、MPPT制御部55は、直流電圧指令値v*
DCにΔVを加算した値である直流電圧指令値1を算出する。
時刻t2において、MPPT制御部55は、直流電圧指令値v*
DCが直流電圧指令値1である場合の電力計算1回目の電力P1を算出する。
時刻t3において、MPPT制御部55は、直流電圧指令値v*
DCにΔVを減算した値である直流電圧指令値2を算出する。
時刻t4において、MPPT制御部55は、直流電圧指令値v*
DCが直流電圧指令値2である場合の電力計算2回目の電力P2を算出する。
時刻t5(MPPT制御周期)において、MPPT制御部55は、電力P1と電力P2とを比較し、電力P2の方が電力P1よりも電力が大きいと判定したため、次回の直流電圧指令値v’*
DCを直流電圧指令値2に変更するよう制御する。また、MPPT制御部55は、変更した直流電圧指令値v’*
DCが、直流電圧指令下限リミッタvLよりも大きい値であるため、直流電圧指令値v’*
DCの値をそのまま次回の直流電圧指令値v*
DCとして決定する。MPPT制御部55は、決定した直流電圧指令値v*
DCを、第1減算部56(図1参照)に出力する。同時に、時刻t5において、MPPT制御部55は、直流電圧指令値v*
DCにΔVを減算した値である直流電圧指令値1を算出する。
時刻t6において、MPPT制御部55は、直流電圧指令値v*
DCが直流電圧指令値1である場合の電力計算1回目の電力P1を算出する。
時刻t7において、MPPT制御部55は、直流電圧指令値v*
DCにΔVを加算した値である直流電圧指令値2を算出する。
時刻t8において(リミッタ調整部53により、MPPT制御とは非同期のタイミングで)、リミッタ54に設定されている直流電圧指令下限リミッタvLの値が更新される。例えば、系統電圧実効値vRMSが105%となった場合、リミッタ54に設定されている直流電圧指令下限リミッタvLの値が5%上昇するように更新される。
時刻t9において、MPPT制御部55は、直流電圧指令値v*
DCが直流電圧指令値2である場合の電力計算2回目の電力P2を算出する。
時刻t10(MPPT制御周期)において、MPPT制御部55は、電力P1と電力P2とを比較し、電力P1の方が電力P2よりも電力が大きいと判定したため、次回の直流電圧指令値v’*
DCを直流電圧指令値1に変更するよう制御する(破線a’)。しかし、MPPT制御部55は、変更した直流電圧指令値v’*
DC(破線a’)が、直流電圧指令下限リミッタvL(太破線c)よりも小さい値であるため、直流電圧指令下限リミッタvLの値を次回の直流電圧指令値v*
DCとして決定する。MPPT制御部55は、決定した直流電圧指令値v*
DCを、第1減算部56(図1参照)に出力する。同時に、時刻t10において、MPPT制御部55は、直流電圧指令下限リミッタvLの値まで上昇した直流電圧指令値v*
DC(直線a)からΔVを減算した値である直流電圧指令値1を算出する。
時刻t11において、MPPT制御部55は、直流電圧指令値v*
DCが直流電圧指令値1である場合の電力計算1回目の電力P1を算出する。
時刻t12において、MPPT制御部55は、直流電圧指令下限リミッタvLの値まで上昇した直流電圧指令値v*
DC(直線a)にΔVを加算した値である直流電圧指令値2を算出する。
時刻t13において、MPPT制御部55は、直流電圧指令値v*
DCが直流電圧指令値2である場合の電力計算2回目の電力P2を算出する。
時刻t14(MPPT制御周期)以降において、MPPT制御部55は、上記の処理を繰り返す。
なお、直流電圧指令下限リミッタvLが更新されない場合、時刻t10(MPPT制御周期)において、MPPT制御部55は、変更した直流電圧指令値v’*
DC(破線a’)が、直流電圧指令下限リミッタvL(破線c’)よりも大きい値であると判定する。この場合、MPPT制御部55は、直流電圧指令値v’*
DC(破線a’)の値をそのまま次回の直流電圧指令値v*
DCとして決定してしまうことになる。
この場合、例えば、系統電圧実効値vRMSが105%となった場合、過変調となる可能性があり、電力変換装置1が安定して運転することができなくなる可能性がある。また、過変調にならないように予め高めの直流電圧指令下限リミッタvLが設定されていると、直流側の運転範囲が狭くなってしまう。
一方、本実施形態によれば、変調率に応じて直流電圧指令下限リミッタvLを更新させるため、直流側の運転範囲を狭くすることなく、過変調を避けて安定して電力変換装置1を運転させることができる。
<第1実施形態の作用効果>
以上、図1~図5に示す第1実施形態によれば、変調率に応じて直流電圧指令下限リミッタvLを更新させることで、従来よりも直流側の運転範囲を広くとることができるとともに、過変調を避けて安定して電力変換装置1を運転させることができる。
また、図1~図5に示す第1実施形態によれば、直流電圧指令下限リミッタvLの更新は、MPPT制御部55とは別の変調率算出部52及びリミッタ調整部53によって行われる。すなわち、直流電圧指令下限リミッタvLを更新する制御と、MPPT制御とが、別の構成により独立して並列で行われる。これにより、MPPT制御部55は、直流電圧指令値v’*
DCが、リミッタ54に設定されている直流電圧指令下限リミッタvLよりも小さいか否かを判定するのみでよく、MPPT制御部55の制御を単純にすることができる。また、これにより、MPPT制御部55によるMPPT制御が、直流電圧指令下限リミッタvLを更新する制御によって影響を及ぼされることがない。また、これにより、直流電圧指令下限リミッタvLを更新する制御と、MPPT制御とが非同期で行われるため、直流電圧指令下限リミッタvLを更新する制御を変調率に応じて正しいタイミングで迅速に行うことができる。
<第2実施形態の構成>
図6は、第2実施形態に係る制御装置30A及び電力変換装置1Aの構成の一例について示す図である。なお、図6において、図1に示す構成と同一又は同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略又は簡略化する。図6において、電力変換装置1Aは、図1中左側の一端側(入力側)で直流母線2を介して蓄電池4Aと接続される。
電力変換装置(PCS)1Aは、例えば、蓄電池4Aから供給される直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を交流電力系統5側(交流側)に出力する。すなわち、本実施形態における電力変換装置1Aは、蓄電池(ESS:Energy Storage System)用の電力変換装置(ESS-PCS:Energy Storage System-Power Conditioning System)である。以下、本明細書において、電力変換装置1Aは、「ESS-PCS1A」又は単に「PCS1A」とも称される。
蓄電池4Aは、直流母線2を介しインバータ13の直流端(入力端)と接続される。蓄電池4Aは、例えば、二次電池又はバッテリーとも称され、充放電を繰り返して使用でき、必要に応じて貯蔵した電力を供給することができる化学電池である。蓄電池4Aは、例えば、鉛電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等であってもよい。蓄電池4Aは、貯蔵されている直流電力を、直流母線2を介してインバータ13に供給する。なお、以下、本明細書において、蓄電池4Aは、「ESS4A」とも称される。
図6に示すように、制御装置30Aは、変調率算出部82と、リミッタ調整部83と、リミッタ84と、直流電圧運転範囲検出部85と、動作制御部86と、故障検出部87との構成又は機能を有する。なお、上記の各構成又は機能は、制御装置30Aが有する後述の処理回路90(図9参照)における後述のプロセッサ91(図9参照)が実行するプログラムにより実現されても、後述のハードウェア93(図9参照)により実現されてもよい。制御装置30Aは、所定のプログラムを実行して、上記の各構成又は機能により、以下の処理を行う。
変調率算出部82は、第1電圧センサ22と、実効値算出部51と接続される。変調率算出部82は、第1電圧センサ22の検出値である直流電圧vDCの情報と、実効値算出部51から系統電圧実効値vRMSの情報とを取得する。変調率算出部82は、取得した直流電圧vDCの情報と系統電圧実効値vRMSの情報とに基づいて、変調率を算出する。なお、変調率算出部82は、常時又は所定間隔毎に変調率を算出してもよく、任意のタイミングで変調率を算出してもよい。
変調率算出部82は、リミッタ調整部83を有し、例えば、算出した変調率をリミッタ調整部83に出力する。なお、変調率算出部82は、算出した変調率が1を超えた(変調率>100%)か否かの情報をリミッタ調整部83に出力してもよい。あるいは、変調率算出部82は、算出した変調率が1を超えた(変調率>100%)場合にのみ、算出した変調率、又は算出した変調率が1を超えた(変調率>100%)という情報を、リミッタ調整部83に出力してもよい。
リミッタ調整部83は、例えば、変調率算出部82の一部として設けられ、変調率算出部82を介して実効値算出部51と接続され、また、直流電圧運転範囲検出部85を介してリミッタ84と接続される。また、リミッタ調整部83は、図中配線は省略されているが、記憶部70とも接続される。リミッタ調整部83は、変調率算出部82から変調率についての情報を取得し、記憶部70から運転範囲下限電圧設定値vL3の情報と定格値vRの情報とを取得する。
リミッタ調整部83は、取得した運転範囲下限電圧設定値vL3と、定格値vRと、系統電圧実効値vRMSとに基づいて運転範囲下限電圧動作値vL4を算出する。なお、リミッタ調整部83は、変調率が1を超えていても(変調率>100%)、1を超えていなくても(変調率≦100%)、常に計算を行い、運転範囲下限電圧動作値vL4を更新(算出)する。そして、リミッタ調整部83は、算出した運転範囲下限電圧動作値vL4の値をリミッタ84に出力する。その結果、変調率は、1を超えなくなっていく。
なお、リミッタ調整部83は、演算の結果、運転範囲下限電圧動作値vL4の値に変動がない場合、運転範囲下限電圧動作値vL4の値をリミッタ84に出力しなくてもよい。反対に、リミッタ調整部83は、変調率の変動の有無や、運転範囲下限電圧動作値vL4の値の変動の有無に拘わらず、常時又は所定間隔毎に、或いは任意のタイミングで、運転範囲下限電圧動作値vL4の値をリミッタ84に出力してもよい。
なお、変調率算出部82とリミッタ調整部83とは、図6に示す構成には限られず、一体的な構成であっても全く別の構成であってもよく、また、リミッタ調整部83が変調率算出部82を有する構成であってもよい。
リミッタ84は、例えば、直流電圧運転範囲検出部85の一部として設けられ、変調率算出部82を介して、リミッタ調整部83と接続される。リミッタ84は、リミッタ調整部83から運転範囲下限電圧動作値vL4についての情報を取得する。なお、リミッタ84は、運転範囲下限電圧動作値vL4の値が変動した場合にのみ、リミッタ調整部83から運転範囲下限電圧動作値vL4についての情報を取得してもよい。また、リミッタ84は、常時又は所定間隔毎に、或いは任意のタイミングで、リミッタ調整部83から運転範囲下限電圧動作値vL4についての情報を取得してもよい。
リミッタ84は、リミッタ調整部83から運転範囲下限電圧動作値vL4についての情報を取得したときは、リミッタ84に設定されている運転範囲下限電圧vLAの値を更新する。これにより、変調率に応じて、運転範囲下限電圧vLAの値が更新される。なお、リミッタ84は、運転範囲下限電圧動作値vL4の値に変動が無いときは、運転範囲下限電圧vLAの値を更新しなくてもよい。リミッタ84は、更新された運転範囲下限電圧動作値vL4の値を現時点での運転範囲下限電圧vLAの値として設定する。
直流電圧運転範囲検出部85は、第1電圧センサ22と、動作制御部86と接続される。直流電圧運転範囲検出部85は、第1電圧センサ22の検出値である直流電圧vDCの情報を取得する。直流電圧運転範囲検出部85は、取得した直流電圧vDCの情報と、リミッタ84に設定されている現時点での運転範囲下限電圧vLAとを比較する。直流電圧運転範囲検出部85は、比較した結果、取得した直流電圧vDCが、リミッタ84に設定されている運転範囲下限電圧vLAよりも小さい値であるか否かを判定し、判定した結果の情報を動作制御部86に出力する。直流電圧運転範囲検出部85は、比較した結果、取得した直流電圧vDCが、リミッタ84に設定されている運転範囲下限電圧vLAよりも小さい値であるときは、直流電圧vDCが運転範囲下限電圧vLAよりも小さい旨の情報を動作制御部86に出力する。一方、直流電圧運転範囲検出部85は、比較した結果、取得した直流電圧vDCが、リミッタ84に設定されている運転範囲下限電圧vLA以上の値であるときは、直流電圧vDCが運転範囲下限電圧vLA以上である旨の情報を動作制御部86に出力する。なお、直流電圧運転範囲検出部85は、比較した結果、取得した直流電圧vDCが、リミッタ84に設定されている運転範囲下限電圧vLA以上の値であるときは、動作制御部86には特に何も出力しなくてもよい。
動作制御部86は、直流電圧運転範囲検出部85と、故障検出部87と、図中配線は省略されているが、電力変換装置1Aの各部と接続される。動作制御部86は、直流電圧運転範囲検出部85から、直流電圧vDCが運転範囲下限電圧vLAよりも小さいか否かの情報を取得する。また、故障検出部87から、例えば、電力変換装置1Aの故障又は異常を検出したか否かの情報を取得する。
動作制御部86は、直流電圧vDCが運転範囲下限電圧vLAよりも小さい旨の情報を取得したとき、又は電力変換装置1Aの故障又は異常を検出した旨の情報を取得したときは、接続される各部に対し、電力変換装置1Aを保護停止するよう動作指示を出力する。例えば、動作制御部86は、これらの情報を取得したときは、インバータ13をゲートブロック(GB)するよう動作指示を行い、電力変換装置1Aを系統から切り離す(又は停止させる)。また、例えば、動作制御部86は、これらの情報を取得したときは、警報(アラーム)を、例えば不図示の表示部等に表示させるよう動作指示を行っても、DCスイッチ11やACスイッチ16を開放(遮断)するよう動作指示を行ってもよい。
なお、動作制御部86は、直流電圧vDCが運転範囲下限電圧vLAよりも小さい旨の情報や電力変換装置1Aの故障又は異常を検出した旨の情報を取得していないとき、或いは何の情報も取得していないときは、接続される各部に対し特に何の動作指示も出力しない。この場合、インバータ13はゲートブロック(GB)等されず、電力変換装置1Aは運転が継続される。
故障検出部87は、第1電流センサ21と、第1電圧センサ22と、動作制御部86と接続される。故障検出部87は、第1電流センサ21の検出値である直流電流iDCの情報と、第1電圧センサ22の検出値である直流電圧vDCの情報とを取得する。故障検出部87は、故障検出機能や表示機能に活用される。なお、図示はされていないが、図1に示すPV-PCS1も、故障検出部87を有している。
故障検出部87は、例えば、取得した直流電流iDC又は直流電圧vDCが所定の閾値を超えているか否かを判定する。故障検出部87は、例えば、取得した直流電流iDC又は直流電圧vDCが所定の閾値を超えていると判定したときは、電力変換装置1Aに故障又は異常が発生したと判定し、電力変換装置1Aの故障又は異常を検出した旨の情報を動作制御部86に出力する。一方、故障検出部87は、例えば、取得した直流電流iDC又は直流電圧vDCが所定の以下であると判定したときは、電力変換装置1Aに故障又は異常は発生していないと判定し、その旨の情報を動作制御部86に出力しても、特に何も出力しなくてもよい。
なお、図6では、動作制御部86と故障検出部87とは別の構成となっているが、動作制御部86と故障検出部87とは、同一の構成であってもよい。この場合、故障検出部87は、電力変換装置1Aの故障又は異常を検出したときは、故障検出部87自身でインバータ13をゲートブロック(GB)する等の動作指示を行ってもよい。また、図6では、直流電圧運転範囲検出部85と動作制御部86とは別の構成となっているが、直流電圧運転範囲検出部85と動作制御部86とは、同一の構成であってもよい。この場合、直流電圧運転範囲検出部85は、直流電圧vDCが運転範囲下限電圧vLAよりも小さいと判定したときは、直流電圧運転範囲検出部85自身でインバータ13をゲートブロック(GB)する等の動作指示を行ってもよい。
図7は、図6に示す変調率算出部82及びリミッタ調整部83の構成及び処理の一例を示す図である。なお、図7において、図2に示す構成と同一又は同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略又は簡略化する。
変調率算出部82は、図中配線は省略されているが、図6で説明したとおり、第1電圧センサ22と、実効値算出部51と接続され、第1電圧センサ22から直流電圧vDCの情報を取得し、実効値算出部51から系統電圧実効値vRMSの情報とを取得する。変調率算出部82は、取得した直流電圧vDCの情報と系統電圧実効値vRMSの情報とに基づいて、変調率を算出する。変調率の算出手法は、図2で説明した手法と同様であるため、詳細な説明は省略する。
リミッタ調整部83は、図中配線は省略されているが、図6で説明したとおり、実効値算出部51と、リミッタ84と、記憶部70と接続される。リミッタ調整部83は、例えば、運転範囲下限電圧設定値取得部83aと、系統電圧実効値取得部53bと、定格値取得部53cと、除算部53dと、上下限リミッタ53eと、乗算部53fと、運転範囲下限電圧動作値出力部83gとを有する。
運転範囲下限電圧設定値取得部83aは、記憶部70と、乗算部53fと接続される。運転範囲下限電圧設定値取得部83aは、記憶部70から、運転範囲下限電圧設定値vL3を取得し、取得した運転範囲下限電圧設定値vL3を乗算部53fに出力する。なお、運転範囲下限電圧設定値vL3は、例えば、仕様として、装置毎に所定の値に定められている。図7に示す例では、運転範囲下限電圧設定値取得部83aは、記憶部70から、運転範囲下限電圧設定値vL3として900Vを取得し、取得した900Vを乗算部53fに出力する。
運転範囲下限電圧動作値出力部83gは、乗算部53fと、リミッタ84と接続される。運転範囲下限電圧動作値出力部83gは、乗算部53fから、運転範囲下限電圧設定値vL3と上下限リミッタ53eで限定された値とを乗算した値を取得し、取得した値を運転範囲下限電圧動作値vL4としてリミッタ84に出力する。図7に示す例では運転範囲下限電圧動作値出力部83gは、乗算部53fから945Vを取得し、取得した945Vを運転範囲下限電圧動作値vL4としてリミッタ84に出力する。
以上の処理により、リミッタ84(図6参照)は、リミッタ調整部83(運転範囲下限電圧動作値出力部83g)から運転範囲下限電圧動作値vL4についての情報を取得したときは、リミッタ84に設定されている運転範囲下限電圧vLAの値を更新する。これにより、変調率に応じて、運転範囲下限電圧vLAの値を更新させることができ、従来よりも直流側の運転範囲を広くとることができるとともに、過変調を避けて安定して電力変換装置1Aを運転させることができる。
すなわち、例えば、運転範囲下限電圧vLAは、蓄電池4Aや電力変換装置1Aの仕様に応じて設定される必要がある。しかし、過変調とならないように、例えば、予め蓄電池4Aや電力変換装置1Aのスペックよりも高めの運転範囲下限電圧vLAを設定してしまうと、直流側の運転範囲が狭くなってしまう。図7の例では、図7の下部に示すとおり、ESS-PCS1Aの運転範囲は900V~1300Vであるが、下限電圧を系統電圧の上昇分を考慮して上げてしまうと、運転範囲が、例えば、990V~1300V等となり、直流側の運転範囲が狭くなってしまう。
一方、本実施形態によれば、例えば、変調率に応じて、系統電圧実効値vRMSが上昇したときは、運転範囲下限電圧vLAを上昇させ、また、系統電圧実効値vRMSが下降したときは、運転範囲下限電圧vLAを下降させることができる。これにより、変調率に応じて、運転範囲下限電圧vLAの値を更新させることができ、従来よりも直流側の運転範囲を広くとることができるとともに(直流側の運転範囲を狭くさせることなく)、過変調を避けて安定して電力変換装置1Aを運転させることができる。
<第2実施形態の動作>
図8は、図6に示す直流電圧運転範囲検出部85及び動作制御部86の動作の一例について示すフローチャートである。図8に示すフローチャートは、電力変換装置1Aの運転(蓄電池4Aからの直流電力の供給)が開始されるとともに開始される。
ステップS21において、直流電圧運転範囲検出部85は、第1電圧センサ22から、第1電圧センサ22の検出値である直流電圧vDCの情報を取得する。
ステップS22において、直流電圧運転範囲検出部85のリミッタ84は、リミッタ調整部83から運転範囲下限電圧動作値vL4についての情報を取得したときは、リミッタ84に設定されている運転範囲下限電圧vLAの値を更新する。なお、リミッタ84は、運転範囲下限電圧動作値vL4の値に変動が無いときは、運転範囲下限電圧vLAの値を更新しなくてもよい。リミッタ84は、更新された運転範囲下限電圧動作値vL4の値を現時点での運転範囲下限電圧vLAの値として設定する。なお、ステップS22の動作は、直流電圧運転範囲検出部85によって行われる動作とは非同期に行われる。このため、ステップS22の動作は、ステップS22で示されるタイミングで行われる必要はなく、任意のタイミングで行われる。
ステップS23において、直流電圧運転範囲検出部85は、ステップS21で取得された直流電圧vDCが、リミッタ84に設定されている現時点での運転範囲下限電圧vLAよりも小さいか否かを判定する。直流電圧運転範囲検出部85は、直流電圧vDCが、リミッタ84に設定されている運転範囲下限電圧vLAよりも小さい値であるときは(Yes側)、ステップS24に処理を移行させる。一方、直流電圧運転範囲検出部85は、直流電圧vDCが、リミッタ84に設定されている運転範囲下限電圧vLA以上の値であるときは(No側)、ステップS25に処理を移行させる。
ステップS24において、動作制御部86は、直流電圧運転範囲検出部85から、直流電圧vDCが運転範囲下限電圧vLAよりも小さい旨の情報を取得する。この場合、動作制御部86は、例えば、インバータ13をゲートブロック(GB)するよう動作指示を行い、電力変換装置1Aを系統から切り離す(又は停止させる)。そして、直流電圧運転範囲検出部85及び動作制御部86は、図8のフローチャートの処理を終了させる。
ステップS25において、動作制御部86は、直流電圧運転範囲検出部85から、直流電圧vDCが運転範囲下限電圧vLA以上である旨の情報を取得する。或いは、動作制御部86は、直流電圧運転範囲検出部85から、特に何の情報も取得しない。この場合、動作制御部86は、接続される各部に対し、特に何の動作指示も出力しない。これにより、インバータ13はゲートブロック(GB)等されず、インバータ13(電力変換装置1A)は運転が継続される。
ステップS26において、直流電圧運転範囲検出部85は、ESS-PCS1Aの運転(蓄電池4Aからの直流電力の供給)が終了したか否かを判定する。直流電圧運転範囲検出部85は、ESS-PCS1Aの運転(蓄電池4Aからの直流電力の供給)が終了したと判定したときは(Yes側)、図8のフローチャートの処理を終了させる。一方、直流電圧運転範囲検出部85は、ESS-PCS1Aの運転(蓄電池4Aからの直流電力の供給)が終了していないと判定したときは(No側)、ステップS21に処理を戻し、ステップS21からステップS26の処理を繰り返す。
<第2実施形態の作用効果>
以上、図6~図8に示す第2実施形態によれば、変調率に応じて運転範囲下限電圧vLAを更新させることで、従来よりも直流側の運転範囲を広くとることができるとともに、過変調を避けて安定して電力変換装置1Aを運転させることができる。
また、ESS-PCS1Aの場合、直流電圧vDCは装置の運転範囲の監視に使用されているが、図6~図8に示す第2実施形態によれば、変調率に応じて運転範囲下限電圧vLA
を可変にさせる。これにより、蓄電池4Aや電力変換装置1Aの仕様(スペック)よりも直流側の運転範囲を狭くさせないようにすることができるとともに、過変調を避けて安定して電力変換装置1Aを運転させることができる。
また、図6~図8に示す第2実施形態によれば、運転範囲下限電圧vLAの更新は、直流電圧運転範囲検出部85とは別の変調率算出部82及びリミッタ調整部83によって行われる。すなわち、運転範囲下限電圧vLAを更新する制御と、直流電圧運転範囲検出部85による制御とが、別の構成により独立して並列で行われる。これにより、直流電圧運転範囲検出部85は、直流電圧vDCがリミッタ84に設定されている運転範囲下限電圧vLAよりも小さいか否かを判定するのみでよく、直流電圧運転範囲検出部85の制御を単純にすることができる。また、直流電圧vDCは、蓄電池4Aの充電残量等によって変動するが、これにより、直流電圧運転範囲検出部85による制御は、運転範囲下限電圧vLAを更新する制御によって影響を及ぼされることがない。また、これにより、運転範囲下限電圧vLAを更新する制御と、直流電圧運転範囲検出部85による制御とが非同期で行われるため、運転範囲下限電圧vLAを更新する制御を変調率に応じて正しいタイミングで迅速に行うことができる。
<ハードウェア構成例>
図9は、図1から図8に示した実施形態における制御装置30、30Aが有する処理回路90のハードウェア構成例を示す概念図である。上述した各機能は処理回路90により実現される。一態様として、処理回路90は、少なくとも1つのプロセッサ91と少なくとも1つのメモリ92とを備える。他の態様として、処理回路90は、少なくとも1つの専用のハードウェア93を備える。
処理回路90がプロセッサ91とメモリ92とを備える場合、各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、メモリ92に格納される。プロセッサ91は、メモリ92に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各機能を実現する。
処理回路90が専用のハードウェア93を備える場合、処理回路90は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、又はこれらを組み合わせたものである。各機能は処理回路90で実現される。
制御装置30、30Aが有する各機能は、それぞれ一部又は全部がハードウェアによって構成されてもよく、プロセッサが実行するプログラムとして構成されてもよい。すなわち、制御装置30、30Aは、コンピュータとプログラムとによっても実現可能であり、プログラムは、記憶媒体に記憶されることも、ネットワークを通して提供されることも可能である。
<実施形態の補足事項>
以上、図1~図9に示す実施形態によれば、図1~図5に示す第1実施形態と、図6~図8に示す第2実施形態とに分かれているが、これらの実施形態が直列に又は並列に組み合わされてもよい。すなわち、電力変換装置1又は1Aは、太陽光パネル4と蓄電池4Aとの両方を備えていても、両方に適用されるものであってもよい。組み合わされた実施形態もまた、組み合わされる前の各実施形態が奏する各作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
また、図1~図9に示す実施形態によれば、本件開示の一態様として、電力変換装置1、1A及びこれらが有する制御装置30、30Aを例に説明したが、これには限られない。本件開示は、制御装置30、30Aの各部における処理ステップが行われる制御方法としても実現可能である。
また、本件開示は、制御装置30、30Aの各部における処理ステップをコンピュータに実行させる制御プログラムとしても実現可能である。
また、本件開示は、制御プログラムが記憶された記憶媒体(非一時的なコンピュータ可読媒体)としても実現可能である。制御プログラムは、例えば、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等のリムーバブルメディア等に記憶して頒布することができる。なお、制御プログラムは、制御装置30、30Aが有する不図示のネットワークインタフェース等を介してネットワーク上にアップロードされてもよく、ネットワークからダウンロードされ、記憶部70等に格納されてもよい。
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。