以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明を繰返さない。
図1は、この発明の実施の形態によるパワーコンディショナが適用される電力供給システムの全体の構成を概略的に示す図である。
図1を参照して、電力供給システムは、電力系統8と、直流電力源である太陽光発電システム3および蓄電装置4と、電力系統8および直流電力源の間に結合されるパワーコンディショナ5と、直流バス1と、交流バス2とから構成される。なお、本実施の形態に従う電力供給システムにおいては、電力系統8、太陽光発電システム3および蓄電装置4をそれぞれ1個ずつ備える場合について説明するが、これらの個数には制限がなく、1個でも複数個であってもよい。
電力系統8は、代表的には、単相3線式の商用交流電力系統である。単相3線式の商用交流電力系統は、中性線が抵抗を介して接地されており、中性線以外の2線(R相線RLおよびT相線TL)を使用してAC200Vを供給する。
太陽光発電システム3は、太陽電池30と、DC/DC変換器32とを含む。太陽電池30は、結晶型太陽電池、多結晶型太陽電池または薄膜型太陽電池などで構成される。DC/DC変換器32は、太陽電池30と直流バス1との間に接続され、太陽電池30から受ける直流電力を電圧変換して直流バス1へ供給する。具体的には、DC/DC変換器32は、直流バス1の電圧が420V(満充電状態のときの蓄電装置4の電源電圧に相当)より低いときには、太陽電池30から最大の電力を取得できるような制御(いわゆる最大電力点追従制御)を行なう。そして、直流バス1の電圧が420Vに到達すると、DC/DC変換器32は、最大電力点追従制御から直流バス1の電圧を420Vに維持するための制御に切替えて太陽電池30を制御する。
蓄電装置4は、再充電可能な電力貯蔵要素であり、代表的にリチウムイオン電池やニッケル水素電池などの二次電池で構成される。蓄電装置4は、複数の電池セルを直列接続して構成されており、一例として、定格電圧380Vを有している。図2は、蓄電装置4の残容量−電圧曲線を示す図である。図2において、横軸は蓄電装置4の残容量(SOC:State of Charge)(%)、縦軸は蓄電装置4の電圧(V)を示している。なお、SOCは、満充電容量に対する現在の残容量を百分率(0〜100%)で示したものである。図2を参照して、蓄電装置4は、空状態(SOCが0%)のときに340Vとなり、SOCが20%のときに360Vとなり、SOCが50%のときに380V(定格電圧)となり、SOCが80%のときに400Vとなり、満充電状態(SOCが100%)のときに420Vとなる。
直流バス1は、太陽光発電システム3、蓄電装置4およびパワーコンディショナ5の間で授受される直流電力を伝達するための電力線である。直流バス1は、電力線対である正母線PLおよび負母線NLで構成される。本実施の形態に従う電力供給システムおいて、蓄電装置4は直流バス1に「直結」されており、直流バス1との間で直流電力の授受を行なう。ここで、「直結」とは、直流バス1と蓄電装置4との間に、DC/DC変換器のような電力変換器が介在していないことを意味する。したがって、直流バス1の電圧は、蓄電装置4の電源電圧とほぼ等しくなる。
図2に示す特性において、蓄電装置4の電圧は、20%から80%までの広いSOCの範囲で、380±20Vの変動範囲が抑えられている。このように、SOCの変化に対して電圧の変化が比較的安定しているため、蓄電装置4は高い電圧安定化能力を有している。したがって、電圧を安定化できるSOCの範囲(たとえば20%〜80%)にSOCを維持させるように、蓄電装置4の充放電を制御することにより、蓄電装置4は直流バス1に対して安定した電圧を供給することができる。
監視ユニット9は、蓄電装置4に設けられた電流センサ40、電圧センサ90および温度センサ92の出力に基づいて、蓄電装置4の状態値を検出する。具体的には、電流センサ40は、蓄電装置4に入出力される充放電電流(電池電流)Ibを検出し、その検出値を監視ユニット9へ出力する。電圧センサ90は、蓄電装置4の充放電電圧(電池電圧)Vbを検出し、その検出値を監視ユニット9へ出力する。温度センサ92は、蓄電装置4の温度(電池温度)Tbを検出し、その検出値を監視ユニット9へ出力する。
電流センサ40は、蓄電装置4への充電電流Ichを、正値の電池電流Ibとして検出し、蓄電装置4からの放電電流Idcを、負値の電池電流Ibとして検出する。電流センサ40は「充放電電流検出部」に対応する。
監視ユニット9は、電流センサ40からの電池電流Ibの検出値、電圧センサ90からの電池電圧Vbの検出値および温度センサ92からの電池温度Tbの検出値に基づいて、蓄電装置4のSOCを推定する。たとえば、監視ユニット9は、蓄電装置4の開放電圧とSOCとの関係に基づいてSOCを推定する。以下では、電池電流Ib、電池電圧Vb、電池温度Tb、およびSOC推定値を包括的に「電池データ」とも総称する。
パワーコンディショナ5は、電力系統8に連系して、直流負荷6に電力を供給する。具体的には、パワーコンディショナ5は、太陽光発電システム3、蓄電装置4または電力系統8から供給される電力を、直流バス1を介して直流負荷6に供給する。直流負荷6は、直流電力による動作する負荷であり、例えば直流電力を受けて動作する、家庭内の家電機器などである。
パワーコンディショナ5は、上記のように電力系統8から交流電力を受電(買電)する一方で、太陽光発電システム3が発電した電力を電力系統8に逆潮流(売電)することも可能に構成されている。交流バス2は、電力系統8およびパワーコンディショナ5の間で授受される交流電力を伝達するための電力線であり、R相線RLおよびT相線TLで構成される。交流バス2には、パワーコンディショナ5に加えて、交流負荷7がさらに接続される。交流負荷7は、交流電力により動作する負荷であり、例えば交流電力を受けて動作する、家庭内の家電機器などである。
交流バス2には、電力系統8からの交流電力を受ける受電点(図中の点Pに相当)を流れる電流(以下、「受電点電流」とも称する)Igridを検出するための電流センサ20が設けられる。電流センサ20は、受電点電流Igridを検出し、その検出値をパワーコンディショナ5へ出力する。具体的には、電流センサ20は、電力系統8からの受電電流を、正値の受電点電流Igridとして検出し、電力系統8への逆潮流電流を、負値の受電点電流Igridとして検出する。
(パワーコンディショナの構成)
パワーコンディショナ5は、DC/AC変換器52と、AC/DC変換器54と、制御部50と、接続端子56,58とを備える。
DC/AC変換器52およびAC/DC変換器54は、直流バス1および交流バス2の間に並列に接続される。パワーコンディショナ5は、DC/AC変換器52を介して電力系統8に逆潮流(売電)するとともに、AC/DC変換器54を介して電力系統8から受電(買電)することができる。
具体的には、DC/AC変換器52は、太陽光発電システム3の発電電力を交流電力に変換して交流バス2へ供給する。一方、AC/DC変換器54は、交流バス2から受ける交流電力、すなわち、電力系統8から受電(買電)した電力を直流電力に変換して直流バス1へ供給する。すなわち、DC/AC変換器52およびAC/DC変換器54は、直流バス1および交流バス2の間で双方向の電力変換を行なう「電力変換装置」を構成する。
なお、図1では、「電力変換装置」を流れる自経路電流をIinvと表記する。そして、この自経路電流Iinvのうち、AC/DC変換器54を流れる自経路電流IinvをIbuyとも表記し、DC/AC変換器52を流れる自経路電流IinvをIsellとも表記する。以下では、DC/AC変換器52を流れる電流Isellを負値の自経路電流Iinvとし、AC/DC変換器54を流れる電流Ibuyを正値の自経路電流Iinvとする。また、太陽光発電システム3の出力電流をIpv、直流負荷6に供給される電流をIloaddc、交流負荷7に供給される電流をIloadacと表記する。
これにより、買電時においては、正値の受電点電流Igridから電流Iloadacを差し引いた電流が自経路電流Ibuy(Iinv>0)となる。さらに、自経路電流Ibuyから電流Iloaddcを差し引いた電流が、蓄電装置4の充電電流Ich(Ib>0)となる。
一方、売電時においては、太陽光発電システム3の出力電流Ipvから電流Iloaddcおよび/または蓄電装置4の充電電流Ich(Ib>0)を差し引いた電流が、自経路電流Isell(Iinv<0)となる。さらに、自経路電流Isellから電流Iloadacを差し引いた電流が、負値の受電点電流Igridとなる。自経路電流IsellおよびIbuyをどのような値にするかについては、電力供給システムの使用者または管理者が自在に設定することができる。
図3は、図1におけるDC/AC変換器52およびAC/DC変換器54の概略構成図である。
図3を参照して、DC/AC変換器52は、DC/AC変換部520と、連系リアクトル522,524と、電流センサ526と、電圧センサ528とを含む。
DC/AC変換部520は、制御部50からのスイッチング制御信号DRV1に応じて、直流バス1から受けた直流電力に変換して交流バス2へ出力する。DC/AC変換部520は、スイッチング素子であるトランジスタQ1〜Q4と、ダイオードD1〜D4とを含む。トランジスタQ1,Q2は、直流バス1を構成する正母線PLおよび負母線NLの間に直列に接続される。トランジスタQ1とトランジスタQ2との中間点はR相線RLに接続される。連系リアクトル522は、R相線RLに介挿接続される。
トランジスタQ3,Q4は、正母線PLおよび負母線NLの間に直列に接続される。トランジスタQ3とトランジスタQ4との接続点はT相線TLに接続される。連系リアクトル524は、T相線TLに介挿接続される。
なお、トランジスタQ1〜Q4として、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いることができる。または、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等の電力スイッチング素子を用いてもよい。
電圧センサ528は、正母線PLと負母線NLとの間に接続され、直流バス1からDC/AC変換部520へ供給される直流電力の電圧値(直流電圧)Vdcを検出し、その検出値を制御部50へ出力する。
電流センサ526は、T相線TLに介挿され、DC/AC変換器52およびAC/DC変換器54と交流バス2との間で授受される電力の電流値(自経路電流)Iinvを検出し、その検出値を制御部50へ出力する。電流センサ526「自経路電流検出部」に対応する。
制御部50は、電圧センサ528から受けた直流電圧Vdcと、電流センサ526から受けた自経路電流Iinv(Isell)とに基づいて、図4に示す制御構造に従って、トランジスタQ1〜Q4のオン・オフを制御するためのスイッチング制御信号DRV1を生成し、DC/AC変換部520を制御する。
AC/DC変換器54は、整流部540と、昇圧回路542と、電流センサ544とを含む。
整流部540は、正母線PLおよび負母線NLの間に直列接続されたダイオードD7およびD8と、正母線PLおよび負母線NLの間に直列接続されたダイオードD9およびD10とを含む。整流部540は、ダイオードD7およびD8の接続点およびダイオードD9およびD10の接続点の間に電力系統8からの交流電力を受け、この交流電力を直流電力に整流する。
昇圧回路542は、制御部50からのスイッチング制御信号DRV2に応じて、整流部540からの直流電圧を昇圧する。昇圧回路542は、整流部540の出力端子間に直列接続されたインダクタンスL1およびスイッチング素子であるトランジスタQ5と、ダイオードD5,D6とからなる昇圧チョッパ回路と、平滑コンデンサC1とを含む。
平滑コンデンサC1は、正母線PLおよび負母線NLの間に接続され、正母線PLおよび負母線NLの間の直流電圧に含まれる交流成分を低減する。なお、トランジスタQ5として、例えば、IGBTを用いることができる。または、パワーMOSFET等の電力スイッチング素子を用いてもよい。
制御部50は、電圧センサ528から受けた直流電圧Vdcと、電流センサ526から受けた自経路電流Iinv(Ibuy)とに基づいて、図4に示す制御構造に従って、トランジスタQ5のオン・オフを制御するためのスイッチング制御信号DRV2を生成し、昇圧回路542を制御する。
(制御構造)
図4は、図3における制御部50の制御構造を示す図である。
図4を参照して、制御部50は、制御目標値生成部500と、制御目標値調整部502と、スイッチング素子制御信号生成部504と、メモリ506とを含む。
制御目標値生成部500は、DC/AC変換器52およびAC/DC変換器54における制御目標値を設定する。この制御目標値には、自経路電流Iinvの電流目標値Iinv*が含まれる。以下の説明では、自経路電流Iinvの電流目標値Iinv*を「自経路電流目標値」とも表記する。
自経路電流目標値Iinv*は、例えば日時に応じて異なる値となるように事前に決定し、メモリ506に格納しておくことができる。あるいは、制御部50が電力供給システムの外部との間で通信を行なうことによって、日時に応じて設定された自経路電流目標値Iinv*を適宜取得するようにしてもよい。図5は、制御目標値生成部500が用いる目標値設定表の一例を示す図である。同図では、自経路電流Iinvは、売電方向を負方向とし、買電方向を正方向として表記されている。自経路電流目標値Iinv*は、売電時の自経路電流Isellの電流目標値と、買電時の自経路電流Ibuyの電流目標値とを含む。
例えば、7時〜17時の時間帯には、太陽光発電システム3が発電した電力を積極的に売電するように、自経路電流目標値Iinv*を−10Aに設定する。すなわち、売電時の自経路電流Isellの電流目標値を10Aに設定する。この場合、制御部50は、自経路電流Iinvが自経路電流目標値Iinv*=−10Aとなるように、スイッチング制御信号DRV1を生成してDC/AC変換器52を制御する。
一方、23時〜7時の時間帯には、電力系統8から供給される電力で蓄電装置4が充電されるように、自経路電流目標値Iinv*を10Aに設定する。すなわち、買電時の自経路電流Ibuyの電流目標値を10Aに設定する。この場合、制御部50は、自経路電流Iinvが自経路電流目標値Iinv*=10Aとなるように、スイッチング制御信号DRV2を生成してAC/DC変換器54を制御する。
このように、本実施の形態に従う電力供給システムでは、電力変換部(DC/AC変換器52およびAC/DC変換器54)を流れる自経路電流Iinvが制御目標値(自経路電流目標値Iinv*)となるように、電力変換部における電力変換動作を制御する。以下の説明では、自経路電流目標値Iinv*に基づいた電流制御を「自経路電流制御」とも称する。
ここで、本実施の形態に従う電力供給システムにおいては、電力系統8の安定運用および電力供給の平準化を実現するために、電力系統8から受電(買電)する電力および電力系統8へ逆潮流(売電)する電力に対して制限が設けられる。また、現在、我が国においては、蓄電装置4からの放電電力を逆潮流することが認められていない。そのため、太陽光発電システム3の発電電力を売電する際に、蓄電装置4からの放電電力が電力系統8に流出しないように、電力系統8に逆潮流(売電)可能な電力に上限値が定められる。したがって、自経路電流制御の実行中においては、これらの定められた制限を超えないように、電力系統8との間で授受される電力を管理する必要がある。
しかしながら、自経路電流制御の実行中において、直流負荷6および交流負荷7における消費電力量が変動する場合がある。また、気象条件によって太陽光発電システム3における発電電力量が変動する場合がある。このような事態において上述した自経路電流目標値Iinv*に従った自経路電流の制御を継続して行なうと、電力系統8との間で授受される電力が電力会社等によって定められた制限を超えてしまう可能性がある。例えば、自経路電流目標値Iinv*に従って買電時の自経路電流Iinvを制御しているときに、交流負荷7の消費電力量が急に増加した場合には、電力系統8から受電する電力が、電力会社等によって定められた上限値を超える虞がある。
そこで、本実施の形態によるパワーコンディショナ5では、自経路電流制御の実行中において、電力会社等によって定められた電力系統8に授受可能な電力に関する取り決めに応じて、自経路電流Iinvを調整する。
具体的には、制御部50は、電力会社等との間で通信を行なうことによって、電力会社等がパワーコンディショナ5に対して要求する要求電力Pdmdを取得する。この要求電力Pdmdには、電力系統8への逆潮流(売電)時に許容される最大電力である売電電力上限値と、電力系統8からの受電(買電)時に許容される最大電力である買電電力上限値とが含まれる。制御部50は、取得した要求電力Pdmdに基づいて、受電点P(図1)に流すことのできる電流(受電点電流Igrid)の範囲を設定する。具体的には、制御部50は、要求電力Pdmdのうちの買電電力上限値を交流バス2の電圧(例えばAC200V)で除算した値を電流範囲の上限値に設定する。また、制御部50は、売電電力上限値を交流電圧で除算した値を電流範囲の下限値に設定する。
図6は、要求電力Pdmdに応じて設定された受電点電流Igridの電流範囲の一例を示す図である。同図では、受電点電流Igridの電流範囲は、Igrid_maxを上限値として、Igrid_minを下限値として表記されている。制御部50は、図6に示す要求電力Pdmdと受電点電流Igridの電流範囲との関係を事前に設定し、メモリ506(図4)に格納しておくことができる。制御部50は、電力会社等からの要求電力Pdmdを取得すると、図6の関係を参照することにより受電点電流Igridの電流範囲を逐次更新する。
なお、受電点電流Igridの電流範囲については、上述した電力会社等からの要求電力Pdmdに応じて設定する構成以外にも、電力会社等により定められた電気料金に応じて設定する構成が適用され得る。具体的には、制御部50は、電力会社等との間で通信を行なうことによって、電力系統8に授受可能な電力に関する取り決めとして、電気料金の単価を示す単価情報を取得する。図7は、電気料金の単価の一例を示す図である。図7に示すように、使用する電力量および時間帯に応じて電気料金の単価が変わる場合には、制御部50は、電気料金を抑制するように、電力使用状況や使用時間帯に応じて受電点電流Igridの電流範囲を異なる値に設定するようにしてもよい。例えば、電気料金の単価が高い時間帯においては、電流範囲の上限値Igrid_maxを低い値に設定する。一方、電気料金の単価が低い時間帯(例えば、深夜電力の時間帯)においては、上限値Igrid_maxを高い値に設定する。
あるいは、蓄電装置4のSOCに応じて買電電力上限値が変化するように、受電点電流Igridの電流範囲を設定するようにしてもよい。この場合、蓄電装置4のSOCが高い状態では、電流範囲の上限値Igrid_maxを高い値に設定する一方で、蓄電装置4のSOCが低い状態では、電流範囲の上限値Igrid_maxを低い値に設定する。
制御部50は、上記の方法によって受電点電流Igridの電流範囲を設定すると、自経路電流制御の実行中において、電流センサ20によって検出される受電点電流Igridが当該電流範囲に収まるように、自経路電流目標値Iinv*を調整する。
具体的には、制御目標値調整部502(図4)は、自経路電流Iinv=−10A(Isell=10A)で売電するように電力変換動作が行なわれているときに、受電点電流Igridが電流範囲の下限値Igrid_minを下回った場合には、その超過分を減らすように自経路電流目標値Iinv*を増加させる(Iinv*>−10A)。これにより、DC/AC変換器52においては、増加後の自経路電流目標値Iinv*に従って電力変換動作が制御される。その結果、自経路電流Iinvが増える(すなわち、Isellが減少する)こととなり、電力系統8へ逆潮流される電力が売電電力上限値を超えないように制限される。
また、自経路電流Iinv=10A(Ibuy=10A)で買電するように電力変換動作が行なわれているときに、受電点電流Igridが電流範囲の上限値Igrid_maxを超えた場合には、その超過分を減らすように自経路電流目標値Iinv*を減少させる(Iinv*<10A)。これにより、AC/DC変換器54においては、減少後の自経路電流目標値Iinv*に従って電力変換動作が制御される。その結果、自経路電流Iinvが減少する(すなわち、Ibuyが減少する)こととなり、電力系統8から受電する電力が買電電力上限値を超えないように制限される。
ここで、自経路電流制御の実行中においては、上記のように直流負荷6および交流負荷7における消費電力量や太陽光発電システム3における発電電力量が変動することによって、直流バス1に直結される蓄電装置4に充放電される電力も変動する。例えば、売電時に太陽光発電システム3が発電した電力に余剰が生じた場合には、この余剰電力を直流バス1を介して蓄電装置4に充電することができる。しかしながら、蓄電装置4のSOCが高い状態では、余剰電力が供給されることによって蓄電装置4が過充電となってしまう虞がある。
そこで、制御部50は、上述した自経路電流Iinvの調整を、電力会社等によって定められた電力系統8に授受可能な電力に関する取り決めの他に、蓄電装置4のSOCに応じても行なう。これにより、自経路電流制御中における蓄電装置4の過充電および過放電を防止する。
具体的には、制御部50は、監視ユニット9から送信される電池データに基づいて、蓄電装置4に流すことのできる電流(電池電流Ib)の範囲を設定する。具体的には、制御部50は、蓄電装置4のSOCに応じて電流範囲の上限値および下限値を設定する。図8は、蓄電装置4のSOCに応じて設定された電池電流Ibの電流範囲の一例を示す図である。同図では、電池電流Ibの電流範囲は、蓄電装置4への充電電流Ichの最大値を上限値Ib_maxとして、蓄電装置4からの放電電流Idcの最大値を下限値Ib_minとして表記されている。
図8を参照して、上限値Ib_maxおよび下限値Ib_minは、蓄電装置4のSOCに応じて可変に設定される。詳細には、SOCが高い状態(SOC≧80%)では、SOCが高くなるに従って小さい値となるように上限値Ib_maxが設定される。これにより、過充電が懸念されるSOC上昇時には蓄電装置4への充電が制限される。なお、蓄電装置4が満充電状態に近くなると、上限値Ib_max=0Aに設定されるため、蓄電装置4への充電が禁止される。
一方、SOCが低い状態(SOC≦20%)では、SOCが低くなるに従って絶対値が小さくなるように下限値Ib_minが設定される。これにより、過放電が懸念されるSOC低下時には蓄電装置4からの放電が制限される。なお、蓄電装置4が空状態に近くなると、下限値Ib_min=0Aに設定されるため、蓄電装置4からの放電が禁止される。
制御部50は、図8に示す蓄電装置4のSOCと電池電流Ibの電流範囲との関係を事前に設定し、メモリ506(図4)に格納しておくことができる。制御部50は、監視ユニット9から電池データを取得すると、図8の関係を参照することにより電池電流Ibの電流範囲を逐次更新する。そして、制御部50は、自経路電流制御の実行中において、電流センサ40によって検出される電池電流Ibが当該電流範囲に収まるように、自経路電流目標値Iinv*を調整する。
具体的には、制御目標値調整部502は、自経路電流Iinv=−10A(Isell=10A)で売電するように電力変換動作が行なわれているときに、電池電流Ibが電流範囲の上限値Ib_maxを超えた場合には、自経路電流目標値Iinv*を減少させる(Iinv*<−10A)。DC/AC変換器52においては、減少後の自経路電流目標値Iinv*に従って電力変換動作が制御されることにより、自経路電流Iinvが減少する(すなわち、Isellが増加する)。これにより、太陽光発電システム3が発電した電力のうちの電力系統8へ逆潮流される電力が増える一方で、蓄電装置4へ供給される電力が減少することとなり、蓄電装置4の過充電が防止される。
また、自経路電流Iinv=10A(Ibuy=10A)で買電するように電力変換動作が行なわれているときに、電池電流Ibが電流範囲の下限値Ib_minを下回った場合には、制御目標値調整部502は、自経路電流目標値Iinv*を増加させる(Iinv*>10A)。増加後の自経路電流目標値Iinv*に従って電力変換動作が制御されることにより、自経路電流Iinvが増加する(すなわち、Ibuyが増加する)。これにより、電力系統8から受電する電力が増えるため、蓄電装置4から直流バス1に放電される電力が減少することとなり、蓄電装置4の過放電が防止される。
以上説明したように、制御目標値調整部502は、制御目標値生成部500により設定された自経路電流目標値Iinv*を初期値として、受電点電流Igridおよび電池電流Ibがそれぞれ電流範囲内に収まるように自経路電流目標値Iinv*を調整する。制御目標値生成部500は、調整後の自経路電流目標値Iinv**をスイッチング素子制御信号生成部504へ送出する。
スイッチング素子制御信号生成部504は、制御目標値調整部502から調整後の自経路電流目標値Iinv**を受けると、自経路電流Iinvが自経路電流目標値Iinv**となるようにスイッチング制御信号DRV1またはDRV2を生成して、DC/AC変換器52またはAC/DC変換器54を制御する。
具体的には、スイッチング素子制御信号生成部504は、少なくとも比例要素(P:proportional element)および積分要素(I:integral element)を含んで構成され、自経路電流目標値Iinv**に対する自経路電流Iinvの偏差に応じて操作信号を生成する。そして、スイッチング素子制御信号生成部504は、この操作信号に基づいてDC/AC変換器52のトランジスタQ1〜Q4またはAC/DC変換器54のトランジスタQ5のオンデューティーを規定するデューティー指令を生成すると、この生成したデューティー指令と搬送波とを比較することにより、スイッチング制御信号DRV1またはDRV2を生成する。
なお、制御部50は、スイッチング制御信号DRV1またはDVR2の生成において、交流バス2およびパワーコンディショナ20の間で授受される交流電力(交流電圧、交流電流(自経路電流)Iinv)に対して、力率改善(Power Factor Correction)制御を実行する。具体的には、制御部50は、交流電圧の位相に交流電流の位相を合わせるように、交流電流の波形を補正することによって力率を改善する。
メモリ506は、情報の読出しおよび書込みが可能であり、たとえばRAM(Random Access Memory)で構成される。メモリ506は、目標値設定表(図5)、受電点電流範囲(図6)、および電池電流範囲(図8)を記憶するための記憶領域を有する。
なお、図4では、制御目標値調整部502が監視ユニット9から電池データとして蓄電装置4のSOCを受ける例を示したが、制御目標値調整部502自らが、電池電流Ibの検出値および/または電池電圧Vbの検出値に基づいて、蓄電装置4のSOCを推定する構成としてもよい。
以上のような制御構造によって、本実施の形態によるパワーコンディショナにおける自経路電流制御が実現される。これらの処理は、次のような処理フローにまとめることができる。
図9は、本実施の形態によるパワーコンディショナにおける自経路電流制御を実現するための制御処理手順を示したフローチャートである。図9に示すフローチャートによる制御処理は、一定の制御周期毎に制御部50によって実行される。また、図9に示した各ステップは、制御部50によるソフトウェア処理および/またはハードウェア処理によって実現されるものとする。
図9を参照して、制御部50は、ステップS100により、自経路電流Iinvの電流目標値Iinv**を設定する。具体的には、制御部50は、メモリ506に格納された目標値設定表(図5)を参照することにより、日時に応じて自経路電流目標値Iinv*を設定する。すなわち、ステップS100の処理は、制御目標値生成部500の機能に対応する。制御部50は、目標値設定表に従って定められた自経路電流目標値Iinv*を、自経路電流目標値Iinv**の初期値とする。
次に、制御部250は、自経路電流Iinvが自経路電流目標値Iinv**となるようにスイッチング制御信号DRV1またはDRV2を生成して、DC/AC変換器52またはAC/DC変換器54を制御する(自経路電流制御)。
図10は、図9のステップS200の処理をさらに詳細に説明するフローチャートである。
図10を参照して、制御部50は、ステップS01により、電流センサ526により検出される自経路電流Iinvと自経路電流目標値Iinv**とを比較する。自経路電流Iinvが自経路電流目標値Iinv**より大きい場合(ステップS01のYES判定時)には、制御部50は、ステップS02により、自経路電流Iinvと自経路電流目標値Iinv**との電流偏差に基づいたスイッチング制御信号DRV1またはDRV2を生成する。このような制御を行なうことにより、自経路電流Iinvは負方向(売電方向)に変化する(すなわち、自経路電流Iinvが減少)。
一方、自経路電流Iinvが自経路電流目標値Iinv**以下となる場合(ステップS01のNO判定時)には、制御部50は、ステップS03により、自経路電流Iinvと自経路電流目標値Iinv**との電流偏差に基づいたスイッチング制御信号DRV1またはDRV2を生成する。このような制御を行なうことにより、自経路電流Iinvは正方向(買電方向)に変化する(すなわち、自経路電流Iinvが増加)。
図9に戻って、制御部50は、上記ステップS200に示した電流制御の実行中に、電流センサ20から受電点電流Igridを取得する。さらに、制御部50は、電流センサ40から電池電流Ibを取得する。そして、制御部50は、取得された受電点電流Igridおよび電池電流Ibに基づいて、自経路電流目標値Iinv**を調整する。具体的には、制御部50は、受電点電流Igridの電流範囲と受電点電流Igridとを比較する。また、制御部50は、電池電流Ibの電流範囲と電池電流Ibとを比較する。そして、制御部50は、これらの比較結果に基づいて自経路電流目標値Iinv**を調整する。このステップS300の処理は、図4に示した制御目標値調整部502の機能に対応する。
図11は、図9のステップS300の処理をさらに詳細に説明するフローチャートである。
図11を参照して、制御部50は、ステップS10により、電力会社等からの要求電力Pdmdに応じて、受電点電流Igridの電流範囲を設定する。具体的には、制御部50は、図6の関係を参照することにより、要求電力Pdmdのうちの買電電力上限値に基づいて電流範囲の上限値Igrid_maxを設定する。また、制御部50は、売電電力上限値に基づいて電流範囲の下限値Igrid_minを設定する。
ステップS10では、制御部50はさらに、監視ユニット9から送信される電池データに応じて、電池電流Ibの電流範囲を設定する。具体的には、制御部50は、図8の関係を参照することにより、蓄電装置4のSOCに応じて電流範囲の上限値Ib_maxおよび下限値Ib_minを設定する。
次に、制御部50は、電流センサ40により検出される電池電流Ibが、ステップS10により設定された電流範囲内に収まっているか否かを判定する。具体的には、ステップS11では、制御部50は、電池電流Ibが電流範囲の上限値Ib_maxより大きいか否かを判定する。電池電流Ibが上限値Ib_maxより大きい場合(ステップS11のYES判定時)には、制御部50は、ステップS12により、自経路電流目標値Iinv**を所定量ΔI1だけ減少させる。
すなわち、蓄電装置4の充電電流Ichが上限値Ib_maxを超える場合(ステップS11のYES判定時)には、制御部50は、自経路電流目標値Iinv**を減少させるように自経路電流目標値Iinv**を調整する。DC/AC変換器52およびAC/DC変換器54においては、調整後の自経路電流目標値Iinv**に従って電力変換動作が実行されることにより、売電時における自経路電流Isellが増加する一方で、買電時における自経路電流Ibuyが減少する。このように売電時および買電時の各々において直流バス1から蓄電装置4に供給される電力が減少するように、自経路電流目標値Iinv**を調整することにより、蓄電装置4の充電電流Ichが電流範囲内に収まる。
これに対して、電池電流Ibが電流範囲の上限値Ib_max以下である場合(ステップS11のNO判定時)には、制御部50は、さらにステップS13により、電池電流Ibが電流範囲の下限値Ib_minより小さいか否かを判定する。電池電流Ibが下限値Ib_minより小さい場合(ステップS13のYES判定時)には、制御部50は、ステップS14により、自経路電流目標値Iinv**を所定量ΔI1だけ増加させる。
すなわち、蓄電装置4の放電電流Idcが下限値Ib_minを下回る場合(ステップS13のYES判定時)には、制御部50は、自経路電流目標値Iinv**を増加させるように自経路電流目標値Iinv**を調整する。DC/AC変換器52およびAC/DC変換器54においては、調整後の自経路電流目標値Iinv**に従って電力変換動作が実行されることにより、売電時における自経路電流Isellが減少する一方で、買電時における自経路電流Ibuyが増加する。このように売電時および買電時の各々において蓄電装置4から直流バス1に供給される電力が減少するように、自経路電流目標値Iinv**を調整することにより、蓄電装置4の放電電流Idcが電流範囲内に収まる。
このように、電池電流Ibが電流範囲から外れる場合には、電池電流Ibが当該電流範囲内に収まるように、自経路電流目標値Iinv**を所定量ΔI1だけ増加または減少させる。この所定量ΔI1は、DC/AC変換器52およびAC/DC変換器54における電流制御の制御速度などを考慮して定められる。
さらに、制御部50は、電流センサ20により検出される受電点電流Igridが、ステップS10により設定された電流範囲内に収まっているか否かを判定する。具体的には、ステップS15では、制御部50は、受電点電流Igridが電流範囲の上限値Igrid_maxより大きいか否かを判定する。受電点電流Igridが上限値Igrid_maxより大きい場合(ステップS15のYES判定時)には、制御部50は、ステップS16により、自経路電流目標値Iinv**を所定量ΔI2だけ減少させる。
上述した受電点電流Igridが上限値Igrid_maxを超える場合(ステップS15のYES判定時)とは、電力系統8から受電(買電)する電力が買電電力上限値を超えていることを示している。したがって、制御部50は、自経路電流目標値Iinv**を減少させるように自経路電流目標値Iinv**を調整する。AC/DC変換器54においては、調整後の自経路電流目標値Iinv**に従って電力変換動作が実行されることにより、買電時における自経路電流Ibuyが減少する。このように電力系統8から受電する電力が減少するように、自経路電流目標値Iinv**を調整することにより、受電点電流Igridが電流範囲内に収まる。
これに対して、受電点電流Igridが電流範囲の上限値Igrid_max以下である場合(ステップS15のNO判定時)には、制御部50は、さらにステップS17により、受電点電流Igridが電流範囲の下限値Igrid_minより小さいか否かを判定する。受電点電流Igridが下限値Igrid_minより小さい場合(ステップS17のYES判定時)には、制御部50は、ステップS18により、自経路電流目標値Iinv**を所定量ΔI2だけ増加させる。
上述した受電点電流Igridが下限値Igrid_minより小さい場合(ステップS17のYES判定時)とは、電力系統8へ逆潮流(売電)する電力が売電電力上限値を超えていることを示している。したがって、制御部50は、自経路電流目標値Iinv**を増加させるように自経路電流目標値Iinv**を調整する。DC/AC変換器52においては、調整後の自経路電流目標値Iinv**に従って電力変換動作が実行されることにより、売電時における自経路電流Isellが減少する。このように電力系統8へ逆潮流する電力が減少するように、自経路電流目標値Iinv**を調整することにより、受電点電流Igridが電流範囲内に収まる。
このように、受電点電流Igridが電流範囲から外れる場合には、受電点電流Igridが当該電流範囲内に収まるように、自経路電流目標値Iinv**を所定量ΔI2だけ増加または減少させる。この所定量ΔI2は、DC/AC変換器52およびAC/DC変換器54における電流制御の制御速度などを考慮して定められる。
以上説明したように、この発明の実施の形態によれば、制御部50は、自経路電流制御の実行中は、受電点電流Igridが、電力会社等からの要求電力Pdmdに応じて設定された電流範囲内に収まるように自経路電流目標値Iinv**を調整する。これにより、パワーコンディショナ5は、電力会社等によって定められた電力系統8との間で授受可能な電力に関する取り決めに従うことができる。この結果、電力系統8の安定運用および電力供給の平準化を実現できる。
また、制御部50は、自経路電流制御の実行中において、電池電流Ibが、蓄電装置4のSOCに応じて設定された電流範囲内に収まるように、自経路電流目標値Iinv*を調整する。これにより、蓄電装置4が過充電または過放電となるのを防止できる。なお、蓄電装置4においては、SOC上昇時に充電が制限または禁止される一方で、SOC低下時に放電が制限または禁止されることから、電圧を安定化できるSOCの範囲(20%〜80%)にSOCを維持できる。これにより、蓄電装置4を直流バス1に直結させた構成においても直流バス1の電圧を容易に安定化させることができる。
(電力供給システムの構成例)
上述の実施の形態では、パワーコンディショナにおける「電力変換装置」の一例として、直流バス10から受ける直流電力を交流電力に変換して交流バス2へ供給するためのDC/AC変換器52と、交流バス2から受ける交流電力を直流電力に変換して直流バス1へ供給するためのAC/DC変換器54とを備える構成について説明したが、直流バス1および交流バス2の間で双方向に電力変換を行なう双方向DC/AC変換器としてもよい。
また、直流電力源の一例として、太陽光発電システムを説明したが、風力発電装置および燃料電池などを用いてもよい。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。