JP7466885B2 - 作業車輌用変速装置及びhstユニット - Google Patents

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Description

本発明は、HST(静油圧式無段変速機構)を有する作業車輌用変速装置、及び、HSTユニットに関する。
無段変速可能なHSTを有する変速装置は、コンバインやトラクタ等の作業車輌に好適に利用されている。
例えば、下記特許文献1には、駆動源から作動的に回転動力を入力するHST入力軸、前記HST入力軸に支持されたポンプ本体、前記ポンプ本体によって油圧的に駆動されるモータ本体、前記モータ本体を支持するHST出力軸並びに前記HST入力軸及び前記HST出力を支持し、前記ポンプ本体及び前記モータ本体を収容するHSTケースを備えたHSTと、前記HST出力軸から作動的に入力されるHST出力を変速する多段変速機構と、前記HST入力軸に作動的に連結されたPTO伝動軸と、前記PTO伝動軸から作動的に入力される回転動力を外部へ向けて出力するPTO出力軸とを備えた変速装置が開示されている。
前記変速装置においては、前記HST出力軸から前記多段変速機構を介して駆動輪等の走行駆動部へ至る伝動構造が走行伝動経路を形成すると共に、前記HST入力軸から前記PTO伝動軸を介して前記PTO出力軸へ至る伝動構造がPTO伝動経路を形成する。
前記特許文献1に記載の変速装置は、さらに、前記駆動源及び前記HST入力軸の間に介挿され、前記駆動源からの回転動力を増速して前記HST入力軸に伝達する増速ギヤユニットを備えている。
前記増速ギヤユニットは、前記駆動源から作動的に回転動力を入力する変速入力軸と、前記変速入力軸の回転動力を増速する増速ギヤ列と、前記増速ギヤ列によって増速された回転動力を出力する増速出力軸と、前記変速入力軸及び前記増速出力軸を支持し、前記増速ギヤ列を収容するギヤケースとを有している。
ところで、前記駆動源から前記増速ギヤ列を介さずに前記HST入力軸へ回転動力が入力される構成(以下、ノーマル入力構成という)のHST入力回転速度をRa1と仮定し、前記駆動源から前記増速ギヤ列を介して前記HST入力軸へ回転動力が入力される構成(以下、増速入力構成という)のHST入力回転速度をRa2(>Ra1)と仮定すると、前記HST出力軸から出力可能なHST出力の最高回転速度は、ノーマル入力構成の際にはRb1となり、増速入力構成の際にはRb2(>Rb1)となる。
ここで、前記作業車輌に要求される走行速度の最高速をVxとし、Vxを現出する為に必要なHST出力の回転速度がRb1であると仮定する。
この場合、前記ノーマル入力構成において、前記作業車輌の最高走行速度を得る為には、前記HSTの可動斜板を最大傾転位置まで揺動させて、HST出力をノーマル入力構成時の最高回転速度Rb1まで高める必要がある。
これに対し、前記増速入力構成においては、前記HSTの可動斜板を最大傾転位置まで揺動させることなく、中立位置及び最大傾転位置の間の所定傾転位置へ揺動させるだけで、HST出力の回転速度をRb1(<Rb2)まで高めることができる。即ち、前記増速入力構成は、前記ノーマル入力構成に比して、前記HSTから前記走行駆動部までの減速比を大きく設定しても所定走行速度(例えば、Vx)を現出することができ、最高車速を維持したままで車軸のトルクアップを図ることができる。
前記増速ギヤ列を含む前記特許文献1に記載の変速装置は、この車軸のトルクアップ効果を得ることができる点において有用であるが、以下に示す不都合を有している。
即ち、前記作業車輌に要求される最高走行速度は、仕様又は要望に応じて、変動する。
例えば、要求される最高走行速度がVxの場合もあれば、要求される最高走行速度がVxよりも低速のVyの場合もある。
前記特許文献1に記載の構成においては、前記増速ギヤユニットを装着することによって最高走行速度Vxの作業車輌に対応可能としつつ、前記増速ギヤユニットを取り外すことによって、最高走行速度Vyの作業車輌に対してオーバースペックとなることを防止することができるが、その一方で、前記増速ギヤユニットの装着状態及び取り外し状態の間において前記PTO出力軸から出力されるPTO回転動力の回転速度が変化することになる。
即ち、前記特許文献1に記載の構成においては、前記増速ギヤユニットを取り外すことで、前記HST入力軸の回転速度が前記増速ギヤユニットの装着状態に比して下降すると、これに応じて、前記PTO出力軸の回転速度も下降することになる。
前記PTO出力軸の回転動力は、一般的に、前記作業車輌に付設される作業機、又は、外部の作業機の駆動力として用いられるものであり、前記作業車輌の最高走行速度に関する仕様に関わらず、一定であることが望ましい。
また、前記特許文献1に記載の変速装置においては、前記変速入力軸及び前記増速出力軸は同軸(第1軸線)上に配置されており、前記ギヤケースを前記HSTケースに連結することによって前記HST入力軸が前記増速出力軸に対して同軸上において軸線回り相対回転不能に連結されるようになっている。
走行伝動経路を形成する前記HST出力軸は第1軸線から変位された第2軸線上に配置されている。
一方、PTO伝動経路は、前記HST入力軸と、前記HST入力軸と同軸上(即ち、第1軸線上)において前記HST入力軸に軸線回り相対回転不能に連結されたPTO中継軸と、前記PTO中継軸及び前記HST出力軸の双方から変位された第3軸線上に配置された状態でギヤ列を介して前記PTO中継軸に作動連結されたPTO伝動軸とを有している。
斯かる構成の前記特許文献1に記載の変速装置においては、走行伝動経路を形成する軸、及び、PTO伝動経路を形成する軸を、これらの軸に直交する径方向に関しコンパクトに配置させることができず、結果として、これらの軸を収容するミッションケースが径方向に関し大型化するという問題もあった。
特開2008-111529号公報
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、駆動源からHST入力軸へ入力される回転動力を増速ギヤ列によって増速させることで走行駆動部を作動的に駆動する車軸のトルクアップ効果を得ることができる作業車輌用変速装置であって、装置の大型化を防止し、且つ、PTO軸の回転速度変化を招くことなく、前記増速ギヤ列を有する構成から前記増速ギヤ列を有さない構成への仕様変更を容易に行うことができる作業車輌用変速装置の提供を目的とする。
前記目的を達成する為に、本発明は、駆動源から回転動力を作動的に入力する変速入力軸と、前記変速入力軸の回転動力を増速する増速ギヤ列と、軸線方向一方側の第1端部に、前記駆動源からの駆動源出力を前記増速ギヤ列によって増速された状態で入力するHST入力軸、前記HST入力軸に支持されたポンプ本体、前記ポンプ本体によって油圧的に駆動されるモータ本体及び前記モータ本体を支持するHST出力軸を有し、前記HST出力軸から走行駆動部へ向けて走行回転動力を出力するHSTと、外部へ回転動力を出力するPTO出力軸と、前記HST入力軸から前記PTO出力軸へ至るPTO伝動経路の少なくとも一部を形成するPTO中継軸と、前記HST出力軸から作動的にHST出力を入力するサンギヤ、前記PTO中継軸から作動的に駆動源動力を入力するインターナルギヤ並びにHST出力及び駆動源出力の合成回転動力を出力する遊星キャリヤを有する遊星ギヤ機構と、前記駆動源から前記走行駆動部へ至る走行伝動経路に介挿された走行伝動軸と、前記遊星キャリヤの回転動力を前記走行伝動軸に正逆切替可能に作動伝達する前後進切替機構とを備え、前記HST入力軸は前記変速入力軸の軸線から変位され、且つ、前記HST出力軸は前記変速入力軸及び前記HST入力軸の双方の軸線から変位され、前記PTO中継軸は前記HST入力軸と同一軸線上で前記HST入力軸の第2端部に軸線回り相対回転不能に連結されており、前記前後進切替機構は、前記遊星キャリヤの回転動力を、前記走行伝動軸に相対回転自在に外挿された第1走行従動ギヤに正逆一方側の回転動力として作動伝達する第1走行伝動機構と、前記遊星キャリヤの回転動力を、前記PTO中継軸に相対回転自在に外挿された走行中継軸並びに前記走行中継軸に相対回転不能に支持された第1及び第2中間ギヤを介して、前記走行伝動軸に相対回転自在に外挿された第2走行従動ギヤに正逆他方側の回転動力として作動伝達する第2走行伝動機構と、前記第1及び第2走行従動ギヤを前記走行伝動軸に選択的に係合させるクラッチ機構とを含む作業車輌用変速装置を提供する。
記変速装置は、前記走行伝動軸に平行に配設された走行出力軸と、前記走行伝動軸及び前記走行出力軸の間で回転動力を多段変速する多段変速機構とを備え得る。
また、本発明は、駆動源から回転動力を作動的に入力する変速入力軸と、前記変速入力軸の回転動力を増速する増速ギヤ列と、前記増速ギヤ列によって増速された回転動力を出力する増速出力軸と、軸線方向一方側の第1端部に、前記駆動源からの駆動源出力を前記増速ギヤ列によって増速された状態で入力するHST入力軸、前記HST入力軸に支持されたポンプ本体、前記ポンプ本体によって油圧的に駆動されるモータ本体及び前記モータ本体を支持するHST出力軸を有し、前記HST出力軸から走行駆動部へ向けて走行回転動力を出力するHSTと、遊星ギヤ機構と、前記HST入力軸と同一軸線上で前記HST入力軸の第2端部に軸線回り相対回転不能に連結されたPTO中継軸と、外部へ回転動力を出力するPTO出力軸と、前記HST入力軸から前記PTO出力軸へ至るPTO伝動経路の少なくとも一部を形成するPTO伝動軸と、前記PTO中継軸のうち、前記遊星ギヤ機構より伝動方向下流側に位置する部分と前記PTO伝動軸との間に介挿され、前記PTO中継軸の回転動力を減速して前記PTO伝動軸に作動伝達する減速ギヤ列と、前記変速入力軸及び前記増速出力軸を支持し且つ前記増速ギヤ列を収容するギヤケースと、前記HST入力軸及び前記HST出力軸を支持し且つ前記ポンプ本体及び前記モータ本体を収容するHSTケースと、前記PTO中継軸及び前記PTO伝動軸を支持し且つ前記遊星ギヤ機構及び前記減速ギヤ列を収容するミッションケースとを備え、前記HST入力軸は前記変速入力軸の軸線から変位され、且つ、前記HST出力軸は前記変速入力軸及び前記HST入力軸の双方の軸線から変位され、前記PTO伝動軸は前記HSTより伝動方向下流側において前記変速入力軸と同一軸線上に配置されており、前記変速入力軸の軸線は、前記HST入力軸及び前記HST出力軸の軸線方向視において両軸の軸線の間に位置し、且つ、前記HST入力軸及び前記HST出力軸の軸線を通る仮想HST基準面に直交する幅方向に関し前記仮想HST基準面の一方側に配置され、前記遊星ギヤ機構は、前記変速入力軸の軸線を挟んで仮想HST基準面とは幅方向反対側に配置された軸線上に配置されており、且つ、前記HST出力軸から作動的にHST出力を入力するサンギヤと、前記PTO中継軸から作動的に駆動源出力を入力するインターナルギヤと、HST出力及び駆動源出力の合成回転動力を出力する遊星キャリヤとを有し、前記ギヤケースの前記HSTケースへの連結によって前記増速出力軸及び前記HST入力軸が軸線回り相対回転不能に連結されるように構成され、前記ミッションケースは、前記PTO伝動軸を第1軸線上で支持し、且つ、前記遊星ギヤ機構を第2軸線上で支持するように構成され、前記HSTケースは、前記HST入力軸を第3軸線上に位置させ且つ前記HST出力軸を第4軸線上に位置させる第1姿勢と、前記HST入力軸を前記第3軸線上に位置させつつ前記HST出力軸を第5軸線上に位置させる第2姿勢とで前記ミッションケースに着脱可能に連結されるように構成され、前記ギヤケースは、第1姿勢で前記ミッションケースに連結されている前記HSTケースに対して、前記変速入力軸を前記第1軸線上に位置させつつ前記増速出力軸を前記第3軸線上に位置させる第1姿勢で着脱可能に連結可能とされ、且つ、第2姿勢で前記ミッションケースに連結されている前記HSTケースに対して、前記変速入力軸を前記第1軸線上に位置させつつ前記増速出力軸を前記第3軸線上に位置させる第2姿勢で着脱可能に連結可能とされた作業車輌用変速装置を提供する
ましくは、前記HSTケースは、前記第1及び第2姿勢に加えて、前記HST入力軸を第1軸線上に位置させる第3姿勢においても前記ミッションケースに着脱可能に連結される。
また、本発明は、HST入力軸、ポンプ本体、前記ポンプ本体によって油圧的に駆動されるモータ本体、HST出力軸、並びに、前記HST入力軸及び前記HST出力軸を軸線回り回転自在に支持し且つ前記HST入力軸及び前記HST出力軸にそれぞれ支持された前記ポンプ本体及び前記モータ本体を収容するHSTケースを有するHSTと、変速入力軸、増速出力軸、前記変速入力軸の回転動力を前記増速出力軸に増速伝達する増速ギヤ列、及び、前記変速入力軸及び前記増速出力軸を軸線回り回転自在に支持し且つ前記増速ギヤ列を収容するギヤケースとを備えるHSTユニットを提供する。
本発明に係る前記HSTユニットにおいて、前記HSTケースは、軸線方向一方側の第1端面の側から前記HST入力軸へのアクセスを許容するように構成され、前記ギヤケースは、軸線方向一方側の第1端面の側から前記変速入力軸へのアクセスを許容し且つ軸線方向他方側の第2端面の側から前記増速出力軸へのアクセスを許容しつつ、軸線方向他方側の第2端面を前記HSTケースの第1端面に対向させた状態で前記HSTケースに脱着可能とされる。
前記ギヤケースの前記HSTケースへの連結に応じて、前記増速出力軸が前記HST入力軸に同軸上において軸線回り相対回転不能に連結されるように構成されており、前記ギヤケース及び前記HSTケースの連結状態において、前記変速入力軸の軸線は前記HST入力軸及び前記HST出力軸の軸線方向視において両軸の軸線の間に位置し且つ前記HST入力軸及び前記HST出力軸の軸線を通る仮想HST基準面に直交する幅方向に関し前記仮想HST基準面の一方側に位置し、前記ギヤケースは、前記HST入力軸の軸線回りに異なる複数の連結姿勢で前記HSTケースに連結可能とされる。
前記複数の連結姿勢は、前記変速入力軸を前記HST入力軸の軸線回り第1位置に位置させる第1姿勢と、前記変速入力軸を前記HST入力軸の軸線回りに前記第1位置から変位させた第2位置に位置させる第2姿勢とを含むものとされる。即ち、前記変速入力軸は、前記第1位置から前記第2位置へ変位される際に、前記HST入力軸の軸線回りに前記HST出力軸に近接又は離間されることになる。
本発明に係る作業車輌用変速装置によれば、駆動源からHST入力軸へ入力される回転動力を増速ギヤ列によって増速させることで走行駆動部を作動的に駆動する車軸のトルクアップ効果を得ることができる上で、さらに、装置の大型化を防止し、且つ、PTO軸の回転速度変化を招くことなく、前記増速ギヤ列を有する構成から前記増速ギヤ列を有さない構成への仕様変更を容易に行うことができる。
図1は、本発明の一実施の形態に係る変速装置が適用された作業車輌の伝動模式図である。 図2は、前記変速装置の主要部の斜視図である。 図3は、図1におけるIII-III線に沿った断面図である。 図4は、図1におけるIV-IV線に沿った断面図である。 図5は、図1におけるV-V線に沿った断面図である。 図6は、図1におけるVI-VI線に沿った断面図である。 図7は、前記変速装置における増速ギヤユニット及びHSTの分解斜視図である。 図8は、前記実施の形態の第1変形例に係る変速装置が適用された作業車輌の伝動模式図である。 図9は、図8におけるIX-IX線に沿った断面図である。 図10は、図8におけるX-X線に沿った断面図である。 図11は、前記実施の形態に係る変速装置から増速ギヤ列及び減速ギヤ列を削除した第2変形例に係る変速装置が適用された作業車輌の伝動模式図である。 図12は、図11におけるXII-XII線に沿った断面図である。 図13は、図11におけるXIII-XIII線に沿った断面図である。
以下、本発明に係る変速装置の一実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施の形態に係る変速装置100Aを備えた作業車輌1Aの伝動模式図を示す。
また、図2に、前記変速装置100Aの主要部の斜視図を示す。
前記変速装置100Aは、前記作業車輌1Aに備えられた駆動源10からの回転動力を、走行駆動力として走行駆動部(図示の作業車輌においては後輪20)へ向けて出力すると共に、作業駆動力としてPTO軸300から外部へ出力するように構成されている。
具体的には、図1及び図2に示すように、前記変速装置100Aは、前記駆動源10から回転動力を作動的に入力する変速入力軸120と、前記変速入力軸120から作動的に回転動力を入力するHST200と、前記PTO出力軸300と、前記駆動源10から前記PTO出力軸300へ至るPTO伝動経路の少なくとも一部を形成するPTO伝動軸310と、前記PTO出力軸300及び前記PTO伝動軸310を支持し、且つ、前記HST200が連結されるミッションケース600とを備えている。
前記HST200は、前記変速入力軸120から作動的に回転動力を入力するHST入力軸210と、前記HST入力軸210に支持されたポンプ本体220と、前記ポンプ本体220によって油圧的に駆動されるモータ本体240と、前記モータ本体240を支持するHST出力軸230とを有している。
前記ポンプ本体220及び前記モータ本体240の少なくとも一方は容量を変化させ得る可変容積体とされており、可変容積体の容積変化に応じて前記HST入力軸210の回転速度に対する前記HST出力軸230の回転速度が無段階に変速するようになっている。
本実施の形態においては、前記ポンプ本体220が可変容積体とされている。
即ち、図1及び図2に示すように、前記ポンプ本体220は、前記HST入力軸210に相対回転不能に支持されたポンプ側シリンダブロック222と、前記ポンプ側シリンダブロック222に軸線回り相対回転不能且つ軸線方向進退可能に収容されたポンプ側ピストン224とを有している。
前記HST200は、さらに、前記ポンプ側ピストン224の進退範囲を画するポンプ側斜板225を有しており、前記ポンプ側斜板225は揺動軸回り揺動可能な可動斜板とされている。
なお、本実施の形態においては、前記モータ本体240は固定容積体とされている。
即ち、図1及び図2に示すように、前記モータ本体240は、前記HST出力軸230に相対回転不能に支持されたモータ側シリンダブロック242と、前記モータ側シリンダブロック242に軸線回り相対回転不能且つ軸線方向進退可能に収容されたモータ側ピストン244とを有している。
前記HST200は、さらに、前記モータ側ピストン244の進退範囲を画するモータ側斜板245を有しており、前記モータ側斜板245は固定斜板とされている。
本実施の形態においては、前記HST200は、さらに、前記HST入力軸210及び前記HST出力軸230を軸線回り回転自在に支持し且つ前記ポンプ本体220及び前記モータ本体240を収容するHSTケース250(図1並びに下記図3及び図7参照)を備えている。
図1に示すように、前記HST入力軸210は、軸線方向一方側の第1端部210aが軸線方向一方側からアクセス可能で且つ軸線方向他方側の第2端部210bが軸線方向他方側からアクセス可能なように、前記HSTケース250に支持されている。
前記HST出力軸230は、軸線方向他方側の第2端部230bが軸線他方側からアクセス可能なように、前記HSTケース250に支持されている。
なお、前記HSTケース250は、前記ポンプ側シリンダブロック222及び前記モータ側シリンダブロック242がそれぞれ軸線回りに摺接されるポートブロックであって、両者を流体接続する一対の作動油路が形成されたポートブロック(図示せず)と、前記ポンプ本体220及び前記モータ本体240を収容するHST空間を形成するように前記ポートブロックに着脱自在に連結されるHSTケース本体255(下記図3及び図7参照)とを有している。
図3~図6に、それぞれ、図1におけるIII-III線、IV-IV線、V-V線及びVI-VI線に沿った断面図を示す。
図1~図3に示すように、前記HST入力軸210は前記変速入力軸120の軸線から変位配置されており、前記HST出力軸230は前記変速入力軸120及び前記HST入力軸210の双方の軸線から変位配置されている。
本実施の形態においては、前記HST入力軸210の第1端部210aは増速ギヤ列130を介して前記変速入力軸120に作動連結されている。
詳しくは、図1~図3に示すように、前記変速装置100Aは、前記変速入力軸120の回転動力を増速する前記増速ギヤ列130を備えており、前記HST入力軸210には、前記駆動源10からの回転動力が前記増速ギヤ列130によって増速された状態で伝達されている。
斯かる構成を備えることにより、前記駆動源10の出力回転速度を上昇させることなく、前記HST出力軸230から出力されるHST出力の最高回転速度を上昇させることができ、これにより、前記走行駆動部を作動的に駆動する車軸のトルクアップ効果を得ることができる。
即ち、前記増速ギヤ列130を介さずに、前記駆動源10からの回転動力が前記HST入力軸210へ作動的に入力される構成(以下、ノーマル構成という)における、前記HST入力軸230の回転速度(HST入力回転速度)をRa1と仮定する。
HST入力回転速度に対する、前記HST出力軸230から出力可能な回転動力の回転速度の最高速度(HST出力最高回転速度)は、前記HST200の最大変速比Sによって画されるものである。
ここで、HST入力回転速度がRa1の際のHST出力最高回転速度をRb1(=Ra1×S)と表す。
一方、本実施の形態(即ち、前記増速ギヤ列130を介して、前記駆動源10からの回転動力が前記HST入力軸210へ作動的に入力される増速入力構成)における、HST入力回転速度をRa2(>Ra1)と表すと、本実施の形態におけるHST出力最高回転速度はRb2(=Ra2×S>Rb1)となる。
ここで、前記作業車輌1Aに要求される最高走行速度Vxは仕様に応じて決定されるが、最高走行速度Vxを現出する為に必要なHST出力の回転速度がRa1であると仮定すると、前記ノーマル入力構成において前記作業車輌1Aの最高走行速度Vxを得る為には、前記HST200の可動斜板(本実施の形態においては前記ポンプ側斜板225)を最大傾転位置まで揺動させて、HST出力をノーマル入力構成時における最高回転速度Rb1まで高める必要がある。
これに対し、前記駆動源10からの回転動力が前記増速ギヤ列130によって増速された状態で前記HST入力軸210に作動的に入力される本実施の形態においては、前記HST200の可動斜板(本実施の形態においては前記ポンプ側斜板225)を最大傾転位置及び中立位置の間の所定傾転位置へ揺動させるだけで、HST出力の回転速度をRb1(<Rb2)まで高めることができる。
即ち、本実施の形態においては、前記ノーマル入力構成に比して、前記HST200から前記走行駆動部までの減速比を大きく設定しても前記作業車輌1Aの最高走行速度Vxを得ることができ、前記走行駆動部を作動的に駆動する車軸のトルクアップ効果を得ることができる。
逆に言うと、前記HST200から前記走行駆動部までの減速比を本実施の形態及び前記ノーマル入力構成において同一に設定すると、本実施の形態においては、前記ノーマル入力構成に比して、車軸トルクを維持したままで最高走行速度を上昇させることができる。
本実施の形態に係る前記変速装置100Aにおいては、前記増速ギヤ列130は増速ギヤユニット110の一構成要素とされている。
即ち、前記変速装置100Aは、前記増速ギヤ列130を含む前記増速ギヤユニット110を備えている。
図7に、前記増速ギヤユニット110及び前記HST200の分解斜視図を示す。
図1~図3及び図7に示すように、前記増速ギヤユニット110は、前記変速入力軸120と、軸線方向一方側の第1端部120aへの外部からのアクセスが可能な状態で前記変速入力軸120を支持するギヤケース150と、前記変速入力軸120に平行で、且つ、軸線方向他方側の第2端部140bへの外部からのアクセスが可能な状態で前記ギヤケース150に支持された増速出力軸140と、前記変速入力軸120の回転動力を増速して前記増速出力軸140に伝達する前記増速ギヤ列130とを有している。
前記増速ギヤ列130は、前記変速入力軸120の相対回転不能に支持された増速側大ギヤ132と、前記増速出力軸140に相対回転不能に支持され且つ前記増速側大ギヤ132に噛合された増速側小ギヤ134とを有している。
本実施の形態においては、前記増速出力軸140は前記HST入力軸210の第1端部210aが軸線回り相対回転不能に内挿される筒軸とされており、前記ギヤケース150を前記HSTケース250に連結することによって前記HST入力軸210がスプライン等のカップリング手段を介して前記増速出力軸140に軸線回り相対回転不能に連結されるようになっている。
図3及び図7に示すように、前記ギヤケース150は、前記増速出力軸140の第2端部140bへの外部からのアクセスを許容しつつ前記HSTケース250に連結されるギヤケース本体152であって、軸線方向一方側が開放されたギヤケース本体152と、前記ギヤケース本体152の軸線方向一方側を閉塞するように前記ギヤケース本体152に着脱可能に連結されるギヤケースカバー154であって、前記変速入力軸120の第1端部120aへのアクセスを許容するように構成されたギヤケースカバー154とを有している。
図3及び図7に示すように、前記ギヤケース150は、前記ギヤケース150に形成された取付孔156、157及び前記HSTケース250に形成されたHSTケース側取付孔265に挿通されるボルト等の締結部材160を介して、前記HSTケース250に着脱可能に連結されている。
なお、前記取付孔156、157の詳細については後述する。
図1、図2及び図6に示すように、前記PTO伝動軸310は、前記HST200より伝動方向下流側において前記変速入力軸120(図3参照)と同一軸線上に配置されており、その上で、前記PTO伝動軸310は、減速ギヤ列330を介して前記HST入力軸210の第2端部210bに作動連結されている。
詳しくは、図1及び図2に示すように、前記変速装置100Aは、前記HST入力軸210の第2端部210bから作動的に入力される回転動力を減速する前記減速ギヤ列330であって、前記ミッションケース600に収容された前記減速ギヤ列330を備えており、前記PTO出力軸300には、前記HST入力軸210の回転動力が前記減速ギヤ列33によって減速された状態で作動的に伝達されている。
即ち、前記変速装置100Aにおいては、前記駆動源10からの回転動力が前記増速ギヤ列130によって増速された状態で前記HST入力軸210に作動伝達され、前記HST出力軸230から高速回転動力が出力可能とされる一方で、前記HST入力軸210の回転動力が前記減速ギヤ列330によって減速された状態で前記PTO伝動軸310に作動伝達されている。
斯かる構成を備えることにより、前記変速装置100Aが径方向(前記PTO伝動軸310の軸線に直交する方向)に関して大型化することを有効に防止乃至は低減した状態で、前記HST出力軸230の高速回転を可能としつつ、前記PTO出力軸300の不要な高速回転を有効に防止している。
図1、図2及び図4~図6に示すように、本実施の形態に係る前記変速装置100Aは、さらに、前記HST入力軸210と同一軸線上で前記HST入力軸210の第2端部210bに軸線回り相対回転不能に連結されたPTO中継軸320を備えており、前記減速ギヤ列330は、前記PTO中継軸320から前記PTO伝動軸310へ回転動力を減速伝達するように構成されている。
即ち、前記減速ギヤ列330は、前記PTO中継軸320に相対回転不能に支持された減速側小ギヤ332と、前記PTO伝動軸310に相対回転不能に支持され且つ前記減速側小ギヤ332に噛合された減速側大ギヤ334とを有している。
本実施の形態においては、前記増速ギヤ列130及び前記減速ギヤ列330は、前記変速入力軸120及び前記PTO伝動軸310の回転速度が同一となるように変速比が設定されている。
図1に示すように、本実施の形態に係る前記変速装置100Aは、前記HST出力軸230から作動的に入力される回転動力を前記走行駆動部(本実施の形態においては前記後輪20)へ向けて出力するように前記ミッションケース600に支持された走行出力軸500を有しており、さらに、前記駆動源10から前記HST200を介して前記走行出力軸500へ至る走行伝動経路に介挿された状態で前記ミッションケース600に収容された遊星ギヤ機構400を有している。
前記遊星ギヤ機構400は、前記HST出力軸230から作動的にHST出力を入力するサンギヤ410と、前記PTO中継軸320から作動的に駆動源出力を入力するインターナルギヤ430と、HST出力及び駆動源出力の合成回転動力を出力する遊星キャリヤ420とを有している。
図1、図2及び図4に示すように、前記サンギヤ410は、サンギヤ軸412と、前記サンギヤ軸412に相対回転不能に支持されたサンギヤ本体414とを有している。
本実施の形態においては、前記サンギヤ410は、前記HST出力軸230から変位配置されており、前記サンギヤ軸412がギヤ列270を介して前記HST出力軸230に作動連結されている。
図1に示すように、前記遊星キャリヤ420は、前記サンギヤ本体414及び前記インターナルギヤ430の双方に噛合する遊星ギヤ422と、前記遊星ギヤ422を自転可能に支持し、前記遊星ギヤ422と共に前記サンギヤ410の軸線回りに公転するキャリヤピン424と、前記キャリヤピンの公転に従って軸線回りに回転するキャリヤ軸426とを有している。
図4に示すように、本実施の形態においては、前記変速入力軸120の軸線X1は、前記HST入力軸210及び前記HST出力軸230の軸線方向視において両軸210、230の軸線X3、X4の間に位置し、且つ、前記HST入力軸210及び前記HST出力軸320の軸線X3、X4を通る仮想HST基準面FPに直交する幅方向Wに関し前記仮想HST基準面FPの一方側に配置されている。
一方、前記遊星ギヤ機構400は、前記変速入力軸120の軸線X1を挟んで仮想HST基準面FPとは幅方向Wに関し反対側に配置された軸線X2上に配置されている。
その上で、図1に示すように、前記減速ギヤ列330は、前記PTO中継軸320のうち、前記遊星ギヤ機構400より伝動方向下流側に位置する部分と前記PTO伝動軸310との間に介挿されている。
斯かる構成を備えることにより、前記変速入力軸120、前記HST入力軸210、前記HST出力軸230、前記PTO伝動軸310及び前記遊星ギヤ機構400の軸線X1~X4の可及的な近接配置を図っている。
図1に示すように、本実施の形態に係る前記変速装置100Aは、さらに、走行伝動経路の伝動方向に関し、前記遊星ギヤ機構400の出力要素(本実施の形態においては前記遊星キャリヤ420)及び前記走行出力軸500の間に介挿された走行伝動軸450と、前記遊星ギヤ機構400の出力要素の回転動力を前記走行伝動軸450に正逆切替可能に作動伝達する前後進切替機構460とを備えている。
前記前後進切替機構460を備えることにより、前記遊星ギヤ機構400が正逆一方側の回転動力のみを出力するように前記HST200及び前記遊星ギヤ機構400を形成しつつ、前記走行駆動部を正逆双方向の回転動力で駆動することができる。従って、前記作業車輌1Aの走行速度の可変範囲を拡げることができる。
本実施の形態においては、図5に示すように、前記走行伝動軸450は、軸線が前記変速入力軸120(前記PTO伝動軸310)の軸線を挟んで前記遊星ギヤ機構400の軸線とは幅方向Wに関し反対側に位置するように、配置されている。
その上で、前記前後進切替機構460は、図1に示すように、前記遊星キャリヤ420に作動連結された第1走行駆動ギヤ466及び前記走行伝動軸450に相対回転自在に外挿され且つ前記第1走行駆動ギヤ466に噛合された第1走行従動ギヤ467を含み、前記遊星キャリヤ420の回転動力を前記第1走行従動ギヤ467に正逆一方側の回転動力として作動伝達する第1走行伝動機構465と、前記遊星キャリヤ420に作動連結された第2走行駆動ギヤ471及び前記走行伝動軸450に相対回転自在に外挿された第2走行従動ギヤ472を含み、前記遊星キャリヤ420の回転動力を前記第2走行従動ギヤ472に正逆他方側の回転動力として作動伝達する第2走行伝動機構470と、前記第1及び第2走行従動ギヤ467、472を前記走行伝動軸450に選択的に係合させるクラッチ機構480とを有している。
本実施の形態においては、図1に示すように、前記第2走行伝動機構470は、さらに、前記PTO中継軸320に相対回転自在に外挿された走行中継軸475と、前記走行中継軸475に相対回転不能に支持され且つ前記第2走行駆動ギヤ471に噛合された第1中間ギヤ476と、前記走行中継軸475に相対回転不能に支持され且つ前記第2走行従動ギヤ472に噛合された第2中間ギヤ477とを備えている。これにより前記第2走行従動ギヤ472は前記第1走行従動ギヤ467に対して逆方向に回転される。
斯かる構成により、前記前後進切替機構460を備えつつ前記変速装置100Aの径方向に関する小型化を図ることができる。
図1に示すように、本実施の形態に係る前記変速装置100Aは、さらに、前記走行伝動軸450及び前記走行出力軸500の間で回転動力を多段変速する多段変速機構490を備えている。
図5に示すように、前記走行伝動軸450は仮想HST基準面FPを基準にして前記変速入力軸120(前記PTO伝動軸310)とは幅方向Wに関し反対側に配設され、前記走行出力軸500は、幅方向Wに関し仮想HST基準面FP及び前記遊星ギヤ機構400の軸線の間に配設されている。
斯かる構成を備えることにより、前記変速装置100Aの大型化を可及的に防止しつつ、前記多段変速機構490を備えることができる。
図1に示すように、前記変速装置100Aは、さらに、前記PTO伝動軸310から前記PTO出力軸300へ回転動力を作動伝達するPTO伝動方向下流側伝動構造350と、前記走行出力軸500から前記走行駆動部(本実施の形態においては前記後輪20)へ回転動力を作動伝達する走行伝動方向下流側伝動構造510とを有している。
本実施の形態においては、前記PTO伝動方向下流側構造350は、前記PTO伝動軸310から前記PTO出力軸300への動力伝達を選択的に係脱するPTOクラッチ機構360と、前記PTO伝動軸310から作動的に入力される回転動力を多段変速して、前記PTO出力軸300へ向けて出力するPTO多段変速機構370とを有している。
また、前記走行伝動方向下流側構造510は、左右一対の駆動車軸530と、前記走行出力軸500の回転動力を左右一対の駆動車軸530に差動伝達するディファレンシャルギヤ機構520とを備えている。
なお、符号540は、前記駆動車軸530に選択的に制動力を付加可能な走行ブレーキ機構である。
図8に、本実施の形態の第1変形例に係る変速装置100Bを備えた作業車輌1Bの伝動模式図を示す。
また、図9及び図10に、それぞれ、図8におけるIX-IX線及びX-X線に沿った前記変速装置100Bの断面図を示す。
なお、図中、本実施の形態におけると同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明を適宜省略する。
図8に示すように、前記第1変形例100Bは、前記遊星ギヤ機構400及び前記前後進切替機構460が省略されている点において、本実施の形態に係る前記変速装置100Aと相違している。
前記第1変形例100Bにおいては、前記走行伝動軸450が前記HST出力軸230と同軸上において軸線回り相対回転不能に連結されている。
ここで、前記実施の形態に係る変速装置100A及び前記変形例に係る変速装置100Bにおいて、前記ミッションケース600、前記HSTケース250及び前記ギヤケース150は下記構成を備えることによって共用可能とされている。
即ち、図5及び図6並びに図10に示すように、前記ミッションケース600は、前記PTO伝動軸310を当該ミッションケース600を基準にした第1軸線X1上で支持し、且つ、前記遊星ギヤ機構400を当該ミッションケース600を基準にした第2軸線X2上で支持すると共に、前記走行出力軸500を当該ミッションケース600を基準した走行出力軸線Y上で支持するように構成されている。
そして、前記HSTケース250は、前記ミッションケース600に対して、前記HST入力軸210を当該ミッションケース600を基準にした第3軸線X3上に位置させ且つ前記HST出力軸230を当該ミッションケースを基準にした第4軸線X4上に位置させる第1姿勢(図3に示す姿勢)と、前記HST入力軸210を前記第3軸線X3上に位置させつつ前記HST出力軸230を当該ミッションケース600を基準にした第5軸線X5上に位置させる第2姿勢(図9に示す姿勢であり、図示の構成では、第1姿勢から前記HST入力軸210の軸線(第3軸線)回りに時計回りに若干揺動されている)とで着脱可能に連結可能とされている。
さらに、前記ギヤケース150は、第1姿勢で前記ミッションケース600に連結されている前記HSTケース250に対して、前記変速入力軸120を前記第1軸線X1上に位置させつつ前記増速出力軸140を前記第3軸線X3上に位置させる第1姿勢(図3参照)で着脱可能に連結可能とされ、且つ、第2姿勢で前記ミッションケース600に連結されている前記HSTケース250に対して、前記変速入力軸120を前記第1軸線X1上に位置させつつ前記増速出力軸140を前記第3軸線X3上に位置させる第2姿勢(図9参照)で着脱可能に連結可能とされている。
ここで、前記ギヤケース150に形成された前記取付孔156、157について説明する。
前述の通り、前記ギヤケース150は前記HSTケース250に前記締結部材160を介して着脱可能に連結されている。
前記取付孔156は、前記ギヤケース150を第1姿勢で前記HSTケース250に連結させる際に前記締結部材160が挿通される第1姿勢用取付孔として用いられる(図3参照)。
一方、前記取付孔157は、前記ギヤケース150を第2姿勢で前記HSTケース250に連結させる際に前記締結部材160が挿通される第2姿勢用取付孔として用いられる(図9参照)。
なお、図示は省略するが、前記HSTケース250も同様に、HSTケース用締結部材によって前記ミッションケース600に着脱可能に連結される。
そして、前記HSTケース250には、当該HSTケース250が第1姿勢で前記ミッションケース600に連結される際に前記HSTケース用締結部材が挿通される第1姿勢用取付孔と、当該HSTケース250が第2姿勢で前記ミッションケース600に連結される際に前記HSTケース用締結部材が挿通される第2姿勢用取付孔とが設けられている。
斯かる構成によれば、前記駆動源10から前記変速入力軸120へ回転動力を作動伝達する伝動方向上流側構造15、前記PTO伝動方向下流側構造、及び、前記走行伝動方向下流側構造の実質的な変更を要することなく、前記HST200及び前記遊星ギヤ機構400を含むHMT仕様(静油圧・機械式無段変速構造)と前記遊星ギヤ機構400を有さないHST仕様(静油圧式無段変速構造)との間で仕様変更を容易に行うことができる。
また、前記HSTケース250内には、前記HST200の潤滑兼作動油や前記ポンプ本体220及び前記モータ本体240からリークする作動油が貯留される。
本実施の形態においては、前記HSTケース250内の貯留油を前記ギヤケース150内に導入することによって前記増速ギヤ列130を潤滑している。
詳しくは、図3及び図9に示すように、前記HSTケース250における前記ギヤケース150との当接面には、前記HSTケース250の内部空間を外方に開口する供給孔251が設けられている。
一方、図3及び図9に示すように、前記ギヤケース150における前記HSTケース250との当接面には、前記ギヤケース150が第1姿勢で前記HSTケース250に連結される際に前記供給孔251と同一位置に位置する第1姿勢用導入孔151aと、前記ギヤケース150が第2姿勢で前記HSTケース250に連結される際に前記供給孔251と同一位置に位置する第2姿勢用導入孔151bとが設けられており、前記ギヤケース150が第1及び第2姿勢の何れの姿勢で前記HSTケース250に連結されても、前記HSTケース250内の貯留油が前記ギヤケース150内に導入されるようになっている。
前記HSTケース250は、前記第1及び第2姿勢に加えて、前記HST入力軸210を第1軸線X1上に位置させる第3姿勢においても前記ミッションケース600に着脱可能に連結可能とされている。なお、前記取付孔156、157や前記導入孔151a、151bは前記ギヤケース150の製作時にすべて開口形成しておき、前記ギヤケース150の取付姿勢を選択する段階で、非使用側の孔には栓を嵌める形態であってもよい。あるいは、前記ギヤケース150の取付姿勢を決定した際に前記HSTケース側取付孔265及び前記供給孔251と対向する箇所だけに、前記取付孔156(又は157)及び前記導入孔151a(又は151b)を機械加工で穿孔する形態としてもよい。
図11に、前記HSTケース250を第3姿勢で前記ミッションケース600に連結させた第2変形例に係る変速装置100Cを備えた作業車輌1Cの伝動模式図を示す。
また、図12及び図13に、それぞれ、図11におけるXII-XII線及びXIII-XIII線に沿った前記変速装置100Cの断面図を示す。
なお、図中、本実施の形態及び前記第1変形例におけると同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明を適宜省略する。
図11に示すように、前記第2変形例に係る変速装置100Cにおいては、前記増速ギヤ列130を含む前記増速ギヤユニット110及び前記減速ギヤ列330が削除されている。
図12及び図13に示すように、前記第2変形例100Cにおいては、前記HST入力軸210が第1軸線X1上に配置されており、前記PTO伝動軸310は前記HST入力軸210と同軸上(即ち、第1軸線X1上)に配置されて、前記HST入力軸210の第2端部210bに軸線回り相対回転不能に連結されている。
また、前記走行伝動軸450は、前記HST出力軸230と同軸上に配置され、前記HST出力軸230の第2端部230bに軸線回り相対回転不能に連結されている。
前記走行出力軸500は、本実施の形態及び前記第1変形例におけると同様に、走行出力軸線Y上に配置されている。
図11に示すように、第2変形例100Cは、前記走行伝動軸450から前記走行出力軸500への間で回転動力を多段変速する前記多段変速機構490を有している。
従って、前記HSTケース250の第3姿勢は、前記HST入力軸210を第1軸線X1上に位置させつつ、前記走行伝動軸450が同一軸線上に配置される前記HST出力軸230を、前記走行伝動軸450から前記多段変速機構を介して前記走行出力軸への回転動力が行えるような第6軸線X6上に、位置させるものとされる。
斯かる構成によれば、前記伝動方向上流側構造15、前記PTO伝動方向下流側構造350、及び、前記走行伝動方向下流側構造510の実質的な変更を要することなく、前記増速ギヤ列130及び前記減速ギヤ列330無しのHST仕様への仕様変更を行うことができる。
1A~1C 作業車輌
10 駆動源
20 後輪(走行駆動部)
120 変速入力軸
130 増速ギヤ列
140 増速出力軸
150 ギヤケース
200 HST
210 HST入力軸
220 ポンプ本体
230 HST出力軸
240 モータ本体
250 HSTケース
300 PTO出力軸
310 PTO伝動軸
320 PTO中継軸
330 減速ギヤ列
400 遊星ギヤ機構
410 サンギヤ
420 遊星キャリヤ
430 インターナルギヤ
450 走行伝動軸
460 前後進切替機構
465 第1走行伝動機構
466 第1走行駆動ギヤ
467 第1走行従動ギヤ
470 第2走行伝動機構
471 第2走行駆動ギヤ
472 第2走行従動ギヤ
475 走行中継軸
476 第1中間ギヤ
477 第2中間ギヤ
480 クラッチ機構
490 多段変速機構
500 走行出力軸
600 ミッションケース
FP 仮想HST基準面
X1 第1軸線
X2 第2軸線
X3 第3軸線
X4 第4軸線
X5 第5軸線

Claims (5)

  1. 駆動源から回転動力を作動的に入力する変速入力軸と、前記変速入力軸の回転動力を増速する増速ギヤ列と、軸線方向一方側の第1端部に、前記駆動源からの駆動源出力を前記増速ギヤ列によって増速された状態で入力するHST入力軸、前記HST入力軸に支持されたポンプ本体、前記ポンプ本体によって油圧的に駆動されるモータ本体及び前記モータ本体を支持するHST出力軸を有し、前記HST出力軸から走行駆動部へ向けて走行回転動力を出力するHSTと、外部へ回転動力を出力するPTO出力軸と、前記HST入力軸から前記PTO出力軸へ至るPTO伝動経路の少なくとも一部を形成するPTO中継軸と、前記HST出力軸から作動的にHST出力を入力するサンギヤ、前記PTO中継軸から作動的に駆動源動力を入力するインターナルギヤ並びにHST出力及び駆動源出力の合成回転動力を出力する遊星キャリヤを有する遊星ギヤ機構と、前記駆動源から前記走行駆動部へ至る走行伝動経路に介挿された走行伝動軸と、前記遊星キャリヤの回転動力を前記走行伝動軸に正逆切替可能に作動伝達する前後進切替機構とを備え、
    前記HST入力軸は前記変速入力軸の軸線から変位され、且つ、前記HST出力軸は前記変速入力軸及び前記HST入力軸の双方の軸線から変位され、
    前記PTO中継軸は前記HST入力軸と同一軸線上で前記HST入力軸の第2端部に軸線回り相対回転不能に連結されており、
    前記前後進切替機構は、前記遊星キャリヤの回転動力を、前記走行伝動軸に相対回転自在に外挿された第1走行従動ギヤに正逆一方側の回転動力として作動伝達する第1走行伝動機構と、前記遊星キャリヤの回転動力を、前記PTO中継軸に相対回転自在に外挿された走行中継軸並びに前記走行中継軸に相対回転不能に支持された第1及び第2中間ギヤを介して、前記走行伝動軸に相対回転自在に外挿された第2走行従動ギヤに正逆他方側の回転動力として作動伝達する第2走行伝動機構と、前記第1及び第2走行従動ギヤを前記走行伝動軸に選択的に係合させるクラッチ機構とを含むことを特徴とする作業車輌用変速装置。
  2. 前記走行伝動軸に平行に配設された走行出力軸と、前記走行伝動軸及び前記走行出力軸の間で回転動力を多段変速する多段変速機構とを備えることを特徴とする請求項に記載の作業車輌用変速装置。
  3. 駆動源から回転動力を作動的に入力する変速入力軸と、前記変速入力軸の回転動力を増速する増速ギヤ列と、前記増速ギヤ列によって増速された回転動力を出力する増速出力軸と、軸線方向一方側の第1端部に、前記駆動源からの駆動源出力を前記増速ギヤ列によって増速された状態で入力するHST入力軸、前記HST入力軸に支持されたポンプ本体、前記ポンプ本体によって油圧的に駆動されるモータ本体及び前記モータ本体を支持するHST出力軸を有し、前記HST出力軸から走行駆動部へ向けて走行回転動力を出力するHSTと、遊星ギヤ機構と、前記HST入力軸と同一軸線上で前記HST入力軸の第2端部に軸線回り相対回転不能に連結されたPTO中継軸と、外部へ回転動力を出力するPTO出力軸と、前記HST入力軸から前記PTO出力軸へ至るPTO伝動経路の少なくとも一部を形成するPTO伝動軸と、前記PTO中継軸のうち、前記遊星ギヤ機構より伝動方向下流側に位置する部分と前記PTO伝動軸との間に介挿され、前記PTO中継軸の回転動力を減速して前記PTO伝動軸に作動伝達する減速ギヤ列と、前記変速入力軸及び前記増速出力軸を支持し且つ前記増速ギヤ列を収容するギヤケースと、前記HST入力軸及び前記HST出力軸を支持し且つ前記ポンプ本体及び前記モータ本体を収容するHSTケースと、前記PTO中継軸及び前記PTO伝動軸を支持し且つ前記遊星ギヤ機構及び前記減速ギヤ列を収容するミッションケースとを備え、
    前記HST入力軸は前記変速入力軸の軸線から変位され、且つ、前記HST出力軸は前記変速入力軸及び前記HST入力軸の双方の軸線から変位され、
    前記PTO伝動軸は前記HSTより伝動方向下流側において前記変速入力軸と同一軸線上に配置されており、
    前記変速入力軸の軸線は、前記HST入力軸及び前記HST出力軸の軸線方向視において両軸の軸線の間に位置し、且つ、前記HST入力軸及び前記HST出力軸の軸線を通る仮想HST基準面に直交する幅方向に関し前記仮想HST基準面の一方側に配置され、
    前記遊星ギヤ機構は、前記変速入力軸の軸線を挟んで仮想HST基準面とは幅方向反対側に配置された軸線上に配置されており、且つ、前記HST出力軸から作動的にHST出力を入力するサンギヤと、前記PTO中継軸から作動的に駆動源出力を入力するインターナルギヤと、HST出力及び駆動源出力の合成回転動力を出力する遊星キャリヤとを有し、
    前記ギヤケースの前記HSTケースへの連結によって前記増速出力軸及び前記HST入力軸が軸線回り相対回転不能に連結されるように構成されており、
    前記ミッションケースは、前記PTO伝動軸を第1軸線上で支持し、且つ、前記遊星ギヤ機構を第2軸線上で支持するように構成され、
    前記HSTケースは、前記HST入力軸を第3軸線上に位置させ且つ前記HST出力軸を第4軸線上に位置させる第1姿勢と、前記HST入力軸を前記第3軸線上に位置させつつ前記HST出力軸を第5軸線上に位置させる第2姿勢とで前記ミッションケースに着脱可能に連結されるように構成され、
    前記ギヤケースは、第1姿勢で前記ミッションケースに連結されている前記HSTケースに対して、前記変速入力軸を前記第1軸線上に位置させつつ前記増速出力軸を前記第3軸線上に位置させる第1姿勢で着脱可能に連結可能とされ、且つ、第2姿勢で前記ミッションケースに連結されている前記HSTケースに対して、前記変速入力軸を前記第1軸線上に位置させつつ前記増速出力軸を前記第3軸線上に位置させる第2姿勢で着脱可能に連結可能とされていることを特徴とする作業車輌用変速装置。
  4. 前記HSTケースは、前記第1及び第2姿勢に加えて、前記HST入力軸を第1軸線上に位置させる第3姿勢においても前記ミッションケースに着脱可能に連結されるように構成されていることを特徴とする請求項に記載の作業車輌用変速装置。
  5. HST入力軸、ポンプ本体、前記ポンプ本体によって油圧的に駆動されるモータ本体、HST出力軸、並びに、前記HST入力軸及び前記HST出力軸を軸線回り回転自在に支持し且つ前記HST入力軸及び前記HST出力軸にそれぞれ支持された前記ポンプ本体及び前記モータ本体を収容するHSTケースを有するHSTと、
    変速入力軸、増速出力軸、前記変速入力軸の回転動力を前記増速出力軸に増速伝達する増速ギヤ列、及び、前記変速入力軸及び前記増速出力軸を軸線回り回転自在に支持し且つ前記増速ギヤ列を収容するギヤケースとを備え、
    前記HSTケースは、軸線方向一方側の第1端面の側から前記HST入力軸へのアクセスを許容するように構成され、
    前記ギヤケースは、軸線方向一方側の第1端面の側から前記変速入力軸へのアクセスを許容し且つ軸線方向他方側の第2端面の側から前記増速出力軸へのアクセスを許容しつつ、軸線方向他方側の第2端面を前記HSTケースの第1端面に対向させた状態で前記HSTケースに脱着可能とされており、
    前記ギヤケースの前記HSTケースへの連結に応じて、前記増速出力軸が前記HST入力軸に同軸上において軸線回り相対回転不能に連結され、
    前記ギヤケース及び前記HSTケースの連結状態において、前記変速入力軸の軸線は前記HST入力軸及び前記HST出力軸の軸線方向視において両軸の軸線の間に位置し且つ前記HST入力軸及び前記HST出力軸の軸線を通る仮想HST基準面に直交する幅方向に関し前記仮想HST基準面の一方側に位置しており、
    前記ギヤケースは、前記HST入力軸の軸線回りに異なる複数の連結姿勢で前記HSTケースに連結可能とされていることを特徴とするHSTユニット。
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