JP7464016B2 - 高炉のスラグレベル推定方法、操業ガイダンス方法、溶銑の製造方法、高炉のスラグレベル推定装置及び操業ガイダンス装置 - Google Patents

高炉のスラグレベル推定方法、操業ガイダンス方法、溶銑の製造方法、高炉のスラグレベル推定装置及び操業ガイダンス装置 Download PDF

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Description

本開示は、高炉のスラグレベル推定方法、操業ガイダンス方法、溶銑の製造方法、高炉のスラグレベル推定装置及び操業ガイダンス装置に関する。
製鉄業における高炉プロセスにおいて、スラグの液面レベル(以下、単に「スラグレベル」とも称される)は重要な管理指標である。スラグレベルが高くなると、高炉の炉内のガスの通気性が悪化する。スラグレベルの上昇の程度が著しい場合には、羽口の破損につながり得る。スラグレベルが上昇する要因として、炉下部のコークス充填層の空隙率の低下、炉底部温度の低下によるスラグ粘性の増大などが考えられる。スラグレベルを低下させるための操業アクションとして、スラグの粘性を低下させるための装入物について塩基度(CaO/SiO)を調整すること、減風によるスラグ生成速度を低減することなどが実施される。
スラグレベルを測定又は推定する手法は多く提案されている。例えば特許文献1は、炉の外周にわたって高さ方向に配列した計測用電極群を複数設置し、電気抵抗にもとづき、各計測用電極群の設置位置近傍における炉内の溶融物レベルを計測する測定方法を開示する。
特許第5412819号公報
ここで、局所的にスラグレベルに差が生じ得ることが知られている。炉内のガスの通気性の悪化、羽口の破損のおそれは、局所的に上昇したスラグレベルによっても生じ得る。また、近年の大型高炉(例えば5000m級)においては、炉断面の面積拡大に伴い液面レベルの不均一性が顕著となっている。そのため、高炉プロセスの安定操業を実現するためには、スラグの不均一な液面レベルについても考慮することが好ましい。
例えば特許文献1の技術は、正確な液面レベルの測定が可能であるが、測定の対象が炉壁近傍の液面に限定される。また、従来技術として、物質収支に基づいてスラグレベルを計算する推定方法があるが、炉断面の平均的なスラグレベルの推定にとどまっており、局所的な変化を推定することが難しい。
以上の問題を解決すべくなされた本開示の目的は、高精度にスラグの液面レベルを推定できる高炉のスラグレベル推定方法及び高炉のスラグレベル推定装置を提供することにある。また、本開示の目的は、高精度に推定されたスラグの液面レベルに基づいて、高炉の操業のガイダンスを行う操業ガイダンス方法、溶銑の製造方法及び操業ガイダンス装置を提供することにある。
本開示の一実施形態に係る高炉のスラグレベル推定方法は、
出銑速度、出滓速度、造銑速度及び造滓速度の少なくとも1つを入力とし、炉底部にスラグを透過しにくい低透過相の存在を仮定する物質収支に基づく物理モデルを用いて、前記低透過相によって区切られた複数の領域ごとにスラグを含む溶融物の液面レベルを算出するステップを含む。
本開示の一実施形態に係る操業ガイダンス方法は、
上記の高炉のスラグレベル推定方法によって算出された前記溶融物の液面レベルに基づき、通気抵抗を低下させるための操業アクションをオペレータに提示するステップを含む。
本開示の一実施形態に係る溶銑の製造方法は、
上記の操業ガイダンス方法によって提示される前記操業アクションに従って溶銑を製造する。
本開示の一実施形態に係る高炉のスラグレベル推定装置は、
出銑速度、出滓速度、造銑速度及び造滓速度の少なくとも1つを入力とし、炉底部にスラグを透過しにくい低透過相の存在を仮定する物質収支に基づく物理モデルを記憶する記憶部と、
前記物理モデルを用いて、前記低透過相によって区切られた複数の領域ごとにスラグを含む溶融物の液面レベルを算出する液面レベル算出部と、を備える。
本開示の一実施形態に係る操業ガイダンス装置は、
上記の高炉のスラグレベル推定装置によって算出された前記溶融物の液面レベルに基づき、通気抵抗を低下させるための操業アクションをオペレータに提示する操業アクション提示部を備える。
本開示によれば、高精度にスラグの液面レベルを推定できる高炉のスラグレベル推定方法及び高炉のスラグレベル推定装置を提供することができる。また、本開示によれば、高精度に推定されたスラグの液面レベルに基づいて、高炉の操業のガイダンスを行う操業ガイダンス方法、溶銑の製造方法及び操業ガイダンス装置を提供することができる。
図1は、本開示で用いられる物理モデルの入出力情報を示す図である。 図2は、高炉の構成を例示する図である。 図3は、実高炉における出銑口偏差の相関を例示する図である。 図4は、物理モデルを用いたシミュレーションの一結果を示す図である。 図5は、物理モデルを用いた相関と実データの相関との比較結果を示す図である。 図6は、複数の領域の面積比とΔスラグ量との関係を例示する図である。 図7は、日毎の低透過相の位置を反映した物理モデルを用いたシミュレーションの一結果を示す図である。 図8は、通気抵抗とスラグレベルとの相関関係を示す図である。 図9は、一実施形態に係る高炉のスラグレベル推定装置及び操業ガイダンス装置の構成例を示す図である。 図10は、一実施形態に係る高炉のスラグレベル推定方法を示すフローチャートである。 図11は、一実施形態に係る操業ガイダンス方法を示すフローチャートである。
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係る高炉のスラグレベル推定方法、操業ガイダンス方法、溶銑の製造方法、高炉のスラグレベル推定装置及び操業ガイダンス装置が説明される。本開示において用いられる物理モデルは、高炉の炉内の状態を計算可能な物理モデルである。また、本開示において用いられる物理モデルは、参考文献1(澤義孝ら、「高炉炉床における低通液性領域の炉底温度分布及び出銑滓におよぼす影響」、鉄と鋼、vol.78、p.1171)に記載の方法と同様、炉下部における低透過相(低透過性領域)の存在を仮定するモデルである。
ここで、低透過相は、炉下部のコークス充填層における空隙率が低下した領域であって、通液性が極端に悪化した領域である。近年の大型化した高炉において、炉下部の領域が低透過相によって分断されており、粘性の低い溶銑が透過する一方で、スラグはほぼ透過しないと考えられている。低透過相を直接的に観察することはできないが、液面レベルの不均一性が生じる大型高炉などでは低透過相が存在していると考えられる。
本開示において用いられる物理モデルは、低透過相の位置を定めた上で、入力が与えられると、出力として低透過相により分断された各領域における溶融物の液面レベルを出力する。
ここで、物理モデルは、低透過相により分断された各領域について少なくともスラグレベルを出力するものであればよい。また、物理モデルは、入力として、出銑速度、出滓速度、造銑速度及び造滓速度の少なくとも1つを取得すればよい。実際の入力、出力は物理モデルの利用目的によって変更する。例えば、出銑口の開閉、造銑速度、造滓速度が入力で、出銑速度、出滓速度、液面レベルが出力であってよい(例えば図4)。また、出銑口の開閉のみならず、出銑速度、出滓速度を実測値で与えて入力とし、液面レベルを出力として得ることができる(例えば図7)。
図1に示すように、炉内の状態を計算する物理モデルの入力及び出力には、様々なデータが用いられてよい。一実施形態において、物理モデルには、両サイドの面積、造銑・造滓速度(造銑速度及び造滓速度)、タップ閉塞時間(出銑口の閉塞時間)が入力される。また、一実施形態において、物理モデルは、出銑・出滓速度(出銑速度及び出滓速度)、スラグ・溶銑液面レベル(スラグの液面レベル及び溶銑の液面レベル)、タップ毎の溶銑・スラグ量(溶銑量及びスラグ量)、タップサイクル時間を出力する。ここで、両サイドは、図1のように低透過相により分断された2つの領域である。2つの領域のそれぞれに出銑口が設けられており、一方が開口している場合に他方が閉塞するように高炉プロセスが行われる。タップは出銑又は出銑口を意味する。また、物理モデルにおいて、出銑直後の高い液面レベルが次第に低下して、出銑口と同じ高さとなったタイミングで閉塞すると判定しており、このような判定に基づいてタップサイクル時間が計算される。
本実施形態において、高炉は大型高炉(例えば5000m級、半径が9000mm)であって、図2に示すように4つの出銑口を有する。ここで、高炉の出銑口の数は4つに限定されるものでなく、2つ以上であればよい。本実施形態において、出銑口は、南側の2つの出銑口(No.2及びNo.3)と北側の2つの出銑口(No.1及びNo.4)の2グループに分けられる。高炉の操業において、上記のように、南側及び北側の出銑口が交互に使用される。本実施形態において、南側の領域と北側の領域との間に低透過相の存在を仮定して、南側と北側の各領域におけるスラグレベルが推定される。
ここで、局所的な差を含めてスラグレベルを推定可能にする方途について鋭意究明したところ、低透過相の存在を仮定し、物理モデルに低透過相の位置を与えることによって高精度に推定できることがわかった。より具体的に述べると、出銑口ごとのスラグ量などの偏差(以下、タップ偏差とも称される)に着目し、後述する方法により実高炉におけるタップ偏差を再現するように低透過相の位置を決定することによって、スラグレベルの高精度な推定(算出)が可能になった。
図3は実高炉における出銑口偏差の相関を例示する図である。図3の横軸のΔスラグ量は、スラグの出滓量の出銑口偏差(領域偏差)を示す。換言すると、Δスラグ量は、複数の領域のそれぞれにおけるスラグの出滓量の差を示す。偏差は北側(No.1及びNo.4)から南側(No.2及びNo.3)を減算した値に基づいて算出される。つまり、Δスラグ量は、北側のスラグの出滓量から南側のスラグの出滓量を引いた値を用いて求められる。図3の縦軸のΔスラグ比、Δ溶銑量及びΔ出銑時間は、同様に、スラグ比、溶銑量及び出銑時間について、北側から南側を減算した値に基づいて算出される。ここで、スラグ比は溶銑量に対するスラグ量の比率であって、溶銑1トン当たりのスラグ量で示される。図3においてプロットされた1点は1日の平均値に対応する。また、各図ともに、北側と南側の値の平均値を用いて規格化が実施されている。例えばΔスラグ量は、(北側のスラグの出滓量-南側のスラグの出滓量)/((北側のスラグの出滓量+南側のスラグの出滓量)/2)によって計算される。スラグの出滓量の多い側において、出銑量が多く、スラグ比が高く、出銑時間が長い傾向が強い。
上記の出銑口偏差の相関は、低透過相の存在を仮定することにより説明可能である。図1の例で説明すると、低透過相によって区切られた複数の領域のうち、面積の広い側(出銑口2の側)においてはスラグを多く排出しなければならないのでスラグ量が多くなる。また、出銑及び出滓の体積が増加するため、出銑口2の側において閉塞までに要する時間も延長する。また、面積の広い側の出銑口2において溶銑量が多くなる。さらに、低透過相はスラグに対して不透過である一方、溶銑については透過性が高い。したがって、スラグ量の出銑口偏差の方が溶銑量の出銑口偏差よりも大きいため、出銑口2の側の方においてスラグ比が高くなる。
次に、上記の物理モデルを用いてシミュレーションを行い、実高炉の出銑口偏差の定量的な説明が可能であることを検証した。図4は、物理モデルを用いて図3に示した操業期間の平均的な操業条件の下で実行した(造銑速度、造滓速度の典型値を入力した)シミュレーション結果を示す。このシミュレーションでは、タップ閉塞時間を与え、各タップのスラグ量、溶銑量を推定計算している。つまり、出銑速度、出滓速度は物理モデルの出力として計算される。このシミュレーションにおいて、低透過相が、炉内断面積の比率で、出銑口1の側(北側)と出銑口2の側(南側)とを2:8の割合で分断するとした。面積の大きい出銑口2側において、スラグ量が多く、出銑開始から終了までの時間が長いことが示されている(特に図4の出銑・出滓速度(出銑口2)参照)。
このようなシミュレーションを低透過相の位置を変化させて実施した結果、図5に示すように、スラグ比、溶銑量及びタップサイクルとスラグ量との出銑口偏差の相関について、実高炉のデータと傾き(相関)がほぼ合致する結果が得られた。シミュレーションでは、図5に示されるcase1、case2を含むように低透過相の位置を変化させて行われた。図4の場合と同様に、低透過相が北側と南側とを2:8の割合で分断する場合がcase1である。また、低透過相が北側と南側とを8:2の割合で分断する場合がcase2である。このように、物理モデルを用いたシミュレーションにおいて低透過相の位置を異ならせることによって、出銑口偏差を定量的に再現可能であることが明らかとなった。
また、上記のようにして得られたスラグ量の出銑口偏差と低透過相の位置の関係に基づき、実高炉における低透過相の位置を推定する手法について検討が行われた。図6のように、低透過相による面積比を0.2から0.8に変化させると、スラグ量の出銑口偏差が-0.42から0.42にほぼ線形に変化する。この線形関係を用いて、高炉の操業中において直近の所定期間のスラグ量の偏差(Δスラグ量)に基づいて、低透過相の位置が推定された。本実施形態において、所定期間は1日である。つまり、この線形関係を用いて、過去一日間のΔスラグ量に基づいて、日毎の低透過相の位置が推定される。
このように推定された日毎の低透過相の位置を用いて、スラグレベル及び溶銑の液面レベルが上記の物理モデルによって推定(算出)された。推定された低透過相の位置を与えた上で、時間的に変化する出銑速度、出滓速度、造銑速度及び造滓速度が物理モデルに入力された。つまり、低透過相の位置については日毎に更新を行い、その低透過相の位置を用いて、より短い時間(例えば1時間)で変化する出銑速度、出滓速度、造銑速度及び造滓速度を物理モデルに入力した。実高炉における造銑速度及び造滓速度は、1時間当たりに降下する原料層の数(ch/hour)に、1チャージ(ch)に含まれる溶銑量(t/ch)及びスラグ量(t/ch)を乗じることで求めることができる。出銑速度及び出滓速度は、出銑サイクル毎のデータを基に線形補間して求めることができる。図7は、日毎に低透過相の位置を定めて、その位置を反映した物理モデルを用いて、北側及び南側の液面レベルを推定(算出)した結果を示す。
さらに、このように推定された液面レベルについて北側と南側とで比較して、高い方の値が最大スラグレベルとして選択された。最大スラグレベルと、実高炉での炉内ガスの通気抵抗とを比較したところ、図8の(低透過相あり)と記載されたグラフのような相関関係が得られた。横軸のスラグレベルは最大スラグレベルを意味する。また、Rは相関係数である。ここで、通気抵抗は、スラグレベルの上昇に応じて高くなる。そのため、通気抵抗とスラグレベルの相関が高いことは、推定されるスラグレベルの精度が高いことを意味する。
図8の(低透過相なし)と記載されたグラフは、低透過相の存在を仮定しない従来技術で得られた相関関係である。(低透過相なし)との比較から明らかなように、低透過相の存在を仮定して位置を推定した本実施形態の手法では、より高い相関が得られており、推定されるスラグレベルの精度が従来技術に比べて向上している。
本実施形態に係る高炉のスラグレベル推定装置(詳細については後述)は、上記のように低透過相の存在を仮定して位置を推定し、その位置を反映した物理モデルを用いることによって、高精度にスラグの液面レベルを推定できる。
本実施形態に係る操業ガイダンス装置(詳細については後述)は、推定されたスラグレベルが閾値を超えた場合に、スラグレベルを低下させるために、ガイダンスを行うことができる。閾値は特に限定されないが、一例として羽口高さより0.5m下に設定されてよい。ガイダンスは、スラグの粘性を低下させるための装入物について塩基度(CaO/SiO)を調整すること、減風によるスラグ生成速度を低減することなどの操業アクションを提示することであってよい。操業ガイダンス装置が、適切な操業アクションをオペレータに提示することで、操業上のトラブル(一例として羽口の破損)を回避することができる。
図9は、一実施形態に係る高炉のスラグレベル推定装置10及び操業ガイダンス装置20の構成例を示す図である。図9に示すように、高炉のスラグレベル推定装置10は、記憶部11と、低透過相位置算出部12と、液面レベル算出部13と、を備える。操業ガイダンス装置20は、記憶部21と、操業アクション提示部22と、を備える。高炉のスラグレベル推定装置10は、高炉に備えられたセンサなどから各種の測定値(実測値とも称される)を取得し、低透過相の存在を仮定して位置を推定し、それを反映した上記の物理モデルを用いた計算を行う。操業ガイダンス装置20は、推定されたスラグレベルが閾値を超えた場合に、ガイダンスとしての操業アクションを表示部30に表示させる。表示部30は、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display)又は有機ELパネル(Organic Electro-Luminescence Panel)などの表示装置であってよい。
まず、高炉のスラグレベル推定装置10の構成要素が説明される。記憶部11は、炉底部にスラグを透過しにくい低透過相の存在を仮定する物質収支に基づく物理モデルを記憶する。また、記憶部11は、高炉におけるスラグを含む溶融物の液面レベルの算出に関するプログラム及びデータを記憶する。記憶部11は、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス及び磁気記憶デバイスなどの任意の記憶デバイスを含んでよい。半導体記憶デバイスは例えば半導体メモリを含んでよい。記憶部11は、複数の種類の記憶デバイスを含んでよい。
低透過相位置算出部12は、複数の領域の面積比と、複数の領域のそれぞれにおけるスラグの出滓量の差であるΔスラグ量との関係(図6参照)を用いて、直近の所定期間のΔスラグ量に基づいて、低透過相の位置を算出する。本実施形態において、複数の領域の面積比とΔスラグ量との関係は、上記のように線形関係であって、この線形関係を示す式などが記憶部11に記憶されてよい。低透過相位置算出部12は、記憶部11から例えば関係式を読み出して、直近の所定期間のΔスラグ量に基づいて、低透過相の位置を予測(算出)してよい。本実施形態において、所定期間は上記のように1日であって、低透過相位置算出部12によって日毎の低透過相の位置が推定される。ここで、所定期間は1日に限定されず、1日より長い期間であってよいし、1日より短い期間であってよい。
液面レベル算出部13は、低透過相位置算出部12によって算出された低透過相の位置を反映した物理モデルを用いて、出銑速度、出滓速度、造銑速度及び造滓速度の少なくとも1つを入力して、低透過相によって区切られた複数の領域ごとに溶融物の液面レベルを算出する。本実施形態において、溶融物の液面レベルは、スラグの液面レベル及び溶銑の液面レベルを含む。液面レベル算出部13は、算出した溶融物の液面レベルを操業ガイダンス装置20に出力する。
次に、操業ガイダンス装置20の構成要素が説明される。記憶部21は、操業ガイダンスに関するプログラム及びデータを記憶する。記憶部21は、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス及び磁気記憶デバイスなどの任意の記憶デバイスを含んでよい。半導体記憶デバイスは例えば半導体メモリを含んでよい。記憶部21は、複数の種類の記憶デバイスを含んでよい。
操業アクション提示部22は、高炉のスラグレベル推定装置10によって算出された溶融物の液面レベルに基づいて、推定されたスラグレベルが閾値を超えたかを判定する。スラグレベルが閾値を超えたと判定する場合に、操業アクション提示部22は、スラグレベル低下のための操業アクションを表示部30に表示させる。操業アクション提示部22は、例えば減風によってスラグ生成速度を低減することを、操業アクションとして表示部30に表示させてよい。
オペレータは、表示部30に示された操業アクションに従って、高炉の操業条件を変更してよい。このような高炉についての操業ガイダンスは、溶銑を製造する製造方法の一部として実行され得る。さらに、溶銑の製造を管理するコンピュータが、操業ガイダンス装置20によって提示される操業アクションに従って、溶銑の製造の条件を自動的に変更してよい。
ここで、高炉のスラグレベル推定装置10と操業ガイダンス装置20とは、個別の装置であってよいし、一体の装置であってよい。一体の装置である場合に、記憶部11と記憶部21とは、同じ記憶デバイスで実現されてよい。
高炉のスラグレベル推定装置10及び操業ガイダンス装置20は、例えば高炉の操業又は溶銑の製造を制御するプロセスコンピュータなどのコンピュータによって実現されてよい。コンピュータは、例えばメモリ及びハードディスクドライブ(記憶装置)、CPU(処理装置)、ディスプレイなどの表示装置を備える。オペレーティングシステム(OS)及び各種の処理を実施するためのアプリケーションプログラムは、ハードディスクドライブに格納することができ、CPUにより実行される際にはハードディスクドライブからメモリに読み出される。また、処理途中のデータについては、メモリに格納され、必要があればHDDに格納される。各種機能は、CPU、メモリ等のハードウエアとOS及び必要なアプリケーションプログラムとを有機的に協働させることにより実現される。記憶部11及び記憶部21は、例えば記憶装置で実現されてよい。低透過相位置算出部12、液面レベル算出部13及び操業アクション提示部22は、例えばCPUで実現されてよい。表示部30は、例えば表示装置で実現されてよい。
図10は、一実施形態に係る高炉のスラグレベル推定方法を示すフローチャートである。高炉のスラグレベル推定装置10は、図10に示されるフローチャートに従って、推定した液面レベルを出力する。図10に示される高炉のスラグレベル推定方法は、溶銑の製造方法の一部として実行されてよい。
低透過相位置算出部12は、直近の所定期間のΔスラグ量に基づいて、低透過相位置を算出する(ステップS1)。液面レベル算出部13は、ステップS1で算出された低透過相の位置を反映した物理モデルを用いて、低透過相によって区切られた複数の領域ごとにスラグを含む溶融物の液面レベルを算出する(ステップS2)。図10に示すように、低透過相位置を算出するステップは、溶融物の液面レベルを算出するステップの前に実行される。また、ステップS1が例えば1日に1回実行されて(日毎の低透過相の位置の推定)、ステップS2が1日に何度も実行されてよい。例えば物理モデルに入力される出銑速度、出滓速度、造銑速度及び造滓速度が10分毎に測定又は計算されて、10分毎にステップS2が実行されてよい。
図11は、一実施形態に係る操業ガイダンス方法を示すフローチャートである。操業ガイダンス装置20は、図11に示されるフローチャートに従って、操業アクションを提示する。図11に示される操業ガイダンス方法は、溶銑の製造方法の一部として実行されてよい。
操業アクション提示部22は、算出された溶融物の液面レベルに基づいてスラグレベルが閾値を超えたと判定する場合に、スラグレベル低下のための操業アクションを提示する(ステップS11)。
以上のように、本実施形態に係る高炉のスラグレベル推定方法及び高炉のスラグレベル推定装置10は、上記の構成によって高精度にスラグの液面レベルを推定できる。また、本実施形態に係る操業ガイダンス方法、溶銑の製造方法及び操業ガイダンス装置20は、高精度に推定されたスラグの液面レベルに基づいて、高炉の操業のガイダンスを行うことができる。例えばオペレータは、ガイダンスとして示された操業アクションに従うことによって、操業上のトラブル(一例として羽口の破損)を回避することができる。
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行されるプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
図9に示される高炉のスラグレベル推定装置10及び操業ガイダンス装置20の構成は一例である。高炉のスラグレベル推定装置10、操業ガイダンス装置20は、図9に示す構成要素の全てを含まなくてよい。また、高炉のスラグレベル推定装置10、操業ガイダンス装置20は、図9に示す以外の構成要素を備えてよい。例えば、操業ガイダンス装置20は、さらに表示部30を備える構成であってよい。
また、上記の実施形態において操業ガイダンス装置20の操業アクション提示部22は、スラグレベルが閾値を超えたと判定する場合に操業アクションを表示部30に表示させる。別の例として、操業アクション提示部22は、スラグレベルが閾値を超えなくても操業アクションを表示部30に表示させて、スラグレベルが閾値を超える場合に操業アクションの内容を、スラグレベルを低下させるものに変化させてよい。例えばスラグレベルが閾値を超えていない場合に、操業アクション提示部22は、減風が不要であって現在の設定のまま進めてよいとの操業アクションを表示部30に表示させてよい。
10 高炉のスラグレベル推定装置
11 記憶部
12 低透過相位置算出部
13 液面レベル算出部
20 操業ガイダンス装置
21 記憶部
22 操業アクション提示部
30 表示部

Claims (6)

  1. 出銑速度、出滓速度、造銑速度及び造滓速度の少なくとも1つを入力とし、炉底部の内壁から対向する内壁まで横断してスラグを透過しにくい低透過相の存在を仮定する物質収支に基づく物理モデルを用いて、前記低透過相によって区切られた2つの領域ごとにスラグを含む溶融物の液面レベルを算出するステップと、
    実高炉のデータと合致するように予め前記物理モデルに基づいて特定された前記2つの領域の面積比と、前記2つの領域のそれぞれにおけるスラグの出滓量の差であるΔスラグ量との関係を用いて、直近の所定期間の前記Δスラグ量に基づいて、前記低透過相の位置を算出するステップと、を含み、
    前記低透過相の位置を算出するステップは、前記溶融物の液面レベルを算出するステップの前に実行される、高炉のスラグレベル推定方法。
  2. 前記溶融物の液面レベルは、スラグの液面レベル及び溶銑の液面レベルを含む、請求項1に記載の高炉のスラグレベル推定方法。
  3. 請求項1又は2に記載の高炉のスラグレベル推定方法によって算出された前記溶融物の液面レベルに基づき、通気抵抗を低下させるための操業アクションをオペレータに提示するステップを含む、操業ガイダンス方法。
  4. 請求項に記載の操業ガイダンス方法によって提示される前記操業アクションに従って溶銑を製造する、溶銑の製造方法。
  5. 出銑速度、出滓速度、造銑速度及び造滓速度の少なくとも1つを入力とし、炉底部の内壁から対向する内壁まで横断してスラグを透過しにくい低透過相の存在を仮定する物質収支に基づく物理モデルを記憶する記憶部と、
    前記物理モデルを用いて、前記低透過相によって区切られた2つの領域ごとにスラグを含む溶融物の液面レベルを算出する液面レベル算出部と
    実高炉のデータと合致するように予め前記物理モデルに基づいて特定された前記2つの領域の面積比と、前記2つの領域のそれぞれにおけるスラグの出滓量の差であるΔスラグ量との関係を用いて、直近の所定期間の前記Δスラグ量に基づいて、前記低透過相の位置を算出する低透過相位置算出部と、を備え、
    前記低透過相の位置の算出は、前記溶融物の液面レベルの算出の前に実行される、高炉のスラグレベル推定装置。
  6. 請求項に記載の高炉のスラグレベル推定装置によって算出された前記溶融物の液面レベルに基づき、通気抵抗を低下させるための操業アクションをオペレータに提示する操業アクション提示部を備える、操業ガイダンス装置。
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